2025年12月09日公開
幼稚園業界のM&A動向!会社売却のメリットや成功のポイントや事例5選を解説!
幼稚園業界のM&Aについてまとめました。主な内容として、幼稚園業界の概要や市場規模、幼稚園業界のM&A動向、幼稚園をM&Aで売却・譲渡するメリットやM&Aを成功させるための注意点などを解説するとともに、実際に行われた幼稚園関連の売却・買収事例も紹介しています。
1. 幼稚園業界の概要と動向
冒頭では、幼稚園業界のM&Aについて論じる前に、あらためて幼稚園および幼稚園業界の概要や特徴、現在の動向などを確認しましょう。幼稚園は未就学児向けの施設ですが、類似する施設に保育園や認定こども園もあります。幼稚園の特徴を明確化するため、保育園や認定こども園の概要も記載しますので、合わせてご覧ください。
幼稚園業界とは
幼稚園は、学校教育法で規定されている教育施設です。そのため、幼稚園の管轄官庁は文部科学省となっています。幼稚園に入園できるのは、小学校入学前の満3歳の幼児からです。幼稚園の運営には以下のような規定があります。
- 教育領域は言語・自然・社会・健康・絵画・音楽の6種類
- 入園は幼稚園と保護者側との個別契約で成立
- 年間39週以上、開園しなければならない
- 春休み・夏休み・冬休みを設定しなければならない
- 必要施設は遊戯室・運動場・飲料水用設備・便所・保育室・保健室・職員室
- 1日あたりの標準教育時間は4時間(このため昼で閉園となるケースが多い)
- 1クラスは35人以下、必ず1人の担任を配置しなければならない
また、幼稚園には公立幼稚園と私立幼稚園があります。公立幼稚園は都道府県、区市町村が運営主体であり、私立幼稚園は学校法人・個人・宗教法人・社会福祉法人・公益法人・農協などのいずれかが運営主体です。公立幼稚園は教育委員会の管轄で指導が行われますが、私立幼稚園の指導は都道府県の各私学担当者が行います。
費用面は、公立幼稚園の年間平均教育料が約24万円であるのに対し、私立幼稚園の年間平均教育料は約48万円です。ただし、私立幼稚園はそれぞれ独自の教育方針や目標を掲げており、公立幼稚園とは違った特徴があります。
保育園とは
保育園は、児童福祉法で規定されている児童福祉施設です。法律上の正式な名称は「保育所」で、従来は厚生労働省の管轄でしたが、現在は2023(令和5)年4月、新たに発足した「こども家庭庁」が管轄しています。
保育所の目的は、親の仕事やその他の都合で保育が必要な子どもを預かることです。したがって、保育所の開所時間帯は全日制で、場合によっては夜間までのところもあります。
認定こども園とは
認定こども園とは、幼稚園と保育所、両方の機能を持った施設です。2006(平成18)年から制度が開始されました。管轄は、こども家庭庁です。認定こども園には以下の4タイプがあります。
- 幼保連携型:幼稚園と保育所機能を始めから合わせ持つ
- 幼稚園型:認可幼稚園が後から保育所機能を付加
- 保育所型:認可保育所が後から幼稚園機能を付加
- 地方裁量型:認可幼稚園・保育所がない地域の保育・教育施設が認定こども園になる
認定こども園の入園対象年齢は保育所同様に0~5歳です。
幼稚園業界の市場規模と動向
文部科学省の発表資料「令和6年度学校基本調査」によると、幼稚園の園児数は75万8千人(84,000人減)、認定こども園は85万8千人(15,000人増、過去最高)でした。また、施設数は、幼稚園が8,530園(307減)、認定こども園が7,321園(339増)となっています。
近年の幼稚園業界の動向としては、英語教育やデジタル教材によるプログラミング教育の導入などが目立つ傾向です。
2. 幼稚園業界のM&A動向
ここでは、幼稚園業界のM&A動向を確認しましょう。幼稚園業界のM&Aとは、幼稚園を経営する法人の売却・買収や幼稚園運営事業の譲渡・買収のことです。少子化状態にある日本では、3歳児からが入園対象の幼稚園は園児・施設数ともに減少し、0歳児からが対象の認定こども園は園児・施設数ともに増えています。
この状況を反映して、幼稚園が認定こども園になることを目的に保育所を買収したり、逆に幼稚園を保育所に譲渡する傾向が多いのが現在の幼稚園業界のM&A動向です。以下の動画では保育所のM&Aについて解説しています。ご参考までご覧ください。
3. 幼稚園をM&Aで売却するメリット
ここでは、幼稚園をM&Aで売却するメリットを確認しましょう。幼稚園をM&Aで売却する際に得られる主なメリットは以下のとおりです。
- 後継者問題の解決
- 従業員・教職員の雇用確保
- 売却益の獲得
- 個人保証・債務の解消
M&Aで幼稚園を売却するメリットそれぞれについて説明します。
後継者問題の解決
幼稚園をM&Aで売却するメリットの1つは、後継者問題の解決です。帝国データバンクの「全国『後継者不在率』動向調査(2024年)」によれば、日本の中小企業の後継者不在率は52.1%となっています。後継者がいない企業でも、M&Aでの売却によって買収側が新たな経営者となるため、後継者不在問題の解決策となるのです。
従業員・教職員の雇用確保
幼稚園をM&Aで売却することによって、従業員・教職員の雇用が継続されるというメリットもあります。後継者不在の幼稚園において経営者が引退時期を迎えた場合、廃業せざるを得ません。幼稚園が廃業となれば従業員・教職員は解雇されます。
