株式譲渡の方法とは?手続きの流れ・必要書類・契約書の記載内容も解説【上場・株券発行の有無・有限会社】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

当記事では、株式譲渡の方法・手続きを解説します。上場会社や非上場会社の株式譲渡方法から、株式譲渡手続きの流れ・手順、契約書の記載事項、株式譲渡時の注意点をまとめました。株式譲渡の流れ・手順や注意点などを詳しく知りたい方は、ぜひご参考ください。

目次

  1. 株式譲渡の方法・手続きとは
  2. 上場の有無と株式譲渡の方法
  3. 株式譲渡の方法・手続きの流れ
  4. 無償の株式譲渡を行う方法
  5. 株式譲渡の手続きに必要な書類
  6. 株式譲渡契約書の記載事項
  7. 株式譲渡契約書を締結する際に留意すべきこと
  8. 株式譲渡の方法を採用する際の注意点
  9. 株式譲渡の方法・手続きに関する疑問と解答
  10. 株式譲渡する際の税金についての基礎知識
  11. 株式譲渡する際に検討すべき事項
  12. 株式譲渡の方法・手続きに関する相談先
  13. 株式譲渡の方法・手続きまとめ
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1. 株式譲渡の方法・手続きとは

株式譲渡とは、会社のオーナーが保有する株式を買収側に譲渡することで、会社の経営を引き継ぐ手続きのことです。 売手と買手が合意した内容の株式譲渡契約書(SPA)を締結し、株式の対価の支払いが行われると、株主名簿の書換を行うのみで手続きが完了します。

株式譲渡は、株主が代わるのみで譲渡対象会社の会社名・資産・債権・債務・取引先との契約・許認可関係・従業員の雇用などは引き継がれることから、他のM&A手続きと比べて手続きが簡易な点が特徴的です。本記事では、中小企業で多く活用される株式譲渡の手続きを解説します。

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2. 上場の有無と株式譲渡の方法

譲渡する株式が上場しているか、上場していないかによって、取り扱い方は異なります。ここでは、上場している株式の場合と、上場していない株式の場合に分けて取扱い方を説明します。

上場会社の株式を譲渡する方法

株式譲渡によって、株主が保有している株式を譲渡する方法は、保有株式が「上場会社の株式」または「非上場会社の株式」で変わってきます。上場会社の株式を譲渡する場合は、基本的に公開取引市場で売る方法です。

上場会社の株式は、公開取引市場を利用して自由に売買できます。保有する株式が上場会社が発行している株式であれば、公開取引市場で簡単に譲渡可能です。

非上場会社の株式を譲渡する方法

上場会社の株式が自由に売買できるのに対し、非上場会社の株式は自由に譲渡できません。非上場会社の株式を譲渡する場合には、主に相対取引と呼ばれる方法が取られます。

相対取引とは、株式を保有する株主と株式を買いたい者・企業が直接交渉をする取引方法です。非上場企業が発行する株式のうち、譲渡制限が設けられている株式を譲渡する際には、その対象企業からの譲渡承認を得る必要があります。

譲渡制限とは?

公開取引市場で自由に株式を売買できない非上場会社の株式は、原則として相対取引によって自由に譲渡できます。しかし、非上場会社が定款に定めて、発行する株式に譲渡制限を設けているケースがあります。

譲渡制限とは、非上場会社が発行する株式を自由に譲渡できないようにする制限です。譲渡制限株式を発行している会社を株式譲渡制限会社(非公開会社)と呼びます。

譲渡制限を設ければ、その株式を発行する会社に不都合な第三者に株式を譲渡されてしまうのを防げます。

譲渡制限株式は自由に譲渡できない

譲渡制限株式を譲渡する場合、「株主総会で承認を得る」「株主名義書換請求をする」などの手続きが必要です。ほとんどの中小企業(非上場会社)では、株式の譲渡制限を設けています。

非上場会社の株式譲渡を実施する際には、その株式に譲渡制限が設けられていないか確認する必要があります。もしも譲渡しようとしている株式が譲渡制限株式の場合には、以降の章で解説する「株式譲渡を完了させるまでの手続き方法とその流れ」を参考にしてください。

