M&Aのスケジュールを解説!【買収までの流れ・手順】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&Aを行う際には、スケジュールを把握しておく必要があります。M&Aのスケジュールを把握できていなければ時間がかかったり、方向性が失われたりする可能性があるからです。トラブルなく、スムーズにM&Aが行えるようにM&Aスケジュールについて知っておきましょう。

目次

  1. M&Aのスケジュールを解説!
  2. M&Aのスケジュール(流れ)は?
  3. M&Aのスケジュール例
  4. M&Aのスケジュールを早めるには?
  5. まとめ
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1. M&Aのスケジュールを解説!

事業承継や経営の多角化など、経営者はさまざまな理由でM&Aを検討します。M&Aを行うには、いろいろな準備・手続きが必要です。

では、M&Aの事前準備から実施・統合完了までにどのくらいの期間が必要なのでしょうか?

M&Aの案件の大きさによりますが、基本的にはそれなりの時間がかかるのが通常です。

この記事ではM&Aにかかる期間やスケジュール(M&Aの流れ)について紹介していきます。

 

  • M&Aのスケジュール(流れ)について
  • M&Aの具体的なスケジュール(流れ)の紹介
  • M&Aスケジュールを早める方法について


この記事を読めば、M&Aの大まかなスケジュール(流れ)を理解していただけます。M&Aを検討している経営者の今後の予定調整に役立つので、ぜひ最後まで記事をご覧ください。

2. M&Aのスケジュール(流れ)は?

先ほど述べたとおり、M&Aは事前準備から実施・統合完了までにはそれなりの時間がかかります。

M&Aの事前準備から実施・統合完了までには半年から1年程度かかることが一般的です。

ただし、M&Aの案件や規模によっては1か月という短期間で終わる案件もあります。また、条件を満たすような企業が見つからない、M&A交渉が難航している場合は2、3年かかることもあります。

スムーズにM&Aの手続きを行わなければ、かなりの時間を要することになります。

ここからは、できる限り時短をしたいスケジュールの中でも「時間をかけた方がよい調査」について、解説していきます。

時間をかけたほうがよい流れ

M&Aはできるだけ迅速に行っていきたいものですが、M&Aを行う際にはいろいろな手順を踏んで行う必要があります。

M&Aの手順・手続きの詳細については後で紹介しますが、M&Aの手順・手続きの中で特に時間をかけたほうがよい手続きは以下の3つです。

  1. 買収相手の探索
  2. デューデリジェンス(企業監査)
  3. M&A契約の交渉

これらをしっかりと行わなければ、M&Aによって自社の経営悪化、最悪の場合は倒産に追い込まれることがあります。

そのようなことにならないためにもぜひ参考にしてみてください。

買収相手の探索

1つ目に紹介する手続きは、M&Aにおける買収相手の探索です。

M&Aにおける買収会社の探索は
M&A仲介会社もしくはFA(ファイナンシャルアドバイザー)に依頼するのが簡便です。
M&A仲介会社もしくはFAに条件を提示する際は、自社にあまりデメリットがないような条件を提示し、目的の買収会社を見つけるようにしましょう。しかし、あまりに条件が厳しすぎるとM&Aの買収会社が見つからず、買収相手探索で2~3年かかる可能性があります。

買収相手の探索条件を妥協しすぎず、かつ時間はかけすぎないような条件を提示し、目的の買収会社を見つけるようにします。

デューデリジェンス(企業監査)

M&Aにおいて時間をかけたほうがよい手続き2つ目はデューデリジェンス(企業監査)です。

M&A買収の際、とても重要な手続きとなります。M&A買収で会社ごと買収する場合は、負債等を含めて原則すべてを譲り受けることになるからです。

しかし、被買収会社が多額の借金を抱えているにもかかわらず、その情報を共有せずにM&Aを実行してしまう恐れがあります。また、被買収会社が不本意であるM&Aの場合は、買収対策(ゴールデンパラシュートなど)を行ってくる可能性もあります。

このような買収会社にとって不利となるM&Aを避けるために、デューデリジェンスは非常に重要な手続きといえます。

M&A契約の交渉

M&Aにおいて時間をかけたほうが良い手続き3つ目はM&Aの契約締結時の交渉です。

自社が要求する内容と被買収会社が要求する内容が異なっている可能性があります。M&A後、会社を経営していくのは自社であるため、できるだけ要求を受け入れてもらうように努力しましょう。

