株式譲渡承認請求書とは?書き方・記入例、手続き方法を徹底解説【テンプレート/雛形あり】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

譲渡制限株式を譲渡する場合は、会社法により株式譲渡承認請求書の提出が必要です。本記事では、株式譲渡承認請求書の書き方や手続き方法を解説します。そのまま複写して使える株式譲渡承認請求書もテンプレート/雛形を用意しました。

目次

  1. 株式譲渡承認請求書とは?
  2. 株式譲渡承認請求書の書き方
  3. 株式譲渡承認請求の手続き方法
  4. 株式譲渡に関する相談先
  5. 株式譲渡承認請求書のまとめ
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1. 株式譲渡承認請求書とは?

株式譲渡承認請求書とは、所有する株式を譲り渡す際、株式の発行会社に提出する書類のことです。会社は株式譲渡承認請求書の提出を求め、承認機関で譲渡の良し悪しを判断します。これにより、会社の価値を損なわないようにしています。

株主の意思に任せて自由に株式が譲渡されると、会社にとって好ましくない人物に株式が渡ったり所有者を把握することが難しくなったりするでしょう。そこで、株式の譲渡しを行う場合には、株式譲渡の承認を得ることと定款に定めています。

株式譲渡自由の原則

株式の譲渡は、株式譲渡自由の原則(会社法第127条)で自由な譲渡が認められています。ただし、法律や契約、定款で制限を定めている場合は、自由な譲渡は許されません。株式譲渡承認請求書を提出するケースは、この株式譲渡の制限に該当するため、承認機関への請求が必要です。

株式譲渡承認請求が必要な株式

株式譲渡承認請求書の提出を必要とする株式は、譲渡制限株式と呼ばれる株式です。会社法では、一部の株式にのみ株式譲渡承認請求書を提出することを定めています。

譲渡する株式が譲渡制限株式であれば、承認機関への譲渡制限株式の譲渡請求が求められるでしょう。譲渡を希望する株主は、会社からもたらされる通知によって、株式の譲渡や買い取りに対応します。

譲渡制限株式を発行する会社

会社法(第2条第5号)では、発行する株式に譲渡制限をつけているかによって、会社の種類を分けています。1つは公開会社です。発行する株式の全てや一部に、譲渡制限をつけていない会社をさします。

もう1つが非公開会社で、発行する株式の全てに、譲渡制限をつけている会社です。つまり、株式を発行する会社が非公開会社であれば、所有する株式は譲渡制限株式であるといえます。

 

会社の種類 株式の種類
公開会社 株式の全部または一部に譲渡制限がない
非公開会社 株式の全部に譲渡制限がある

第三者・親族への贈与にも使われる

株式譲渡承認請求書を必要とするケースには、第三者や親族に株式を贈与する場合もあります。贈与とは、自身が所有する財産を、無償で他者へと譲り渡すことです。

生前贈与とも呼ばれ、株式を所有するオーナーが第三者や親族に事業を譲り渡すときに使われます。贈与は譲渡と違い対価が発生しないため、後継者に買収資金の負担をかけずに、所有する株式を譲り渡せる点が、大きなメリットです(ただし贈与税は発生)。

贈与を助ける相続時清算課税制度

株式を贈与によって取得した場合、贈与税を支払う義務が課せられます。贈与税の負担により、後継者への株式の贈与を控えるケースも少なくありません。このような場合には、相続時清算課税制度を利用するといいでしょう。

相続時清算課税制度とは、相続時に非課税とした贈与税を清算する制度です。60歳を超える両親・祖父母から20歳を超える子ども・孫への生前贈与で利用でき、同じ人物からであれば2,500万円までの贈与が非課税となります。

ただし、この制度を利用する場合は基礎控除の対象外です。清算時に限度額を超える贈与があった場合は、超過分に対して20%の贈与税が課せられます。

相続時清算課税制度の注意点

この制度は、相続する資産と控除された贈与額が相続税の対象となり、税金の支払いを先送りできるものです。つまり、控除された贈与の税金を支払う義務がなくなったわけではない点には、注意をしておきましょう。