株式会社と有限会社の違い

ここでは、株式会社と有限会社の違いを確認しておきます。大まかに説明すると、株式会社は株式を発行して資本金を集め、有限会社は決算の公告義務がなく、取締役の任期に期限も設けられていない会社です。

このほかにも、最低資本金額や必要な役員数などの細かい部分で多くの違いがあります。
 

株式会社と有限会社の違い
  現在の株式会社 現在の有限会社
商号(会社名) 「株式会社」と入れる必要がある 「有限会社」と入れる必要がある
資本金の最低額 1円以上 300万円以上
資本金の出資者 発起人が出資額に応じ株主になる 出資額に応じて社員になったものが株主になる
株式公開 任意 できない
必要な役員数 取締役最低1名 取締役最低1名
代表取締役 必要 任意
取締役の任期

株式譲渡制限がある場合:最大10年

株式譲渡制限がない場合:2年

なし
社会保険の加入 義務 義務
決算の公告義務 あり(定款に方法を規定) なし
社員数の制限 なし なし
重要事項の決定機関 株主総会 株主総会
信用度 高い 株式会社よりは低い


有限会社と呼ばれる会社形態は、2006年の新会社法の施行によって廃止されました。これによって、有限会社は特例有限会社に移行しました。現在も有限会社と名乗っている会社は、2006年以前に有限会社として設立された会社です。

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3. 株式譲渡の方法・手続きの流れ

上場している企業の株式は原則として自由に譲渡できるものの、上場していない企業の株式は、多くの場合、譲渡制限が課されていることを解説しました。特に中小企業の株式は、譲渡制限株式であるケースがほとんどで、自由に譲渡できなくなっています。

ここからは、実際に株式譲渡の方法とその手続きの流れを説明します。

①株式譲渡制限の確認

株式の譲渡制限があるかどうかは、保有している株式の発行会社の定款をみれば確認可能です。一般に、会社の定款を持っていない人がほとんどかもしれませんが、会社の株式の保有者は営業時間内であれば定款の閲覧を求められます(会社法第31条第2項第1号)。

それ以外にも、定款の謄本の交付を求められることもあります(会社法第31条第2項第2号)。

②株式譲渡契約の締結

株式譲渡の承認通知が届いたら、その次の手順として、株式譲渡契約の締結が実施されます。株式譲渡契約の締結は、株式の譲渡側と譲受側の双方が株式譲渡契約書の取りまとめをしてサインする手続きです。

株式譲渡契約書への記載内容としては、以下のような項目があります。
 

  • 株式を発行している会社の情報
  • 株主の指名
  • 株式譲渡の価格
  • 対価の支払い方法および期限
  • 除名を行う手続きに関する内容
  • 株主名簿の書き換え請求をする内容

③株式譲渡承認の請求

譲渡制限が設けられている株式を譲渡する場合、株式の譲渡者は株式譲渡承認請求書に譲渡する株式の種類および株式数と株式を譲渡する相手の氏名または名称を記載し、承認手続きをします。

ただ、中小企業の株式譲渡の場合、会社の代表者(経営者)と株式譲渡者が同一人物であるケースが多いため、この手順を踏む前に合意が得られているケースがほとんどです。株式譲渡承認請求書のサンプルを下記に掲示します。


              
              株式譲渡承認請求書

                                令和○年○月○日

株式会社○○○○
代表取締役 ○○ 次郎 殿

                株主住所 東京都○○区○○町○○丁目○○番○○号  
                株主名  ○○ 太郎    届出印


私は、下記のとおり貴社株式を譲渡いたしたくその承認を請求いたします。なお、​​​​承認の
ない場合は他の譲渡の相手方を指定ください。

                  記

  1.譲渡する相手方

   住所 東京都○○区○○町○○丁目○○番○○号
   氏名 ○○ 三郎

  2.譲渡請求株式の種類および数

   普通株式  ○○株

                                    以上

④取締役会(株主総会)の開催

続いての手順は取締役会・臨時株主総会の開催です。手順①の株式譲渡承認請求が行われた際に、承認手続きを実施する機関は、会社により異なります。

その会社が取締役会設置会社である場合、原則として取締役会で株式譲渡承認請求の承認・不承認を決定します。もし、取締役会が設置されていない会社であれば、臨時株主総会の開催が必要です。

