2021年10月18日更新
株式譲渡契約書の作成方法・注意点とは?ひな形利用のリスクも解説!
株式譲渡契約書はM&Aにおいて重要な役割を果たします。この書類は印紙が必要な場合など、注意点を押さえておかないとトラブルになりかねません。そこで今回は、株式譲渡契約書の作成方法、印紙の必要な条件、ひな形利用の注意点などを解説します。
1. 株式譲渡契約書とは
株式譲渡契約書とは、売り手側と買い手側の双方が株式の譲渡とその条件等に合意した際に締結するM&Aに関する契約書のことです。M&Aにて株式を譲渡するときや譲受するときに作成され、株式売買によって譲渡する際には株式売買契約書といいます。
この株式譲渡契約書は、一般的に相対取引で株式を取得する際に作成し、売買契約を意味します。目的の株式の発行会社や種類・数を特定してその所有権を移転することを約束し、対価である金銭を定めるものです。
株式譲渡契約書(株式売買契約書)は、株式が株券発行会社なのか株券不発行会社なのかによっても、作成時に注意する点が異なってきます。M&Aの手法で用いられる株式譲渡をする際に必要な書類で、取引完了を意味することから最重要書類ともいえるでしょう。
この契約書は、エクセルやワードなどを使って自身で作成できます。注意点やポイントを押さえておかないと無意味な書類になる可能性があるため、注意しなければなりません。
今回は、この株式譲渡契約書作成時に必要なポイントや収入印紙や印鑑などの注意点を解説し、ひな形も紹介します。
2. 株式譲渡契約書を作成する前の注意点
株式譲渡はM&Aの中でも手続きが簡易ですが、株式譲渡契約書の作成時に注意する点がいくつかあります。この注意点を理解していないと後々の賠償責任などのトラブルになりかねません。
注意点を理解しておけば契約もスムーズに進み、M&Aが成功する可能性も高くなるため、しっかりと理解したうえで株式譲渡契約書を作成するようにしましょう。
①株券発行会社であることを確認
株式には株券発行会社と株券不発行会社の2種類があります。この株券発行会社と株券不発行会社では株式譲渡の手続きが異なるので、M&Aにて株式譲渡をする際、注意点として挙げられます。
場合によっては、株式譲渡契約書が締結された場合でも法的に処理できずに契約書自体が無効になるケースもあるので、株式譲渡をするときはしっかりと理解しておくべき部分です。ここでは、その株券発行会社と株券不発行会社を解説します。
株券発行会社とは
株券発行会社とは、その株式に係る全ての株券を発行する旨が定款に記載されている会社のことです。種類株式発行の会社の場合も種類別に全て株券を発行しなければなりません。
株券発行会社の場合は株を実物の株券として発行し、発行されている枚数と株主名簿で管理されています。株式譲渡契約書の締結後に株券を発行して、その株券を受領した時点で株式譲渡契約が完了となるわけです。
2006(平成18)年5月1日より前に設立された会社は原則として株券発行会社になっているので、定款を変更しない限り株式譲渡時に株券を買い手に交付しなければなりません。
株券不発行会社とは
旧商法では原則として株式会社は全ての株式を発行することが義務でした。株式譲渡は、その発行株券の交付をもって株式譲渡が完了することになっていました。
しかし、2006年5月1日に会社法施行があり、問題視されていた株券の管理や紛失などのリスク・流通・株券発行にかかるコスト削減をするために、会社法上で株券を発行しないことが可能になっているのが現状です。
そのため、2006年5月1日以降に法人設立をしている会社は、定款で株券の発行を定めていない限り、株券不発行会社となり、株券発行会社は例外扱いになっています。
この会社法施行以前に設立されている株式会社は、定款上で株券発行会社となっているため、定款を変更しない限り株券発行義務が残っている状態となります。
登記事項証明書での株券発行会社かどうかを確認する方法
株券発行会社かどうかは定款を見て確認することが原則ですが、会社の登記事項証明書でも確認できます。上記でも解説したとおり、会社法施行前に設立された会社かどうかにより法律の扱いが異なるので、この点には注意してください。
