中小企業M&Aの現状や流れを徹底解説!注意点や成功事例もわかりやすく説明

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

近年は中小企業M&Aが増えていますが、M&Aを実施する際はあらかじめ流れや成功ポイント、注意点を知っておくと役立ちます。この記事では、中小企業のM&A流れや成功ポイント、注意点などをわかりやすく解説します。

目次

  1. 中小企業M&Aとは
  2. 中小企業M&Aの目的
  3. 中小企業M&Aで用いる手法・スキーム
  4. 中小企業M&Aの手続き・流れ(売却側)
  5. 中小企業M&Aの適正売却価格の決め方
  6. 中小企業M&Aでかかる税金
  7. 中小企業M&Aの成功ポイント
  8. 中小企業M&Aの注意点(よくあるトラブルの原因)
  9. 中小企業M&Aの成功事例
  10. 中小企業M&Aの相談先
  11. 中小企業M&Aの際に仲介会社を選ぶポイント
  12. 中小企業M&Aに関するおすすめの本3選
  13. 中小企業M&Aのまとめ
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1. 中小企業M&Aとは

はじめに、中小企業および中小企業の間で広がりを見せるM&Aの定義などを確認しましょう。

中小企業の定義

中小企業基本法では、中小企業者を資本金もしくは出資金と、常時使用する従業員数によって定義しています。具体的には以下のとおりです。

  • 製造業その他:資本金・出資金3億円以下の会社、または従業員が300人以下の会社および個人
  • 卸売業:資本金・出資金1億円以下の会社、または従業員が100人以下の会社および個人
  • 小売業:資本金・出資金5,000万円以下の会社、または従業員が50人以下の会社および個人
  • サービス業:資本金・出資金5,000万円以下の会社、または従業員は100人以下の会社および個人

また、法人税法上における中小企業軽減税率の適用範囲となるのは、資本金が1億円以下の場合に限られます。

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中小企業M&Aの現状・規模

レコフ社「レコフM&Aデータベース」によれば、2022年に国内企業が実施・関連したM&A件数は過去最多の4,304件となりました。前年の4,280件から24件増えており、2年連続で最多記録を更新しています。

2012年以降M&A実施件数は8年連続で増加し、2020年は新型コロナ感染拡大により減少となりましたが、翌2021年は再び増加に転じました。

中小企業M&Aが増加

独立行政法人 中小企業基盤整備機構「令和3年度 事業承継・引継ぎ支援事業の実績について 」

出典:https://www.smrj.go.jp/org/info/press/2022/ki772s0000002mv1-att/20220609_press_01.pdf

独立行政法人中小企業基盤整備機構が公表した「令和3年度 事業承継・引継ぎ支援事業の実績について」によれば、2021年度の事業承継・引継ぎ支援センター相談件数は20,841件でした。前年度の相談件数は11,686件だったので、2倍弱の増加であり過去最多となっています。

また、M&Aによる第三者への事業承継は、成約件数1,514件とこちらも過去最多となりました。上図をみてもわかるように、相談件数・M&A成約件数ともセンター開設以来右肩上がりとなっています。

中小企業M&Aが増加している要因として考えられるのは、後継者不在に悩む企業が増加していること、M&Aの認知度向上M&A仲介会社などの支援機関が増え気軽に相談できる環境になったこと、などです。

2025年には70歳を超える経営者が245万人に達する(2025年問題と呼ばれる)との試算されており、事業承継目的の中小企業M&Aはさらに増加すると考えられます。

独立行政法人 中小企業基盤整備機構「令和3年度 事業承継・引継ぎ支援事業の実績について 」

出典:https://www.smrj.go.jp/org/info/press/2022/ki772s0000002mv1-att/20220609_press_01.pdf

また、M&A成約件数の内訳をみると業種別ではサービス業や製造業の割合が高く、譲渡企業規模(売上高による規模)では3000万円以下が30%、3000万超~1億円以下が約34%となりました。

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日本における中小企業M&Aの課題

中小企業庁「中小M&Aハンドブック」より

少し前までM&Aは大企業が行うものというイメージが強く、2018年の東京商工会議所「事業承継の実態に関するアンケート調査」ではM&Aのイメージについて「よくわからない」が47%と約半数であり「よい手段だと思わない」は14%となりました。

以前に比べるとM&Aの認知度は向上したとはいえ、M&Aを実施することに対して「身売り」「第三者への会社売却は恥ずべきこと」「自社を売却すれば周囲から何を言われるかわからない」など、まだまだネガティブなイメージを持つ人が多いのも事実です。

そのようななか、最近では国がその考え方を変えるために、事業承継・引き継ぎ支援センターの設置や「中小M&Aガイドライン」の制定などを行い、中小企業のM&A・事業承継を後押ししています。

なかでも「中小M&Aハンドブック」は「中小M&Aガイドライン」の第1章(M&Aによる事業承継)をわかりやすく解説した冊子です。

売り手側にとっては「自社・事業の売却は後ろめたいことではなく築き上げた事業の価値を第三者から認められること」「従業員の雇用を守る有効な手段」であること、買い手にとっては「事業を拡大するための合理的な手法」であることなどが非常によくわかる内容になっています。

参考:経済産業省・中小企業庁「中小M&Aハンドブック」

中小企業庁「2021年度版中小企業白書」

出典:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/chusho/b2_3_2.html

国のこのような取り組みの結果、M&Aに対するイメージは以前より向上してきました。上のグラフは、M&Aに対するイメージの変化を10年前と比較したものですが、これをみるとプラスのイメージをもつ割合が増え、経営者の年齢が若いほどM&Aに対する抵抗感は薄いことがわかります。

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中小M&A推進計画とは

2021年4月、中小企業庁は「第6回中小企業の経営資源集約化等に関する検討会」を開き、今後5年間に実施すべき官民の取組を「中小M&A推進計画」としてまとめました。

後継者不在問題や経営者の高齢化進行など、中小企業を取り巻く環境を考慮したうえで「中小企業の貴重な経営資源を守り将来につなぐ」「事業再構築を含めて生産性の向上などを図る」などの目的を策定しています。

中小企業M&Aは認知度が向上し実施件数も増えていますが、まだまだ十分とは言えない状況です。潜在予備軍は60万者いるともいわれており、中小企業が円滑にM&Aを行えるような対応・対策が必要とされています。「中小M&A推進計画」で対応が検討された主なポイントは以下の3点です。

小規模・超小規模M&Aの円滑化

  • 支援を必要とする潜在的な対象事業者(譲渡側)の数が多く、対応し切れていないことが課題
  • 商工団体・地域金融機関・仲介会社などM&A支援機関と事業承継・ 引継ぎ支援センターの連携強化が必要

大規模・中規模M&Aの円滑化

  • 民間の自立的な活動を基本としつつ、中小企業がM&A支援機関のサポートをうまく活用できる環境整備が重要
  • 企業価値の簡易評価ツールの提供、デューデリジェンスやセカンドオピニオンなどに係る専門家活用費用の補助、M&A段階に応じた専門機関への橋渡しなど、官民双方の連携を強化する

中小企業M&Aに関する基盤の構築

  • 事業承継などはほかの経営課題より後回しにされやすいため積極的な働きかけが必要
  • 事業承継ガイドラインの改訂版の策定や、メディアを活用した広報・PR施策を集中的に実施する

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中小企業がM&Aを実施する際の頻出課題

中小企業のM&Aが活発になりつつあるとはいえ、依然として課題が多く存在する状況です。中小企業M&Aの課題としては、主に以下の5つが挙げられます。

  1. マッチングの課題
  2. 従業員の融和に関する課題
  3. 給与・人事・組織体系の統合における課題
  4. 売り手企業の経営不安の課題
  5. 低い企業評価によるM&Aの不成立の課題

