事業承継の相続税対策に悩む経営者に!節税対策を徹底解説!

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

事業承継における相続税の対策方法を紹介します。事業承継には高額な相続税がかかることがあり注意が必要です。事業承継税制やその特例措置を利用すれば相続税の負担を軽くできます。ただし手続きが煩雑なのでM&A仲介会社に相談して上手に相続税対策をしましょう。

目次

  1. 相続税の節税対策をして事業承継を成功させよう!
  2. 事業承継における相続税の節税対策7選
  3. 相続時精算課税制度と累進課税制度はどう選ぶべき?
  4. 相続税対策で事業承継税制を活用する利点・注意点
  5. 相続税対策で事業承継税制を活用する際の申請手続き
  6. 相続税対策には事業承継税制の特例も有効!メリットは?
  7. 相続税対策で事業承継税制の特例を活用する前の手続き方法
  8. 事業承継の相続税対策については専門家に相談しよう
  9. まとめ
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1. 相続税の節税対策をして事業承継を成功させよう!

相続税の節税対策をして事業承継を成功させる

事業承継を成功させたいなら、節税対策が非常にポイントとなります。

事業承継の際に生じる大きな懸念材料となるのが、税金問題です。とりわけ相続による事業承継を考えている場合、相続税に頭を悩ませている経営者の方は少なくありません。

事業を引き継ぐ後継者のことを考えて、少しでも支払う税金の金額が少なくなるように対策を講じたいとお考えのことでしょう。

そこで今回は、事業承継シーンで採用されている相続税対策の紹介をしていきます。紹介した中から自社の状況に最適な相続税対策を選んで実践してください。

ちなみに事業承継で相続税はどれくらいかかるのか、疑問に感じている方は少なくないはずです。ここからはまず、事業承継における相続税の計算方法について紹介します。

事業承継で相続税はどれくらいかかる?

ここでは相続税の計算方法を紹介します。事業承継の際の相続税の計算方法は、個人の財産を引き継いだ時の相続税の計算方法と同じです。

つまり引き継がれる財産をすべて時価総額に換算した上で、引き継ぐ人に応じた控除をしながら課税遺産の総額を算出します。そこに税率をかけて相続税の納税額を計算するのです。

相続税の課税価格に応じた税率と控除額を、以下の表にまとめました。
 

課税価格 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

例えば、正味の遺産額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を引いた課税価格が5,000万円のケースでは、税率が20%で控除額が200万円であるため、相続税額は800万円となります。

上記の表を活用して、事業承継による相続税額がどれほどになるか計算してみてください。

以上、事業承継における相続税の概要を紹介しました。ここまで読んで、相続税対策を講じたくなった方も多いはずです。

ここからは事業承継における相続税の節税対策方法をまとめたので確認しておきましょう。

2. 事業承継における相続税の節税対策7選

事業承継における相続税の節税対策7選

事業承継における相続税の節税対策として、以下の7つを紹介します。
 

  1. 株価を引き下げる
  2. 株式を移転させる
  3. 相続時精算課税制度を利用する
  4. 遺産分割を検討する
  5. 不動産投資を行う
  6. 法人保険に加入する
  7. 事業承継税制を活用する

これら7つの方法をあらかじめ理解して、自社に最適な相続税対策を採用してください。それでは、それぞれの相続税対策方法を順番に見ていきましょう。

①株価を引き下げる

事業承継における相続税対策1つ目は、株価を引き下げることです。

会社の時価総額の評価方法の中には、自社株を基に計算する方法があります。そのため自社株の評価額を下げることができれば、相続税を減らすことが可能です。

自社株からの評価額の計算方法は3つありますが、事業承継で重要となる計算方法に類似業種比準方式というものがあります。その計算式から資産額・利益額・配当額を引き下げることで会社の時価総額も下がり、相続税の節税対策となるのです。

ここからは、純資産額・利益額・配当という3つの観点から対策方法を紹介します。

(1)純資産額で株価を引き下げる

はじめに、純資産額で株価を引き下げる方法です。

なお純資産とは会社の資産のことで、内部留保も含まれます。この純資産額が下がることで会社の価値も下がるため、相続税の節税対策を講じることが可能です。

純資産額を引き下げる具体策としては、特別配当や記念配当を実施することで積立金を無くす方法や、退職金の支払いや費用の早期計上によって純資産を圧縮するといった方法が挙げられます。