株式譲渡承認の通知

株式譲渡が承認となった場合、株式譲渡請求者に対して承認通知がなされます。会社は株式譲渡承認請求がされた日から2週間以内に承認・不承認の通知を行います。通知を行わない場合は、承認したものとみなされるので注意が必要です。

譲渡請求が不承認の場合は、「会社自らが買い取る」「指定買取人が買い取る」「会社と指定買取人が共同で買い取る」といった3種類の方法のうちどれかを選択し、手続きが進められる流れに移行します。

譲渡不承認となった株式を誰が買い取るかの決定は、取締役会設置会社なら取締役会が、取締役会非設置会社なら株主総会がそれぞれ行います。

売買価格の協議

譲渡制限株式の売買価格は、会社と譲渡制限株式の一般承継者との協議によって決定されます(会社法第144条第1項、第7項)。ただし、会社と株式の一般承継者は、いずれも売渡請求の日から20日以内に、裁判所に対して売買価格決定の申立てができます。

協議によって決定された売買価格について納得できない場合には、お互いに裁判所へ申立て可能です。その際、裁判所は、会社の資産状態その他一切の事情を考慮しながら売買価格を決定します。

両者から20日以内に裁判所に対する申立てがなされないケースでは、株式の売渡請求は失効し、売買価格が確定して、株式の譲渡も成立します(会社法第176条、第177条)。

⑤株主名義の書き換え

ここでは、株主名義書換請求を行います。株式譲渡は、ただ株式を譲渡すれば成立するわけではなく、会社が株主名簿を書き換える手続きをして初めて有効です。譲渡側・譲受側総合が会社に対して株主名簿書換請求を行って、株主名簿を変更してもらう必要があります。

⑥株主変更の手続き

以上の手続きがすべて完了すれば、譲渡制限株式であっても、一般承継者はその会社の株主となれます。

4. 無償の株式譲渡を行う方法

無償で株式譲渡を行うケースでも、譲渡制限株式の場合は、上記で説明した手続きが必要です。ただし、会社が無償で譲渡制限株式を譲渡すると、その行為は贈与行為とみなされます。

贈与の場合、受贈者側(一般承継者)は贈与税が課されるので、税務的な対策や検討が必要です。

5. 株式譲渡の手続きに必要な書類

株式譲渡の手続きには、次のような書類が必要です。書類の不備があれば、手続きも無効となる可能性があるので、しっかり把握しておきましょう。

株式譲渡承認請求書

譲渡制限株式を受け取った譲受人は、株式の発行会社に対して株式の譲渡承認請求を行わなければなりません。これを請求しないと第3者に株式が譲渡されたのを認めてもらえないので、必要な手続きです。

この手続きに必要となるのが、株式譲渡承認請求書です。記載事項に漏れがあると、書類の再送が必要になり、手続きに遅れが生じる可能性があります。

株主総会招集通知

譲渡制限株式は、原則として株主総会の承認によって譲渡が認められます。したがって、株主総会の実施が必要です。株式譲渡承認請求を受けた会社は、速やかに株主総会招集通知を株主に送らなければなりません

株主総会議事録

株主総会では、株主総会で議決された内容を記録しておかなければなりません。それが経営上の重要な意思決定であるからです。

2週間以内に株主に株式譲渡承認請求があったのを通知しなかった場合には、譲渡の承認があったものとみなされるので注意しましょう。

株式譲渡承認(不承認)通知書

株主総会が実施されたら、株主総会の決議の内容を株式譲渡承認請求を行った譲受人に通知しなければなりません(会社法第139条第2項)。会社が承認しない場合は、2週間以内にその旨を通知しなければならず、注意が必要です。この期限は、請求者と会社との合意で変更できます(会社法第145条ただし書)。