しかし、あまりにも妥協をしないでいるとM&A契約が難航し、M&A契約を中止せざるを得ないことになるケースもあります。何としてもその会社を買収したい場合は、条件を妥協する必要性が出てきます。

これら3つの手続きを含めたM&A業務を慎重に行う必要があるため、少なくともM&Aのスケジュール(流れ)には6~12か月程度を要することになるのが一般的です。

【関連】M&A手数料の相場はいくら?計算方法や仲介会社に支払う報酬について解説!

3. M&Aのスケジュール例

ここからは、M&Aの具体的なスケジュール(流れ)について紹介します。

M&A開始から統合完了まで約1年かかる一般的なモデルのM&Aスケジュール(流れ)例は、以下のとおりです。
 

  • 1ヶ月目(事前準備~買収相手の確定)
  • 2ヶ月目(秘密保持契約~基本合意契約)
  • 3ヶ月目(デューデリジェンス)
  • 4ヶ月目(最終条件交渉~クロージング)
  • 5ヶ月目~(統合作業)

M&Aを初めて行う経営者にとっては、聞いたことがない言葉や手続きの内容ばかりでしょう。それぞれわかりやすく解説していきます。

流れ1.最初の1ヶ月目(事前準備~買収相手の確定)

M&A開始から初めの1ヶ月目では、M&Aに向けての準備を進めることになります。

M&Aは多くの手続きや流れを必要とするため、最初の準備段階でM&Aについてしっかりと考えて失敗をしないように進めていく必要があります

例えば、具体的に考えておかないと被買収会社とマッチングできなかったり、不利な条件でM&Aを実行せざるを得ない状況になったりする可能性があります。また、M&Aの交渉が長期化したり、失敗したりする可能性もあります。

そのため、1ヶ月目では以下の順番でM&Aの準備と手続きを進めていきます。
 

  1. 事前準備
  2. 仲介・FAとの契約
  3. 買収相手の探索
  4. スキームの策定
  5. 買収相手の確定

初めの1ヶ月で行うM&Aスケジュール(流れ)について、手順を追って詳細に解説します。

事前準備

M&Aスケジュール(流れ)の中で最初に行うことは、M&Aに向けて事前準備を行うことです。

具体的には以下のような項目について準備を進めます。

  • 目的の明確化と業界の決定
  • M&A買収の予算
  • 予算以外のM&Aにおける買収する会社の条件

【目的の明確化と業界の決定】

M&A買収を行うことでどのようなメリットや効果が得られ、現在行っている業務に対してどのようなシナジー効果(相乗効果)が得られるか明確にしておく必要があります。

また、どのような業界の会社を買収するか決めておくことも重要です。選ぶ業界によってM&Aの戦略が変わってくるからです。自社と近い業界の会社を買収する場合は、M&A後にシナジー効果が得られるように経営戦略を考える必要があるでしょう。

一方で、自社とあまり関係のない業界を買収するときは、経営の多角化が考えられます。その場合は、自社の力を用いて被買収会社の短期的な成果を上げることは難しいと考えられるので、成長率の高い会社を買収するなど企業選定を慎重に行う必要があるのです。

【M&A買収の予算】

予算が大きすぎるとM&Aで買収をした後のリスクに対処できない可能性があります。一方で、予算が小さすぎると、M&A買収後に大きな効果を挙げられないと考えられます。

M&Aによるリスクとリターンを考慮した予算を提示する必要があります。

【予算以外のM&Aにおける買収する会社の条件】

最後に紹介する決めておくべき事項は、予算以外のM&Aにおける買収する会社の条件です。自社の規模や経営状態によりM&Aで買収したいと考えている会社は異なります

会社の所在地を例としてみていきます。

自社の本社と買収先の本社が遠い場合、M&A後、会社同士を行き来することが大変であり、従業員に負担をかけることになります。また、会社同士を行き来する際、交通費を負担する必要があるため、自社の経営を圧迫する可能性もあります。

