会計事務所業界のM&A動向!会社売却のメリットや成功のポイント・事例2選を徹底解説【2023年最新】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

本記事では、会計事務所のM&A・事業承継のメリットや注意点から売却の相場、流れなどを紹介します。その他、会計事務所のM&A・事業承継の売却事例についても具体的に解説します。会計事務所の売却・買収を検討している方は必見の内容です。

目次

  1. 会計事務所業界とは
  2. 会計事務所業界を取り巻く現状
  3. 会計事務所業界のM&A動向
  4. 会計事務所業界のM&Aメリット
  5. 会計事務所業界のM&Aでの成功ポイント
  6. 会計事務所のM&Aでの売却相場
  7. 会計事務所のM&Aの流れ
  8. 会計事務所業界のM&Aの事例
  9. 会計事務所業界のM&Aのまとめ
  10. 税理士事務所・会計事務所業界のM&A案件一覧
  • 税理士事務所・会計事務所のM&A・事業承継

1. 会計事務所業界とは

まずは、会計事務所の定義や税理士事務所・税理士法人との相違点、会計事務所業界を取り巻く現状を説明します。

会計事務所の定義

会計事務所とは、税務や会計のサービスを提供する事務所のことです。
具体的には、個人や法人の税務申告・税務相談・申告業務・決算や経理の支援・経営分析・コンサルティングなどの幅広い業務を行っています。

独占業務や会計・税務の専門知識を要している公認会計士・税理士の資格を保有している人が独立・開業する機関が多いです。
昨今の会計事務所は、中小企業への会計代行・経営分析・株式公開支援・企業再編支援など、コンサルティング業務をメインに行う事務所が増加しています。

税理士事務所・税理士法人との相違点

税理士事務所・税理士法人はいずれも税理士に関連する組織ですが、実際どのような違いがあるのでしょうか。
税理士事務所・税理士法人の相違点を詳しく説明します。

税理士事務所との相違点

会計事務所と税理士事務所の主な業務内容は、ほとんど同じです。両者の違いは、法律で定義されている名称にあります。

税理士業務を行う事務所は、税理士事務所です。
その一方、会計事務所は法律に明記されておらず、会計や税務のサービスを提供する事業所の総称として使用されています。

一般的に、税理士業務をメインとして業務を行う場合は税理士事務所です。
税理士業務に加えて会計やコンサルティングサービスを提供している場合は、会計事務所が使用されているケースが多いでしょう。

税理士法人との相違点

税理士法人の相違点は組織形態です。会計事務所や税理士事務所では、主に個人事業主として公認会計士や税理士が事業を行っています。

一方で、税理士法人は、その名のとおり法人として税理士業務を行っている点が大きな特徴です。
税理士法人の場合は、2名以上の税理士の在籍が必要です。
つまり、たとえスタッフが数名いても税理士法人にはなれず、税理士が2名以上必要とされます。

2. 会計事務所業界を取り巻く現状

税理士の登録者数

国税庁「税理士登録者数」を基に作成

出典:https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/seido2.htm

会計事務所業界を取り巻く現状として、税理士に関するデータを紹介します。
国税庁によると、日本税理士会連合会に登録されている税理士登録者は1990年度で57,073人、2020年度では79,404人と増加傾向です。

昨今は若手の経営者が増加しているため、若い税理士に対するニーズが増える予想です。
しかし、税理士の高齢化および受験・登録者数の減少によって、将来、会計事務所業界の人手不足が生じる可能性があります

参照:国税庁「税理士制度」

税理士の高齢化

日本税理士会連合会「データで見る税理士のリアル。」

出典:https://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/doc/prospects/whats_zeirishi/book02/origin/page-0017.pdf

日本税理士連合会が行った「第6回税理士実態調査(平成26年1月)」を見ると、全国にいる税理士のうち過半数が60代以上を占めていることがわかります。60代が30.1%、70代が13.3%、80代が10.4%であり、会計士事務所の高齢化が進んでいる状況です。

昨今は取引先となる会社の経営者が若返っていることから、若い税理士に対するニーズが増える予想です。
しかし、税理士の高齢化および少子高齢化の流れから受験・登録者数の減少や会計事務所業界の人手不足が生じる可能性があります。

