非鉄金属業界のM&A動向!会社売却のメリットや成功のポイントや事例5選を解説!

取締役副社長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

本コラムは非鉄金属業界のM&Aについてまとめたものです。主な内容は、非鉄金属業界の概要・市場動向・M&A動向、非鉄金属会社を譲渡する際のメリット、非鉄金属会社のM&Aを成功させるための注意点などを解説し、加えて実際の売却・買収事例も紹介しています。

目次

  1. 非鉄金属業界の動向
  2. 非鉄金属業界のM&A動向
  3. 非鉄金属会社をM&Aで売却するメリット
  4. 非鉄金属業界のM&Aによる売却・買収事例5選
  5. 非鉄金属会社のM&Aを成功させるためのポイント・注意点
  6. 非鉄金属業界のM&Aまとめ
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1. 非鉄金属業界の動向

ひと言で非鉄金属といっても、鉄以外の金属は実に多くの種類があるものです。それらの非鉄金属は、大別して以下のような3種類に分けられます。

  • ベースメタル:亜鉛、アルミニウム、銅、鉛など
  • 貴金属:金、銀、プラチナ(白金)、パラジウムなど
  • レアメタル:コバルト、チタン、ニッケル、リチウムなど

非鉄金属業界とは、これらの金属を扱う業種の総称です。
 

非鉄金属業界とは

非鉄金属業界の業種は、大別して以下の3種類に分かれます。

  • 非鉄金属の採掘(資源開発)
  • 非鉄金属の製錬・精錬
  • 非鉄金属の加工およびリサイクル

非鉄金属の加工品の多くは電材(電気設備資材)になります。非鉄金属の加工品は、建設、電気関連工事、電子機器、自動車、エネルギーなど幅広い分野で需要のあることが特徴です。

非鉄金属業界の市場動向

2025(令和7)年6月現在で公表されている総務省・経済産業省の発表資料によれば、2020(令和2)年の非鉄金属製造業の市場動向(製造品出荷額)は9兆4,237億円でした(全産業の3.1%)。

過去には増加傾向が続いていた非鉄金属業界の市場動向でしたが、前年の9兆6,142億円から約2%減少しており、これはコロナ禍の影響による動向と考えられています。

参照元:総務省・経済産業省
参照元:総務省・経済産業省

2. 非鉄金属業界のM&A動向

非鉄金属業界では、非鉄金属のリサイクル技術を持つ企業とのM&A動向が目立ちます。非鉄金属は調達方法が限られており、非鉄金属の調達を側面的に補う方策として非鉄金属のリサイクルに注目が集まりました。都市部における電子機器や電子部品の廃棄物には、多くの非鉄金属が搭載されていて「都市鉱山」ともいわれています。

3. 非鉄金属会社をM&Aで売却するメリット

非鉄金属会社をM&Aで売却・譲渡すると以下のようなメリットが得られます。

  • 事業承継問題の解決
  • 従業員の雇用継続
  • 対価の獲得
  • 債務からの解放
  • 経営の安定化
  • 経営の拡張

非鉄金属会社のM&Aにおける売却・譲渡メリットについて、それぞれの内容を説明します。

事業承継問題の解決

非鉄金属会社をM&Aで売却・譲渡するメリットの1つは、事業承継問題の解決です。社内や親族に後継者がいない非鉄金属会社であっても、M&Aによる売却・譲渡をすることで買収側に経営が引継がれます。これにより会社は存続し、廃業を免れるのです。これをM&Aによる事業承継といいます。

従業員の雇用継続

後継者不在や経営不振にある非鉄金属会社の場合、M&Aによる売却・譲渡を行うことで従業員の雇用を守れるというメリットがあります。M&Aによって経営が買収側に引継がれて会社が存続するということは、従業員の雇用契約もそのまま維持されるということです。会社の廃業による解雇から従業員を守れます。

