コンテンツ制作業界のM&A動向!会社売却のメリットや成功のポイントや事例5選を解説!

取締役副社長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

コンテンツ制作業界の現在のM&A動向について関連事項も含めてまとめました。主な内容としては、コンテンツ制作業界の概要や市場動向、M&Aでコンテンツ制作会社を譲渡するメリットやM&Aを成功させるための注意点などの解説と、実際の売却・買収事例の紹介です。

目次

  1. コンテンツ制作業界の動向
  2. コンテンツ制作業界のM&A動向
  3. コンテンツ制作会社をM&Aで売却するメリット
  4. コンテンツ制作業界のM&Aによる売却・買収事例5選
  5. コンテンツ制作会社のM&Aを成功させるためのポイント・注意点
  6. コンテンツ制作業界のM&Aまとめ
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1. コンテンツ制作業界の動向

コンテンツとは、インターネットも含めた各種メディア(媒体)で伝播される情報・内容のことです。コンテンツを伝播する媒体には以下の4種類があります。各媒体の数値は、一般財団法人デジタルコンテンツ協会発表資料による2023(令和5)年の市場シェア率です。

  • ネットワーク:41.6%
  • 放送:24.5%
  • パッケージ:20.7%
  • 劇場・専用スペース:13.2%

コンテンツの性質や内容は、どのような媒体で伝播されるかによって大きく左右されます。

参照元:一般財団法人デジタルコンテンツ協会

コンテンツ制作業界とは

コンテンツ制作とは、さまざまな媒体で伝播される情報・内容を制作することです。したがってコンテンツには実に数多くの種類がありますが、総務省の統計資料では、それらのコンテンツを以下の3種に分類しています。

  • 映像系コンテンツ:地上テレビ番組、衛星・CATV番組、映画ソフト、ビデオソフト、ネットオリジナル、ゲームソフト
  • テキスト系コンテンツ:新聞記事、書籍、雑誌、コミック、データベース情報、ネットオリジナル
  • 音声系コンテンツ:音楽ソフト、ラジオ番組、ネットオリジナル

ネットオリジナルとは、インターネット接続環境にあるPCやモバイル向けに配信されるアプリや番組などのソフトのことです。

コンテンツ制作業界の市場動向

総務省情報通信政策研究所の発表資料によれば、コンテンツ制作市場動向として2023年の売上規模は12兆5,833億円でした。コンテンツの3分類の内訳比率動向は以下のようになっています。

  • 映像系コンテンツ:57.5%
  • テキスト系コンテンツ:35.1%
  • 音声系コンテンツ:7.4%

なお、映像系コンテンツに含まれているゲームソフトは単独で13.4%の市場シェア率です。他の映像系コンテンツと違ってインタラクティブ性のあるゲームソフトは、映像系コンテンツとは独立した分類をする民間調査もあります。

また、映像系ネットオリジナルは全体の7.5%、テキスト系ネットオリジナルは同8.2%、音声系ネットオリジナルは同0.2%の市場シェアです。ネットオリジナルコンテンツが多数、広まっている動向が分かります。

参照元:総務省情報通信政策研究所

2. コンテンツ制作業界のM&A動向

コンテンツ制作業界のM&A動向として目立つのは、アニメやゲームの制作会社を買収対象としたM&Aが盛んであることです。コンテンツの多くはエンターテインメント性を持つものですが、その中でもアニメやゲームは国内だけではなく世界を市場とできます。

そして、アニメやゲームがコンテンツとしてヒットすると、そのグッズ化などのビジネス展開が可能です。アニメやゲームは、IP(Intellectual Property=知的財産)として大きな可能性を秘めていることが注目を集める理由となっています。

3. コンテンツ制作会社をM&Aで売却するメリット

コンテンツ制作会社をM&Aで売却・譲渡すると以下のようなメリットが得られます。

  • 事業承継問題の解決
  • 従業員の雇用継続
  • 対価の獲得
  • 債務からの解放
  • 経営の安定化

コンテンツ制作会社のM&Aにおける売却・譲渡メリットについて、それぞれの内容を説明します。

事業承継問題の解決

後継者不在のコンテンツ制作会社のケースでは、M&Aでの売却・譲渡による事業承継問題の解決がメリットです。後継者不在=廃業危機にあるわけですが、M&Aで買収側が会社や事業を承継するため廃業を免れられます。これはM&Aによる事業承継といわれ、近年、注目を集めている手段です。

従業員の雇用継続

コンテンツ制作会社のM&Aによる売却・譲渡は、廃業を免れることで従業員の雇用が守られるメリットも生みます。コンテンツ制作会社が廃業すれば、従業員の雇用は失われるものです。M&Aによってコンテンツ制作会社が存続することで、従業員の雇用は継続されます。

対価の獲得

コンテンツ制作会社をM&Aで売却・譲渡する側の大きなメリットは対価を得ることです。M&Aの対価は、有形資産の価値だけで決まるわけではなく、無形資産の価値も大きく影響します。コンテンツ制作会社の場合、技術力・制作力の評価や所有している知的財産の内容次第では、相当の対価を得られるかもしれません。