しかし、幼稚園をM&Aで売却すれば、新たな経営者により経営も雇用も継続されるため、廃業も解雇も起こりません。
売却益の獲得
幼稚園をM&Aで売却すれば、売却側は売却益を獲得できるというメリットもあります。M&Aの売却・買収額は交渉によって決まるものですが、金額は将来の価値のような目に見えない要素も加味して話し合われるものです。多額の負債や赤字経営のようなケースを除けば、相応の売却益が得られるでしょう。
個人保証・債務の解消
幼稚園のM&Aによる売却では、個人保証・債務の解消というメリットもあります。経営に債務は付き物です。融資を受ける際に経営者が連帯保証(個人保証)することも多いでしょう。
M&Aでは、一部のM&Aスキーム(手法)を除けば、会社の債務は買収側が引継ぎます。それに伴って経営者の個人保証も解消となり負担から解放されるのです。
4. 幼稚園のM&A・買収・売却事例5選
ここでは、実際に行われた幼稚園関連のM&Aによる売却・買収事例を見てみましょう。紹介する事例は以下の5例です。
- 早稲田アカデミーが幼児未来教育を子会社化した事例
- ソラストがはぐはぐキッズを子会社化した事例
- リクルートマーケティングパートナーズからフレーベル館に事業譲渡した事例
- 城南進学研究社が主婦の友リトルランドを子会社化した事例
- アオバインターナショナルエデュケイショナルシステムズが現代幼児基礎教育開発を子会社化した事例
各M&A事例における売却・買収の内容を説明します。なお、表中に記載している売上高は、M&Aが実施された時期の直近事業年度の決算数値です。
早稲田アカデミーが幼児未来教育を子会社化した事例
| 事例1 | 売却側 | 買収側 |
|---|---|---|
| 法人名 | 幼児未来教育 | 早稲田アカデミー |
| 所在地 | 東京都渋谷区 | 東京都豊島区 |
| 事業内容 | 幼児教室の運営 | 小学生・中学生・高校生を対象とする進学塾の経営 |
| 売上高 | 1億300万円 | 307億2,800万円(連結) |
2024(令和6)年1月、早稲田アカデミーは、幼児未来教育の全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は非公表です。
早稲田アカデミーとしては、幼児未来教育が行っている1~6歳の未就学児を対象とした幼児教室事業や幼稚園受験・小学校受験対策プログラムは自社グループが行っていない事業領域であり、その分野に新たに進出することを目的にM&Aを実施しました。
ソラストがはぐはぐキッズを子会社化した事例
| 事例2 | 売却側 | 買収側 |
|---|---|---|
| 法人名 | はぐはぐキッズ | ソラスト |
| 所在地 | 東京都大田区 | 東京都港区 |
| 事業内容 | 保育園事業、教育事業(英語教室・学童) HUGメイト事業(オンラインコミュニティ活動) |
医療事業、介護事業 こども事業 |
| 売上高 | 10億7,600万円 | 1,061億8,200万円(連結) |
2022(令和4)年2月、ソラストは、はぐはぐキッズの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は非公表です。
ソラストとしては、東京都で認可保育園や認定こども園などを10カ所運営しているはぐはぐキッズをグループに加えることで、東京都における認可保育所のシェア拡大を図るとともに、協業によるシナジー効果が見込めると判断してM&Aを実施しました。
リクルートマーケティングパートナーズからフレーベル館に事業譲渡した事例
| 事例3 | 売却側 | 買収側 |
|---|---|---|
| 法人名 | リクルートマーケティングパートナーズ | フレーベル館 |
| 所在地 | 東京都品川区 | 東京都文京区 |
| 事業内容 | 婚活・結婚・出産育児情報、 まなびコンテンツ、自動車関連情報、 高校生の進学情報サービス |
保育関連施設向けの保育用品・教材・ 遊具・ICTサービスの販売、 児童図書の出版、幼児教育に関わる活動 |
| 売上高 | 非公開 | 非公開 |
2019(平成31)年4月、リクルートマーケティングパートナーズは、保育園・保護者間のコミュニケーションサービス「キッズリー」と幼稚園・保育園向け情報伝達システム「コモシル」をフレーベル館に事業譲渡しました。譲渡額は非公表です。
リクルートマーケティングパートナーズとしては、同サービスや同システムが今後さらに事業として成長していくには、業務提携相手であり、同社よりも長い事業運営経験やノウハウを持つフレーベル館に事業譲渡することが賢明と判断しM&Aを実施しました。
なお、リクルートマーケティングパートナーズは、2021(令和3)年4月、グループ会社であるリクルートに吸収合併されています(リクルートマーケティングパートナーズが消滅会社)。
城南進学研究社が主婦の友リトルランドを子会社化した事例
| 事例4 | 売却側 | 買収側 |
|---|---|---|
| 法人名 | 主婦の友リトルランド | 城南進学研究社 |
| 所在地 | 東京都千代田区 | 神奈川県川崎市 |
| 事業内容 | 乳幼児・児童対象の 各種教室運営、 関連書籍の出版 |
フランチャイズチェーンシステムによる 予備校・進学教室の募集・経営指導、 学習塾や各種教室の経営、保育に関する事業 大学・高校・中学受験用教材の企画・制作・販売 |
