事業承継税制とは?相続税・贈与税の納税猶予(特例)を徹底解説【中小企業庁データ参照】

企業情報第二部 部長
向井 崇

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。

事業承継税制とは、相続税・贈与税の納税猶予が受けられる中小企業庁の特例制度です。相続税・贈与税の納税猶予は大きいため、事前に特例制度の内容をよく把握することが大切です。本記事では、中小企業庁の事業承継税制について徹底解説します。

目次

  1. 事業承継税制とは?
  2. 事業承継税制の仕組みと計算方法
  3. 事業承継税制の納税猶予(特例)を受けるための要件は?
  4. 事業承継税制の納税猶予(特例)手続きの流れは?
  5. 事業承継税制の納税猶予(特例)を受けるべき?
  6. 事業承継税制を利用する際の注意点
  7. 事業承継税制の最新情報
  8. 事業承継税制(特例)適用の相談ならM&A総合研究所
  9. 事業承継税制のまとめ
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1. 事業承継税制とは?

事業承継税制とは、後継者が非上場の株式会社を先代経営者から取得したときに使える納税を猶予する制度です。納税猶予の特例と呼ばれることもあります。

取得の方法は、贈与でも相続でもかまいません。「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)によって都道府県知事の認定を受ければ、贈与税や相続税の納税が猶予されます。

事業承継税制とは中小企業の事業承継を支援する制度です。事業承継には、多額の贈与税や相続税がかかることも多いので押さえておきましょう。

事業承継税制の納税猶予制度を利用すると、費用を抑えて事業承継が行えます。ただし、事業承継税制の納税猶予制度は、頻繁に改正されているので最新の情報をチェックすることが大切です。

最新の情報は中小企業庁や国税庁のホームページで確認できますが、「ひとまず主要な情報を知っておきたい」といった人も多いです。そこで、ここからは事業承継税制における納税猶予制度の定義や、平成30年の改正点を見ていきましょう。

事業承継とは【参考】

経営者が後継者へ事業を引き継ぐことを事業承継といい、「親族内事業承継」「社内事業承継」「M&Aによる事業承継」が主な事業承継です。

ほとんどの中小企業では、経営者が株主を兼ねているので、事業承継の際は経営権だけでなく自社株式を後継者へ引き継ぐことが少なくありません。社内事業承継やM&Aによる事業承継では、一般的に自社株式を売却します。

親族内事業承継では、生前贈与や相続で自社株式を引き継ぐことが多いです。経営が順調であれば、自社株式の評価額が高額になり、多くの贈与税や相続税がかかる点に留意しましょう。

中小企業庁による事業承継の定義・平成30年の改正点

平成30年度の改正では、これまでの措置とは別に、大幅に使いやすくなった10年間限定での特例措置が設けられています

使いやすくなったのは、猶予金額が増えて対象者が広がった点です。具体的には、納税猶予される対象となる株式数に上限がなくなり、対象後継者数の上限も1人から3人までになりました。

この特例措置は、2027年12月31日までです。特例措置を使うことで、得に事業承継ができます。

事業承継税制の目的

事業承継税制は、事業承継の大きな支障となっていた株式の承継に伴う後継者の相続税・贈与税における負担を減らすことを目的としています。中小企業における事業承継を、円滑に進めるためのものです。

日本の企業は、ほぼ中小企業・小規模事業者で占められています。中小企業庁によると、その割合は国内における企業数の99%程度、雇用の7割です。

主に日本経済を支えているのは中小企業となります。政府は中小企業が事業承継できずに日本経済が衰退していくのをマイナスと捉え、解決する目的として事業承継税制を行っています。

参照:中小企業庁「中小企業白書 小規模企業白書 2020年版」

事業承継税制が利用できる対象

事業承継税制が利用できる対象は、申告期限までに都道府県知事の認定を受けなければなりません。そのためには、以下における要件のいずれにも該当しないことが必要です。

  • 上場企業であること
  • 中小企業者に該当しない会社であること
  • 風俗営業会社であること
  • 資産管理会社であること
  • 総収入金額が0円の会社・従業員数が0の会社であること

ここで、わかりにくい中小企業者の定義と資産管理会社の定義について、詳しく見てみましょう。

中小企業とは?

