金属加工・金属製品製造業界のM&A・事業承継動向!会社売却のメリットや成功のポイント・事例17選を徹底解説【2024年最新】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

本記事では、金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継・譲渡・売却の現状や事例から動向まで解説します。金属加工・金属製品製造におけるM&A・事業承継・譲渡・売却の譲渡事例やM&A・事業承継を成功させるポイント、売却相場を紹介します。

目次

  1. 金属加工・金属製品製造業界の概要
  2. 金属加工・金属製品製造業界の現状
  3. 金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継の動向
  4. 金属加工・金属製品製造会社のM&Aメリット
  5. 金属加工・金属製品製造会社のM&A相場
  6. 金属加工・金属製品製造会社のM&Aを成功させるポイント
  7. 金属加工・金属製品製造会社のM&Aを行う流れ
  8. 金属加工・金属製品製造会社のM&A事例
  9. 金属加工・金属製品製造をM&A・事業承継する際の相談先
  10. 金属加工・金属製品製造をM&A・事業承継する際におすすめの仲介会社
  11. 金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継のまとめ
  12. 業務・産業用機械製造業界の成約事例一覧
  13. 業務・産業用機械製造業界のM&A案件一覧
  • 業務・産業用機械製造会社のM&A・事業承継

1. 金属加工・金属製品製造業界の概要

金属加工・金属製品製造業はものづくりの根幹を成す重要な産業ですが、近年は経営者の高齢化が進んでおり、事業承継できずに廃業という選択を取るケースもみられます。

そのようななか、次世代に技術を伝え廃業を避ける手段としても、M&Aは活用できる方法です。この記事では金属加工・金属製品製造業界のM&Aについて解説しますが、まずは業界の定義や特徴など基本的な部分を理解しておきましょう。

金属加工・金属製品製造とは

金属加工・金属製品製造とは、金属を加工してさまざまな機械や部品を作ることです。金属加工は製造業の根幹となる産業で、これがなければものづくりが成り立たない重要な分野といえます。

金属加工とは、金属を加工して目的に合った形やサイズの製品を作り出す技術のことです。この技術は、板金や棒金などの半完成品から、様々な機械や装置、そして日常生活で使う雑貨などを作る際に使われます。簡単にいうと、金属加工業は、金属を使って私たちの生活や産業で必要な商品を生み出す業界や会社のことです。

自動車の部品など、加工した金属がそのまま製品となるものだけでなく、携帯電話や家電などのプラスチック部品も、ほとんどが金属の金型から作られています。

金属加工業は、総務省「日本標準産業分類」の「製造業ー中分類24-金属製品製造業」に該当しする事業です。同分類による金属製品製造業の定義は「ブリキ缶・刃物・メッキ板等製品・一般金物類・手道具類・建設用および建築用金属製品などを製造する事業所」となっています。

金属加工・金属製品製造と鉄鋼業の違い

鉄鋼業は金属加工・金属製品製造業と関連の高い事業です。両者は混同されやすいですが、金属加工・金属製品製造が金属を加工して使用目的にあった製品を作る事業であるのに対し、鉄鋼業は金属加工・金属製品製造で使用する材料(金属)を作る事業を指します。

総務省「日本標準産業分類」での定義は「鉱石や鉄くずなどの原料から鉄や鋼を製造する事業所、鉄や鋼の鍛造品・鋳造品などを製造する事業所」です。鉄鋼業がなければ金属加工・金属製品製造業は行うことができず、両者は非常に関係の強い事業であることがわかります。

金属加工・金属製品製造業界に見られる特徴

日本の製造業全体は、海外生産へと移動しています。しかし、金属加工・金属製品製造業界では、ユーザー企業の細かい必要性に応じ、外国企業より優位性を保つために、金属製品を国内で造るケースが少なくありません。

ただし、これから金属製品会社が国内製造で生き残るには、ユーザー企業の生産ニーズを判断して、それに対応するものづくりの経営力を整えることが重要です。

金属製品の技術力は、各技術者の経験や勘などで支えられる部分が多くを占め、積み重ねた長年の技術や技能の承継をどのように後継するかが金属加工・金属製品製造業界の課題といえます。

