2023年05月02日更新
2023年度の太陽光発電の買取り価格は?課題や売電方法についても解説
年々下がり続けている太陽光発電の買取価格ですが、将来的に売電ができなくなる可能性があると言われています。そこで、本記事では買取価格の推移や予測、今後の売電価格と売電方法、売電できなくなった際の対策方法などについてまとめました。
目次
1. 太陽光発電の買取価格【2023年最新】
近年、日本では太陽光発電の普及が進み、その買取価格についても注目されています。太陽光発電の買取価格は、政府が定めた買取制度に基づいて設定されており、年々変化しています。
太陽光発電の買取価格が今後どのように推移していくか、その現時点での予測を紹介します。
2024年度は屋根設置型太陽光のFIT買取価格が割増する見込み
経済産業省は、2024年度から屋根に設置した太陽光パネルで発電した電気の買取価格を、平地に設置した太陽光より2割から3割高く設定する見込みだと発表しました。これは、工場や倉庫などに設置する場合の建設コストが考慮された措置とされています。
2023年度の太陽光発電の買取価格は、10kW以上50kW未満の場合は1kWhあたり10円、50kW以上250kW未満の場合は1kWhあたり9.5円に決まっています。一方、2024年度には屋根設置型の事業用太陽光発電の買取価格が1kWhあたり12円に引き上げられます。
また、住宅用・事業用太陽光発電について、10kW未満の場合は2024年度以前と変わりありませんが、10kW以上50kW未満の場合は、住宅用は16円、事業用(地上設置)は10円、事業用(屋根設置)は12円になります。50kW以上の場合は、住宅用・事業用(地上設置)ともに1kWhあたり9.5円、事業用(屋根設置)は1kWhあたり12円に引き上げられます。
倉庫や物流業界では、電気使用量が少ない場合には完全自家消費によるメリットが少なく、余剰売電をおすすめするケースがあります。今回の変更によって余剰売電がより有利になることから、倉庫・運送業のお客さまにも太陽光発電導入がしやすくなることが期待されています。
2. 太陽光発電の買取価格の推移
日本では2009年に太陽光発電の買取が制度化されています。制度化以前、電力会社はそれぞれの発電所から電気を買取してきました。
太陽光発電の買取を制度化する以前の価格は、住宅用・産業用ともに約24円でした。経済産業省が2009年11月に買取制度化を定めたことで、住宅用の買取価格が48円となっていたのです。
しかし、当時の買取制度化では、産業用の買取価格は約24円と住宅用の半額ほどでした。この制度を施行した結果、住宅における太陽光発電の普及は飛躍的に進むこととなったのです。
住宅用・産業用
太陽光発電の買取価格は住宅用・産業用ともに値下がりを辿っています。ここで、経済産業庁・資源エネルギー庁のホームページから各年度の太陽光発電の売買価格の推移を見てみましょう。
住宅用は、太陽光買取制度が施行された2009・2010年度の価格は1kWhあたり48円でした。11~12年度は40円~42円、13年度は38円、14年度は37円と推移しました。
15年度は出力抑制なしで33円、出力抑制ありで35円、16年度は同様に31円と33円、17年度は28円と30円、18年度は26円と28円、19年度は24円と26円と推移しています。価格の固定期間は10年です。
一方の産業用の太陽光買取制度は施行されたのが2012年度からでした。価格は1kWhあたり40円、13年度は36円、14年度は32円、15年度は27円~29円と徐々に下がり、19年度には14円と推移しています。
産業用の買取価格は、これに加えて税金が付与されます。価格の固定期間は20年です。
買取価格の下落幅は想定より抑えられた結果に
2023年度の太陽光発電の買取価格が発表され、毎年の下落幅が「1円/kWh」という想定より抑えられたことが注目されています。家庭用の買取価格も、これまで毎年2円/kWh以上の下落が続いてきましたが、2023年度はその半分以下となる「1円/kWh」の下落幅にとどまりました。
また、50kW以上250kW未満の買取価格も、9円/kWhと予想されていましたが、9.5円/kWhに据え置かれました。この買取価格の据え置きには、国が2030年までに120GWの太陽光発電導入を目指す目標を掲げていることや、買取価格の下落を抑えるよう求める声があったことが影響していると考えられます。
10年後の期待売電収益予測
ここで、家庭用の太陽光発電売電における収益予想数値を見てみます。太陽光発電の比較サイトを運営している株式会社ネットリーチによると、2012~2014年度に6kw相当の太陽光発電を設置した場合は、10年間で57万円前後の収益が見込まれていました。
2015年度からは出力制限による価格差があり、出力制限なしで約40万円から約70万円、出力制限ありでは約30万円から約60万円の収益予想となっていました。2019年度は、6kw相当の太陽光発電を設置した場合、10年間で約55万円~66万円の収益が見込まれます。
今後の売電単価