事業承継税制の利用対象である「中小企業者」は、中小企業基本法において以下に規定されています。
 

               資本金の額・出資の総額 常時使用する従業員 
①製造業・建設業・運輸業
その他の業種(②〜④を除く)
3億円以下 300人以下     
②卸売業 1億円以下 100人以下
③サービス業 5,000万円以下        100人以下
④小売業 5,000万円以下 50人以下







 

資本金・出資の総額または常時使用する従業員のいずれかにおける要件を満たす必要があります。

参照:国税庁「平成30年度改正関係(法人版事業承継税制抜粋)」

資産管理会社とは?

資産管理会社とは、以下の条件に当てはまるものです。

  • 特定の資産における保有割合が帳簿価額の総額70%以上の会社
  • 特定の資産からの運用収入が総収入額の75%以上における会社

特定の資産とは、有価証券、自社で使用していない不動産、現預金などのことです。自社の資産状況について確認し、不安があれば早めに専門家へ相談しましょう。

事業承継税制の適用期間

平成30年度の改正によって10年間の適用期限付きの特別措置が創設されました。したがって、2018年1月1日〜2027年12月31日の相続・贈与が対象となります。

以下は、特別措置と従来の一般措置とを比較したものです。
 

  特別措置 一般措置
事前の計画策定 5年以内に特例承継計画を提出 不要
適用期限 10年以内における贈与や相続など
2018年1月1日〜2027年12月31日   
なし
対象株数 全株式 総株式数における最大3分の2まで
納税猶予割合 100% 贈与:100%
相続:80%
承継パターン 複数の株主から後継者最大3人まで 複数の株主から後継者1人まで
雇用確保要件 8割でも報告すれば可能 承継後5年間、平均8割の雇用維持必須
経営環境変化による免除 あり なし
相続時精算課税の適用 60歳以上の者から20歳以上の者への贈与 60歳以上の者から推定相続人や孫(20歳以上)への贈与

特別措置の方が利用しやすいので、適用期間内に事業承継ができるなら行うべきです。

参照:国税庁「平成30年度改正関係(法人版事業承継税制抜粋)」

2. 事業承継税制の仕組みと計算方法

事業承継税制は平成30年改正により、一般措置と特例措置の二本立てとなりました。2027年12月末までに行われる贈与・相続については、特例措置の適用を受けることが可能です。

特例措置なら100%の納税猶予が受けられます。しかし、相続税・贈与税それぞれの場合における納税額の計算方法がわからない人も多いでしょう。ここで具体例を交えて紹介します。

相続税の場合

被相続人から相続などで財産を得たときにかかる税金が相続税で、相続人が払います。相続税を算出するだいたいの流れは下記です。

  • 課税価格におけるトータルを算出して基礎控除を差し引き課税遺産総額を算出
  • 課税遺産総額を法定相続分により各相続人が得たとし、各人の相続税額を算出
  • 各人の相続税を合わせて得た財産の課税価格により税額を割り振る
  • 加算や税額控除を適用し各人の納税額を算出

法定相続分に応じた財産の取得金額による税率と控除額は下記になります。
 

取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円
<参照-国税庁 相続税の税率>

計算方法を紹介するにあたり、今回は以下の条件で計算しましょう。

  • 被相続人の財産:自社株式3億円+現金9億円=合計12億円
  • 相続人:子供ABCの3人
  • 後継者A:6億円を相続(自社株3億円+現金3億円)
  • B、C(後継者でない):それぞれ3億円を相続

このとき、後継者Aが承継する自社株について相続税の納税猶予特例を適用する場合を考えます。

①通常どおり相続税を計算する

まず、課税価格の合計(12億円)に基づいて計算を行い、相続税の総額を求めます。

1,200,000千円×37.5%(税率)=450,000千円

このうち、後継者であるAの相続税額を計算したものが以下のとおりです。

450,000千円×6/12(Aの相続割合)=225,000千円 

②事業承継株式のみと仮定した場合の計算をする

次に、後継者の相続財産について、事業承継株式のみと仮定した場合の相続税総額を計算します。

900,000千円×33.6%(税率)=302,400千円

このうち、後継者であるAの相続税額を計算すると以下のとおりです。

302,400千円×1/3(Aの相続割合)=100,800千円

これが納税猶予額となります。

③納税額を計算する

後継者Aについて、相続税の総額から納税猶予額を差し引いたものが、実際に納税を行う額です。

225,000千円-100,800千円=124,200千円

上記のとおり、通常の相続税を計算する①は、全ての財産を含めて計算をします。しかし、②では財産の一部で計算をするため低い税率で計算されます。したがって、納税猶予額が予想よりも低い金額になる可能性がある点に注意しましょう。