2. 金属加工・金属製品製造業界の現状

M&Aを検討している場合、まず対象業界の動向を把握しておくことが重要です。ここでは、金属加工・金属製品製造業界の現状について解説します。

金属加工・金属製品製造業界の市場規模

財務省「法人企業統計調査」によれば、2022年度における金属加工・金属製品製造業の売上高は約19兆4657億円となり、2021年度の約18兆4000億円から約5.8%増加しました。また、経済産業省「経済構造実態調査(2022年)」は、同業界の企業数は30,648社、従業員数は610,218人となっています。

金属加工・金属製品製造業の売上高は2018年~2020年度まで減少傾向でしたが、2021年度は増加に転じてコロナ禍前の2019年度の9割程度まで回復しました。

その背景としては、アフターコロナで経済活動が再開してきたことで、住宅向け金属製品の需要が増えたことやオフィス・レジャー・外食などの「製缶(鉄やステンレスなどから建物の骨組み等を作る加工)」の需要が高まったことが挙げられます。

参考: 財務省「法人企業統計調査」

金属加工・金属製品製造業界の課題と展望

近年は、日本製の金属製品工作機械が海外でも一般的になり、日本製の金属製品工作機械で製造すると製品精度が上がると好評です。しかし、外国製の安い金属製品工作機械の性能も少しずつ進んでいるので、海外の金属製品製造業も機械的な点から見ると進歩しているといえます。

これからは対話式プログラミングや自動プログラミングでのサポートが要求されるため、ヒルトップは自社でヒルトップシステムを開発し、新入社員も半年でプログラミングできるサポートシステムを築きました。各技術者が持つ勘どころのノウハウをソフトウェアで自動化すれば、技術の蓄積と生産性の向上を見込めます。

3. 金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継の動向

金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継動向には、主に以下の特徴がみられます。

後継者問題の解決を目的として増加傾向

金属加工・金属製品製造業は、高い技術力を持つ多くの中小企業によって支えられています。しかし、金属加工・金属製品製造業の経営者は年々高齢化し、後継者に事業を引き継がなければならない中小企業が増えている状況です。

近年は、昔のような親族内事業承継は難しいケースが多く、廃業を避けるためにM&A・事業承継で後継者を探す事例が増加傾向にあります。

金属加工・金属製品製造が後継者問題を抱える背景

金属加工・金属製品製造業は、社員数人程度の中小企業が、高い技術力を持って専門的な機器を製造することが多いです。経営者や職人が高齢化していても、その技術を伝える若い世代がいないため、黒字にもかかわらず廃業に追い込まれる製造業者が増えています。

金属加工・金属製品製造業の中小企業は日々の仕事が忙しく、事業承継を考える時間的・精神的な余裕がないことも、後継者問題に拍車をかけている状況です。

景気に強く影響を受けるので将来的な不安があるためM&A

金属加工・金属製品製造業に限らず、一般的に製造業は景気の影響を受けやすいです。事業自体は堅調なものの、景気に振り回されることに将来的な不安を抱いた経営者が、M&Aで早めに事業承継してアーリーリタイアするケースも考えられます。

中小企業のため、競争力がなく経営が厳しくM&Aを検討

金属加工・金属製品製造業は中小企業が多く、専門性の高い特定の製品のみで経営を成り立たせることがよくあります。

中小企業はユーザーの細かいニーズに答えられるかが重要になりますが、近年は海外企業の追い上げもあり、競争力がなく厳しい経営を強いられる企業が多いです。

そういった企業が資金力や競争力のある大手・中堅企業とのM&Aを検討するケースは、今後も増えると考えられます。

技術力・事業拡大のためのM&A

技術力の獲得や事業の拡大を目的として、金属加工・金属製品製造の企業同士がM&Aを行うケースも多いです。金属加工・金属製品製造業で使われる技術は非常に多く、同じ加工技術で何種類もの機器や製品を製造することができます。

金属加工・金属製品製造の企業にとっては、どの技術を持っているか、何を製造するかによって市場環境が大きく変わりますが、新たに技術を習得して自社の力だけで事業を拡大していくにはコストと時間が必要です。そのため、M&Aを活用して技術力を獲得したり、効率的い事業拡大を図るケースは非常に多くみられます。

M&Aではなく廃業する事例も見られる

金属加工業界は厳しいため、ほかに目を向けるきっかけとしてM&Aが手段となり得ます。ただし、パソコンやIT系の入る精密系を除いて、金属加工業界はM&Aの対象となりにくいくらい危機感のある状態です。M&Aではなく廃業する事例もみられます。