経済産業庁・資源エネルギー庁のホームページによると、2019年度の太陽光発電の買取価格は、住宅用・出力抑制なしが24円、出力制限ありが26円と公表されています。買取が制度化された2009年から見ると、約半額の買取価格となります。
一方で、産業用の太陽光発電買取価格は公表がありません。例年通りであれば、3円ぐらいの価格低下と見込まれます。
こういった推移を鑑みると、2020年度以降の太陽光発電の買取価格は、おおむね2円から3円ぐらいの価格下落が見込まれ、最終目標の2025年度には、家庭用の買取価格を現在の半額ほどの11円まで値下げすると見込まれています。
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売電するために必要な手続き
太陽光発電で売電をするためには、電力会社との契約や経済産業省への設備認定申請が必要です。特に、「系統連系申請」は手続きが煩雑で、数カ月かかる場合もあるため、余裕を持って計画を進めることが大切です。
また、固定価格買取制度を利用する場合は、「事業計画認定申請」も必要です。必要な書類や手続き方法は、電力会社によって異なるため、事前の確認が必須といえます。
3. 太陽光発電にかかる費用を抑えるポイント
太陽光発電を始めるためには、初期費用が掛かることは避けられません。費用をできるだけ抑える方法を紹介します。
発電効率の高いシステムの導入
太陽光発電システムの初期費用を抑え、運用コストを下げるためには、発電効率の高いパネルやパワーコンディショナーの導入が重要です。太陽光パネルの素材には、単結晶シリコンや多結晶シリコン・化合物系などがあります。
単結晶シリコンは純度が高く、発電効率が高い特徴があります。一方、多結晶シリコン・化合物系は単結晶に比べて発電ロスが出やすいですが、コストが低いというメリットがあります。製品ごとに性能が異なるため、コストと性能を比較して、最適な製品を選択することが必要です。
また、設置条件によって最適な設備は異なるため、複数メーカーと提携していて選択肢が豊富な太陽光業者に相談することがおすすめです。専門家に相談することで、自分に最適なシステムを選択し、初期費用を早く回収することができます。
補助金を使って太陽光発電を導入する
国や自治体が設けている補助金制度を活用すれば、初期費用を抑え、投資回収を早めることが可能です。例えば、環境省が行っている「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」では、1kWあたり4〜7万円が補助されます。
国や自治体が設けている補助金制度は多岐にわたり、自力で調べるのは手間がかかるため、補助金申請サポートをしてくれる業者へ依頼するのも一案といえるでしょう。補助金制度の情報収集から申請書類の作成まで、専門の業者に依頼することで、スムーズに補助金を受け取ることができます。
4. 2023年度に太陽光発電を活用する方法
太陽光発電を活用することは、環境に優しいエネルギーの利用に繋がるだけでなく、電気代の削減にもつながります。しかし、初めて太陽光発電を導入する方には、様々な疑問や不安があるかもしれません。
ここでは、太陽光発電を導入する前に押さえておきたいポイントについてアドバイスします。
売電型の導入なら中古発電所がおすすめ
2023年度以降、売電型の太陽光発電を導入する場合、中古の太陽光発電所がおすすめです。固定価格買取制度の買取価格の単価が低下していることや、10kW〜50kWでは自己消費が必要になったことなどが理由にあります。
太陽光発電の場合、過去の高い買取価格が適用されることや、過去の売電実績が確認でき、収支予測が立てやすくなるのがメリットといえます。新しいものと違い、設置工事や固定価格買取制度の手続きなどの手間を減らすこともできるといえるでしょう。
購入後はすぐに売電を始められるのも中古太陽光発電所の利点です。中古発電所は、初期費用の抑制や運用面での安定性を考えると、売電型の太陽光発電を導入する際に、検討するべき選択肢と言えるでしょう。
「自家消費型太陽光発電」の導入を検討する
太陽光発電を導入する際、売電だけに注目するのではなく、完全自家消費型の導入も検討することが重要といえるでしょう。2023年度からの10kWから50kWの太陽光のFIT買取価格は10円ですが、一方で一般の電力会社から購入する電気量料金は約14円です。
つまり、発電した電気を売るよりも、自家消費することで購入する電気の量を減らすほうが経済的に優位になる可能性があります。状況に合わせた検討を行うことがよりメリットを生むといえるでしょう。
5. 太陽光発電の買取期間終了問題への対策
急速に普及されていった太陽光発電の買取制度で問題となってくるのは、制度化初年度の2009年度に太陽光発電を導入し売電し始めたユーザーです。こうした問題を通称で2019年問題とされています。
買取義務の廃止
太陽光発電の買取制度では、10年間の固定価格での買取を電力会社に義務づけています。しかし2019年度を迎えると、固定価格の義務化が廃止されます。
それと同時に電力会社の買取義務が廃止されることが検討されるため、大げさにいうと売電できなくなる可能性もあるのです。これが2019年問題の大きなデメリットといえるでしょう。
売電できなくなる?