贈与の控除は限度額に達するまで何回でも適用されるため、数年に渡り贈与を行う場合には、相続時に多額の相続税が課せられる可能性がある点にも注意が必要です。

相続・贈与税の納付猶予制度を利用する

事業承継時は、相続・贈与税の支払いを猶予してもらえる制度が新たに設けられました。2018(平成30)年度の税制改正により、事業承継税制に特例措置が加えられました。特例措置には次のような内容が挙げられています。

  • 猶予の対象は、相続・贈与によって取得した全ての株式
  • 猶予される税額は、全額を対象とする
  • 適用対象の拡大(譲渡人1名→譲受人3名まで、複数の譲渡人→譲受人1名)

事業承継税制の特例適用期間は、2018年1月1日~2027(令和9)年12月31日までの相続・贈与とされています。制度の適用を受けるには手続きが必要となるため、詳しい情報を知りたい場合は財務省または中小企業庁の公式サイトをご覧ください。

相続時清算課税制度相続・事業承継税制の贈与税納付猶予制度は、メリットが多いため有効に活用すべきですが、将来的に課せられる税金に注意しておかなければなりません。事業承継税制を利用する際は、会計士・M&A仲介会社など専門家のアドバイスを受けるのが賢明でしょう。

M&A総合研究所では、事業承継の豊富な知識・実績を持つM&AアドバイザーM&Aをフルサポートします。相談は無料ですので、事業承継をご検討の場合は、お気軽にお問い合わせください。

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2. 株式譲渡承認請求書の書き方

ここで、株式譲渡承認請求書の書き方を解説します。株式譲渡承認請求書の冒頭で譲渡への承認を要求する旨を記載したあとは、次のような項目を明記しなければなりません。

  1. 株式の種類
  2. 譲渡する株式数
  3. 譲渡の相手方

そのほかにも、書き方の注意や株式譲渡承認請求書のテンプレート/雛形も掲示しています。

①株式の種類

1つ目に紹介する株式譲渡承認請求書の書き方は、株式の種類の項目です。株式譲渡承認請求書に、譲渡する株式の種類を明記してください。株式ごとに付与されている権利が異なります。株式の種類が分かれている場合は、種類を分けた書き方を選びましょう。

株式の書き方には、次のような記載方法が用意されています。テンプレート/雛形にならって、株式の種類を書き入れましょう。以下は記入例です。

  • ○○株式 ○○株
  • ○○株式 ○○株 
  • 株式の種類 ○○株
  • 株式数   ○○株

株式の種類は「普通株」「優先株」「後配株」の3つに分けられています。

普通株

普通株とは、株主への権利を含まない株式のことです。日本で発行されている株式は、そのほとんどが普通株とされています。

優先株

優先株とは、ほかの株式よりも権利の受け取りが優先された株式をさします。会社法(第108条第1項第1・2号)によれば、優先される権利は、株式の配当や会社の清算後に分配される残余財産などです。

優先株は、普通株式だけでは株主を集められない場合に用いられています。業績が悪くても権利が優先されるため、株式が集まりやすいでしょう。資金を確保しやすい手段として活用されています。優先株の中には、ほかの株式に換えられる・議決権がつけられていない株式も存在します。

後配株

後配株とは、普通株よりも権利の受け取りが後回しにされる株式のことです(会社法第108条第1項第1・2号より)。株の配当や残余財産の分配では、普通株のあとに権利の受け取りが行われます。

後配株を利用するケースは、会社を設立するときや株主の利益を維持しつつ新たな資金を確保する場合などです。

②譲渡する株式数

2つ目に紹介する株式譲渡承認請求書の書き方は、譲渡する株式数の項目です。株式の種類と合わせて、譲渡する株式の数を明記します。株式譲渡承認請求書のテンプレ―ト/雛形を参考に、以下のような並びで株式の数を明記してください。

  • 譲渡する株式の種類と数 普通株式 ○○株

③譲渡の相手方

3つ目に紹介する株式譲渡承認請求書の書き方は、譲渡する相手方の項目です。株式の種類・数とは項目を分けて、譲渡する相手方の住所と氏名を明記してください。こちらも株式譲渡承認請求書のテンプレート/雛形を参考にして、以下のように必要事項を明記しましょう。