- 会社法が施行された2006年5月1日より前に設立された会社の場合、登記事項証明書に何も記載がなければ株券発行会社となっています。登記事項証明書に「株券不発行会社」と記載があれば、株券不発行会社です。
- 会社法が施行された2006年5月1日より後に設立された会社の場合、登記事項証明書に何も記載がなければ株券不発行会社となっています。登記事項証明書に「株券発行会社」と記載があれば、株券発行会社です。
上記のポイントを確認すれば定款を確認しなくても、登記事項証明書を見て株券発行会社か株券不発行会社か確認できることを覚えておきましょう。
②譲渡制限のあるなしを確認
株式譲渡を行う場合、対象会社が株式譲渡制限をしているか、していないかを確認しておく必要があります。株式譲渡契約書を作成するときの注意点です。
株式譲渡制限とは、株式を譲渡するときに発行会社の承認を必要とすることをさします。譲渡制限がない会社を「公開会社」といい、全ての株式に譲渡制限を設けている会社を「非公開会社」といいます。
この株式譲渡制限は、定款で定めることで譲渡を制限することが可能です。株式の譲渡制限をすると株式の分散を避けられ、経営に参加する人を制限できるので利点といえるでしょう。
取締役の任期延長が可能になるので、2年ごとの延長のために重任登記にかかる費用と工数を削減できます。
このようなメリットがあることから、中小企業などでは非公開会社であることが多く見られます。これを確認しておかないと譲渡した株式の権利を得られず、事実上無価値な株式を保有することになってしまいますので注意が必要です。
③株式譲渡の目的を確認
重要な注意点で当然ですが、株式譲渡の目的確認も怠ってはいけません。対象企業がなぜ株式譲渡を検討しているか、株式譲渡を自社で行ったときにどのようなメリットがあるのか、しっかりと理解したうえで行うことが重要です。M&Aでもいえることですが、この目的が明確でない場合、むやみに株式譲渡などをするのは好ましくありません。
M&Aや株式譲渡は従業員も含め会社全体が関係することで、入念な打ち合わせや目的が明確でない場合、買い手・売り手ともにかなりのリスクを負うことになります。そのため、株式譲渡を行うときには互いに目的を明確にし確認を行うことが重要です。株式譲渡契約書を作成するときにも注意点をしっかり理解して行うようにしましょう。
④印鑑は実印を使うべきか
印鑑は実印を使用すべきかどうかという点ですが、契約書関係に押印する印鑑は法律上では実印を使用する必要はありません。
印鑑証明を一緒に提出することもあるため、株式譲渡契約書や株式売買契約書のような重要書類はなるべく印鑑は実印を使うことが良いとされています。
契約書とはトラブルを避けるために作成されるものです。このときに印鑑を押印した者が本人であることの証明にもなるので、印鑑は印鑑証明に登録されている実印を使用することをおすすめします。
可能であれば印鑑証明の添付も行えば、最も確実な契約の効力を証明する方法となります。実務上、一般的な契約で印鑑証明書の添付を求める場合には、契約内容の重要度によって判断することになるので、状況に応じて添付を義務付ければ良いでしょう。
以上のことから、株式譲渡契約書の作成でトラブルをなるべく避けるためには印鑑は実印を使い、印鑑証明書の添付をおすすめします。
➄独占禁止法に基づく規制
株式譲渡では株式を取得するにあたって、公正取引委員会に事前の届出が必要なM&A取引の場合には、買い手は届出受理後30日間は原則として株式取得ができないと独占禁止法で定めています。
海外M&Aの際も類似の規制がありますので、必要に応じてこの条項を株式譲渡契約書の取引実行条件として盛り込む必要があります。
大きな案件などに限ることですが、場合によっては必要になるので覚えておいた方がいいでしょう。
➅外為法に基づく規制
買い手が外国人投資家などの場合は、外為法上で対内直接投資等にあたるため、買い手においては事前届出や事後届出が必要になる場合もあります。