参考:日本税理士連合会「第6回税理士実態調査報告書」

競争の激化

平成14年の税理士法の改正を受けて、営業活動が自由化されたことで、営業活動に積極的な事務所とそうでない事務所に二分されました。

従来の会計業界は、たとえ営業活動を行わなくとも顧問先が増える傾向にありました。しかし、法改正を契機に競争が激化しています。
現在は顧問先が廃業や倒産で減少してしまうケースも多く、現状維持では安心できない時代に突入しています。

差別化を図るために事務所サービスも多様化している状況です。ワンストップサービスを打ち出す事務所も増加しています。こうした事情から、市場での対応が難しくなっているのでしょう。

3. 会計事務所業界のM&A動向

ここでは、実際にどのようなM&A・事業承継が会計事務所業界で行われているのか、解説します。
会計事務所のM&A・事業承継を検討されている方は参考になさってください。

売上高1,000万円〜1億円程度の案件成立件数が多い

会計事務所には個人事業主が多いため、M&A売却相場はほとんど公開されていません。
前述にもあるように、一般的に1,000万円〜1億円程度の売上高がある会計事務所であれば、M&Aが成立しやすいでしょう。

ある程度の売上高を確保している会計事務所であれば、事業拡大を目指す買い手企業からのニーズが高まります。顧客獲得の競争が激化する会計事務所業界では、一定数の顧客をもち、知名度のあることも強みとなるでしょう。

人材不足解消のためのM&A

税理士の登録者数は増加傾向のものの、職員などの人材数は伸び悩んでいます。また、どの事務所も業務内容は同じであり転職も容易なことから辞めやすいという点から人材不足を抱えている事務所が少なくありません。

そのためM&Aを行うことで、人材不足を解消する動きが見られます。

経営者の高齢化

先述した通り、税理士のうち過半数が60代以上であり高齢化が進んでいます。

経営者が引退し後継者がいない場合、廃業しか選択肢がありません。そのため、後継者問題は深刻な問題です。

しかし、少子高齢化や会計事務所が資格業であることから後継者が見つかりにくい状況にあります。そこで、高齢化や後継者問題の解決策としてM&Aを選択する動きがあります。

M&Aニーズが安定的に推移している

会計事務所業界では、代表者の高齢化による後継者問題を解決できることから、M&Aニーズが高まっています。
それだけでなく、有資格者などを獲得し、事業を拡大させたいと希望する買い手のニーズにもかなっています。

そのほか、会計事務所を開設しようとする他業界からの新規参入も考えられるため、M&Aニーズは安定的に推移しているといえるでしょう。

  • 税理士事務所・会計事務所のM&A・事業承継

4. 会計事務所業界のM&Aメリット

本章では、会計事務所のM&A事業承継で考えられる「メリット」を解説します。

会計事務所のM&Aには「譲渡側(会計事務所を渡す側)」と「譲受側(会計事務所を受け取る側)」が存在します。
譲渡側・譲受側それぞれのメリットを説明しましょう。

譲渡側のメリット

譲渡側(会計事務所を渡す側)のメリットとしては、主に以下の5つが挙げられます。

後継者問題を解決できる

前述しているとおり、昨今は会計事務所の「高齢化」と「後継者不足」が問題となっています。M&Aアドバイザーを介して、会計事務所のM&A・事業承継を行うことで、この「後継者問題」を解決できます。

大手会計事務所とグループを形成できる

会計事務所のM&Aを行うことで、大手会計事務所とグループを形成できる可能性が高まります。大手会計事務所とグループを形成できると、ワンストップサービスを提供できるようになるでしょう。

弁護士・司法書士・税理士といった仕業は、それぞれの業務が分かれているため、何か問題が発生しても、「どの士業に相談すればよいのかわからない」といった問題が生じます。

ワンストップサービスが提供できれば、複数の士業が一つの事務所にまとめられるでしょう。事務所の窓口に来てもらうだけで、いずれの士業の相談にも対応できるようになります。

職員の雇用を守られる

小さな会計事務所などでは経営自体が不安定であり、職員の雇用を維持するのが難しくなってしまうケースもあります。しかし、会計事務所をM&Aによって事業譲渡すれば、職員の雇用を維持できるでしょう。

