IPOとM&Aの違いは?イグジット手段としての特徴、メリット・デメリットを比較!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

日本のスタートアップは、目標としてIPOを目指すところが多く存在します。その中で、IPOにこだわらずM&Aでの統合や合併などによって、飛躍的に成長を見せている企業も存在している状況です。この記事では、IPOとM&Aの違いを解説します。

目次

  1. IPOとM&Aによるイグジットの動向
  2. IPOとは
  3. IPOのメリット・デメリット
  4. M&Aとは
  5. M&Aのメリット・デメリット
  6. IPOとM&Aの違いを比較
  7. IPO・M&Aによる理想的なイグジットのポイント
  8. アメリカではIPOよりM&Aが主流
  9. IPOよりもM&Aが主流なアメリカの事情
  10. M&Aを検討する際の相談先
  11. IPOとM&Aの違いまとめ
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1. IPOとM&Aによるイグジットの動向

IPOとM&Aによるイグジットの動向

今までは、IPOがイグジットの方法として一般的だったので、起業家は最終目標としてIPOを目指すことが典型的な流れでした。しかし、海外では、主にM&Aによる株式売却がイグジットの流れです。アメリカでは、イグジットの多くがM&Aで実施されています。

日本でも、M&Aの件数は増えている状況です。レコフデータによると、日本におけるM&A件数は2017年に3,000件超となり、過去最高となりました。今後もこの傾向が続くと、日本もアメリカと同じくM&Aによるイグジットが主流になる可能性が高いです。

ただし、イグジットの手段としてIPOが良いかM&Aが良いかは、状況によります。まずはIPOとM&Aの各特性を知り、自社にはどちらが有利なのか知ることが大切です。

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2. IPOとは

IPOとは

IPOとM&Aの違いや比較を解説する前に、「IPO」「M&A」の各定義を説明します。IPOとは「Initial(最初)Public(公開)Offering(売り物)」の略称で、未上場企業が新規で株式を証券取引所に上場して、それを投資家に取得させていくものです。いわゆる新規株式上場です。

通常は新たに株式が公募されたり、上場前に株主が保有していた株を売り出したりします。そして、これらの株式を証券会社を通して投資家に配分していくことが、IPO(新規株式上場)です。

ベンチャー企業は外部投資家から出資を受けると投資回収のチャンスが与えられます。その典型がIPOで、IPOを実行するには株式公開準備、費用と期間、上場後のコストがかかります。

日本における多くのスタートアップやベンチャー企業はEXIT(イグジット)、いわゆる「出口戦略」としてIPOを目標に据えているところが多いでしょう。

3. IPOのメリット・デメリット

IPOのメリット・デメリット

起業家は、いつか自分の会社を上場させたいといった目標があるでしょう。IPOには、企業規模を大きくできる、経営者として社会的な信用を上げ、ステータスを確立する魅力があります。

IPOを行うとメリットがあると同時にデメリットもあるので、ここではメリットとデメリットを見ていきましょう。

IPOのメリット

IPOは、市場から多くの資金を調達でき、それに伴いさらなる事業拡大が可能で、経営の自由度もある程度確保できるメリットがあります。IPO後に企業価値が高くなれば、それも利益として得られます。

実際に上場すると社会的な信用度が増すため、新規顧客の開拓や金融機関とのやりとりが行いやすくなるでしょう。雇用の面でも、IPOによりブランド力に魅力を感じて優秀な若い人材が集まる可能性が高くなります。

IPOのデメリット

ベンチャー企業が目標とするIPOですが、デメリットもあります。まず、事前の準備に手間やコストがかかります。少なくとも3年はかかるといわれ、その間に社会情勢や自社の立ち位置、方向性が変化する可能性も高いでしょう。

その場合、IPOの計画が中止となりせっかく手間とコストをかけても、IPOをしないほうが良いとの結果を選択する状況になる可能性があります。上場すると会社として経営の透明性を維持するために経営体制を整備していく必要があり、市場から厳しい視線が向けられるデメリットもあるでしょう。

4. M&Aとは

M&Aとは

M&Aとは、「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の略称です。複数の企業が互いにおける利益のために協力し、合併や吸収、業務提携、資本提携、株式譲渡事業譲渡などさまざまな手法で行います。