外為法に該当する場合には、取引実行条件や誓約としてなんらかの規定を取り決めて条項に加えなければならないため、注意点として理解しておきましょう。
➆従業員や役員の処遇についての取り決め
株式譲渡契約書の注意点として、従業員の処遇や取り決めは重要なポイントです。株式譲渡時は事業も丸ごと譲り受けるので、従業員の処遇なども取り決めておかなければなりません。
代表取締役などがこの株式譲渡によって退任される場合は、その処遇も株式譲渡契約書に記載する必要があります。
M&A取引では人材流出のリスクを考慮し、このような点も注意して契約書に盛り込んでおかないと後々トラブルになることもあるので注意しましょう。
3. 株式譲渡契約書の記載内容
株式譲渡契約書(株式売買契約書)は締結された時点で譲渡が行われることを意味します。M&Aではこの株式譲渡契約書の締結をしたときに初めて売買成立となります。
この章では、非常に重要な書類である株式譲渡契約書(株式売買契約書)の作成における注意点や作成方法を細かな項目に分けて解説しましょう。
株式譲渡契約書(株式売買契約書)には、後々のトラブルやこの契約で起こる事象を第三者から見ても理解できるよう細かな項目に分けて作成しなければいけません。
個人でもエクセルやワードなどで作成できるので、自身で作成するか、専門家に依頼するかを判断して作成しましょう。事細かな契約に関する条件や約束事項などを盛り込んでいきます。実際に記載する内容には、以下の項目があります。
- 基本合意の内容
- 株式譲渡代金や支払い方法、期日について
- 株式名簿書き換えについて
- 表明保証内容
- 契約解除に関する事項
- 損害賠償事項
- 競業阻止義務について
- 合意管轄について
ここで解説することは基本的な株式譲渡契約の内容となりますので、要項の意味を理解しながら見ていきましょう。
①株式譲渡の基本合意について
はじめに株式譲渡契約書(株式売買契約書)では、「基本合意」という条文で株式譲渡の主たる内容を記載します。
- どこの会社の株式を譲渡するのかその会社の社名と住所の記載
- 対象となる株数の記載
- 譲渡金額はいくらになるのかを記載
- 普通株式なのか譲渡制限株式なのか株式の種類を記載
以上のようなことを盛り込んで、基本合意の部分を作成しましょう。
このときの譲渡金額は会計士などの算定によって交渉します。法律上では金額がいくらであっても双方の合意が済んでいれば特に問題はなく、無償になっても構いません。
実際の譲渡代金は課税の問題があるため、契約書に記載した金額との間に差が生じますが、この点に関しては会計士や税理士に相談すると良いでしょう。
②譲渡代金の支払い方法の記載
株式譲渡契約書(株式売買契約書)には、譲渡代金を支払いする方法を記載する必要があります。振込の場合には振込期日や振込先情報なども忘れないように記載しましょう。株券発行会社である場合には、支払いの際に売り手側から買い手側に株券を交付することを記載すると良いでしょう。
③株式の名義書き換え
株主名簿とは、株式会社側が自社の株主にどのような人がいるのかを把握しておくためのものです。株式譲渡の場合、譲渡した株式について株主名簿の名義を売り手から買い手に変更する必要があります。株式譲渡契約書(株式売買契約書)には、この変更を約束する旨を記載しなければなりません。
株式不発行会社の場合、株主名簿の書き変え請求は売り手・買い手が双方ともに行います。これは会社法上で第133条に記載され、第2項で定められています。
買い手側は、譲渡代金の支払いと引き換えに、捺印した株式名簿書換請求書を買い手から売り手に交付する旨の内容を株式譲渡契約書に記載するのが良いでしょう。株式名簿書換請求について先方の協力が得られない場合は、買い手が独自で起訴し、株式名簿の書換を求めなければならないので、手間と費用がかかる点に注意が必要となります。
株券発行会社は株券の交付が済んでいる場合、株主名簿の書換は単独で行えます。以上のように、株券発行会社か株券不発行会社かによって違いが生じることがあるので、株式譲渡契約書作成時は慎重に進めることが必要です。
