リネンサプライ業界のM&A・事業承継動向!売却・買収事例や業界の動向と価格相場を解説!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

本記事では、リネンサプライ会社のM&A・売却・買収・事業承継に関し、業界動向・成功させるポイント・M&A価格の算定方法などを解説します。また、リネンサプライ会社のM&Aによる売却・買収事例なども紹介します。

目次

  1. リネンサプライ業界とは
  2. リネンサプライ業界のM&A・事業承継動向
  3. リネンサプライ業界のM&A・事業承継のメリット
  4. リネンサプライ業界のM&A・事業承継の流れ
  5. リネンサプライ業界のM&A相場
  6. リネンサプライ業界のM&A・事業承継の成功ポイント
  7. リネンサプライ業界のM&A・事業承継の注意点
  8. リネンサプライ業界のM&A・事業承継事例
  9. リネンサプライ・クリーニング業界のM&A・事業承継案件例
  10. リネンサプライ業界のM&A・事業承継のまとめ
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1. リネンサプライ業界とは

本記事では、リネンサプライ会社のM&A事業承継の動向、M&Aによる売却・買収事例などを紹介します。まずは、リネンサプライ業界の特徴・最新動向について紹介していきます。

リネンサプライ業界の概要・特徴

リネンサプライ・クリーニング会社とは、クリーニング業法の分類に定められた普通クリーニング店・クリーニング取次店、無店舗取次店・リネンサプライ業やホールセールに該当する事業を行う会社のことです。

リネンサプライ業とは、ホテル・旅館に対してシーツ類の貸与・回収を行ったり、飲食店に対しておしぼりなどの貸与・回収を行ったりするなど、リネン製品の貸与・洗浄・回収を繰り返す事業のことです。

近年はインバウンド需要拡大によってホテル・旅館のリネン製品需要が増加していますが、これに伴い競争も激化しています。

クリーニング業との違い

クリーニング業とは、溶剤または洗剤を使用して、衣類その他の繊維製品又は皮革製品を原型のまま洗たくすることを業とすることです。

リネンサプライは回収、クリーニング、補修、納品を主な業務としていますが、一般的なクリーニング業とは大きな違いがあります。

一般的なクリーニング業と異なり、リネンサプライ業者は在庫を保有しているため、契約者はその在庫をレンタル形式で利用します。このため、利用者はリネン類を購入する必要がなく、一括購入にかかるコストを抑え、低コストでリネン品を使用することができます。

大・中都市に集中

リネンサプライ会社は全国各地に存在していますが、特に東京・大阪・愛知に多くの会社が集まっています。集配が円滑であることがコストに直結するため、大・中都市に集中しやすい傾向に大きいです。

衛生面に強み

リネンサプライ業界は、各分野に強みがある企業が存在する点も特徴です。企業例として、清掃事業が主な事業のダスキンやサニクリーン、病院・福祉事業に強いワタキューセイモアなどが挙げられます。

宿泊施設・飲食店・介護施設・病院などが主な顧客ですが、近年は温浴施設・フィットネスクラブ・美容院・エステサロンなどでも導入するケースが増えていきました。

その理由としては、温浴施設・フィットネスクラブ・美容院・エステサロンなどはリネンの耐久期間が短くことが挙げられ、リネンサプライ会社のサービスを利用することで衛生面の維持管理が優位性がある点がメリットです。

リネンサプライ業界の市場動向

矢野研究所が行った調査によれば、国内のリネンサプライ市場は2019年度まで横ばい~微増傾向で推移していましたが、新型コロナの影響により2020年度は大きく売り上げが減少しました。

コロナ禍の影響は2021年も続きリネンサプライ業界にとって厳しい状況が続きましたが、2023年5月に新型コロナが「5類」へ移行したことで観光地などは再びにぎわうようになり、リネンサプライ業界も今後の回復が期待されています。