これを理由に被買収会社の所在地も買収の条件にしておくべきであると考えられます。こうしたことから、条件についても検討していく必要があるのです。

ここまで説明した事前準備は一部なので、実際には会社の状態によって異なります。自社の状態に合わせて事前準備を進めましょう

仲介・FAとの契約

次は、被買収会社を決めます。すでに被買収会社が決まっていない場合、M&A仲介会社やFA(ファイナンシャルアドバイザー)と契約を結ぶ方法も一つです。

M&A仲介会社やFAはいずれも被買収会社の探索・選定を行うM&Aの専門家です。M&Aについてアドバイスなどを受けることができます。M&A仲介会社やFAは少し異なる部分があるので見ておきましょう。

M&A仲介会社は、一般的に中小企業など規模の小さいM&Aを行うときに契約を結びます。M&A仲介会社は買収会社と被買収会社の仲介を行い、双方の条件に合う会社同士をマッチングさせ、M&Aを行います

FAは別名M&Aアドバイザリーとも呼ばれています。主な業務内容は、M&Aに関するアドバイスやM&A買収会社の探索を行うことです。一般的に大企業がM&Aを行う際に契約を結びます。

業務内容の違いなどがあるので、自社に合うところと契約しましょう。

場合によっては、被買収会社が決まっていたり、M&Aの規模がとても小さい場合はM&A仲介会社・FAを利用しなかったりする場合もあります。しかし、M&Aを行う際には法令の対応などいろいろな手続きが必要となるため、M&Aのアドバイスを得るために契約を結ぶことをおすすめします。

買収相手の探索

次の手順は、M&A買収相手の探索です。

M&A仲介会社・FAと契約をしていた場合、M&A買収相手の探索は主にM&A仲介会社・FAに行ってもらうため、自社はこの業務をする必要はありません。

M&Aの買収相手の探索をしてもらう際、買収したい会社の業界、予算などの買収条件をM&A仲介会社・FAに提示する必要があります。その提示した条件に沿ってM&A仲介会社・FAは買収相手を探索します。

そのため、M&Aの最初の手順である事前準備を入念に行っておく必要があります。

スキームの策定

次の手順はスキームの策定です。スキーム策定とはM&A買収の仕組みを決めることです。スキームに関して大きく分けると株式取得・事業譲受・経営統合の3つがあります。これらのスキームについて簡単に紹介します。

まずは、株式取得についてです。株式取得は単純に相手の会社の株式を取得し、買収する方法です。M&A買収のスキームとして、よく利用されています。

事業譲受は、会社ごと買収するのではなく、必要な事業だけを買収することです。すべてを譲り受けるわけではないので、被買収会社の負債などを受け入れる必要がないことが事業譲受のメリットです。

最後のスキームは、経営統合です。経営統合では、2社が
合併し、新設会社になることがあります。また、複数社統合することが可能で、この場合はホールディングスカンパニーを設立することになります。

どのスキームを選ぶかは、自社や被買収会社の経営上・財務上などの観点によります。そのため、FAや税理士などM&A専門家の意見を聞いて慎重に選ぶとよいでしょう。

【関連】M&Aスキーム・手法別でメリット・デメリットを比較!

買収相手の確定

M&A開始1ヶ月目の最後の手順は、買収相手の確定です。

M&A仲介会社やFAと契約し、買収相手の探索を依頼している場合は、M&A買収候補を複数社出してもらえます。その中から、自社が希望する買収相手を選び、確定します。

基本的なM&Aスケジュール(流れ)は、買収相手を確定させるまでに1ヶ月程度かかります

しかし、M&A買収の条件を厳しくしている場合などは買収相手が見つからないこともあります。このような場合は、さらに時間がかかるでしょう。

流れ2.2ヶ月目(秘密保持契約~基本合意契約)

M&A開始から2ヶ月目では、M&Aに向けてのより具体的な手続きを行っていきます。

この段階になると買収会社・被買収会社のトップが直接面談をして契約内容のすり合わせなどを行う必要も出てきます。

具体的には以下の手続きを行います。

  1. 秘密保持契約の締結
  2. アドバイザリー契約の締結
  3. ネームクリア
  4. 提案資料の開示
  5. トップ面談
  6. 意向表明書の提出
  7. 基本合意書の締結