株式譲渡契約書

会社が株式の譲渡を株主総会で認める決議をした場合、株式譲渡承認通知が送付されると同時に、株式譲渡契約書も送付されます。その契約書の内容を確認して会社と契約を締結します。

契約書は、いかなる種類の契約でも大切です。しかし、会社の運営に大きな影響を与える可能性がある「株式譲渡契約書」は特に注意深く作成することが重要です。

株式を売買する契約は、売る側と買う側が同意すれば基本的には成立します。しかし、実際に株式を移すためには、株式の証書を渡す必要があります。さらに、買った人の名前や住所を株式会社の名簿に記入しないと、他の人にその株を正式に移したことを認めてもらえません。

株式名義書換請求書

株式の譲受の契約が成立したら、実際に株式を発行している会社であれば、株式の名義を書き換える必要があります。その際に必要となるのが、株主名義書換請求です。

最近は株券を発行している会社がそもそも多くないので、発行していない会社はこの手続を省略できます。株式名義書換請求書は、譲受人が会社に対して発行し、会社がそれに対して応える形式を取ります。

株主名簿

譲受人は、たとえ株主総会で株式の譲り受けを承認されても、株主名簿の書換が済まない限り、第3者に対抗できません。したがって、株主名簿の書換請求が必要です。

株主名簿記載事項証明書交付請求書

株主名簿記載事項証明書交付請求書を利用すれば、株主はいつでも自分が株主であるかどうかを確認できます。株主名簿記載事項証明書には、会社の代表取締役が署名し、または、記名押印しなければなりません。

株主名簿記載事項証明書

株主から請求があった場合、会社は株主名簿記載事項を記載した書面を請求者に交付しなければいけません。株主にとって、株主名簿は極めて重要な意義を持つ書類です。株主名簿には株主の氏名、住所、保有株式数、取得年月日等が記録されています。

会社が株主に通知や催告を行う場合、株主名簿の住所宛てに送ります。たとえ株主に到達しなかったとしても、到達したとみなされるので注意しましょう。

上場株式の場合、すべての株券が保管振替制度の下で管理されています。日々の株主変動は振替機関等が備える振替口座簿に記録されます。

取締役の決定書

株主にとって重要な株主総会の決議である取締役の決定は、株主に通知しなければなりません。その際に使われるのが、取締役の決定書です。

6. 株式譲渡契約書の記載事項

株式譲渡契約書は、株主総会の決議もしくは取締役会の決議で承認されると作成される書類です。正式に株式譲渡が行われた証拠になります。ここでは、株式譲渡契約書の記載事項を説明します。

株式譲渡に関する合意

株式譲渡に関する合意を示す証拠になるので、合意事項の記載が必要です。株式の内容や株式数を記載します。

譲渡金を支払う方法・期限

株主総会で株式の譲渡を会社が認めない場合は、会社が株式を買い取るか、指定人に買い取ってもらわなければなりません。その場合、譲渡金を譲受人に支払わなければなりません。譲渡金と支払い方法と支払期限を、株式譲渡契約書に記載する必要があります。

株式の名義書き換え

株主名簿に記載されている人またはその相続人や一般承継人と共同して、譲受人は名義書換の請求を行う必要があります。通常、株式譲渡契約が会社から送付されてくると同時に、株式の名義書換のための書類が同封されてきます。

表明保証

表明保証とは、会社が株式の譲受人に対して、最終契約の締結日や譲渡日などにおいて、対象企業の財務や法務などに関する一定事項が真実かつ正確であるのを表明し、その内容を保証することです。通常、株式譲渡契約書に添付されています。譲受人はこれを確認してから会社と契約を結びます。

表明保証としては、契約締結権限を有する点や取引実行に必要な手続きを履践している点など、相手方について取引の支障となる事由が存在しない点を記載しなければなりません。

契約解除の理由・処理方法

株式譲渡契約書には、株式譲渡に際して違反があったり手続きに瑕疵があったりした場合を想定し、契約が無効・解除となるケースを列挙しなければなりません。したがって、契約解除の理由・処理方法も記載します。

