M&Aでの銀行の役割とは?相談先としての特徴や注意点、手数料を解説

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&Aの際、資金調達先として真っ先に候補に挙がるのが銀行です。資金面であらゆるサポートを行っている銀行ですが、M&Aアドバイザリー業務も担っています。本記事では、M&Aが行うM&Aアドバイザリー業務・役割などを解説します。

目次

  1. M&Aでの銀行の役割
  2. M&A資金を銀行が融資する際に見るポイント
  3. 銀行が行うM&Aアドバイザリー業務とは
  4. M&Aを銀行に相談する際の注意点
  5. M&Aの相談先は銀行と仲介会社どちらがおすすめ?
  6. M&Aの際は銀行ではなく仲介会社に相談すべき
  7. M&Aでの銀行の役割まとめ
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1. M&Aでの銀行の役割

銀行は主たる事業として融資を手掛けており、中小企業になじみのある存在です。経営者としても日頃から接点があるため、M&Aの岐路に立った際も銀行を相談先に選ぶケースが多いです。

M&Aの際に資金調達先として利用される銀行ですが、M&Aでの銀行の役割はそれだけではありません。銀行は、融資以外にM&Aアドバイザリー業務も請け負っています。ほとんどのM&Aは多額の資金を要するもので、特に買収側は譲渡対象の取得対価やデューデリジェンス(譲渡対象の価値・リスクの調査)など、さまざまな場面で資金が必要です。

この際の資金調達方法に、銀行からの融資があります。日頃の融資に加えてM&Aの融資も行っている銀行は、企業にとって頼りになる存在です。融資は、M&Aで銀行に最も求められる役割といえます。ここからは、M&Aでの銀行の役割として、以下の2つを解説します。

  1. 資金を融資する・調達する
  2. M&Aアドバイザリー業務を請け負う

①資金を融資する・調達する

銀行に最も求められる役割は融資と考えられています。資金がなければ動き出せないため、まずは銀行に相談して資金調達から始めるのが一般的です。

注意しなければならない点は、銀行はあくまでも資金回収を見越していることです。つまり、将来的な収益性があると判断されれば融資が行われますが、不安要素の多いM&Aと判断されたら融資を断られる可能性もあります。

【関連】M&Aの資金調達方法とは?スキーム、銀行融資のポイント、返済期間、LBO・MBOも徹底解説| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

②M&Aアドバイザリー業務を請け負う

M&Aアドバイザリー業務とは、M&Aにまつわる手続き全般のサポートのことです。銀行の役割は融資のイメージが強いですが、M&Aアドバイザリー業務も請け負っています。

M&Aの手続きを進めるには財務・法務・税務などさまざまな専門的な知識を要しますが、これらすべてを補える相談先はそれほど多くなく、専門家に相談してもたらい回しにされてしまうことも少なくありません。

一貫したM&Aアドバイザリー業務を請け負うために、銀行には各分野の専門家が在籍しているケースがあります。M&Aアドバイザリーの専門部署が設けられている銀行であれば、有力な相談先です。

なお、銀行は、主に預金業務や企業への融資を行う「商業銀行」と、債券や株式など証券の売買や引受業務を実施して投資家へ販売する「投資銀行」に分かれます。譲受企業のM&Aのアドバイザリー業務・融資を実施するのは商業銀行であり、一般的に投資銀行では融資を行っていません。

2. M&A資金を銀行が融資する際に見るポイント

銀行は無条件で融資を行うわけではありません。M&A後に収益性があると判断されなければ、当然のように融資を断られてしまいます。

融資を受けるためには銀行が資金回収できると判断するような、安心できるM&Aを目指す必要があります。銀行がM&A資金を融資する際に見るポイントは、主に以下のとおりです。

  1. 損益状況・キャッシュフロー
  2. 買収価格・バランスシート
  3. 有形固定資産の価値・担保能力
  4. 信用度
  5. M&A後の事業の見通し

①損益状況・キャッシュフロー

銀行がまず注目するのは、経営状態がわかる「損益計算書」とお金の流れがわかる「キャッシュフロー」です。買収側と譲渡側の経営状況を正しく把握し、M&Aの正当性を見極めます。

これらの指標には、企業の計数管理能力を計る目的でも注目されます。経営者自身の会社の数字への理解度が高ければ、検討しているM&Aも堅実なものであると判断されやすいです。