債務からの解放

M&Aにおけるコンテンツ制作会社の売却・譲渡側は、債務から解放されることもメリットです。株式譲渡や合併などのM&Aを行うと、売却・譲渡側の債務は買収側に移転します。

経営者が個人保証をしているケースでも、買収側への債務の移転に伴って解消されるのが一般的です。ただし事業譲渡の場合、自動的に債務は移転しないという注意点があります。

経営の安定化

コンテンツ制作会社をM&Aで売却・譲渡すると、会社が安定化するメリットも得られます。一般にM&Aの買収側は売却・譲渡側よりも会社の規模が大きく、財務面も含めて経営資源は潤沢です。

コンテンツ制作会社が買収側の傘下になれば、まず、資金面のサポートが得られるでしょう。また、経営資源も共用できるため経営は安定化するはずです。

4. コンテンツ制作業界のM&Aによる売却・買収事例5選

コンテンツ制作業界におけるM&Aの実態を確認するために、実際の売却・買収事例を紹介します。紹介するM&Aは以下の5事例です。

  • テー・オー・ダブリューによるQeticの買収事例
  • 任天堂によるダイナモピクチャーズの買収事例
  • ソネット・メディア・ネットワークスによるASAの買収事例
  • All Nippon Entertainment WorksのMBO事例
  • シイエム・シイによるアサヒ・シーアンドアイの買収事例

コンテンツ制作業界のM&A事例について、それぞれの内容を説明します。なお、表中に記載する売上高は、M&Aが実施された時期の直近年度決算の数値です。

テー・オー・ダブリューによるQeticの買収事例

事例1 売却側 買収側
法人名 Qetic テー・オー・ダブリュー
所在地 東京都港区 東京都港区
事業内容 コンテンツの企画制作、
メディア・ウェブサイト
のデザイン・構築、
動画・ イベント企画制作
オンラインイベント、
SNSプロモーション、
ゲーム・eSportsプロモーション、
プラットフォーム販促、
プロモーションイベント、
デジタル制作・映像制作、
カンファレンス・展示会・アワード
などのプロモーション事業
売上高 2億3,375万5,240円 175億300万円(連結)

2025(令和7)年1月、テー・オー・ダブリューは、Qeticの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は非公表です。テー・オー・ダブリューとしては、総合プロモーション事業におけるデジタル体験領域の強化を図ることと、シナジー効果創出を目的にM&Aを実施しました。

参照元:株式会社テー・オー・ダブリュー

任天堂によるダイナモピクチャーズの買収事例

事例2 売却側 買収側
法人名 ダイナモピクチャーズ 任天堂
所在地 東京都千代田区 京都府京都市
事業内容 CGアニメーションを含む
映像コンテンツの企画・制作
家庭用レジャー機器の製造・販売
売上高 非公開 1兆6,953億4,400万円(連結)

2022(令和4)年10月、任天堂は、ダイナモピクチャーズの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は非公表です。任天堂としては、グループ内における映像コンテンツの企画・制作体制強化を目的にM&Aを実施しました。なお、M&Aを機に、ダイナモピクチャーズはニンテンドーピクチャーズに商号変更しています。

参照元:任天堂株式会社

ソネット・メディア・ネットワークスによるASAの買収事例

事例3 売却側 買収側
法人名 ASA ソネット・メディア・ネットワークス
所在地 宮城県仙台市 東京都品川区
事業内容 デジタルコンテンツ制作・
開発・品質保証(QA)など
マーケティングテクノロジー事業
売上高 9億500万円 102億1,600万円(連結)

2019(令和元)年8月、ソネット・メディア・ネットワークス(現SMN)は、ASAの株式68.6%を買収して子会社化しました。買収額は非公表です。ソネット・メディア・ネットワークスとしては、グループの事業規模・事業領域の拡大を念頭にM&Aを実施しています。

参照元:ソネット・メディア・ネットワークス株式会社

All Nippon Entertainment WorksのMBO事例

事例4 売却側 買収側
法人名 All Nippon Entertainment Works ANEW Holdings
所在地 東京都港区 東京都港区
事業内容 日本国内コンテンツのハリウッド
・リメイクを共同プロデュース
株式の所有、投資事業
組合などの運営・管理
売上高 1,500万円 ―(新設のため)

2017(平成29)年10月、ANEW Holdingsは、All Nippon Entertainment Works(以下ANEW)の株式99.6%を買収し子会社化しました。買収額は4,500万円です。このM&AはMBO(Management Buyout)であり、ANEWの代表取締役によって行われました。

具体的には、ANEWの代表取締役が全株式分を出資して設立したANEW Holdingsが、ANEWの親会社であるフューチャーベンチャーキャピタルからANEWを買収したものです。経営の効率化や独立化を目的に親会社へ申し入れをし、それが受け入れられました。

参照元:フューチャーベンチャーキャピタル株式会社

シイエム・シイによるアサヒ・シーアンドアイの買収事例

事例5 売却側 買収側
法人名 アサヒ・シーアンドアイ シイエム・シイ
所在地 東京都港区 愛知県名古屋市
事業内容 医療・医薬品業界
向けコンテンツ制作
技術情報事業、人財育成事業、
業務標準事業、販売戦略事業
売上高 非公開 168億8,900万円(連結)

