垂直型M&Aとは?水平型との違いやシナジー効果・メリット・事例まで解説!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

垂直型M&Aを検討している企業が増えています。しかし、垂直型M&Aの実施前に水平型M&Aとの違いなどを把握しておくことが大事です。今回は垂直型M&Aを検討している企業に向けて、水平型M&Aとの違いなどについて解説します。

目次

  1. 垂直型M&Aとは
  2. 垂直型M&Aから得られるシナジー効果と目的
  3. 垂直型M&Aのメリット・デメリット
  4. 垂直型M&Aの相談先
  5. 垂直型M&Aの事例
  6. 垂直型M&Aを成功させるポイント
  7. 垂直型M&Aを成功させるには専門家に相談がおすすめ
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1. 垂直型M&Aとは

M&Aには垂直型M&Aといったものがあります。
垂直型M&Aは下請け会社などと合併・買収する方法です。
1つの製品を開発する場合に、製造会社と原材料を供給する会社、製品を販売する会社を統合させる場合が垂直型M&Aに該当します。
1つのグループで商品・サービス提供に必要なプロセスをすべてこなせるようになれば、スムーズな事業運営が進めやすくなります。

垂直型M&Aと水平型M&Aとの違い

垂直型M&Aと近しい種類に水平型M&Aがあります。
水平型M&Aは同じ業界・業種でスケールメリットを享受できる企業と実施するM&Aです。
垂直型M&Aと水平型M&Aの違いとして、同業界・業種での取引となるかどうかがあげられます。
水平型は同業界・業種でのM&Aになりますが、垂直型M&Aは買収側企業における別部門の役割を果たす会社であれば同業種であるかどうかは必須条件ではありません。
 

垂直型M&Aと水平型M&A以外のM&Aとは

垂直型M&Aと水平型M&A以外のM&Aとして、異業種の会社とのM&Aなどがあります。
同業種でのM&Aを実施すると、同じ市場における事業拡大が期待できます。
一方で、異業種の会社とのM&Aを実施すると、新しい市場へも商品・サービスがアプローチできる事業展開が実現しやすいです。
異業種の会社とのM&Aも視野に入れてみてください。

2. 垂直型M&Aから得られるシナジー効果と目的

垂直型M&Aから得られる主なシナジー効果と目的として以下のものがあげられます。

  • 事業規模の拡大
  • コストの削減

以下で詳細について解説します。

事業規模の拡大

垂直型M&Aから得られる主なシナジー効果と目的として、事業規模の拡大があげられます。
同じ市場でシェア率を高めることが継続的な企業の成長に繋がります。
また、事業規模の拡大は既存の市場にアプローチするため、企業成長に成功できないことはあっても失敗するリスクは少ないです。
近年では、人手不足などによりどの業界・業種でも生存戦略を意識する企業が多いです。
そこで業界の中でシェア率の高い企業同士がM&Aを実施するケースも増えてきています。

コストの削減

垂直型M&Aから得られる主なシナジー効果と目的として、コストの削減があげられます。
同業界・業種の会社と連携して事業運営が進められるようになると、経営資源もかけあわせやすくなります。
経営資源をかけあわせることで自社内だけで商品・サービスが開発できるとコストカットしやすいです。
従来の業務委託のやり方だと、下請け会社側の利益がでるようにマージンを支払う必要があります。
垂直型M&Aを採用すると業務効率化によるコストだけでなくマージン分のコストも抑制できます。
企業成長だけでなくコストカットも期待できることを念頭においてM&Aを進めましょう。

3. 垂直型M&Aのメリット・デメリット

垂直型M&Aを実施する前に、メリット・デメリットを把握することで慎重な判断を下しやすいです。
ここでは垂直型M&Aのメリット・デメリットについて解説します。

メリット

垂直型M&Aのメリットとして、先ほども触れたように商品・サービス開発にかかるコストをカットできる点があげられます。
多くの企業は他社と取引関係を構築し、商品・サービス開発に必要となる原材料を調達したり、一部工程を委託したりする体制を取っています。
しかし、M&Aによって1つの会社で原材料の調達から商品・サービス提供まで一括で行えると、他社に任せるところでのコストがカットしやすいです。
また、自社で一括対応できることで商品・サービス提供がスピーディに進められるようになる点も垂直型M&Aのメリットとしてあげられます。
他社を介した取引のラグが生じなくなり、意思決定のスピードも高められるため、同業他社よりも素早い動きが取りやすくなります。

