2022年06月06日更新
居酒屋のM&Aのメリットは?こんな時代だからこそ前向きな検討を
新型コロナの影響を強く受けている居酒屋業界では、M&Aを積極的に活用することの重要性が高まっています。本記事では、居酒屋のM&Aにはどのようなメリットがあるか、検討のポイントは何かなどを解説し、実際に行われた居酒屋のM&A事例を紹介します。
目次
1. 居酒屋のM&A
2020年からの新型コロナの影響もあり、居酒屋業界は苦しい経営を強いられることが多くなっています。
そのような状況下、M&Aを活用して生き残りを図る居酒屋も増えており、今後のM&A動向が注目されます。まずは、居酒屋業界の現状やM&A動向についてみていきます。
居酒屋業界の現状
居酒屋業界の現状は、市場の縮小傾向や慢性的な人材不足、大手による競争の激化などが課題となっています。
また、個性を打ち出す個人店と、安定したメニューを提供するチェーン店の住み分けも特徴となっています。
【居酒屋業界の現状】
- 市場は縮小傾向にある
- 人材不足を抱えている
- 個人店とチェーン店の特徴がある
- 大手により競争が激化
市場は縮小傾向にある
居酒屋業界および外食産業の市場は、バブルの頃を頂点としてその後は縮小傾向にあります。不況による消費の低迷に加えて、最近はお酒を飲まない若者が増えているのも要因といわれています。
さらに、2020年は新型コロナの影響で大きく売り上げが減少しており、外食産業全体で前年比約16%減となっています。
逆にテイクアウトとデリバリーは売り上げが増加しているので、居酒屋業界も宅配に活路を見出すことが重要になるでしょう。
人材不足を抱えている
居酒屋業界は慢性的な人材不足が深刻な問題となっています。帝国データバンクの調査によると、人材不足の飲食店は全体の約84%もあるというデータが出ており、人材不足が原因で廃業する居酒屋もあります。
また、低い賃金と過酷な労働環境も、居酒屋業界が人材不足になる大きな要因となっています。
個人店とチェーン店の特徴がある
居酒屋には個人経営の店とチェーン店があり、個人店はどちらかというと個性が強く、チェーン店は安定した品揃えや低価格などを売りにしています。
ただし、最近はチェーン店も個性を打ち出すことを重視してきており、バラエティ豊かな居酒屋がしのぎを削っています。
居酒屋で働く側の視点で見ると、個人店は業務全体を任されることが多く、チェーン店はキッチン・ホールなど業務別に仕事が分かれており、業務全体に関わることは少ないという特徴があります。
大手により競争が激化
居酒屋業界は大手チェーンによるシェア争いが激しく、チェーン店同士のM&Aも活発に行われています。
特に、大手同士の低価格競争は居酒屋業界全体の利益を圧迫する要因となっており、今後は価格の安さ以外に独自の価値を持った居酒屋を展開することが重要になるでしょう。
また、2020年は新型コロナの影響で倒産する居酒屋や店舗数を縮小するチェーン店が増えており、生き残りのための競争がさらに激化していくと予想されます。
居酒屋のM&Aはさまざまな課題を解決する手段
ここまで見てきたように、居酒屋業界の現状はさまざま課題を抱えており、これをいかに解決していくかが重要となっています。
サービスや商品の充実により企業価値を高めるのはもちろんですが、M&Aをうまく活用するのも大切な要素となります。
居酒屋のM&Aには、買い手側なら手早い店舗拡大、売り手側なら経営基盤の獲得など、さまざまなメリットがあります。
居酒屋のM&A動向
居酒屋のM&A動向は、大手や中堅チェーンによるシェア争い、経営統合によるM&Aに加えて、マッチングサイトなどを利用した小規模な居酒屋のM&Aも活発に行われています。
マッチングサイトとは、M&Aを行いたい買い手と売り手がネット上でやりとりし、M&Aを成約できるサービスのことです。
新型コロナの影響で廃業・倒産する居酒屋も増えていますが、そうなる前にM&Aで売却する事例も今後増えてくると予想されます。
2. 居酒屋のM&Aのメリットとは?