この1ヶ月間は、M&Aに向けて行うべき手続きが最も多いです。

以下詳細について紹介していますので、M&Aの大まかな手順をつかんでください。

秘密保持契約の締結

買収相手が決定したあとは、買収会社・被買収会社の間で秘密保持契約を締結します。

秘密保持契約とは、M&Aを公開できる段階まで、第3者に口外しないことを約束する契約のことです。秘密保持契約の締結をしていない場合、情報漏洩により自社・他社・取引先に悪影響を与えてしまいます。

例えば、取引先や従業員が噂レベルでM&Aの情報を聞くと、被買収会社の経営状態が悪いのではないかと思い、これにより業績悪化、従業員の退職を招く可能性があるなどです。

そのため、秘密時契約を両社の間で締結します。

またこの理由以外にも、情報が洩れると買収側と被買収側で被害を受ける可能性があります。秘密保持契約で買収側と被買収側それぞれが注意するべきポイントを簡単にまとめておきます。

【買収側が注意するべきポイント】

情報漏洩により損害を受けた場合、M&Aの契約解除ができるような契約を締結しておきましょう。損害の具体例として、M&Aを理由に被買収会社の従業員の大量退職の可能性が考えられます。

そうすると、M&Aの契約解除ができないまま締結すると被害を受けることになるので、秘密保持の契約内容をしっかりと確認する必要があります。

【被買収側が注意するべきポイント】

被買収会社の情報を漏洩させないようにすることです。デューデリジェンスにより買収会社に開示された情報を第3者に渡さないなど、M&Aのために開示した被買収会社の情報を漏らさないように締結をする必要があります。

アドバイザリー契約の締結

秘密保持契約を締結した後は、アドバイザリー契約の締結をします。

M&Aアドバイザリー(FA)との契約は買収相手を確定させるまでの段階においては、M&A仲介業務やM&Aアドバイス業務を行ってもらうために締結していました。

ここの段階では、M&A契約を代理で行ってもらうためにアドバイザリー契約を結ぶことになります。

M&Aを行うためにはかなりの労力と時間、専門的な知識が必要となります。会社の社長や取締役が業務を行いながらM&Aを問題なく、スムーズに行うことは困難です。

そのため、専門家に依頼することでトラブルなくM&Aを進めることができるようにする流れとなります。また、経営者はM&A業務にかける時間を減らし、本業に専念できるメリットもあります。

ネームクリア

次の手順は、ネームクリアを行うことです。

ネームクリアとは、被買収会社の名前を買収会社に開示することです。M&A仲介会社やFAに買収相手の探索を依頼している場合、基本的には買収会社に企業名を明かしません。

これには理由が2つあります。

1つ目は、企業名を聞いて先入観を持たないためです。企業名を聞くことで良いイメージや悪いイメージといった先入観を持つことになります。そのため、M&Aを買収するうえでは良い会社かどうか正しい判断ができない可能性があるのです。

そのため、企業名を明かさずに、経営状態や財務状態などでM&Aの被買収会社として適切か不適切かを判断します。

2つ目は、情報漏洩を防ぐためです。被買収会社がM&Aに向けて動いているという情報が洩れると、その会社で働いている従業員は業績が悪いのではないかと不安になると考えられます。最悪の場合、従業員が退職する可能性もあります。

そのため、基本的にネームクリアは秘密保持契約を結ぶまで行わないことになっています。

提案資料の開示

次の手順は、提案資料を被買収会社に開示することです。

提案資料とは、M&Aの条件や買収方法など今後の流れやM&A契約内容などを説明した資料のことです。依頼しているM&A仲介会社やFAによっては企業概要書と呼んでいる場合があります。

提案資料では、M&Aの方針・流れ以外にも、M&A買収後、どのようなシナジー効果やメリットが考えられるかなども記載します。M&Aにおいてはかなり機密性の高い情報であるため、秘密保持契約を結んだ後でなければ開示できません。

トップ面談

この段階で初めて、経営トップ同士での顔合わせを行います。

提案資料やM&Aにおいて今まで開示された資料をもとに、経営方針、M&A買収額、M&A買収後の従業員の処遇、さらには今後のM&Aの流れなどお互いが納得するまで質問し合います。