(2)利益額で株価を引き下げる

次に、利益額で株価を引き下げる方法です。

利益額を下げれば会社の時価総額も下がるため、節税対策となります。具体策としては、定期保険への加入や、減価償却資産の購入により経費支出することで、利益額を圧縮して下げることが可能です。

(3)配当で株価を引き下げる

最後に、配当で株価を引き下げる方法です。

具体的には、配当を引き下げたり配当を中止させることで、類似業種比準価額の計算による会社の時価総額を引き下げることができます。なお純資産引き下げで紹介した、特別配当や記念配当などの一時的な配当は、この計算からは除外されているため注意しましょう。

②株式を移転させる

事業承継における相続税対策2つ目は、株式を移転させることです。

ここでは自社株式の株価を意図的に引き下げてから、後継者に生前贈与する方法を取り上げます。相続時の株式にかかる相続税は時価で計算されるため、意図的に株価を下げてから後継者に移転させることで節税効果が得られるのです。

ただし生前に株式移転を行うと経営者が会社の筆頭株主ではなくなってしまうことに注意しましょう。つまり経営権の安定を保ちながら株式を移転させる工夫が必要となります。

③相続時精算課税制度を利用する

事業承継における相続税対策3つ目は、相続時精算課税制度を利用することです。

相続時精算課税制度は、60歳以上の父母や祖父母から、20歳以上の子や孫に対し財産を贈与した場合において選択できます。累計贈与額が2500万円までの贈与財産に対して非課税にし、相続の際にその分を計算する制度です。

贈与税に関する特例であるため、経営者が亡くなる前に事業承継を行わなければなりません。

なお累計2500万円を超える部分については、通常の贈与税と同じ扱いとなります。そのためすぐに実行できる節税対策としておすすめです。

④遺産分割を検討する

事業承継における相続税対策4つ目は、遺産分割を検討することです。

遺産分割を工夫することで、相続税の節税できることがあります。相続財産を引き受ける後継者が相続税の控除を受けられるかどうかが重要であり、適用できる場合は遺産分割により節税することができます。

例として、小規模宅地の特例について見ておきましょう。小規模宅地の特例とは、被相続人と同居している人が居住用の宅地を相続するときに評価額が80%減らされて相続税が計算されるというものです。

親族内承継で考えて、後継者である子どもは被相続人と同居していなかったが、他のもう一人の子どもが同居していたとします。このケースでは、後継者ではなく同居していた子に相続させることで、親族内全体で考えると相続税の節税になるのです。

ただし節税のための遺産分割を優先させすぎると遺産分割が不公平になってしまうので注意してください。相続後にトラブルが発生することもあるため、節税と遺産分割において公平感を損なわないよう工夫する必要があります。

⑤不動産投資を行う

事業承継における相続税対策5つ目は、不動産投資を行うことです。

不動産投資を行うことでも相続税の節税対策となります。なぜなら土地の相続税評価額は、公示価格の約80%程度で計算される仕組みがあるためです。

たとえば現金1億円を相続した場合、相続税評価額が1億円となり相続税額は2300万円となります。

その一方で、公示価格1億円の土地を相続した場合には相続税評価額が8000万円となりますので、相続税額は1700万円となるのです。つまり1億円の相続例に対しては、600万円の節税をすることができます。

なお所有している土地にアパートやマンションを建築すれば、さらに不動産の相続税評価額を下げることが可能です。ただし賃貸建物の建築は現金化が困難となるため、事業承継の節税対策として賃貸建物を建築することは避けてください。

⑥法人保険に加入する

事業承継における相続税対策6つ目は、法人保険に加入することです。

法人保険によって節税対策をする場合、保険料を支払って損金計上します。そして利益を圧縮することで、自社株の評価額を下げて節税を行うのが効果的です。

この方法は、前述した株価引き下げによる節税対策と同じ原理を利用しています。ただし法人保険の節税対策では、損金と解約金の返戻率に注意すべきです。

つまり法人保険のすべてが、保険料に対して全額損金算入できるわけではありません。そのため節税対策としては、損金に多く算入できる法人保険を選ぶ必要があります。

なお解約金の返戻率についてですが、相続税の節税対策のために法人保険に加入する場合、将来的に現金化して、会社の運転資金として用いることが通例です。しかし解約金の返戻率が低すぎる場合は、手元から減る金額が多くなるため、節税対策にならない場合があります。