対価の獲得

非鉄金属会社のM&Aでは、売却・譲渡側は対価を獲得できることがメリットです。このときの注意点としては、株式譲渡や合併などのM&Aスキーム(手法)であれば、経営者(株主)が対価を獲得します。

一方、事業譲渡や会社分割などのM&Aスキームの場合、対価を獲得するのは会社です。対価の活用方法次第でM&Aスキームを使い分ける必要があります。

以下の動画は、株式譲渡と事業譲渡を比較して解説したものです。ご参考まで掲示します。

債務からの解放

非鉄金属会社のM&Aによる売却・譲渡では、債務からの解放ということもメリットです。M&Aの実施によって、基本的に債務は買収側に引継がれます。ただし、M&Aスキームが事業譲渡の場合、譲渡内容の選別ができるため、買収側が債務を引継がないケースも多くあり、注意が必要です。

経営の安定化

非鉄金属会社のM&Aによる売却・譲渡後、経営の安定化を図れるというメリットがあります。一般にM&Aの買収側は、会社の規模が売却・譲渡側よりも大きく、財務面も安定しているものです。M&A後は、その買収側から財務面のサポートを得られるようになります。資金繰りが落ち着くことで経営の安定化が図れるでしょう。

経営の拡張

非鉄金属会社のM&Aでは、売却・譲渡後、経営が安定するだけでなく事業や経営の拡張を図れることもメリットです。M&A後は、親会社やグループ会社が持つさまざま経営資源を共用できるようになります。また、同一事業や関連事業を行っているグループ会社があれば、協業体制も取れるため業績の拡大に結びつけられるでしょう。

4. 非鉄金属業界のM&Aによる売却・買収事例5選

非鉄金属業界におけるM&Aの実態を確認するために、実際の売却・買収事例を紹介します。紹介するM&Aは以下の5事例です。

  • ASNFホールディングス合同会社によるヨータイへのTOB事例
  • 松田産業による山陽レックとフラップリソースの買収事例
  • 新英金属によるRカンパニーの買収事例
  • コンドーテックによる栗山アルミの買収事例
  • 堤伸銅軽金による神鋼商事メタルズへの事業譲渡事例

非鉄金属業界のM&A事例についてそれぞれの内容を説明します。なお、表中に記載する売上高は、M&Aが実施された時期の直近年度決算の数値です。

ASNFホールディングス合同会社によるヨータイへのTOB事例

事例1 売却側 買収側
法人名 ヨータイ ASNFホールディングス合同会社
所在地 大阪府貝塚市 東京都千代田区
事業内容 耐火物・ニューセラミックスの製造・
販売および関連エンジニアリング事業
他の会社の株式または持分の取得・保有、
前号に附帯関連する一切の事業
売上高 291億2,800万円(連結) 非公開
※ヨータイの売上高は2024年3月期決算

2025年5月、ASNFホールディングス合同会社は、ヨータイへTOB(Take Over Bid=株式公開買付け)を実施し、6,531,400株(全体の35.44%に相当)を取得しました。取得に要した金額は、118億2,183万4千円です。

ASNFホールディングス合同会社は麻生の完全子会社であり、このM&Aは事実上、麻生によるヨータイの関係会社化といえます。福岡県飯塚市の麻生は、人材・教育事業、建築土木事業、商社・流通事業、医療関連事業、セメント事業、情報・ソフト事業、各種スポーツ施設の運営・不動産賃貸事業などを行う企業です。

参照元:株式会社ヨータイ、ASNFホールディングス合同会社
参照元:株式会社ヨータイ

松田産業による山陽レックとフラップリソースの買収事例

事例2 売却側 売却側 買収側
法人名 山陽レック フラップリソース 松田産業
所在地 広島県広島市 広島県広島市 東京都新宿区
事業内容 産業廃棄物の処理
・収集・運搬など
非鉄金属回収・卸売 食品関連事業、
貴金属関連事業
売上高 16億2,300万円 1億300万円 3,605億2,700万円(連結)

