BPO業界のM&A動向!会社売却のメリットや成功のポイントや事例5選を解説!

取締役副社長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

本コラムは、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)業界でのM&Aについてまとめました。主な内容は、BPO業界の概要、M&A動向、BPO事業や会社を譲渡する際のメリットやM&Aを成功させるための注意点などの解説とともに、実際の売却・買収事例も紹介しています。

目次

  1. BPO業界の概要と動向
  2. BPO業界のM&A動向
  3. BPO会社をM&Aで売却するメリット
  4. BPO会社のM&A・買収・売却事例5選
  5. BPO会社のM&Aにおける成功のポイント
  6. BPO業界のM&A・事業譲渡まとめ
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1. BPO業界の概要と動向

冒頭では、BPO業界のM&Aを論じる前に、BPO業界の概要や動向、市場規模などについて確認しましょう。BPOとは、Business Process Outsourcingの略称です。BPOを日本語にすると「特定の業務をそのプロセスも含めて外部に委託すること」を意味します。

BPO業界とは、BPOを行いたい企業や官公庁などに対して、そのサービスを提供することを事業として行っている企業群のことです。顧客が企業だけでなく官公庁も対象となることが1つの特徴といえるでしょう。

BPO業界とは

BPO業界が提供する主なサービスには以下のようなものがあります。

  • バックオフィスBPO
  • データ入力代行
  • コールセンター
  • その他、依頼がある業務

バックオフィスBPOとは、企業における総務・経理・人事・労務・法務・庶務部門などが担当する業務を請け負うことです。データ入力代行では、主に営業部門における顧客リストの作成に始まり、見積書作成や受注管理、各種データのデジタル化なども行います。

コールセンターは、顧客からの問い合わせに対する電話応対のことですが、電話のみに限らずメールやチャットでの応対も含むのが現状です。その他、これらに含まれない顧客固有の依頼があり、それに対応できる場合はBPO業務を提供します。

BPO業界の市場規模と動向

矢野経済研究所の発表資料「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施(2024年)」によれば、2023(令和5)年度のBPO業界の市場規模は、4兆8,849億2,000万円でした。前年度と比べると3.9%増となっています。

また、今後の動向として毎年度、市場規模の増加が見込まれており、矢野経済研究所における2028(令和10)年度のBPO市場規模の予測は5兆7,727億8,000万円です。これは、6年間で1兆円以上、BPO市場が膨らむことを意味します。

BPO業務はIT系BPOと非IT系BPOに大別できますが、社会全体のデジタル化の波を受けて今後はIT系BPOがより増進するでしょう。

BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施(2024年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所

2. BPO業界のM&A動向

BPO業界は毎年、市場規模が拡大しており、今後もその傾向は続くと予想されています。

そのような市場動向を受け、BPO業界におけるM&A動向の1つは、新規参入を狙って既存のBPO会社を買収しようとする異業種の企業によるM&Aです。新規でBPO会社を設立することと比べると、M&Aであれば手間や時間を節約しつつ一定の業績も見通せることがメリットとなっています。

もう1つの動向は、既存のBPO会社同士によるM&Aです。このM&Aは、市場シェアの拡大や業務の効率化、自社にないノウハウや協業によるシナジー効果の獲得が目的となっています。

3. BPO会社をM&Aで売却するメリット

ここでは、BPO業を行う会社やBPO事業をM&Aで売却するメリットを確認しましょう。BPO業をM&Aで売却する主なメリットは以下のとおりです。

  • 事業承継問題の解決
  • 従業員の雇用維持
  • 売却益の獲得
  • 事業の成長・発展

BPO業をM&Aで売却するメリットそれぞれについて内容を説明します。

事業承継問題の解決

BPO会社が後継者不在の場合、会社や事業をM&Aで売却することによって事業承継が実現するメリットがあります。これは、後継者が親族や社内にいない場合、M&Aの買収側を後継者(新たな経営者)に見立てるという考え方によるものです。

帝国データバンクの「全国『後継者不在率』動向調査(2024年)」によれば、日本の中小企業の後継者不在率は52.1%と発表されています。多くの後継者不在企業にとって、M&Aによる売却は事業承継問題の有効な解決法です。

従業員の雇用維持

BPO会社に後継者がいないケースでは、M&Aでの売却によって従業員の雇用も継続されるというメリットもあります。後継者がいないBPO会社においては、経営者が引退すれば会社は廃業です。廃業となったBPO会社の従業員は解雇を免れません。しかし、M&Aで会社が廃業にならなければ雇用も継続されます。