また、同調査によれば2021年度のリネンサプライ市場規模は3971億円であり、2020年度の3929億円と比べ微増傾向(前年度比101.1%)となりました。

2022年度は予測値で4170億円とプラスで推移する(前年度比105.0%)ものとみられ、今後は徐々に市場が回復すると予測されます。

参考:株式会社矢野経済研究所「リネンサプライ市場に関する調査を実施(2022年)」

仕入

リネンサプライ業で必要なクリーニングに用いる溶剤などの仕入価格は、原料価格高騰の影響により上昇しており、他のサービス業に比べて価格転嫁が行いにくい事業構造でもあるので、為替動向や溶剤の原料である原油価格の変動がダイレクトに利益へ影響します。

近年は、環境問題の配慮により、工場から排出される化学物質への規制が強まっている状況です。そのため、特定の溶剤における製造・輸入が禁止され、排出規制や使用合理化などの措置も取られています。

リネンサプライ業界の展望

リネンサプライ事業者の顧客はホテル・旅館や飲食店などが多いため、コロナ禍による観光業や飲食業の営業自粛要請を受けたことで取引量が激減し厳しい状況が続きました。

しかし、アフターコロナに向けて経済活動が本格化してきたことにより、2022年度におけるリネンサプライ市場規模は4170億円(予測値、事業者売上高ベース)は、前年度比105.0%のプラスで推移すると予測されます。

プラスで推移すると考えされる大きな理由は、ホテルリネンの回復です。2023年6月に訪日外国人観光客の受け入れが約2年ぶりに解禁されたことで、今後は徐々に外国人観光客が増えホテルリネンの需要が回復すると考えられます。

参考:株式会社矢野経済研究所「リネンサプライ市場に関する調査を実施(2022年)」

2. リネンサプライ業界のM&A・事業承継動向

リネンサプライ業界のM&A動向には、主に以下の特徴がみられます。

①業界全体で後継者不足・人手不足が悩み

厚生労働省の「クリーニング業の実態と経営改善の方策(抄)」によると、リネンサプライ・クリーニング事業者の8割以上が営業30年以上で、経営者の年齢は70歳以上が5割を超えています。

後継者不在により事業承継ができない事業者は7割を超え、人手不足も重なって事業継続が難しいため、廃業を選ばざるを得ない事業者が多い状況です。

参考:厚生労働省「クリーニング業の実態と経営改善の方策(抄) 」平成30年11月27日

②原油高の影響で経営を圧迫するケースも

総務省の調査によると、原油高や資源高の影響でコストが上昇しているにもかかわらず、料金はほぼ横ばいで推移しています。各事業所は価格競争により料金を上げられず、結果として業界全体が利益率の低さに苦しんでいる状況です。

③クリーニング業者がリネンサプライ事業へ参入するケースも

クリーニング市場は市場縮小が続いていますが、リネンサプライ市場はインバウンドによるホテル・旅館への供給需要を見込むことが可能です。

そのため、クリーニング業者がM&Aによって、事業親和性の高いリネンサプライ事業へ参入するケースもみられます。

④総合サービスの確立を目指したM&Aが増加

大手のリネンサプライ会社は、差別化を図るためにM&Aによって多様なサービスを展開しています。価格や営業網だけでは差別化が難しい近年は、いかに付加価値を持ったサービスで差別化を図るかが重要な課題です。

3. リネンサプライ業界のM&A・事業承継のメリット

リネンサプライ業界のM&Aにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、M&Aで得られるメリットを売り手側・買い手側それぞれ解説します。

売り手側のメリット

売り手側のメリットには主に以下が挙げられます。

後継者問題の解決

リネンサプライ業界は、個人事業主と小規模事業主が大半を占めているうえ、経営者の平均年齢が高いです。厚生労働省の「クリーニング業の実態と経営改善の方策(抄)」によると、直近10年以内で新規にリネンサプライ事業を始めた事業所は全体の1.1%と、新規参入が少ない状況です。