2019年問題を考えるにあたり、電力買取は大きなウェイトを占めている問題です。電力会社や経産省は初年度の固定価格義務が撤廃される2019年度以降の方針を示していません。
ただし、電力会社における買取義務がなくなったからといって、全ての電力の売電ができなくなるわけではありません。10年間を過ぎると、FITは適用されなくなりますが、買い取ってくれる会社は存在します。
ただし、10年間と同じような一律の価格で買い取ってもらえるわけではないので注意が必要です。経産省は、市場買取価格である1kWhあたり11円の価格を目標としています。2009年度の固定価格48円よりも大きく下回ることが予想されるでしょう。
いつまで売電可能かはわかりませんが、2025年までに11円という目標数値を示しているため、当面は買取制度は続くでしょう。最低でも2025年までは、買取制度は価格が半減したとしても継続されると考えられます。
産業用の太陽光発電の買取価格固定期間は20年間です。買取自体は、2039年まで廃止されないものと現時点ではいえるでしょう。
そもそもFIT制度(再生可能エネルギー固定価格買取制度)とは
太陽光発電の買取制度は経産省が推進しているFIT制度(再生可能エネルギー固定価格買取制度)で定められています。もともとは再生可能エネルギーの普及を目的に始められました。
FITには「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「バイオマス」の5つがあります。一般家庭などでも売電できるとあって、太陽光発電には注目が集まりました。
2022年度のFIT制度申請期限
FIT制度を活用するには、電力会社と経済産業省への申請が必要となります。まず先に、電力会社に接続契約申請を行い、契約完了後に、経済産業省に設備認定を申請します。
2022年度の経済産業省への設備認定申請期限は、以下のとおりです。
- 設置容量10kW未満は2023年1月6日
- 設置容量10kW以上は2022年12月16日
現時点で判明している主な電力会社への電力申請提出期限は、下記のとおりです。
- 北海道電力:10kW未満(2022年10月28日)、10~50kW未満(2022年9月16日)
- 東北電力:10kW未満(2022年10月21日)、10~50kW未満(2022年10月7日)
- 東京電力:10kW未満(2022年11月11日)、10~50kW未満(2022年10月14日)
- 中部電力:10kW未満(2022年11月11日)、10~50kW未満(2022年10月21日)
- 関西電力:10kW未満(2022年11月24日)、10~50kW未満(2022年11月1日)
- 九州電力:10kW未満(2022年11月11日)、10~50kW未満(2022年10月14日)
それ以外の電力会社の提出期限や、詳細は、各電力会社にお問い合わせください。
買取期間終了問題への対処策
経産省や電力会社から具体的な施策が提示されていない状況です。しかし買取価格が半額以下になるなど太陽光発電の魅力は半減してしまうものの、太陽光発電設備を設置しているのであれば、2019年問題への対応を考えるほかありません。
①余剰電力売却の継続
2019年問題の対処策として考える方法の一つは売電の継続です。買取義務がなくなるものの、売電できなくなるわけではありません。
買取が廃止されないのであれば、売電価格が半額以下になっても売電していく方法があります。設備投資の代金は10年間でペイできていますので、デメリットも少なくなるでしょう。
②無償で電力網に流す
そもそもFITは環境対策の側面もあります。したがって、売電できなくなる・ならないにかかわらず、2019年問題の対策としては、無償で電力を提供する方法もあります。買取価格などを気にすることがなくなり、精神的なデメリットから解放されるでしょう。
③蓄電池の導入
金銭的なデメリットをより解消するために、蓄電池を導入して電力を自己消費する方法があります。将来的に売電制度が廃止され、売電できなくなる可能性がゼロではありません。
そうしたデメリットにも対応できるのが蓄電池の導入です。経済的魅力は半減しますが、いつまでも太陽光発電を有効に使用できます。
④エネルギー源の切り替え
初期投資のデメリットが発生しますが、いつまでも売電の利益を望むのであれば、太陽光を廃止して他のエネルギー源を導入する方法があります。FIT制度には、電力発電のほかに風力や地熱などの固定買取価格制度が整備されています。
そこで、太陽光を廃止する変わりとして、風力発電を導入して、固定買取制度を再度活用するわけです。