贈与税の場合

個人から財産を贈与された場合にかかるのが贈与税で、贈与された人が払います。1月1日から12月31日までに受け取った財産のトータルから、110万円(基礎控除)を引いた金額をもとに算出します。

贈与税率と控除額は下記のとおりです。
 

取得金額 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円
<参照-国税庁 贈与税の計算と税率(暦年課税)>
 

計算方法を紹介するにあたり、今回は以下の条件で計算しましょう。

  • 贈与者(親)の財産:自社株3億円+現金9億円=合計12億円
  • 受贈者:後継者である子供A

後継者Aが自社株3億円に贈与税の納税猶予特例を適用する場合を見ます。贈与税において納税猶予額の計算を行うときは、2パターンあるので注意が必要です。
 

  • 暦年贈与を採用する場合
  • 相続時精算課税制度を採用する場合

それぞれのパターンについて順番に見ていきましょう。

暦年贈与により贈与税を計算する

まず、課税価格の合計である12億円に基づいて計算を行った贈与税の総額を求めます。

(1,200,000千円-1,100千円)×55%-6,400千円=652,995千円(特例税率)

事業承継株式のみと仮定した場合の計算をする

次に、後継者の贈与財産について、事業承継株式のみと仮定した場合の贈与税総額を計算すると以下のとおりです。

(300,000千円-1,100千円)×55%-6,400千円=157,995千円(特例税率)

これが納税猶予額となります。

納税額を計算する

後継者Aについて、贈与税の総額から納税猶予額を差し引いたものが、実際に納税を行う額になります。

652,995千円-157,995千円=495,000千円

したがって、納税するのは495,000千円です。

相続時精算課税制度により贈与税を計算する

まず、課税価格の合計である12億円に基づいて計算を行った贈与税の総額を求めます。

(1,200,000千円-25,000千円)×20%=235,000千円

事業承継株式のみと仮定した場合の計算をする

次に、後継者の相続財産について、事業承継株式のみと仮定した場合の贈与税総額を計算すると、以下のとおりです。

(300,000千円-25,000千円)×20%=55,000千円

これが納税猶予額となります。

納税額を計算する

後継者Aについて、贈与税の総額から納税猶予額を差し引いたものが、実際に納税を行う額になります。

235,000千円-55,000千円=180,000千円

上記2つの場合を比較すると、贈与税の納税猶予額は相続時精算課税制度を採用した方が安くなりました。ところが、相続時精算課税制度は、最終的には相続財産として持ち戻されて相続税がかかってしまいます。そのため、節税としてはあまり効果がないこともあるのです。

ただし、「納税猶予制度」と「相続時精算課税制度」をセットで適用する場合は、将来的に納税猶予が中止になった時点での納税猶予額が少なくなるメリットがあります。どちらが節税になるかはケースによって異なるので、税理士などの専門家に相談するのがベストです。

3. 事業承継税制の納税猶予(特例)を受けるための要件は?

事業承継税制の納税猶予制度を利用するためには、以下における一定の要件を満たす必要があります。誰でも使える制度ではないため、必ず確認しましょう。

  1. 申告期限までに認定を受けること
  2. 人の要件を満たすこと
  3. 会社の要件を満たすこと
  4. 担保提供の要件を満たすこと
  5. 5年間の経営継続の要件を満たすこと
  6. 次世代承継の要件を満たすこと

場合によっては免除まで手続きを進められるケースもあるので、説明します。

①申告期限までに認定を受けること

申告期限までに認定を受けるのが、1つ目の要件です。相続税の場合と贈与税の場合で見ましょう。

相続税の場合

相続税における納税猶予の適用を受けるためには、経済産業大臣認定を受ける必要があります。認定の申請には期限があり、被相続人の相続開始日における翌日から8カ月を経過する日までです。各地域の経済産業局に対して申請を行いましょう。

経済産業大臣認定を取得したら、相続税の申告期限までに特例を受ける旨を記載した相続税の申告書に、経済産業大臣から交付された認定書の写しなどを添付して提出します。

贈与税の場合

贈与税における納税猶予の適用を受けるためにも、経済産業大臣認定を受ける必要があります。認定には期限があり、原則として非上場株式の贈与があった年の翌年1月15日までです。各地域の経済産業局に対して申請を行いましょう。

