デリバリー業界のM&A動向!会社売却のメリットや成功のポイントや事例5選を解説!

取締役副社長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

本コラムでは、デリバリー業界の中でもフードデリバリーのM&Aについてまとめました。業界の概要や市場動向とM&A動向、フードデリバリー会社を売却・譲渡するメリット、M&Aを成功させるための注意点などを解説するとともに、実際の売却・買収事例も紹介します。

目次

  1. デリバリー業界の概要と動向
  2. デリバリー業界のM&A動向
  3. デリバリー会社をM&Aで売却するメリット
  4. デリバリー会社のM&A・買収・売却事例5選
  5. デリバリー会社のM&Aにおける成功のポイント
  6. デリバリー業界のM&A・事業譲渡まとめ
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1. デリバリー業界の概要と動向

デリバリー(delivery)とは「配達・配送」という意味を持ちます。したがって、一口にデリバリー業界というと、多くの配達・配送・宅配業者を含めた意味合いのものです。

本コラムでは、広い意味でのデリバリー業界ではなく、フードデリバリーに焦点を当てて話を進めます。まずは、フードデリバリー業界の概要や市場動向について確認しましょう。

デリバリー業界とは

フードデリバリーとは、飲食品を注文者の自宅あるいはオフィスなどの指定場所に配達することです。食品は調理された物が広く取り扱われていますが、食材のデリバリーも行われています。

また、従来は、調理食品のデリバリーは飲食店自身が行っていました。しかし、スマートフォンやインターネットの普及とコロナ禍による外出制限・自粛が相まって、飲食店に代わり配達を行うデリバリー業者が増えているのが現状です。

デリバリー業界の市場規模と動向

矢野経済研究所の発表資料「食品宅配市場に関する調査を実施(2023年)」によれば、2018年から2022年の食品宅配市場(フードデリバリー市場)の動向は以下のようになっています。

  • 2018年:1兆9,979億円
  • 2019年:2兆743億円
  • 2020年:2兆3,874億円
  • 2021年:2兆4,787億円
  • 2022年:2兆5,363億円

フードデリバリー市場の動向は右肩上がりとなっており、今後もこの動向は継続されると予想されています。

参照元:株式会社矢野経済研究所

2. デリバリー業界のM&A動向

フードデリバリー業界の市場動向が拡大傾向にあることが意味するのは、業界内の競争も激化しているということです。それを反映して、フードデリバリー業界では、人材確保や市場シェア拡大のために同業者間でのM&Aが行われているという動向があります。

また、別のM&A動向としては、外食業界、ケータリング業界、給食業界など関連業界や隣接業界が、フードデリバリー業界に参入するためのM&Aも増加傾向です。それ以外にも、全くの異業種からフードデリバリー業界へ参入するためのM&Aも見られます。

3. デリバリー会社をM&Aで売却するメリット

ここでは、フードデリバリー業界の企業をM&Aで売却・譲渡する際のメリットを確認しましょう。フードデリバリー業界の企業をM&Aで売却・譲渡する際の主なメリットは以下のとおりです。

  • 後継者問題の解決
  • 売却益の獲得
  • 従業員の雇用維持
  • 配送エリアの拡大・サービスの質向上
  • 廃業による支出の回避

フードデリバリー業界の企業をM&Aで売却・譲渡する際の各メリットについて説明します。

後継者問題の解決

フードデリバリー会社をM&Aで売却・譲渡することで、後継者問題を解決できるというメリットが得られます。社内や親族にも後継者がおらず、事業承継の実現が危ぶまれている会社は少なくありません。後継者不在の会社において経営者が引退時期を迎えれば、待っているのは廃業だけです。

しかし、そのような後継者不在のフードデリバリー会社でも、M&Aによる売却・譲渡を行うことによって買収側に経営は引継がれ、会社は無事に存続します。

売却益の獲得

フードデリバリー会社のM&Aによる売却・譲渡では、売却益を得られるというメリットもあります。

フードデリバリー会社が赤字経営であったり、多額の負債を抱えていたりといった状況でなければ、M&A交渉によって相応の売却額が決まるでしょう。それぞれのフードデリバリー会社の価値に応じた売却額によって、多分の売却益を獲得できます。

従業員の雇用維持

フードデリバリー会社のM&Aによる売却・譲渡を行って廃業を未然に防げば、従業員の雇用も維持されるメリットが得られます。フードデリバリー会社が後継者不在や経営の行き詰まりなどの理由で廃業になった場合、従業員は解雇となり会社を辞めざるを得ません。

解雇となれば失業手当の手続き、転職活動など手間ばかりがかかります。フードデリバリー会社がM&Aによって廃業を免れれば、従業員に余計な苦労を負わせずにすむのです。

配送エリアの拡大・サービスの質向上

フードデリバリー会社のM&Aによる売却・譲渡後、買収側が同業者であれば、親会社との協業や経営資源の共用によって、配送エリアの拡大やサービス内容の質の向上が見込めるというメリットもあります。