②買収価格・バランスシート

M&Aの際、譲渡価格を決めるために企業評価を行います。企業評価には特許や技術などの目に見えない無形資産も加味されるため、損益状況のみで判断はできません。

実際の買収価格とバランスシート(貸借対照表)には差額が生じます。この差額はのれんとして処理されるもので、M&Aでも見極めが難しいポイントです。

「無形資産に対して正当な評価がされているか」「意図したのれん代のかさ増しが行われていないか」などが銀行によって厳しくチェックされます。のれん代が大きくなるほど銀行側から理由を求められるため、納得のいく説明をしなければなりません。

【関連】事業譲渡で発生する営業権(のれん)の評価方法や税務面を解説!| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

③有形固定資産の価値・担保能力

企業評価をする際に最もわかりやすいのは有形固定資産の存在です。土地や建物などは価値も見極めやすく換金性もあるため、担保能力が非常に高いと判断されます。

都市部などの人気がある地域に土地・建物を保有している場合、積極的にアピールしておくと融資判断のプラス材料になりやすいです。

有形固定資産は、担保の役割を果たすこともあります。M&A自体が失敗してしまったりM&A後の事業が軌道に乗らなかったりしても、一定の融資資金は回収可能です。

④信用度

M&Aを行う際は大きな費用がかかるだけでなく、経営統合は不確実性が高いため、銀行は審査で借り手の信用度を厳格にチェックされます。特に借り手がこれまでその銀行と取引を行っていない場合、審査が厳しくなるのが一般的です。なぜなら、新規の相手は情報が乏しいため、より慎重な姿勢で審査に臨むためです。

借り手の信用度が十分でない場合、オーナー経営者の個人保証を用いて信用度の補強が求められるケースも見られます。

⑤M&A後の事業の見通し

銀行はM&Aの融資を行う際、買収後の事業計画の合理性・統合により発生が想定されるシナジーの実現可能性・経営統合に問題となるリスクなどを厳格に審査するのが一般的です。融資を受けるにあたって、借り手は説得力のある具体的な事業計画を提示しなければなりません。

3. 銀行が行うM&Aアドバイザリー業務とは

銀行は融資以外にM&Aアドバイザリー業務も請け負っていますが、本章では業務内容は詳しく解説します。

M&Aアドバイザリーの特徴

M&Aアドバイザリーとは、M&Aに関する知識をもった専門家のことです。FA(ファイナンシャルアドバイザリー)とも呼ばれ、M&Aの手続き全般のサポートや相談役としてM&Aの進行を手助けする役割を担います。

譲渡側もしくは譲受側のいずれか一方につき、依頼者の利益が最大化するように努めます。手数料は依頼者のみから受け取る点が特徴的です。

従来は上場企業同士やクロスボーダー(海外を介したM&A)など、大規模なM&Aで利用されることがほとんどでした。しかし、昨今では、中小企業のM&Aでも利用されることが増えています。

M&Aアドバイザリーと仲介会社との違い

M&Aアドバイザリーと仲介会社の大きな違いは、立ち位置と手数料です。M&Aアドバイザリーは依頼者の利益の最大化を図る点が特徴的です。

譲渡側であれば売却価格を少しでも高めようと会社の強み・アピールポイントを全面的に押し出して交渉を進めるなど、希望する条件を満たすために努めます。手数料は依頼者のみから受け取るため、高くなる傾向にあります。

仲介会社は中立的な立場から堅実なM&A成約を目指す点が特徴的です。譲渡側・譲受側の仲介に入り、妥当となる着地点を模索します。手数料は両者から受け取るため、安くなる傾向にあります。

  M&Aアドバイザリー 仲介会社
立ち位置 依頼者側 中立
手数料 高め 安め

銀行が行うM&Aアドバイザリーの料金体系

銀行によって手数料は変わりますが、多くの銀行が採用しているM&Aアドバイザリーの料金体系は下記のとおりです。

相談料 相談段階で発生する手数料
初回相談を無料としている銀行が多い
着手金 依頼段階で発生する手数料
M&Aの初期段階で必要となる経費が含まれる
成約しなかった場合も返却されることはない
中間報酬 取引先との基本合意の段階で発生する手数料
成功報酬の10~30%に設定されることが多い
成約しなかった場合も返却されることはない
成功報酬 M&A成約時点で発生する手数料
譲渡価格の割合で決まるレーマン方式が一般的