M&Aは事業拡大や新規事業への参入、後継者問題の解決などいろいろな悩みがある企業間で協力しあう経営戦略の一つで、注目を集めています。

M&Aはもともと外国企業が経営戦略として活用していたもので、近年では日本国内でも買収や合併を目的としたM&Aの活用が多く見られる状況です。最近は、スタートアップやITベンチャー企業のEXIT(イグジット)としても注目されています。

5. M&Aのメリット・デメリット

M&Aのメリット・デメリット

ベンチャー企業やスタートアップ企業のEXIT(イグジット)として注目されるM&Aですが、メリットやデメリットがあります。ここではM&Aのメリット・デメリットを見ていきましょう。

M&Aのメリット

M&Aの大きなメリットは、M&Aが成立すれば株式をすぐに現金に換金できる点です。持ち株の全てを売却できることから、経営者が創業者利益を獲得できるメリットがあります。

前述のとおり、IPOは事前準備に時間やコストがかかりますが、 M&Aであれば、事前準備の負担が少なくて済み、早い場合は3カ月程度の準備期間で売却が実現するケースもあります。

小規模事業では短期での成長が見込めない場合も多いですが、M&Aによって他社のノウハウを得てシナジー効果を得られれば、事業規模の拡大を目指せるでしょう。

M&Aのデメリット

M&AのデメリットはM&Aは一般的に経営権の売却となるため、買い手企業との交渉に手間がかかる点です。M&A成立後に買い手企業に経営権が移ることで、企業理念や社風、組織構成や人事評価などが一変する場合もあります。

職場環境が変化した場合、従業員への負担が増加する可能性も把握しなければなりません。十分な配慮のもと、買い手企業とM&Aを実行する前の条件などをしっかり提示しておく必要があります。

買い手企業が取引先における競合会社などの場合は、付き合いのあった取引先を失うこともあるので、M&Aを実施する前に取引先との関係性などにも配慮してください。

6. IPOとM&Aの違いを比較

IPOとM&Aの違いを比較

最近の日本ベンチャー業界ではM&Aディールが増加しており、地方でもIPOについて東証が積極的に上場企業を増やそうとし、IPOを引き受ける証券会社の姿勢も積極的です。

ベンチャー企業は、IPOやM&Aを用いることで投資家たちに投資回収の機会を作ります。IPOでは、株式市場の状況により投資を回収できる金額が左右され、上がり続けることで利潤を得られるでしょう。M&Aでは実行に要するコストもIPO費用に比べると低廉(ていれん)で済み、全株式の買収を求められれば、持ち株の全てを売却できます。

そこでスタートアップ企業は、M&AとIPOのどちらがいいのか疑問が湧きます。IPOとM&Aは、「投資家からすればEXIT(イグジット)としては同じように見えるが、あきらかに違う部分はある」とする漠然としたスタートアップの起業家も多いでしょう。

株主の立場から比較!

株主にとって、IPOとM&Aは株式が売却できる状態になり回収が可能になる点では共通しているといえます。投資家の立場からは回収段階に入ると、一般的には前向きなEXIT(イグジット)の手段で、IPOとM&Aは二つの並列的な選択枠になり、こういった意味ではIPOとM&Aは一括りで表現されます。

しかし、株主の立場から見たときでもIPOとM&Aには大きな違いがあるので、その内容を細かく見ていきましょう。

株式売却の実現性に関して

IPOの場合は株式譲渡期限が外れるので、金融商品取引市場での売却が可能になりますが、売却できる保証はありません。IPO後の株価が順調に上昇しないと自らの取得株式額を下回ってしまう可能性もあり得ます。

特に大株主はIPOの際、主幹事証券会社からロックアップを要請されるので、一定期間株式の売却を制限されるケースも多いです。大株主にとっては、株式の流動性が高くないと大量の株式を売却するのは難しくなり、自分で大量に株式を売却してしまうと株価が下がってしまう問題に悩まされてしまう場合があります。

こうした要因があるため、IPOは望ましいEXIT(イグジット)にならない可能性が高いといえます。

この問題とM&Aを比較すると、M&Aでは買収側と合意のうえ、決まった価格で決まった株式数を一度に売却できるため、株主にとっては投下資本の回収における意味ではM&AがIPOと比較すると簡易かつ堅実な部分があります。