会社法第133条 参照条文
1,株式を発行した株式会社以外のものから取得した者は当該株式会社に対して、当該会社に係る株主名簿記載事項を株主名簿に記載し、または記録することを請求することができる。 2,前項の規定による請求は利害関係者の利益を害する恐れがないものとして法務省令で定める場合を除き、その取得した株式の株主として株主名簿に記載され、若しくは記録された者、または相続人その他の一般承継人と共同してしなければならない。 |
④表明保証の記載
表明保証は、株式譲渡契約書(株式売買契約書)の中でも重要な契約条項の一つです。譲渡する株式について売り手が買い手に対して保証する内容を記載します。一般的には以下のような内容を表明保証の条項に盛り込みます。
- 売り手が譲渡株式の保有者であること
- 譲渡する株式にその他第三者の権利が設定されていないこと
- 発行会社の財務内容が直近会計年度末の決算書類のとおりであること
- 発行会社に簿外債務などの決算書に記載のない負債が存在しないこと
- 発行会社が適切な税務申告を行っており、課税処分の恐れがないこと
- 発行会社が行っている事業に法令違反がないこと
- 発行会社が従業員の雇用に関して違反をしていないこと
- 発行会社の発行株式総数を記載すること
この株式譲渡契約書に記載される表明保証の契約条項は、株式譲渡の目的や自身が買い手側であるのか売り手側であるのかによって、書く内容が大きく変わることがあるので注意が必要です。
買い手の立場での表明保証のポイント
買い手の立場から見て注意すべきなのは、株式譲渡契約書には表明保証条項をできるだけ多く盛り込む点です。特に外部協力者として出資するときや会社の支配権を取得するようなM&Aでは、多くの条項を表明保証に組み込んだ方が良いとされています。
買い手が外部者の場合、売り手会社の財務内容や経営状態について、報告した内容を信用して株式の売買を行うため売り手の報告が真実であると保証してもらい、万が一報告を受けた内容と事実が異なる場合は損害賠償を請求できます。
このように株式譲渡・M&Aを行う際、表明保証条項に留意して株式譲渡契約書を作成しましょう。
売り手の立場での表明保証のポイント
売り手の立場としては、表明保証内容をできるだけ簡略化し、無理な保証をつけないことが大切です。
例えば、株式譲渡後に従業員に対しての残業代の未払いなどが発覚した場合、表明保証の内容で「発行会社が従業員との雇用関係に法令違反や契約違反をしていない」などの記載があれば、買い手会社から損害賠償請求される可能性があります。
もちろん、虚偽の報告はいけません。虚偽の報告がなかったとしても、事細かに表明保証に組み込むと、あれこれ指摘されてしまうので、表明保証の条項はできるだけシンプルにしておく方が良いでしょう。
できないことは「できない」と買い手に相談し、了承したうえで株式譲渡契約書に表明保証を記載するようにしましょう。
⑤契約解除に関する記載
売り手・買い手ともに、株式譲渡契約書の内容などに虚偽があった際に契約解除をする場合についてあらかじめ定めておく必要があります。
具体的にどのような事由の場合に契約解除を認めるか、解除したときの処理方法などについて、株式譲渡契約書に記載すると良いでしょう。一般的な契約解除事由は、以下のようなものが挙げられます。
- 売り手または買い手の破産
- 株式の譲渡が会社内で承認されなかった場合
- 買い手が譲渡代金を支払わなかった場合
- 売り手が株券を引き渡さない場合
- 売り手側が表明保証した内容と事実が大きく異なる場合
株式譲渡契約書を解除した場合、譲渡金の返還と解除原因について責任のある当事者の賠償責任なども記載するのがスタンダードです。当然のことですが、事由なく解除することは基本的には認められません。この部分は契約解除に関する条項をしっかりと記載しておきましょう。
⑥損害賠償事項の記載
株式譲渡契約書(株式売買契約書)では、売り手・買い手ともに相手側に損害賠償請求できる場合も記載する必要があります。