事業承継が必要にもかかわらず、後継者不足が課題であるため、全国から最適な後継者を探す目的でM&Aによる事業承継が行われるケースがあります。

参照:厚生労働省「クリーニング業の実態と経営改善の方策(抄)」

従業員の雇用維持

事業承継ができないなどの理由から廃業を選択した場合、従業員を自社都合で解雇しなければなりません。業種を問わず、中小企業の場合は経営者と従業員の結びつきが強いケースが多いため、従業員の雇用維持を第一に考える経営者は非常に多くみられます。

M&Aを活用すれば買い手企業へ従業員の雇用を引き継ぐことが可能です。雇用継続の手続きは使用手法によって異なり、株式譲渡であれば自動的に買い手へ引き継がれ、事業譲渡の場合は買い手企業と従業員が契約を結びなおすことで雇用を引き継ぐことができます。

個人保証からの解消

事業を行ううえで金融機関などからの融資を受けるケースもありますが、その際に中小企業の場合は経営者が個人保証を負ったり担保を差し入れたりするケースが多いです。

親族内承継や社内承継を考えている場合、個人保証が足かせとなり実行が難しいケースもあります。個人保証が引き継げない(解消されない)場合、引退しても現経営者はリスクを抱えたまま生活していかなければならないため、精神的な負担も非常に大きくなるでしょう。

M&Aであれば負債も買い手企業へ引き継いでもらうことができ、包括承継である株式譲渡の場合は自動的に引き継がれ、事業譲渡の場合は売却益を融資返済へ充てることができます。

創業者利益の獲得

M&Aを行って利益が出た場合、株式譲渡であればオーナー経営者(株主)が受け取ることができます。事業譲渡の場合は会社(法人)が利益を得るかたちとなりますが、オーナー経営者(株主)は退職金というかたちで受け取ることが可能です。

オーナー経営者(株主)が得る利益のことは「創業者利益」と呼ばれ、その取得を目的としてM&Aが行われるケースもよくみられます。

廃業コストが不要

事業継続が困難となり倒産や廃業を選ぶ割合は依然として多いですが、近年は倒産・廃業のデメリットを避けるためにM&A・事業承継を選択するケースが増えています。

しかし、廃業するとなれば設備などの処分費用や事業に賃貸借物件を使用している場合は原状回復費用も必要です。

これらは廃業コストと呼ばれ、事業規模が大きいほど廃業にかかる費用も高くなります。ですが、M&A・事業承継であれば事業を存続され、廃業コストも不要です。

買い手側のメリット

買い手側のメリットには主に以下が挙げられます。

スケールメリットの実現

リネンサプライ会社同士でM&Aを行った場合、買い手側は事業規模や事業範囲の拡大を図ることができ、スケールメリットの享受に期待できます。

スケールメリットは事業規模や事業範囲を拡大することで生産性向上やコスト削減、競争力強化ができることです。自社のみで事業拡大するには時間がかかりますが、M&Aを活用することで早期実現が可能となります。

短期間での事業展開

リネンサプライ事業を新規で始める場合、事業ノウハウの構築や設備投資など準備段階に多くの時間と費用がかかります。また、事業が軌道に乗るまでの期間もある程度見込んでおかなければなりません。

M&Aですでにリネンサプライ事業を行っている企業を取得することで、短期間での事業展開が可能となり、売り手企業の実績から将来の収益性(買収費用の回収までの期間など)もある程度予測することができるメリットもあります。

優秀な従業員の獲得

リネンサプライ業界は従業員の有資格者率が高いですが、個々の事業者が有資格者人材を安定して確保することは難しいのが現状です。M&A・事業承継によって有資格者の人材不足解消を図るケースもあります。

4. リネンサプライ業界のM&A・事業承継の流れ

M&A仲介会社などの専門家に相談

M&Aを行うには交渉する相手先を探さなければなりませんが、より希望条件に合った企業を探すためには幅広いネットワークが不可欠です。そのため、M&Aを行う際はM&A仲介会社などの専門家へ相談して進めていくケースが一般的です。