生き残る会社もあるといえますが、ガソリンを使う車がなくなると部品メーカーは全滅で、ボディの材料が鉄板からCFRT製に移ると金属加工業界の規模は小さくなるでしょう。そして、売れなくなると値段が下がるので、さらに厳しくなります。

【関連】中小企業の後継者問題とは?動向、原因や解決策・対策を徹底解説

M&Aとは

M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の頭文字をとった言葉で、日本語に訳すと「合併買収」となります。

企業や事業を売買したり、合併・分割したりする行為全般をさす言葉で、株式譲渡事業譲渡吸収合併会社分割などは、すべてM&A手法の1つです。

事業譲渡・売却とは

事業譲渡、事業売却とは、会社の事業を他の会社に譲り渡し、その対価として現金などを受け取る取引のことです。会社全体を譲渡するのではなく一部を譲渡するのが特徴で、不要な事業を切り離してコア事業に集中したいときなどに使われます。

事業承継とは

事業承継とは、会社の事業を後継者に譲り渡すことです。現金や不動産などの資産に加え、会社の経営権やブランドイメージ、取引先とのネットワークなど、事業に関するすべての財産・負債を後継者に引き継ぎます。

事業承継は誰に事業を引き継ぐかによって、親族内事業承継・親族外事業承継・M&Aによる事業承継の3種類に分類されるので、順番に解説します。

親族内事業承継

親族内事業承継は、自分の子供など親族に事業を引き継がせます。親族であれば人間性や能力を見極めやすく、従業員からも受け入れられやすいメリットがあります。

一方、事業を承継してくれる親族がいるとは限らないことや、資産の相続に関して他の親族とトラブルになる可能性があることがデメリットです。かつては事業承継といえば親族内事業承継が主流でしたが、近年はその割合が減少しています。

親族外事業承継

親族外事業承継は、親族でない人間に事業を引き継がせます。会社の従業員や役員を後継者にするのが一般的ですが、取引先など社外の人間を後継者に据えることも可能です。

M&Aによる事業承継も親族外の事業承継ですが、親族外事業承継といえば、自社の従業員などを後継者にすることをさすのが一般的になります。

社内の人間は会社のことをよくわかっているのがメリットですが、財産の相続に関して親族とトラブルにならないよう気をつけなければなりません。

M&Aによる事業承継

M&Aによる事業承継は、M&A仲介会社やM&Aアドバイザリーなどに相談して、親族でも社員でもない第三者へ引継ぎます

豊富な承継先候補から最適な相手を選べるのがメリットですが、今まで面識のなかった第三者へ事業承継するので、会社への思いや経営方針などをしっかり伝えることが重要です。

近年は、M&Aによる事業承継に政府が力を入れており、事業承継・引継ぎ支援センターなどの行政機関を設置して支援しています。

【関連】M&A業界の動向まとめ!現状、今後の予測も形式で紹介【2023年最新】
【関連】製造(メーカー)業界のM&A動向!会社売却のメリットや注意点・事例22選を徹底解説【2023年最新】
  • 業務・産業用機械製造会社のM&A・事業承継

4. 金属加工・金属製品製造会社のM&Aメリット

金属加工・金属製品製造会社のM&Aメリットを売り手・買い手に分けて紹介します。

売り手側のM&Aメリット

売り手側の主なメリットとしては、以下の5つが挙げられます。

後継者不在問題の解決

経営者が引退のタイミングを迎えても、後継者がみつからず事業承継ができないケースは少なくありません。事業が黒字でも廃業せざるを得ないケースも多いです。

M&Aは事業承継手段としても活用できるので、後継者不在であっても自社を存続させることができます。金属加工・金属製品製造の企業は技術力や独自ノウハウを有していることが多いですが、M&Aであればこれらも買い手企業へ引き継げる点も大きなメリットです。

従業員の雇用先確保

廃業せざるを得ない事態になったとき、多くの経営者にとって気がかりなのは従業員を解雇しなければならないことです。しかし、M&Aという選択をすれば、従業員の雇用を買い手企業へ引き継ぐことができます。

雇用契約の引継ぎ方法はM&Aスキームによって違い、株式譲渡であれば包括的に買い手企業へ引き継がれ、事業譲渡の場合は買い手企業と従業員とが改めて雇用契約を結ぶかたちで引継ぎが可能です。

事業の成長・発展

シナジー効果の発揮や強み・弱みの相互補完、リソースの共有などはM&Aを行う目的のひとつです。金属加工・金属製品製造の場合は、技術力の獲得やノウハウの共有などは非常に大きなメリットであり、これらの効果が十分発揮されることで事業のさらなる成長や発展、企業価値向上にも期待できます。