一般に、M&Aの買収側は売却側よりも経営規模が大きく、事業ノウハウや顧客基盤が売却側よりも整っていることが多いでしょう。それらをグループ会社として活用できるため業績の向上も期待できます。

廃業による支出の回避

仮に廃業することと比較した場合、フードデリバリー会社のM&Aによる売却・譲渡によって、廃業時に発生する支出を回避できるというメリットもあります。

廃業をする場合、従業員への解雇手当、機材・備品・在庫の処分コスト、事務所・作業所が賃貸物件の場合は原状回復工事代、廃業手続きに関わる士業への報酬、廃業手続き時の登記費用など、さまざまな費用が発生するものです。M&Aによる売却・譲渡を行えば、それらの支出は一切、発生しません

4. デリバリー会社のM&A・買収・売却事例5選

ここでは、実際に行われたフードデリバリー業界関連のM&Aによる売却・買収事例の内容を確認します。紹介する事例は以下の5例です。

  • オイシックス・ラ・大地がノンピを買収した事例
  • ヤマエグループホールディングスが日本ピザハット・コーポレーションを買収した事例
  • USEN-NEXT HOLDINGSがバーチャルレストランを買収した事例
  • ぐるなびが楽天グループの「楽天デリバリー」など2事業を取得した事例
  • 新出光がポケットフーズを買収した事例

フードデリバリー業界のM&A事例について、各内容を説明します。なお、表中に記載している売上高は、M&Aが実施された時期の直近年度決算の数値です。

オイシックス・ラ・大地がノンピを買収した事例

事例1 売却側 買収側
法人名 ノンピ オイシックス・ラ・大地
所在地 東京都千代田区 東京都品川区
事業内容 社内カフェテリアの企画・運営、
法人向けフードデリバリー・
ランチケータリングの運営、
各種カフェの運営、
コーヒー豆販売サイトの運営
ウェブサイトやカタログによる
一般消費者への有機野菜・
特別栽培農産物・無添加加工食品など
安全性に配慮した食品・食材の販売
売上高 非公開 1,151億7,600万円(連結)

2024(令和6)年1月、オイシックス・ラ・大地は、株式譲渡と第三者割当増資の引受けによりノンピの株式約51%を取得し子会社化しました。取得額は非公表です。

オイシックス・ラ・大地としては、現在、注力しているBtoBサブスクリプション事業を成長させるため、ノンピの行っているキッチンレス社食事業を取り込みシナジー効果を創出させる狙いでM&Aを実施しました。

参照元:オイシックス・ラ・大地株式会社

ヤマエグループホールディングスが日本ピザハット・コーポレーションを買収した事例

事例2 売却側 買収側
法人名 日本ピザハット・コーポレーション ヤマエグループホールディングス
所在地 神奈川県横浜市 福岡県福岡市
事業内容 ピザ宅配事業会社「ピザハット」の持株会社 食品・住宅・不動産関連の卸売業や
製造業などを行う企業グループの持株会社
売上高 209億8,000万円 5,036億3,500万円(連結)

2022(令和4)年8月、ヤマエグループホールディングスは、日本ピザハット・コーポレーションの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は非公表です。

ヤマエグループホールディングスとしては、「食」の領域における新規事業への進出のため、日本ピザハットを傘下に持つ日本ピザハット・コーポレーションとのM&Aを決めています。

参照元:ヤマエグループホールディングス株式会社

USEN-NEXT HOLDINGSがバーチャルレストランを買収した事例

事例3 売却側 買収側
法人名 バーチャルレストラン USEN-NEXT HOLDINGS
所在地 東京都中央区 東京都品川区
事業内容 フランチャイズシステムによる
飲食店の経営およびコンサルティング
金融・不動産・グローバル事業、通信・エネルギー事業、
コンテンツ配信事業、店舗・施設ソリューション事業を
行う企業グループの持株会社
売上高 4億8,414万3,000円 2,083億5,100万円(連結)

2022年8月、USEN-NEXT HOLDINGS(現U-NEXT HOLDINGS)は、バーチャルレストランの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は非公表です。

USEN-NEXT HOLDINGSとしては、グループ会社が行う店舗・施設ソリューション事業で顧客として多くの飲食店を抱えており、バーチャルレストランが傘下に入ることで多くのシナジー効果が見込めると判断しM&Aを実行しました。

参照元:株式会社USEN-NEXT HOLDINGS

ぐるなびが楽天グループの「楽天デリバリー」など2事業を取得した事例

事例4 売却側 買収側
法人名 楽天グループ ぐるなび
所在地 東京都世田谷区 東京都千代田区
事業内容 インターネットサービス、
フィンテック、その他
パソコン・スマートフォンなどによる
飲⾷店情報提供サービス、
飲⾷店経営に関わる各種業務⽀援
サービスの提供、その他関連する事業
売上高 1兆4,555億3,800万円(連結) 309億2,700万円(連結)