経済産業大臣認定を取得したら、贈与税の申告期限までに特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に、経済産業大臣から交付された認定書の写しなどを添付して提出します。

②人の要件を満たすこと

人の要件には、以下の2種類があります。

  • 経営者側の要件(贈与者・被相続人)
  • 後継者側の要件(受贈者・相続人)

それぞれの要件について詳しく見ましょう。

経営者側の要件

事業承継税制を利用するには、経営者側が要件を満たさなければなりません。経営者とは先代経営者に限らず、他の同族関係者・第三者でも良いです。つまり、過去に代表権を有したことがない人からでも認められます。具体的な要件は、以下です。
 

先代経営者の場合 ・過去に代表権あり
(贈与時・相続時は代表権なし)
・筆頭株主
(かつ総議決権の50%超保有)
先代経営者以外の場合 ・個人かつ、贈与・相続時に代表権を有していない
・先代経営者の贈与実行(or事業承継)後、5年以内の贈与

次に、後継者側の要件を見ましょう。

後継者側の要件

後継者は、最大で3人(議決権数上位3名)まで可能です。

  • 20歳以上
  • 代表権を保有
  • 3年以上は役員の経験をしている
  • 贈与・相続後に筆頭株主である
  • 総議決権の50%超を獲得している
  • 贈与税・相続税における申告書の提出期限まで対象株式の全部を保有している

全ての条件に当てはまる必要があるため、必ず確認しましょう。

③会社の要件を満たすこと

会社の要件は以下のとおりです。

  • 非上場企業である
  • 都道府県知事の認定を受けている中小企業である
  • 従業員数1人以上で構成されている
  • 風俗営業会社・資産管理会社ではない
  • 売上がゼロ超と収益が認められている

中小企業者については、資本金または従業員数のいずれかにおける基準を満たす必要があります。風俗営業会社や資産管理会社の業種では制度の利用が認められません。それぞれの基準について見ましょう。

資本金基準

業種ごとに基準が異なっているので、注意しましょう。
 

資本金基準
製造業 3億円以下
卸売業 1億円以下
小売業 5,000万円以下
サービス業 5,000万円以下
<参照-中小企業庁「中小企業」の範囲

これらの資本金額に当てはまるかどうかを確認しましょう。

従業員基準

従業員数についても資本金同様に業種ごとに基準が異なります
 

従業員数
製造業 300人以下
卸売業 100人以下
小売業 50人以下
サービス業 100人以下
<参照-中小企業庁「中小企業」の範囲

これらの従業員数に当てはまるかどうかを確認しましょう。

事業内容基準

風俗営業会社や資産管理会社に該当しないことが要件として挙げられています。自社がこれらの事業を行っている場合は、制度の利用は諦めるしかありません。

④担保提供の要件を満たすこと

事業承継税制の適用となるには、贈与税・相続税の申告期限までに納税猶予額相当の担保を提供しなくてはなりません。担保の提供先は税務署です。

適用対象株式の全てを担保に供した場合は、納税猶予額相当の担保が提供されたと判断してもらえるでしょう。担保については、国税庁作成のWebページに詳しく書かれていますが、税理士に相談した方が安心です。

⑤5年間の経営継続の要件を満たすこと

申告期限から数えて5年間(特例経営承継期間)は経営をそのまま続けなくてはなりません

この期間内に一定要件に該当した場合は、納税猶予が打ち切られてしまい、猶予税の全額または一部を納付しなければなりません。経営継続要件は以下のとおりです。
 

先代経営者 代表者になってはならない
後継者 代表者・筆頭株主である
同族関係者と合算して50%超の株を保有
猶予対象株式を譲渡や贈与していない
都道府県や税務署長に報告や届出書を提出している
対象会社 常時使用従業員数の平均値が、承継時の80%未満とならない
上場会社に該当しない
風俗営業会社に該当しない
資産管理会社に該当しない
売上が0とならない

以上の条件を5年間は満たし続けてください。

⑥次世代承継の要件を満たすこと

後継者が次世代(3代目)に引き継ぐ場合は、猶予を受けていた分の税金額が免除されます。後継者が死亡して3代目が引き継ぐ場合も、相続税の免除を受けることが可能です。

したがって、最終的な全額免除を狙っている場合は、これらの条件を覚えておきましょう。

4. 事業承継税制の納税猶予(特例)手続きの流れは?