経済産業省の対策
こうした2019年問題に対して、経産省は具体的な施策を示していません。しかしながら、家庭用蓄電や蓄熱導入事業を検討しているようで、FIT制度は引き続き推進していく傾向です。
売電できなくなるデメリットばかりをクローズアップしがちですが、太陽光発電は環境保護の側面があることを理解しておく必要があります。2019年以降も、こうした問題に対処していく必要があることを認識しておくとよいでしょう。
後に記述しますが、産業用の太陽光発電は20年後もさらに大きな問題となってくることが予想されます。
6. ZEHの普及も太陽光発電のカギ
現在、国ではZEH(ネットゼロエネルギーハウス)の普及を進めています。新築住宅などでZEHとして認められると、補助金を受けられる制度です。ZEHには、太陽光発電や蓄電池、そしてオール電化などの電力発電設備が不可欠です。
おそらく今後も太陽光発電で売電できなくなることは考えにくいでしょう。しかしながら、売電価格のデメリットばかりではなく、ZEHなどの補助金を受けられることが太陽光発電のメリットでもあるのです。売電の魅力は半減しますが、補助金のメリットがあるというわけです。
7. 太陽光発電の2029年問題
住宅用の太陽光発電の買取制度には2019年問題があることがわかりました。しかし、産業用売電には2029年問題があるといわれています。
太陽光発電の20年後
2009年当初から、太陽光発電20年後の問題は問題視される部分がありました。2009年の電力買取開始から、太陽光発電20年後となる2029年には、2019年に設置された住宅用の太陽光発電の固定義務期限も重なり、大変重要な年となるでしょう。
太陽光発電の今後の展望
2020年10月に経済産業省から「太陽光発電の状況」が発表になりました。太陽光発電協会の調べによる住宅用(10kW未満)太陽光発電導入件数は、2012年度から2014年度は年平均で約31万件あったものの、2019年度は約15万件と半減しています。
上記グラフの「住宅用太陽光発電普及率」は、平成30年の統計で9%と依然として低調です。国の目標普及率に達しているとはとてもいえない状況といえます。
国は自家消費・家庭用蓄電池・V2Hを普及させるために、補助金を交付しています。これらのことから、売電を目的とした太陽光発電ではなく、自家消費や家庭用蓄電池目的の太陽光発電が主流になっていくのではないかと見込まれるでしょう。
売電価格の下落予測
経産省が掲げている2025年の目標が1kWhあたり11円という数値です。現状の半額以下となっている買取価格を実行していくには、年々売電価格が下落していくことになるでしょう。
先にも上げましたが、年に3円程度買取価格を下げていくことが予想されます。太陽光発電20年後となる2029年には、さらに値下げしている可能性もあります。
技術進歩による設備コスト削減
平成28年11月に発刊された資源エネルギー庁の「電源種別(太陽光・風力) のコスト動向等について」の資料によると、太陽光発電に対するシステム費用が、日本は欧州の約2倍の水準であることが示されています。そのコスト低減が課題です。
通年の全体平均で見ると、太陽光発電(10kW未満)のシステム費用が、37.9万円から36.7万円へと約1.2万円/ kW低下しています。全体として引き続き低下傾向にあることがわかります。
このことから、太陽光発電の20年後はさらに技術が進み、半額になっている可能性も否定できません。技術進歩によりシステム費用がローコストになれば、売電によるデメリットも軽減されるでしょう。
買取価格が半減してしまったとしても、太陽光発電20年後を考えると、デメリットは軽減してくるかもしれません。太陽光発電以外のFITが主流となる事も考えられます。
8. 太陽光発電の買取価格まとめ
太陽光発電の売電価格について調べてきました。2019年問題だけではなく、太陽光発電20年後問題など課題を抱えていることがわかりました。改めて要点を以下にまとめます。
- 住宅用太陽光発電は2019年度に固定価格の義務化が廃止
- 住宅用太陽光発電の2022年の買取価格は、10kW未満で17円/kWh(税込み)
- 2025年までには市場価格同等の1kWhあたり11円まで価格を下げる
- 産業用の太陽光発電20年後もさらに大きな問題
- 将来的に売電できなくなることは考えにくい
これらの要点を念頭に、今後発表されるであろうさまざまな方針に対処していくことが重要だといえるでしょう。
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