この方法で節税対策を行う場合、上記の注意点に気を付けて法人保険に加入してください。

⑦事業承継税制を活用する

事業承継における相続税対策7つ目は、事業承継税制を活用することです。

事業承継税制は、別名「相続税猶予のための税制」とも言われています。会社を引き継ぐ際に一定の条件を満たせば、非上場株式分に対する相続税を猶予してもらうことが可能です。

適用要件があることや手続きが煩雑であることなど、利用するまでに幾つかのハードルがありますが、相続税の負担を大きく減らせるメリットがあるので、利用を検討してみてください。

以上、事業承継における相続税の節税対策を紹介しました。ここまで読めば、事業承継における相続税対策を講じられます。

しかし紹介した相続税対策の中には、あまり聞き馴染みのない制度も登場していたと思います。ここからは相続時精算課税制度の利用について詳しくまとめたので確認しておきましょう。

3. 相続時精算課税制度と累進課税制度はどう選ぶべき?

相続時精算課税制度と累進課税制度の選び方

前述した相続税対策の1つである相続時精算課税制度の利用におけるポイントを解説します。

相続時精算課税制度とは、生前贈与を受けたときに贈与税を納めずに、相続のタイミングで相続税として納めるという制度です。贈与税に関する特例であるため、経営者が亡くなる前に事業承継を行わなければなりません。

相続時精算課税制度では2,500万円までの贈与が非課税となるほか、相続の際に収める相続税合計額が基礎控除3,000万円+600万円✕法定相続人数)の範囲に収まっている部分も非課税となります。

なお贈与が2,500万円を超えた部分に関しては、一律に20%の税金が課されることを押さえておきましょう。また相続税についても基礎控除を超えた部分に関しては、相続税の累進課税制度が適用されます。

まとめると、贈与税の非課税範囲や相続税の基礎控除に収まるようなケースでは、相続税精算課税制度の利用を検討すると良いでしょう。それを超える大規模の相続による事業承継であるなら、事業承継税制を活用するのが得策です。

以上、相続時精算課税制度の利用について解説しました。ここまで読んで、採用したい制度が絞られてきた方もいるかもしれません。

なお事業承継税制は相続税の対策上様々なメリットがある制度です。ここからは相続税対策で事業承継税制を活用する利点と注意点をまとめたので確認しておきましょう。

4. 相続税対策で事業承継税制を活用する利点・注意点

事業承継税制を活用する利点・注意点

事業承継対策において、事業承継税制を活用するメリットは大きいです。ただし事業承継税制を活用する際には注意点もあり、知っておかないと不利益を被るおそれもあります。

ここからは事業承継税制の利点と注意点をまとめたので、順番に確認しておきましょう。

事業承継税制の利点

相続税対策で事業承継税制を活用する利点は以下の2つです。
 

  1. 相続税の負担を軽減できる
  2. 相続税対策について考える手間を省ける

これら2つの利点を押さえて、自社のケースにおいてどれほどの利点となるのか確認してください。それでは、それぞれの利点を順番に見ていきましょう。

(1)相続税の負担を軽減できる

事業承継税制の1つ目の利点は、相続税の負担を軽減できることです。

これは、事業承継税制が持つ本来の目的とされています。会社の経営を続けるためには資金が必要となりますが、莫大な相続税を支払うと会社を経営できなくなるおそれがあるのです。

事業承継税制で納税猶予となるのは非上場株式に対する税金分だけですが、相続税の負担が軽減させられる大きなメリットを持っています。

(2)相続税対策について考える手間を省ける

事業承継税制の2つ目の利点は、相続税対策について考える手間を省けることです。

前述したように、相続税対策には株式だけでなく不動産や法人保険なども挙げられますが、相続税対策はまとめて行うことができず、財産の一つ一つについて対策をそれぞれ講じていく必要があります。

その代わりに事業承継税制を利用すれば、財産のうちの非上場株式について対策を考える必要がありません。つまり先ほど紹介した相続税対策のうち、株価引き下げと株式移転については考える必要がなくなります。