7. 株式譲渡契約書を締結する際に留意すべきこと

株式譲渡契約書を締結する際は、主に以下の点に留意しましょう。
 

留意点 概要
印紙税 通常、印紙税は必要ないものの、契約書に対価として金銭を受け取った旨の記述がある場合、「売上代金にかかる文書」(第17号文書の1)とみなされ、印紙税が必要となる。
保管期間 株式譲渡契約書を法人が作成した場合、契約書の保管期間は基本的に7年間(欠損金が生じた年度は10年間)。個人間契約の場合、確定申告に契約書を使用した場合であれば5年間の保管が必要。

参考:国税庁「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」

8. 株式譲渡の方法を採用する際の注意点

ここからは、株式譲渡の方法を採用する際にどのような点に注意すべきかその概要を説明します。

①株券発行会社における株式譲渡の方法

株式譲渡制限がある会社のうち、株券が発行されている会社と発行されていない会社では異なる点がいくつかあります。その相違点を理解しましょう。

株券の発行有無による手続き方法(対抗要件)の違い

株式譲渡を安全に実施するためには、対抗要件が重要になってきます。対抗要件とは、自分が特定の権利を有しているのを第三者に主張するために必要な条件です。

株券不発行会社の株式譲渡における対抗要件は、株主名義書換請求をして、株主名義を変更してもらう要件です。株主名義を譲渡側から譲受側に書き換えてもらって、譲受側は第三者に対して自分が株主であることを主張できます。

一方で株式発行会社の株式譲渡を実施した場合、株主名義書換請求で株主の名義を変更してもらい、会社に対しての対抗要件となります。第三者への対抗要件となるのは株券を保有している状態である点です。

株券発行会社の株式譲渡の際には、譲渡側から株券の交付を受けて、株券を自分の手元に保管状態にする必要があります。

株主名簿の名義書換請求に関する注意ポイント

株券発行会社と株券不発行会社では、株主名義書換請求への対応にも違いがあるので確認しておきます。株券不発行会社へ株主名義書換請求を実施する場合、原則として株式譲受側が単独で請求できません。

株式名簿に記載されている譲受側やその相続人、承継者と共同で書換請求をする必要があります。一方で、株券発行会社に株主名義書換請求を行う場合は、株券を会社に提示できる場合に限り、譲受側が単独で書換請求することが可能です。

株券を保有していることを会社側に証明できれば、譲受側と共同で書換請求する必要はありません。

②公的機関・役所の管理、法務局への申請がない

株式譲渡とは、そもそも自由に実施できるもので、株主譲渡の当事者間で取引が完結します(株式譲渡自由の原則)。株式譲渡が実施されても、登記申請や定款変更の手続きを行う必要がありません

ただし、株式譲渡によって、株主兼役員であった人が株主と同時に役員も辞めるケースとなった場合に限り、法務局で役員変更登記の手続きを行う必要があります。公的機関・役所の管理や法務局への申請は必要ありません。

株式譲渡手続きの流れの中で、書類に何かしらの不備があっても指摘されず、のちにトラブルが発生する危険性もあるので注意が必要です。

③譲渡益が生じれば税金が課される

株式の譲渡を受けた結果、譲渡益が生じれば、税金(所得税・住民税)が課税されます。無償譲渡のケースでは、贈与税が課されます。

④株券発行会社の場合には株券の交付が必要



株式を発行しない株券不払会社が、株式譲渡を実施できることが会社法の施行によって取り決められました。しかし、株式発行会社は株券を交付することが条件とされています。加えて、株券発行会社が株券を未交付または未発券である場合は、株式譲渡は実行できません

また、定款もしくは登記簿謄によって株券発行会社であるかどうか確認できるため、譲渡企業を選定する際は事前に調べておきましょう。選定した企業が株券不発行会社であれば、株券の交付は必要ありません