デメリット

垂直型M&Aのデメリットとして、業界におけるブランド力をかえって失ってしまうこともある点があげられます。
同じ業界でも原材料の調達を専門とする会社は、その業界における原材料調達力が会社のブランド力に直結しています。
垂直型M&Aを実施すると、対象の業界・業種の部門での専門性を失うことになるため、開発する商品・サービスにより独自性が求められる点に注意してください。
また、ターゲットを変えた商品・サービス開発になるとかえってコストが上がる可能性がある点も垂直型M&Aのデメリットとしてあげられます。
ノウハウがない分野に参入してしまうと業務効率が落ちてしまうことを意識してM&A戦略を立てましょう。

4. 垂直型M&Aの相談先

垂直型M&Aで失敗しないために専門家に相談することが重要です。
垂直型M&Aについて相談できる専門家として以下のものがあげられます。

  • 金融機関
  • 公認会計士・税理士
  • 弁護士
  • M&A仲介会社

以下で詳細について解説します。

金融機関

垂直型M&Aについて相談できる専門家として、金融機関があげられます。
普段取引関係を持っている金融機関で垂直型M&Aの相談に乗ってもらえることもあります。
金融機関とはすでに取引関係を持っている企業が多いため、相談しやすい専門機関としておすすめです。
ただ、金融機関の主力となる業務ではないため、対応してもらえるかどうかはそのときによって異なります。
加えて、ややコストがかかりやすい点もあり、明確な目的を持った上で金融機関に垂直型M&Aについて相談すべきです。

公認会計士・税理士

垂直型M&Aについて相談できる専門家として、公認会計士・税理士があげられます。
公認会計士はM&Aにおける会計分野に強みを持っている専門家です。
税理士はM&Aにおける税務分野に強みを持っている専門家です。
士業に相談することで、より権威性の高いアドバイスが受けられるメリットがあります。
M&Aにおいて会計分野・税務分野で悩みを抱えている場合は、相談先として選択肢に入れてみてください。
しかし、専門性が高い分コストもかかりやすいため、士業に相談する必要があるかよく考えてから判断しましょう。

弁護士

垂直型M&Aについて相談できる専門家として、弁護士があげられます。
弁護士はM&Aにおける法律分野に強みを持っている専門家です。
M&Aの過程でさまざまな手続き・契約が必要となり、そのすべてに法律が関わってきます。
法律に引っかかる部分があればM&A自体が破綻してしまうこともあります。
円滑に垂直型M&Aを実施するために、弁護士への相談も検討してみてください。
こちらも士業でコストがかかりやすい点に注意しましょう。

M&A仲介会社

垂直型M&Aについて相談できる専門家として、M&A仲介会社があげられます。
M&A仲介会社は売却側と買収側を仲介し、それぞれにとって利益となるアドバイスを提案してスムーズにM&Aが成立するようにサポートしてくれる専門家です。
M&Aにおける全体的な悩みを解消してくれ、過去の支援実績に基づいてそれぞれの専門分野でのアドバイスも受けやすいです。
加えて、マッチングサービスも充実しており、交渉相手探しから支援してもらえます。
コストについても、比較的他の専門家より費用を抑えて支援が受けられ、費用面で心配している小規模事業者でも安心して相談しやすいです。

【関連】M&Aの相談先9選のメリットデメリットを徹底比較!選び方や相談時の注意点も解説

5. 垂直型M&Aの事例

垂直型M&Aを実施する前に、過去のM&Aの事例を参考にしてみてください。
過去のM&Aの事例から参考にできる部分を自社に取り入れることでM&Aで成功しやすくなります。
垂直型M&Aの過去の事例として以下のものがあげられます。

  • ZホールディングスとYahoo!・LINEとの統合
  • 神戸物産によるWIZ JOINT PTE. LTD.のM&A

以下で詳細について解説します。

ZホールディングスとYahoo!・LINEとの統合

垂直型M&Aの過去の事例として、ZホールディングスとYahoo!・LINEとの統合の事例があげられます。
Zホールディングスは国内で200以上のサービスを提供している大きなインターネット関連企業として成長してきました。
グループとしてさらに大きな企業になるために、インターネット業界の大きなサービスの「Yahoo!」と「LINE」の取り込みを検討していました。
そこで、Zホールディングスはヤフー株式会社とLINE株式会社と垂直型M&Aを実施しています。
主にコマース、ローカル・バーティカル、フィンテックの3つの分野の強化を図りました。
さまざまなシナジー効果によって、消費者はこれまで以上に充実したインターネットサービスが受けやすいです。
 

