資金調達コストとは?計算方法やコスト比較から抑える方法まで解説!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

本記事では、資金調達コストの計算方法やコスト比較、資金調達コストを抑える方法を解説します。資金調達の方法は、金融機関からの借り入れです。しかし、資金調達コストと呼ばれる金利の支払があるため、融資額全てを事業に利用できません。資金調達を検討している方は必見です。

目次

  1. 資金調達コストとは
  2. 資金調達コストの計算方法
  3. 資金調達コストの比較
  4. 資金調達コストを抑える4つの方法
  5. 資金調達コストのまとめ
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1. 資金調達コストとは

資金調達コストとは、銀行からの借入金に対する利息や株主への配当など、資金調達の際に必要なコストをさします。資金調達が銀行からの借り入れ、または株主や投資家から調達した資金だけという会社は少ないでしょう。一般的にはいくつかの種類の資金調達方法を併用しています。

資金調達コストは、株主資本コストと負債コストで主に構成されます。株主資本コストは株式発行で調達した資金にかかるコストで、最低でも株主が要求する収益率分がかかるでしょう。銀行からの借り入れや社債などによって調達した資金にかかるコストが負債コストで、利息分生じますが、株式と違って節税効果もあります。

資金調達を行う理由

中小企業やベンチャー企業が資金調達を行う大きな目的のひとつに運転資金の確保があります。その他にも、下表のようにさまざまな資金調達の理由や目的があるでしょう。

【資金調達を行う目的・理由】

目的 理由または主な内容
運転資金の確保 原料や商品の仕入れといった事業を続けるために必要な資金を確保する
設備投資資金の確保 会社が保有している資金だけでは購入できない高額な設備を工場や店舗に導入するために必要な資金を確保する
事業拡大 新店舗のオープンや新規エリアへの進出、M&Aなど、事業を拡大するために必要な資金を確保する
ビジネスチャンスをつかむ 大きな売り上げを上げるためのチャンスが訪れた際、必要な資金を確保して会社の大きな成長をつかむため
会社の信用力をあげる 返済実績を作ることで金融機関に返済能力があることをアピールし、会社の信用力を高めるため

M&Aのための資金調達については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】M&Aのための資金調達とは?経営者に必要な基本知識と方法を紹介【図解】| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

資金調達コストの注意点

ベンチャー企業やスタートアップ企業が資金調達の際に必要なコストは、信用力の高い企業の資金調達コストと比較して高くなることが多いので注意が必要です。上場企業であれば5〜8%であるところ、ベンチャー企業では10〜50%もの資金調達コストがかかるとされています。

ただし、現在は、ベンチャー企業やスタートアップ企業をサポートするための自治体における融資制度や、経営に協力的なエンジェル投資家の存在などもあり、信用力の低い会社でも資金調達コストを削減できる可能性があるでしょう。

資金調達コストの3つの種類

資金調達は、円滑な会社経営や事業拡大、設備投資、信用力向上などの際に重要な役割を担っています。

いくつかの資金調達方法があり、会社の方針によって資金調達方法をひとつだけ選択することも可能ですが、複数の資金調達法を併用するケースが一般的です。

資金調達の際に必要な資金調達コストには、以下の種類があり、資金調達の方法によって異なります。ここでは、それぞれの資金調達コストのメリットやデメリット、代表的な計算方法などについて解説します。

【資金調達コストの種類】

  • 負債コスト
  • 株主資本コスト
  • 内部留保コスト

負債コスト

負債コストとは、金融機関からの借り入れや社債発行によって資金調達を行う際にかかるコストです。

金融機関の借り入れの場合には支払利息、社債発行の場合には発行費用や支払利息が資金調達コストにあたります。下表は、金融機関からの借り入れにおける負債コストの特徴をまとめたものです。

【負債コストの特徴(金融機関からの借り入れの場合)】

メリット ・負債コストは損金に計上できるため節税効果がある
デメリット ・会社の信用力によって利息が異なる
・信用力が低ければ、高い利息を課され資金調達コストの割合が高くなる
計算方法 負債コスト=支払利率×(1-法人税率)

株主資本コスト

株主資本コストは、株式を発行することで資金調達を行う際にかかるコストであり、株主に支払う配当が株主資本コストにあたります。

非公開の中小企業では、経営者が全ての株式を保有しているケースも少なくありません。そのような場合は配当を分配する必要がないので、株主資本コストはゼロとすることも可能です。