M&Aの相談ができる専門家は多くいますが、売り手企業は初めてM&Aを行うケースが大半なので一括支援が受けられるM&A仲介会社をお勧めします。

交渉相手の選定

次はM&A仲介会社の担当アドバイザーへ自社の希望条件を伝え、交渉先相手を探します。条件にあった数社を紹介してもらえるため、そのなかから交渉したい企業を選定するかたちが一般的です。

交渉先を選定する際は「自社がなぜM&Aを行うのか」をしっかり意識して、そのうえで希望条件に合っているかを絞り込むとよいでしょう。

基本合意書の締結

交渉先が決まったら売り手・買い手の経営者同士によるトップ面談を行います。トップ面談は、資料ではわからない経営理念や互いの人間性などを確認し信頼を深めることが主な目的です。

トップ面談後、M&A実現に向けて互いが前向きであれば、条件や価額などの具体的な内容を決めるための交渉を進め、M&Aの内容に互いが大筋で合意した時点で基本合意書を作成して締結します。

基本合意書には取引価額・使用スキーム・取引対象などその時点で合意した内容を記載しますが、独占交渉権や秘密保持など一部事項を除き法的拘束力は持たせないのが一般的です。

そのため、基本合意書にかかれた条件や価額は、デューデリジェンスの結果などにより変更される場合もあります。

デューデリジェンスの実施

基本合意書を締結したあとは、買い手企業によるデューデリジェンスが実施されます。デューデリジェンスとは、財務・法務・人事・ITなどの分野について買収によるリスクの有無や大きさ、価額の妥当性などをを各専門家が調査することです。

売り手企業側に費用負担や特別な準備はありませんが、買い手企業から協力(必要資料の提出など)を求められた場合は誠実に対応する必要があります。

最終契約の締結

デューデリジェンス後、買い手企業がM&Aの実行を決定したら最終合意へ向けた交渉を進めます。最終交渉はデューデリジェンスの結果を踏まえて行われるため、価額や条件が変更される可能性があることを理解して臨みましょう。

そして、すべての内容に互いが合意したら最終契約を締結し、M&Aが成立します。なお、最終契約書に記載された内容はすべてにおいて法的拘束力があるため、締結後の一方的な破棄は解除条件に該当する場合などを除き原則認められません。

そのため、最終契約を締結する前はすべての事項をしっかり確認し、不明点や疑問点がある場合は締結前に解消しておくことが重要です。

クロージング

最終契約の締結後は、株式や対価の受け渡しなどを行うクロージングへ移ります。クロージングは簡単にいうと、ヒト・モノ・カネを移動させる手続きです。

具体的な手続きは使用スキームによって変わるため、担当M&Aアドバイザーに確認しながら抜けや漏れのないよう進めていきましょう。なお、クロージングを行うためには最終合意で取り決めた「クロージング条件」を満たしている必要があります

そのため、最終契約の締結からクロージングまでは一定期間あけることが多く、もし決められた期日までに条件を満たせなかった場合はクロージングは行われません。

クロージング条件が満たせない場合、最悪の場合はその時点でM&Aが白紙撤回されることもあるため、しっかり準備しておくことが重要です。

5. リネンサプライ業界のM&A相場

この章では、リネンサプライ会社のM&A・売却・買収相場の算定について解説します。

企業評価価値の算定方法

企業価値算定では、現在の企業価値に加えて、買い手企業と統合した後の収益力やブランド力などを「のれん代」として換算します。

リネンサプライ会社の企業価値算定で評価が高くなるのは、地域優位性を持っていたり、付加価値の高いサービスを展開していたりするケースです。

小規模事業者や個人事業主など地域密着型でリネンサプライ会社を営んでいる場合は、地域優位性やサービスなどの強みがあり、周辺商圏の顧客と信頼関係を構築していることがポイントとなります。

簡易的な算出と本格的な算出の違い

簡易的な企業価値算出の場合は、資産や負債・売上・利益などから、現在の企業資産価値を算出します。一方、実際にM&Aの際に用いる算出方法では、現在の企業資産価値に加え、将来的な収益力や数字には現れないブランド力、買い手企業とのシナジー効果なども含めて精緻に算出します。

本格的に企業価値を算出するには、企業の決算資料だけでなく、経済動向や自社の業界動向、相手企業の業界動向なども読む専門性が必要です。

【関連】M&Aの企業価値評価とは?算出方法を詳しく解説!

