M&Aによる会社売却の準備!行うべき身辺整理、必要な準備期間を徹底解説

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&Aによる会社売却・企業売却は他社への事業譲渡や事業承継などさまざまな理由により決断されますが、準備すべきこと・準備にかかる期間を知りたい経営者の方は多いです。当記事では、M&Aや会社売却に必要な準備と準備期間を解説します。

目次

  1. M&A・会社売却の事前準備は自社の身辺整理から
  2. M&A・会社売却の準備①財務情報・ビジネス情報の整理
  3. M&A・会社売却の準備②労務面の整理
  4. M&A・会社売却の準備③契約書の整理
  5. M&A・会社売却の準備④人材面の検討
  6. M&A・会社売却の準備期間は?
  7. M&A・会社売却の準備後の手続き・流れ
  8. 準備不足によるM&A・会社売却の失敗事例
  9. 会社売却の準備はM&A専門家に相談
  10. M&Aによる会社売却の準備まとめ
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1. M&A・会社売却の事前準備は自社の身辺整理から

M&A・会社売却を決断する理由は経営者によりさまざまで、他社への事業譲渡事業承継の手段として使われることもあります。

M&A・会社売却の手続きに取り掛かる前に、M&A・会社売却を決定した動機をはじめとする事前情報を把握しておきましょう。

①動機の整理

会社売却に至るまでには半年から1年半程度の期間がかかり、その間に多くの意思決定を行わなくてはなりません。判断に迷う局面や状況の大幅な変化に直面したときに、会社売却をしようと思った理由やM&A・会社売却の背景を整理しておくことで、有効な意思決定を行える可能性が高まります

M&A・会社売却を行う前に、決断した動機をしっかりと記録しておくことが重要です。

②会社売却に関する知識の習得

M&A・会社売却を失敗しないためには、株式譲渡に必要な書類や事業承継に必要な手続きなど、関連知識を身に着けることが大切です。

M&A・会社売却の際は、M&Aの専門家に相談し、会社売却完了までサポートしてもらうのが一般的です。しかし、M&A仲介会社など専門家の役割はあくまでもM&A・会社売却の助言を提供することで、判断は最終的にオーナーに委ねられます。

自社にとって最良の意思決定を行うためにも、M&Aの関連知識を備えておくことが望ましいです。

会社売却の必要書類

必要書類は会社売却の手法によっても異なりますが、ここでは一般的に求められる書類の代表例をまとめました。

  • 自社をアピールするための資料
  • 事業計画書
  • 商業登記簿謄本:履歴事項全部の証明書
  • 定款
  • 株主名簿
  • 会社案内
  • 印鑑証明書
  • 組織図:本社・支店・子会社・関連会社など
  • 役員の経歴書
  • 従業員名簿:氏名・年齢・勤続年数・役職・給与
  • 就業規則などの各種規則
  • 月次試算表
  • 土地・借地権台帳
  • 取引先との契約書
  • 賃貸借契約書
  • リースなどの契約書
  • 保険契約書
  • 許認可などの写し

上記のうち、会社売却で最低限求められる書類は、過去3期分の決算書・顧客別売上高一覧・事業セグメント別売上高一覧・組織図・従業員一覧・役員略歴・登記簿謄本・定款などです。余裕をもって準備を進めましょう。

③スケジュールの設定

上記の前提条件を整えたら、会社売却のスケジュールを設定します。事前にスケジュールを設定しておけば、経営者の株式譲渡に対する気持ちが固まり、現実的に株式譲渡に向けて動き出すことが可能です。

自社や事業における評価は、ビジネスの実力である内部環境以外に、市場における勢いなどの外部環境も関係します。これらの状況に配慮せず、何もしないで時間が過ぎるのはもったいないでしょう。

内部環境や外部環境を整理しながら目安となる売却のスケジュールを考慮し、売却時期を設定してください。スケジュールの設定は、会社・事業を売却する経営手段の採用に現実味を持たせるためにも大切です。

