映画館業界のM&A動向!売却・買収事例3選とメリットを解説!【2025年最新】

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

映画館業界では、映画の集客力に着目したM&Aが活発化しています。ショッピングセンターやイベント関連会社などが映画館会社を自社の集客力向上のためにM&Aで買収する動きがあるようです。この記事では、映画館業界でのM&A事例などを紹介します。

目次

  1. 映画館業界の概要と動向
  2. 映画館業界のM&A動向
  3. 映画館会社をM&Aで売却するメリット
  4. 映画館会社のM&A・買収・売却事例3選
  5. 映画館会社のM&Aにおける成功のポイント
  6. 映画館業界のM&A・事業譲渡まとめ
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1. 映画館業界の概要と動向

映画館の大スクリーンで映画を見るのは、家のテレビや、スマホやタブレットの小さな画面で見るのとは全く違う臨場感を味わうことができるので、動画のサブスクサービスが充実した近年においても、映画館へ足を運ぶ人が絶えることはありません。

しかし、コロナ禍で一時閉館を余儀なくされて経営難に陥った映画館が多くなった現在、映画館の存続に不安を感じている経営者の方も多いことでしょう。

この記事では、映画館のM&Aを検討している方に向けて、映画館業界の動向と、M&Aについて詳しくみていきましょう。

映画館業界とは

映画館業界とは、映画業界を構成する映画製作、映画配給、映画興行の3つの大きな事業の中の、映画興行を担当するために映画館を運営している会社の業界です。

映画館には、客席の前方に大きなスクリーンと、映画館最後方にスクリーンに映像を映し出すための映写機、臨場感あふれる音を流すためのスピーカーがあります。また、観客がくつろぎながら映画を楽しむための座席もあります。

日本国内の映画館は、大手企業が全国展開している大手映画館と、それぞれの地域で小規模に運営している単館系と呼ばれる映画館の2種類が主なものです。

大手映画館はシネマコンプレックス(シネコン)と呼ばれる形式の映画館が多く、1つの映画館に最低でも5つ以上のスクリーンを持ち、大手映画会社が制作、配給する人気作品を主に上映しています。

単館系は、基本的に1社が1つの映画館を所有して運営している形態が多く、以前は地域密着で話題作を上映していました。しかし、近年はシネコンが地方でも一般的となり、シネコンでは上映しないような独自色の強い作品を上映することが多くなっています。

シネコンでも単館系でも、映画館を開業するためには、興行場法によって、基準を満たした設備を準備した上で、都道府県知事の許可が必要です。営業者が変更した場合には、許可の新規での取得もしくは届け出が必要なので、M&Aの際には注意しましょう。

映画館業界の市場規模と動向

日本の映画館業界が最も盛んだったのは1950年代でした。1958年には年間の映画館観客数が最大の11億2,745千万2,000人でした。1957年から1960年までの4年間は年間10億人を超えていて、映画館が最も盛況だった時代です。

その後、高度経済成長期に入りテレビが普及するに従って、映画館へ通う人の人数は毎年1億人のペースで急減していきました。1992年には約1億2,000万人台まで減少しましたが、その後はゆっくりとしたペースですが増加に転じています。

2011年の東日本大震災と2020年からの新型コロナ禍で一時的な大幅な減少がみられました。

しかし、2022年の映画館の入場者数は1億5,252万5,000人、観客が支払った入場料収入は2,131億円1,100万円と、2020年の興行収入1,432億円8,500万円と比較すると堅調に回復傾向にあることがわかります。

一方で、スクリーン数は減少が続いており、2022年は開業が24スクリーンであった一方、閉館が38スクリーンと、全国で14スクリーン減少しています。

参考:「興行場営業(映画館)の実態と経営改善の方策」 「【解説】2022年全国映画館の入場者数、興行収入は大幅に増大

【関連】音楽業界のM&A動向!売却・買収事例5選と成功のポイントを解説!【2023年最新】

2. 映画館業界のM&A動向

映画館業界のM&Aでは、映画館の集客力に目をつけた他業界からの買収の動きが活発化しています。

かつては、映画会社が独自の映画館網を整備して、制作、配給、興行までを一貫体制で行っていましたが、映画市場の縮小とともに、3つの事業が切り離されました。

その結果、大手映画会社が持っていた映画館事業をショッピングセンターを運営する会社やイベント制作会社などがM&Aで買収して、独自のシネコンに進化させる例が近年よく見られます。

【関連】【最新版】M&Aの成功事例33選!大企業や中小企業の有名な失敗事例も紹介!

