予備校業界のM&A動向!会社売却のメリットや成功のポイントや事例5選を解説!

取締役副社長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

予備校業界の現在のM&A動向について関連事項も含めてまとめました。主な内容としては、予備校業界の概要や市場動向、M&Aで予備校を譲渡するメリットやM&Aを成功させるための注意点などの解説と、実際の売却・買収事例も紹介しています。

目次

  1. 予備校業界の動向
  2. 予備校業界のM&A動向
  3. 予備校をM&Aで売却するメリット
  4. 予備校業界のM&Aによる売却・買収事例5選
  5. 予備校のM&Aを成功させるためのポイント・注意点
  6. 予備校業界のM&Aまとめ
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1. 予備校業界の動向

総務省による「日本標準産業分類 」では、「予備校」という業種の分類がありません。産業分類上では、予備校は学習塾の一形態として「学習塾」という業種にくくられています。ただし、事業の実態として、学習塾と予備校は異なるものです。その違いを確認しましょう。

参照元:総務省

予備校業界とは

学習塾は、児童・生徒・学生の学力向上を指導する民間教育機関といった意味合いですが、予備校は対象者に浪人生も加えた、入学試験突破に特化した民間教育機関です。

ただし、学習塾の中には進学に特化した進学塾もあり、進学塾と予備校は同義といえるでしょう。また、予備校の場合、入学試験に限らず資格試験での資格取得を補佐するケースもあります。

予備校業界の市場動向

予備校は産業分類上、学習塾にくくられている関係から、予備校のみの市場動向を示す公的データがありません。経済産業省の資料から、ここ10年間の「学習塾」の市場動向を紹介します。

  • 2015年:4,317億8,000万円
  • 2016年:4,359億8,900万円
  • 2017年:4,415億7,200万円
  • 2018年:4,443億3,800万円
  • 2019年:4,487億6,600万円
  • 2020年:4,702億9,300万円
  • 2021年:5,517億1,900万円
  • 2022年:5,568億4,800万円
  • 2023年:5,812億7,600万円
  • 2024年:5,933億9,700万円

この市場動向(売上高)の主な内訳は、受講料と教材料です。学習塾の市場動向は増加傾向にあります。若年層の人口減少が続いている日本の状況から考えると、1人あたりの費用が上がっていると考えられるでしょう。

参照元:経済産業省

2. 予備校業界のM&A動向

日本の予備校業界は人口動向が減少傾向であるため、顧客の取り合い状態にあります。その中で生き残りをかけたり、ノウハウや人材獲得のためなどの理由で同業者間のM&Aが盛んに行われているのが予備校業界におけるM&A動向の特徴です。

また、予備校業界は参入障壁が高くないことから、市場動向が好調な点に目をつけた異業種の企業が、新規参入のためにM&Aを行うことも目立つようになってきました。

3. 予備校をM&Aで売却するメリット

予備校をM&Aで売却・譲渡すると以下のようなメリットが得られます。

  • 事業承継問題の解決
  • 従業員の雇用継続
  • 対価の獲得
  • 債務からの解放
  • 経営の安定化

予備校のM&Aにおける売却・譲渡メリットについて、それぞれの内容を説明します。

事業承継問題の解決

後継者不在の予備校がM&Aによる売却・譲渡を行うと、事業承継問題が解決するメリットを得られます。一般に中小規模の予備校であれば親族や社員が経営の後継者となりますが、それが不在の場合、廃業危機にあるのは言うまでもありません。

そのようなケースにおいてM&Aを実施すれば、買収側が後継者の代わりに新たな経営者となり予備校は存続できるのです。

従業員の雇用継続

予備校のM&Aでは、売却・譲渡側における従業員の雇用が維持されるというメリットもあります。仮に予備校が廃業となった場合、従業員の雇用契約は破棄され解雇は避けられません。

しかし、M&Aの実施で予備校の廃業が回避されれば、予備校経営維持のために従業員の存在は不可欠です。したがって、M&Aの結果、従業員の雇用契約は継続されて雇用は守られます

対価の獲得

予備校のM&Aにおける売却・譲渡側は、対価を獲得できることもメリットの1つです。M&Aの対価は交渉で決まるものですが、一般に資産(有形固定資産)は簿価ではなく時価で評価します。

また、目に見えない資産である知的財産(無形固定資産)や、売却・譲渡側の予備校が将来獲得するであろう利益なども価値として加味されるため、対価は相当の金額となり、これを獲得できるのです。

債務からの解放

予備校のM&Aを実施すると、売却・譲渡側は債務から解放されるメリットがあります。M&Aスキーム(手法)・事業譲渡のケースを除けば、M&Aの実施により、売却・譲渡側の予備校が抱えていた債務は買収側に移転するものです。

また、売却・譲渡側の経営者が個人保証(予備校の債務の連帯保証)をしていたとしても、債務が買収側に移ることで個人保証は解除されるのが通例であり、全面的に債務から解放されます。