  • (住所)東京都○○区○○町○○丁目○○番○○号
  • (氏名)○○〇〇

④株式譲渡承認請求書作成の注意点

株式譲渡承認請求書を作成する場合、次に挙げる2つの点に注意しなければなりません。

  • 書面には不承認時の対応を記載する
  • 実印を押印する

書面には不承認時の対応も記載すること

株式譲渡承認請求書を提出しても、会社の承認を得られるとは限りません。会社法第139条によれば、株式譲渡承認請求書の提出を受けた会社は、承認機関において承認・不承認の決議を行うとされています。

不承認が決議されると、株式譲渡承認請求書に記載された株式は、会社か指定人によって買い取られます。書面には不承認とされた場合も、株主の要望を記載しておく必要があるでしょう。

不承認の結果における要望は、書面の冒頭に明記しましょう。株式の譲渡を明記したあとに、以下のような内容を加えます。ふさわしい文面はテンプレート/雛形にならい、要望に合わせた書き方を選んでください。

  • 承認を得られない場合は、ほかの相手方を指定してください
  • 承認を得られない場合は、貴社か貴社が指定する相手方の買い取りを希望します

実印を押印すること

株式譲渡承認請求書では、印鑑の押印を必要とします。書類に押印する印鑑は実印を選びましょう。実印による押印が定められているわけではありませんが、以下のような理由から株式譲渡承認請求書には実印を押すことをおすすめします。

  • 印鑑証明書の添付により、本人であることを証明できる

ただし、届出印を押せる場合は、実印を選ぶ必要はありません。株主名簿に登録してある届出印により、本人であることが確認できるからです。株式譲渡承認請求書の押印には、実印・届出印のほかに認印を押す場合もあります。

しかしながら、認印には先に挙げた2つの印鑑のように、本人を証明する効力が備わっていません。届出印を押せない場合には、実印による押印をおすすめします。

⑤株式譲渡承認請求書のテンプレート/雛形

株式譲渡承認請求書は、どのような文面が記載されているのでしょうか。株式譲渡を検討している人のために、株式譲渡承認請求書のテンプレート/雛形をまとめました。紹介するテンプレート/雛形を参考にして、株式譲渡承認請求書の書き方を学んでください。

どのテンプレート/雛形にも、次のような項目が必須とされています。

  • 株式の発行会社と代表者名
  • 譲渡する旨と、不承認における要望
  • 譲渡する株式の種類と数
  • 譲渡する相手方の名前と住所
  • 譲渡人の名前・住所・押印(届出印または、実印、認印)

テンプレート/雛形

1つ目のテンプレート/雛形は、押印する印鑑に届出印を採用した株式譲渡承認請求書です。株主名簿に登録されている届出印を押印する場合にのみ使用できるテンプレート/雛形といえます。実印や認印を使用する場合には、別のテンプレート/雛形を選びましょう。