6. リネンサプライ業界のM&A・事業承継の成功ポイント

ここでは、リネンサプライ会社のM&Aを成功させるポイントを売り手側・買い手側それぞれ解説します。

売り手側の成功ポイント

売り手側の成功ポイントとしては、主に以下の4つがあります。

①M&A・売却までを計画的に準備する

M&A・事業承継による売却の準備は、時間をかけて計画的に行う必要があります。株式や事業用資産の整理だけでなく、経営者が覚悟を決める時間も必要であるためです。

近年は小規模事業者や個人事業主などもM&A・事業承継による売却を行いやすいですが、経営者にとってはやはり大きな不安が伴います。計画的に準備すれば、スムーズなM&A・事業承継が可能となり、不安を減らすことも可能です。

②M&A・売却を行う理由を明確にする

M&A・事業承継は事業を売却して終わりではなく、「売却後のリネンサプライ会社をどのようにしてほしいか」「自身は売却後どのようにしたいか」なども明確にする必要があります。

売却理由によって交渉スタンスは大きく変わるため、M&A・事業承継を行う際は事前に目的・理由を明確にし、相手先や仲介会社に説明しましょう。

③最適な買い手を見つける

経営者が高齢であったり、経営が苦しい状況だったりすると、早期に売却相手を見つけてM&A・事業承継を終わらせたいと焦りがちです。しかし、入念に最適な事業売却先を探すことが、最終的には満足のいくM&A・事業承継につながります

自社のみで最適な売却先を探すのは非常に困難であるため、M&A仲介会社など専門家に依頼して進めるのが良いでしょう。

④M&A・売却の専門家に相談する

M&A・売却の専門家に相談すれば、最良の条件で事業を売却するための準備や、手続き面のサポートを受けられます。専門家が持つネットワークを活用すると、最適な売却相手をスムーズに見つけることも可能です。

M&A・事業承継には計画的な準備が必要になるため、将来を見据えて早めに相談してください。

買い手側の成功ポイント

買い手側の成功ポイントとしては、主に以下の4つがあります。

①デューデリジェンスを行う

リネンサプライ会社をM&Aによって買収する際は、デューデリジェンス(企業内監査)を入念に行うことが重要です。特にリネンサプライ会社の多くを占める小規模企業や個人事業主の場合、事業データが整理されていなかったり、抜けや漏れがあったりするケースも少なくありません

買収後に簿外債務が発覚するなどのリスクやトラブルを防ぐためにも、丁寧なデューデリジェンスが必要です。

②買収先の従業員の離職を防ぐ

人材不足が続くリネンサプライ業界では、買収をきっかけに買収先の従業員が離職すると大きな痛手です。リネンサプライ会社の場合は買収後のブランド転換を急ぎすぎた結果、従業員の不安・不満を招いて離職につながったケースも多くあります。

M&Aによる買収を行う際は、買収先従業員とのコミュニケーションを丁寧に取り、トラブルを防ぐことが重要です。

③設備の老朽化などを確認する

買収手続きの際は設備の状態をしっかり確認しなければ、買収後に想定外の出費がかさむ可能性があります。投資の回収には時間がかかるため、相手からの情報だけでなく、買収側も直接状態を確認するなど十分な注意が必要です。