3. 映画館会社をM&Aで売却するメリット

映画館会社をM&Aで売却するメリットです。

後継者問題の解決

現在、国内では映画館業界に限らず、経営者の高齢化と後継者問題が深刻化しています。6割以上の会社の社長が60歳以上と高齢化しており、約4割の会社で社内や経営者の親族に経営の後を継ぐ人がいない状況です。

M&Aは、単なる会社の売買というだけでなく、後継者問題に悩む会社を他社に事業承継させて、会社を存続させることができる手段としてもメリットがあると注目されています

後継者問題に悩んでいる映画館会社は、M&Aについて検討してみる価値はあるでしょう。

売却益の獲得

M&Aで映画館会社を売却することができれば、経営者もしくは会社に売却益が入ります。

どのくらいの金額になるのか、会社の規模や上げている利益、評価方法等によって変わりますが、経営者が引退する場合には老後の資金には十分な程度の金額になる場合も多いようです。

売却金から税金とM&Aの手数料を差し引いた売却益は、経営者もしくは会社が自由にできます。引退後の生活費に充てたり、新規事業の資金にしたりできるでしょう。

技術やノウハウの継承

映画館で映画を上映するためには、映写機やスクリーンのメンテナンスが必要です。また、フィルム上映からデジタル上映に変わった現在でも、映画館によって映像や音響に大きな差があるのは、映写技師の映写技術によるところが大きいためです。

映画をより美しく上映するためには、画面の明るさ、画面の大きさ、スピーカーの設定など、細かい点をスクリーンごとに微調整する必要があり、このような技術は代々、映画館ごとに映写技師に引き継がれてきました。

映画館会社を廃業してしまうと、この技術やノウハウが失われてしまいます。しかしM&Aで会社を売却することはできれば、技術やノウハウを後世に引き継いでいくことが可能です。

従業員の雇用維持

M&Aで会社を売却せずに廃業することになると、従業員は全員解雇することになります。

若くて確かな映写技術や機械のメンテナンス技術を持つ若いスタッフなら、他の映画館へ映ることも簡単にできるでしょうが、高齢のスタッフや特にスキルが必要ではないスタッフなどは、次の仕事を見つけるのに苦労する人もいるかもしれません。

M&Aで会社を売却できれば、従業員の雇用は買収側が引き受けてくれることが一般的です。M&Aでの会社売却は、経営者が経営を続けることが難しくなっても、従業員の雇用を維持して生活を守ることができる手段になるのです。

個人保証・債務の解消

中小企業では、会社の金融機関からの借り入れに対して、経営者が個人で連帯保証人になり、自宅を担保に設定していることがよくあります。

後継者問題などで映画館会社を廃業した場合、廃業時に債務が残っていたら、自宅の差し押さえや、引退後も返済が続く可能性もあるでしょう。

M&Aでは、一般的に会社の債務も、個人保証を外した上で、買収側が全て引き取ってくれます。経営者は債務の負担から解放される上に、売却益も手に入れることができて、引退するのなら余裕のある老後を送ることができるのです。

事業の成長・発展

M&Aには、会社や事業を他社に完全に譲渡する形者だけでなく、大手の傘下に入る形のものもあります。

自社だけでは将来的な成長が見込めない場合には、大手の映画館会社の傘下に入ることで、大手のブランド力や集客ノウハウ、映画の配給会社との関係性からの良質な作品の入手などが可能になるでしょう

今後の事業の成長や発展のためのM&Aという考え方もあるのです。

【関連】事業展開の方法や考え方・戦略を解説!フレームワークや成功・失敗事例も紹介!