2017年10月、シイエム・シイは、アサヒ・シーアンドアイの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は非公表です。シイエム・シイとしては、医療・医薬品マーケティング事業の強化と協業によるシナジー効果創出を見込んでM&Aを実施しました。

参照元:株式会社シイエム・シイ

5. コンテンツ制作会社のM&Aを成功させるためのポイント・注意点

コンテンツ制作会社のM&Aを成功させるためには、以下のような注意点を把握しておく必要があります。

  • M&Aの専門家に相談をする
  • 情報漏えいしない
  • 事業譲渡の注意点
  • 的確な企業価値評価を行う

各注意点の内容を説明します。

M&Aの専門家に相談をする

コンテンツ制作会社のM&Aを成功させるための注意点として「早期にM&Aの専門家に相談する」ことが挙げられます。M&A初期のプロセスであるM&A戦略の策定と交渉相手探しは、その後のM&Aの成否を左右する重要なものです。

それらを円滑に問題なく進めるには、自社に適したM&Aの専門家を早期に探して業務委託契約を結ぶに限ります。

以下の動画はM&Aアドバイザーの見極め方における注意点を解説したものです。ご参考として掲示します。

M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください

コンテンツ制作会社のM&Aを相談するための専門家をお探しであれば、ぜひM&A総合研究所にご連絡ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが、専任となって案件を徹底サポートいたします。

また、M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみであり、譲受企業様は中間金が発生します)。随時、無料相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

【関連】M&A・事業承継ならM&A総合研究所
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情報漏えいしない

コンテンツ制作会社におけるM&A成功のための注意点には「情報漏えいしない」ことも挙げられます。この場合の情報とは以下の2つです。

  • M&A交渉を行っている事実
  • M&A交渉で知り得た相手方の公になっていない情報

M&A交渉の際に結ぶ秘密保持契約に違反して情報漏えいすると、損害賠償請求やM&A交渉の破談などが起こり得ます。

以下の動画は情報漏えいの注意点を解説したものです。ご参考まで掲示します。

事業譲渡の注意点

事業譲渡とは、売却・譲渡側における会社の経営権はそのままに、事業に関する資産その他を売却・買収することで買収側が当該事業の運営権を取得するM&Aスキーム(手法)のことです。売却・買収したいもの・したくないものを個別に協議して決められる特徴があります。

競業避止義務

事業譲渡の注意点の1つは、会社法で定められた競業避止義務です。競業避止義務では、売却側が譲渡した事業と同一の事業を、買収側の所在地(区市町村)および隣接した区市町村で、売却側は20年間、行えないと定められています。

ただし、買収側から合意を取りつければ、期間を短く設定したり、義務自体を無効化したりすることも可能です。

債務は引継がれないケースが多い

事業譲渡の2つめの注意点は、売却・譲渡側の債務が手元に残るリスクです。事業譲渡では、売却・買収するものを1つずつ協議して決めます。その際、売却・譲渡する事業と関わりのない債務を引取ろうとする買収側はいないでしょう。

一方、株式譲渡や合併などのM&Aスキームは包括承継といわれ、M&Aが成立すれば売却・譲渡側の債務は自動的に買収側に引継がれます。

人材流出

事業譲渡では、人材が流出しやすいという注意点もあります。事業譲渡を実施する際、従業員が自動的に買収側に転籍するわけではありません。対象の従業員に説明して同意を得たうえで一度、売却・譲渡側と退職手続きを行い、その後、買収側と新たに雇用契約を結びます。

このように従業員が一度、退職することから、その後、買収側に入社せず他社に転職してしまうリスクがあるのです。

的確な企業価値評価を行う

コンテンツ制作会社のM&Aにおける注意点には「的確な企業価値評価」もあります。M&Aの対価は交渉で決まるものです。交渉の際は売却側・買収側双方が条件を提示します。この提示する条件の基となるのが、売却・譲渡側に対する企業価値評価です。

企業価値評価は売却側・買収側がそれぞれ別個に行います。的確に評価を行わないと、それぞれの数値が異なったものとなり交渉の難航につながるでしょう。

以下の動画は企業価値評価方法の1つ「コストアプローチ」を解説したものです。ご参考まで掲示します。

以下の動画は企業価値評価方法の1つ「マーケットアプローチ」を解説したものです。ご参考まで掲示します。

6. コンテンツ制作業界のM&Aまとめ

コンテンツ制作会社のM&A成功に向けては、業務委託するM&A専門家選びにこだわることが肝要です。具体的には以下のような点に着目してM&A専門家選びをするとよいでしょう。

  • コンテンツ制作会社のM&A支援実績があること(同ジャンルのコンテンツ)
  • 自社と同等規模のM&A支援実績があること
  • 自社が希望する特定の地域に強みがあること、または全国対応や海外対応していること
M&A専門家選びにあたっては、各社が行っている無料相談を活用するとよいでしょう。

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