特に未上場企業の株式における場合は、インサイダー取引規制の適用がないため、特殊な例でない限り手続きの制約も簡易的です。

種類株主の優先権に関して

IPOの場合、日本の実務上では上場申請前に、種類株式を全て普通株式に転換し、通常では転換比率が1:1なので種類株主も普通株主と同じ扱いです。

これをM&Aで比較すると、最近では種類株式を発行してM&Aに関する種類株式の優先配分(みなし清算条項)を定めて、合意するケースもあるので、その場合は種類株主が優先的に売却資金を取得できるところがIPOとの違いでしょう。

株式の売却額に関して

企業価値が向上したとき、IPO後はその株価が上昇していけばいくほど、上昇分の利益が獲得できる可能性があります。これに対してEXIT(イグジット)を目的として行うM&Aでは基本的に、M&Aの成立とともに売り切ることになるので、M&A後における企業価値向上の利益を得られません。

ただし、例外のケースもあり、M&A後の業績に連動して売却代金などの調整を行う場合もあります。長く持っていても企業価値が下がらないと見込める企業であればM&Aと比較するとIPOが得する可能性はあります。

実現の可能性を比較

IPOにおいて、一般投資家の責任における観点から主幹事証券会社や証券取引所によってIPOが行われるため、重要なリスクがある状態ではIPOが難しいケースがあるでしょう。

M&Aの場合は買収側がそのリスクを受け入れれば成立するため、IPOが難しい場合でもM&Aが成立する可能性はあります。M&AとIPOで実現性の可能性を比較するとM&Aが高く、上場するよりEXIT(イグジット)としてM&Aを活用するほうが現実的です。

株式譲渡の場合は、買収に関しては原則、全株主の合意が必要になるので、その点だけを見ればM&AがIPOよりもハードルが高い面もあります。

ベンチャー、スタートアップ企業の立場から比較!

最近は、国内でもM&A市場が上昇していることから、ベンチャー、スタートアップ起業家が起業する場合に、IPOを目指す考えが本当にあっているのかといった疑問が出てきています。

株主にとっては、IPOとM&Aはあまり変わりなく見えますが、経営者にとってはIPOとM&Aは大きな違いがあるでしょう。特にIPOとM&A、非上場など、どれを経営戦略として選ぶかによって資本政策は大きく変わるため、経営者は事業の特性や成長性をよく考えたうえでどの方向に行くのか慎重に考える必要があります。

ここからは、ベンチャー、スタートアップ企業の立場でIPOとM&Aを比較し、どのような違いがあるのか見ていきましょう。

リスク

まず、リスクの面について、IPOとM&Aを比較します。IPOは、一般投資家から資金を受け取るので、永続的な運営の責任を負うことがリスクです。

つまり、IPOにより、顔の見える少人数の株主といったプライベート会社から一般投資家である多数の信頼関係がない株主にまで、経営責任を果たすようになり、パブリックな会社になると評判の面でもリスクを負う可能性があります。

なんとなくIPOを目指した結果、最悪のケースを招いてしまうことを理解しておきましょう。

例として、非上場のまま経営するのが現実的であるのにもかかわらず、ストックオプションや従業員持株会などを導入してしまい、従業員の所有する株の引き取り先がなくなり、株価はどうするかなどトラブルに発展するケースです。

どのEXIT(イグジット)を目指すか決めずにIPOをすると、会社の未来を失うことになりかねません。

事業拡大

ベンチャーやスタートアップ企業が目指す進路を決めるためには、IPOとM&Aのどちらが事業拡大に有効なのか比較する必要があり、その違いも理解しておくことが大切です。

まず、IPOは、資本政策を間違わなければオーナー経営者が支配権を一定量維持したまま、IPOやその後における多額の資金調達ができ、事業拡大のための投資をスピーディーに行えるメリットがあります。

問題点は、IPO後は外部株主を入れるため、経営の説明責任が発生して大胆な投資や事業変革が行いにくくなることです。上場には準備のための費用や維持をする費用がかさむため、資金調達力の強化や事業の成長にレバレッジがかからなければデメリットばかりになってしまう可能性もあります。