4. 映画館会社のM&A・買収・売却事例3選

映画館会社でのM&Aの事例です。

SDエンターテイメントが会社分割により北海道SOキャピタルに事業譲渡した事例

平成30(2018)年11月13日に、SDエンターテイメント株式会社が、同社のエンターテインメント事業の主要であるGAME・ボウリング・シネマ事業のM&Aについての基本合意書締結を決議したことを発表しました。

同事業を、会社分割(簡易新設分割)で新設会社に承継した上で、新設会社の全株式を北海道SOキャピタルに譲渡します。

SDエンターテイメントは、北海道札幌市を中心にエンタメ事業やフィットネスなどのウェルネス事業を展開していた会社で、1954年に映画興行会社として創業しました。現在は、RIZAPの傘下です。

北海道SOキャピタルは、北海道出身の公認会計士で税理士の小笠原一郎氏が設立したファンドです。北海道でのエンターテインメント事業を積極的に推進する方針だとのことです。

SDエンターテイメントは、スマホの普及による余暇の多様化などの影響を受けて、近年業績が伸び悩んでいました。また、近年の主力事業であるウェルネス事業とのシナジー効果も発揮できない状況です。

会社の今後に向けた抜本的な事業構造の見直しを行う中で、市場が成長しているウェルネス事業に経営資源を集中することになり、GAME・ボウリング・シネマ事業を譲渡するM&Aの実施に至ったとのことです。

参考:会社分割(簡易新設分割)及び新設会社の株式譲渡に関する基本合意のお知らせ

ローソンHMVエンタテイメントがユナイテッド・エンターテインメント・ホールディングスを子会社化した事例

2014年8月6日に、株式会社ローソンが、同社の子会社である株式会社ローソンHMVエンタテイメント(以下、LHE)を通じて、ユナイテッド・シネマ株式会社(以下、UC)の株式を取得する株式譲渡契約を締結したことを発表しました。このM&Aにより、UCはLHEの子会社になります。

ローソンは全国に14,000店舗以上を展開している大手コンビニチェーンです。HMVジャパンを傘下に持ち、Loppiでのチケット事業などのエンタメ事業やCDやDVDの物販事業などのエンタメ関連事業も幅広く展開しています。

UCは、イギリスで1983年に設立されたユナイテッド・シネマ・インターナショナルによって1993年に日本に設立された映画興行会社です。ユナイテッド・シネマ・インターナショナルは2004年に日本事業から撤退しました。

ローソンとしては、映画館事業をグループ内に招き入れることで、ローソン店頭での映画コンテンツに関連したキャンペーンの展開や、6,000万人以上の会員を抱えるPonta会員への情報発信などで大きなシナジー効果が期待できるとしています。

参考:ユナイテッド・エンターテインメント・ホールディングス株式会社の株式取得に関するお知らせ

イオンがワーナー・マイカルを子会社化した事例

2012年12月19日に、イオン株式会社が、ワーナー・マイカル社の全株式を取得するための株式譲渡契約を締結したことを発表しました。

イオンはショッピングセンターのイオンモールの運営会社など300社以上を傘下に持つ、大手流通グループのイオングループを統括するための純粋持株会社です。

ワーナー・マイカルは1993年に日本で始めてのマルチプレックスシネマを開業した、日本におけるシネマコンプレックスの発祥ともいうべき会社です。

当時はまだ国内では普及していなかったデジタル音響システムや傾斜角の大きなスタジアムシートの導入など、映画館として先鋭的な取り組みを進めてきました。

イオンとワーナー・マイカルは、1991年のワーナー・マイカル設立時からパートナー関係で、イオンシネマズの映画館をともに展開してきました。

イオンとしては、映画館事業はイオンショッピングセンターにおける集客機能として貴重な役割を果たしており、このM&Aにより、イオンに来店する顧客への娯楽要素を盛り込んだ、より充実したお買い物体験の提供が可能になるとしています。

参考:ワーナー・マイカル社の株式異動について

【関連】M&A成約インタビュー | M&A総合研究所

5. 映画館会社のM&Aにおける成功のポイント

映画館会社をM&Aするときにはどのようなポイントに気をつけたら成功できるのでしょうか。M&A成功のポイントです。

M&Aの専門家に相談をする

M&Aを実施するためには、最適な相手探し、法律や財務についてのM&Aに関する高度な知識が必要な手続き、買収側による売却側の会社の調査であるデューデリジェンスへの対応など、M&Aの経験がない経営者には難しい関門ばかりです。