| 売上高 | 1億5,802万円 | 69億4,100万円(連結) |
2019年1月、城南進学研究社は、主婦の友リトルランドの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は非公表です。城南進学研究社としては、同社と主婦の友リトルランドが行っていた類似する事業である乳幼児向け育脳事業を統合して展開することで、利用者の利便性を図りつつ業績も拡大させる狙いでM&Aを実施しました。
アオバインターナショナルエデュケイショナルシステムズが現代幼児基礎教育開発を子会社化した事例
| 事例5 | 売却側 | 買収側 |
|---|---|---|
| 法人名 | 現代幼児基礎教育開発 | アオバインターナショナルエデュケイショナルシステムズ |
| 所在地 | 東京都練馬区 | 東京都千代田区 |
| 事業内容 | 未就学児向け各種教室の運営 | 「アオバジャパン・インターナショナルスクール」 (1歳から高校生までの共学一貫校)の運営 |
| 売上高 | 非公開 | 非公開 |
2014(平成26)年11月、アオバインターナショナルエデュケイショナルシステムズは、現代幼児基礎教育開発の全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は非公表です。
アオバインターナショナルエデュケイショナルシステムズとしては、幼児教育体制の強化や事業提供地域の拡大を目的としつつ、十分なシナジー効果も得られると判断しM&Aを実施しました。
5. 幼稚園のM&Aにおける成功のポイント
最後に、幼稚園のM&Aを成功させるポイントや注意点について確認しましょう。幼稚園のM&Aを成功させる主な注意点には以下のようなものがあります。
- M&Aの専門家に相談をする
- 情報漏えいに注意する
- 目的や戦略を明確にする
- 最適なタイミングを逃さない
- 相乗効果が得られる相手先を選ぶ
幼稚園のM&Aを成功させる注意点について、それぞれ内容を説明します。
M&Aの専門家に相談をする
幼稚園のM&Aを成功させる注意点の1つは、「M&Aの専門家に相談する」ことです。多くの場合、M&Aは初めてで不慣れといった状況が予想されます。M&Aを進めるにあたっては、専門的な知識や経験があるのとないのとでは格段の差が出るものです。
したがって、M&Aの専門家と契約し、アドバイスやサポートを得ながら進めるのが良いでしょう。
M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください
幼稚園関連のM&Aを相談するための専門家をお探しであれば、ぜひM&A総合研究所にご連絡ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが、専任となって案件を徹底サポートします。
また、M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみで、譲受企業様は中間金が発生します)。随時、無料相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
情報漏えいに注意する
情報漏えいに注意することも、M&Aを成功させるための注意点です。M&Aでは相互に経営情報を開示するため、必ず秘密保持契約を締結します。仮に相手の経営情報を外部に漏らしてしまうと、損害賠償請求の対象です。また、情報漏えいするような相手はM&Aの交渉先として不適切とみなされ、交渉は破談するでしょう。
目的や戦略を明確にする
M&Aを成功させる注意点には、目的や戦略の明確化も挙げられます。M&Aはあくまで手段であって、M&Aの実施が目的にはなりません。なぜM&Aをするのかという目的を明確に持ち、その目的を達成するためにどのような戦略でM&Aを実施するか決め、それを堅持してM&Aに臨むことが肝要です、
最適なタイミングを逃さない
M&Aを成功させるためには、最適なタイミングでM&Aに動くことも注意点の1つです。M&Aはタイミングに左右されるともいわれています。タイミングが合わなければ交渉相手にも出会えず、交渉そのものが行えません。
適するタイミングの一例としては、自社の業績が良いとき、社会全体が好景気なとき、業界再編の動きがあるときなどです。
相乗効果が得られる相手先を選ぶ
M&Aを成功させるための注意点には、交渉相手の選び方もあります。具体的には、M&A後、協業や相互に経営資源を共用することによって、経営上の相乗効果が得られる相手を選ぶことです。
経営上の相乗効果とは、単独で経営していたときよりも業績が上がることを意味します。そのような相手を選べれば、Win-WinのM&Aが実現するでしょう。
6. 幼稚園業界のM&A・事業譲渡まとめ
幼稚園のM&Aをスムーズに進めるためには、M&Aの専門家を活用するのが得策です。その際には、専門家の選び方に注意しましょう。
M&Aの専門家選びのポイントとして、幼稚園や保育所のM&Aを成約させた実績を持っていること、自社と同規模のM&Aの実績があること、特定の地域に強みがあるかどうかなどといった注意点があります。
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