こちらのテンプレート/雛形は譲渡する相手方を先に書き、株式の種類と数の項目を2番目に記載しています。
 

              
              株式譲渡承認請求書

                                令和○年○月○日

株式会社○○○○
代表取締役 ○○ 次郎 殿

                株主住所 東京都○○区○○町○○丁目○○番○○号
                株主名  ○○ 太郎    届出印


私は、下記のとおり貴社株式を譲渡いたしたくその承認を請求いたします。なお、​​​​承認のない場合は他の譲渡の相手方を指定ください。

                  記

  1.譲渡する相手方

   住所 東京都○○区○○町○○丁目○○番○○号
   氏名 ○○ 三郎

  2.譲渡請求株式の種類および数

   普通株式  ○○株

                                    以上

テンプレート/雛形

2つ目のテンプレート/雛形は、印鑑の種類を定めていない株式譲渡承認請求書です。押印する印鑑には、届出印はもちろん実印・認印の使用も認められています。

ただし、実印を使用する場合は印鑑証明書の添付を忘れないようにしましょう。
 

              
              株式譲渡承認請求書

                                令和○年○月○日

株式会社○○○○
代表取締役 ○○ 次郎 殿

                株主住所 東京都○○区○○町○○丁目○○番○○号
                株主名  ○○ 太郎    印


私は、貴社の株式を下記のとおり譲渡いたしたくその承認を請求いたします。なお、​​​​承認のない場合は他の譲渡の相手方を指定ください。

                  記

  1.譲渡請求株式の種類および数

   普通株式  ○○株

  2.譲渡する相手方

   住所 東京都○○区○○町○○丁目○○番○○号
   氏名 ○○ 三郎

                                    以上

3. 株式譲渡承認請求の手続き方法

株式譲渡承認請求を完了させるためには、株式譲渡承認請求書の作成・提出のほかに、どのような手続きが必要なのでしょうか。株式の譲渡をお考えの場合は、株式譲渡の流れも把握しておきましょう。

①株式譲渡契約の締結

1つ目の手続きは、株式譲渡契約の締結です。よく見られる契約書の内容は以下のとおりですが、この段階では会社からの株式譲渡承認を得ていないので、承認が得られたら契約内容を履行する前提条件を盛り込まなければなりません

この段階では基本合意書の締結にとどめ、会社から株式譲渡承認を得てから株式譲渡契約書を締結する流れを採用するケースも多いでしょう。

  • 株式譲渡を行う当事者の氏名と住所
  • 譲り渡す株式の種類と数
  • 譲渡額と対価の支払時期
  • 株式名簿書換請求への協力
  • 表明保証(株式所有の保証など)

株主の証明には、株主名簿記載事項証明書を活用しましょう。会社に証明書を請求して交付を受けてください。これで、譲り渡す側に株主の証明が行えます。

②株式譲渡承認請求

2つ目の手続きは、株式譲渡承認請求書の作成と提出です。書類に必要事項を記入し、届出印や実印などを押印、印鑑証明などを添付して株式を発行する会社に提出します。書類を提出して、株式譲渡に対する承認・不承認を求めてください(会社法第136条)。

③取締役会の開催

3つ目の手続きは、取締役会の開催です。株式譲渡承認請求書を受け取った会社が、承認・不承認の決定を行います。株式譲渡承認請求の決議機関は、取締役会設置会社の場合は取締役会、取締役会非設置会社の場合は株主総会です。

ただし、定款で定めを設けている会社であれば、取締役会を設置していても株主総会の普通決議で承認決議を行えます(会社法第139条第1項)。

議事録の作成

株主総会で会社の運営に関わる決定が下された場合、議事録を残さなければいけません(会社法第318条第1項)。株式譲渡承認請求の承認で株主総会の普通決議を行うと、議事録を作成する必要があります。

株主総会を開いた日から10年の間、作成した議事録を本店に置いておく必要があります(会社法第318条第2項)。株主総会を開いた日から5年の間は、議事録の写しを支店にも置いておくことも定められました(会社法第318条第3項)。

ただし、議事録が電磁的記録(データ)として作成され、法務省令の定めにより支店での議事録の閲覧と謄写が行える場合には、会社法第318条第3項の規定は適用されません。

議事録の内容

株式譲渡承認請求の決議で株主総会を開いた場合の議事録の内容には、次に挙げる事柄を記載しましょう。

  • 株主総会が開かれた日時と場所
  • 要約した株主総会の経過と、議事の結果
  • 議長・議事録の作成者名
  • 出席した役員の氏名または名称
  • 議事録の案件名
  • 株主の総数
  • 発行済み株式数
  • 議決権を持った株主の数
  • 出席した株主の数
  • 出席した株主が持つ議決権の数
  • 株式譲渡の請求者と譲り渡す相手方の氏名・住所

株主総会の出席は、開催した場所にいなくても認められることがあります。遠方からテレビ電話などで参加をしていれば決議に出席したとみなされるので、議事録を作成するときには注意してください。

