2022年08月10日更新
株式譲渡契約書とは?作成方法・注意点、ひな形利用のリスクも徹底解説
株式譲渡契約書はM&Aにおいて重要な役割を果たします。この書類は印紙が必要な場合など、注意点を押さえておかないとトラブルになりかねません。そこで今回は、株式譲渡契約書の作成方法、印紙の必要な条件、ひな形利用の注意点などを解説します。
1. 株式譲渡契約書とは
株式譲渡契約書とは、売り手と買い手の双方が株式の譲渡とその条件に合意した際に締結するM&Aの契約書です。株式譲渡契約書は、一般的に相対取引で株式を取得する際に作成しますが、民法上の売買契約に該当します。
株式譲渡契約書(株式売買契約書)は、目的の株式の発行会社や種類・数を特定して、その所有権の移転を約束し対価である金銭を定めるものです。株券発行会社なのか株券不発行会社なのかによっても、株式譲渡契約書の作成時に注意する点が異なってきます。
M&Aの手法である株式譲渡を行う際に必要な書類で、取引完了を意味することから最重要書類ともいえるでしょう。株式譲渡契約書の作成に法令上の指定はありません。しかし、注意点やポイントを押さえておかないと無効となる可能性もあるので留意が必要です。
株式譲渡契約締結の目的
株式譲渡契約締結の目的、つまり、株式譲渡を行う背景には、以下のようなシチュエーションが想定されます。
M&A手法としての株式譲渡のメリットとデメリット
ここで、M&A手法である株式譲渡のメリットとデメリットを確認しておきましょう。
メリット
株式譲渡の主なメリットは以下のとおりです。
- 株式の売買だけでM&Aが成立するため交渉や手続きがシンプル
- 買い手はシンプルな手続きで売り手の会社を丸ごと取得できる
- 対外的には株主が代わるだけなのでM&Aを実施しても会社の事業活動に影響しない
- 合併では売り手は買い手に吸収され会社は消滅してしまうが、株式譲渡では法人格がそのまま残る
デメリット
株式譲渡でデメリットと考えられるのは以下のような点です。
2. 株式譲渡契約書の記載内容
この章では、株式譲渡契約書(株式売買契約書)の作成における注意点や作成方法を細かな項目に分けて解説します。株式譲渡契約書は、後々のトラブルを防ぎ、なおかつ、この契約で起こる事象を第三者が見ても理解できるよう細かな項目に分けて作成しなければいけません。
株式譲渡契約書は、個人でもエクセルやワードなどで作成が可能です。必ず記載すべき内容には、以下のような条項があります。
- 基本合意の内容
- 株式譲渡代金と支払い方法・期日
- 株主名簿の書き換え
- 表明保証
- 契約解除
- 損害賠償
- 競業阻止義務
- 合意管轄
①株式譲渡の基本合意について
はじめに、株式譲渡契約書(株式売買契約書)では、「基本合意」という条項で株式譲渡の主たる内容を記載します。
- どこの会社の株式を譲渡するのか、その会社の社名と住所の記載
- 対象となる株式数の記載
- 譲渡金額はいくらになるのかを記載
- 普通株式なのか譲渡制限株式なのか株式の種類を記載
以上のようなことを盛り込んで、基本合意の部分を作成しましょう。このときの譲渡金額は、法律上では金額がいくらであっても双方の合意があれば特に問題はなく、また無償になっても構いません。
②譲渡代金の支払い方法の記載
株式譲渡契約書(株式売買契約書)には、譲渡代金の支払い方法を記載する必要があります。振込の場合には振込期日や振込先情報なども忘れないように記載しましょう。株券発行会社である場合には、支払い時に株券の受け渡しを行わなければならない旨も記載します。
③株式の名義書き換え
株主名簿とは、株式会社が自社の株主にどのような人がいるのかを管理するものです。株式譲渡の場合、譲渡株式について株主名簿の名義を売り手から買い手に変更する必要があります。株式譲渡契約書(株式売買契約書)には、この変更を約束する旨を記載しなければなりません。
株式不発行会社の場合、株主名簿の書き変え請求は売り手・買い手が共同で行います。これは会社法上で第133条に記載され、第2項での定めです。この旨も、株式譲渡契約書に記載しておきましょう。
株券発行会社の場合、株券の受け渡しがすんでいれば株主名簿の書き変え請求は単独で行えます。以上のように、株券発行会社か株券不発行会社かによって違いが生じることがあるので、株式譲渡契約書作成時は、それに応じて記載内容が変わるので注意しましょう。