売却益の獲得

BPO会社をM&Aで売却することで、売却側は売却益を得られるメリットも享受できます。M&Aでの売却額は交渉によって決まるものです。交渉においては、会社や事業の将来の価値も含めて金額を話し合います。多額の負債や赤字経営でなければ、十分な売却益が得られる金額に決まるでしょう。

事業の成長・発展

BPO会社をM&Aで売却すると、事業の成長・発展が見込めるというメリットもあります。一般にM&Aの買収側は、売却側よりも企業規模が大きく資金的にも余裕があることが多いです。

中小企業が苦労する資金繰りの心配がなくなり、事業に十分な投資ができるようになるでしょう。また、親会社の経営資源も共用できるため、業績拡大も見通せます。

全国「後継者不在率」動向調査(2024年)|株式会社 帝国データバンク[TDB]

4. BPO会社のM&A・買収・売却事例5選

ここでは、実際に行われたBPO業関連のM&A事例を紹介します。取りあげる事例は以下の5例です。

  • アレスクリエイションがシップスに事業譲渡した事例
  • リスモン・マッスル・データがシップスを子会社化した事例
  • 日本管財がネオトラストを子会社化した事例
  • インバウンドテックがシー・ワイ・サポートを子会社化した事例
  • トゥルージオとノーザンライツが資本業務提携後に合併した事例

各事例でどのようなM&Aが実施されたのか、その内容を説明します。なお、表中の売上高は、M&Aが実施された時期の直近年度決算の数値です。

アレスクリエイションがシップスに事業譲渡した事例

事例1 売却側 買収側
法人名 アレスクリエイション シップス
所在地 大阪府大阪市 東京都新宿区
事業内容 情報システム関連のソフトウェアの開発
コンピュータ関連のアウトソーシングサービス
各種受託計算業務、データエントリー受託業務
各種事務用品機器、パッケージソフトの販売
ダイレクトメール広告の受託業務などのBPO事業
データ入力、データ編集・オンデマンド印刷
ITソリューション代行サービス
事務代行・ 発送、ワンストップBPOサービス
売上高 非公開 3億6,600万円
※シップスの売上高は2020(令和2)年9月期の数値です。

2023(令和5)年8月、シップスは、アレスクリエイションからBPO事業を譲渡されました。譲渡額は非公表です。シップスは関東地方中心でBPO事業を行ってきましたが、関西地方でも同様の展開をするために同地域を基盤とするアレスクリエイションのBPO事業を取得しました。

リスモン・マッスル・データがシップスを子会社化した事例

事例2 売却側 買収側
法人名 シップス リスモン・マッスル・データ
所在地 東京都新宿区 東京都中央区
事業内容 データ入力、データ編集・オンデマンド印刷
ITソリューション代行サービス
事務代行・ 発送、ワンストップBPOサービス
BPOサービス
売上高 3億6,600万円 非公開

2021(令和3)年9月、リスモン・マッスル・データは、シップスの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は非公表です。リスモン・マッスル・データはリスクモンスターの連結子会社であり、リスクモンスターグループ内においてBPO事業の中核となっています。

リスモン・マッスル・データとしては、すでに子会社化していてBPO事業を行っている日本アウトソースに加えてシップスも傘下に迎えることで、グループとしてBPO事業を拡大するとともにシナジー効果も追及していく考えです。

日本管財がネオトラストを子会社化した事例

事例3 売却側 買収側
法人名 ネオトラスト 日本管財
所在地 東京都台東区 東京都中央区
事業内容 BPO事業として
給与計算に関する代行業務
電算機による計算・会社の帳票
などの資料作成業務の受託業務
労務コンサルタント業務
建物管理運営事業
(ビル管理業務・保安警備)
不動産ファンドマネジメント事業
住宅管理運営事業
環境施設管理事業、その他の事業
売上高 非公開 1,041億2,400万円(連結)
※日本管財の事業内容はグループ全体のものです。

日本管財は、2021年8月にネオトラストの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は非公表です。今回のM&Aにおける日本管財の目的の1つは、グループ内の間接業務をネオトラストに集約し効率化を図ることにあります。もう1つの目的は、ネオトラストがグループ内に加わることで、新たにBPO事業市場に参入することです。

インバウンドテックがシー・ワイ・サポートを子会社化した事例

事例4 売却側 買収側
法人名 シー・ワイ・サポート インバウンドテック
所在地 岩手県花巻市 東京都新宿区
事業内容 電話による事務連絡の取次サービス業
市場調査・各種マーケティングリサーチの請負
情報処理サービス業、情報提供サービス業
マルチリンガルCRM事業
セールスアウトソーシング事業
売上高 1億504万4千円 29億8,300万円

2021年4月、インバウンドテックが、シー・ワイ・サポートの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は9,323万7千円です。また、M&Aのアドバイザリー費用は320万円でした。