売却利益を獲得できる

会計事務所のM&Aで譲渡できれば、売却に伴いまとまった資金を獲得できます。売却益を得ることで、事務所運営のリタイア後に、余裕ある生活を送れる可能性が高まるでしょう。

あるいは、売却利益を元手に新規ビジネスを立ち上げることも可能です。

所長も税理士として会計事務所に残れる可能性

会計事務所の業務の中には税理士のみが行える業務が多く含まれています。こうした業務は税理士以外の人では行えません。

そのため、譲渡後には所長も税理士として会計事務所に残れる可能性が高いでしょう。
税理士として事務所に残れば、その後の生活資金を心配せずに済みます。

譲受側のメリット

会計事務所M&Aにおける「譲受側(会計事務所を受け渡す側)」のメリットには、主に以下の4つが挙げられます。

資格者やコンサルティング技能者を獲得できる

会計事務所のM&Aによって、会計事務所を譲受するため、士業の資格を持った人材やコンサルティング技能者などを獲得できます。
専門的な知識や経験・実績を持つ人材を獲得できれば、「さらなる顧客の獲得」や「利益の増加」が見込めるでしょう。

開業リスクを減らせる

これから会計事務所を開業する場合、強力な競争相手の存在によって「顧客獲得が難しい」「従業員の確保が難しい」など、スタートダッシュでつまずく可能性があります。
会計事務所の譲受によって、このような「開業リスク」を減らせる可能性が高まります。

通常とは異なる業務を展開できる

譲渡側のメリットでも解説したように、会計事務所を引き継ぐことで、ワンストップサービスを提供できるようになります。
新たなノウハウ・顧客・人材を獲得できるため、通常の業務展開では困難な地域に進出することも可能です。

顧問先の確保・他地域への事業展開・業務効率化などを目指せる

会計事務所同士でM&Aを行えば、顧問先の確保・他地域への事業展開・業務効率化など、さまざまなメリットを享受できます。
優良な顧問先を獲得できる可能性も高まるうえ、他地域の会計事務所とM&Aを行えば、新たな事業の拡大が目指せます。

業務の効率化が可能となり、利益の出やすい体制を構築できるでしょう。

5. 会計事務所業界のM&Aでの成功ポイント

この章では、会計事務所のM&Aで意識しておくべきポイントを解説します。M&A・事業承継は以下のポイントを意識して進めなければ、M&Aが失敗に終わってしまう可能性があります。

①相場を把握する

まず大切なことは、会計事務所を合併したり、後継者に譲渡したりする際のM&A相場を把握しておくことです。
会計事務所のM&A・事業承継の相場は、事務所が位置する地域やM&A実施の時期によって異なります。
およそ1年分の顧問収入をベースに決定されることが多いでしょう。

ただし、これはあくまでも個人事業で記帳代行やコンサルティングを別会社としているケースです。
それ以外の場合は、通常のM&Aと同様時価純資産方式やDCF方式といった計算方法で相場が算出されます。

②適正なM&Aアドバイザーを選ぶ

M&A・事業承継を行う際に非常に重要なポイントは、適正なM&Aアドバイザーを選ぶことです。M&Aアドバイザーは、M&Aの「売買相手探し」「交渉の仲介」「契約書の作成」などの仲介業務を行います。

M&Aアドバイザーには、主に以下の主体があります。

銀行

各銀行は、M&Aアドバイザリー業務を提供しています。すでに融資してもらっているといった関わりのある銀行であれば、自社の情報を詳細に知っているため、仲介業務を任せやすいでしょう。

銀行が持つ膨大なネットワークを利用して、売買相手を見つけてくれる可能性もあります。
しかし、M&Aアドバイザリー業務自体は銀行のメイン事業ではありません。
地方銀行などでは、M&Aアドバイザリー業務自体を行っていないケースもあります。

証券会社

証券会社でも、M&Aのアドバイザリーサービスを提供しています。証券会社のM&Aアドバイザリーサービスの利用は、「M&Aによって海外進出を考えている」「企業合併・事業売買などによって株式の譲渡・移転が必要になる」といった場面で有効的です。