④M&A・買収の専門家に相談する

買収を行う際のデューデリジェンスや買収後の統合プロセスを的確に行うには、専門家の知識や経験によるサポートを受けることがおすすめです。リネンサプライ業界のM&Aサポート経験を持つ専門家に相談すれば、成功率をさらに高められます。

7. リネンサプライ業界のM&A・事業承継の注意点

この章では、リネンサプライ業界のM&Aに関する注意点をみていきましょう。

土壌汚染の問題

業種によって取り扱う有害物質は異なりますが、クリーニング作業では衣服類の洗濯をする際に特殊な洗剤を使用します。クリーニング会社の工場のある土地では、土壌汚染問題の可能性が高まる可能性があるでしょう。

土壌汚染とは、有害な物質が土壌に浸透あるいは混入している状態をさします。近年は、環境保護政策の高まりを受け、国によって厳しい規制が設けられている状況です。

クリーニング工場を取り壊す際は買収する企業が自主的に土壌汚染調査を行うことが一般化されており、安価ではない費用がかかるため注意しましょう。

人事・労務の問題

M&Aでは、売り手のリネンサプライ会社がアルバイトやパートタイマーへの賃金未払いを抱えている可能性や、従業員の賃金が最低賃金を下回っている可能性なども想定されます。

売り手に人事・労務問題がある場合は、買い手がその問題を解決しなければならない可能性があります。社会問題に発展しかねないため、労務管理の瑕疵(かし)に関し、買い手側で事前に調査しておくことが大切です。

8. リネンサプライ業界のM&A・事業承継事例

ここでは、リネンサプライ会社のM&A事例を紹介します。

①白洋舍による子会社北海道リネンサプライと札幌白洋舍の合併

2021年11月、白洋舍は連結子会社の北海道リネンサプライが同じく連結子会社の札幌白洋舍と合併し、商号を変えることを決めました。

北海道リネンサプライは、ホテル向けリネンサプライ事業や鉄道リネンサプライ事業などを手掛け、札幌白洋舍は、個人向けクリーニング事業などを行っています。

新型コロナウイルスの影響による厳しい事業環境において、北海道エリアへ経営資源を集中し業務運営の効率化・生産性向上を行い、グループの企業価値を向上させる狙いです。

参考:株式会社白洋舍「連結子会社間の合併及び商号変更に関するお知らせ」

②白洋舎とトーカイのM&A

2021年5月、白洋舎はトーカイに対して、ダストコントロール事業の権利義務を譲渡すると発表しました。本件M&Aの取得価額は非公開です。

買収側は、日本のクリーニング業界最大手の老舗クリーニング会社であり、本社を東京都大田区に置いています。対する売却側は、病院リネンサプライや病院運営の周辺業務受託、宿泊施設などへの寝具類の貸与などを手掛けている企業です。

買収側では、事業領域や本件事業の持続的な成長の実現可能性などを総合的に勘案した結果、本件M&Aにより当該事業を譲渡することが、新型コロナウイルス感染拡大下における公衆衛生の維持向上に寄与し、本件事業の継続的な成長や従業員利益の確保に資すると判断しています。

参考:株式会社白洋舎「会社分割(簡易新設分割)による子会社設立及び当該子会社の株式譲渡に関する 基本合意書締結に関するお知らせ」

③ダスキンによるEDISTの買収

2021年4月、ダスキンは株式譲渡の手法によりアドベンチャーからEDISTを買収し完全子会社化しました。取得価額は1,800万円です。アドベンチャーは、コンシューマ事業・投資事業を手掛け、EDISTは、洋服などのレンタルサイトを運営しています。

これによりダスキンは、築いたレンタル事業のノウハウ・100万人超のWEB会員と、EDISTのオンラインマーケティングノウハウを合わせ、生活者における「ワークライフマネジメントのお手伝い」といった新テーマに取り組む狙いです。