➄売買価格の決定に時間がかかる場合がある



会社が株式譲渡承認請求を拒否した際は、一部の場合を除いて指定買取人が当該株式を買い上げなければなりません。しかし、非上場企業である場合は、適正な価格で算出することが難しく、売買価格の決定に時間がかかってしまうケースがあります

そのため、非上場企業の株式譲渡を行う際は、M&Aを専門とする仲介会社に相談してみるのもひとつの方法です。会社同士の話し合いで平行線になってしまうことも珍しくないため、第三者からの意見を求めることも大切です。

9. 株式譲渡の方法・手続きに関する疑問と解答

譲渡制限株式を譲渡するケースでは、手続きが複数あるので混乱しがちです。ここからは、株式譲渡の方法・手続きに関してよくある質問に対する解答を列挙します。

有限会社でも株式譲渡の方法を採用できる?

有限会社(現在は特例有限会社)でも、通常の株式会社と同様に株式譲渡を実施することが可能です。有限会社は取締役会を設置できないため、株式譲渡の承認決議は株主総会で行われます。

有限会社の「株式の譲渡制限に関する規定」の内容を変更するのは不可能であるため、有限会社はすべて株式譲渡制限会社になる点に注意が必要です。

株式譲渡で損益通算は行える?

株式譲渡における確定申告の場面で、損益通算を活用して、支払う税金(所得税・住民税)を抑えられます。しかし、株式譲渡で損益通算が行えるのは、上場企業の株式譲渡のみなので注意しましょう。

株式の価額を算出する方法は?

非上場会社の株式譲渡で、譲渡対象の株式に譲渡制限が設けられている場合、その価格決定方法に注意しておきましょう。譲渡制限株式の価格決定方法には以下のようなものがあります。

純資産価額方式

純資産価額方式とは、貸借対照表上の純資産額そのものを評価額とする方式です。帳簿価格をベースに企業評価額を決定するため、客観性がある方式といえます。

一方で、含み益・含み損などは価格決定に反映しないため、割安もしくは割高な評価額が算出されてしまう可能性があります。

類似式業種比準方

類似業種比準方式とは、株式譲渡対象企業と同一業種・同一規模の企業と比較して評価額を算出する方式です。国税庁が定めた基準に沿って評価されるため、客観性のある評価が可能というメリットがあります。

一方で、もともと相続税評価に対応する評価額算定方式であるので、株式譲渡の場合に利用すると、株式譲渡側にとって株式価値が低くなってしまう可能性があります。

配当還元方式

配当還元方式とは、株式の配当金額から1株当たりの評価額を算出する方式です。この算出方式は、配当金と資本金のみで評価額を算出するため、客観性が高い評価方法とは言い難いでしょう。

類似業種比準方式と同様に、もともと相続税評価に対応する算出方式であるために、株式譲渡側にとって株式価値が低くなってしまうデメリットがあります。

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10. 株式譲渡する際の税金についての基礎知識



株式譲渡で利益が出た場合は、その価格に合わせた税金の支払いが課せられます。本章では、譲渡益が出た際の税金の計算方法や税率について解説します。

譲渡益に適用される税率



譲渡益に課せられる税金は、法人もしくは個人の株主かどうかで価格が異なります。法人が譲渡益を得た場合は、法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税を支払わなければなりません。その際の税率は利益のおよそ30〜35%前後になります。

株主が個人の場合は、所得税の支払いに応じなければなりません。また、非上場株式の税率は20.315%の税率がかかり、所得税15%×復興特別所得税102.1%+住民税5%で算出されます。

株式の譲渡には確定申告が必要



株式を譲渡する際には、確定申告をしなければなりません。税金は譲渡代金-(取得額+譲渡経費)で計算されます。ちなみに、譲渡経費は仲介会社やアドバイザリー会社に支払った手数料で、取得額は株式を最初に所得した際の費用です。

