2025年12月12日更新
教育業界のM&A動向!会社売却のメリットや成功のポイントや事例5選を解説!
本コラムでは教育業界のM&Aについてまとめました。主な内容として、教育業界の概要・動向、教育業界のM&A動向、教育関連企業や事業を売却・譲渡するメリット、教育業界でM&Aを成功させるための注意点などを解説するとともに、実際の売却・買収事例も紹介しています。
1. 教育業界の概要と動向
教育というと対象は子どもを連想しがちですが、専門学校や大学などは成人が対象であり、社会人対象の研修サービスや各種検定・資格試験サービスなどもあって、教育業界は全年齢層が対象の産業といってもいいでしょう。冒頭では、あらためて教育業界の概要と市場動向を確認します。
教育業界とは
総務省の日本標準産業分類によると、教育業界は大分類で「教育、学習支援業」となっています。そして、中分類として「学校教育」と「その他の教育、学習支援業」に分けられ、それぞれに該当するのは以下のようなものです。
「学校教育」
- 幼稚園
- 小学校
- 中学校
- 高等学校
- 特別支援学校
- 各種学校
- 専修学校
- 高等専門学校
- 短期大学
- 大学
「その他の教育、学習支援業」
- 公民館
- 図書館
- 博物館
- 美術館
- 動物園
- 植物園
- 水族館
- 職業訓練学校
- 学習塾
- 語学学校
- 音楽教室
- 書道教室
- そろばん教室
- 茶道・生け花教室
- スポーツ・健康教授業
- その他
動物園や水族館などが教育事業に分類されているのは、「社会教育」という観点からです。また、各分類からも分かるように、教育業界は民間業者だけでなく公立のものも多く含まれているという特徴があります。
教育業界の市場規模と動向
矢野経済研究所の発表資料「教育産業市場に関する調査を実施(2024年)」によると、教育業界の市場動向(主要15分野の合計)は、以下のように推移しています。
- 2020年度:2兆7,054億1千万円
- 2021年度:2兆8,599億1千万円
- 2022年度:2兆8,536億7千万円
- 2023年度:2兆8,331億7千万円
このように教育業界の市場動向は、近年、ほぼ横ばいといった状況が続いています。その原因は、少子化による人口減少にあるといえるでしょう。今後の教育業界の動向展望としては、幅広い年齢に向けた教育サービス拡充の必要性と教育業界内の競争激化が予想されます。
2. 教育業界のM&A動向
教育業界のM&A動向として、現在、以下のような特徴が顕著です。
- 学習塾が対象のM&Aが多い
- 同業種間でのM&Aが活発
- IT企業を買収するM&Aが増加
学習塾・予備校は教育業界の中で最も市場が大きい業種です。しかし、少子化でパイの増加は見込めないため、市場シェアを拡大するには同業者を買収するしかありません。
また、今後は提供する教育サービスや業務内容をDX化していく必要があり、教育アプリの開発、AIの導入などを行うために、それらの技術を持つIT企業を買収するM&Aが増えてきています。
3. 教育会社をM&Aで売却するメリット
ここでは、教育関連企業や事業を売却するメリットについて確認しましょう。教育関連企業や事業を売却するメリットには以下のようなものがあります。
- 後継者問題の解決
- 従業員・職員の雇用確保
- 売却益の獲得
- 教育レベルの向上・事業の安定
教育業界におけるM&Aでの売却メリットそれぞれについて説明します。
後継者問題の解決
教育業界でM&Aによる売却を行うメリットの1つは、後継者問題の解決です。多くの日本の中小企業の課題の1つに、後継者不在により事業承継ができないということがあります。
後継者がいないまま経営者が引退となれば、会社が廃業となるのは必定です。しかし、M&Aによる売却によって今後の経営は買収側が引継ぐため、会社は廃業を免れ存続できます。
従業員・職員の雇用確保
教育業界においてM&Aでの売却によって廃業を免れれば、従業員・職員の雇用が継続されるというメリットもあります。会社が廃業になった場合、従業員・職員は解雇扱いです。
会社の都合で転職活動をしなければならず、また、すぐに同様の環境・条件の仕事が見つかるかどうか分かりません。しかし、M&Aによる売却で会社が存続すれば、従業員・職員は解雇を免れられます。
売却益の獲得
教育業界でM&Aによる売却を行うことによって、売却側は売却益を獲得できるということもメリットの1つです。M&Aにおける売却額を決める際は、売却側企業の目に見えない価値も評価して条件交渉が行われます。多額の負債や赤字経営といった内情でなければ、売却額は多分の利益が含まれた金額となるでしょう。
以下の動画は、M&Aの売却額に大きく作用する企業価値評価について、簡易的に計算できる年買法という手法を解説したものです。ご参考まで掲示します。
教育レベルの向上・事業の安定
教育業界におけるM&Aでの売却によって、事業が安定するというメリットも得られます。M&A後、売却側は買収側の傘下になり、親会社(買収側)のさまざまな経営資源を共用できるようになるでしょう。
その結果、提供する教育サービスのレベルが向上したり、資金や設備の共用・協業によって事業が安定・拡大したりといった効果が期待できるのです。