M&Aとはどのように違うのか比較すると、他社における経営資源との融合でシナジー効果を得られれば、事業の拡大は簡単に行え、場合によってはM&Aの自社単独経営よりも事業を拡大できる可能性があります。

大企業の傘下などに入れば、金融機関や取引先への信頼度が上がり、銀行借入などの資金調達にもつながるでしょう。両方を比較しても、会社の成長につながる重要な選択肢ではありますが、多額の資本を市場から集めて大きく注入し、継続的に拡大・成長していける事業ならIPOが事業をより大きく拡大できるといえます。

逆に、そうでない事業の場合は上場する意味がないので、EXIT(イグジット)としてM&Aを選択するほうが良いといえるでしょう。

経営者個人の収益

経営者個人が金銭的に見ると、IPOとM&Aはどのような違いがあるのか比較しましょう。

IPOでは、オーナーやベンチャーキャピタルなどの株主またはストックオプションを持つ役職員が、IPOのときとその後に株価が上がった分の利益を確保できるメリットがあります。こうしたことから、IPOに向けて社内全体で団結し、ベンチャーキャピタルからはさまざまな経営上の協力を仰ぐことが可能です。

ただし、IPO後も事業が成長を続け市場に評価されれば、確保できる利益はその分上がりますが、創業オーナーはIPOした途端に株式を売却するわけにはいかないので一部支配権を維持しながら段階的に売却していきます。

M&Aは合意さえ得られれば成立するもので、M&A成立後は株主の株式は現金化が可能です。M&Aは数カ月で成立するケースもあり、IPOには適さない小規模な事業や必ずしも成長トレンドではない安定的な事業にも向いているといえます。

IPOとの違いとして、社内体制の構築を要求されないので、一般論としてIPOに比べて負担が少なく、経営資源(ヒト、モノ、カネ)を事業運営に集中して続けられ、短期的にはIPO関連に要する費用を抑えた利益を出せて高い株価評価を得られるでしょう。

経営者個人の利益として考えても、継続的に拡大・成長していける事業であれば、IPOによる段階的な株式売却が結果的にはもうかります。もちろん、外部株主も絡むため、株式を段階的に売却するのは難しいでしょう。手っ取り早く現金化したいのであれば、M&Aがおすすめです。

従業員からしたIPOとM&Aの違いを比較

従業員から見ても、IPOとM&Aでは大きな違いがあります。IPOは、基本的にM&Aとは違い、IPO前と後では経営陣が変わらない中で、IPOにて取得した資金と信用で事業を拡大していくステージに入るので、活躍する場が拡大する可能性が高まるでしょう。

新たな社員が増えることで社内のカルチャーが少しずつ変わることもありますが、基本的な社内文化は変わらないので、仕事をするうえで大きな変化はありません。

IPO前に従業員にストックオプションを発行するベンチャー企業もあり、IPOに伴い経済的なメリットを受けるケースもあります。

これに対してM&Aを比較すると、経営権の移転により、会社の方針が親会社の意向で修正されるのが通常なので、就業規則や形態が親会社のものに統一されていく傾向があります。

もちろんこのM&Aでも親会社のサポートを受けることで事業が拡大し、状況がM&A前より向上する場合もありますが、M&A後に人事がシビアになり一種のリストラが起こる可能性もあるでしょう。

通常では、従業員がM&Aについて意見を述べるのは難しい状況にあり、M&Aによって自分の環境がよくなるのか悪くなるのかは運次第の部分もあります。こうしたことから経営者はM&Aの際、M&A後における従業員の処遇や就業環境を配慮して交渉を行うのが望ましいでしょう。

取引先からのIPOとM&Aの違い

取引先にとって、IPOは対象企業の資金力および信用力が格段に上がるので、積極的にしてほしいのが通常といえます。IPOをしたからといって、取引がなくなることはありません。事業が拡大し、受注数や内容も大きくなれば、取引先も満足します。

一方、M&Aの場合は、経営権が移転するため対象会社の経営方針が大きく変わる場合があり、取引内容が変更されるケースがあるでしょう。M&Aを行ったとき、取引先も大きな影響を受ける可能性があるため、不安定な状況での取引継続を望まない場合もあります。