ただし、会計事務所のM&A・事業承継では、そもそも株式譲渡・移転などを選ばずに別の方法を主体としているケースが多いため、相談にはそれほど向いていません。

税務・会計事務所

税務・会計事務所は、特に事業承継・後継者に事業を譲渡するケースでは、M&Aを相談しやすい相手といえます。M&A・事業承継に伴う相続税などの税金関係も安心して相談できるでしょう。

相談する際は、M&Aに関する知識や実績があるのかをあらかじめ確認しておきましょう。

法律事務所

法律事務所には、M&A実務の法的側面に詳しい弁護士が在籍しています。M&Aで法律的なトラブルが発生した際には、安心して相談できる相手です。

ただし、M&Aを本格的に扱っている法律事務所は大手がほとんどです。扱われているM&A案件の規模自体も大きいところが多く見られます。

M&Aアドバイザリー(FA)

M&Aアドバイザリーは、別名「FA(ファイナンシャル・アドバイザー)」とも呼ばれています。M&Aアドバイザリー(FA)は、M&Aの専門的な知識を持つ「M&Aの専門家」です。

M&Aアドバイザリーは、企業・会社・事業の買い手または売り手のどちらか一方を担当し、担当した側の利益を最大化することを目的として仲介業務を行います。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、文字通りM&Aの仲介業務を行う会社です。M&Aアドバイザリー(FA)とは異なり、M&A仲介会社は「買い手」と「売り手」の間に介入する形でM&Aの仲介を行います

M&Aの工程全てに携わるため、スムーズにM&A手続きを進められます。ただし、M&A仲介会社によっては、買い手と売り手をつなげるマッチングプラットフォームを提供するのみの場合もあるので、あらかじめ確認しましょう。

利用を検討しているM&A仲介会社の実績やサービス内容をしっかりと確認し、M&A手続きを任せられるM&A仲介会社を精査する必要があります。

③株式会社でないと株式譲渡は採用できない

会計事務所の場合、主に個人事業主として税理士(公認会計士)が運営する事業所をさします。個人事業主が運営する事務所は、法人には該当しないため、株式譲渡によるM&Aは実施できません。

したがって、個人事業主である会計事務所のM&Aでは、事業譲渡の手法が用いられます。事業譲渡と株式譲渡では、手続き・税金・リスクなどが異なるため注意が必要です。

④適正なスキーム選択

会計事務所のM&A・事業承継をスムーズに進めていくためには、M&Aの適正なスキームを選択する必要があります。スキームとはM&Aにおける「手法」のことで、主に以下の3つに分類できます。

事業譲渡

事業譲渡とは、企業が保有する事業の全部あるいは一部を売買するM&A手法です。個人事業主の税理士(または公認会計士)は株式譲渡を行うことができないため、事業譲渡を行うのが一般的です。

事業譲渡では、経営権の譲渡は行われません。そのため、事業譲渡後も売却側はそのまま存続することができます。

事業譲渡では事業資産を資産を選択する事ができるメリットがある一方で、手続きが煩雑になりやすいというデメリットがあります。

合併

M&Aのスキームの一つである合併とは、複数の会社が一つにまとまることです。「合併」はさらに以下の2つに分けられます。

  • 新設合併(合併に参加した全企業が消滅して、新しい一つの企業に生まれ変わる手法)
  • 吸収合併(合併に参加した企業の一つを残し、残りの企業を消滅させる手法)

出資持分譲渡

税理士法人の場合、出資持分を持つ社員が経営者となります。出資持分譲渡とはこの持分を譲渡することで譲渡することができるスキームです。株式会社の場合の株式譲渡にあたるスキームです。

 

⑤早期のタイミングからM&A・事業承継の準備に取り掛かる

M&Aを行う際は、早期のタイミングからM&A・事業承継の準備に取り掛かる必要があります。全ての手続きが完了するまでには、多くの費用・時間を要します。
早期からM&Aの準備を整えておかなければ、M&Aの目的達成のタイミングを逃す可能性があるでしょう。

業界構造の変化や法改正などにより、会計事務所業界におけるM&Aニーズが減少するリスクも想定されます。
M&Aの需要が減少傾向になってしまうと、買い手が見つからずM&Aを実施できなくなる可能性があります。