譲渡益の獲得

譲渡益が獲得できることもM&Aを行うメリットのひとつです。M&Aの譲渡益は株式譲渡の場合はオーナー経営者(株主)、事業譲渡の場合は会社(法人)が受け取ります。

通常、非上場企業の株式は現金化が難しいですが、M&Aを行えば譲渡対価としてオーナー経営者(株主)の保有株式を現金化できる点は非常に大きなメリットといえるでしょう。

個人保証の解除

中小企業の多くは金融機関から融資を受けていますが、経営者はその際に個人保証を負っているケースがほとんです。

経営者の個人保証は親族内承継や社内承継時の障壁となるケースも多く、また廃業したとしても返済が終わるまで経営者はその責を負わなければなりません。

個人保証は経営者にとって精神的・金銭的に大きな負担がかかりますが、M&Aでは買い手企業が個人保証そのものを引き継ぐかたち、あるいは融資を肩代わりするかたちで解除が可能です。

買い手側のM&Aメリット

買い手側の主なメリットとしては、以下の3つが挙げられます。

技術力の獲得

金属加工・金属製品製造業にとって、技術力の種類と高さは売上に直結する重要な要素です。技術力を習得して高めるためには時間が必要ですが、M&Aであれば売り手企業の持つ技術力をそのまま獲得することができます。

売り手企業が高い技術力を持っていれば、M&A後の売り上げ拡大に期待できるため、買い手企業にとっては非常に大きなメリットです。

シナジー効果

シナジー効果の発揮はM&Aを行う目的のひとつです。シナジー効果にはさまざまなものがあり、売り手側と買い手側の販売・設備・技術を相互活用することで、たとえば仕入れコストや製造コストの削減を図ることもできます。また、互いのノウハウを融合させることで、事業領域の拡大を図ることも可能です。

優秀な人材獲得

買い手側がM&Aを行う目的のひとつに、人材の獲得があります。技術力やノウハウ、経験のある優秀な人材を一度に獲得できることは非常に大きなメリットです。

優秀な人材の獲得は即戦力として期待できるだけでなく、若手育成など人材開発・教育にもつなげることができます。

5. 金属加工・金属製品製造会社のM&A相場

金属加工・金属製品製造業のM&A・事業承継・譲渡・売却相場は、会社の強みを理解し評価してくれる買い手に出会えると、売却価格が跳ね上がることもあります。

一般的に、小規模な会社の売却価格は数百万円から1,000万円程度が多いです。しかし、金属加工・金属製品製造業では、自社の強みを生かしたM&A戦略によって、1億円以上の価格で売却に成功した例もみられます。

中小企業でも、個々の会社が独自の強みを持つことが多い金属加工・金属製品製造業は、売却相場が他業種より高くなることも十分あり得ます。

6. 金属加工・金属製品製造会社のM&Aを成功させるポイント

金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継を成功させるポイントは以下の6つがあります。

M&A・事業承継計画を決める

M&A・事業承継は、何の準備もなくいきなり始めてもうまくいきません。事前にしっかりと準備をし、計画を立てて手続きに進む必要があります。

事業承継の準備段階として、事業承継計画表を作成するのが一般的です。事業承継計画表とは、現経営者と後継者、会社が行うべきことを年単位で表にしたもので、現経営者が完全に引退するまでの数年間における流れを大まかに書き記します。

適切なスキームを選択する

M&A・事業承継には多くのスキームがあるので、そのなかから適切なものを選択しなければなりません。例えば、会社をまるごと譲渡するなら株式譲渡などを選択し、事業の一部を譲渡するなら事業譲渡を選択します。

どのスキームが適切かは専門家でないと判断が難しい部分もあるので、M&A仲介会社やM&Aアドバイザリーと相談しながら進めましょう。

【関連】M&Aスキーム・手法別でメリット・デメリットを比較!