M&Aのスキーム 経営統合(スキームは非公開)
実施日 2021年3月
取引価額 非公開
M&Aの目的 データ・AIのシナジー効果によるインターネットサービスの充実化

ZホールディングスとLINEの経営統合が完了

神戸物産によるWIZ JOINT PTE. LTD.のM&A

垂直型M&Aの過去の事例として、神戸物産によるWIZ JOINT PTE.LTD.の事例があげられます。
神戸物産グループは株式会社ジー・コミュニケーションを軸として海外レストラン事業を展開しています。
さらに、シンガポールで鉄板焼きの店舗の展開を検討しており、WIZ JOINT PTE.LTD.を軸として運営を考えていました。
そこで、第三者割当増資の形でWIZ JOINT PTE.LTD.の子会社化を進めました。
WIZ JOINT PTE.LTE.は資本金額が神戸物産の資本金の100分の10以上を占めており、特定子会社となっています。
 

M&Aのスキーム 経営統合(第三者割当増資)
実施日 2018年10月
取引価額 非公開
M&Aの目的 シンガポールでの鉄板焼きの店舗の展開

当社海外子会社による孫会社の異動を伴う株式取得に関するお知らせ

6. 垂直型M&Aを成功させるポイント

垂直型M&Aを成功させるためにいくつかのポイントがあります。
垂直型M&A成功のためのポイントを押さえておくと、M&Aで失敗しづらいです。
垂直型M&Aを成功させるポイントとして以下のものがあげられます。

  • 目的・戦略を明確にする
  • PMIの準備をしっかり行う
  • 専門家への相談

以下で詳細について解説します。

目的・戦略を明確にする

垂直型M&Aを成功させるポイントとして、目的・戦略を明確にする点があげられます。
目的・戦略を立てることは、M&Aにおける方針を立てることに近いです。
目的・戦略に沿って垂直型M&Aの手続きを進めることとなり、正しい手順で進めていけばM&Aで成功しやすくなります。
垂直型M&Aを実施して満足してしまうものの、実際は企業成長に繋がっていないことも珍しくありません。
垂直型M&Aを実施して満足することがないように、何を目的としたM&Aなのかはっきりさせておきましょう。

PMIの準備をしっかり行う

垂直型M&Aを成功させるポイントとして、PMIの準備をしっかり行う点があげられます。
PMIは「Post Merger Integration」の略で、経営統合作業のことです。
PMIについてよく考えず垂直型M&Aを進めてしまうと、売却側企業の従業員と買収側企業の従業員がぶつかってしまいます。
M&A実施前に従業員が離職してしまうことは避けられても、M&Aを実施してから従業員が離職してしまうこともあります。
そのため、垂直型M&Aを離職者を抑制して成功させるためには事前にPMIの計画を立てておくことが重要です。
M&Aの手続きと並行して準備を進める必要があるため、専門家にサポートしてもらいながら手続きを進めてください。

専門家への相談

垂直型M&Aを成功させるポイントとして、専門家に相談する点があげられます。
M&Aは企業間だけで完結させられるものではあります。
しかし、さまざまな分野での専門知識が求められるため、専門家からのサポートは必要です。
専門家はそれぞれ得意とする分野や対応可能な範囲が異なります。
事前にそれぞれの特徴などを把握し、それぞれが垂直型M&Aについて相談したい内容に合わせて専門家を決めましょう。

7. 垂直型M&Aを成功させるには専門家に相談がおすすめ

M&Aにはいくつかの種類があり、自社で一括対応できるようになる垂直型M&Aを検討する企業も見られています。
垂直型M&Aを実施すると、自社で一括対応できる分コストカットと効率的な事業運営が実現しやすいです。
ただ、やり方を間違えるとブランド力を落としてしまうデメリットもある点に注意が必要です。
垂直型M&Aを丁寧に進めるためには、専門家に相談する必要があります。
それぞれの悩みに合わせて専門家に相談することで、問題が解消して安心してM&Aが進めやすくなります。
上記の意識を持ち、相談する専門家を慎重に決めてから垂直型M&Aを進めましょう。

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