2025年12月15日公開
放送業界のM&A動向!会社売却のメリットや成功のポイントや事例5選を解説!
本コラムでは放送業界のM&Aについてまとめました。主な内容として、放送業界の概要と市場動向、放送業界のM&A動向、放送関連企業や事業を売却・譲渡するメリット、放送業界でM&Aを成功させるための注意点などを解説するとともに、実際の売却・買収事例も紹介しています。
1. 放送業界の概要と動向
放送業界におけるM&Aの話の前に、まずは放送業界の特徴や放送業界の市場規模や動向などについて確認しましょう。放送事業は公共性があるため、放送業界へ参入するには放送法や電波法などに基づいた手続きを踏まえて免許を取得しなければならないという、他の業種とは違った特性があります。
放送業界とは
放送業界とは、放送免許を取得して情報やエンターテインメントコンテンツなどを消費者に提供する事業を行う業界のことです。放送業界には、いくつかの分類の仕方があります。1つ目は以下の分類です。
- 無線放送:地上放送、衛星放送
- 有線放送:ケーブルテレビ放送
地上放送には、テレビジョン放送とラジオ放送があり、衛星放送にはBS放送と東経110度CS放送があります。次の分類は以下のとおりです。
- 公共放送(準国営放送):日本放送協会(NHK)
- 民間放送(商業放送)
- 教育放送:放送大学学園
公共放送の収入は国民からの受信料であり、民間放送は主として広告料で収入を得ています。また、インターネットを介し「テレビ」を名乗った放送も行われていますが、インターネットでの放送(正確には情報配信)は放送免許の対象になりません。そのため、それらの運営者は放送事業者・放送業界に含めないのが現状です。
放送業界の市場規模と動向
総務省の「情報通信白書令和6年版」によると、放送業界全体の過去5年間の市場規模は以下のような動向となっています。
- 2018年度:3兆9,418億円
- 2019年度:3兆8,643億円
- 2020年度:3兆5,522億円
- 2021年度:3兆7,157億円
- 2022年度:3兆6,845億円
放送業界の市場規模動向としては、減少傾向にあるといえるでしょう。この原因は、若年層を中心としたテレビ離れ・スマートフォン浸透にあるとされています。民間放送の主要な収入源である広告の出稿が、放送業界からインターネット業界に流れているという動向です。
また、2022年度の市場規模の内訳は以下のようになっています。
- 民間地上放送:2兆1,623億円(0.4%減)
- NHK:6,972億円(1.1%減)
- ケーブルテレビ放送:4,880億円(2.2%減)
- 民間衛星放送:3,370億円(1.4%減)
2. 放送業界のM&A動向
放送業界における過去のM&A動向としては、一般企業でいうところのグループ内M&Aが中心でした。地上放送キー局が、地方の系列局同士を合併して統合したり、会社分割で事業を振り分けたりなどが該当します。
近年の放送業界のM&A動向としては、広告料が減少傾向にあることを背景に、新たな収入源を得るため異業種の事業や企業をM&Aによって買収し、事業の多角化を構築する傾向が顕著です。
3. 放送業界の企業をM&Aで売却するメリット
ここでは、放送業界の企業をM&Aで売却・譲渡する際のメリットを確認しましょう。放送業界の企業をM&Aで売却・譲渡する際の主なメリットは以下のとおりです。
- 事業承継問題の解決
- 従業員の雇用維持
- 資金調達・利益の確保
- 技術やノウハウの継承
放送業界の企業をM&Aで売却・譲渡する際のメリットそれぞれについて説明します。
事業承継問題の解決
放送業界の企業のM&Aによる売却・譲渡は、後継者不在=事業承継問題を解決できるメリットがあります。後継者が不在のままだと事業承継が実現せず、会社は存続できません。
しかし、M&Aによる売却・譲渡を行うと、買収側が新たな経営者として会社の経営を引継ぎます。これは、M&Aによる事業承継であり、後継者不在問題を解決する有効な手段です。
従業員の雇用維持
放送業界の企業をM&Aで売却・譲渡すると、従業員の雇用が維持されるというメリットもあります。仮に、後継者不在のままで会社が廃業となった場合、従業員は解雇措置を受けるしかありません。
しかし、M&Aによる売却・譲渡によって会社が存続すれば、従業員の雇用契約に変化は生じず今までどおり仕事を続けられます。
資金調達・利益の確保
放送業界の企業をM&Aで売却・譲渡することで、売却益により自由使途の資金を得るメリットがあります。M&Aの売却額は、売却側企業の見えない価値(無形資産の評価)も加味して決まるものです。
したがって、多額の債務や赤字経営状態でもない限り、通常は相応の利益が上乗せされた売却額となります。この売却益は、売却側が自由に使える資金です。
以下の動画は、M&Aの売却額に大きく作用する企業価値評価について、簡易的に計算できる年買法という手法を解説したものであり、ご参考まで掲示します。
技術やノウハウの継承
放送業界の企業のM&Aによる売却・譲渡は、売却側企業が培ってきた技術やノウハウを継承させられるというメリットもあります。