自社の強みを正確に把握する

金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継では自社の強みを正確に把握することが大切です。金属加工・金属製品製造業は、中小企業でも独自の強みを持つことが多いので、それを生かしたM&A戦略を練りましょう。

事業承継の場合、後継者の教育を行う

事業承継は契約が成立したら終わりではなく、後継者の教育をしっかりと行うことが大切です。後継者教育は基本的な経営・財務の知識を教えることはもちろん、現場における事業内容の理解や社内外における人脈の構築、経営者としてのリーダーシップや経営理念など、教えることは多岐にわたります。

後継者教育は、場合によっては約10年かかることもあるため、長期的な視点で粘り強く行うことが重要です。

M&A・事業承継確定後に従業員・取引先などに報告する

M&A・事業承継では、最終契約書を締結してM&A・事業承継が確定するまで、従業員や取引先に報告しないことが望ましいです。

事前に事業承継の情報がもれると、不安を感じた従業員が辞めてしまったり、取引先が撤退したりすることがあります。契約が確定して安心できる状態になるまで、従業員・取引先への報告は控えてください。

M&A・事業承継・譲渡・売却の専門家に相談する

M&A・事業承継を成功させるためには、M&Aに関する知識以外に会計・税務などの幅広い知識が必要となるので、専門家に相談しましょう。

専門家に相談すると知識面でのサポートを得るだけでなく、手続きを任せることで本業への支障を最小限に抑えるメリットもあります。

7. 金属加工・金属製品製造会社のM&Aを行う流れ

この章では、金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継を行う流れを解説します。

M&A仲介会社への相談・依頼

まずは、M&A仲介会社への相談・依頼です。M&Aを行う理由や目的の明確化など戦略を練ったら、相手を探すためにM&A仲介会社を選択します。M&A仲介会社へ依頼すれば、幅広いネットワークが活用できてM&Aの選択肢が増加します。

相手先企業とのマッチング

次は、相手先企業とのマッチングです。M&Aの大きな目的は、最大限に売却側と買収側のシナジー効果を引き出すことです。

M&Aの候補となる相手企業の強みや弱みを理解したり、相手企業の業界におけるメリットやデメリットを調査したりして、最適な相手を見つけましょう。

秘密保持契約の締結・情報開示

次は、秘密保持契約の締結・情報開示です。M&Aの相手候補が見つかり次第、ノンネームシートを買い手企業へ提示します。

ノンネームシートを見て具体的な情報を開示して欲しいと要望があれば秘密保持契約の締結をして、情報を開示します。

トップ面談・交渉

次は、トップ面談・交渉です。情報開示が終われば、本格的に売り手と買い手のトップ同士が面談を行います。

面談後、M&Aの意思が固まればM&Aの交渉を行っていきます。面談では企業価値算定やM&Aスキームの内容までを話すのが一般的です。

契約締結・交渉

トップ同士が面談を行ったら、次は契約締結・交渉です。買収側は譲り受ける意思表示を示すために、買取方法や価格などを記載した意向表明書を売却側へ提出します。

そして、両社の合意条件を書いた基本合意契約書を締結する流れです。締結すると、相手とのM&Aにおける独占交渉権が生じます。

デューデリジェンスの実施

基本合意書の締結が完了したら、買い手企業のデューデリジェンスが実施されます。

デューデリジェンスは売り手企業の税務・法務面などで問題がないかを確認するために必要なプロセスです。非常に専門性が高いプロセスになるため公認会計士や税理士、弁護士などに相談しましょう。

クロージング・PMI

M&Aが完遂したあとは、クロージング・PMIを行います。

M&Aそのものが完了しても、想定しているM&Aシナジーがうまく創出できないことがあります。そのため、クロージング・PMIを行いM&Aのシナジー効果を大きく得る必要があります。

8. 金属加工・金属製品製造会社のM&A事例

この章では、金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継の譲渡事例を解説します。

①フジオーゼックスによるマルヨシ製作所の子会社化

2023年5月、自動車部品メーカーのフジオーゼックスは静岡県のマルヨシ製作所を子会社化すると発表しました。マルヨシ製作所は、セパレータフィルム用のシャフトや金属ロールなどを製造しており、同社の製品はセパレータフィルム製造装置メーカー等で使用されています。

フジオーゼックスは、自動車エンジン関連部品・エンジンバルブなどの製造販売、鋼材加工と鋼材加工製品の販売などを手掛けるメーカーです。

フジオーゼックスはマルヨシ製作所の子会社化によって、グループ内でシナジーを発揮させることで事業拡大を図るとしています。

参考:フジオーゼックス株式会社「株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

②三陽工業による太田工業所の買収

2022年6月、三陽工業は太田工業所の全ての株式を取得し、子会社化しました。

三陽工業は、研磨を主軸とした「製造業」と「製造派遣事業」を行っているものづくりの会社です。対象会社の太田工業所は、鉄・ステンレスのパイプ材の切断・曲げ・磨き・溶接加工などを行う企業です。