議事録の案件名

議事録の案件名には「議案 株式譲渡承認の件」と明記しましょう。議事録の案件名を記載したあとは、議事の内容を簡潔に書き記す文章を続けてください。

議事録への押印

会社法では、議事録に印鑑を押す義務の定めはありません。実印などの印鑑を押したり署名を書いたりするは不要です。しかしながら、一般的には定款によって実印などの印鑑を押印する人物を定めています

実印などの印鑑を押す人物には、議長と出席した役員を指定していることが大半です。株式譲渡承認請求の議事録では、記録の作成と押印が必要だといえます。

④株式譲渡の承認・非承認の決定

4つ目の手続きは、株式譲渡の承認・非承認の決定です。承認機関で株式譲渡承認請求の決議が行われます。承認機関が不承認の決議を行った場合には、内容を通知するまでの期間が定められています。

承認の請求を受けてから、2週間以内に不承認の内容を知らせなければいけません。定めた期間を超えてしまうと、株式譲渡の請求は承認されたものとみなされます(会社法第145条第1号)。

⑤株式名義書換請求

5つ目の手続きは、株式名義書換請求です。承認機関で株式の譲渡が承認されれば、株式を発行する会社から承認の知らせが届きます(会社法第139条第2項)。通知を受け取ったら、会社に対して株主名簿の書き換えを請求してください。

株式の譲渡が認められても、株主名簿では譲り渡す側の名義のままで譲受側への変更が行われていません。承認の通知を受けたら株式名義書換請求を行う必要があるでしょう。

株式名義書換請求書の提出は譲渡・譲受側が共同して行うとされています(会社法第133条第2項)。一般的には、譲渡に関わる双方の署名・押印・印鑑証明が必要です。

株式名義書換請求書の作成

株式名義書換請求書を作成する場合、書面に記載する内容には次のような事項を明記しましょう。

  • 請求先の会社名
  • 書換を希望する株式の種類と数
  • 譲渡人・譲受人の氏名(法人名)と住所
  • 双方の押印(実印・印鑑証明を添付)
  • 株券を発行する会社の場合には株券番号

印鑑の種類に決まりはありません。ただ、実印を用いることで譲渡人・譲受人による押印が証明されます。株式譲渡承認請求書と同様に実印を押印し、印鑑証明を添付した提出方法がおすすめです。

⑥株式譲渡を実行

6つ目の手続きは、株式譲渡の実行です。株式名簿の書き換えを終えてから、株式譲渡契約に基づき株式の譲渡を完了させてください。

⑦株主名簿記載事項証明書の交付

7つ目の手続きは、株主名簿記載事項証明書の交付です。株式を譲り受けた側は、会社に対し証明書を発行してもらいましょう。株式名簿記載事項証明書を所持することで、株主の証明が行えます。

⑧株式譲渡が不承認だった場合

ここまでは、株式譲渡承認請求の承認に関する手続きの流れを説明しました。では、株式譲渡承認請求が不承認だった場合、会社はどのような対応で譲渡を希望する株主に応えるのでしょうか。

株式譲渡承認請求書を提出し承認機関により不承認の決議が出ると、譲渡を希望する株式は会社か指定人による買い取りが行われます(会社法第140条第1・4項)。

会社が買い取る場合の流れ

会社が株式を買い取る場合は、株主総会の特別決議により株式を買い取ることと買い取る株式の数を決定しなければなりません(会社法第140条第2項)。株式譲渡を求めた株主は決議の当事者のため、議決権の行使は禁じられています。

ただし、当事者以外の株主全てが議決権を行使できない場合に限り、株式譲渡を求めた株主に議決権の行使が認められるでしょう(会社法第140条第3項)。会社が株式の買い取りを決定すると、譲渡を求めた株主への通知が行われます(会社法第141条第1項)。通知内容は、以下のとおりです。

  • 株式を買い取ること
  • 買い取る株式の数

会社は通知に合わせて「1株当たりの純資産額×買い取る株式の数で算出された金額」を、本店がある地域の供託所に納めなければいけません。供託を証明する書類を株主へ交付する義務も設けられています。