会社法第133条 参照条文
1、株式を発行した株式会社以外のものから取得した者は当該株式会社に対して、当該会社に係る株主名簿記載事項を株主名簿に記載し、または記録することを請求することができる。 2、前項の規定による請求は利害関係者の利益を害する恐れがないものとして法務省令で定める場合を除き、その取得した株式の株主として株主名簿に記載され、若しくは記録された者、または相続人その他の一般承継人と共同してしなければならない。 |
④表明保証の記載
表明保証は、株式譲渡契約書(株式売買契約書)の中でも重要な契約条項の1つです。この条項では、売り手が買い手に対して保証する内容を記載します。一般的に表明保証の条項に盛り込まれる内容は、以下のとおりです。
- 売り手が譲渡株式の保有者であること
- 譲渡する株式にその他第三者の権利が設定されていないこと
- 発行会社の財務内容が直近会計年度末の決算書類のとおりであること
- 発行会社に簿外債務などの決算書に記載のない負債が存在しないこと
- 発行会社が適切な税務申告を行っており、課税処分の恐れがないこと
- 発行会社が行っている事業に法令違反がないこと
- 発行会社が従業員の雇用に関して違反をしていないこと
- 発行会社の発行株式総数を記載すること
この株式譲渡契約書に記載される表明保証の契約条項は、株式譲渡の目的や自身が買い手であるのか売り手であるのかによって、内容が大きく変わることがあるので注意が必要です。
買い手の立場での表明保証のポイント
買い手の立場から見て注意すべきなのは、株式譲渡契約書には表明保証条項をできるだけ多く盛り込む点です。特に、外部協力者として出資するときや会社の支配権を取得するようなM&Aでは、多くの条項を表明保証に組み込んだ方がよいとされています。
買い手が外部者の場合、売り手会社の財務内容や経営状態について、報告した内容を信用して株式の売買を行うため、売り手の報告が真実であると保証してもらい、万が一、報告を受けた内容と事実が異なる場合は損害賠償を請求できるからです。
売り手の立場での表明保証のポイント
売り手の立場としては、表明保証内容をできるだけ簡略化し、無理な保証をつけないことが肝要です。
たとえば、株式譲渡後に従業員への残業代の未払いなどが発覚した場合、表明保証の内容で「発行会社が従業員との雇用関係に法令違反や契約違反をしていない」などの記載があれば、買い手から損害賠償請求される可能性があります。
もちろん、虚偽の報告はいけません。虚偽の報告がなかったとしても、事細かに表明保証に組み込むと、あれこれ指摘されてしまうので、表明保証の条項はできるだけシンプルにしておく方がよいでしょう。
できないことは「できない」と買い手に相談し、了承を得たうえで株式譲渡契約書に表明保証を記載するようにします。
⑤契約解除に関する記載
売り手・買い手ともに、株式譲渡契約書(株式売買契約書)の内容などに虚偽があった際に契約解除をする場合について、あらかじめ定めておく必要があります。
具体的にどのような事由の場合に契約解除を認めるか、解除したときの処理方法などについて、株式譲渡契約書に記載するとよいでしょう。一般的な契約解除事由は、以下のようなものが挙げられます。
- 売り手または買い手の破産
- 株式の譲渡が会社内で承認されなかった場合
- 買い手が譲渡代金を支払わなかった場合
- 売り手が株券を引き渡さない場合
- 売り手が表明保証した内容と事実が大きく異なる場合
株式譲渡契約書を解除した場合、譲渡金の返還と解除原因について、責任ある当事者の賠償責任なども記載するのがスタンダードです。また、当然のことですが、事由なく解除することは認められません。この部分は契約解除に関する条項をしっかりと記載しておきましょう。
⑥損害賠償事項の記載
株式譲渡契約書(株式売買契約書)では、売り手・買い手ともに相手側に損害賠償請求できる場合も記載する必要があります。特に、売り手の表明保証違反に対して、買い手が損害賠償請求できるようにしておくことが重要です。
したがって、株式譲渡契約書のこの条項では、どのような場合に損害賠償請求ができるのか記載しましょう。売り手としては、賠償金額の上限を定めることや請求できる期間などを設けるように、契約条項を変えてもらうことが必要不可欠です。
⑦競業避止義務に関する記載