参考:株式会社ダスキン「株式会社EDISTの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

④白洋舎による子会社日本リネンサプライの吸収合併

2020年6月、クリーニング会社の白洋舎による連結子会社日本リネンサプライの吸収合併が実行されました。横浜でリネンサプライ事業を行う日本リネンサプライは、新型コロナウイルス感染拡大のため、厳しい状況にありました。

この吸収合併で、首都圏エリアでの一体的で効率的な業務運営を実現し、収益力の回復を行うことを見込んでいます。

参考:株式会社白洋舍「子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ」

⑤ヤマシタによる子会社日商リネンサプライの吸収合併

2019年4月、ヤマシタは100%子会社である日商リネンサプライを消滅会社として吸収合併しています。ヤマシタは、ホテル向けと病院向けにリネンサプライ事業を展開しています。

これによりヤマシタは、日商リネンサプライの吸収合併で、事業の効率化を進める見込みです。

参考:株式会社ヤマシタ「吸収合併に関するお知らせ」

⑥トーカイと松屋リネンサプライのM&A

トーカイは2018年11月、松屋リネンサプライから会社分割された福祉用具レンタル・販売事業を譲受しました。

トーカイは、病院・ホテル向けリネンサプライ事業や、クリーニング設備の製造販売事業、介護用品レンタル事業などの健康生活サービス分野を主事業としています。松屋リネンサプライは、愛知県で福祉用具レンタル・販売事業などを展開していました。

トーカイは、松屋リネンサプライの福祉用具レンタル・販売事業を取得し、中部エリアでの事業強化を進めます。

参考:株式会社トーカイ「会社分割(簡易吸収分割)による事業の承継に関するお知らせ」

⑦白洋舎による北海道リネンサプライの買収

大手クリーニング会社である白洋舎は、北海道拠点の子会社によってクリーニングサービスやリネンサプライ事業を展開しています。2016年6月、白洋舎は北海道リネンサプライの株式を取得し、子会社化しました。

白洋舎は、北海道でブランド力を持つ北海道リネンサプライをグループに加えることで、道内での事業強化とともに、グループ全体の企業価値向上につなげています。

参考:株式会社白洋舎「北海道リネンサプライ株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ 」

9. リネンサプライ・クリーニング業界のM&A・事業承継案件例

本章では、弊社M&A総合研究所が取り扱っているリネンサプライ・クリーニング業界のM&A・事業承継案件例をご紹介します。

【都内/17店舗展開】クリーニング業

400坪の自社工場および多くの機械を備え、高い品質サービスの提供可能です。洗い2回、すすぎ3回の高い水準の洗いサービスによる高い顧客満足度を誇っています。
 

エリア 東京都
売上高 2.5億円〜5億円
譲渡希望価格 2億5千万円以上
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

本案件の詳細は以下のリンクからご覧ください。

【関連】【都内/17店舗展開】クリーニング業(その他サービス等) | M&A総合研究所

【九州/自社工場保有】多店舗展開するクリーニング業

一般クリーニングをはじめ、オーダークリーニングや仕立て直し等のリフォームも対応が可能です。布団や絨毯などの大きい商品に関しては、集荷・宅配での対応も可能としています。

財務面ではコロナの影響を受け、過去二期では落ち込んだものの、直近期・進行期は回復の兆しがあります。
 

エリア 九州・沖縄
売上高 2.5億円〜5億円
譲渡希望価格 5,000万円〜1億円
譲渡理由 事業の更なる成長

本案件の詳細は以下のリンクからご覧ください。

【関連】【九州/自社工場保有】多店舗展開するクリーニング業(その他サービス等) | M&A総合研究所

10. リネンサプライ業界のM&A・事業承継のまとめ

本記事では、リネンサプライ・クリーニング会社のM&A動向や売却・買収事例などを紹介しました。リネンサプライ・クリーニング業界では、市場縮小に伴い競争が激化し、業界全体で慢性的な人材不足に陥っています。

近年は後継者問題を解決するべく、M&Aによる事業承継を行う企業や、総合サービスの確立を目的としたM&Aが増えている状況です。

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