4. 教育会社のM&A・買収・売却事例5選
ここでは、実際に行われた教育業界関連のM&Aによる売却・買収事例を紹介します。紹介する事例は以下の5例です。
- サクシードがみんがくを子会社化した事例
- ヒューリックがリソー教育を子会社化した事例
- 早稲田アカデミーが幼児未来教育を子会社化した事例
- ベネッセホールディングスが語学教育のBerlitz Corporationを譲渡した事例
- 京進がダイナミック・ビジネス・カレッジを子会社化した事例
教育業界関連のM&A事例について、それぞれ内容を説明します。なお、表中に記載している売上高は、M&Aが実施された時期の直近年度決算の数値です。
サクシードがみんがくを子会社化した事例
| 事例1 | 売却側 | 買収側 |
|---|---|---|
| 法人名 | みんがく | サクシード |
| 所在地 | 東京都目黒区 | 東京都新宿区 |
| 事業内容 | 「スクールAI」(教育分野特化型の生成 AIプラットフォームの企画・開発・運営 生成AI導入・総合DX推進コンサルティング 教育機関向け生成AI活用研修 |
教育人材支援事業 福祉人材支援事業 個別指導教室事業 家庭教師事業 |
| 売上高 | 2,085万3千円 | 32億2,700万円 |
2025(令和7)年1月、サクシードは、M&Aスキーム(手法)の第三者割当増資と株式譲渡を併用し、みんがくの株式53.2%を取得して子会社化することを発表しました。同月に第三者割当増資に応じて7,810万円を出資し、4月にみんがくの代表者が所有する株式の一部を2,200万円で買収する予定です。
サクシードとしては、今後、教育業界にも生成AIが広く浸透してくることを予期し、そのノウハウや実績を持つみんがくを傘下に迎えることで同業他社に先行する目論見を持ち、今回のM&Aを決定しました。
ヒューリックがリソー教育を子会社化した事例
| 事例2 | 売却側 | 買収側 |
|---|---|---|
| 法人名 | リソー教育 | ヒューリック |
| 所在地 | 東京都豊島区 | 東京都中央区 |
| 事業内容 | 学習塾「TOMAS」の運営 幼児教育事業「伸芽会」 |
不動産の所有・賃貸・ 売買・仲介業務 |
| 売上高 | 322億1,505万2千円(連結) | 4,463億8,300万円(連結) |
ヒューリックは、資本業務提携相手であり20.57%の株式を所有しているリソー教育に対し、2024(令和6)年4~5月にかけてTOB(株式公開買付け)を行い、また、同年5~7月にかけて第三者割当増資に応じ、最終的に51%の株式を取得して子会社化しました。
TOBでの株式買収総額は126億2,300万円、第三者割当増資での出資額は33億9,900万円となっています。ヒューリックとしては、現在、行っている不動産関連事業に続く新たな主力事業とすべく、こども教育事業に参入することが目的のM&Aです。
また、リソー教育の教育施設に好立地物件を紹介するといった、現在の事業とのシナジー効果も図れるとしています。
早稲田アカデミーが幼児未来教育を子会社化した事例
| 事例3 | 売却側 | 買収側 |
|---|---|---|
| 法人名 | 幼児未来教育 | 早稲田アカデミー |
| 所在地 | 東京都渋谷区 | 東京都豊島区 |
| 事業内容 | 幼児教室「ベンチャースクール サン・キッズ」の運営 |
小学生・中学生・高校生を 対象とする進学塾の経営 |
| 売上高 | 1億300万円 | 307億2,800万円(連結) |
2024年1月、早稲田アカデミーは、幼児未来教育の全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は非公表です。早稲田アカデミーとしては、教育事業の中で現在、同社がターゲットとしていない幼児教育に進出すべく今回のM&Aを決定しました。
ベネッセホールディングスが語学教育のBerlitz Corporationを譲渡した事例
| 事例4 | 売却側 | 買収側 |
|---|---|---|
| 法人名 | Berlitz Corporation | Berlitz Holdings, Inc. |
| 所在地 | アメリカ合衆国ニュージャージー州 プリンストン市 |
カナダ国ブリティッシュ コロンビア州バンクーバー市 |
| 事業内容 | 語学教育事業 ELS事業(留学支援事業) |
持株会社 |
| 売上高 | 2億5,300万米ドル | 非公開 |
2022(令和4)年2月、ベネッセホールディングスは、完全子会社であるBerlitz Corporationの全株式をBerlitz Holdings, Inc.に譲渡しました。Berlitz Holdings, Inc.は、教育事業を行うILSC Education Groupを傘下に持つ企業の特別目的会社です。株式譲渡額は非公表となっています。
ベネッセホールディングスとしては、グループ内の事業ポートフォリオを見直し事業の選択と集中を行う決断をしました。そのうえでBerlitz Corporationにとって今後の発展につながる相手として譲渡先を決めています。