今回のM&Aにより、両社の磨き工程の強化を目指します。一貫加工の強みを活かした他分野への進出、技能承継解決を図ります。

参考:三陽工業株式会社「株式会社太田工業所の株式取得(子会社化)の契約を2022年6月1日に締結」

③アルコニックスによるソーデナガノの買収

アルコニックスは2022年4月、ソーデナガノの株式を取得し、子会社化しました。アルコニックスは、レアメタル、レアアースなどの製品、製品に関連する原材料などの輸出、輸入、国内販売を行っている会社です。対象会社であるソーデナガノは、長野県に拠点を構える金属精密プレス部品の製造、金型設計製作などを行っています。

今回のM&Aにより、アルコニックスグループ内の国内外の子会社と「総合プレス加工グループ」を形成し、不得手分野における補完体制をミックスし、顧客からの多様なニーズに対応可能となるでしょう。そして、技術交流やノウハウの共有により、グループ全体でのコスト削減、生産効率性向上を目指します。

参考:アルコニックス株式会社「株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

④戸上メタリックスによる三協製作所の買収

戸上電機製作所は2022年2月、連結子会社の戸上メタリックスを存続会社とし、同様に子会社である三協製作所を消滅会社とする吸収合併を行いました。

戸上メタリックスは、建設機械部品、産業用配電機器部品の金属加工を行う総合精密板金加工メーカーです。対象会社の三協製作所では、産業用配電機器部品の亜鉛メッキの加工をメインとした事業を行っています。

今回のM&Aにより、グループ内における金属加工事業の経営資源の集約で、事業環境整備のための設備投資を推進し、付加価値を高め、収益力の向上を目指します。

参考: 株式会社戸上電機製作所「連結子会社間の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ」

⑤岡谷鋼機による旭精機工業の買収

岡谷鋼機は2021年12月、旭精機工業と資本業務提携契約を締結しました。これにより、旭精機工業の自己株式処分による、第三者割当増資を岡谷鋼機が引き受けます。引受額は約1億5,700万円でした。

岡谷鋼機は、世界23カ国で鉄鋼、電機、産業資材、生活産業などの商品販売を展開する会社です。一方、対象会社の旭精機工業は、自動車や情報通信、家電の精密金属加工品の製造・販売事業を行う会社です。

今回のM&Aにより、両社が有する経営資源や経営ノウハウを有効活用した事業活動効率化や販売拡大、さらなる連携・協力関係の強化を目指します。

参考:岡谷鋼機株式会社「旭精機工業株式会社との資本業務提携に関するお知らせ」

⑥アミタHDと大平洋金属による資本業務提携

2021年4月、アミタホールディングスは大平洋金属と資本業務提携契約を結ぶことを決めています。アミタホールディングスは、2021年2月に公表の中期3か年計画で、「他社との事業連携による新規顧客の獲得や利益率の向上」を重な施策の1つとし、協業・共創による相乗効果を発揮できるパートナーを検討していました。

両社はこの資本業務提携で、両社が持つ経営資源やノウハウによりシナジーを創出し、企業価値を最大化することを狙っています。

参考:アミタホールディングス株式会社「大平洋金属株式会社との資本業務提携契約の締結、 主要株主及び主要株主である筆頭株主の異動並びに その他の関係会社の異動に関するお知らせ」

⑦大同キャスティングスによる中国子会社の譲渡

2020年9月、⼤同特殊鋼の連結子会社大同キャスティングスはDCCの100%子会社大同凱思英鋳造有限公司を譲渡しました。事業譲渡の手法で、中国事業を清算しました。

⼤同特殊鋼グループ中期経営計画で、ポートフォリオの改革、事業基盤を強めること、事業の再構築を行動方針としているため、この事業譲渡で「選択と集中」によるグループ経営の強化をより促進するとともに、継続的な事業成長の加速を狙います。

参考:大同特殊鋼株式会社「 連結子会社の事業譲渡について」

⑧CKサンエツが日立アロイの事業取得

2020年6月に、CKサンエツは子会社であるサンエツ金属を通じて、日立金属傘下の日立アロイが展開している黄銅棒事業(製造設備を含む)と加工品事業を取得することを発表しています。2021年1月15日が取得予定日です。