そのほか、M&Aでは専門知識が必要となるため、必要に応じてM&Aの専門家に相談するのがベストです。

⑥顧客との契約を打ち切られるおそれ

会計事務所業界では、税理士(公認会計士)本人に信頼を寄せ、仕事を依頼する顧客が多いでしょう。
M&Aによって税理士や公認会計士が引退してしまった場合、契約を打ち切られる可能性が高まります。

複数の顧客から契約を打ち切られてしまうと、当初想定されていた売上を達成できないでしょう。事業継続が困難となる可能性もあります。

代表の税理士や公認会計士には、「そのまま残ってもらう」「M&Aの際に顧客を説得してもらう」「契約の打ち切りの場合は、買収断念や買収価格の変更を行う」などの対策を講じておく必要があります。

⑦税金対策

M&Aを進めていく上では、税金対策も考えていく必要があります。例えば、会計事務所を事業譲渡した場合、売却代金を受け取る会計事務所の売り手には、法人税がかかります。

課税対象となるのは売却益です。売却益は、譲渡する事業資産と負債の差額を超過した売却金額にあたり、法人税率はおよそ30%になります。

事業譲渡の場合、消費税もかかります。消費税額は、売却代金から「消費税対象外の資産(土地など)」を差し引いた額に「消費税率」を掛けた金額です。

会計事務所のM&Aで支払う必要が出てくる税金に関しては、M&Aアドバイザーに相談し、できるだけ支払う税金を抑えられるよう対策を講じることが大切です。

M&A・会社売却にかかる税金については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】M&A・会社売却にかかる税金は?節税対策や注意点を徹底解説【2022年最新】| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

6. 会計事務所のM&Aでの売却相場

会計事務所のM&A・事業承継で経営者が特に気になるのは、相場だといえます。事前に相場を知っておくことで、安値で売却されたり、相場より高額な価格を提示して交渉が決裂したりするリスクを軽減できるでしょう。

その一方、買い手側も、高額な買収価格によってM&Aを行う事態を回避できる可能性が高まります。通常、1,000万円〜1億円程度の売上高がある会計事務所であれば、M&Aが成立しやすいでしょう。

ある程度の売上高を確保している会計事務所であれば、事業拡大を目指す買い手企業からのニーズが高い傾向があります。

大まかな相場は「1年間の顧問報酬」もしくは「2〜3年分の営業利益」

個人で運営する会計事務所の場合は、「1年間の顧問報酬」もしくは「2〜3年分の営業利益」の金額をベースに、M&Aの金額を提示するケースが多くあります。

例えば、年間顧問報酬が1,000万円のケースであれば、M&Aの金額も1,000万円前後となります。あるいは、3年分の平均営業利益として、M&Aの金額を1,000万円×3= 3,000万円前後とするケースもあるでしょう。

DCF法などで計算した企業価値をもとに価格を決めるケースもある

税理士業務のほかに、コンサルティングや経営分析などの業務も行っている会計事務所の場合、DCF法や時価純資産法などで計算した企業価値をもとに価格を決めるケースもあります

時価純資産法とは、時価換算した純資産をベースに企業価値を算出する方法のことです。
この場合、貸借対照表を用いるため、客観性の高い金額を提示でき、簡単に計算ができるといったメリットがあります。

しかし、将来的な収益性を計算に含むことができな点や帳簿が誤っている可能性がある点には注意が必要です。
その一方、DCF法とは、将来的に獲得すると予想されるキャッシュフローを基準に、割引率を用いて現在価値に直し、企業価値を算出する方法のことです。

将来性や収益性が加味できるメリットがある一方で、事業計画の達成の不透明性が加味されるリスクがあります。

会計事務所のM&A・事業承継の相場に不明点があれば、M&A総合研究所にご相談ください。M&Aアドバイザーが専任担当につき、会計事務所のM&A・事業承継をフルサポートいたします。

相手先探し・交渉・契約手続き書類の作成などを一貫支援いたしますので、スムーズなM&A進行が可能です。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。

無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、会計事務所のM&A・事業承継をご検討の際はお気軽にご連絡ください。