会社が廃業となってしまった場合、その会社が長年にわたり磨き上げてきた技術やノウハウは失われてしまうものです。しかし、M&Aによる売却・譲渡によって会社が存続できれば、その会社が持つ技術やノウハウも残り受継がれていきます。
4. 放送業界のM&A・買収・売却事例5選
ここでは、実際に行われた放送業界のM&Aによる売却・買収事例を確認しましょう。紹介する事例は以下の5例です。
- 北の達人コーポレーションがFM NORTH WAVEを山地ユナイテッドに譲渡した事例
- 日本テレビ放送網がスタジオジブリを子会社化した事例
- 日本BS放送が理論社と国土社を子会社化した事例
- 日本テレビホールディングスがティップネスを子会社化した事例
- テレビ東京がエフエムインターウェーブをキノシタ・マネージメントに譲渡した事例
放送業界のM&A事例について、それぞれの内容を説明します。なお、表中に記載している売上高は、M&Aが実施された時期の直近年度決算の数値です。
北の達人コーポレーションがFM NORTH WAVEを山地ユナイテッドに譲渡した事例
| 事例1 | 売却側 | 買収側 |
|---|---|---|
| 法人名 | FM NORTH WAVE | 山地ユナイテッド |
| 所在地 | 北海道札幌市 | 北海道札幌市 |
| 事業内容 | 超短波ラジオによる基幹放送・広告放送、 放送番組の制作・販売、 放送時間の販売 |
企業インキュベーション事業、 不動産管理業、グループ全体経営統括 |
| 売上高 | 5億27万8,000円 | 247億円(連結) |
2024(令和6)年7月、北の達人コーポレーションは、連結子会社であるFM NORTH WAVEの全株式(全体の72.8%)を山地ユナイテッドに譲渡しました。譲渡額は非公表です。
北の達人コーポレーションは、2022(令和4)年7月に経営機能を北海道から東京へ移したことにより、FM NORTH WAVEとのシナジー効果が薄れる状況となっていました。そこで、FM NORTH WAVEのためにも北海道エリアに密着して事業展開を行う企業の傘下になる方がよいと考え、このM&Aを決断しています。
日本テレビ放送網がスタジオジブリを子会社化した事例
| 事例2 | 売却側 | 買収側 |
|---|---|---|
| 法人名 | スタジオジブリ | 日本テレビ放送網 |
| 所在地 | 東京都小金井市 | 東京都港区 |
| 事業内容 | アニメーション映画の企画・ 製作および付帯する業務 |
放送法による基幹放送事業・⼀般放送事業、 メディア事業、その他放送に関連する事業 |
| 売上高 | 非公開 | 非公開 |
2023(令和5)年10月、日本テレビホールディングスの連結子会社である日本テレビ放送網は、スタジオジブリの株式42.3%を買収し子会社化しました。買収額は非公表となっています。
一般に、M&Aでの子会社化は株式の過半数を取得して成立するものです。しかし、このM&Aは、経営面の後継者がいないスタジオジブリが、同社が製作したアニメ映画のテレビ放送で取引がある日本テレビ側に相談を行ったことに端を発しています。
日本テレビ放送網とスタジオジブリは、株式譲渡と同時に日本テレビ側が経営をサポートする契約も締結しており、このことも含めて「子会社化」という表現を用いているものです。
日本BS放送が理論社と国土社を子会社化した事例
| 事例3 | 売却側1 | 売却側2 | 買収側 |
|---|---|---|---|
| 法人名 | 理論社 | 国土社 | 日本BS放送 |
| 所在地 | 東京都千代田区 | 東京都千代田区 | 東京都千代田区 |
| 事業内容 | 書籍・雑誌・楽譜・ その他の印刷物の 編集・制作・出版・販売 |
児童図書・教育図書・ 教育雑誌の発行 |
BS11チャンネルの運営 |
| 売上高 | 非公開 | 非公開 | 115億6,900万円 |
2018(平成30)年1月、日本BS放送は、理論社と国土社それぞれの全株式を買収し完全子会社化しました。理論社と国土社の代表取締役は同一人物ですが、買収額は非公表です。日本BS放送としては事業の多角化を進めるため、児童書の出版社として老舗企業である2社をM&Aで子会社化しました。
日本テレビホールディングスがティップネスを子会社化した事例
| 事例4 | 売却側 | 買収側 |
|---|---|---|
| 法人名 | ティップネス | 日本テレビホールディングス |
| 所在地 | 東京都港区 | 東京都港区 |
| 事業内容 | スポーツ施設の運営 | 企業グループの統括・運営を 行う認定放送持株会社 |
| 売上高 | 329億4,000万円 | 3,417億2,000万円(連結) |
2014(平成26)年12月、日本テレビホールディングスは、ティップネスの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は238億7,200万円です(暫定額)。
日本テレビホールディングスとしては、事業ポートフォリオの多様化を目指しており、その一環として「生活・健康関連事業」セグメントを創設するため、今回のM&Aを実施しました。
テレビ東京がエフエムインターウェーブをキノシタ・マネージメントに譲渡した事例