これに関しては買い手側の注意点ですが、株式譲渡契約書の表明保証内容が譲渡された会社の経営と大きく異なっていた場合などに、売り手に対して損害賠償請求できるようにしておくことが重要です。
株式譲渡契約書のこの条項では、どのような場合に損害賠償請求ができるのか記載しましょう。逆に売り手側からは、その賠償金額の上限を定めることや請求できる期間などを設けるように、契約条項を変えてもらうことが必要不可欠です。
⑦競業避止義務に関する記載
競業避止義務とは、従業員などの契約にもありますが、一定の者が第三者や自己のためにその地位を私的に利用して営業者の営業と競争的に取引をしてはならない義務をさします。商法と会社法および労働法で使用される法学上の用語です。
買い手の立場からすると、株式譲渡後に売り手が譲渡した会社と同じ事業を始めるのは迷惑にもなります。「一定期間売り手が同業種の事業をすることを禁じる契約条項」を盛り込んでおく必要があります。
⑧合意管轄に関する記載
株式譲渡契約書(株式売買契約書)では、この契約書で締結された内容について万が一トラブルがおきた場合に、どこの裁判所で審理を求めるのか定める必要があります。
これは、さまざまな契約書に記載がある、「専属的合意管轄」と「付加的合意管轄」という条項です。記載した合意管轄裁判所に限定する場合と、合意管轄条項で記載した裁判所のほかに、民事起訴法に基づいて定められている裁判所への提訴も認める場合を記載します。
基本的には、専属的合意管轄を明記しておくのが良いでしょう。
株式譲渡をする買い手と売り手が同一地域の会社や人である場合には、その地域の合意管轄裁判所を定めます。買い手・売り手が東京と大阪など離れている場合には、どちらかの地域の合意管轄裁判所を定めなければなりません。
どちらかの裁判所に偏ってしまうと、トラブルが起こったときに、どちらかに移動費などのコストをかけさせることになるので、この合意管轄に関する記載では裁判所の設定を交渉し決めていく必要があります。
4. 株式譲渡契約書の印紙税
株式譲渡契約書の印紙税を解説します。基本的に株式譲渡契約書(株式売買契約書)には、印紙を貼る必要はありません。
1989(平成元)年の3月31日までは印紙貼付が必要でしたが、同年4月1日以降は印紙税の課税が廃止されたため、契約の締結前に金銭などの受領がない場合は、貼る必要がなくなっています。
譲渡代金を支払う前に契約は締結されるものなので、貼らないケースが大半です。金銭の受領があった場合でも、原則として5万円以下であれば印紙税の課税はないため不要となります。
株式譲渡契約書の作成時に印紙が必要な場合
株式譲渡契約書を作成する際に印紙税が必要になる例外的なケースとしては、株式譲渡契約書(株式売買契約書)に譲渡代金受領の記載があるときです。
前述にもあるように、通常「譲渡代金等の支払い方法」として、株式譲渡契約書作成後に支払いを受ける形になっていますが、株式譲渡契約書を作成する前に代金を支払う場合もあり、そのようなときは印紙を貼る必要があります。
この場合は株式譲渡契約書(株式売買契約書)に「○○は株式譲渡代金として〇〇円受領した」などと日付を入れて記載しなければなりません。
代金受領の記載がある場合の株式譲渡契約書には「金銭の領収書」としての性質があるので、以下のように印紙税を貼る必要があります。
- 5万円未満→非課税
- 5万円から100万円以下→200円の印紙
- 100万円から200万円→400円の印紙
- 200万円から300万円→600円の印紙
- 300万円から500万円→1,000円の印紙
- 500万円から1,000万円→2,000円の印紙
- 1,000万円から2,000万円→4,000円の印紙
- 2,000万から3,000万円→6,000円の印紙
- 3,000万円から5,000万円→10,000円の印紙
- 5,000万円から1億円→20,000万円の印紙
営業とは関係なく個人が株式譲渡されるような場合には、印紙税は課税されません。