【関連】M&A・事業承継ならM&A総合研究所
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7. 会計事務所のM&Aの流れ

この章では、会計事務所のM&A・事業承継の流れを解説します。
このプロセスは、基本的に会計事務所のM&A・事業承継に限ったものではなく、その他の企業・会社のM&Aの際にも当てはまるため、しっかり理解しましょう。

会計事務所のM&A・事業承継の流れは、以下のとおりです。

①事前準備

まずは、会計事務所をM&Aによって後継者に引継ぐための「事前準備」を進めます。この事前準備の段階では、自分が会計事務所を売却する目的を明確化しておくことが大切です。

M&Aの仲介業務を任せる専門家を選定しましょう。「M&A仲介会社」や「M&Aアドバイザリー(FA)」「銀行」「証券会社」「税務・会計事務所」「法律事務所」などがあります。

②相談

会計事務所を後継者に引継ぐ目的を明確化し、仲介業務を依頼する「M&Aアドバイザー」にある程度目星をつけたら、その業者に「会計事務所のM&A」に関して相談しましょう。

相談内容としては、「自分が希望する条件でM&Aは成立するか」「会計事務所の譲渡価格はどのくらいになるのか」といったものが考えられます。この相談によって、実際に会計事務所の事業承継を進めていくかを判断します。

③仲介業務契約締結

会計事務所のM&A・事業承継を進めていくことを決定したら、M&Aアドバイザーと仲介業務契約を締結しましょう。このときに結ぶ契約としては、「秘密保持契約」があります。

秘密保持契約とは、M&Aの取引や交渉の際に公開されていない情報を手に入れた場合に、その情報を第三者に公表しないことを約束するためのものです。

④ターゲット選定

M&A仲介会社などのM&Aアドバイザーと仲介業務の契約を済ませたら、次に自身の会計事務所を譲渡する相手、あるいは後継者となる個人を探します。いわゆる、売却先のターゲット選定です。

M&A仲介会社に仲介業務を任せている場合、自身の希望・目的にあった売却相手・後継者をM&Aの取引候補としてリストアップしてくれます。その候補者の中から、交渉相手(譲渡先)を選びましょう。

⑤初回交渉

会計事務所の譲渡先・後継者を選定したら、その譲渡相手と交渉を行います。この初回交渉では、自分の会計事務所の「より詳細な情報」を提示して、譲渡・売却相手との条件をすり合わせます。

条件面の交渉をすることも大切ですが、相手の経営者がどのような人なのかを判断することも大切です。
「どのような目的で今回の買収を考えているか」「経営理念はどう考えているか」「今後の事業はどのように展開する予定か」などを、しっかりとヒアリングしましょう。

もし、M&Aや事業承継で会計事務所を売却する場合、従業員は相手の経営者のもとで仕事を行うようになるのが一般的です。
そのほか、クライアントや取引先も、相手の経営者の方針に合わせなければならないケースもあります。

つまり、交渉は実際に自分の会計事務所・従業員・クライアントを任せられるのかを判断する場でもあるため、相手の考え方・価値観を把握できるような質問を行うとよいでしょう。

⑥基本合意書締結

交渉の結果、譲渡先・売却先との条件のすり合わせが完了したら、「基本合意書の締結」を行います。
基本合意とは、会計事務所の「売却側(売り手)」と「引き継ぎ側・後継者側(買い手)」の認識が共通していることを確認するための契約です。