また、買収会社から説明をするばかりではなく、被買収会社から提案やお願いをされることもあるでしょう。

例として、M&A後の被買収会社の従業員の雇用保持やM&A買収額などです。トップ面談の後、納得できない点やわからなかった点などはM&Aアドバイザリーをつうじて質問をすることもあります。

この後、M&Aの契約・実行を行っていきます。そのため、買収会社・被買収会社ともに納得いくまで質問をするようにしましょう。

意向表明書の提出

トップ面談後、両社は意向表明書の手続きを行います。

具体的にはトップ面談での説明内容を受けて、両社がM&Aを進めたいという意向を示した場合、意向表明書を提出するのです。

なお、意向表明書とはM&Aにおける買収方法、M&A買収価額などの提案条件が書かれた書面のことをさします。

基本合意書の締結

意向表明書が両社から提出されると次は基本合意書を締結します。

基本合意書とは、M&Aを進める意向、独占交渉権、独占交渉期間などを規定した書面のことであり、それまでに合意している内容が記載されているものです。

なお、基本合意書のうちM&Aを実行する義務について法的拘束力を有しない形にするのが通常です

そのため、基本合意書締結の後、M&Aの準備を進める中で合意書を破棄できるのが通常です。ただし、基本合意書の一部の条項に法的拘束力を持たせることも可能なため、基本合意書の締結は慎重に行う必要があります。

流れ3.3ヶ月目(デューデリジェンス)

M&A開始後3ヶ月目からは、デューデリジェンス(買収監査)を行います。

約1ヶ月かけて被買収会社の監査を行うことになるでしょう。先ほども述べたとおり、デューデリジェンスは、M&Aを行ううえで、重要な手順となります。

ここではデューデリジェンスについて、詳しく解説していきます。

デューデリジェンスの実施

デューデリジェンスとは、M&Aを実施する前に買収会社が被買収会社の調査を行うことです。

デューデリジェンスは別名、企業監査と呼ばれています。被買収会社の経営状況や財務状況は、基本的に基本合意書を締結するまでに基本的な調査・分析を終えています。

しかし、被買収会社に対して不安な点がある場合やさらなる詳細な調査が必要な場合などは、この段階でデューデリジェンスを実施します。また、被買収会社の
企業価値算定のためにもデューデリジェンスが実施され、この調査によりM&A契約時に提示する買収額を決定します。

実際にデューデリジェンスを行うと、短期間で調査をするのは難しいです。そのため、できるだけ短時間で進めるためにもM&Aや財務、法務の専門家に依頼します。

結果、M&Aを実施したときに問題が発生すると考えられる場合は、M&A買収額を調整したり、買収会社・被買収会社の双方でその問題の解決をするよう打ち合わせをしたりして進みます。

場合によってはM&Aを中止することもあるため、隠れ債務など自社に不利益なものがあるとしてもデューデリジェンスまでには打ち明けておく必要があるでしょう。

デューデリジェンスの種類

デューデリジェンスには主に、ビジネスデューデリジェンス、財務デューデリジェンス、法務デューデリジェンスがあります。

この3つのデューデリジェンスについて簡単に紹介します。

【ビジネスデューデリジェンス】

ビジネスデューデリジェンスでは、被買収会社の戦略、組織、業務内容を調査したり、経営データを分析したりします。また、必要に応じて被買収会社の事業所や工場を視察に行くことも少なくありません。

経営コンサルタントや中小企業診断士など経営についての専門家に依頼をし、問題がないか調査してもらうことになるでしょう。

【財務デューデリジェンス】

財務デューデリジェンスでは、被買収会社の過去の決算書や税務申告書などを解析し、データの正確性を調べ、被買収会社の過去と現在の財務状況を把握します。税理士など財務についての専門家に依頼し、調査してもらうのが一般的です。

また、被買収会社が監査法人の監査を受けている場合は、その監査人からの意見書をもらうことができます。

【法務デューデリジェンス】
 

法務デューデリジェンスでは、被買収会社の株主総会議事録、労務関係、締結済みの各種契約の内容やM&Aへの影響の有無、コンプライアンスなど法務面の資料や情報を調べます。弁護士などの法律の専門家に調査を依頼するのが一般的です。