また、取得価格が不明なケースでは、個人株主の場合にのみ5%を所得額として計上する決まりとなっているため、しっかりと把握しておきましょう。

11. 株式譲渡する際に検討すべき事項



株式譲渡する際には、検討すべき諸問題があるため、どのようなポイントに注意すべきなのか、どういった対応をすればいいのか解説します。

債務保証の問題



ほとんどの中小企業は、経営者個人が法人の借入金の連帯保証人になる個人保証を利用しています。また、個人保証は株式譲渡の際に譲受先が連帯保証や担保の提供を切り替えるのがほとんどです。

しかし、自動でそれらの手続きが行われるわけではないため、譲受先と交渉して取り決めなければなりません。加えて、交渉後にトラブルを起こさないためにも、譲受先が切り替えを承認した場合は、譲受側が連帯保証および担保提供の解除に責任を持つことを条項に設けるのが重要です。

取締役会の問題



取締役会が設置されている場合は、取締役会の承認がなければなりません。取締役会がない場合でも株主総会の承認が必要となるため、独断で決めるのはご法度です。しかし、代表取締役や取締役などの承認も必要だとルール付けることはできるようになっています。

そのような決まりがある場合は、全員からの承認を得なければ株式譲渡は実行できません。特に取締役会の承認が必要な場合は、複数人の意見が割れることで譲渡ができなくなってしまうことも多くあります。

そのため、事前に関係者と協議を重ね、意見がまとまるよう準備しておくことが重要です。

税務上の問題



税務上の取引価格と時価に差が生じる場合は、税務上の問題も含めて考えなければなりません。そこで、個人と法人に分け、譲渡側・譲受側それぞれの検討すべき問題を紹介します。

譲渡側が法人の場合

譲渡側が法人の場合は、譲渡側が法人や個人であってもその差額は譲渡益となるため、税金を支払わなければなりません。また、時価を下回る取引価格の場合は、譲渡価格と時価との差額は寄付金として扱われます。

譲渡側が個人の場合



譲渡側が個人の場合は、時価が取引価格を上回る場合、差額に対する所得税の支払いが必要になります。もし時価が大きく下回る場合は、みなし譲渡として判別されるため、譲渡益を計算しなければならないケースがあることにご注意ください。

譲受側が法人の場合



法人が株式を取得する際は、原則的に課税対象となりません。 また、法人が時価を上回る場合の差額は給与や賞与、寄付金または退職金の支払い等として扱われます。

しかし、時間を下回る場合は、差額は受贈益となるため、課税が義務付けられます。

譲受側が個人の場合



個人が株式を取得した場合にも、課税は課せられません。しかし、時価を大きく下回る取引価格の場合は、みなし贈与または低額譲渡として取り扱われ、時価と取得価額との差額が所得税もしくは、贈与税の対象とされることがあります。

後継者の指名と育成

基本的に、後継者は親族や従業員などから選定されることが多くありますが、必ずしも経営者の適正のある人物だとは限りません。さらに、後継者になることを断られる場合もあるため、後継者の指名と育成には注意が必要です。

株式譲渡であれば他社に経験を承継させられるようになるため、後継者不足が原因での廃業は免れやすくなります。しかし、他社と自社事業との相性が悪ければ効果も期待できないため、事業とマッチした会社に譲渡することが大切です。

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12. 株式譲渡の方法・手続きに関する相談先

ここまで、株式譲渡方法を徹底解説してきました。株式譲渡は、他のM&A手法と比較すると複雑な手続きが少なく済みます。しかし、株式に譲渡制限が設けられている場合は、譲渡承認請求を行ったり、株主名義書換請求を行ったりする必要があるので注意してください。

株式譲渡によって税金が発生する場合や、譲渡価格決定方式によっては株式価値が低くなる可能性があるなど、注意しておきたいポイントもあります。安心して株式譲渡を実施したいとお考えの方は、株式譲渡の専門家に相談することをおすすめします。

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13. 株式譲渡の方法・手続きまとめ

今回は、株式譲渡の方法・手続きを解説しました。特に非上場会社(株式譲渡制限会社)の株式譲渡では、いくつかの手順を踏みながら譲渡手続きを進めていく必要があるので、しっかり確認しておきましょう。株式譲渡の際に注意が必要なポイントも解説したので、ぜひご参考ください。

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