2021(令和3)年7月、ぐるなびは、会社分割の手法により楽天グループが行ってきた楽天デリバリー事業と楽天リアルタイムテイクアウト事業を買収しました。買収額は1,300万円です。

ぐるなびと楽天グループは資本業務提携契約を締結しています。今回は、その一環として飲食店関連サービス事業はぐるなびに集約することになり、M&Aが実施されました。

参照元:株式会社ぐるなび

新出光がポケットフーズを買収した事例

事例5 売却側 買収側
法人名 ポケットフーズ 新出光
所在地 福岡県福岡市 福岡県福岡市
事業内容 宅配ピザチェーン
「ピザポケット」の運営
石油事業、自動車事業、
電力事業、不動産事業
売上高 非公開 非公開

2021年12月、新出光は、ポケットフーズの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は非公表です。新出光としては、イデックスグループ(新出光傘下の企業グループ名)が掲げている非石油事業の成長戦略の一環として、新たな事業分野への進出のためにこのM&Aを行いました。

また、単に新事業への進出だけでなく、グループの持つリソースによりポケットフーズの出店強化を大いにサポートできるシナジー効果が見込めるともしています。

参照元:株式会社新出光

5. デリバリー会社のM&Aにおける成功のポイント

最後に、フードデリバリー業界におけるM&Aを成功させるためのポイントおよび注意点について押さえておきましょう。フードデリバリー業界でのM&Aによる売却・買収を成功させるためには、以下のような注意点があります。

  • M&Aの専門家に相談をする
  • 目的を明確にする
  • 早めに検討を始める
  • 情報漏えいに気をつける
  • 相乗効果が得られる相手先を選ぶ

フードデリバリー業界でのM&Aを成功させるための各注意点について、それぞれ説明します。

M&Aの専門家に相談をする

フードデリバリー会社のM&Aを成功させる注意点の第一は、M&Aの専門家に相談することです。その際、M&Aの専門家の選び方に気をつけましょう。

ポイントとなるのは、フードデリバリー会社のM&A支援実績があること、自社と同等規模のM&Aを得意・専門としていること、特定の地域のM&Aに強みがあるか、または全国対応しているかなどです。

以下の動画は、M&Aアドバイザーの見極め方について解説したものであり、ご参考まで掲示します。

M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください

フードデリバリー業界関連のM&Aを相談するための専門家をお探しであれば、ぜひM&A総合研究所にご連絡ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが、専任となって案件を徹底サポートいたします。

また、M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみであり、譲受企業様は中間金が発生します)。随時、無料相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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目的を明確にする

フードデリバリー会社のM&Aを成功させるための第二の注意点は、目的を明確にすることです。単に売却する・買収するという漠然とした状態でM&Aに臨んでも、成功は望めません。M&Aを実施したい根本的な目的を明確化しておくことが、M&Aを成功に導きます

また、M&Aの目的が複数あることも多いでしょう。その場合は、それぞれの目的に優先度付けを行っておくことも肝要です。

早めに検討を始める

フードデリバリー会社のM&Aにおける注意点としては、「早めにM&Aを検討しておく」ということもあります。M&Aは売却側と買収側のタイミングが合わなければ成立しないものです。

また、高額のやり取りとなるため、売却側にとっては良い買い手がいつでもいるものではありません。M&Aを実施したい時期にすぐ交渉を行えるようにするためには、早いうちにM&Aの検討を始めることがポイントです。

情報漏えいに気をつける

フードデリバリー会社のM&Aの重要な注意点として、「情報漏えいを発生させない」ことがあります。

M&A交渉開始時に必ず行われるのが秘密保持契約の締結です。相手方の重要な経営情報およびM&A交渉実行中であることを外部に漏らさないことと、漏らした場合の罰則を取り決めます。また、罰則うんぬんの前に、情報漏えいが発生した場合、相手方の信頼を失いM&A交渉は破談となるでしょう。

以下の動画は、情報漏えいと秘密保持契約の注意点を解説したものであり、ご参考まで掲示します。

相乗効果が得られる相手先を選ぶ

フードデリバリー会社のM&Aにおいては、相乗効果が得られる相手を選ぶと成約確度が上がります。M&Aでの買収側は、M&A後の経営における相乗効果を重要視するのは必定です。そのような売却側が見つかれば交渉はスムーズに進むでしょう。

M&Aでの売却側も相乗効果が得られやすい相手と交渉を始めれば、良い条件でM&Aを成約できる確度が高まります。

6. デリバリー業界のM&A・事業譲渡まとめ

市場動向が上向きであるフードデリバリー業界では、今後もM&Aが盛んに行われる可能性が高いでしょう。

フードデリバリー会社のM&Aにおけるメリットを享受するためには、本コラムで掲示した注意点を踏まえてM&Aを実施することが成功へのポイントとなります。特に、仲介業務を委託するM&Aの専門家については、自社に適したアドバイザーの見極めが大切です。

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