サンエツ金属は、生産規模の拡大による競争力の向上を進めているため、今回の事業取得に至りました

参考:サンエツ金属株式会社「日立アロイの事業譲受等に関するご案内」

⑨藤井産業がサンユウを子会社化

2018年12月に、藤井産業がサンユウの全株式を取得し、完全子会社化しました。

藤井産業は、電設資材を中心に太陽光発電や産業機器を取り扱う会社で、サンユウは制御盤や分電盤の設計・製作を手掛ける会社です。

今回の買収は、お互いの強みを生かしたシナジー効果の獲得や、取扱商品の充実・仕入れの効率化などが目的です。

参考:藤井産業株式会社「株式会社サンユウの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

⑩TBKがサンテックを子会社化

2018年11月、TBKはサンテックの株式を取得し子会社化しました。TBKは東証一部上場の自動車部品メーカーで、サンテックは自動車や電気設備の工作機械を手掛けるメーカーです。

今回の買収で、サンテックの優れた技術者獲得による技術力の強化互いの顧客共有による事業規模の拡大を見込んでいます。

参考:株式会社TBK「株式会社サンテックの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

⑪FUJIがファスフォードテクノロジを子会社化

2018年8月に、FUJIがファスフォードテクノロジの全株式を取得し、完全子会社化しました。FUJIは産業用ロボットのメーカーで、ファスフォードテクノロジは産業用ロボットの関連機器を手掛けるメーカーです。

今回の買収は、半導体や電子部品の生産ライン強化次世代技術の提案力強化を目的としています。

参考:株式会社FUJI「半導体製造装置メーカー”ファスフォードテクノロジ株式会社”の株式取得」

⑫瀧上工業がケイシステックニジューサンを子会社化

2018年6月に、瀧上工業がケイシステックニジューサンの全株式を取得し、完全子会社化しました。瀧上工業は橋梁(きょうりょう)や鉄塔などの設計・制作を行う会社で、ケイシステックニジューサンは自動車部品など工作機械の設計・製造を手掛ける会社です。

瀧上工業は、高い技術力を持つケイシステックニジューサンを傘下に収め、事業ポートフォリオを拡大するために本買収を行いました。

参考:瀧上工業株式会社「株式取得(子会社化)に向けた基本合意書締結のお知らせ」

⑬日本電産がGenmark Automation, Inc.を買収

2018年4月に、日本電産はアメリカのGenmark Automation, Inc.(GS社)の全株式を取得し完全子会社化しました。日本電産はモーターや光学部品などの製造・販売会社で、GS社は輸送用ロボットや自動化ソフトウェアの会社です。

日本電産の子会社である日本電産サンキョーは、輸送用ロボットの製造・販売を行っており、当該事業の強化が買収の目的です。

参考:日本電産株式会社「米国 半導体ウエハー搬送ロボットメーカー ジェンマーク社 (Genmark Automation, Inc.)の株式取得(子会社化)に関するお知らせ 」

⑭新東工業がオメガ社を子会社化

2018年2月に、新東工業はイギリスのオメガ社における株式の90%を取得し子会社化しました。新東工業は鋳造装置や表面処理装置などの製造・販売メーカー、オメガ社は鋳造設備の製造・販売メーカーです。

新東工業はイギリス以外にも世界各地に子会社を有しており、今回の買収も鋳造事業の拡大が目的です。

参考:新東工業株式会社「株式取得(子会社化)に関するお知らせ」

⑮イチネンホールディングスが昌弘機工を子会社化

2018年1月に、イチネンホールディングスは昌弘機工の全株式を取得し、完全子会社化しました。イチネンホールディングスは機械工具や合成樹脂事業などを展開する持株会社で、昌弘機工は自動梱包機などを製造・販売している会社です。

昌弘機工におけるブランド力のある機器をラインアップに加えて、販売力を強化することが買収の目的です。

参考:株式会社イチネンホールディングス「昌弘機工株式会社の株式取得(子会社化)、 及び人事異動に関するお知らせ 」

⑯マルカキカイが北九金物工具を子会社化

2017年12月に、マルカキカイは北九金物工具の全株式を取得し、完全子会社化しました。マルカキカイは自動車・家電・農機具などの製造機械を販売するメーカーで、北九金物工具は機械工具や切削工具の消耗品を販売している会社です。

今回の買収は、シナジー効果の獲得および山口地域への進出が目的です。

参考:http://株式会社マルカキカイ「北九金物工具株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ 」