流れ4.4ヶ月目(最終条件交渉~クロージング)

M&A開始後4ヶ月目でようやくM&Aの最終契約を締結します。

具体的には以下のような手順です。
 

  1. 最終条件交渉
  2. 最終契約書の締結
  3. クロージング(M&Aによる対価の支払い)

M&Aの契約締結までの流れを以下詳細に紹介します。

最終条件交渉

デューデリジェンス実施後は、買収会社・被買収会社間で最終条件交渉を行います。

買収会社はデューデリジェンスに基づいたM&A買収額やM&Aを実施する前に解決してほしいことなどを提示します。一方、被買収側はその提示を受けて疑問や不満がある点について納得がいくまで交渉します。

交渉が難航するとM&Aを実施することができないため、時間がかかることもあります。

最終契約書の締結

最終条件の交渉で両社が納得すれば、最終契約書の締結を行います。

最終的なM&A条件をまとめた「最終契約書」を作成し、M&A契約を締結するのです。最終契約書の締結することでM&A契約が成立したことになります

なお、最終契約書は法的拘束力があるため、最終契約書締結後以降の取り消しはできません。

クロージング

最終契約書の締結が終わると次はクロージングを行います。

クロージングとは、M&Aの手続きを開始したり、M&Aによる買収の対価を支払ったりすることです。クロージングを行うには時間がかかるため、最終契約書の締結日から少し期間を空けてクロージングを行います。

例として、クロージングで買収会社・被買収会社が行う内容についてみていきましょう。

買収側が行うことは、M&Aの買収対価を支払うための資金調達やM&A買収後の被買収会社の運営の準備です。一方、被買収側が行うことは、自社株式を買収会社に移転させる手続き、自社の重要書類の引き渡しなどです。

また、買収会社・被買収会社はここで初めて従業員や取引先の会社にM&Aについての情報を開示します。株式会社の場合は、株主総会でM&Aについての承認を得る必要もあるでしょう。

流れ5.5ヶ月目~(統合作業)

M&A開始5か月目からは、統合作業を行います。

クロージングが行われてようやく新しい会社・新体制がスタートしていきます。クロージング後の統合作業は、一般的に半年以上かかります

M&A後の統合作業は、M&Aを行ううえで、重要な作業のうちの1つです。

統合ができないということは、会社がばらばらの状態であることを示しています。つまり、M&Aによる効果を得ることができないため、M&Aに失敗したという結果になるのです

以上のことから、M&A後の統合作業は慎重に行う必要があるでしょう。

【参考】統合作業について

M&A後の統合作業では、買収会社・被買収会社のハード面・ソフト面を統合していくことになります。

ハード面の統合作業は、作業開始から完了するまでに約半年かかる場合がほとんどです。そのため、このM&Aモデルだと、M&A開始から統合完了まで1年程度かかることになります。

【統合作業のハード面】

ハード面は、買収会社・被買収会社の経理や総務、人事、システムなど実務的な調整を必要とする作業のことです。経理の支払日・決済日、また人事評価や退勤管理などの人事システムなどを統一していきます。

ハード面の統合作業に関係する部署は、日常業務を行いながら統合作業を行っていきます。そのため、M&A後は統合作業のために、かなり大きな負担を強いることになるでしょう。

問題なく、スムーズに統合作業を完了させるためには、クロージングの際に関係する部署の理解を得ておく必要があります。

【統合作業のソフト面】

M&A後のソフト面の統合とは、人や企業文化を融合させていく作業のことです。当然のことですが、買収会社・被買収会社の企業文化は異なっています。異なっている企業文化をどのように統一させていくかが経営者の腕の見せどころとなります。

M&A後にソフト面で統一できない場合、社内分裂が起こることになり、業績が低下すると予想されます。M&A後、会社のソフト面は、短期間で融合させることが理想的です。

しかし、従業員が主体となって作り上げていくものなので、統合完了するまでに時間がかかるでしょう。

しかし、従業員が主体となって作り上げていくものなので、統合完了するまでに時間がかかるでしょう。

こうした統合作業のことを、PMIとも呼びます。PMIはとても難しいのですが、成功させなければM&Aが成功したといえません

4. M&Aのスケジュールを早めるには?

M&Aのスケジュールはとても長い期間を必要とすることから、早める方法についても知っておかなくてはなりません。

先ほど紹介したとおり、M&A開始から統合完了までのスケジュールには一般的に1年程度かかります。また、被買収会社の選定に時間をかけたり、M&Aの交渉が難航したりするとM&A開始から統合完了まで2~3年かかる場合もあります