2025年2月、松田産業は、山陽レックとフラップリソースそれぞれの全株式を買収し両社を完全子会社化しました。買収額は非公表です。なお、山陽レックとフラップリソースの前経営者は同一人物でした。

松田産業としては、同社が行う貴金属関連事業において山陽レックとフラップリソースの事業はシナジー効果が見込めると踏んでM&Aを実施しています。

参照元:松田産業株式会社

新英金属によるRカンパニーの買収事例

事例3 売却側 買収側
法人名 Rカンパニー 新英金属
所在地 埼玉県さいたま市 愛知県安城市
事業内容 鉄・非鉄金属の買取・販売、
産業廃棄物収集運搬・中間処理
金属スクラップ(鉄・非鉄金属)の購入
・加工・販売、産業廃棄物の再生処理
売上高 非公開 非公開

2024(令和6)年12月、新英金属は、Rカンパニーの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は非公表です。新英金属としては、関東エリアへの進出と新たな加工拠点の獲得を目的としてM&Aを実施しました。

参照元:新英ホールディングス株式会社

コンドーテックによる栗山アルミの買収事例

事例4 売却側 買収側
法人名 栗山アルミ コンドーテック
所在地 愛知県名古屋市 大阪府大阪市
事業内容 非鉄金属の押出、アルミ押出型材の製造開発、
型材・板材・ステンレスなどの加工、
アルミニュームの表面処理加工
産業・鉄構資材の製造・仕入・販売、
電設資材の仕入・販売、足場架払工事、
仮設足場機材の仕入・販売・レンタル
売上高 13億8,200万円 595億6,200万円(連結)

2021(令和3)年10月、コンドーテックは、栗山アルミの株式75.7%(議決権比率)を買収し子会社化しました。買収額は非公表です。コンドーテックとしては、企業グループ内において事業化されていない、非鉄金属であるアルミ商材を取り込むため、このM&Aを決めています。

参照元:コンドーテック株式会社

堤伸銅軽金による神鋼商事メタルズへの事業譲渡事例

事例5 売却側 買収側
法人名 堤伸銅軽金 神鋼商事メタルズ
所在地 東京都目黒区 東京都目黒区
事業内容 非鉄金属製品の卸売事業、
ブラインド関連製品の
販売・内装工事
非鉄金属材料の
素材と加工品の販売
売上高 非公開 非公開

2020年4月、神鋼商事メタルズは、堤伸銅軽金からの非鉄金属製品卸売事業を譲渡されました。譲渡額は非公表です。神鋼商事メタルズとしては、非鉄金属事業強化の一環としてこのM&Aを実施しています。

参照元:神鋼商事株式会社

5. 非鉄金属会社のM&Aを成功させるためのポイント・注意点

非鉄金属会社のM&Aを成功させるためには、以下のような注意点を把握しておく必要があります。

  • M&Aの専門家に相談をする
  • M&Aの目的を見失わない
  • 情報漏えいしない
  • 事業譲渡の注意点
  • 的確な企業価値評価を行う
  • 慎重にPMI計画を策定し実行する

各注意点の内容を説明します。

M&Aの専門家に相談をする

まず、M&Aの注意点として挙げられるのは「早期からM&Aの専門家に相談する」ことです。M&Aの検討段階から専門家に相談することで、的確なM&A戦略を策定し円滑にM&Aを進められるようになるでしょう。また、M&Aの交渉相手探しは自社だけでは到底、不可能であり、専門家の存在は大いに役立ちます。

以下の動画は、M&Aアドバイザーの見極め方における注意点を解説したものです。ご参考として掲示します。

M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください

非鉄金属業界関連のM&Aを相談するための専門家をお探しであれば、ぜひM&A総合研究所にご連絡ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが、専任となって案件を徹底サポートいたします。

また、M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみであり、譲受企業様は中間金が発生します)。随時、無料相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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M&Aの目的を見失わない