事業承継税制における納税猶予制度の手続きは、以下の流れで行います。

  1. 事業承継税制のマニュアル確認
  2. 特例承継計画作成・提出
  3. 代表者交代
  4. 株式贈与
  5. 認定申請
  6. 贈与税・相続税申告
  7. 継続届出書提出
  8. 相続税免除申請

これらの手続きについてしっかり理解しておくのが、スムーズに事業承継税制の納税猶予制度を利用するコツです。それぞれについて、順番に確認しましょう。

①事業承継税制のマニュアル確認

中小企業庁のホームページで、申請の手続き・申請書類に関するマニュアルが公開されています。

できるだけ自分の力だけで事業承継税制を利用したい場合は、わからないことをマニュアルで調べられます。手続きを行う際は、事前に確認しておくと良いでしょう。

②特例承継計画作成・提出

特例承継計画を作成して、認定承継機関に所見を記載してもらいます。認定承継機関とは、商工会や商工会議所・金融機関・税理士などです。商工会や商工会議所では無料のセミナーを行っていることもあるので、確認してみましょう。

税理士などの専門家に相談すれば、株式を後継者に引き継ぐ際の節税対策も聞けます。承継計画には、会社の後継者や承継時までにおける経営見直しの記載をしなければなりません。

2023年3月31日までに都道府県庁に提出する必要がありますが、それまでに贈与・相続を行う場合は、相続・贈与後に提出も可能です。

③代表者交代

株式を後継者に渡し、実際に代表者が交代します。贈与による事業承継税制の適用を受ける場合は、このタイミングでの贈与が必要です。
 

④株式贈与

株式の贈与や相続が実行されます。株式の引き継ぎを行う際は、税理士に節税対策について聞くと良いでしょう。実際に承継が実行されると、次は特例認定の申請です。

⑤認定申請

都道府県庁に対して、特例認定申請書を提出します。中小企業庁のページからダウンロードして記載してください。贈与税の納税猶予の場合には、申請の締め切りは贈与のあった翌年1月15日までです。

相続税の納税猶予では、申請の締め切りは相続の開始後8カ月以内となっています。いずれの場合も、承継計画の添付が必要です。

⑥贈与税・相続税申告

上記で述べた認定申請の締切りまでに、贈与税や相続税の申告を行います。贈与税における納税猶予の場合は、認定書のコピーと合わせて、贈与税の申告書を提出しなければなりません。

相続時精算課税制度の適用を受ける場合は、その旨を明記します。相続税における納税猶予の場合も、認定書のコピーと合わせて、相続税の申告書を提出しましょう。

⑦継続届出書提出

税務署に対して、継続届出書を提出します。贈与税・相続税の申告期限から5年間は毎年、5年経過後は3年ごとに提出しなければなりません。継続届出書の提出にあたって、相続税の申告期限から5年間は以下の要件を満たす必要があります。
 

  • 後継者が会社の代表であること
  • 後継者が筆頭株主であること
  • 納税猶予対象株式を継続保有していること
  • 上場会社や風俗営業会社、資産管理会社に該当しないこと

以上の条件を常に意識しましょう。

⑧相続税免除申請

後継者の死亡があった場合には、相続税免除申請で猶予されていた相続税の全部が免除されます。相続税免除申請を行う際は、免除届出書・免除申請書の提出が必要です。後継者の死亡以外に、相続税の納付が免除されるのは以下の場合があります。
 

  • 相続税の申告期限後5年間において、やむを得ない理由で後継者が代表権を有しなくなった日以降に、猶予継続贈与を行った場合
  • 相続税の申告期限後5年間経過後に、後継者が猶予継続贈与を行った場合
  • 相続税の申告期限後5年経過後に、会社について破産手続開始決定があった場合

やむを得ない理由とは、後継者が精神障害者・身体障害者となった場合などです。猶予継続贈与とは、後継者(2代目経営者)が3代目経営者に贈与したときに考えるものになります。

後継者から贈与された3代目経営者が納税猶予を受ける場合における贈与のことです。この場合、2代目経営者における納税猶予税額のうち、3代目経営者が納税猶予を受ける株式に対応する部分が免除されます。

以上、事業承継税制における納税猶予手続きの流れを紹介しました。手続きについてしっかり理解し、円滑に制度を利用しましょう。事業承継税制について、少しでも不安があれば早めに専門家に相談すると安心です。

5. 事業承継税制の納税猶予(特例)を受けるべき?