競業避止義務とは、一定の者が第三者や自己のためにその地位を私的に利用して、営業者の営業に対し競争的に取引をしてはならない義務をさします。買い手の立場からすると、株式譲渡後に、売り手が譲渡した会社と同じ事業を始めるのは迷惑です。
そこで、「一定期間、売り手が同業種の事業をすることを禁じる契約条項」を盛り込んでおく必要があります。
⑧合意管轄に関する記載
株式譲渡契約書(株式売買契約書)では、この契約書で締結された内容について万が一、トラブルが起きた場合に、どこの裁判所で審理を求めるのか定める必要があります。
これは、さまざまな契約書に記載がある、「専属的合意管轄」と「付加的合意管轄」という条項です。記載した合意管轄裁判所に限定する場合と、合意管轄条項で記載した裁判所のほかに、民事起訴法に基づいて定められている裁判所への提訴も認める場合を記載します。
基本的には、専属的合意管轄を明記しておくのがよいでしょう。株式譲渡をする買い手と売り手が同一地域の会社や人である場合は、その地域の合意管轄裁判所を定めます。買い手・売り手が東京と大阪など離れている場合は、どちらかの地域の合意管轄裁判所を定めなければなりません。
どちらかの裁判所に偏ってしまうと、トラブルが起こったときに、どちらかに移動費などのコストをかけさせることになるので、この合意管轄に関する記載では裁判所の設定を交渉し決める必要があります。
3. 株式譲渡契約書の印紙税
株式譲渡契約書の印紙税を解説します。基本的に、株式譲渡契約書(株式売買契約書)に印紙を貼る必要はありません。
1989(平成元)年の3月31日までは印紙貼付が必要でしたが、同年4月1日以降は印紙税の課税が廃止されたため、契約の締結前に金銭などの受領がない場合は、貼る必要がなくなっています。譲渡代金を支払う前に契約は締結されるものなので、貼らないケースが大半です。
金銭の受領があった場合でも、原則として5万円以下であれば印紙税の課税はないため不要となります。
株式譲渡契約書の作成時に印紙が必要な場合
株式譲渡契約書(株式売買契約書)を締結する際に印紙税が必要になる例外的なケースとしては、株式譲渡契約書に譲渡代金受領の記載があるときです。
通常は「譲渡代金などの支払い方法」として、株式譲渡契約書締結後に支払いを受ける形ですが、株式譲渡契約書を締結する前に代金を支払うケースでは印紙を貼る必要があります。
この場合、株式譲渡契約書に「○○は株式譲渡代金として〇〇円受領した」などと日付を入れて記載しなければなりません。代金受領の記載がある場合の株式譲渡契約書には「金銭の領収書」としての性質があるので、以下のように印紙税を貼る必要があります。
- 5万円未満:非課税
- 5万円~100万円以下:200円の印紙
- 100万円超~200万円:400円の印紙
- 200万円超~300万円:600円の印紙
- 300万円超~500万円:1,000円の印紙
- 500万円超~1,000万円:2,000円の印紙
- 1,000万円超~2,000万円:4,000円の印紙
- 2,000万超~3,000万円:6,000円の印紙
- 3,000万円超~5,000万円:1万円の印紙
- 5,000万円超~1億円:2万円の印紙
- 1億円超~2億円:4万円の印紙
- 2億円超~3億円:6万円の印紙
- 3億円超~5億円:10万円の印紙
- 5億円超~10億円:15万円の印紙
- 10億円超:20万円の印紙
4. 株式譲渡契約書を作成する前の注意点
株式譲渡はM&Aの中でも手続きが簡易ですが、株式譲渡契約書(株式売買契約書)の作成時に注意する点がいくつかあります。この注意点を理解していないと、後々の賠償責任などのトラブルになりかねません。
注意点を理解しておけば契約もスムーズに進み、M&Aが成功する可能性も高くなるため、しっかりと理解したうえで株式譲渡契約書を作成するようにしましょう。
- 株券発行会社であることを確認
- 譲渡制限のあるなしを確認
- 株式譲渡の目的を確認
- 印鑑は実印を使うべきか
- 独占禁止法に基づく規制
- 外国為替及び外国貿易法に基づく規制
- 従業員や役員の処遇についての取り決め
①株券発行会社であることを確認
株式には、株券発行会社と株券不発行会社の2種類があります。株券発行会社と株券不発行会社では株式譲渡の手続きが異なるので、M&Aにて株式譲渡をする際の注意点です。