株主資本コストの計算方法は、CAPM(Capital Asset Pricing Model)の方法を用いて、上場企業の場合は株価の振れ幅やリターン投資のリスクなどをもとに算出されます。下表は、株主資本コストの特徴をまとめたものです。

【株主資本コストの特徴】

メリット ・返済の義務がない
・経営者が株主の場合はゼロになる
デメリット ・リスクが大きければ配当金も高くなり、株式資本コストも高くなる
・計算が難しい
計算方法 株主資本コスト=リスクフリーレート+β×マーケットプレミアム

内部留保コスト

前述の負債コストや株式資本コストは、外部から調達した資金にかかるコストのことですが、内部留保コストは自社の利益で資金調達を行う際にかかるコストです。

本来、内部留保は会社の利益剰余金として株主に分配されます。しかし、配当として分配するよりも会社に蓄えて運用したほうが収益性は高くなることを期待して、株主が会社に預けている資金になります。

内部留保によって期待される配当が内部留保コストです。内部留保が増えると留保金課税が課せられるので注意してください。

2. 資金調達コストの計算方法

負債コストと株主資本コストにはそれぞれ計算方法がありますが、多くの企業では借り入れと株式発行を併用して資金調達をしています。

そうした場合、資金調達コストの割合を包括的に計算する代表的な方法としてWACCを使用します。WACCとはWeighted Average Cost of Capitalの略で、日本語では加重平均資本コストです。

【WACCを用いた資金調達コストの計算方法】

  • 資金調達コスト=Re×{S/(S+D)}+Rd×(1-t)×{D/(S+D)}
    Re:株主資本コスト Rd:負債コスト D:負債 S:株主資本 t:法人税率

3. 資金調達コストの比較

資金調達コストは、会社の規模・信用力・利用する資金調達の方法など、さまざまな要因で決定されます。本章では、中小企業などで利用されている代表的な資金調達方法と、それに伴う資金調達コストを比較・解説します。

銀行からの融資

銀行からの融資により資金調達を行う場合、コストは主に支払利息です。金融機関や融資期間にもよりますが、低いものであれば2%程度の金利で融資を受けられます。

今回比較する5種類の資金調達方法のなかでは、2番目に資金調達コストが低い方法です。しかし、融資までに時間がかかったり、変動金利で融資期間中に金利が変わったりするケースもあります。

ベンチャー企業やスタートアップ企業のような信用力の低い会社が銀行を利用する場合、金利が高くなったり、融資を受けられなかったりする可能性もあるでしょう。

ただし、最近では金融機関でもベンチャー企業を支援するプランなどを実施しているケースがあるので、そのようなプランを利用すれば低金利での資金調達も可能です。

公的機関からの融資

公的機関からの融資による資金調達では、銀行からの融資と同様に利息がかかります。この支払利息が資金調達コストです。政府系金融機関である日本政策金融公庫では、高い成長性が見込まれる新しい事業に対し、0.30%の金利で融資を行っています。

低金利で融資を受けるためには厳しい審査や条件がありますが、基本金利でも1.1%なので、金融機関よりも低い金利で資金調達が可能です。今回比較する5種類の資金調達方法のなかで、最も資金調達コストが低い方法です。

事業承継の資金調達に使える融資制度・保証制度については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】事業承継の資金調達に使える融資制度・保証制度を解説!

消費者金融からの融資

消費者金融からの融資に対しても、金融機関や公的機関からの融資と同様に金利がかかります。消費者金融での金利は5〜18%となっており、金融機関や公的機関よりも高い資産調達コストが必要です。

金利が高い消費者金融から融資を受けるメリットは、融資のハードルが低い点と融資までのスピードが圧倒的に早い点にあります。

今回比較する5種類の資金調達方法のなかでは、4番目に資金調達コストが低い方法です。緊急で資金が必要になった場合などに利用できます。

増資を行う

増資とは企業が資本金を増やすことをいいますが、その方法のほとんどは新しい株式を発行することです。つまり、投資家やベンチャーキャピタルに新株を売って資金を調達する方法です。増資による資金調達では配当に代表される株主資本コストがかかります。

投資された資金は銀行などからの融資と違い、返済の義務はなく、配当も会社の利益に対して決定されるので、すぐに大きなコストがかからない点はメリットです。

一方、期待配当が高まり将来的な配当が高くなったり、経営が悪化すれば株主である投資家やベンチャーキャピタルに経営権を奪われたりするデメリットがあります。株主資本コストは企業の業績や期待性などによって異なりますが、今回比較する5種類の資金調達方法のなかで、3番目に資金調達コストが低い方法です。