①のマッチングは、M&Aの目的や希望条件が不明瞭であることが理由となり、M&Aの相手先がなかなか見つからない問題が深刻化しています。最近では、マッチングサイトなども増えつつありますが、依然として課題改善にはつながっていないのが現状です。

また②、③のようにM&Aを行ったものの、従業員の融和や経営・組織の統合がうまくいかずにM&Aが失敗に終わってしまうことも課題とされています。

④の売り手企業の経営不安に関する課題は、将来的な経営の先行きだけでなく、現状における簿外債務の発覚など、統合前に知らされなかったリスクが発覚したために生じるケースも少なくありません。

⑤のように、たとえ希望案件が見つかったとしても、中小企業では企業評価が低いためになかなかM&Aが成約しない課題もあります。このような問題解決のためにも、経営者個人で交渉を進めるのではなく、M&Aの専門業者に業務依頼し慎重にM&Aを進めていくことが重要です。

なお、上記の課題は国も認識しており、2020(令和2)年3月には経済産業省によって「中小M&Aガイドライン」が策定されています。

中小M&Aガイドラインとは、中小企業におけるM&Aのさらなる促進に向けて、M&Aの基本事項や手数料の目安などを示しつつ、M&A業者などに対して適切なM&Aに向けた行動指針を提示する資料です。

今後は、ハンドブックの作成や、セミナーを通じたM&Aの普及・広報の開始も予定されています。

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2. 中小企業M&Aの目的

中小企業がM&Aを行う目的には、以下の6つが挙げられます。

①後継者問題を解決したい

近年、中小企業では後継者不足により廃業・解散する企業が増加している状況です。中小企業にとって後継者不足の解決は、事業承継のための大きな課題となっています。

後継者不足で廃業・解散した場合、経営者個人だけの問題ではなく、働いている従業員も解雇です。このような背景から、後継者不足の課題解決を目的としてM&Aを実施する中小企業が増えています

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②事業の将来性に不安

個人事業主や中小零細企業は市場の急速な変動や景気動向に大きく左右されます。

そのような中で長く事業を続けることは難しく、事業の将来性への不安を払しょくするために、大手の傘下に入って安定した会社運営を行いたいと考える経営者が少なくありません。このような中小零細企業の問題解決を目的とするM&Aも多く実施されています。

③廃業・清算を回避したい

会社の廃業・清算を回避したい目的でM&Aが行われる場合もあります。会社の業績不振による事業停滞が続いていても、廃業の選択肢ではなく再建をしたい場合や、将来性があり清算したくない思いからM&Aを行うケースがよい例でしょう。

M&Aでは、業績が悪化している部門を切り離したり、他社に買収される形をとって会社を延命したりする方法を取ることが可能です。

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④引退後の生活資金を確保したい

経営者としての立場から身を引いた後の生活資金を確保したい目的から、M&Aを実施するケースもあります。売り手となる経営者は、会社の株式を譲渡すると売却利益の獲得が可能です獲得した売却利益は、リタイア後の生活費や他事業の運転資金などにも充てられます。

株式を譲渡する以外の方法では廃業も挙げられますが、会社の資産を低い金額でしか売却できなかったり、従業員への退職金を支払ったりするケースもある点が問題です。いずれにしろ、廃業よりも株式譲渡の方が経営者が得る受取額は多いでしょう。

⑤個人保証を解除したい

中小企業では、会社の借入に対して経営者が個人保証をしていることがほとんどです。こうした個人保証を解除する目的でM&Aを検討するケースも珍しくありません。M&Aでは会社の財産移転に伴って個人保証から解放されるため、経営者およびその家族は安心できます。

⑥企業を成長させたい

M&Aでは買い手側の方が規模が大きい場合が多いので、大企業のネームバリューやさまざまなノウハウを得ることで、経営基盤を安定させたり資金援助による規模拡大ができたりします。このように、企業を成長させるためのM&Aもあるのです。

⑦従業員の雇用を維持したい

廃業する際、従業員の雇用は経営者にとって大きな悩みとなります。経営者にとって一緒に働いてきた従業員は家族のように考えているかたもいます。廃業を選択するとその従業員を路頭に迷わす可能性があります。

しかし、M&Aを実施することで、従業員の雇用を維持することが可能です。中小企業のM&Aではほとんどが株式譲渡で行われます。その場合、雇用契約も自動的に譲受側企業へ引き継がれます。M&Aによって安定した経営地盤の企業に買い取ってもらうことができれば、雇用を維持できるだけでなく、今までより従業員の処遇が良くなることもあります。

また、買い手側企業にとっても優秀な人材を一度に確保でき、双方にとってメリットの大きい方法といえます。

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3. 中小企業M&Aで用いる手法・スキーム

M&Aをスムーズに行うためには、スキームの選択は非常に重要になります。自社にとって最良の方法について、M&Aの専門家に相談するのがいいでしょう。

スキーム 主なメリット 主なデメリット
株式譲渡 短期間での完了が可能
自社・事業が存続できる(売り手)
許認可の再取得が不要(買い手)
資産だけでなく負債も引き継ぐ(買い手)
簿外債務・偶発債務によるリスクがある(買い手)
多額の資金が必要(買い手)
事業譲渡 事業以外の責任を負わなくて済む(買い手)
節税効果の期待(買い手)
債権者への告知・公告が不要
手続きが煩雑なため時間がかかる
権利や許認可が引き継げない(買い手)
競業避止義務が課される(売り手)
会社分割 許認可の再取得が不要
資金を用意しなくても実行できる
資産だけでなく負債も引き継ぐ(買い手)
簿外債務・偶発債務によるリスクがある(買い手)
株式交換 資金を用意しなくても実行できる(買い手)
実施後も別法人として存続するため経営統合を急がなくてもよい
適格要件を満たせば税制優遇が受けられる
株価が下落するリスクがある
株主構成が変わる(買い手)
手続きが煩雑で日数がかかる
株式移転 資金を用意しなくても実行できる(買い手)
実施後も別法人として存続するため経営統合を急がなくてもよい
適格要件を満たせば税制優遇が受けられる

株価が下落するリスクがある
株主構成が変わる(買い手)
手続きが煩雑で日数がかかる

株式譲渡

株式譲渡とは、売り手の所有する株式を買い手に譲渡して、買い手が経営権を取得することです。一般的な物販と同じで簡単に取り組みやすい手法といえます。株式譲渡を行う方法は、相対取引・市場買付け・公開買付けの3種類です。

相対取引は直接株式を買い取る方法で、売り手が株式を上場していないと相対取引以外では買い取れません。売り手の株主が家族や親族だけの場合はよいのですが、広く分散している場合、必要な株式数の取得が困難なことも多いでしょう。

売り手が上場している場合は、株式市場から直接株式を買い取る市場買付けになります。この場合、株式を取得していることが公になり、株価が高騰する恐れがあるためM&A手法には適していません。

市場買付けのリスクを回避するための方法が株式公開買付け(TOB=Take Over Bit)です。TOBでは、買い手は事前に買付けの期間・株数・価格を公表し、株式を保有する株主に売却を促し取引所以外で買付けます。

株式市場より高価格に設定しないと、株主にメリットがないため売ってもらえません。

株式譲渡のメリット

他のM&Aスキームより手続きが簡便であり、短い期間でM&Aを実施できます。
また、買い手側は権利や義務などを包括的に承継できます。
一方買い手側は会社の独立性を維持しやすい点がメリットとなります。