しかし、近年では時代の流れが速いため、M&Aに2~3年もかけているとその業界のブームが過ぎ去ってしまい、M&Aによるメリット・効果を受けられない場合も考えられます。

このようなことにならないためにも、M&A開始から統合完了までの期間をできるだけ短くする方法を3つ紹介していきます。

  1. M&Aの流れをシミュレーションする
  2. M&A交渉時の条件を譲歩する
  3. M&A後の統合作業の効率化・対策案を検討する

①M&Aの流れをシミュレーションする

M&Aの流れのシミュレーションをしてみてください。

事前準備の段階でM&A開始から統合完了までの手順の見とおしを立てておくことで、M&Aの手続きをスムーズに行うことができるからです

M&Aの手続きを行う際にトラブルが起こった場合には、臨機応変に対応する必要があります。しかし、行き当たりばったりな行動を取ってしまうとM&A統合完了までに時間がかかるうえ、M&Aの方向性がぶれる可能性があるのです。

つまり、M&Aが失敗するリスクが高くなってしまいます。こうしたリスクを避けるためにもシミュレーションは役立つでしょう。

②M&A交渉時の条件を譲歩する

M&Aの期間を短くするためには、M&A交渉時において譲歩できる条件を考えておく必要があります。

失敗しないように買収したい会社の条件を絞ることやM&Aの交渉条件を考えておくのは大切です。しかし、条件を絞りすぎると買収したいと思える会社が少なくなるため、なかなか被買収会社を見つけることができません。

また、M&Aの交渉条件についても厳しい条件を被買収会社に提示すると、最終交渉の段階で難航する恐れがあります。

このようなことから、M&Aでどこまで譲歩して問題はないか、デメリットが少ないかを考えておくことでM&Aの期間を短くできる可能性が上がるでしょう。

目的を明確にする

買収側は、M&Aを円滑に進めるために、M&Aをどのような目的で行うのかはっきりさせておくことが大切です。また、M&Aの予算の大枠を決めておきましょう。そうすれば、条件を譲歩するときにも役立ちます。

③M&A後の統合作業の効率化・対策案を検討する

M&Aの期間を短くするための方法3つ目は、M&A後の統合作業の効率化・対策案を考えておくことです。

ハード面での統合作業では、経理や人事など関係部署の負担が大きくなります。そこで、M&A後の統合作業を短期化させるためには関係部署への人員を増やすなど、統合作業を効率化させる方法を考えておくとよいでしょう。

ソフト面での統合作業では、経営者自身が先導して行う必要があります。具体的には、経営者が被買収会社を訪問した際に、企業文化や社内の雰囲気を把握しておきます。

そして、どのようにすれば自社とソフト面で統合できるかという案をM&Aの手続きを行っている間にいくつか考えておきます。

これらの対策案を、M&A後の統合開始直後からすぐに実行します。実行後、定期的に調査し、問題があるようならば修正を実行していきましょう。

例えば、経営者自身でソフト面の統合についてPDCAサイクルをできるだけ回すことで、早く統合させることができると考えられます。

以上、M&Aの期間を短くするための方法を3つ紹介してきましたが、ほかにも方法はたくさんあります。また、M&Aの規模や案件内容によっても方法は異なります。

統合作業を成功させるためには、事前のデューデリジェンスでの調査も大切となります。統合作業に向けてデューデリジェンスをどのように行うべきかは、下記の記事で詳しく解説しています。

5. まとめ

M&Aを行うためには、準備期間クロージング期間まで一般的に半年1年程度かかると考えておきましょう。事前にいつまでにM&Aを成立させたいのかスケジュールを立てておくと、スムーズに進めることができます。

 

M&Aは慎重に行う必要があるうえ、それを約1年かけて行わなければなりません。事業承継や経営の多角化など何らかの理由でM&Aを行う場合は、すぐに行動するようにしましょう。

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