ファクタリング

ファクタリングとは売掛金を売って資金を調達する方法です。今回比較する5種類の資金調達方法のなかで最も資金調達コストが高い方法になります。ファクタリングにかかるコストはファクタリング会社に支払う手数料で、2社間ファクタリングの場合は10〜30%の手数料がかかります。

ただし、売掛先も含めた3社間ファクタリングは2社間ファクタリングよりも安全性が高いので、1〜10%の手数料で資金調達が可能です。ファクタリング会社のなかには悪徳な業者も存在するので、相場よりも手数料が著しく高いもしくは著しく低い場合は注意しましょう。

4. 資金調達コストを抑える4つの方法

ここまで述べたとおり、資金調達コストにはさまざまな種類があります。それぞれのコスト相場は異なりますが、工夫次第で資金調達コストを抑えることが可能です。

では、どのような方法で資金調達コストを抑えられるのでしょうか。本章では、資金調達コストを抑える方法を詳しく解説します。

【資金調達のコストを抑える方法】

  1. 信用保証協会からの保証付き融資
  2. 不動産を担保にする
  3. 損益計算書による説得
  4. 返済計画による説得

信用保証協会からの保証付き融資

信用保証協会は、金融機関などで融資を受けることが難しい中小企業やベンチャー企業の保証人となり、資金調達をサポートする一般社団法人です。以前は中小企業庁が所管していましたが、今は公益法人として運営されています。

信用保証協会からの保証付き融資により資金調達コストを抑えられる企業は、金利の低い公的機関や金融機関からの融資を受けられない企業です。信用保証協会に保証人になってもらうことで、審査のハードルが下がったり、本来よりも低い金利で融資を受けられたりする可能性もあります。

不動産を担保にする

不動産を担保にすると金融機関の金利を下げられるため、資金調達コストを抑える方法のひとつです。ただし、不動産を担保にする場合は融資額における1〜3%の手数料がかかり、不動産の登記費用や鑑定費用など金利以外のコストが上乗せされます。

金利を下げる以外に、融資額を上げたり融資期間を延ばしたりできるメリットもありますが、万が一返済が不能になった場合は不動産を失うので注意が必要です。

損益計算書による説得

損益計算書とは、1年間の会社の利益もしくは損失を記載する決算書です。損益計算書により金融機関を説得し金利などのコストを下げられるのは、すでに金融機関から融資を受けている会社になります。

損益計算書で金融機関に利息と返済額を支払った後の具体的な資産を示し、経営の改善が厳しいことを示せば、回収できないリスクを避けるために金融機関が金利を下げる可能性があるでしょう。

返済計画による説得

損益計算書を利用しても金利を下げられない場合は、返済計画を示して金利引き下げを説得できます。返済計画には、融資を受けた際に決定した借入金額や金利などをもとに、返済完了までの毎年の返済額や利息分の計画が詳細に記載されています。

返済計画と損益計算書を照らし合わせ、計画のペースで返済を続けていくといずれ資金がショートし倒産か廃業になることをアピールすることで、回収できないリスクを避けるために金融機関が金利を下げる可能性があるでしょう。

この方法も損益計算書による説得の場合と同様、すでに金融機関から融資を受けている会社が、資金調達コストを下げるための方法です。

資金調達コスト・M&Aに関する相談先

資金調達によりM&Aを検討している場合は、資金調達コストを考慮する必要がありますが。しかし、株主資本コストやWACCでの資金調達コストの計算には専門的な知識が必要なため、正確な数字を算出するのは簡単ではありません。

M&A総合研究所では、資金調達コストやM&Aに精通したM&Aアドバイザーが案件をフルサポートします。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談を受け付けていますので、資金調達によるM&Aをご検討の際は、どうぞお気軽にご連絡ください。

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5. 資金調達コストのまとめ

本記事では、資金調達コストの種類や代表的な計算方法、資金調達コストの抑え方などについて解説しました。

多くの企業は、運転資金の確保や設備投資費用の確保、事業拡大などを目的に資金調達を行っています。どのような方法で資金調達を行っても、基本的に資金調達コストがかかり、調達した資金を100%事業に使用できません。

資金調達コストの計算には専門的な知識が必要になるため、正確な数字を把握するためにはM&A仲介会社など専門家に相談することをおすすめします。

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