これだけでも相続で事業承継を行う側としては、とても大きなメリットになるはずです。

事業承継税制の注意点

相続税対策で事業承継税制を活用する際の注意点は、以下の3つです。
 

  1. 手続きに多くの時間と手間がかかる
  2. 認定取消で猶予額と利子額を納付しなければならない
  3. 最低でも5年間は事業を継続させなければならない

これら3つの注意点をあらかじめ押さえて、事業承継時のトラブルを回避してください。それでは、それぞれの注意点を順番に見ていきましょう。

(1)手続きに多くの時間と手間がかかる

事業承継税制を活用する際の1つ目の注意点は、手続きに多くの時間がかかることです。

事業承継税制の認定を受けるためには、様々な適用要件をクリアしなければならないことに加え、多くの書類を作成・提出することが求められています。

そのため要件の確認や書類の提出などに、多くの時間と手間を割かなければなりません。スムーズに手続きを済ませるためには、M&A仲介会社や税理士などの専門家に相談することが得策です。
 

(2)認定取消で猶予額と利子額を納付しなければならない

事業承継税制を活用する際の2つ目の注意点は、認定を取り消されると猶予額に利子額を加えて納付しなければならないことです。

利子税とは、納税できずに支払いまでの期間を延期してもらった際、さらに払う必要のある税金を指します。事業承継税制を利用することで相続税の支払い期間を延期してもらうため、認定取消されるとその分の利子税を支払わなければなりません。

このように事業承継税制を打ち切られると、納税の負担はむしろ大きくなってしまうことに注意してください。

(3)最低でも5年間は事業を継続させなければならない

事業承継税制を活用する際の3つ目の注意点は、最低でも5年間は事業を継続させなければならないことです。

もしも5年以内に会社を倒産させてしまうと、認定が取り消されてしまいます。

しかしもともと事業が軌道に乗っていなかったり、経営状況が悪かったりすると、納税猶予を受けてもその後事業を継続できるか不透明です。納税猶予は要件を満たす限り継続できますが、一生猶予を受けるのは大変でどこかの時点で支払うこととなります。

そのため事業承継税制を利用する前には、あらかじめ相続税がどのくらいかかるか把握しておかなければなりません。税金がどれくらいかかるか把握した上で、事業承継税制を利用するかどうかを先代経営者と後継者でしっかり話し合いましょう。

以上、相続税対策で事業承継税制を活用する利点・注意点を紹介しました。ここまで読めば、それぞれを比較した上で相続税対策の一環として事業承継税制の活用を検討できます。

そこで次に「事業承継税制はどのように手続きすれば良いの?」と疑問に思う方も多いはずです。ここからは相続税対策で事業承継税制を活用する際の申請手続きをまとめたので確認しておきましょう。

5. 相続税対策で事業承継税制を活用する際の申請手続き

事業承継税制を活用する際の申請手続き

相続税対策で事業承継税制を活用するためには、以下の6つの手続きを取らなければなりません。
 

  1. 適用要件に当てはまるか確認する
  2. 経営承継円滑化法による認定申請をする
  3. 税務署へ申告する
  4. 年次報告書を提出する
  5. 継続届出書を提出する
  6. 実績報告書を提出する

これら6つの手続きを事前に押さえて、事業承継税制の手続きをスムーズに済ませてください。それでは、それぞれの手続きを順番に見ていきましょう。

①適用要件に当てはまるか確認する

相続税対策で事業承継税制を活用したいなら、はじめに適用要件に当てはまるか確認しましょう。

事業承継税制の適用要件は、大きく以下の4つに分かれています。
 

  1. 会社に関する要件
  2. 先代経営者に関する要件
  3. 後継者に関する要件
  4. 担保に関する要件

これら4つの適用要件を事前に理解することで、事業承継税制をスムーズに申請して相続税対策を済ませてください。それでは、それぞれの適用要件を順番に見ていきましょう。

(1)会社に関する要件

事業承継税制を利用できる会社の主な条件は、次の4つです。
 

  • 中小企業であること
  • 総収入金額が0を超えていること
  • 上場企業、風俗営業会社に該当しないこと
  • 資産保有型会社等ではないこと

なお中小企業であることに関しては、法人と個人とで基準が異なります。

法人の場合の中小企業は、以下の表にて資本金または従業員数が該当する会社です。個人の場合、資本金は関係なく従業員数だけで判断します。
 
業種目 資本金 従業員数
製造業 3億円以下 300人以下
ゴム製品製造業 3億円以下 900人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
ソフトウェア業または情報処理サービス 3億円以下 300人以下
旅館業 5,000万円以下 200人以下