株式譲渡のデメリット

買い手側は包括承継であるため、簿外帳簿や不要な債務を引き継ぐ可能性があります。また、対価として現金が必要である点もデメリットと言えます。

事業譲渡

事業譲渡は、自社の事業を第三者に売り渡すことです。この場合の事業とは人材・ノウハウ・債務・事業組織・ブランド・取引先との関係、資産などから選別して取引されます。
 

事業譲渡のメリット

事業譲渡の場合、全ての事業を売り渡すことも、事業の一部の売り渡しもできるため、不採算部門だけの譲渡も可能です。買い手には、契約範囲を決めることで負債を引継がなくてよいなどのメリットがあります。個別承継のため買い手側は負債や不要な資産の承継を除外することができます。売り手側は売却事業を選択できるため不採算事業など売却し、主力事業へ集中することができます。

事業譲渡のデメリット

契約の移転手続きのため、手間や時間がかかります。買い手側は雇用契約や資産権利を個別に契約し直す必要があります。売り手は税務上の優遇措置がなく税負担が大きいく、競業避止義務を負う可能性があります。

株式譲渡と事業譲渡の違いについては、下記の記事で詳しく説明しておりますので、そちらもご確認ください。

【関連】M&Aスキームの事業譲渡と株式譲渡の違い|メリット・デメリット、選択ポイント、税務面も解説

会社分割

会社分割は、売り手の事業部門を丸ごと買い手が引継ぐ手法です。事業譲渡のような譲渡対象の選別はできません。事業譲渡と会社分割は事業の一部を移転する意味では似ていますが、手続きや税法上の違いに注意が必要です。

会社分割は、既存の会社に事業を引継ぐ「吸収分割」と、新設した会社に事業を引継ぐ「新設分割」の2種類の分類があります。また、対価を株主に支払う「人的分割」と、会社に対して支払う「物的分割」の2種類があり、合わせて4つの類型です。

会社分割は、事業部門を丸ごと譲渡する包括的な承継であるため、契約や雇用関係も承継されるのが事業譲渡との大きな違いになります。どちらを選択した方がよいか迷う場合は、専門家に相談するのがいいでしょう。

【関連】会社分割とは?事業譲渡との相違点や手続きの流れをわかりやすく解説!

株式交換

株式交換は、完全親子会社関係を実現する組織再編行為です。具体的には、子会社化したい会社の全株式を取得し、その対価として親会社の株式を交付します(現金を対価とすることも可能)。親会社は既存の会社のみで、新設会社が親会社にはなりません。
 

株式交換のメリット


株式交換では、株主の同意を得ることなく、当事会社間の合意で実施できるメリットがあります。株主総会でも特別決議(出席した過半数の株主の議決権の3分の2以上による賛成)でよいため、株主全員の合意を得る必要がありません。株式を対価にできるので現金の流失を避けられます。

株式交換のデメリット

買い手企業が上場企業の際、業績次第で株価暴落してしまうリスクがあります。買い手企業の株主構成が変化してしまいます。また、手続きが煩雑なため日数がかかることもデメリットに挙げられます。

【関連】株式交換による買収・M&Aのやり方、メリットを解説【事例あり】

株式移転

株式移転は、持株会社体制を構築する際に用いられる手法です。新設会社が親会社(持株会社)となって、既存企業が子会社(事業会社)をなります。子会社の株式取得と対価(株式交付)の受け渡し方法は、株式交換と同様です。

株式移転のメリット

資金を用意しなくてもM&Aを実行することが可能です。また実施後も買収した企業は別法人として存続するため経営統合を急いで行う必要がありません。さらに適格要件を満たせば税制優遇が受けられる点もメリットとして挙げられます。

株式移転のデメリット

買い手企業が上場企業の際、業績次第で株価暴落してしまうリスクがあります。買い手企業の株主構成が変化してしまいます。また、手続きが煩雑なため日数がかかることもデメリットに挙げられます。

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4. 中小企業M&Aの手続き・流れ(売却側)

ここからは、中小企業M&Aでの売却側の手続きの流れを見ていきましょう。M&Aの流れ・手順は以下のように進みます。

①M&Aの意思確認・戦略の策定

まずは、M&Aを行う意思確認・戦略の選定を行います。第1段階は、現時点における自社の課題・今後の方向性や目標を決めるプロセスです。自社で対処できる可能性やM&Aの必要性などについて検討したうえで、M&Aの最終的な意思決定を行いましょう。

意思確認の完了後は、M&Aの戦略を策定します。詳細はアドバイザーと決定しますが、まずはM&Aの方法を含めて戦略決めを進めてください。

②中小企業M&Aの専門家に相談

中小企業M&Aの検討を始めた場合、基本的に中小企業M&Aの専門家に相談を行います。相談の内容は売り手と買い手によって異なりますが、相手先企業の選定基準やM&Aを行う目的やメリットなどの相談を行うケースが多いでしょう。

③M&A専門家との各種契約

中小企業M&Aの専門家と相談し、業務委託内容についてなっおくできた後は専門家との契約を行います。この段階で契約するのは以下の2つです。

秘密保持契約

M&Aの方向性が決まった後、売り手の機密を守るために結ばれるのが秘密保持契約です。M&Aアドバイザーとの契約時には、アドバイザリー契約と秘密保持契約の両方を結びます。秘密保持契約で締結される一般的な内容は以下のとおりです。

  • 秘密保持契約対象となりうる内容・期間
  • 秘密保持の義務を負う人物の決定
  • 情報漏えいがあった場合の損害賠償の可否
  • 秘密保持についての調査権限
  • 情報漏えいなどの問題があった際の裁判所の管轄

アドバイザリー契約

中小企業M&Aの専門家と相談したうえで業務委託内容について納得できたら、アドバイザリー契約を締結します。アドバイザリー契約では、アドバイザーが行う業務の範囲・報酬・直接交渉の禁止などについて契約の締結を行うのが一般的です。

④M&A戦略の決定・売却先選定

アドバイザーが決まった後は、M&A戦略を決定したうえで売却先候補の選定を行います。売却先候補の選定は、ノンネーム資料(会社名が匿名になっている企業概要書)に書かれた売却先企業の情報を基に行うのが一般的です。

ノンネーム資料はM&A仲介会社から提供される資料であり、具体的な企業名までは特定できないものの、業種や規模、エリア、収益、買収を希望する理由などが記載されています。この資料の情報を基に売却先候補との条件を照らし合わせ、自社のメリットについて検討しましょう。

⑤M&Aの打診

ノンネーム資料を使い、買い手候補を絞ったらM&Aの打診を行います。相手会社からさらに詳細な情報を求められた場合には、秘密保持契約を結んだうえで詳細情報の開示を行いましょう。

⑥トップ同士の会談・交渉

買い手の意思が固まり具体的に買収を検討する段階になると、次はトップ同士の会談の場が設けられます。この会談は、売り手企業・買い手企業のトップ同士が顔を合わせて話をする貴重な場であり、おおよそのの話の内容は以下のとおりです。

  • M&Aを決意した経緯
  • 経営ビジョン
  • 今後の経営方針
  • 社風や会社の特徴
  • ※会談をとおして経営者の人物像も見極める

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⑦意向表明書の提示

意向表明書とは、買収方法(株式譲渡・事業譲渡など)や買収価格などの諸条件が記載されている書面です。買い手側のM&Aの意向を売り手側に明示するものですが、M&Aのプロセスとして必須ではなく、省略されることもあります。

⑧基本合意書の締結

基本合意書には、買収の条件・独占交渉権・守秘義務・誠実交渉義務・スケジュール概略などが記されています。基本合意書は、合意内容確認書という位置付けのもので法的拘束力はありません。ただし、以下の条項には例外的に法的拘束力を持たせます。

  • 独占交渉権
  • 売り手のデューデリジェンスへの協力義務
  • 守秘義務

⑨買収先によるデューデリジェンス

デューデリジェンスとは、基本合意書締結後に買い手企業が売り手企業の実態を把握するために行われる調査をさします。具体的には、M&Aの専門家や士業が売り手企業を訪問し、帳簿を閲覧したり、書面では把握できない会社状況をチェックしたりする手続きです。