M&Aの交渉相手がなかなか見つからないときや、交渉が長引いてしまっているときなどの注意点は「当初のM&Aの目的を忘れない」ことです。

思っていたようにM&Aのプロセスが進まないと、妥協して交渉相手を決めたり、交渉条件を妥協したりしてしまうことがあります。そのような際にはM&Aの目的を見失わず、不要な妥協はしないことです。

情報漏えいしない

M&Aにおける重要な注意点として「情報漏えいしない」ことが挙げられます。この場合の「情報」とは以下の2つです。

  • M&A交渉で知り得た相手方の経営情報
  • M&A交渉を行っている事実

M&A交渉開始時には必ず秘密保持契約が結ばれます。情報漏えいは、これに違反することになりM&A交渉の破談、損害賠償請求など被害は甚大です。

以下の動画は、情報漏えいの注意点を解説したものであり、ご参考まで掲示します。

事業譲渡の注意点

M&Aスキーム(手法)の事業譲渡とは、売却・譲渡側における会社の経営権はそのままに、事業に関する資産その他を売却・買収することで買収側は事業の運営権を取得できます。売却・買収の対象を個別に協議して決められることが特徴です。この事業譲渡には3つの注意点があります。

競業避止義務

事業譲渡を行った売却・譲渡側の注意点の1つは「競業避止義務」です。これは会社法の定めで、以下のような義務を負います。

  • 売却・譲渡した事業と同一の事業を、買収側の所在する区市町村および隣接区市町村において20年間、行えない

ただし、買収側の同意さえあれば期間短縮、義務の免除も認められています。

債務は引継がれないケースが多い

事業譲渡における売却・譲渡側のもう1つの注意点は、債務が手元に残ってしまう可能性が大きいことです。事業譲渡は、売却・買収対象を個別に協議して決められる特徴があるため、買収側は債務の引継ぎを嫌いM&Aの対象から外すよう求めることが多いでしょう。

株式譲渡や合併などの他のM&Aスキームであれば債務から解放されますが、事業譲渡ではそうならない可能性があります。

人材流出

事業譲渡には、他のM&Aスキームと比べて人材流出が起きやすいという注意点もあります。事業譲渡の対象事業に従事する社員に対し、買収側への転籍を強要できません。

1人ずつ個別に転籍の同意を得て、新たに買収側との間で雇用契約を結んでもらう必要があります。その際、説得が不首尾に終わると社員が反発して退職してしまう恐れがあるのです。

的確な企業価値評価を行う

非鉄金属会社のM&Aにおける注意点には「企業価値評価(バリュエーション)」もあります。M&A交渉を始める前に必ず行われるのが売却側に対する企業価値評価です。

売却側・買収側は、それぞれが行った企業価値評価結果を基にして、交渉条件を決めます。したがって、適切に企業価値評価を行わないと交渉条件が最初からかけ離れたものになってしまうのです。

以下の動画は、企業価値評価方法の1つ「コストアプローチ」を解説したものです。ご参考まで掲示します。



以下の動画は、企業価値評価方法の1つ「マーケットアプローチ」を解説したものです。ご参考まで掲示します。

慎重にPMI計画を策定し実行する

非鉄金属会社のM&Aにおける買収側の注意点は「PMI(Post Merger Integration=経営統合プロセス)」です。PMIに失敗するとM&Aの目的達成は難しいでしょう。したがって、まずは入念にPMI計画を策定し、M&Aが実行されたら、PMI計画を遅滞や漏れがないよう着実に進めなければなりません。

以下の動画は、M&Aで用いられる用語50選を解説したものです。ご参考まで掲示します。

6. 非鉄金属業界のM&Aまとめ

非鉄金属業界におけるM&A成功確度を高めるうえで肝要なのが、業務委託する専門家選びです。

専門家選びの際の具体的な確認内容としては、非鉄金属会社のM&A支援実績および自社と同規模のM&A支援実績があること、特定の地域に強みがある、あるいは全国対応や海外対応していることなどがあります。選定の際には、各専門家が実施している無料相談を活用するとよいでしょう。

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