なお、今回のM&Aに関連し、ベネッセホールディングスが有するBerlitz Corporationに対する債権約178億円は、放棄すると発表されました。
京進がダイナミック・ビジネス・カレッジを子会社化した事例
| 事例5 | 売却側 | 買収側 |
|---|---|---|
| 法人名 | ダイナミック・ビジネス・カレッジ | 京進 |
| 所在地 | 東京都荒川区 | 京都府京都市 |
| 事業内容 | 日本語学校の運営 | 学習塾サービス 語学学習サービス ライフキャリアサービス 育児・暮らしサービス |
| 売上高 | 3億6,100万円 | 135億1,300万円(連結) |
2019(平成31)年1月、京進は、ダイナミック・ビジネス・カレッジの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は10億5,100万円です。京進としては、ダイナミック・ビジネス・カレッジとの間で相互にリソースとノウハウを共有することにより、シナジー効果を得たうえで事業拡大が図れると判断しM&Aを実施しました。
5. 教育会社のM&Aにおける成功のポイント
ここでは、教育業界関連企業や事業のM&Aを成功させるためのポイントや注意点を確認しましょう。教育業界関連企業や事業のM&Aを成功させるためには、以下のような注意点があります。
- M&Aの専門家に相談をする
- 目的の明確化
- シナジー効果が見込まれる相手先の選定
- 最適なタイミングを逃さない
- 情報漏えいに気をつける
教育業界でのM&Aを成功させるための各注意点について説明します。
M&Aの専門家に相談をする
教育業界でのM&Aを成功させるための注意点として、M&Aの専門家に相談することが肝要です。M&Aを進めるにあたっては、知識・経験ともに専門性が欠かせません。当事者だけでM&Aを進めるのは現実的といえず、失敗してしまう可能性も増すでしょう。
各M&Aの専門家が行っている無料相談を活用し、早期に業務委託する専門家を決めるのが得策です。
以下の動画は、M&Aアドバイザーの見極め方について解説したものです。ご参考まで掲示します。
M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください
教育業界関連のM&Aを相談するための専門家をお探しであれば、ぜひM&A総合研究所にご連絡ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが、専任となって案件を徹底サポートいたします。
また、M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみであり、譲受企業様は中間金が発生します)。随時、無料相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
目的の明確化
教育業界でのM&Aを成功させる注意点には「目的の明確化」もあります。当初からM&Aの目的がきちんと定まっていないと、M&Aの戦略も曖昧となり、交渉相手探しも難航するでしょう。また、M&Aの目的が複数あるケースもあります。そのような場合には、それぞれの目的に優先度を付けておくことも必要です。
シナジー効果が見込まれる相手先の選定
教育業界でのM&Aを成功させる注意点には「シナジー効果が想定できる相手を選ぶ」ことも重要です。ほとんどのM&Aでは、業績拡大を目的としています。
そのためには、単なる事業規模拡大に終わらず、売却側も買収側もこれまでより業績が伸びなければなりません。その業績拡大効果を得る方法がシナジー効果の発現であり、相手の見極めのポイントです。
最適なタイミングを逃さない
教育業界でのM&Aを成功させる注意点の1つは、「最適なタイミングでM&Aを実施する」ことです。M&Aは、タイミングが合わなければ交渉相手すら見つからないこともあります。では、どのようなタイミングが良いかというと、「自社の業績が良いとき」「業界再編が始まったとき」「社会全体の景気が良いとき」などが一例です。
情報漏えいに気をつける
教育業界でM&Aを成功させる注意点として、情報漏えいだけはしないようにしましょう。交渉相手の社内情報やM&A交渉を行っていることなどが、M&A交渉の過程で外部に漏れた場合、相手からの信用は失墜します。おそらくM&Aは破談です。
また、通常、M&A交渉時には秘密保持契約を締結するものであり、それに則り損害賠償請求も受けてしまうでしょう。
以下の動画は、情報漏えいの注意点を解説したものです。ご参考まで掲示します。
6. 教育業界のM&A・事業譲渡まとめ
教育業界でのM&Aの成功確度を上げるには、仲介業務を委託するM&Aの専門家選びがキーポイントです。M&Aの専門家の選び方として、教育業界の企業のM&A成約実績があるかどうか、自社と同規模のM&A成約実績があるかどうか、特定の地域に強みがあるかどうか、あるいは全国対応しているかどうかなどがあります。
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