デューデリジェンスで発生する費用(専門家への手数料)は、全て買い手が負担します。

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⑩条件交渉

デューデリジェンスを行った後で交渉を断念せざるを得ない状況にない場合、最終合意に向けて交渉を行います。交渉の多くは、売買条件の他に、経営者・役員・従業員の処遇や最終契約までのスケジュールなど詳細な内容です。

⑪最終契約の締結

最終的な売却価格が決まりその他の条件にも問題がなければ、最終契約の締結へと進みます。最終契約書の内容には、譲渡の内容と売買価格などが記されるものです。最終契約の締結には、取締役会や株主総会の開催が必要な場合もあるため注意が必要となります。

⑫クロージング

全ての内容に合意して最終契約書の締結後、買い手から譲渡代金を受け取ります。その後に最終的な諸手続きを行うと契約完了です。

残りの手続きとしては、売り手の経営者が個人的な目的で購入した資産の買い取り、株券の引き渡し、会社代表印の引き渡しなどがあります。この最終的な手続きがクロージングです。

⑬経営統合の実施

M&Aで最も大切なのは、経営統合(PMI=Post Merger Integration)の実施です。M&Aが成立したからといって安心できるわけではなく、統合後が全てのスタートとなります。

まずは、経営陣が統合の基本方針や経営方針、相乗効果による目標の説明を行ったうえで、スタッフ同士の連携や業務方法の連携などをすり合わせるプロセスが必要です。この経営統合がうまく実施できないと、M&Aが失敗してしまいます。

PMI計画の策定は、デューデリジェンスのタイミングから並行して進め、慎重に決定していく必要性を理解してください。

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5. 中小企業M&Aの適正売却価格の決め方

ここからは、中小企業M&Aにおける適正売却価格の決め方を解説します。基本的なアプローチ方法・売り手と買い手との価格認識の違い・希望の価格で売却する方法など、それぞれの特徴や注意点を把握しておきましょう。

3つの基本アプローチ方法

中小企業の適正売却価格を決めるためのアプローチの体系は、大別して以下の3つです。それぞれの概要を掲示します。

コストアプローチ

コストアプローチとは、評価の対象企業が保有している資産を再構築するとし、そこに発生するコストに重点を置きながら保有資産をベースに企業価値を算出する方法です。

コストアプローチには、帳簿資産の合計を企業価値とする簿価純資産法と、時価資産合計から営業債務と有利子負債を差し引き株式価値とする時価純資産法があります。

ネットアセットアプローチとも呼ばれ、純資産を基に企業価値を算出するため客観性に優れている点がメリットです。中小企業のM&Aでは採用されることも多い算出方法ですが、大企業のM&Aでコストアプローチが用いられるケースはほとんどありません。

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インカムアプローチ

インカムアプローチは、対象企業の将来の利益予想やキャシュフロー予想に基づいて企業価値を算定する方法です。インカムアプローチに含まれる代表的な手法にはDCF法や配当還元法があります。

インカムアプローチはキャッシュフローに基づいて会社経営の実態を評価する方法であり、将来性やシナジー効果も評価に反映される点がメリットです。

その一方、主観が入りやすいため、実際の価値と算出した企業価値に乖離(かいり)が生じうることがデメリットとして挙げられます。

対象事業(企業)の将来性をベースとして企業価値を算定するため、ベンチャー企業など成長段階にある企業に適した方法です。

【関連】インカムアプローチとは?メリット・デメリット、計算方法の種類を解説

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、比較対象となる企業・業界を基準に企業価値を算出する方法です。対象企業の決算書の数値に一定の係数を乗じることによって価値を求めます。

主な方法には市場株価法とマルチプル法(類似会社比較法)とがあり、市場株価法は、対象企業の株式市場価格を基準にして評価を行う方法です。マルチプル法では、類似するM&A取引の成立価格をベースに一定の倍率を乗じて価値を算出します

類似企業や市場株価をベースとするため、現時点での比較ができることや客観性の高さがメリットです。その一方で、そもそも上場している類似企業がみつかなければ用いることができす、選定に主観が入りやすいというデメリットもあります。

以下の動画では、M&Aアドバイザーが計算例を用いてマルチプル法を解説しておりますので、ぜひご覧ください。

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売り手と買い手との価格認識の違い

M&Aを検討する際、売り手としては自社の適正売却価格が気になるでしょう。適正価格は、前述した方法によって個人でも算出可能です。しかし、適正価格はあくまでも参考値であることを理解しておく必要があります。

なぜなら、最終的な契約合意価格には買い手の主観が反映される部分が大きいためです。適正価格の何倍・何十倍といった高い価格で取引されることもあれば、その反対もあることを理解しておきましょう。

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6. 中小企業M&Aでかかる税金

株式譲渡の税金

買い手側

基本的に税金はありません。

例外として、個人が買収する際に時価より、非常に低額の際は贈与を受けたとみなされ譲渡税を納付する義務が発生します。
また、法人が買収する際に時価より、非常に低額の際は受贈益を受けたとみなされ課税対象になります。

売り手側

【個人の場合】
分離課税であり、税率は20.315%です。その内訳は所得税が15%、復興特別所得税が0.315%、住民税が5%となっています。また、復興特別所得税は、2037(令和19)年までの時限措置です。譲渡所得額の算出は、

譲渡所得=譲渡価額-(株式取得費用+譲渡手数料)

で求められます。

【法人の場合】
譲渡益が出た際に法人税が課されます。しかし、法人税は会社の全ての損益通算した上での課税になります。大きな損失がある場合は、非課税になることもあります。

事業譲渡の税金

買い手側

事業譲渡により不動産を取得した際には登録免許税と不動産取得税が課されます。

売り手側

【個人の場合】
所得税と住民税が課せられます。株式を売却した際に得た譲渡所得の利益に所得税は15%、住民税は5%かかります。

【法人の場合】
法人税が課せられます。会社法の総合課税方式での計算のためおおよそ30%が課せれます。

7. 中小企業M&Aの成功ポイント

ここでは、中小企業M&Aの成功ポイントを解説します。M&Aを成功させるためには、以下9つのポイントを押さえて行うことが大切です。

①利害関係者を把握・調整する

中小企業のM&Aを成功させるポイントとして、利害関係者の把握・調整が挙げられます。M&Aを進める際には、自社の利害関係者を把握したうえで、M&A実施前にいかなる調整を行っていくかを検討するとよいです。

利害関係者とは、株主・取引先・役員や従業員・金融機関などをさします。この中でも株主は直接の利害が絡むため、M&A前から了解を得る方法について慎重に対策を講じておかなければなりません。

もしも持分比率の高い株主が反対すれば、M&Aそのものが成立しないおそれがあります。どの株主がどれだけの持分比率を保有しているかを調べたうえで、M&Aに反対しそうな株主をしっかりと見極めておきましょう。

②売却側企業の関係者に及ぼす影響を検討する

企業を売却することは経営者だけでなく、さまざまな方面に影響を及ぼします。主な関係者への影響を検討しましょう。

株主

株主にとってM&Aは重要な問題です。株主がそれまで受けていた経済的利益を受ける権利(自益権)や経営に関与できる権利(共益権)を失う恐れがあります。

取引先

中小企業の場合、経営者との個人的なつながりで取引をしている会社もあります。そのようなケースで経営者が変わると、取引先から取引停止を言い渡されたり、取引を断られたりする可能性を否定できません。

従業員

中小企業では、従業員と経営者は家族のような関係になっている場合も多いでしょう。経営者が変わると聞いて不安になり熟練した従業員が辞めてしまったり、M&Aと聞いただけで会社をクビになるのではと恐れたりします。