④会社や事業の業績調整・不透明な取引の整理

次に、実際にM&A・会社売却を実行するにあたって適切な評価を得るため、稼ぐ力や財務状況を整理する必要があります。外部からの高い評価を得るために、足元の実績だけではなく将来どのように拡大していくのか、売上利益計画も含めて提示できる準備を行いましょう。

不正取引がないようチェックする必要もあります。内部の管理体制が十分に機能していなかったり、反社会的勢力と取引があったりする企業には、もちろん買い手が見つかりません。不透明な取引があれば、早急に問題を解決してください。

⑤会社売却条件の優先順位付け

M&A・会社売却を行う条件を洗い出し、順位付けを行うことも大切です。

株式譲渡などによりどれほどの資金の獲得を望むのか、どのような買い手であれば安心して事業承継できるのか、単純に事業譲渡を行えれば良いのかなど条件を整理することで、交渉の現場で意思決定をスムーズに行えます

ここまで解説した事前準備が完了したら、M&A・会社売却の専門家に相談し、実際の事業譲渡・事業承継の手続きに移りましょう。

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2. M&A・会社売却の準備①財務情報・ビジネス情報の整理

会社売却・企業売却に必要な準備として、財務情報・ビジネス情報の整理があります。

M&A・会社売却では、財務情報(過去3期分の決算書・顧客別売上高一覧・事業セグメント別売上高一覧など)や、組織図・従業員一覧・役員略歴・登記簿謄本・定款などの書類が最低限必要です。こうした情報は、買い手企業に判断してもらうための資料であるノンネームシートの作成や、デューデリジェンスのために使用します。

特に財務情報は会社売却の金額を左右するほど重要なので、買い手は企業の業績を判断する際に、財務諸表などの客観的なデータやデューデリジェンスの中で厳しくチェックされます。各取引が書類として残っていることを証明できるよう準備しなければなりません。

こうした情報を整理しておくことで、自社のビジネスが将来利益を生み出すことを間接的に証明できるため、高い金額での売却につながることも期待できます。

自社の強み・弱みをきちんと分析することも重要です。どのような会社に買ってもらうのが一番よいのかが明確になり、買い手も将来ビジネスを拡大できるイメージがつきやすくマッチングしやすくなります。

こうした観点から、特に弱みを補完できる相手をイメージしながら自社の情報を整理しましょう。

3. M&A・会社売却の準備②労務面の整理

M&A・会社売却に必要な準備として、労務面の整理が挙げられます。

労務面では、特に社会保険の加入・支払状況に注意しましょう。現代は労務管理が非常に厳しいため、社会保険に未加入であったり未払金があったりする場合、M&A・会社売却による事業譲渡や事業承継が難しくなる可能性があります。

仮に社会保険に未加入の状況で売却を検討すると、買い手は社会保険料支払後の利益水準で買収金額を検討するため、売り手と買い手の間で目線にギャップが出てしまい、なかなか合意に至れない場合も少なくありません。

こうした事態を避けるため、事前に社会保険の加入や、未払金の支払いなどを済ませてください

4. M&A・会社売却の準備③契約書の整理

会社売却・企業売却に必要な準備として、契約書の整理があります。

M&A・会社売却には多くの書類が必要です。M&A・会社売却のアドバイザリー契約や、株式譲渡などの契約締結および事業譲渡・事業承継に向けて、契約書や法的な書類を事前に整理することが欠かせません。

事業承継を含む事業の継続のために必要な書類

会社の買収に成功しても、会社法や各種業法によって保管・整理が義務づけられている書類がなければ、事業を継続できません。必要な書類の保管も買い手にとって重要事項です。

事業承継を前提に株式譲渡などを行っても、必要な書類が整理されていない場合は免許取消や罰金などのペナルティが課せられます。当初の想定どおりに事業承継が行われない可能性もあるため、事前に整理しましょう。