場合によっては、株式譲渡契約書(株式売買契約書)が締結された場合でも法的に処理できず、契約書自体が無効になるケースもあるので、株式譲渡をするときはしっかりと理解しておきましょう。ここでは、株券発行会社と株券不発行会社を解説します。
株券発行会社とは
株券発行会社とは、その株式に係る全ての株券を発行する旨が定款に記載されている会社のことです。種類株式発行の会社の場合も種類別に全て株券を発行しなければなりません。株券発行会社の場合は、株を実物の株券として発行し、発行されている枚数と株主名簿で管理されています。
株式譲渡契約書の締結後に株券を発行して、その株券を受領した時点で株式譲渡契約が完了となるわけです。2006(平成18)年5月1日以前に設立された会社は原則として株券発行会社なので、定款を変更しない限り、株式譲渡時に株券を買い手に交付しなければなりません。
株券不発行会社とは
旧商法では原則として株式会社は全ての株式を発行することが義務でした。その場合、発行株券の交付をもって株式譲渡が完了します。
しかし、2006年5月1日に会社法が施行され、問題視されていた株券の管理や紛失などのリスク・流通・株券発行にかかるコスト削減をするために、会社法上、株券を発行しなくてよくなっているのが現状です。
そのため、2006年5月1日以降に法人設立をしている会社は、定款で株券の発行を定めていない限り、株券不発行会社となり、株券発行会社は例外扱いになっています。
登記事項証明書での株券発行会社かどうかを確認する方法
株券発行会社かどうかは、定款を見て確認することが原則ですが、会社の登記事項証明書でも確認できます。会社法施行前に設立された会社かどうかにより法律の扱いが異なるので、この点には注意してください。
- 会社法が施行された2006年5月1日より前に設立された会社の場合、登記事項証明書に何も記載がなければ株券発行会社。登記事項証明書に「株券不発行会社」と記載があれば、株券不発行会社。
- 会社法が施行された2006年5月1日より後に設立された会社の場合、登記事項証明書に何も記載がなければ株券不発行会社。登記事項証明書に「株券発行会社」と記載があれば、株券発行会社。
②譲渡制限のあるなしを確認
株式譲渡を行う場合、対象会社が株式譲渡制限をしているか、していないかを確認しておく必要があります。株式譲渡契約書(株式売買契約書)を作成するときの注意点です。株式譲渡制限とは、株式を譲渡するときに発行会社の承認を必要とすることをさします。
譲渡制限がない会社を「公開会社」といい、全ての株式に譲渡制限を設けている会社を「非公開会社」というのが会社法上での定めです。株式譲渡制限は、定款で定めることで譲渡を制限できます。株式の譲渡制限をすると株式の分散を避けられ、経営に参加する人を制限できるのが利点です。
取締役の任期延長が可能になるので、2年ごとの延長のために重任登記にかかる費用と工数を削減できます。このようなメリットがあることから、中小企業などでは非公開会社であることがほとんどです。
株式の譲渡制限をきちんと確認して取引に臨まないと、譲渡した株式の権利を得られずに事実上、無価値な株式を保有することになってしまいかねません。
③株式譲渡の目的を確認
株式譲渡の目的確認も怠ってはいけません。対象企業がなぜ株式譲渡を検討しているか、株式譲渡を自社で行ったときにどのようなメリットがあるのか、しっかりと認識したうえで行うことが重要です。この目的が明確でない場合、むやみに株式譲渡をするのは好ましくありません。
M&Aや株式譲渡は従業員も含め会社全体が関係することで、入念な打ち合わせや目的が明確でない場合、買い手・売り手ともにかなりのリスクを負うことになります。株式譲渡を行うときには、互いに目的を明確にし確認を行うことが重要です。
株式譲渡契約書(株式売買契約書)を作成するときにも、注意点をしっかり理解して行うようにしましょう。
④印鑑は実印を使うべきか
印鑑は実印を使用すべきかどうかという点ですが、契約書関係に押印する印鑑は法律上では実印を使用する必要はありません。ただし、印鑑証明を一緒に提出することもあるため、株式譲渡契約書(株式売買契約書)のような重要書類は、なるべく実印を使うのがよいとされています。
契約書とは、トラブルを避けるために作成されるものです。このときに印鑑を押印した者が本人であることの証明にもなるので、印鑑証明に登録されている実印を使用するべきでしょう。印鑑証明の添付も行えば、最も確実な契約の効力を証明する方法となります。
