家電量販店のM&A動向!会社売却のメリットや成功のポイントや事例5選を解説!

取締役副社長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

家電量販店のM&Aにあたって必要となる情報をまとめました。家電量販店業界の概要・市場動向とM&A動向、家電量販店を売却・譲渡する際のメリット、家電量販店業界でのM&Aを成功に導く注意点などの解説と合わせ、実際の売却・買収事例も紹介します。

目次

  1. 家電量販店業界の概要と動向
  2. 家電量販店業界のM&A動向
  3. 家電量販店会社をM&Aで売却するメリット
  4. 家電量販店会社のM&A・買収・売却事例5選
  5. 家電量販店会社のM&Aにおける成功のポイント
  6. 家電量販店業界のM&A・事業譲渡まとめ
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1. 家電量販店業界の概要と動向

冒頭では、家電量販店のM&Aの話の前に、家電量販店業界の概要や動向などについて確認しましょう。家電とは家庭用電化製品の略称です。家電には以下のような分類があります。

  • 生活家電:冷蔵庫、掃除機、エアコン、電子レンジ、洗濯機など
  • AV家電:テレビ、ステレオ、各種レコーダー、各種オーディオプレイヤーなど
  • デジタル家電:スマートフォン、パソコン、デジタルカメラ、ゲーム機など

これらの家電を、広い売り場面積を確保し大量に展示して薄利多売するのが家電量販店です。

家電量販店業界とは

家電量販店の多くはチェーン展開をしていますが、なかにはチェーン展開を行っていない単立型の家電量販店もあります。下記は家電量販店の分類です。

  • 郊外系家電量販店
  • カメラ店系家電量販店
  • 電気街系家電量販店

カメラ店系家電量販店とは、都市部の駅前におけるカメラ専門店が家電量販店に鞍替えしたケースです。電気街系家電量販店は、東京の秋葉原において顕著な例が見られます。

家電量販店業界の市場規模と動向

経済産業省の商業動態統計調査によると、過去5年間における家電量販店業界の市場規模動向は以下のようになっています。

  • 2020年:4兆7,927億5,900万円
  • 2021年:4兆6,866億7,200万円
  • 2022年:4兆6,843億6,100万円
  • 2023年:4兆6,324億1,200万円
  • 2024年:4兆7,287億7,200万円

2024(令和6)年を除けば、いずれも前年度比マイナスとなっており、緩やかな減少動向にあるといえるでしょう。その主な原因は、人口減少とネット通販の増加とされています。

参照元:経済産業省

2. 家電量販店業界のM&A動向

家電量販店業界の市場規模は頭打ち動向となっており、市場シェアの拡大およびスケールメリット獲得のために、同業者をM&Aで買収し事業規模を拡大する動向が見られます。

また、家電以外の商品・製品を販売する企業をM&Aで買収するケースは、商品ラインアップの拡充が目的です。さらに、海外市場へ進出するためのM&A(現地企業の買収)も行われています。

3. 家電量販店会社をM&Aで売却するメリット

家電量販店を運営する会社や事業をM&Aで売却・譲渡する場合、いくつかのメリットが得られます。家電量販店の運営会社や事業を売却・譲渡して得られる具体的なメリットは、主に以下のとおりです。

  • 後継者不在・事業承継問題の解決
  • 従業員の雇用確保
  • 売却益の獲得
  • 個人保証・債務の解消
  • 大手企業の傘下に入り経営基盤の強化

家電量販店をM&Aで売却・譲渡することで得られる各メリットの内容を説明します。

後継者不在・事業承継問題の解決

後継者のいない家電量販店をM&Aで売却・譲渡すると、廃業を避け事業承継が行われるメリットを得られます。M&Aが実現すれば、買収側が後継者の代わりとなって新たに量販店を経営していくため、会社は存続し廃業には至りません。

従業員の雇用確保

後継者不在や経営不振で廃業危機にある家電量販店がM&Aによる売却・譲渡を行うことは、従業員との雇用関係が維持されるというメリットもあります。家電量販店が廃業となれば従業員は解雇となりますが、M&Aによる売却・譲渡で家電量販店が存続することによって、雇用関係も継続されるのです。

売却益の獲得

家電量販店をM&Aで売却・譲渡すると、売却益が得られるのも大きなメリットの1つです。M&Aの売却益は、M&Aを機にリタイアするのであれば十分な生活資金にもなり、また、新たに事業を起こすのであれば有効な立ち上げ資金となります。

いずれにしろ、家電量販店をM&Aで売却・譲渡することで、自由使途の資金を獲得できるのです。

個人保証・債務の解消

家電量販店のM&Aによる売却・譲渡は、債務や連帯保証からの解放というメリットも得られます。M&Aで会社を売却・譲渡した場合、その会社の債務は買収側が引継ぐものです。