M&A・会社売却に必要な書類

実際に株式譲渡などの手続きに移る場合、M&A・会社売却の取引に必要な書類は主に以下の4点です。

  • 秘密保持契約書
  • アドバイザリー契約
  • 基本合意書
  • 株式譲渡契約書(株式譲渡による会社売却の場合)

秘密保持契約書

秘密保持契約書とは事業譲渡などに関する機密情報の漏えいを防止するために、情報開示前にM&Aの仲介会社と買い手候補・売り手の間で締結する契約書です。秘密保持契約書には、秘密保持における内容の範囲や期間などの規定が記されています。

アドバイザリー契約

M&A仲介会社に、会社売却や事業譲渡などに関するアドバイザリー業務を依頼する際に結ぶ契約です。この契約により、着手金や成功報酬などが規定されます。

基本合意書

買い手と売り手の間で、大まかな売却条件に合意した場合に買い手候補と作成する合意書です。基本同意書には、売却金額や時期、独占交渉権などの記載があります。

株式譲渡契約書(株式譲渡による会社売却の場合)

株式譲渡により会社売却を行う際は、最終合意の時点で買い手候補と株式譲渡契約書を締結します。株式譲渡契約書には、最終的な売却金額、売却日などの規定が盛り込まれます。

5. M&A・会社売却の準備④人材面の検討

M&A・会社売却に必要な準備として、人材面の検討があります。

現在の事業を継続するうえで重要な人材がいる場合、キーパーソンの残留も売却の重要条件の1つです。キーパーソンがオーナー自身の場合、オーナー自身が会社売却後も一定期間会社に残ることを条件とするケースもあります。

ほとんどの企業で経営人材が不足しているため、M&A・会社売却が完了した後も経営者層に残ってほしい買い手もいます。

売却後は自由に経営できない環境となり得るため、それでも事業を継続する意思の有無は、事前に整理をしたうえで交渉の場で相手方に主張しましょう。

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6. M&A・会社売却の準備期間は?

買い手側の状況によって異なりますが、M&A仲介会社のサイトに掲載されている事例などを参考にすると、最短で3カ月最長で2年程度の期間がかかります。

最短3カ月の期間は、上記の手順で記載した書類の準備などを含めてニーズに合致した売却を行える期間であり、3カ月以下の期間では目標とした条件での合意は非常に難しいでしょう。

一方、最長の2年程度を必要とする案件では、事業成長が見込まれる場合があります。短期間で売却を完了させたいニーズも多いですが、長期間の準備で実績が大幅に伸長した場合、売却金額が当初のターゲットを大きく上回ることも少なくありません。

今後の事業成長が見込まれる場合、短期間のクロージングのみを目指すのではなく、長期での売却も視野に入れて検討を進めると良いでしょう。

判定要素の1つとして、検討の余地があるものが潜在価値です。例えば、売上・利益の改善余地がある、もしくはリスクを取らずに変化のスピードが遅いことで、売上・利益の伸びを抑制している場合です。

こうした潜在価値の存在は、買い手との交渉で買い手が会社を買うメリットとして説明されます。しかし、失敗するリスクもあり、十分に売却額に反映されないこともあります。

こうした状況にある場合、売却前に潜在価値を実現させるための手段を取ってから、会社売却を実行しましょう。

会社売却の準備スケジュール調整はM&A仲介会社に相談

会社売却・企業売却の際、相手先企業を含めたスケジュール調整は難しいことも多く、時間や手間を要します。実際に自社の経営を行いながら売却準備を進めることは、非常に難しいです。自社の経営を行いながらスムーズにM&Aを進めるには、M&A仲介会社など専門家に依頼して進めると良いでしょう。

M&A総合研究所では、会社売却・企業売却の豊富な知識や経験を持つM&Aアドバイザーが案件をフルサポートしますので、売却交渉中も普段と変わらない会社運営を行えます。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談を受け付けていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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7. M&A・会社売却の準備後の手続き・流れ