株式譲渡契約書の作成でトラブルをなるべく避けるためには、印鑑は実印を使い、合わせて印鑑証明書の添付がおすすめです。
➄独占禁止法に基づく規制
株式譲渡では、株式を取得するにあたって、公正取引委員会に事前の届出が必要なM&A取引の場合には、買い手は届出受理後30日間は原則として株式取得ができない、と独占禁止法で定めています。
海外偉業とのM&Aの際も類似の規制がありますので、必要に応じてこの条項を株式譲渡契約書(株式売買契約書)の取引実行条件として盛り込むことが必要です。
➅外国為替及び外国貿易法に基づく規制
買い手が外国人投資家などの場合は、外国為替及び外国貿易法(以下、外為法)上で対内直接投資などにあたるため、買い手においては事前届出や事後届出が必要になる場合もあります。
外為法に該当する場合には、取引実行条件や誓約として何らかの規定を取り決めて条項に加えなければならないため、注意点として把握しておきましょう。
➆従業員や役員の処遇についての取り決め
株式譲渡契約書(株式売買契約書)の注意点として、従業員の処遇の取り決めは重要なポイントです。株式譲渡時は事業も丸ごと譲り受けるので、従業員の処遇なども取り決めておかなければなりません。
代表取締役や取締役が株式譲渡によって退任する場合は、その処遇も株式譲渡契約書に記載します。M&A取引では人材流出のリスクを考慮し、このような点も注意して契約書に盛り込んでおかないと、後々トラブルになることもあるので注意しましょう。
5. 株式譲渡契約書のひな形
株式譲渡契約書(株式売買契約書)はワードやエクセルなどで作成できますが、テンプレートなどがネット上でダウンロードでき、サンプル文書なども出ています。ここでは、参考文例やひな形など、株式譲渡契約書の作成時の注意点やポイントを確認しましょう。
株式譲渡契約書作成の参考文例
株式譲渡契約書(株式売買契約書)は、一般的な契約書同様、まず譲渡人と譲受人が誰なのかを記したうえで、その内容となる株式数や譲渡金額を、他の第三者が見てもわかるように記載しなければいけません。
この株式譲渡契約書は、ひな形やフォーマットがネット上に出ているので、エクセルなどで出力してそのまま使えますし、エクセルなどが使用できない場合はサンプル・例文を元に作成可能です。
有償取引時と無償取引時では契約書の内容を多少変えなければいけない点があるので、そのポイントも解説します。
株式譲渡契約書の参考テンプレート
【株式譲渡契約書】 第1条(目的) 譲渡人〇〇(以下「甲」という)は譲受人〇〇(以下「乙」という)に対して甲が保有する株式(以下「本株式」という)を譲渡し乙はこれを譲り受ける 発行会社 〇〇株式会社 株式数 〇〇株 譲渡金額 〇〇円 第2条(支払い) 1、乙は甲に対して、令和〇〇年〇〇月〇〇日までに下記の指定口座に譲渡金額の全額を振込し支払う。 2、譲渡代金の支払いと同時に甲は乙に権利を移転し、乙は株式を譲り受ける。 3、甲および乙は共同で前項の発行会社の承認後に株式発行会社に対して、株主名簿の書換請求を行う。 第3条(表明保証) 甲は乙に対して、以下の事項を保証する。 1、本契約に対しての手続きが全て完了していること 2、本件株式が有効なものであること 3、現在、令和〇〇年〇〇月〇〇日の発行会社の貸借対照表及び損益計算書に記載のない負債がないこと 第4条(契約解除) 甲または乙が本契約に違反した場合、協議の上本契約を解除して違反によって受けた損害を賠償するものとする。 第5条(合意管轄) 本契約の紛争については〇〇裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。 第6条(競業阻止) 1、甲は乙が事前に承諾した場合および対象会社の職務を遂行する場合をのぞいて、対象会社が営んでいる事業またはこれに類似する事業を直接または間接的に行ってはならない。 2、甲はその形態に関わらず対象会社の従業員やそのほかの従業員を勧誘してはならない。 本契約を成立するために本契約書を2通作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する 令和〇〇年〇〇月〇〇日 甲:住所 氏名 印 乙:住所 氏名 印 |