株式譲渡が承認されるケース

不承認の通知を受けてから40日を超えても買い取りの通知が送られてこなかった場合は、株式譲渡が承認されたものとみなされます(会社法第145条第2項)。

株券発行会社の場合には注意が必要

株券を発行する会社の場合、株式の譲渡を求めた株主は、供託を証明する書面を受けてから1週間以内に株券を供託所に納めなければいけません。供託所は、会社の供託金が納められたところです。

株主には遅れることなく供託の完了を会社に知らせることが義務づけられています(会社法第141条第3項)。株券を供託しなければ株式の買い取りが解除されてしまうので、注意してください(会社法第141条第4項)。

指定買取人が買い取る場合の流れ

指定された人物が株式の買い取りを行う場合は、株主総会や取締役会(取締役会設置会社の場合)の決議によって買取人が指定されます(会社法第140条第4・5項)。ただし、定款に定めを設けている場合は、その他の機関での決議が可能です(会社法第140条第5項)。

指定された買取人は、譲渡を希望した株主に対して以下の内容を知らせます(会社法第142条第1項)。

  • 指定買取人が株式の買い取りを行うこと
  • 買い取る株式の種類と数

指定買取人も会社と同様、通知に合わせ供託所(会社の本店がある地域)に1株当たりの純資産額×買い取る株式の数で算出した額を納めます。加えて、供託の証明書を株主に交付しなければなりません(会社法第142条第2項)。

株券発行会社の注意点も、会社による買い取りと同じです。交付を受けてから1週間以内に株券を納めなければ、株式の買い取りは解除されてしまいます(会社法第142条第3・4項)。

株式譲渡が承認されるケース

不承認の通知をしてから10日以内に指定した買取人による株式の買い取りを伝えなければ、株式譲渡を承認したとみなされます。指定された買取人は会社による買い取りと比べて通知を行うまでの期間が短いため、期間の違いを把握しておくことが必要です(会社法第145条第2号)。

⑨不承認時の売買価格の決め方

株式譲渡承認請求が不承認とされた場合、株式は会社か指定人によって買い取りが行われます。では、その場合、株式の売買価格はどのようにして決まるのでしょうか。不承認における株式の売買価格は、以下のような行為によって決められます。

  • 協議
  • 裁判所への申し立て

協議により決定

株式の買い取りを通知すると、会社か指定買取人と株主の間で売買価格が協議されます(会社法第144条第1項)。

裁判所に申し立てて決定

協議を行っても売買価格が決まらない場合は、裁判所に申し立てをします。申し立てを受けた裁判所が、株式の売買価格を決定するのです(会社法第144条第4項)。申し立ては、会社・指定買取人からでも株主のどちらからでも行えます。

申し立ての期間は、株式の買取通知を受けてから20日以内です(会社法第144条第2項)。期間内に申し立てがなかった場合は、会社・指定買取人が提示した供託額に決まります(会社法第144条第5項)。

4. 株式譲渡に関する相談先

株式譲渡の実施には、本記事でお伝えしたように、対象会社に提出する株式譲渡承認請求書、株式名義書換請求書、株主名簿記載事項証明書の交付申請、譲受側と締結する基本合意書や株式譲渡契約書など内容にミスが許されない書面の作成が数多くあります。

これらを独力で対応するのは無理がありますので、株式譲渡を実施する際はM&A仲介会社などの専門家のサポートを受けるのが得策です。業務を依頼する専門家探しでお困りでしたら、M&A総合研究所にご相談ください。

全国の中小企業のM&Aに数多く携わっているM&A総合研究所には、株式譲渡などのM&Aに豊富な知識・実績を持つアドバイザーが多数在籍し、案件ごとに専任となって徹底サポートします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。随時、無料相談を受け付けていますので、株式譲渡などのM&Aをご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。

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5. 株式譲渡承認請求書のまとめ

株式譲渡を行う際は、株式譲渡承認請求書の作成以外にも株式譲渡の契約を結んだり株式名義書換請求をしたりと、譲渡を行うまでにいくつもの手続きが必要です。

株式譲渡承認請求書の作成は本記事でも雛形を用意していますが、作成にあたっては専門的な知識も不可欠となるため、M&Aの専門家によるアドバイス・サポートを受けて進めることをおすすめします。

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