また、中小企業の多くは、融資を受ける際に経営者が連帯保証人になります。M&Aで債務が買収側へ移ることによって、個人保証(連帯保証)は解消されるのです。

大手企業の傘下に入り経営基盤の強化

家電量販店のM&Aによる売却・譲渡は、経営基盤が強化されるメリットも得られます。一般にM&Aの買収側は、売却・譲渡側よりも会社の規模が大きくリソースも豊富です。家電量販店がM&Aで買収側の傘下になった場合、そうしたリソースの共用や資金面の援助が得られるようになり、経営基盤は安定したものとなるでしょう。

4. 家電量販店会社のM&A・買収・売却事例5選

家電量販店のM&Aを具体的にイメージするため、実際に行われた家電量販店関連のM&Aによる売却・買収事例を見てみましょう。取り上げる事例は以下の5例です。

  • ヤマダデンキと大塚家具が吸収合併した事例
  • エディオンとニトリホールディングスが資本業務提携をした事例
  • ビックカメラの子会社であるソフマップがじゃんぱらを子会社化した事例
  • ノジマの子会社Courts Asia LimitedとNojima Asia Pacific Pte.Ltd.が吸収合併した事例
  • ケーズホールディングスの子会社北越ケーズが吉田商事を吸収合併した事例

各家電量販店のM&A事例について内容を説明します。なお、表中に記載している売上高は、M&Aが実施された時期の直近年度決算の数値です。

ヤマダデンキと大塚家具が吸収合併した事例

事例1 売却側 買収側
法人名 大塚家具 ヤマダデンキ
所在地 東京都江東区 群馬県高崎市
事業内容 家具・インテリア・
家電の総合販売
家電・情報家電などの販売、
住まいに関する商品販売
売上高 6,097億3,300万円 279億9,900万円

2022(令和4)年5月、ヤマダホールディングスの完全子会社同士であるヤマダデンキと大塚家具は合併しました。ヤマダデンキが存続会社、大塚家具が消滅会社となる吸収合併です。グループ会社間の合併であるため、買収対価は発生していません。

2021(令和3)年9月の大塚家具の買収後、ヤマダデンキと大塚家具の間で協業が行われてきましたが、より実績を上げるには経営を統合した方が良いと判断しM&Aを実施しています。

参照元:株式会社ヤマダホールディングス

エディオンとニトリホールディングスが資本業務提携をした事例

事例2 売却側(出資を受ける側) 買収側(出資側)
法人名 エディオン ニトリホールディングス
所在地 大阪府大阪市 北海道札幌市
事業内容 家電販売事業、通信事業、
リフォーム・住宅関連事業、
法人向け事業、モバイル事業、
プログラミング教育事業、
エネルギー管理システム事業
子会社(ニトリグループ)の
経営管理業務
売上高 7,137億6,800万円(連結) 8,115億8,100万円(連結)

2022年4月、エディオンとニトリホールディングスは資本業務提携契約を締結しました。資本提携では経営権は異動しませんが、出資(資本の移動)は行われることから広義のM&Aとされています。

資本提携の内容は、契約外であるLIXILが保有するエディオンの株式8.60%相当分を、同年5月にニトリホールディングスが102億6,900万円で買収・取得し、さらに1.40%相当分のエディオンの株式を市場外相対取引または市場買付で追加取得して主要株主になるというものです。

なお、2023(令和5)年3月期のエディオンの有価証券報告書によると、ニトリホールディングスの所有株式比率は10.39%となっています。また、エディオンとLIXILは資本提携契約を締結していましたが、今回のM&Aにより資本提携関係は解消されました。

業務提携の内容としては、店舗開発の協働、販売取扱商品の相互交流によるラインアップの拡充、物流・設置サービス・アフターサービスネットワークの相互活用、EC事業・リフォーム事業・法人向け事業において協業によるシナジー効果を創出することなどが挙げられています。

参照元:株式会社エディオン
参照元:株式会社ニトリホールディングス
参照元:株式会社エディオン

ビックカメラの子会社であるソフマップがじゃんぱらを子会社化した事例

事例3 売却側 買収側
法人名 ソフマップ じゃんぱら
所在地 東京都千代田区 東京都千代田区
事業内容 情報通信機器・デジタル
家電の買取・販売事業
パソコン・ソフト・デジタル家電などの
販売(新品・中古)・買取・サポート
売上高 非公開 非公開

2021年12月、ビックカメラの完全子会社であるソフマップは、じゃんぱらの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は非公表です。ビックカメラとしては、グループ内のデジタル家電リユース事業強化のため、ソフマップに同業であるじゃんぱらを買収させました。

参照元:株式会社ビックカメラ

ノジマの子会社Courts Asia LimitedとNojima Asia Pacific Pte.Ltd.が吸収合併した事例

事例4 売却側 買収側
法人名 Nojima Asia Pacific Pte.Ltd. Courts Asia Limited
所在地 シンガポール シンガポール
事業内容 海外子会社の持株会社 家電・IT製品・家具の販売
売上高 非公開 非公開