⑰アイダエンジニアリングが日本リライアンスを子会社化

2017年10月に、アイダエンジニアリングは日本リライアンスの株式80%を取得し子会社化しました。アイダエンジニアリングはプレス機械を中心に生産ライン全体を提供する総合メーカーで、日本リライアンスは産業機械用自動制御装置の開発・販売メーカーです。

アイダエンジニアリングが提供するシステムに日本リライアンスの自動化システムを取り入れて、技術力・開発力を高めるのが買収の目的です。

参考: アイダエンジニアリング株式会社. 「日本リライアンス株式会社の株式の取得(子会社化)及び孫 会社の異動に関するお知らせ」

9. 金属加工・金属製品製造をM&A・事業承継する際の相談先

金属加工・金属製品製造をM&A・事業承継する際の相談先は、以下の選択肢があります。

①地元の金融機関

地方銀行や信用金庫など地元の金融機関で、M&A・事業承継の相談を受け付けています。ただし、金融機関のスタッフはM&A・事業承継に詳しくないことがあるので、専門の部署を設置した金融機関を利用すると良いでしょう。

②地元の公的機関

政府は近年の後継者問題を受けて事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関を設置し、中小企業の事業承継を支援しているので、金属加工・金属製品製造業に関するM&A・事業承継を相談できます。

ただし、公的機関は安心感がありますが、民間の仲介会社に比べて実績が少なく、希望どおりのサポートが受けられない可能性もあります。

③地元の弁護士・税理士・会計士など

地元の弁護士・税理士・会計士などに、金属加工・金属製品製造におけるM&A・事業承継の相談もできます。

ただし、すべての弁護士・税理士・会計士が必ずしもM&A・事業承継に詳しいとは限らないので、M&A・事業承継の実績が豊富な弁護士・税理士・会計士を選ばなければなりません。

④マッチングサイト

マッチングサイトは、事業を買いたい人と売りたい人が案件を掲載し、自分で売買相手を探せるサイトです。自分だけで交渉から成約まですべて行うことも可能ですが、トラブルになったり交渉が長引いたりする可能性があることも念頭に置いてください。

マッチングサイトによっては、M&Aアドバイザリーにサポートしてもらいながら交渉することも可能です。

⑤M&A仲介会社

金属加工・金属製品製造業をM&A・事業承継する際の相談先として、最も一般的なのがM&A仲介会社です。M&Aの専門家によるサポートが受けられ仲介会社が持つネットワークの豊富な案件から売買相手を選べます

ただし、M&A仲介会社は非常に数が多いので、そのなかから自社に合う仲介会社を選ぶことが重要です。

M&Aの相談相手については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】M&Aの相談相手はどこがおすすめ?無料の相談先ごとにメリット・デメリットを徹底解説| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

10. 金属加工・金属製品製造をM&A・事業承継する際におすすめの仲介会社

金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継をご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は、幅広い情報と独自AIのマッチングシステムによる豊富な選択肢から、最適な売買相手を探します。知識や実績が豊富なM&Aアドバイザーが案件をフルサポートします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談を受け付けていますので、金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継をお考えの際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

【関連】M&A・事業承継ならM&A総合研究所
電話で無料相談
0120-401-970
WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

11. 金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継のまとめ

金属加工・金属製品製造業は、自社の強みをアピールすれば、より高い価格でM&A・事業承継できる業種といえます。M&A仲介会社など専門家のサポートを受けつつ、適切なスキームを選択してM&A・事業承継を進めることが大切です。

金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継を成功させるためには、M&A仲介会社など専門家のサポートを受けることをおすすめします。

12. 業務・産業用機械製造業界の成約事例一覧

13. 業務・産業用機械製造業界のM&A案件一覧

M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所

M&A・事業承継のご相談なら経験豊富なM&AアドバイザーのいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。

M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴

  1. 譲渡企業様完全成功報酬!
  2. 最短49日、平均6.6ヶ月のスピード成約(2022年9月期実績)
  3. 上場の信頼感と豊富な実績
  4. 譲受企業専門部署による強いマッチング力
>>M&A総合研究所の強みの詳細はこちら

M&A総合研究所は、成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A仲介会社です。
M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。

>>完全成功報酬制のM&A仲介サービスはこちら(※譲渡企業様のみ)

関連する記事

新着一覧

最近公開された記事
業務・産業用機械製造会社のM&A・事業承継