これが株式譲渡契約書の例文です。このようなテンプレートがネット上に多く出ているので、それらを参考に作成してもよいでしょう。一般的な株式譲渡契約書の内容ですが、これに当事者の印鑑を押すことで契約上の効力は発生します。
作成にあたり、基本的には第1条で株式譲渡の対象を記載し、第2条で譲渡代金の明記と支払い方法、期日の記載、第3条からは表明保証や損害賠償に関する記載、合意管轄についてなど、事細かに取り決めをした内容を記載しましょう。
上記の株式譲渡契約書の作成方法にあるように、契約の当事者間で取り決めがある場合には、条項を増やして契約解除や競業避止などの要項を入れることになります。
有償取引時の契約書作成のポイント
株式譲渡契約書はほとんどの契約が売買によるものなので、基本的には有償取引という形になります。その場合には、「譲渡合意」などの部分に
甲は甲の保有する株式(以下「本株式」という)を乙に譲渡し、第2条に規定する譲渡代金の受領日をもって本株式の所有権を乙に移転するものとする |
無償取引時の契約書作成のポイント
株式譲渡では、無償で譲渡する場合もあり、無償取引の際も株式譲渡契約書の締結は必要です。無償取引とは、贈与や相続など家族や親族間での株式譲渡によくあるもので、たとえ家族や親族間であっても契約書を残したいときなどは、株式譲渡契約書を作成するケースもあります。
この無償取引時の株式譲渡契約書は、「譲渡合意」の部分に
甲は○年○月○日をもって、甲が保有する次の株式(以下「本株式」という)を乙に無償で譲渡し、乙はこれを譲り受ける。甲は乙に対して、当該株式の対価として金銭、その他一切の要求を行わない。 |
6. 株式譲渡契約書の作成に関する相談先
株式譲渡契約書(株式売買契約書)は、自身でエクセルなどを使い作成することも可能です。しかし、法務の知識やM&Aなどの手続きをしたことがないと、時間がかかるだけでなく、内容に不備があったり作成自体が困難であったりするでしょう。
そのようなときは、専門家に協力してもらう方法が最も安心です。M&A仲介会社やファイナンシャルプランナーに相談すれば、株式譲渡契約書作成のサポートを受けられます。
譲渡する側・譲渡される側の対象に応じたリーガルチェック
株券発行会社か株券不発行会社か、譲渡制限の有無など、株式譲渡の目的を把握したうえで状況にあった株式譲渡契約書を作成することが重要です。譲渡側としては、後日、株式譲渡契約が無効となり、無理な表明保証をしたことで代金の返還や損害賠償を求められることもあります。
譲受側としては、株主になるための手続きや、表明保証などで株式譲渡によるリスクやトラブルを事前に防ぎ、万が一、トラブルになっても効力のある実践的な契約書を作成しなければなりません。
エクセルなどを使用できる場合、安易にエクセルテンプレートやひな形を利用すると、このようなリスクに対応できないケースが多いため、弁護士などの専門家に依頼してリーガルチェックを受けることをおすすめします。
株式譲渡契約書の作成にあたり、自身で作成しチェックだけを依頼するのか、一から専門家に作成してもらうのかによってコストが変わってくるので、料金も事前に問い合わせるとよいでしょう。
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7. 株式譲渡契約書の作成方法・注意点まとめ
株式譲渡契約書は、株式譲渡をする際に一番重要となる書類です。この契約書の内容は、それまでに交渉した譲渡金額や取り決めなどの内容をまとめたもので、重要事項は全てここに記載されます。
株式譲渡契約書の内容をしっかり理解しないと、以下のようなリスクが起こる可能性もあり注意が必要です。
→株券の引き渡しが受けられず、譲渡が無効になること
→株主名簿の書き換えの時に、売り手に協力をしてもらえないことがある
→譲渡後に売り手が同じ地域でまた同じ事業を起こす
→株式譲渡を受けたあとに売り手が株主ではないことが判明する
→株式譲渡後に会社が法令違反などで事業停止の状態になる
→株式譲渡後に未払いが発覚し負債を負うことになる
→保証できないことを表明保証し買い手から損害賠償を請求される
→株券の引き渡しをしなかったために契約が無効となり、譲渡代金などの返還を請求される
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