親族

中小企業では、親族が会社の役員や従業員になっていることも多いものです。そのような場合、自分のポストや仕事が奪われるのではと不安になります。

金融機関

融資取引のある銀行にとって、取引先の経営者が誰になるかは非常に重要な問題です。融資が回収できるか、新たな経営者が信用できるかなど、融資取引の継続判断を迫られる可能性もあるでしょう。

会社の借入に対して個人保証を付けている場合は、保証の解除手続きも必要になります。

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③議決権を確保する

会社を売却するためのM&Aは、株主が保有する議決権の3分の2以上(66.7%以上)の賛成が得られなければ実現できません。会社によって、株主構成はさまざまなパターンが見られます。

たとえば、オーナー経営者自身・配偶者・子供・兄弟姉妹・その他の親族・親族以外の役員だけでなく、従業員や取引先などが株主になっているケースもあるものです。

その中でも、先代からの相続などにより成り行きで株式を保有する親戚などは、会社へのコミットが薄いために想定外の行動を取ることもあります。M&Aに着手する前には、あらかじめ株主構成を見直すほか、分散した株式を集約するなどの対策を打っておきましょう。

④M&A交渉を円滑に進める

中小企業M&Aを成功させるポイントは、円滑な交渉です。中小企業M&Aの場合、交渉が長引きM&A自体が破談になってしまうケースも少なくありません。交渉相手が多く見つかるようであれば問題はありませんが、中小企業M&Aでは条件に合う相手を見つけにくいのが現状です。

現在ではM&Aのマッチングサイトなどもあり、個人で相手を探して交渉を進められますが、M&Aには専門的な知識・見解や交渉力が必要となります。中小企業のM&Aに強い専門家と一緒に交渉を進めることが成功ポイントの1つになります。

⑤適正売却価格を知る

自社の適正な売却価格を知る方法はいくつかありますが、一般的には会社の時価純資産と数年分の営業利益を足した合計額で、おおよその売却価格を算出できます。

しかし、より正確な自社の適正売却価格を算出するには専門的な知識が必要なため、M&A仲介会社など専門家に依頼して算出してもらう方がよいでしょう。

⑥買収側は取引価格の範囲を定めておく

企業を買収する場合の取引価格は、M&A仲介会社の算定価格によって決められることが多いですが、仲介会社に頼むから無知識でよいわけではありません。

知識がないと相場以上に高い金額で買収することになったり、思いがけない安い金額で売ることになったりする可能性があるからです。

取引価格を算定しても必要な情報が十分にそろわないことも珍しくありませんが、買収価格の目安(上限と下限)を決めることで買収が可能かどうかを判断します。

企業を買収する場合、買収する企業側には事業を成長させたい、新規参入のコストを減らしたいなどの目的があるはずです。目的を達成するためにどのくらいのコストが妥当かを考えましょう。

⑦M&A戦略をしっかりと決める

M&A戦略を決めるためには、希望取引額・相手会社の業種や規模などを事前によく検討します。M&A戦略を練らずに買収可能性のある相手に手当たり次第に打診をした場合、相手先を見つけるまでに時間がかかるだけでなく、譲渡額が低くなる可能性も高まるものです。

そのような事態を避けるために、自社の目的に合ったM&A戦略をしっかりと決めておく必要があります。

⑧会社としてアピールポイントを持つ

M&Aの買い手は、統合後にシナジー効果などのメリットがあるか否かによって買い手先を決定します。したがって、会社のブランド力や営業力が高いなど、統合後のシナジー効果を期待されるような会社であれば、交渉を進めやすくなるのです。

買い手側は、メリットが得られなければ買収を行いません。M&A成功のためには、自社の強み・アピールポイントを持つことが重要です。

⑨M&Aの専門家に相談する

中小企業M&Aを成功させる最大のポイントは、M&Aの専門家に相談することです。中小規模の企業では個人同士でM&A交渉を行うこともまれに見られますが、失敗に終わってしまうケースも少なくありません。

M&Aは、専門家による適切なアドバイス、豊富な知識・経験による交渉力によって成功する確率が高くなります。個人でマッチングサイトなどを活用しながら時間をかけて交渉を行うのではなく、中小企業M&Aに強い専門家とともに交渉を進めることがおすすめです。

M&A総合研究所では、中小企業M&Aに強いアドバイザーが専任につきフルサポートいたします。実績や知識が豊富なアドバイザーによる交渉やアドバイスによって、スピーディーなM&A実施が可能です。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」となっています(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。電話・メールによる無料相談は随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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8. 中小企業M&Aの注意点(よくあるトラブルの原因)

中小企業M&Aを行う際の注意点は複数あり、十分に理解したうえでM&Aを行うことが重要です。この章では、買い手側・売り手側それぞれの立場から見た注意点を解説します。

売り手側

売り手から見た注意点には、主に以下の10点があります。

人材が流出する可能性を考える

人材が流出する可能性を考えることです。M&Aによって両社の強みを生かした会社運営を想定していたにもかかわらず、予期せぬ人材流出でM&Aが失敗に終わってしまうケースは少なくありません。

売り手側の社員が、買収されるとわかった段階で将来性などに不安を感じて退職してしまうケースも考えられるため、M&Aを行ったことで優秀な人材が流出しないよう準備・対策を行う必要があるでしょう。

M&Aの目的をきちんと定める

M&Aの目的をきちんと定めることです。目的が定まらない状態でM&Aを実施してしまうと、業績を落としたり優秀な人材が流出したりして、経営状況が悪化するケースも考えられます。M&Aは、会社や従業員の将来を左右するので目的を定めて実施しましょう。

従業員のモチベーションを下げないようにする

従業員のモチベーションを下げないことです。中小企業M&Aでは、統合による急な経営方針の変更・業務内容の変更・従業員同士がなじめないなどを理由に、従業員のモチベーションが下がってしまうケースがあります。

PMIの前に、トップ同士で両社の経営方針のすり合わせを行うなど、統合後の従業員の働きやすさ・モチベーションの維持などを考えて進めることが大切です。

簿外債務を念入りに調査しておく

簿外債務を念入りに調査することです。特に中小企業では、簿外債務が発生しやすい傾向があります。簿外債務の存在は、リスク管理能力の低さを表すため、経営者や会社の信用を大きく下げてしまう可能性があります

健全な会社運営をアピールするためにも、簿外債務の存在は念入りに調査しましょう。

コンプライアンス遵守

大企業に比べ中小企業ではコンプライアンスに対する意識が弱い傾向があります。例えば定時株主総会後に決算公告を行う義務があるにもかかわらず、決算公告を行っていないなどが挙げられます。

手続上の間違いがあることは仕方ないですが、間違いに関する重要度やリスクに関して精査し、許容範囲内か否か判断しましょう。

監査資料がそろわない場合の対処法を把握しておく

買い手がM&Aを最終判断するために行う企業の精密監査(デューデリジェンス)です。買収企業は、M&A対象企業の業種や状況などの懸念すべき事項を解消するために、より多くの資料を求めるでしょう。

しかし、中小企業の場合、資料を十分に保有していない場合や資料作成が容易でない場合もあります。必要な書類を可能な限りそろえ、用意できない資料があるときは誠実にそれを伝え、割り切ってもらいましょう。

交渉では誠実に対応する

誠実な交渉の対応です。もともとM&Aは企業間の交渉である以前に、人間対人間のやりとりだといえます。特に中小企業の経営者は創業者であることが多く、会社に対する思いが強いです。

こうした経営者の意思を軽んじるような対応を取れば、ささいな言葉でもM&Aの破談につながりかねません。基本的には、売り手より買い手の方が規模が大きいために、買い手が不用意な発言をしがちですが、売り手も買い手に過剰な要求をすれば破談につながります。