事業承継税制を受けるべきパターンと、受けない方が良いパターンがあるのでおさえておきましょう。事業承継税制が適用されると、中小企業における事業承継の際に、相続税・贈与税を猶予してもらえます。しかし、全ての中小企業においてメリットがあるわけではありません。

数百万円規模の納税猶予・免除であれば、別の節税手法を検討した方が良い場合もあります。事業承継税制はさまざまな要件を満たさなければならず、必ず免除されるわけではないからです。

以下に紹介する条件に当てはまった場合は、事業承継税制の利用を前向きに考えると良いでしょう。

  1. 自社株評価額が1億円以上である
  2. 業績が右肩上がりである
  3. 親族内承継を行う場合である

これらの場合なら、事業承継税制を利用して得をするケースが多いです。利用を悩む場合は、税理士に自分のケースでも得をするのか確認をしましょう。

事業承継税制のメリット

事業承継税制の納税猶予制度には、以下のメリットがあります。

  • 後継者の税負担を軽減できる
  • 相続税における控除額以上の税額が猶予される

いずれのメリットも事業承継を行うなら知っておきたいものです。メリットを知らないまま事業承継を行ってしまうと、後悔する可能性があります。それぞれのメリットについて、順番に確認しましょう。

後継者の税負担を軽減できる

事業承継税制により相続税・贈与税が猶予されると、後継者はすぐに納税する必要がなくなります。したがって、後継者に資金が不足している場合でも事業承継が行えるのです。

中小企業の事業承継が失敗する原因の多くは、資金不足と考えられます。事業承継では高額な税金が発生しやすいので、事前に節税対策を行うのが大切です。

しかし、節税対策をしても十分な資金がないケースはよくあります。資金に不安がある状況で事業承継を行いたいときには、納税猶予が非常に大きなメリットとなるのです。

相続税における控除額以上の税額が免除される

相続税には控除制度がありますが、全額が控除されるとは限りません。自社株評価額が1億円以上であるならば、控除を用いても多額の納税額が見込まれます。こうした場合、事業承継税制によって全額免除を受けることで大きく得をするのです。

事業承継税制のデメリット

事業承継税制の納税猶予制度には、以下のデメリットがあります。

  • 取消事由に該当すると利子税がかかる
  • 株式の分散リスクがある

事前にデメリットも知らなければ、後悔してしまうかもしれません。それぞれのデメリットについて、順番に確認しましょう。

取消事由に該当すると利子税がかかる

取消事由に該当すると、猶予が取り消されるうえに利子税が発生します。ただし、平成30年の改正によって、取消事由は緩和されました。取消事由には以下があります。

  • 5年以内に後継者が代表者でなくなったとき
  • 後継者が取得した株式を他人に譲渡などで手放したとき
  • 会社が資産管理会社に該当したとき
  • 会社が解散したとき
  • 会社の年間収入がゼロになったとき
  • 継続届出書を提出しなかったとき

事業承継税制を利用する際は、これらの取消事由に該当しないように注意しましょう。

上記の要件から外れた場合は、猶予されていた税額と利子税を支払う必要があります。たとえば、資本金を1円でも減らしたり、年次報告書などの書類を提出しなかったりすると納税の義務が発生してしまいます。

相続や贈与時の株価評価が高ければ、納税額も高額となってしまいかねません。このような事態を避けるためにも、相続および事業承継が発生する前に株価を引下げる対策が必要です。

会社の分散リスクがある

特例措置を活用すると、後継者として3人まで猶予の適用が可能となります。しかし、安易に株式を分散させてしまうと、会社経営を不安定にしてしまうおそれがあるため、注意しましょう。

納税についてだけでなく、将来的な会社経営についても考えたうえで事業承継税制を活用しましょう。

6. 事業承継税制を利用する際の注意点

事業承継税制を利用する際は、以下の注意点があります。

  1. 株価対策も行う
  2. 複数株式所有者から贈与を受けるときも利用する
  3. 恩恵があるのは自社株を相続する相続人のみ
  4. 株式譲渡を行うと贈与税・相続税猶予が打ち切られる