2020(令和2)年4月、ノジマの連結子会社同士であるCourts Asia Limited(以下CAL)とNojima Asia Pacific Pte.Ltd.(以下NAPP)は合併しました。CALが存続会社、NAPPが消滅会社となる吸収合併です。グループ企業間の合併であるため、買収対価は発生しません。

このM&Aは、NAPPが任意的公開買付けによりCALの全株式を買収したことに伴い実施されています。

参照元:株式会社ノジマ

ケーズホールディングスの子会社北越ケーズが吉田商事を吸収合併した事例

事例5 売却側 買収側
法人名 吉田商事 北越ケーズ
所在地 石川県石川郡野々市町 新潟県新潟市
事業内容 家庭用電気製品小売業 家庭用電気製品小売業
売上高 43億9,700万円 207億1,300万円
※石川県石川郡野々市町は現在、石川県野々市市です。

2020年12月、ケーズホールディングスの連結子会社である北越ケーズは、吉田商事と合併しました。北越ケーズが存続会社、吉田商事が消滅会社となる吸収合併です。

また、このM&Aと同時並行してケーズホールディングスと吉田商事との間で株式交換が実施され、合併の直前に吉田商事はケーズホールディングスの完全子会社となっています。したがって、北越ケーズと吉田商事との合併はグループ企業間のM&Aとなるため、対価は発生しません。

なお、ケーズホールディングスと吉田商事との株式交換では、ケーズホールディングス株式:吉田商事株式=1:8の比率で実施されています。従来、吉田商事はケーズホールディングスのフランチャイジーでしたが、ケーズホールディングスグループの北陸地区における効率的な事業拡大のため、このM&Aが実施されました。

参照元:株式会社ケーズホールディングス

5. 家電量販店会社のM&Aにおける成功のポイント

家電量販店関連のM&Aを成功に導くには、そのポイントや注意点を把握しておく必要があります。家電量販店関連のM&Aを成功させるための具体的な注意点は、主に以下のとおりです。

  • M&Aの専門家に相談をする
  • 情報漏えいに気をつける
  • 目的や戦略を明確にする
  • 早めの検討・タイミングを逃さない
  • シナジー効果が見込まれる相手先を選定する

家電量販店関連のM&Aを成功に導く各注意点の内容を説明します。

M&Aの専門家に相談をする

家電量販店のM&Aを進める場合、まずはM&Aの専門家に相談することが注意点になります。M&Aには多くのプロセスがあり、どのプロセスでも専門的な知識、情報、経験が欠かせません。ミスを防いでM&Aをスムーズに成功させるためには、信頼できるM&Aの専門家に業務委託することが肝要です。

以下の動画は、M&Aアドバイザーの見極め方における注意点を解説したものであり、ご参考として掲示します。

M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください

家電量販店関連のM&Aを相談するための専門家をお探しであれば、ぜひM&A総合研究所にご連絡ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが、専任となって案件を徹底サポートいたします。

また、M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみであり、譲受企業様は中間金が発生します)。随時、無料相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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情報漏えいに気をつける

家電量販店のM&Aを成功させるための重要な注意点が、情報漏えいしないことです。この場合の情報とは、M&Aの交渉過程で知り得た相手方の企業情報だけでなく、M&A交渉を行っていること自体も秘密情報になります。M&A交渉における情報漏えいは、相手方の信用を大きく損なって破談につながる行為です。

以下の動画は、情報漏えいの注意点を解説したものであり、ご参考まで掲示します。

目的や戦略を明確にする

家電量販店のM&Aを実施する際の注意点として、M&Aの目的や戦略を明確にしておく必要があります。特にM&A戦略を明確化するためには、そもそもの目的が定まっていなければなりません。明確な目的を持ってM&Aにあたることが重要です。また、M&Aの目的が複数ある場合には、それらにプライオリティを設定しましょう。

早めの検討・タイミングを逃さない

家電量販店のM&Aを実施する可能性がある場合、早期から検討を進めておくことも注意点の1つです。M&Aはタイミングが肝要ともいわれています。

こちらがM&Aによる売却・買収をしたいときに、必ず良い相手が見つかるとは限りません。時期を逸しないためには、早期にM&Aの検討を済ませておき、いつでも動けるようにしておくことです。

シナジー効果が見込まれる相手先を選定する

家電量販店のM&Aを成功させる注意点には、「シナジー効果を得られる相手選び」もあります。M&Aの買収側が相手先にシナジー効果を求めるのは必定です。したがって、売却側もシナジー効果の見込める相手を選ぶことで、M&Aの成功確度が上がり、また、良い条件での成約も望めるでしょう。

6. 家電量販店業界のM&A・事業譲渡まとめ

家電量販店のM&Aを成功させるには、まず業界の市場動向およびM&Aの動向を探っておくことが重要です。そのうえで、本コラムに掲載したM&Aにおける注意点をよく把握してM&Aに臨むことによって、各種メリットを享受できるM&Aが実現するでしょう。

その中でも重視したいのは、M&Aの専門家選びです。自社に適したM&Aの専門家を見つけましょう。

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