例えば、経営権の移転があった場合、解除事由として規定するケースもあり、特にアメリカなど海外企業との契約で定められているケースがあるので注意が必要です。

7. IPO・M&Aによる理想的なイグジットのポイント

IPO・M&Aによる理想的なイグジットのポイント

IPOとM&Aのどちらがイグジットとして良いかは、一言ではいい表せません。ただし、創業オーナーの場合、出口の先にどれくらいの利益があるのかということが、選択する際のポイントになります。

大企業が自社の事業領域を広げるために、最先端技術や独自技術を持つスタートアップ企業を譲受ける事例がよく見られ、自社でベンチャーキャピタルを立ち上げて前向きに譲受を行う企業もあります。

大企業は資金力や人材があり、環境も整っているので、瞬発力の高い若手ベンチャー企業を取り入れて成長させると、将来的に自社の領域を広げられるでしょう。大企業は若い有望な企業を探し、若い企業も能力をより発揮できる環境を求めているので、利害が一致してM&Aの事例が増加しています。

こうしたM&Aの場合、売却企業は金額的に納得のいく売却が可能で、イグジットとして理想的です。こうしたM&Aの実現には、自社の強みを知り企業価値を客観的に測り、どういった企業が譲受を考えているのか策定することが欠かせません。そのうえで、適切な譲受企業に接すれば、理想的なイグジットにつながるといえます。

8. アメリカではIPOよりM&Aが主流

アメリカではIPOよりM&Aが主流

日本のベンチャー、スタートアップ企業のEXIT(イグジット)とアメリカのベンチャー、スタートアップ企業のEXITでは大きな違いがあります。アメリカでは、IPOよりもM&Aが主流ですが、なぜそういった傾向があるのか、どのようなメリットを考えて行われているのかを理解しましょう。アメリカと日本国内の市場は、どのような違いがあるのか比較します。

EXIT(イグジット)戦略

経済産業省による「大企業XスタートアップのM&Aに関する報告書」を見ると、日本はIPOが68%でM&Aが32%、アメリカはIPOが9%でM&Aが91%(2019年)とM&Aが非常に多くなっています

日本におけるスタートアップのEXIT(イグジット)はIPOによっていて、アメリカのスタートアップはEXITをM&Aとするところが大半です。

日本におけるスタートアップのEXITがIPOに偏っている原因は、スタートアップ側におけるファイナンスの知識不足とする声もあります。この知識不足は、EXITに大きな影響を及ぼすでしょう。

日本とアメリカのIPOとM&Aの比較をすると、日本では2014年頃からIPOが増加傾向ですが、アメリカは2014年を境にIPOは少なくなっています。

アメリカは大企業がスタートアップを買収し、利益を得たスタートアップの創業者がベンチャーを始め、再起業を目指していくのが一般的です。これに対して、日本では大企業がようやく動き出したばかりといったところです。

ベンチャーキャピタルと機関投資家の視点の違い

スタートアップがIPOをするときに考慮するのは、資金調達だけではありません。IPO前もIPO後もさまざまなコストがかかるため、公的な書類をそろえなければならず、投資家からのプレッシャーもかかります。

アメリカのユニコーン企業が上場をしないまま、巨額の資金調達を繰り返しているのは、上場に関するコストを避けて、経営の自由度を保つことに事業拡大を集中するため、といわれています。

IPO後は企業運営にも変化を加えなければならず、IPO前は、課題を解決するためにベンチャーキャピタルが独自に投資もできます。しかし、IPO後はアイデア先行型の経営ではなく、業績を伸ばす経営が求められるでしょう。

9. IPOよりもM&Aが主流なアメリカの事情

IPOよりもM&Aが主流なアメリカの事情

前述のとおり、アメリカではIPOよりもM&Aが主流で、年々M&Aの件数は増加傾向です。理由としては、IPOにおける構造変化などの影響で簡単には行えないことやユニコーン企業の資金調達方法が変わっていることなどが考えられます。ここでは、アメリカにおけるIPOとM&Aの現状を見ていきましょう。

アメリカで以前よりもIPOが活用されなくなった理由

ドットコムクライシス後にアメリカではさまざまな構造変化があり、特にIPOのルール変更が大きく、IPOへのハードルが厳格になりました。

それ以前は、時価総額の規模が1億ドルや2億ドル規模で可能だったものが、今では最低でも3億円からで、実際には5億ドル規模が必要です。アメリカではきちんとした株式上場や公開企業となるためには、こうしたレベルが求められます。