5. 株式譲渡契約書のひな形
株式譲渡契約書はワードやエクセルなどで作成できますが、テンプレートなどがネット上でダウンロードでき、サンプル文書なども出ています。ここでは、参考文例やひな形など、株式譲渡契約書の作成時の注意点やポイントを解説しましょう。
株式譲渡契約書作成の参考文例
株式譲渡契約書は一般的な契約書同様、まず譲渡人と譲受人が誰なのかを記したうえで、その内容となる株式数や譲渡金額を、他の第三者が見てもわかるように記載しなければいけません。
この株式譲渡契約書は、ひな形やフォーマットがネット上に出ているので、エクセルで出力してそのまま使えますし、エクセルが使用できない場合はご自身でサンプル・例文を元に作成できます。
有償取引時と無償取引時では契約書の内容を多少変えなければいけない点があるので、そのポイントも解説しましょう。
株式譲渡契約書の参考テンプレート
【株式譲渡契約書】 第1条(目的) 譲渡人〇〇(以下「甲」という)は譲受人〇〇(以下「乙」という)に対して甲が保有する株式(以下「本株式」という)を譲渡し乙はこれを譲り受ける 発行会社 〇〇株式会社 株式数 〇〇株 譲渡金額 〇〇円 第2条(支払い) 1、乙は甲に対して、令和〇〇年〇〇月〇〇日までに下記の指定口座に譲渡金額の全額を振込し支払う。 2、譲渡代金の支払いと同時に甲は乙に権利を移転し、乙は株式を譲り受ける。 3、甲および乙は共同で前項の発行会社の承認後に株式発行会社に対して、株主名簿の書換請求を行う。 第3条(表明保証) 甲は乙に対して、以下の事項を保証する。 1、本契約に対しての手続きが全て完了していること 2、本件株式が有効なものであること 3、現在、令和〇〇年〇〇月〇〇日の発行会社の貸借対照表及び損益計算書に記載のない負債がないこと 第4条(契約解除) 甲または乙が本契約に違反した場合、協議の上本契約を解除して違反によって受けた損害を賠償するものとする。 第5条(合意管轄) 本契約の紛争については〇〇裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。 第6条(競業阻止) 1、甲は乙が事前に承諾した場合および対象会社の職務を遂行する場合をのぞいて、対象会社が営んでいる事業またはこれに類似する事業を直接または間接的に行ってはならない。 2、甲はその形態に関わらず対象会社の従業員やそのほかの従業員を勧誘してはならない。 本契約を成立するために本契約書を2通作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する 令和〇〇年〇〇月〇〇日 甲:住所 氏名 印 乙:住所 氏名 印 |
これが株式譲渡契約書の例文です。このようなテンプレートがネット上に多く出ているので、それらを参考に作成するのが良いでしょう。一般的な株式譲渡契約書の内容ですが、これに当事者の印鑑を押すことで契約上の効力は発生します。
作成にあたり、基本的には第1条で株式譲渡の対象を記載し、第2条で譲渡代金の明記と支払い方法、期日の記載、第3条からは表明保証や損害賠償に関する記載、合意管轄についてなど、事細かに取り決めをした内容を記載します。
上記の株式譲渡契約書の作成方法にあるように、契約の当事者間で取り決めがある場合には、条項を増やして契約解除や競業避止などの要項を入れましょう。このようなテンプレートを基本として作成していくのがおすすめです。
有償取引時の契約書作成のポイント
株式譲渡契約書はほとんどの契約が売買によるものなので、基本的には有償取引という形になります。この場合には、「譲渡合意」などの部分に
甲は甲の保有する株式(以下「本株式」という)を乙に譲渡し、第2条に規定する譲渡代金の受領日をもって本株式の所有権を乙に移転するものとする |
というように、譲渡代金の支払いと引き換えに保有株式を譲渡することを明確に規定しなければなりません。その後の第2条にはその譲渡代金、支払い方法、支払い期日を記載します。
無償取引時の契約書作成のポイント