経営の安定化

中小規模の予備校がM&Aによる売却・譲渡を行った場合、M&A後、経営安定化というメリットを得られるでしょう。中小規模の予備校では経営基盤、特に財務面が不安定であるケースが少なくありません。

一方、M&Aの買収側は経営規模が大きく経営基盤も安定し財務的にも一定のゆとりがあるのが一般的です。M&A後、売却・譲渡側は親会社となった買収側から財務面の支援を受けられるため経営は安定化に向かうでしょう。

4. 予備校業界のM&Aによる売却・買収事例5選

予備校におけるM&Aの実態を確認するために、実際の売却・買収事例を紹介します。紹介するM&Aは以下の5事例です。

  • アガルートによるジェニュインの買収事例
  • 富士山マガジンサービスとしょうわ出版によるクリエイト研究会の買収事例
  • 成学社による一会塾の買収事例
  • ベネッセホールディングスによる京都洛西予備校の買収事例
  • ナガセによるヒューマレッジの買収事例
     

予備校M&A事例について、それぞれの内容を説明します。なお、表中に記載する売上高は、M&Aが実施された時期の直近年度決算の数値です。

アガルートによるジェニュインの買収事例

事例1 売却側 買収側
法人名 ジェニュイン アガルート
所在地 東京都千代田区 東京都新宿区
事業内容 システム開発事業、
インフラ構築事業
国家試験・検定試験などの
オンライン講座、出版事業、
オンラインコーチング、
医学部受験オンライン予備校
売上高 非公開 非公開

2025(令和7)年4月、アガルートは、ジェニュインの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は非公表です。アガルートとしては、グループ内のシステム開発力向上を目的としつつ、グループ各社との協業によるシナジー効果創出にも期待してM&Aを実施しています。

参照元:株式会社アガルート

富士山マガジンサービスとしょうわ出版によるクリエイト研究会の買収事例

事例2 売却側 買収側 買収側
法人名 クリエイト研究会 しょうわ出版 富士山マガジンサービス
所在地 大阪府茨木市 東京都渋谷区 東京都渋谷区
事業内容 医系予備校・学習塾事業 社会保険・介護保険
関係の加除式出版物の
編集・作成・販売
定期購読誌の販売・梱包・配送、
顧客管理、カスタマーサポート、
定期購読全般のコンサルティング
売上高 9,893万1千円 非公開 56億1,800万円(連結)

2025年1月、富士山マガジンサービスの完全子会社であるしょうわ出版は、クリエイト研究会の株式を買収し子会社化しました。買収株式数および買収額は非公表です。

さらに同年3月、クリエイト研究会は会社分割で新たにクリエイト研究会を設立し、新しいクリエイト研究会を富士山マガジンサービスが全株式を買収して完全子会社化しました。この際の買収額は1円ですが、その他にアドバイザリー費用2,500万円が発生しています。

富士山マガジンサービスとしては、クリエイト研究会の事業と自社グループにおける医系予備校や英語検定向け教育事業との親和性が高く、協業により高いシナジー効果が見込めると判断しM&Aを実施しました。

参照元:株式会社富士山マガジンサービス

成学社による一会塾の買収事例

事例3 売却側 買収側
法人名 一会塾 成学社
所在地 神奈川県川崎市 大阪府大阪市
事業内容 大学受験(医学部・
難関大学特化型)
専門の予備校運営
学習塾運営
保育園運営
日本語学校運営
不動産賃貸業
売上高 非公開 131億200万円(連結)

2024(令和6)年6月、成学社は、一会塾の全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は非公表です。教育事業を総合的に行っている成学社としては、未進出分野であった医学部・難関大学受験マーケットに参入するためにM&Aを実施しています。

参照元:株式会社成学社

ベネッセホールディングスによる京都洛西予備校の買収事例

事例4 売却側 買収側
法人名 京都洛西予備校 ベネッセホールディングス
所在地 京都府京都市 岡山県岡山市
事業内容 予備校・学習塾の経営 教育事業、介護・保育事業、
大学生・社会人向け事業を
行う企業グループの持株会社
売上高 非公開 4,118億7,600万円(連結)

2023(令和5)年4月、ベネッセホールディングスは、京都洛西予備校の全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は非公表です。ベネッセホールディングスとしては、グループ内の教育事業に京都洛西予備校が加わることにより、事業の連携や経営資源の共有化などを進めて教育事業の拡大・強化を図る目的でM&Aを実施しました。

参照元:株式会社ベネッセホールディングス

ナガセによるヒューマレッジの買収事例

事例5 売却側 買収側
法人名 ヒューマレッジ ナガセ
所在地 大阪府大阪市 東京都武蔵野市
事業内容 学習塾の経営 予備校・英語塾・その他の教育事業、
スイミングスクール事業、出版事業
売上高 27億5,500万円 494億600万円(連結)