M&Aが増加した理由としては、IPOにおけるルール変更の他に、上場企業を維持するためのコストがかかり、IPOを予定している企業をリサーチする投資銀行が少なくなったことも挙げられます。その結果、IPOではなくM&Aを選ぶ企業が増えました。

キャピタルマーケットが大きくなっているのも理由の一つで、市場全体の時価総額が大きくなるほど、投資家は大企業にしか投資をしなくなり、IPOが難しくなるためM&Aに偏る傾向も見られます。

技術やビジネスの発展

すでにビジネスやテクノロジーが広く発展していることも、アメリカではIPOではなくM&Aが増えている要因として考えられます。起業した後に大企業とのM&Aにて買収されるケースが増えていますが、企業を設立した後に飛躍的な成長が限定的であることが原因です。

例として、10年以上前では、AmazonなどがIPOをして、その後に成長を遂げて業界首位などの業績を残しましたが、現在は当時のような企業のまねをしても同じ成長やトレンドは得られないでしょう。こうしたことから、起業してIPOを目指すよりはある程度の段階でM&Aを行い、技術を買収してもらう傾向が強くなっています。

アメリカで増加しているM&Aの目的とは

M&Aが増加しているアメリカでは、M&Aをする側の企業はどのような目的があるのか見ていきましょう

M&Aは業界問わずさまざまなメリットがあり、近年世界中で需要が増えてきていますが、IPOよりもM&Aを目指すスタートアップがなぜ増加しているのか、その理由における理解を深めます。

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M&Aの目的として求められているもの

IPOよりM&Aが増加している中で求められるのは、対象企業が有するサービスや製品、人材や資金、ノウハウなどの経営資源などです。企業や業種によって違いますが、アメリカでは、ユニークな技術や技術者(エンジニア)が多く求められています。

現在はGoogleやTwitterなど有名メディアの活躍を追うようにSNSや検索エンジンの開発 が注目を浴びており、それを動かすエンジニアの需要が高まっているでしょう。ユニークで新たな物を創造するエンジニアなどを獲得するために、M&Aをする企業がアメリカでは大半を占めます。

買収した企業よりも「その企業における10人のエンジニアが大切」などといわれるケースも多く、技術的な開発よりも大きなスケールで開発を可能にすることで、エンジニアたちの成長と事業の拡大をM&Aにて得られるでしょう。
 

10. M&Aを検討する際の相談先

M&Aを検討する際の相談先

ベンチャー企業のEXIT(イグジット)として、これまで多くの企業が目指してきたIPOですが、この狭き門をくぐることは困難であり、時間やコストを考えても現実的ではない場合もあります。

アメリカでは現在、ベンチャー企業のEXITとして、IPOよりもM&Aの数が上回っています。こうした流れから、最近はベンチャー企業やスタートアップではEXITとしてM&Aが増加しており、技術やノウハウを売却した資金でまた新たな立ち上げなどに力を見いだしているでしょう。

M&Aの取引は、IPOよりも現実的で成功率が高く注目を浴びていますが、取引に際しての問題や契約などは専門家を通して行うのが一般的です。M&A総合研究所では、M&Aの知識や経験が豊富なM&Aアドバイザーが培ったノウハウを生かして案件をフルサポートします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談を行っていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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11. IPOとM&Aの違いまとめ

IPOとM&Aの違いまとめ

創業して間もないベンチャー企業などは、M&AやIPOなどEXIT(イグジット)の話は早いと思うかもしれません。しかし、会社をどう成長させていくかを決めておくことで経営の進み方が大きく変わってきます。

もちろんどの会社もM&Aを目指すべきではないですが、資金調達や事業の拡大に向けての取り組みとしては効果的な部分が多数あります。

IPOもM&Aも経営の方針として創業当初から決めておくことは非常に効率的であり、創業者利潤を考えるとM&Aは注目するべきでしょう。アメリカのM&AとIPOの比率を見てもわかるように、国内外問わずベンチャー、スタートアップなどの企業における動きは変わってきています。

自社の経営スタイルや時価総額に見合った戦略を取るのが、EXITをうまく生かせるコツと理解しておきましょう。

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