過剰な要求や不誠実な交渉をした結果、M&Aそのものが破断してしまえば本来の目的を果たせません。M&Aを成功に導くためにも、相手を思いやる姿勢が大切です。

株券に関する問題の発生時は適切に対処する

最後は株券に関する問題発生時の対応です。中小企業は株式を自由に売買ができない「株式譲渡制限会社」であるケースも多いです。株式譲渡制限会社にすることで、株式を自由に売買できず、望まない人の株式取得を防げるなど企業にとってメリットがあります。

もともと中小企業の株式は売買を予定していない株式であり、家族や親族での保有も多いため、株式を持っている意識が薄い場合も多いのです。そのため紛失率が高く、「どこにあるかわからない」とか「株式そのものがまだ発行されていない」という場合もあります。

以下は、株券に関する代表的な対処方法です。

株券の喪失

当事会社が株券発行会社である際、株券の発行と株券の相手への交付がなければ株式の譲渡ができません。株券を喪失している場合は再発行が必要です。

しかし、株券の占有者は株券に関わる権利を適法に有するものと推察されるため、善意の第三者が占有していた場合、その占有者に権利があるとみなされます。株券の再発行には株券の喪失手続きを踏む必要があり、1年の期間がかかってしまうのです。

株券不所持の申し出

株券発行会社がまだ株式を発行していない場合は、株式の数を明らかにし、株式不保持の申し出を行うことで対処します。

株式不発行会社への移行

実際に株券を発行していない場合や株券を喪失している場合、株式譲渡を前提として株券不発行会社への移行が問題の解決方法です。ただし、実際に株券を発行している会社がその株券を廃止する場合は、公告と株主への通知が必要となり、2週間程度の期間を要します。

買い手側

買い手側の注意点には、主に以下の4つが挙げられます。

資金調達が必要

中小企業がM&Aを行う際に多くの会社で課題となるのは、資金調達だといえます。M&Aでの買収資金だけでなく、その後の運用資金も必要となるため、資金調達を行わなくてはなりません。

M&Aの実施後は人件費や運営費などが増額となった資金調達となるため、計画的なM&Aの実施が重要です。

経営統合の実施を徹底する

M&Aを実施したにもかかわらず、経営統合がうまくいかなかったために、M&Aが失敗に終わってしまうケースもあるものです。企業風土の違う会社同士が統合するため、経営統合実施の徹底に関しては特に注意しておかなければなりません。

デューデリジェンスを徹底する

デューデリジェンスとは、投資対象となる企業や投資先の価値やリスクを調査する行為をさします。M&Aを実施する前のデューデリジェンスをおろそかにしてしまうと、M&A後に想定していなかった簿外債務や経営リスクなどが発生する可能性が否定できません。

デューデリジェンスの実施には専門的な知識・見解が必要となるため、M&A仲介会社などの専門家に依頼しましょう。

突然のスケジュール変更を想定しておく

M&A開始から経営統合までには1年程度かかるのが一般的です。しかし、相手企業の選定や交渉に時間がかかると、思いがけずスケジュールが大きく変わる場合があります。M&Aは相手があるものなので、こちらの思うようにならないことも多いのです。

そのため、思いがけない事態が生じたときのスケジュール変更の想定が必要になります。ただし、予定が大幅に伸びてしまうと、想定していたメリットやシナジー効果が得られなくなるかもしれません。

M&Aの目的を達成することを第一に、どの程度までスケジュール変更が可能か想定しておきましょう。

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9. 中小企業M&Aの成功事例

ここからは、中小企業M&Aの成功事例を紹介します。

住宅リフォーム工事業同士のM&A事例

  • 譲渡企業(売り手):株式会社ヤナ・コーポレーション
  • 譲受企業(買い手):株式会社ニッソウ

住宅リフォーム工事業を行う株式会社ヤナ・コーポレーションと、不動産物件の現状回復工事業を手掛ける株式会社ニッソウとのM&Aをお手伝いさせていただきました。株式会社ヤナ・コーポレーションは親族内承継を考えていましたが、継がない旨の意思確認が取れたため、後継者問題を解決する一つの方法としてM&Aを検討し始めました。一方、株式会社ニッソウはエリア拡大や事業拡大のひとつの手段として前々から検討していました。
ヤナ・コーポレーションは外壁の塗装工事に特化しており、ニッソウは不動産業の修繕に特化しているため、お互いを補い合いながらシナジー効果を生み出すM&Aが成立しました。

住宅リフォーム工事業のM&A事例【埼玉県所沢市】

流通加工業のM&A事例

  • 譲渡企業(売り手):株式会社meteco
  • 譲受企業(買い手):ジョイワーク株式会社

様々な商品の流通加工業を行う株式会社metecoと、運送業を手掛けるジョイワーク株式会社とのM&Aをお手伝いさせていただきました。株式会社metecoはより強い会社を目指していくために、同じ業界あるいは相乗効果が期待できる異業種の会社へ譲渡を考えていました。一方ジョイワーク株式会社は近年で数社のM&Aの実績があり、さらなる事業拡大を目指していました。
流通加工業と運送業の会社が一緒になることで、双方の希望を満たし更なる成長に繋がるとのことでM&Aが成立しました。

流通加工業のM&A事例【愛知県名古屋市】

塗装・印刷業のM&A事例

  • 譲渡企業(売り手):株式会社真永
  • 譲受企業(買い手):東洋ドライルーブ株式会社

塗装・印刷事業を主に手掛ける株式会社真永と、化学工業製品の製造を行う東洋ドライルーブ株式会社とのM&Aをお手伝いさせていただきました。株式会社真永は設備の老朽化やロボット更新など、解決しなければならない問題を抱えており事業拡大を考えていました。一方東洋ドライルーブ株式会社は、規模拡大を考えていました。
"塗装"という同事業の中でも、材種や得意技術、規模もエリアも全てが異なる企業同士が、互いの更なる事業成長の為、1つの同じ道を目指したM&Aが成立しました。

塗装・印刷業のM&A事例【静岡県焼津市】
 

自動車整備業のM&A事例

  • 譲渡企業(売り手):株式会社小川モータース
  • 譲受企業(買い手):株式会社シンユウ

自動車の整備や販売を手掛ける株式会社小川モータースと、自動車に関連するサービスを一貫で行う株式会社シンユウとのM&Aをお手伝いさせていただきました。株式会社小川モータースは少子高齢化の影響で業績が悪化し、このままでは将来が危ないと思い、漠然とM&Aを意識していました。一方、株式会社シンユウは事業拡大の一つの手法としてM&Aを剣としていました。
同エリア内の草分け的な存在である老舗整備工場様の70年の歴史を、同県内の若手社長が後世に繋ぐ、非常に社会的意味のあるM&Aが成立しました。

自動車整備業のM&A事例【徳島県三好市】

給食サービス業のM&A事例

  • 譲渡企業(売り手):株式会社ベスト
  • 譲受企業(買い手):富士産業株式会社


介護施設等の給食受託・介護食の製造販売を主に行う株式会社ベストと、医療や福祉施設を中心に食事サービスの提供から食材の提供までをグループで行う富士産業株式会社とのM&Aをお手伝いさせていただきました。株式会社ベストは事業を起こして37年が経過し、かねてより事業承継については考えていましたが、身内や社内には経営者に手を挙げる者がいないためM&Aを検討し始めました。一方株式会社シンユウは安定的に成長していくためには、特定の地域においてしっかりとした実績を持った同業他社と資本提携することが解決策の一つであると考え、M&Aを行うことを決めました。
終始、お互いの文化や考え方をお互いが尊重し、事業規模は違えどご両社がお持ちの課題を補完できたM&Aが実現されました。