2023年1月、ナガセは、ヒューマレッジの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は非公表です。ナガセとしては、ヒューマレッジがグループに加わることで、小中学生・高校生向け教育事業の拡大・成長が実現すると見込んでM&Aを実施しています。

参照元:株式会社ナガセ

5. 予備校のM&Aを成功させるためのポイント・注意点

予備校のM&Aを成功させるためには、以下のような注意点を把握しておく必要があります。

  • M&Aの専門家に相談をする
  • 情報漏えいしない
  • 事業譲渡の注意点
  • 的確な企業価値評価を行う

各注意点の内容を説明します。

M&Aの専門家に相談をする

予備校のM&Aを成功させるための注意点としてまず挙げられるのは、早期にM&Aの専門家に相談することです。M&Aのプロセスにおいて初期のM&A戦略策定と、それに基づく交渉相手探しは大きな鍵となります。

ここでつまずけばM&A自体の成否にも関わるかもしれません。したがって、M&Aの初期段階から自社に適した専門家を探し、相談・業務委託することが肝要です。

以下の動画はM&Aアドバイザーの見極め方における注意点を解説したものであり、ご参考として掲示します。

M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください

予備校のM&Aを相談するための専門家をお探しであれば、ぜひM&A総合研究所にご連絡ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが、専任となって案件を徹底サポートいたします。

また、M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみであり、譲受企業様は中間金が発生します)。随時、無料相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

【関連】M&A・事業承継ならM&A総合研究所
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情報漏えいしない

M&Aにおいて大きな注意点となるのが、情報漏えいしないことです。M&Aにおける情報漏えいとは、M&A交渉で知り得た相手の経営情報と、M&A交渉を行っていること自体を外部に漏らすことを指します。

経営者に情報漏えいの意思がなくても社内スタッフが漏らしてしまう可能性もあり、M&A交渉時の情報管理を厳密にしないと損害賠償請求やM&Aの破談を招いてしまうでしょう。

以下の動画は、情報漏えいの注意点を解説したものです。ご参考まで掲示します。

事業譲渡の注意点

事業譲渡とは、売却・譲渡側における会社の経営権はそのままに、事業に関する資産その他を売却・買収することで買収側が事業の運営権を取得するM&Aスキーム(手法)のことです。売却・買収したいもの・したくないものを個別に協議して決められますが、事業譲渡には3つの注意点があります。

競業避止義務

M&Aの売却・譲渡側の注意点として、会社法で定められた競業避止義務があります。競業避止義務の内容は以下のとおりです。

  • 売却・譲渡した事業と同一の事業を、買収側の所在する区市町村および隣接区市町村において20年間、行えない

ただし、買収側の同意が得られれば、競業避止義務の期間短縮や義務の免除といった例外措置を講じることも可能です。買収側の同意を得られた場合は、その内容をM&Aの契約書に記載し明らかにしておきましょう。

債務は引継がれないケースが多い

事業譲渡では、債務が自動的に買収側へ移転しないことが注意点です。事業譲渡は個別承継であるため、株式譲渡や合併などのような包括承継のように債務が自動的に買収側に移転しません。

事業譲渡では、売却・買収の対象を個別に協議して決めるため、M&Aの対象事業に紐づいていて、どうしても切り離せない債務以外は買収側が移転を承知しないでしょう。

人材流出

事業譲渡の注意点には、人材が流出しやすいことも挙げられます。個別承継である事業譲渡では、従業員を自動的に転籍扱いにできません。対象者1人ひとりから転籍の承諾を得たうえで、買収側へ入社する手続きとして新たに雇用契約を結ばなくてはなりません。

つまり、対象の従業員は一旦、売却・譲渡側を退社することになるため、買収側に入社せず他社に転職してしまう可能性があります。

的確な企業価値評価を行う

M&A成功のための注意点には、的確な企業価値評価(バリュエーション)もあります。企業価値評価とは、M&Aの売却・譲渡側企業の価値を専門的な算定手法で金額に換算することです。この企業価値評価の結果を基にして、M&A交渉で提示する金額を決めます。

企業価値評価は売却・譲渡側と買収側が個別に行うため、的確に算定を行わないとその結果に差異が生じ、交渉が難航してしまうかもしれません。

以下の動画は、企業価値評価方法の1つ「コストアプローチ」を解説したものです。ご参考まで掲示します。

以下の動画は、企業価値評価方法の1つ「マーケットアプローチ」を解説したものです。ご参考まで掲示します。

6. 予備校業界のM&Aまとめ

予備校のM&A成功確度を上げるためには、どのようなM&A専門家に業務委託するかが大きく関係するでしょう。したがって、自社に適したM&A専門家を選ぶことが肝要です。具体的には、予備校のM&Aの支援実績の有無、自社と同規模のM&Aの支援実績の有無、特定の地域での強みの有無、または全国対応の有無などを注視して選びましょう。

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