居酒屋M&Aを成功させるには、そのメリットを正しく理解しておく必要があります。また、メリットだけでなくデメリットも考慮することが大切です。ここでは、居酒屋M&Aのメリット・デメリットをみていきます。
居酒屋のM&Aのメリット
居酒屋M&Aの主なメリットは、経営基盤の獲得、売却益の獲得を始め、心理的負担から解放されることもメリットになることがあります。
【居酒屋のM&Aのメリット】
- 経営の心理的負担から開放される
- 新事業などを始めることができる
- 売却益を獲得できる
- 大手グループ入りで事業拡大や経営の安定が目指せる
- 事業に資本を投入できる
1.経営の心理的負担から開放される
M&Aの見過ごされがちなメリットとして重要なのが、経営の心理的負担から解放されることです。
居酒屋経営は時間的にも精神的にも負担が大きく、経営者の気力や情熱がなくなってしまうケースもあります。こういった経営者が負担から解放されるために、M&Aで居酒屋を売却することがあります。
心理的な理由で経営不振でない居酒屋を売却すると、買い手からお買い得案件とみなされることが多く、高い値段がつく可能性もあります。
2.新事業などを始めることができる
居酒屋経営をやめて他事業を始めたい場合は、居酒屋の存在が負担になることがあります。そのようなケースではM&Aで居酒屋を売却し、その売却益で新事業を始めると効率がよくなります。
3.売却益を獲得できる
売却益を獲得できるのは、居酒屋をM&Aで売却する大きなメリットの一つです。個人経営の居酒屋なら売却益は経営者個人に入るので、引退後の生活資金などに充てることもできます。
ただし、個人経営の小さな居酒屋の売却益はせいぜい数百万円程度にしかならないことも多く、希望するお金が得られるとは限りません。
4.大手グループ入りで事業拡大や経営の安定が目指せる
M&Aで大手に買収されることに対してマイナスイメージを持つ人もいますが、売り手としては大手の経営基盤を活用できるというメリットもあります。
例えば、地方で居酒屋を数店舗経営してそこから伸び悩んでいる中堅企業が、M&Aで大手の傘下に入って事業拡大するといった事例はよくみられます。
5.事業に資本を投入できる
M&Aで居酒屋を買収すれば、その事業に資本を効率的に投入できます。一から新規事業に参入すると設備投資など大きなコストがかかりますが、既存の居酒屋を買収することで設備投資も節約でき、資本効率を高めることができます。
居酒屋のM&Aのデメリットはある?
居酒屋M&Aのデメリットとしては、売り手側の場合、希望する金額で売却できなかったり、買い手側の傘下に入ることで自由な経営ができなくなることなどが挙げられます。
買い手のデメリットとしては、買収金額に見合う成果が得られるとは限らないことや、経営方針の変化による従業員や顧客離れなどがあります。
3. 居酒屋M&Aの事例
この章では、実際に行われた居酒屋のM&A事例から、比較的最近行われた大手M&Aの事例を5つ紹介します。
【居酒屋M&Aの事例】
- ダイナックホールディングスによるレストランサントリーUSAのM&A
- クリエイト・レストランツ・ホールディングスによるいっちょうのM&A
- 梅の花によるテラケンのM&A
- SFPホールディングスによるジョー・スマイルのM&A
- ジー・テイストによる湯佐和のM&A
①ダイナックホールディングスによるレストランサントリーUSAのM&A
2019年12月に、株式会社ダイナックホールディングスが、レストランサントリーUSAの株式を取得し子会社化すると発表しました。
ダイナックホールディングスは海鮮酒場「魚盛」などを展開する居酒屋チェーンで、レストランサントリーUSAはハワイなどで居酒屋を展開している会社です。
海外展開も視野に入れた、経営基盤の獲得や収益アップが本M&Aの目的となっています。しかし、本M&Aは新型コロナの影響などにより延期が発表されています。
②クリエイト・レストランツ・ホールディングスによるいっちょうのM&A
2019年10月に、株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングスが、株式会社いっちょうの全株式を取得し完全子会社化しました。
クリエイト・レストランツ・ホールディングスはさまざまな居酒屋・飲食店チェーンをまとめる持株会社で、いっちょうは和食レストラン「いっちょう」や焼肉「萬家」などを展開する会社です。
互いのノウハウの活用によるシナジー効果の獲得などが、本M&Aの目的となっています。
③梅の花によるテラケンのM&A
2019年3月に、株式会社梅の花が株式会社テラケンの株式の58%を取得して子会社化しました。
梅の花は湯葉と豆腐の店「梅の花」などを展開する会社で、テラケンは居酒屋「さくら水産」などを展開する会社です。
シナジー効果による経営基盤の拡大が本M&Aの目的となっています。
④SFPホールディングスによるジョー・スマイルのM&A
2019年3月に、SFPホールディングス株式会社が株式会社ジョー・スマイルの全株式を取得し、完全子会社化しました。
SFPホールディングスは「磯丸水産」などの居酒屋チェーンを展開する会社で、ジョー・スマイルは九州で居酒屋やレストランを展開している会社です。
SFPホールディングスは、地方の居酒屋チェーンと積極的にM&Aを行う「SFPフードアライアンス構想」を進めており、本M&Aもその一環となります。
⑤ジー・テイストによる湯佐和のM&A
2018年10月に、株式会社ジー・テイストが株式会社湯佐和の全株式を取得し、完全子会社化しました。
ジー・テイストは「平禄寿司」「焼肉屋さかい」などを運営する飲食チェーンで、湯佐和は神奈川県で海鮮居酒屋などを運営する会社です。
湯佐和が持つ漁港での買参権などを活用し、シナジー効果を得ることが本M&Aの目的となっています。
4. 新型コロナの影響から居酒屋はM&Aを前向きに検討すべき?