経営者が一人で進めようと思っても、どこかの段階で必ずつまずいてしまうので、M&Aの検討を始めたら、まずはM&Aの専門家に相談してみましょう。

M&Aの専門家は、M&Aの是非の検討から一緒になって考えてくれます。M&Aを決断したら、クロージングまで親身に伴奏してくれるので、難しいM&Aの手続きなどの過程も安心して乗り越えていけるでしょう。

M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください

M&A仲介会社選びにお悩みの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが専任となって案件をフルサポートします。

M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ)随時、無料相談をお受けしていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

【関連】M&A・事業承継ならM&A総合研究所
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情報漏洩に注意する

M&Aが成功するかどうかは、公表できる段階に至るまでに情報漏洩が起きないかどうかにかかっているといってもいいくらいです。

M&Aについての情報が事前に漏れてしまうと、お互いの信頼関係を損なうことになり、破談になる可能性が高まってしまいます。

M&Aでの情報漏洩は、売却側の会社の経営者が専門家などとM&Aについての会話をしている断片を従業員などに聞かれることで起こることが多いようです。

M&Aについてはできる限り社内では話しをせずに、話すときや資料を広げて検討するときには、周囲の状況によく気をつけましょう。

目的を明確にする

M&Aで会社を売却する時には、M&Aを進める前に目的を明確化しておきましょう。M&Aでは、会社を売却する目的によって、選択するべきスキームが異なります。

経営者が引退するために会社を丸ごと譲渡したいのなら株式譲渡が一般的です。不採算事業など一部の事業を整理するために売却したい場合には事業譲渡になります。

スキームの選択を誤ると、売却後の会社のあり方や税額が大きく変わってしまうので、スキームを選ぶ上で重要な目的を最初に明確化しておくことが大切です。 

早めに検討する

後継者問題でM&Aでの会社売却をする場合には、まだ経営者が元気で判断力がしっかりしているうちにM&Aの準備を始めることをおすすめします。

M&Aでの売却を希望していたのに売却できなかったり、想定していた金額よりも安い金額に買い叩かれてしまったりといった失敗例の多くが、短い時間で売却しようとしたことが原因です。

特に経営者の高齢化による健康問題の深刻化で慌てて売却しようとした場合に、時間切れで売却できなかったり、買い叩かれてしまったりします。

M&Aの準備は年単位でじっくりと進めて、最適な相手に、高額で売却できるタイミングを見計らうことがおすすめです。

相乗効果が得られる相手先を選ぶ

M&Aはクロージング後の2社を統合する過程が本当の勝負だといわれています。

お互いの会社が、相手にとって良い影響を与えて、お互いの業績アップにつながるM&Aになれば、本当に成功したM&Aといえますが、残念ながら、売却側の会社が買収側の会社のお荷物になってしまう例も少なくありません。

ときには、売却側の会社の業績が伸びないだけでなく、買収側の既存の事業の業績にも悪い影響を与えてしまうこともあります。

そうなってしまう原因は、お互いに相乗効果を発揮できるようなメリットのある相手かどうかを見極めずに、会社の売買だけを目的にしてしまったためです。

そのような不幸なM&Aにならないようにするためには、相手探しの段階で、両社がお互いにどのような相乗効果を期待できるのか判断することが大切です。

特に、買収側は自社の業績アップのためのメリットを得るためにどのような会社が必要か、M&Aを始める前によく検討しましょう。

【関連】web制作会社のM&A・事業承継の動向!2025年最新事例や相場も紹介

6. 映画館業界のM&A・事業譲渡まとめ

映画館業界は、動画のサブスクリプションサービスの登場などで斜陽だとも考えられていましたが、コロナ禍以前は観客数が増加していました。コロナ禍が明けた現在も成長の兆しを見せています。

映画館の経営が今後不安であっても、M&Aで会社を存続させられる可能性はあるでしょう。映画館会社の今後に付いて、一度M&Aの専門家に相談してみることをおすすめします。

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