株式譲渡では無償で譲渡する場合もあり、無償取引の際も株式譲渡契約書の締結は必要です。無償取引とは、贈与や相続など家族や親族間での株式譲渡によくあるもので、たとえ家族や親族間であっても契約書を残したいときなどは、株式譲渡契約書を作成するケースもあります。
この無償取引時の株式譲渡契約書は、「譲渡合意」の部分に
甲は○年○月○日をもって、甲が保有する次の株式(以下「本株式」という)を乙に無償で譲渡し、乙はこれを譲り受ける。甲は乙に対して、当該株式の対価として金銭、その他一切の要求を行わない。 |
このように記載して、金銭の取引がないことを証明したうえで、株式の譲渡を行います。第2条には株主名簿の名義書換についても記載し、乙から甲に対しての名義書換請求をすることを記載しましょう。
6. 株式譲渡契約書の作成に関する相談先
株式譲渡契約書(株式売買契約書)は、自身でエクセルなどを使い作成することも可能です。
ですが、株式譲渡契約書を作成するとき法務に関しての知識やM&Aなどの手続きをしたことがないと時間がかかるだけでなく、内容に不備があったり作成自体が困難であったりする場合があります。
このようなときは、専門家に協力してもらう方法が最も安心です。M&Aの仲介会社やファイナンシャルプランナーに相談すれば、株式譲渡契約書作成のサポートをしてくれます。
譲渡する側・譲渡される側の対象に応じたリーガルチェック
株券発行会社か株券不発行会社か、譲渡制限の有無など、株式譲渡の目的を把握したうえで状況にあった株式譲渡契約書を作成することが重要です。譲渡する側としては、後日に株式譲渡契約が無効となり、無理な表明保証をしたことで代金の返還や損害賠償を求められることもあります。
譲渡される側としては株主になるための手続きや、表明保証などで株式譲渡によるリスクやトラブルを事前に防ぎ、万が一トラブルになっても効力のある実践的な契約書を作成しなければなりません。
エクセルなどを使用できる場合、安易にエクセルテンプレートやひな形を利用すると、このようなリスクに対応できないケースが多いため、弁護士などの専門家に依頼してリーガルチェックをしてもらうことをおすすめします。
株式譲渡契約書の作成にあたり、自身で作成しチェックだけを依頼するのか、一から専門家に作成してもらうのかによってコストが変わってくることもあるので、料金に関しても事前に問い合わせると良いでしょう。
株式譲渡契約書の作成についての相談はM&A総合研究所へ!
M&A総合研究所には、株式譲渡を含めたM&Aについて豊富な知識や経験をもったM&Aアドバイザーが多く在籍しています。
ご相談は無料です。成約するまでは完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。お気軽にお問い合わせください。
7. 株式譲渡契約書の作成方法・注意点まとめ
株式譲渡契約書は、株式譲渡をする際に一番重要となる書類です。この契約書の内容は、それまでに交渉した譲渡金額や取り決めなどの内容をまとめたもので、重要事項は全てここに記載されます。
株式譲渡契約書の内容をしっかり理解しないと、以下のようなリスクが起こる可能性もありますので注意が必要です。
- 株券の引き渡しが受けられず、譲渡が無効になること
- 株主名簿の書換の時に、売り手に協力をしてもらえないことがある
- 譲渡後に売り手が同じ地域でまた同じ事業を起こす
- 株式譲渡を受けたあとに売り手が株主ではないことが判明する
- 株式譲渡後に会社が法令違反などで事業停止の状態になる
- 株式譲渡後に未払いが発覚し負債を負うことになる
- 保証できないことを表明保証し買い手から損害賠償を請求される
- 株券の引き渡しをしなかったために契約が無効となり、譲渡代金などの返還を請求される
株式譲渡契約書はエクセルやワードを使えば、誰でも作成可能です。上記のようなリスクを回避するためにも専門家によるチェックや相談をして、正確な株式譲渡契約書を作成しましょう。
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