給食サービス業のM&A事例【山形県鶴岡市】

システム開発業のM&A事例

  • 譲渡企業(売り手):株式会社未来ボックス
  • 譲受企業(買い手):株式会社アミューズ


システム開発業の株式会社未来ボックスとアーティストマネジメント業の株式会社アミューズとのM&Aをお手伝いさせていただきました。
株式会社未来ボックスは技術力や開発力については自信があった一方で、営業力や新規受注を獲得する繋がりが弱いと感じていたので、ブランド力が強い企業へ参入したいと考えました。一方、株式会社アミューズは開発案件が増加するに連れてプロジェクトマネジメントする社内人材のリソースが不足していたためM&Aを検討していました。
未来ボックスは保守系だけでなくコンテンツ系のシステム開発も可能な会社であり、アミューズの課題解決に寄与できお互いにシナジーを生み出すM&Aが成立しました。

システム開発業のM&A事例【神奈川県横浜市】

洋菓子のヒロタによるあわ家惣兵衛の買収

和菓子製造を行うあわ家惣兵衛のM&A事例です。2018年6月、あわ家惣兵衛は、21LADY連結子会社の洋菓子のヒロタに全株式を譲渡しました。ヒロタの工場は和菓子製造機も有していることから、M&Aでのシナジー効果によるブランド力強化を図っています。

  • M&A買収側企業:洋菓子のヒロタ
  • 譲渡金額:非公表
  • M&Aの目的:ライフスタイル産業におけるブランド価値の向上

相模屋食料による日本ビーンズの買収

大豆加工食品を扱う専業メーカーの日本ビーンズのM&A事例です。日本ビーンズは、豆腐製造の自動化などにいち早く取り組んできました。

しかし、原材料の高騰や豆腐需要の減少などで経営が少しずつ悪化したことで、相模屋食料に経営再建を目指した豆腐製造事業譲渡の申し入れをしています。その申し入れを受け、2017(平成29)年12月、M&Aが成立しました。

  • M&A買収側企業:相模屋食料(事業は100%子会社の日本ビーンズが譲り受け)
  • 譲渡額:非公表
  • M&Aの目的:経営再建のため(豆腐文化の継承)

ラックランドグループによる大阪エアコンの買収

大型エアコンの設備工事やメンテナンス事業を行う大阪エアコンのM&A事例です。大阪エアコンは代表の若松氏が個人創業してから業績を伸ばしていましたが、業界の中で生き残るために相乗効果を望める会社との合併を希望し、2017年10月にラックランドとのM&Aに至りました。

  • M&A買収側企業:ラックランドグループ
  • 譲渡金額:非公表
  • M&Aの目的:事業シナジーを生み出せるパートナーとのM&Aの実施

スクロールによるキナリの買収

資生堂の子会社キナリのM&A事例です。キナリは自然派化粧品ブランドの草花木果を運営している資生堂の連結子会社でした。既存ブランドを強化する目的で、2017年7月に同業のスクロールへの事業譲渡を決断しています。

  • M&A買収側企業:スクロール
  • 譲渡金額:非公表
  • M&Aの目的:既存ブランドの強化のため

クワザワによる原木屋産業の買収

建設資材の商社である原木屋産業のM&A事例です。原木屋産業は1979(昭和54)年の設立時から着実に実績を積み上げ経営拡大を行ってきましたが、身内に後継者がいない状態でした。

しかし、800社以上の顧客や300社以上の仕入れ先のためにも廃業したくないとの思いから、2016(平成28)年4月にM&Aを決意してクワザワと経営統合しています。

  • M&A買収側企業:クワザワ
  • 譲渡金額:非公表
  • M&Aの目的:後継者問題の解決

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10. 中小企業M&Aの相談先

後継者問題や将来に対する不安など、さまざまな理由で自社の譲渡を考えるときに、頼りになる相談先を紹介します。

①M&A仲介会社

M&A仲介会社は、その名のとおり、売り手と買い手の仲介を行います。どちらかに偏った対応をせず、両社のバランスをとりながら利益の最大化を図ることが特徴です。豊富な知識や経験があり、相手探しから成約まで一気に相談にのってくれます。

なお、アドバイザリー契約の場合は、M&A仲介会社は売り手・買い手のどちらかとのみの契約です。顧客の獲得利益最大化を目指します。

②M&Aマッチングサイト

M&Aマッチングサイトは、インターネット上のシステムを活用して運営する、オンラインでの譲り渡し側と譲り受け側のマッチングの場(M&Aプラットフォーム)です。

一般的には譲り渡し、または譲り受けを希望する事業者が自らインターネット上でM&Aプラットフォームに登録します。登録するとマッチング候補先を探すためのM&Aプラットフォームの閲覧が可能になるのです。簡便かつ低コストでマッチングできる特徴があります。 

M&Aマッチングサイトの主な支援内容は以下のとおりです。

  • マッチングの機会の提供
  • 掲載案件の信頼性(実在性・進捗状況の確認)

③事業承継・引継ぎ支援センター

各都道府県に設置されている事業承継・引継ぎ支援センターは、経済産業省の委託を受けた機関である都道府県商工会議所、県の財団などが運営する公的機関です。

具体的には、中小企業M&Aのマッチングおよびマッチング後の支援、親族承継・社内承継に関する支援に加え、事業承継に関連した幅広い相談対応を行っています。事業承継・引継ぎ支援センターの主な支援内容は以下のとおりです。

  • 初期相談対応(一次対応)
  • 登録機関等によるM&A支援(二次対応)
  • センターによるM&A支援(三次対応)
  • 後継者人材バンク
  • 経営資源の引継ぎ支援

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④金融機関

金融機関は顧客の詳細な財務情報などを保有しており、顧客にとっては身近で経営相談などができる支援機関です。地方においては、特に重要なネットワークを有しています。

金融機関は、M&Aを行う場合、与信業務を含む固有業務に助言を行うだけでなく、マッチング候補先を抽出できるだけの自らの顧客基盤がある点も特徴です。金融機関の主な具体的支援内容は以下のようになります。

  • 気付きの機会の提供、「見える化」「磨き上げ」支援 
  • 中小企業M&A実行支援
  • 中小企業M&A実行以後に関する支援(ポストM&A支援)

⑤商工会議所・商工会

中小企業において最も身近な相談窓口が商工会議所・商工会・中小企業団体中央会・商店街振興組合連合会などといった商工団体です。

商工団体は地域に根差し、地域における商工業の振興の取り組みを行う組織であり、中小企業の公的な支援制度を最も熟知している支援機関だといえます。

商工団体では法務や財務といった技術的な部分よりは、経営に関する一般的な相談を受けることが多く、中小企業の事業の状況や地域における位置づけを確認できる立場です。商工団体の主な支援内容は以下のようなものがあります。

  • 中小企業の課題を認識し事業承継について検討するための機会の提供
  • 具体的な中小企業M&Aの手続き検討のために適切な支援機関へ橋渡しをする

⑥士業専門家

士業専門家は、それぞれに違う職責と専門分野を担っています。それぞれが適切に当該分野に係る職責を果たしつつ、各士業専門家間で必要に応じた連携も期待され、有望な相談先です。以下に代表的な士業専門家を個別に記します。

公認会計士

公認会計士は財務・会計の専門家であるため、財務書類その他財務情報の信頼性の向上や、組織的な社内体制構築への助言や支援、そして身近な相談役としての支援が可能です。公認会計士による主な支援内容は以下のようなものがあります。

  • 公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成される適正な財務書類の作成支援
  • トラブルを事前に防止するためのプレM&A支援
  • バリュエーション(企業価値評価・事業価値評価)の実施 
  • リスク要因把握のための財務デューデリジェンス
  • 債務超過企業に対する弁済計画策定での中小企業M&A支援
  • 中小企業M&A実行以後に円滑な事業を行うための支援(ポストM&A支援)

税理士

税理士は、顧問として中小企業の実情を把握し財務や会計に精通していることから、顧問先に対して経営支援・金融支援という多角的な支援を行える立場です。このような立場の税理士は、中小企業M&Aでも積極的な支援が期待されます。