M&A・会社売却では、ここまでに取り上げた準備事項を経た後で、以下の手続き・流れを進めていくのが一般的です(株式譲渡スキームを採用するケース)。

  1. 当事会社による交渉・基本合意契約書の締結
  2. 買収側によるデューデリジェンス
  3. 株式の譲渡承認申請
  4. 取締役会・株主総会による承認
  5. 株式譲渡契約書の締結
  6. クロージング

クロージングとは、M&Aでの経営権の移転を完了させる最終的な手続きのことです。株式譲渡の場合、株券の引渡しとその対価の支払い、役員の改選人などが必要な手続きとされています。

8. 準備不足によるM&A・会社売却の失敗事例

M&A・会社売却に必要な準備を説明しましたが、準備不足のためにM&A・会社売却に失敗してしまう例は、どのようなものがあるのでしょうか。この章では、準備不足で会社売却・企業売却に失敗する例を紹介します。

①M&A仲介会社・専門家の選択ミス

M&A・会社売却の際、買い手側との交渉や株式譲渡などの手続きを手助けしてくれるM&A仲介会社・専門家ですが、選択を誤ると会社売却が円滑に進まない可能性もあります。

例えば、売却先として考えていた重要な相手企業がM&A仲介会社の買い手候補に入っていなかったり、M&A仲介会社が買い手候補を広げたことにより情報が漏えいして企業価値が棄損してしまったりするなどのトラブルが想定されます。

こうした事態を回避するためには、信頼のおけるM&A仲介会社を選択することが欠かせません。M&仲介会社の優劣によりM&A・会社売却の成否が大きく左右されることもあるため、慎重に選択しましょう。

②売り手企業の準備不足

より良いM&A・会社売却を行ううえで、売り手企業では、会社売却の前に自社の取引で不明な点や潜在価値のある部分などを整理することが大切です。これらの準備を怠ると、買い手側から過小評価されてしまい、売却価格が当初の目標に届かずに失敗することがあります。

人材に関しても、経営人材が育たないまま売却後にオーナーが引退してしまい、結果として買い手側も当初想定していたメリットが出せないこともあります。事前に人材の育成潜在価値の実現に向けた行動を取るなどの対策を行って企業価値を正しく評価してもらい、目標金額での売却を図りましょう。

③M&A・会社売却の目標の設定ミス

売り手企業側が自社の企業価値を十分に評価できていないにもかかわらず、当初の目標にこだわりすぎて会社売却がうまくいかない場合もあります。

例えば、高すぎる売却金額を目標として設定した場合、買い手と条件が折り合わず破談になってしまう可能性もあります。改めてM&A・会社売却における企業価値算定の条件を理解し、売却目標を設定することが必要です。

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9. 会社売却の準備はM&A専門家に相談

会社売却・企業売却の準備では複雑な手順を踏むことも多く、自社のみで進めるのは困難です。特に会社売却・企業売却の場合、法務・財務面の準備や手続きが多いため、M&A仲介会社などの専門家にサポートしてもらいながら進めることをおすすめします。

M&A総合研究所では、会社売却・企業売却に精通したM&Aアドバイザーが相手先の選定・交渉・クロージングまで案件をフルサポートします。料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。

無料相談を行っていますので、はじめての会社譲渡・企業譲渡でもご安心してご利用できます。会社譲渡・企業譲渡をご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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10. M&Aによる会社売却の準備まとめ

M&A・会社売却を行う前に必要な準備は、株式譲渡などの法的な書類をはじめ、M&A・会社売却を実施する理由や潜在価値の実現など、形式的な準備から企業価値を高めるための準備など多岐にわたります。

準備をするにあたって専門的な知識や見解が必要となる場合も多いため、M&A・会社売却を行う際はM&A仲介会社など専門家のサポートを受けながら進めましょう。

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