インバウンドテックにおける今回のM&Aの目的は、BCP対策の一環として本社以外の事業拠点地を持つことと、グループに事業会社が新たに加わることでシナジー効果を得て業績拡大することです。

トゥルージオとノーザンライツが資本業務提携後に合併した事例

事例5 売却側 買収側
法人名 ノーザンライツ トゥルージオ
所在地 東京都渋谷区 東京都港区
事業内容 コンピュータネットワークを利用した
各種情報提供サービスの受託作業
ホワイトカラーのグローバルソーシング
(領域特化型のKPO・BPO)
売上高 非公開 非公開
※合併時のノーザンライツの所在地は青森県八戸市。

2019(令和元)年8月、トゥルージオとノーザンライツは資本業務提携契約を締結しました。資本提携は売却・買収といった一般的なM&Aとは異なりますが、資本の移動(出資)が行われるため広義のM&Aとされています。

資本提携の内容は、これまでノーザンライツが資本提携してきたリアルワールドが所有するノーザンライツの株式をトゥルージオに譲渡するというものです。株式の譲渡額は非公表となっています。両社は青森県八戸市にBPO業務の拠点を持つという共通点があり、業務提携によりシナジー効果を得ようという目的です。

そして、2021年4月、資本業務提携をより発展させる意味合いで両社は合併しました。M&Aスキーム(手法)としては吸収合併です。法人格が残る吸収側はトゥルージオ、消滅会社はノーザンライツですが、トゥルージオは合併を機に「フォリウム」と法人名を改めました。対等な合併であることを強調する狙いがあると考えられます。

5. BPO会社のM&Aにおける成功のポイント

最後に、BPO会社のM&Aを成功させるためのポイントや注意点を確認しましょう。BPO会社のM&Aを成功させる注意点には以下のようなものがあります。

  • M&Aの専門家に相談をする
  • 相乗効果が得られる相手先を選ぶ
  • 情報漏えいに注意する
  • 目的を明確にする
  • 早期に検討し最適なタイミングを逃さない

BPO会社のM&Aを成功させる注意点それぞれについて、内容を説明します。

M&Aの専門家に相談をする

BPO会社のM&Aを成功させるための注意点の1つは「M&Aの専門家に相談する」ことです。M&Aを円滑に進めるには、M&Aに関する専門的な知識や経験が欠かせません。初期段階からM&Aの専門家に相談して業務委託契約先を見つけることで、その後のプロセスを安心して進められるようになります。

M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください

BPO業界関連のM&Aを相談するための専門家をお探しであれば、ぜひM&A総合研究所にご連絡ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが、専任となって案件を徹底サポートします。

また、M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみで、譲受企業様は中間金が発生します)。随時、無料相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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相乗効果が得られる相手先を選ぶ

BPO会社のM&Aを成功させる注意点の1つは、M&A後、相乗効果(シナジー効果)が得られる相手を選ぶことです。M&Aは売却・買収して終わりではありません。M&A後、業績拡大することがM&Aの一般的な狙いです。業績拡大を実現するには、M&A後の協業によって相乗効果が見込める相手である必要があります。

情報漏えいに注意する

BPO会社のM&Aを成功させるための注意点として「情報漏えいしない」ことも挙げられます。M&A交渉では相互に重要な経営情報を開示するため、秘密保持契約を締結します。情報を漏えいしてしまった場合、契約違反で損害賠償請求の対象となります。また、相手方の信頼も失い、M&A交渉は破談となってしまうでしょう。

目的を明確にする

BPO会社のM&Aでは、初期の検討段階でM&Aの目的を明確化しておくことも成功のための注意点です。クライアント側でM&Aの目的が明確になっていないと、たとえM&Aの専門家といえども的確なアドバイス・サポートは難しいものがあります。また、複数の目的がある場合には、それらの優先順位をつけておくことも重要です。

早期に検討し最適なタイミングを逃さない

BPO会社のM&Aを成功させる注意点には「タイミングを逃さない」ことも挙げられます。一般にいわれるM&Aに適するタイミングの例は以下のとおりです。

  • 会社の業績が好調
  • 同一業種において業界再編が始まる
  • 社会全体が好景気

そして、これらのタイミングを逃さずM&Aを実施するためには、早い時期からM&Aの検討を始めておくことが肝要です。

6. BPO業界のM&A・事業譲渡まとめ

今後、一層の市場規模拡大が見込まれているBPO業界では、M&Aも盛んに行われていくでしょう。M&Aをより成功させるには、業務を委託するM&Aの専門家選びがキーポイントです。

具体的には、BPO会社のM&A成約実績があること、自社と同規模のM&A成約実績があること、特定の地域に強みがある、または全国対応していることなどが挙げられます。

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