譲受企業
株式会社ゴトウスバル
代表取締役 後藤 稔 様 インタビュー
父の苦難と再起。工場で育った原体験が経営の原点
―まず、御社についてご紹介いただけますでしょうか。
創業は父の兄が名古屋で始めたスバルの副代理店に遡ります。その後、父が勝川営業所を任されましたが、本社の経営悪化に伴い、各営業所長が独立する形で現在の法人が設立されました。私は工場の2階で住み込みの職人さん達と育ちました。私自身は19歳で入社し、その後、オートオークション事業や「アップル」への加盟を経て事業を拡大してきました。
「中古車を買って売る」プロフェッショナルとしての強み
―御社の強みについて教えてください。
現在の最大の強みは「中古車を買って、売る」こと。これが本業であり、最も得意とする領域です。かつては板金や車検などの工場機能も持っていましたが、父が倒れ経営危機に陥った際に工場部門は閉鎖し、販売と買取に特化する「選択と集中」の決断をしたことで経営を立て直しました。その時に一度手放したその技術分野が、今回のM&Aの話に繋がっています。
成長なき企業に未来はない。顧客との生涯の付き合いを目指して
―M&Aを検討されたきっかけを教えてください。
堅実経営で会社は安定しましたが、成長の実感がないと社員が離れていく現実に直面しました。また、人口減少社会において、新規客だけでなく既存客との関係維持が不可欠です。しかし、修理や車検を外注任せにしていては、お客様との強力な繋がりは築けません。自社で工場を持つことで、販売からアフターフォローまで一貫して行い、顧客生涯価値を高めたいと考え、M&Aによる機能の内製化を検討し始めました。
「道の真ん中を歩く」誠実な仕事ぶりと経営姿勢に惹かれて

―最終的にA社様を譲り受けされた理由を教えてください。
条件が希望とぴったりと合致したこともありますが、最大の決め手は、代表が非常に誠実に仕事をされてきた方だと感じたことです。まさに「道の真ん中」を歩いて商売をされ、社員やお客様を大切にされている姿勢が伝わってきました。ぜひ今の代表にもそのまま残っていただき、一緒に仕事をし、成長していきたいと強く思い、決断しました。
下請けからの脱却。双方の利益を最大化し、商品価値を高める
―今回のM&Aで期待することや今後のビジョンを教えてください。
目標は「双方の利益の最大化」です。A社様の高い技術力と、当社の販売力を掛け合わせます。これまで下請けとして安価で請け負っていた仕事を、当社の中古車の商品化という高付加価値な仕事に切り替えることで、同じ仕事量でも利益率を大幅に改善できます。また、資金的な体力がつけば、A社様でも車両販売を行うなど、新たな挑戦が可能になり、仕事の喜びも増すと確信しています。
相乗効果を生み出せるなら、業種にとらわれず可能性を模索
―今後、事業展開の一つとしてM&Aを活用されることはありますか?
明確な相乗効果が見込めるのであれば、積極的に視野に入れています。同業種でのエリア拡大はもちろんですが、当社の弱みを補完できる業種も対象です。例えば、車検整備、重整備、あるいは損害保険代理店なども考えられます。実際に今回、同時期にトラックの架装や大修理を行う企業のグループ入りも実現しました。自社の成長と補完に繋がるご縁があれば、大切にしていきたいと考えています。
必要なのは「勇気」。具体的なイメージを相手に伝えること
―M&Aをご検討されている経営者様にメッセージをお願いいたします。
譲受企業に必要なのは、何より「勇気」です。そして、決断したら前に進むのみです。素晴らしい会社には多くの手が挙がりますが、その中で選ばれるためには、譲り受けた後の「具体的な未来のイメージ」を相手に伝えられるかが鍵だと思います。私自身、自信はありませんでしたが、その熱意と具体案が譲渡企業様の安心感に繋がったと聞き、改めてその重要性を実感しています。
最後に、M&A総合研究所にお任せいただいた理由をお聞かせください
スピード感が素晴らしく、好機を逃さない姿勢に見習うべき点が多くありました。また、A社様の心情や背景を汲み取った上で、「どう伝えるべきか」という感情の機微に配慮したアドバイスをいただけたことが、成約への大きな助けとなりました。
中古車販売のプロフェッショナルである株式会社ゴトウスバルと、確かな技術力を誇るA社。かつて経営判断として手放した「技術」を再び取り戻し、さらなる成長を目指す後藤代表の戦略は、単なる機能の補完にとどまらない。誠実なものづくりを続けてきた譲渡企業に対し、下請け脱却による収益改善と新たな活躍の場を提供する、まさに「双方の利益の最大化」を実現するM&Aとなった。販売と技術、両輪が揃った両社の今後の躍進が期待される。
担当者からのコメント

オーナー様は、50代後半という若さではありましたが、ご自身が家業を継承した際の経験から「子供には同じ苦労をさせたくない」という想いを抱えていらっしゃいました。また、売上の大半を特定の発注元に依存する構造に危機感を持ち、自律的な経営体制への移行を模索されていた中でのご相談でした。一方、譲受企業様は、過去に経営合理化のために手放した「整備・板金部門」の再内製化を考えており、両社のニーズはまさに合致しており、検討の初期段階から、譲渡企業様の歩みに深い敬意をもって接してくださったことは、オーナー様にとって大きな安心材料でした。単なる拠点の拡大に留まらず、下請け構造からの脱却や、高い技術力を「高付加価値な商品」へと転換させる「双方の利益の最大化」という具体的なビジョンを示していただけたことが、最終的な決断の決め手であったと思います。今回のM&Aは、地域の技術を次世代へ繋ぐだけでなく、互いの欠けた部分を補い合う「最高の再会」であったと感じております。今回担当として、このような素晴らしいご縁に立ち会えたことを心より嬉しく思います。
(企業情報本部 次長 小坂田 知弥)