これらのポイントを知っておけば、事業承継税制の納税猶予制度をうまく活用しやすくなります。それぞれについて、順番に確認しましょう。

①株価対策も行う

事業承継税制を利用する場合でも、価対策は行っておくべきです。たとえば、非上場株式である自社株の評価額が低い時期に承継を行うことが対策として考えられます。

自社株の評価額が低ければ、そもそもの税額や猶予打ち切りの際は、納税額、利子税額が低くなるのです。税額負担において有利になるため、株価対策に関しても留意しておくと良いでしょう。

②複数の株式所有者から贈与を受けるときも利用する

株式は、先代経営者のみが所有しているとは限りません。先代経営者の配偶者や兄弟または幹部従業員など、複数の株主が少しずつ株式を所有している場合があります。

平成30年改正では、後継者に対する株式の集中を促進するために、複数の株式所有者からの贈与も制度の対象とされました。その際に注意しなければならない点は、以下のとおりです。

  • 先代経営者の贈与が最初でなければならない
  • その他における贈与は、先代経営者の贈与年から5年の間に行わなければならない
  • 先代経営者以外の者からの贈与も、都度認定の手続きが必要となる

③恩恵があるのは自社株を相続する相続人のみ

事業承継税制は、自社株を相続する相続人のみ納税猶予を受けられる制度です。それ以外の相続人に対する相続税が下がるわけではなく、株式を相続した人しか恩恵を受けらないため注意が必要です。したがって、事前に自社株の相続対策をしておく必要があります。

相続対策とは、主に以下が挙げられます。

  • 自社株の評価額を下げる
  • 種類株式を導入
  • 遺留分対策として役員退職金を支払う
  • 「遺留分に関する民法の特例」を活用
  • 10年以上前より生前贈与をする
  • 株式買い取りに関する定款を変更する

会社に適した株価対策は違いますので、株価評価と個人の資産全体の評価をしたうえでの、総合的な対策が必要です。あわせて上記に挙げた遺留分対策を行い、会社や後継者、相続人の全てが円満になれる相続を行いましょう。

④株式譲渡を行うと贈与税・相続税猶予が打ち切られる

株式譲渡を行うと贈与税・相続税猶予が打ち切られてしまうでしょう。したがってそれまで猶予されていた贈与税・相続税と利子税を合わせて支払うことになります。猶予適用5年以内であれば、株式の一部譲渡でも打ち切りとなりますが、5年経過後は売却分のみの打ち切りです。

せっかく適用を受けた納税猶予が打ち切りになることがないよう、打ち切り事由を把握するようにしましょう。

7. 事業承継税制の最新情報

事業承継税制の情報は、専門家に聞くのが確実です。自分だけで全ての手続きをしたい気持ちもあるかもしれませんが、失敗せずに制度を利用するには専門家の力を借りましょう。

事業承継税制の納税猶予制度を活用したいなら、早めに準備をしなければなりません。自分でさまざまなことを調べながらやっていては間に合わない可能性もあります。

事業承継は、節税対策以外にも行うことが多くあります。たとえば、後継者教育にはかなりの期間をかけるべきでしょう。

8. 事業承継税制(特例)適用の相談ならM&A総合研究所

事業承継税制の適用をお考えの際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所では、さまざまな特例や事業承継税制の活用も視野に入れ、最適な事業承継の実現に向けてフルサポートいたします。

M&A総合研究所の特徴

  1. 事業承継の手法を相談できる
  2. 特例や事業承継税制に強くて頼れる
  3. 専門のアドバイザーがフルサポート

①事業承継の手法を相談できる

M&A総合研究所であれば、事業承継の手法選びからご相談いただけます。M&Aによる事業承継であれば、後継者が身近にいない場合でも、事業の継続が可能です。

②特例や事業承継税制に強くて頼れる

M&A総合研究所では、さまざまな特例や事業承継税制に強いM&Aアドバイザーが事業承継をフルサポートいたします。法律面でも安心してM&A・事業承継を進めていただくことが可能です。

③費用が安い

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります。)無料相談を行っておりますので、どうぞお気軽にご連絡ください。

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9. 事業承継税制のまとめ

事業承継税制とは、中小企業の後継者が円滑に経営を引き継ぐために贈与税や相続税を納める期間が猶予される制度です。途中で猶予が取り消される場合もあるので、制度については利用する前にしっかりと理解すると良いでしょう。

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