会社の条件だけで言えば、たとえば製造業で資本金が4億円で従業員数が200人の場合、法人版事業承継税制を利用できます。サービス業で従業員数が50人なら、法人版でも個人版でも利用可能です。

会社の条件がどちらでも当てはまる場合は、承継する対象が株式なら法人版を、特定事業用資産なら個人版を選びましょう。ただし医療法人・社会福祉法人・外国会社・士業法人は、事業承継税制の対象となる中小企業に該当しません。

(2)先代経営者に関する要件

相続税対策で事業承継税制を利用する場合、先代経営者が満たさなければならない要件は以下の3つです。
 

  • 会社の代表権を有していたこと
  • 相続開始直前、議決権数の50%以上を有していたこと
  • 後継者を除き最も多くの議決権数を有していたこと

事業承継税制の認定を初めて受ける場合、以上の要件をすべて満たす必要があります。しかし相続前にすでに事業承継税制の適用を受けている時は、要件を満たしていなくても問題ありません。

なお個人の場合、先代経営者である被相続人は、以下の要件を満たしてください。
 
  • 青色申告書を提出していたこと
  • 承継する事業が資産管理型事業でないこと
  • 承継する事業が性風俗関連営業でないこと
  • 承継する事業の売上がゼロでないこと

これら4つの要件を最低限満たしていることが、事業承継税制の適用を受けるために必要不可欠です。

(3)後継者に関する要件

相続税対策で事業承継税制を活用する場合、後継者は以下の要件を満たさなければなりません。
 

  • 相続開始の翌日から5カ月以内に会社の代表権を有すること
  • 相続開始時、後継者およびその親族などを合わせ総議決権数の50%超を有すること
  • 後継者とその親族などの中で後継者が最も多くの議決権数を有していること(後継者が1人の場合)
  • 総議決権数の10%以上を有し、後継者の親族などを合わせ最も多くの議決権数を有していること(後継者は2人または3人の場合
  • 相続開始直前に会社の役員であること(被相続人が60歳未満で死亡した場合を除く)

後継者が以上の要件を満たしていれば、相続税対策の一環として事業承継税制が利用できます。

なお個人の場合、後継者である相続人は、以下の要件を満たしてください。
 
  • 相続により承継する事業の特定事業用資産のすべてを取得していること
  • 相続するとき、承継する事業かそれと同種の事業に従事していること
  • 相続開始の日の翌日から5か月を経過する日まで、特定事業用資産のすべてを保有し、自己の事業の用に供していること
  • 性風俗関連の事業でないこと
  • 所得税法上の開業の届出書を提出していること
  • 青色申告の承認を受けていること
  • 個人事業承継計画の確認を受けていること 

これら7つの要件を最低限満たしていることが、事業承継税制の適用を受けるために必要不可欠です。

(4)担保に関する要件

事業承継税制の適用を受けるためには、猶予される税金額に見合った担保を用意する必要があります。

担保として有効なのは不動産・国際・地方債・有価証券・支払い能力のある保証人などです。もしもこれらの担保を用意できない場合、先代経営者などから引き継いだ非上場株式を担保として提供しなければなりません。

事業承継税制は便利な制度ですが、会社の資産が少ない場合は引き継いだ株式全てが担保になる可能性を事前に意識しておいてください。

②経営承継円滑化法による認定申請をする

相続税対策で事業承継税制を活用する場合、2つ目に経営承継円滑化法による認定申請をしましょう。

事業承継税制を利用するための経営承継円滑化法の認定申請は、相続税の場合は相続発生後5ヶ月を経過する日の翌日から8ヶ月を経過する日までに申請しなければなりません。最新の様式は中小企業庁のホームページからダウンロード可能です。

法人の場合、申請書以外に以下のような書類も必要となります。適宜必要な書類を用意してください。
 

  • 定款の写し
  • 株主名簿
  • 登記事項証明書
  • 遺言書または遺産分割協議書の写し
  • 相続区税額の子見込み額を記載した書類
  • 従業員数証明書
  • 決算書類
  • 各誓約書
  • 戸籍謄本