上記の料金体系は譲渡側のものです。譲受側である場合は、デューデリジェンス(譲渡対象の価値・リスクの調査)費用なども別途求められます。

4. M&Aを銀行に相談する際の注意点

ここまで銀行が担うアドバイザリー業務を紹介しましたが、実際にM&Aの相談をするとなると以下のポイントに注意する必要があります。

  1. 銀行によるM&A支援は利益を優先させる
  2. 譲渡企業のM&A支援は利益相反を目指す可能性がある

①銀行によるM&A支援は利益を優先させる

銀行の主たる業務はあくまでも融資です。M&A後も譲受側との長期的な取引を目的としていることがほとんどであるため、譲渡側が依頼者であるにもかかわらず譲受側に有利になるようにM&Aを進める可能性があります。

銀行の利益を優先する姿勢は、譲渡側にとって相談段階で注意を払わなければならないポイントの1つです。

②譲渡企業のM&A支援は利益相反を目指す可能性がある

こちらも譲渡側の注意ポイントです。銀行のアドバイザリー業務は、一方の利益と他方の不利益が発生する利益相反を目指すケースがあります。銀行法および金融商品取引法によって規定されているため、極端な利益相反になる危険性は低いです。

しかし、銀行は基本的には融資資金の回収を目指しているため、少なからず譲受側に肩入れするケースが想定されます。譲渡企業からすると、利益相反の点にも注意が必要です。

【関連】中小企業M&Aの流れや成功ポイント、注意点を解説!【成功事例あり】| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

5. M&Aの相談先は銀行と仲介会社どちらがおすすめ?

M&Aの相談先の候補には主に銀行とM&A仲介会社の2つが挙げられます。両者の特徴を解説します。

銀行に相談するメリット・デメリット

銀行は融資を主たる事業とする特徴から、さまざまなメリット・デメリットが存在します。一番大きいメリットは、M&A費用を銀行の融資で賄える点です。特に譲受側では、買収費用やデューデリジェンスなどの費用が必要となるため、計画的な資金運用が求められます。

銀行の融資判断は、資金回収の見通しが立ったうえで行われるものです。審査に通過できない場合、「M&A自体のリスクが高い」「将来的な収益性が望めない」と判定されたことになり、M&Aリスクの確認にも活用できます。

一方、デメリットは、銀行の本業はあくまでも融資である点です。一時的な取引先である譲渡側よりも継続的な取引先になり得る譲受側に肩入れをする危険性があります。

譲渡側の不利益を考慮せず、譲受側がM&Aを実行しやすいよう交渉を進める利益相反取引の可能注がある点に注意が必要です。

メリット デメリット
・資金面のサポートが手厚い
・融資判断を通じてM&Aのリスクを確認できる
・銀行の本業は融資
・大企業を対象にしている
・譲渡側にとって利益相反取引になる可能性がある
・手数料が高め

M&A仲介会社に相談するメリット・デメリット

続いて、M&A支援を専門的に請け負っているM&A仲介会社に相談するメリット・デメリットです。

M&A仲介会社の最大のメリットは、多数のM&A仲介・相談を経て培ってきた強固なネットワークです。M&Aを進めるうえで難易度が高い取引先の選定で大幅なアドバンテージを得られます。

各分野の専門家が在籍しているため、一貫したM&A支援を受けられる特徴もあり、M&Aの相談からクロージングまで任せられます。

その反面、M&A仲介会社のアドバイザーとの話し合いの場を設ける必要性も生じます。日常の業務と並行して話し合いを進めるのは、経営者にとって苦痛に感じるかもしれませんが、M&Aの成功率を高めるためにもしっかりとした意思疎通は必要不可欠です。

メリット デメリット
・幅広いネットワークを活用
・各分野の専門家が在籍
・手数料が安め
・話し合いのプロセスが増える

6. M&Aの際は銀行ではなく仲介会社に相談すべき

銀行のM&Aアドバイザリー業務は資金面のサポートが手厚いものの、譲受側の利益を優先するケースがあり、譲渡側は不利な条件でM&Aを進められてしまうおそれがあります。譲渡側がM&Aを行う際は、M&A仲介会社など専門家のサポートのもとで進めていくことがおすすめです。

M&A総合研究所ではM&Aアドバイザーによるフルサポートを行っており、譲受企業とのマッチング・適正な企業評価・交渉など、クロージングまで丁寧に対応します。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。ご相談は無料です。M&Aをご検討の際は、電話またはメールフォームよりお気軽にお問い合わせください。

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7. M&Aでの銀行の役割まとめ

本記事では、「M&Aの相談先として銀行は選択肢に入るのか」といった視点から、銀行のM&Aアドバイザリー業務を解説しました。

銀行の本業は融資であることから、継続した取引先になり得る譲受企業に有利になるように交渉を進めます。これは譲受企業にとっては大きなメリットですが、譲渡企業にとっては注意が必要です。

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