税理士による主な支援内容は以下のとおりです。

  • 助言義務を行った適正な税務申告書などの作成
  • 中小企業M&Aに伴い円滑に経営者保証解除を実現するための支援
  • 中小企業M&Aで発生する役員慰労退職金などへの課税関係などを踏まえた適切な助言および提案
  • 中小企業等経営強化法における登録免許税・不動産取得税の特例、許認可承継の特例 
  • 潜在的な税務リスクの把握等の税務デューデリジェンス
  • バリュエーション(企業価値評価・事業価値評価) 
  • 日本税理士会連合会が運用しているマッチングサイトなどの活用 
  • 債務超過企業に対する詳細な情報開示による中小企業M&A支援

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中小企業診断士

中小企業診断士は普段から専門的知識を活用して中小企業施策の適切な活用支援を行っています。知識面の支援だけでなく経営者に精神面で寄り添ったサポートをするなど、幅広い活動を行っているものです。

中小企業M&Aでは経営者の疑問や不安も多く、それらを解消するための相談相手になるとともに、企業価値・事業価値の向上、ビジネス(事業)デューデリジェンス、ポストM&A支援などでも積極的な相談が期待されます。 中小企業診断士による主な支援内容は以下のとおりです。

  • 事業承継を検討する気付きの機会の提供
  • 中小企業M&A前後の各種ツール活用による企業価値・事業価値向上への貢献 
  • 譲り渡し側の情報を伝えるための企業概要書の作成などの支援
  • 中小企業M&Aに伴い円滑に経営者保証解除を実現するための支援
  • シナジーの検討などを行うビジネス(事業)デューデリジェンス
  • 債務超過企業に対する債務減免などの中小企業M&A支援を行う

弁護士

弁護士は、法務の専門家です。中小企業M&Aにおいては、全体的な手続き進行(手法の選択、 譲渡スキームの検討・策定など)の整理・収集を行うことがあります。依頼を受けた場合には、法的な課題やトラブルなどへの対応も職務内容です。

このように弁護士は、円滑な中小企業M&Aを支援する立場にあります。弁護士による主な支援内容は以下のとおりです。

  • 株式や事業用資産などの整理・集約を支援する
  • 契約書などの作成と法律的な妥当性を確認する
  • 中小企業M&Aに伴って円滑な経営者保証解除が実現するよう支援する
  • 法務デューデリジェンス
  • 債務超過企業への中小M&A支援

その他の士業専門家

ここまでに挙げた士業専門家以外にも、以下のような士業専門家に相談可能です。

  • 行政上の許認可関係の手続きなどを担当する行政書士
  • 登記関係の手続きなどを担当する司法書士
  • 労働および社会保険関係の手続きなどを担当する社会保険労務士

これらの仕業専門家も他の支援機関と必要な連携のうえ、中小企業M&Aを円滑に実現できるよう、それぞれの業務・職責に応じて適切に支援してくれるでしょう。

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11. 中小企業M&Aの際に仲介会社を選ぶポイント

ここでは、中小企業M&Aを行う際に適した仲介会社を選ぶためのポイントを紹介します。

①該当分野の専門的知識・M&A実績を持っている

M&A仲介会社は、それぞれ得意な専門分野が異なります。たとえば、中小企業のM&Aを専門に扱う仲介会社や、製造業、小売業など特定の事業分野に強みを持つ仲介会社などに分かれているのです。

M&Aの仲介会社選びを失敗しないためには、自社が希望するM&Aと類似した実績が豊富にある仲介会社を選ぶことが大切だといえます。

②自社と同規模の案件実績がある

M&A仲介会社によって、取り扱う案件規模には傾向があります。銀行や証券会社などでは数十億円単位のM&A案件を実施しますが、一般的なM&A仲介会社は数千万から数億円程度の案件や、さらに小型になると数百万から数千万円単位の案件を取扱う会社も存在するものです。

取り扱う規模が異なる仲介会社に依頼してしまうと、希望の相手先をなかなか見つけられない可能性があるため、M&Aを行う際は自社と同規模の案件実績がある仲介会社を選ぶことが重要となります。

③M&Aに関する幅広い知識・経験を持っている

仲介会社によって、M&Aに対する知識の量・得意分野・実績は大きく異なります。一定の分野にだけ強みを持つ仲介会社を選ぶよりも、実績豊富で幅広く知識を有する会社の方が、スムーズにM&A交渉を進められることは明らかです。

仲介会社を選ぶ際には、M&Aに関する幅広い知識・経験を見極めることが重要といえます。

④手数料・相談料・報酬体系がわかりやすい

M&Aには多額の資金が必要となるため、仲介会社を選ぶ際は手数料や相談料など報酬体系がわかりやすいところを選ぶとよいでしょう。

M&A仲介会社に支払う費用には、相談料・着手金・中間金・リテイナーフィー・デューデリジェンス費用・業務実行にかかる費用(実費)・成功報酬などがあります。

ホームページ上に報酬体系を公表している会社もありますが、いずれにしろ相談時には必ず確認し納得できる会社を選ぶことが肝要です。

⑤担当スタッフの対応・相性

実際にM&Aの交渉を進めていくのはスタッフであるため、担当するスタッフの対応や相性も重要となります。相談のしやすさや、信頼が置けるかどうかといった点も考慮したうえで選ぶことが大切です。

担当スタッフとの相性が悪く相談がしづらかったり信用できなかったりするような状況では、M&Aの交渉もスムーズに進みません。M&Aは会社の将来を決める大きな判断であるため、担当スタッフの対応や相性も確認するようにしましょう。

12. 中小企業M&Aに関するおすすめの本3選

現在では、Webサイトや動画などでもM&Aの情報を得られますが、それら以外でも個人や専門家に重宝されている書籍は数多いです。ここでは、中小企業M&Aのバイブルとして重宝されている本を3冊紹介します。

下記で紹介する本は実務家の必携本ですが、どの本も非常に参考になるため、WebサイトだけでなくM&Aの本も読んで勉強したい、多くの事例を知りたいという方は、ぜひ一読してみてください。

①中小企業のM&A実務必携 M&A手法選択の実務

1冊目は、「中小企業のM&A実務必携 M&A手法選択の実務」です。この本は、M&Aで経営戦略を実現するためのツールやM&A脳を鍛えるための情報が掲載された実務本として高い評価を得ています。そのほか、豊富な実例からさまざまなM&Aを学べる1冊です。

②中小企業M&A実務必携 法務編

2冊目は、「中小企業M&A実務必携 法務編」です。この本はM&Aシニアエキスパート養成スクールの講師が解説している本であり、株式譲渡に特化しつつ付随する法務関連の内容が要点整理されています。

内容構成が論点解決形式となっているため実務場面に直結しており、実務担当者からすると非常に役立つ1冊です。

③中小企業M&A実務必携 M&A概論編

3冊目は、「中小企業M&A実務必携 M&A概論編」です。この本は、事業承継に特化した1冊になっています。事業承継M&Aに関する基本知識や応用知識の要点をわかりやすくまとめている1冊です。

事業承継を考える経営者の基礎学習兼実務本として活用できるうえに、M&Aシニアエキスパート養成スクールの骨子も盛り込んであり重宝する1冊となっています。

【関連】M&Aの勉強になる本・書籍おすすめ30選〜初心者にもわかりやすい| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

13. 中小企業M&Aのまとめ

中小企業がM&Aを行う主な目的は、以下のとおりです。
・後継者不在の問題を解決したい
・事業の将来性に不安
・廃業・清算を回避したい
・引退後の生活資金を確保したい
・個人保証を解除したい
・企業を成長させたい

中小企業がM&Aを成功させるためには、経営者がWebサイトや書籍を活用し知識を深めることも必要ですが、知識・実績のあるM&Aの専門家と適切な戦略のもと、交渉を進めることが大切です。

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