なお個人であれば、提出が必要な書類は以下の2つです。
 
  • 先代経営者の前年の青色申告書
  • 賃借対照表および損益決算書その他の明細書の写し

ケースに応じて書類を準備しましょう。

③税務署へ申告する

相続税対策で事業承継税制を活用する場合、3つ目に経営承継円滑化法による認定申請をしましょう。

経営承継円滑化法による認定申請が通れば認定書を取得できるので、認定書の写しとともに相続税の申告書を税務署に提出しましょう。

相続の場合、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告してください。なお申告時に納税猶予税額および利子税の額に見合う担保を、税務署に提供する必要があります。

④年次報告書を提出する

相続税対策で事業承継税制を活用する場合、4つ目に年次報告書を提出しましょう。

法人版事業承継税制の場合、1年に1回、年次報告書を都道府県へ提出する必要があります。なお個人版事業承継税制の場合は提出しません。

年次報告書の提出は認定を受けて5年間です。継続要件を維持していることを記載します。

継続要件とは、以下の内容のことです。
 

  • 後継者が会社の代表者であること
  • 雇⽤の8割以上を5年間平均で維持すること(一般措置の場合)
  • 後継者が同族内で筆頭株主であること
  • 上場会社、⾵俗営業会社に該当しないこと
  • 猶予対象となった株式を継続保有していること
  • 資産保有型会社等に該当しないこと

継続要件を満たさない場合は認定を取り消され、納税猶予されている税金の全額または一部を納税しなければなりません。

⑤継続届出書を提出する

相続税対策で事業承継税制を活用する場合、5つ目に継続届出書を提出しましょう。

事業承継税制を利用している間は、税務署へ継続届出書を提出する必要があります。継続届出書を提出することで、引き続き納税猶予の特例を受けたい旨の届け出です。

提出しなければ納税猶予が継続されないため、必ず提出しなければなりません。法人版、個人版どちらも必要です。

法人の場合、認定後5年間は1年に1回提出して、6年目以降は3年に1回の提出です。個人の場合、初めから3年に1回提出します。

⑥実績報告書を提出する

相続税対策で事業承継税制を活用する場合、6つ目に継続届出書を提出しましょう。

法人版の特例措置を利用していて、認定5年経過後に雇用が5年平均8割を下回った場合には、実績報告書を都道府県に提出する必要があります。

実績報告書は、雇用が8割を下回った理由を記載し、認定支援機関の所見とともに提出しなければなりません。なお特例措置では雇用が8割を下回っても認定は取り消されませんが、認定支援機関から指導や助言を受ける必要があります。

なお認定支援機関とは、国が認定した中小企業が安心して経営相談を行える専門家のことです。具体的には、商工会議所・金融機関・税理士・公認会計士・弁護士などが認定支援機関とされています。

各都道府県に複数認定支援機関があるため、中小企業庁のホームページにある「経営革新等支援機関認定一覧について」から近くの認定支援機関を探しましょう。

以上、相続税対策で事業承継税制を活用する際の手続きを紹介しました。ここまで読めば、事業承継税制の手続きをスムーズに済ませられます。

ちなみに相続税対策には、事業承継税制の特例を活用するのも有効です。ここからは事業承継税制の特例が持つメリットをまとめたので確認しておきましょう。

6. 相続税対策には事業承継税制の特例も有効!メリットは?

事業承継税制の特例

相続税対策には従来の事業承継税制だけではなく、その特例の活用も有効です。

事業承継税制の特例とは、平成30年度(2019年)から期間限定で置かれた、従来の制度よりも事業承継を手厚く支援する制度を指します。

従来の事業承継制度(一般)と特例との違いは、以下の表をご覧ください。
 

  一般措置 特例措置
事前の事業承継計画提出 なし あり
制度利用制限 なし 2027年末まで
猶予・免除対象株数 総株式の3分の2まで 全株式
相続税の納税猶予割合 80% 100%
後継者の人数 1人 最大3人
事業承継後5年間の雇用維持割合 8割 なし

特例措置では一般措置よりも適用要件が緩和されたほか、相続税の100%が納税猶予を受けられるといったメリットもあるので、一般措置と特例措置のどちらも選べるなら特例措置を選んでください。

以上、事業承継税制の特例を活用するメリットを紹介しました。ここまで読んで、事業承継税制の特例に興味が湧いた方も多いはずです。

なお事業承継税制の特例を活用する場合、申請前に行わなければならない手続きがあります。ここからは事業承継税制の特例を申請する前に必要な手続きをまとめたので確認しておきましょう。