| 事例5 | 売却側 | 買収側 |
|---|---|---|
| 法人名 | エフエムインターウェーブ | キノシタ・マネージメント |
| 所在地 | 東京都品川区 | 東京都新宿区 |
| 事業内容 | 外国語超短波FM放送事業 放送番組制作 |
総合広告代理業、ライフケア事業、 賃貸事業、映画製作・配給事業 |
| 売上高 | 6億5,449万6,000円 | 非公開 |
2012(平成24)年6月、テレビ東京は、完全子会社であるエフエムインターウェーブの株式90%をキノシタ・マネージメント(現木下グループ)に譲渡しました。譲渡額は5億8,275万円です。
テレビ東京グループとしては、今後の提供コンテンツを映像に特化することを決めました。それに伴い、広告主として良質な音楽番組の開発を推進しているキノシタ・マネージメントとの間でM&Aを実施した次第です。
5. 放送業界のM&Aにおける成功のポイント
ここでは、放送業界におけるM&Aを成功させるためのポイントや注意点を確認しましょう。放送業界でのM&Aによる売却・買収を成功させるためには、以下のような注意点があります。
- M&Aの専門家に相談をする
- 最適なタイミングを逃さない
- 目的と戦略の明確化
- 情報漏えいに注意
- 相乗効果が得られる相手先の選定
放送業界でのM&Aを成功させるための注意点それぞれについて説明します。
M&Aの専門家に相談をする
放送業界におけるM&Aを成功させるための注意点の1つは、早い段階からM&Aの専門家に相談することです。M&Aの専門家としては、まず、M&A仲介会社があり、公認会計士や税理士、弁護士などの士業事務所でもM&Aに対応しているケースもあります。
他にも、金融機関、ファイナンシャルアドバイザー(FA)、経営コンサルタントなどさまざまあり、自社に適するM&Aの専門家を選びましょう。
以下の動画は、M&Aアドバイザーの見極め方について解説したものです。ご参考まで掲示します。
M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください
放送業界関連のM&Aを相談するための専門家をお探しであれば、ぜひM&A総合研究所にご連絡ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが、専任となって案件を徹底サポートいたします。
また、M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみであり、譲受企業様は中間金が発生します)。随時、無料相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
最適なタイミングを逃さない
放送業界におけるM&Aを成功させるための注意点として、「最適なタイミングを見逃さない」もあります。
M&Aの最適なタイミングの具体例としては、会社の業績が良好な時期、社会全体の景気が良い時期、業界再編が始まりM&Aに積極的な買収側が市場に存在する時期などです。また、そのようなタイミングを逃さないためには、早い段階からのM&Aの準備も必要になります。
目的と戦略の明確化
放送業界のM&Aを成功させるには、「目的と戦略の明確化」という注意点もあります。特に、明確なM&A戦略を立案するためには、M&Aの目的がはっきりしていなければなりません。その意味では、M&Aの目的の明確化がより重要であるといえます。
また、M&Aの目的が1つだけであるとは限らず、多くのケースでは複数の目的があるでしょう。その場合は、それぞれの目的に優先度を設定しておくことも肝要です。
情報漏えいに注意
放送業界でのM&A成功に向けては、「情報漏えいしない」という注意点も重要です。M&A交渉の開始時、必ず秘密保持契約が締結されます。これに違反すると損害賠償請求の対象となり、そもそもM&A自体が破談となってしまうでしょう。
なお、秘密保持契約における「秘密」とは相手方の経営情報だけでなく、M&A交渉を行っていること自体も秘密の対象です。
以下の動画は、情報漏えいの注意点を解説したものであり、ご参考まで掲示します。
相乗効果が得られる相手先の選定
放送業界におけるM&A成功のためには、シナジー効果(相乗効果)が得られる相手を選ぶという注意点もあります。このことは、M&Aの買収側にとっては必然の選択です。
一方の売却側にとっても重要な意味があります。シナジー効果が得られやすいと想定できる相手であれば、M&Aの成功確度が高まり、かつ売却額が高額になることも期待できるからです。
6. 放送業界のM&A・事業譲渡まとめ
放送業界におけるM&Aをうまく成約させるには、仲介業務を委託するM&A専門家の選び方が肝になります。
具体的には、放送業界企業のM&A成約実績の有無、自社と同規模のM&A成約実績の有無、特定の地域でのM&Aに強みがあるか、あるいは全国対応しているかなどです。M&Aの専門家のほとんどが無料相談を受け付けています。それを活用し、自社に適した専門家を選びましょう。
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