この段階では、法的な拘束力を持つものではありません。基本合意は、引き継ぎ側・後継者側から書面で提出されることが一般的です。

⑦デューデリジェンス

基本合意締結が完了したら、「デューデリジェンス(DD)」が実施されます。デューデリジェンスとは、「買収監査・資産査定」とも呼ばれます。

デューデリジェンスの目的は、会計事務所の引き継ぎ側・後継者側が売却相手の帳簿などを確認し、書面での交渉ではわからない会計事務所の状況を把握することです。

通常、買い手側(引き継ぎ側・後継者側)の専門スタッフによって、主に以下の3種類が行われます。

  • 財務デューデリジェンス
  • 税務デューデリジェンス
  • 事業デューデリジェンス

財務デューデリジェンス

財務デューデリジェンスは、企業・会社の経営成績や財政状態などを調査し、M&A後の収益力などを判断するために行われます。

具体的には、「土地や株式などの資産をどのくらい保有しているか」「債権はどのくらいあるのか」「借入がどのくらいか」といったことを調査します。

税務デューデリジェンス

税務デューデリジェンスは、買収対象会社・譲渡される事業に関して、考えられる税務リスクをあらかじめ把握しておくために行われます。

M&Aによって事業承継された後、その事業の後継者は税務リスク(将来的に追徴課税を受ける可能性)を引継ぐことになるためです。

仮にしっかり調査しないまま税務リスクのある会社・事業を引継ぐと、自身には関係のない税金を支払う可能性があります。そのような事態を防ぐために、税務デューデリジェンスが行われるのです。

事業デューデリジェンス

事業デューデリジェンスは、M&A対象会社のビジネスモデルの把握や、シナジー効果の分析、企業合併に伴うリスクの評価などを行うために実施されます。

この事業デューデリジェンスによって、買収相手の事業の問題点を洗い出したり、価値を割り出したりできます。

⑧価格交渉

デューデリジェンスを行った結果、M&A・事業承継を進める判断がなされた場合、詳細な条件の交渉(特に売買・譲渡価格の交渉)が行われます。

このときには、相場価格(ここでは会計事務所M&A・事業承継の相場価格)とかけ離れすぎた価格になっていないか、チェックしなくてはなりません。

⑨代金支払い

価格の交渉や、そのほかの細かな交渉も完了すると、最終契約に移ります。最終契約書が取り交わされたら、譲渡相手・後継者からの代金支払いが行われます。

⑩資産の移転・クロージング

代金支払いが無事に完了し、譲渡代金の入金を確かめられたら、資産の移転を行います。つまり、ここで初めて、会計事務所の完全な譲渡が実施されることになります。

⑪PMI

資産譲渡・クロージングが完了した後、PMIと呼ばれる統合作業の実施が、M&A成功のために非常に大切です。PMIとは「Post Merger Integration」の略で、当初想定していたM&A後の統合効果を最大化するための統合プロセスのことをいいます。

M&Aは、企業・事業の買収・譲渡・合併が完了した後、M&Aによって期待されていた効果が発揮されて初めて、成否が決まるものです。

M&Aによって、会計事務所が他事務所との合併や後継者への引継ぎが行われた後、譲渡側は想定どおりに顧客や利益が増加するように、従業員・システム・ノウハウといった経営資源を念入りに統合していく必要があります。

8. 会計事務所業界のM&Aの事例

この章では、会計事務所の売却事例をご紹介します。

会計事務所のM&A・事業承継事例①

東京都で「従業員8名」で活動していた会計事務所では、「従業員の雇用の確保」と「顧客へのサービス提供の継続」に不安を抱いていました。そこで、東京都と千葉県に計4カ所の事業所を持つ「中堅の会計事務所」への譲渡を検討しました。

結果的にM&Aが成立し、「全従業員の継続雇用」と「顧客へのサービス継続」という目的を実現しています。

会計事務所のM&A・事業承継事例②

「事業歴およそ30年・従業員5人・年間売上およそ6,000万円」の会計事務所では、後継者候補とされていた方が独立してしまったことで、事業承継プランが崩れてしまいました。
事務所の代表はすでに60代後半で、後継者を探して育てることが難しい状況です。

そこで、「職員の雇用確保」と「顧客へのサービス継続」を目的に、第三者への事業譲渡で会計事務所のM&Aを行いました。結果として、「事業年数15年・従業員50名」の中堅事務所への事業譲渡に成功しています。

「従業員の雇用確保」と「顧客へのサービス継続」は実現しました。

9. 会計事務所業界のM&Aのまとめ

今後の会計事務所業界では、税理士の高齢化や人材不足が問題となる可能性があります。このような状況で、会計事務所のM&A・事業承継の事例は近年増加傾向にあるのです。

売り手側にとって、後継者不足や経営の安定化を実現できるM&Aは有用な手段といえます。会計事務所のM&A・事業承継を成功させるには、ポイントを意識して進めることが重要となるでしょう。

10. 税理士事務所・会計事務所業界のM&A案件一覧

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