7. 相続税対策で事業承継税制の特例を活用する前の手続き方法

事業承継税制の特例を活用する前の手続き方法

相続税対策で事業承継税制の特例を活用する場合、事前に必要な手続きは以下の3つです。
 

  1. 特例承継計画を提出する
  2. 認定支援機関の確認を申請する
  3. 相続を行う

これら3つの手続きを済ませてから、従来どおり事業承継税制の手続きを行ってください。それでは、それぞれの手続を順番に見ていきましょう。

①特例承継計画を提出する

まず、特例承継計画を策定し、都道府県に提出します。

この事前計画には、会社・後継者・事業承継した後の経営計画などを記載してください。特例承継計画は、2018年4月1日から2023年3月31日までに提出しなければなりません。

なお事前計画は、認定申請と同時に提出することも可能です。ただし事前計画提出には、次に紹介する認定支援機関の確認書を添付する必要があります。

②認定支援機関の確認を申請する

次に、認定支援機関の確認を受けるための申請をします。

ここで得られる確認書は、事前計画に添付しなければならないもので、認定経営革新等支援機関(以下、認定支援機関)が計画を確認して指導および助言を受けたことを示しているのです。

③相続を行う

最後に、実際に相続を行います。

特例措置の場合、2018年1月1日以降の相続が対象です。

ただし事前計画の提出期限は、各制度の創設から5年以内になります。そのため計画提出期限前に、相続を行えなくても問題ありません。

もしも実際の相続が先に行われているならば、事前に特例承継計画は提出しておき、その後で計画に沿って制度適用期限内の相続を実施してください。

以上、相続税対策で事業承継税制の特例を活用する前に必要な手続きを紹介しました。ここまでの手続きが済んだら、事業承継税制の従来どおりの手続きに進んでください。

ここまで見たように、事業承継の相続税対策を講じる手続きは複雑なため、多くの手間と時間がかかるほか、しっかり手続きできるのか不安になる方も多いはずです。最後に事業承継の相続税対策を相談できるおすすめの専門家を紹介するので、確認しておきましょう。

8. 事業承継の相続税対策については専門家に相談しよう

事業承継の相続税対策は専門家に相談

事業承継の相続税対策を十分に講じるためには、法務・税務・会計に関する深い専門知識が必要です。とりわけ自社に最適な節税対策を検討するためには、経営知識を持つ専門家が不可欠でしょう。

なお事業承継税制には税務リスクやデメリットもあるため、事業承継について考えるときは様々な観点から会社にとってベストな方法を選ばなくてはなりません。

おすすめなのが、事業承継全般について知識と経験を持つ専門家への相談です。相談先としては税理士事務所などがありますが、税理士と提携しているM&A仲介会社なら会社の事情に合わせた承継プランを提案してくれます。

さらにM&A仲介会社は事業承継の専門家として経営に関する様々な観点からアドバイスを行うので、今後の経営に迷っている方も安心です。

「どういった方法で事業承継の相続税対策をすればよいか分からない」「事業承継税制の利用を含め様々な手段で相続税対策を検討したい」などの悩みは、事業承継のプロフェッショナルであるM&A仲介会社に任せましょう。

M&A仲介会社は数多くありますが、「M&A総合研究所」にぜひお任せください。M&A総合研究所は相談料、着手金無料の完全成功報酬制なので、M&Aにかかる予算をなるべく抑えたい方でも気軽にご相談いただけます。

また経験豊富な公認会計士や税理士が事業承継のサポートをするので、税務に関する手続きの専門性は非常に高いと言えるでしょう。事業承継に興味をお持ちの個人事業主の方は、一度M&A総合研究所のサイトでこれまでの実績をチェックしてみてください。

9. まとめ

まとめ

今回は、事業承継における相続税対策の方法を紹介しました。

事業承継を行う際には、高額な相続税がかかることがあるので気をつけなければなりません。事業承継税制やその特例措置を利用すれば相続税の負担を軽くできるメリットがあります。

ただし相続税対策の手続きは煩雑で手間と時間がかかるため、専門家であるM&A仲介会社に相談し、不安や疑問を解消しつつ上手に相続税対策をしましょう。

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