2020年は新型コロナの影響で居酒屋は大きな打撃を受け、その影響は2021年まで続いています。この章では、新型コロナの影響から、居酒屋はM&Aを前向きに検討すべきかどうかを考察します。
売り手側のポイント
居酒屋を売る側としては、債務超過に陥る前に早めにM&Aを決断することや、独自の強みを効果的に買い手にアピールすることなどが重要になります。
債務超過が少なく独自の強みがある居酒屋なら、先行き不透明なコロナ禍においても買い手が興味を示しやすくなります。
買い手側のポイント
買い手としては、2021年以降はポストコロナを見据えたM&Aがポイントとなると考えられます。
コロナ収束後に大きな業績アップが期待できるかといった、長期的な目線で売り手を選ぶことが重要になります。
5. 居酒屋のM&Aを検討するポイント
M&Aはそもそも売買相手が見つかる保証がなく、もし見つかっても納得できる条件で売買できるとは限りません。
居酒屋のM&Aを検討する際は、成功のためのポイントを押さえたうえで、事前にしっかり準備して臨む必要があります。ここでは、特に意識すべき4つのポイントについて解説します。
【居酒屋のM&Aを検討するポイント】
- 早めに準備し、タイミングを逃さない
- PR・アピールポイントをまとめておく
- 譲れない条件を決める
- M&Aの専門家に相談する
1.早めに準備し、タイミングを逃さない
M&Aはできるだけ早めに準備して、最も良いタイミングで売却することが成功のポイントとなります。数年前から準備して磨き上げを行い、企業価値が最も高い時点で売却できればベストです。
2.PR・アピールポイントをまとめておく
居酒屋はそれぞれが独自のメニューやサービスを持っているはずなので、これらの強みを買い手に効果的にアピールすれば買い手がつきやすくなります。
アピールポイントをまとめて明確にしておくと、どのような買い手をターゲットにして売り込むべきかという戦略も見えやすくなります。
3.譲れない条件を決める
M&Aは全ての条件で満足できることはまれなので、譲れない条件を決めておくことが重要になります。
譲れない条件がどれになるかは、M&Aを行う目的によって変わってきます。売却益の獲得が目的なら売却額を高くすることが重要になり、従業員の雇用を守る目的なら雇用条件が優先になるでしょう。
4.M&Aの専門家に相談する
M&Aは専門的な知識と経験が必要であるとともに、買い手・売り手候補を探すネットワークも必要です。
居酒屋のM&Aを行う際は、M&A仲介会社などの専門家に相談すると希望に合ったM&Aが成功できる確率を高めることが可能になります。
6. 居酒屋のM&Aを検討する際におすすめの相談先
居酒屋のM&Aをお考えの方は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は中堅・中小企業のM&Aを手がける仲介会社ですので、個人経営の居酒屋や中堅規模のチェーン店のM&Aもお任せいただけます。
さまざまな業種で50件以上のM&A実績があるアドバイザーが、親身になってクロージングまでフルサポートいたします。
むやみにM&Aを勧めるのではなく、本当の譲渡可能性はどれくらいか、そもそもM&Aすべきかなど、経営者様の視点に立ったアドバイスを行っています。
料金は完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ)となっており、着手金は譲渡・譲受企業様とも完全無料ですのでコストを抑えてM&Aを行いたいとお考えの場合も安心してご相談いただけます。
無料相談は随時受け付けておりますので、居酒屋のM&Aをお考えの経営者様はお気軽にお問い合わせください。
7. まとめ
コロナで打撃を受けている居酒屋業界が生き残るには、M&Aという選択肢も積極的に活用していくことが大切です。
M&Aのメリットや成功のポイントを押さえて、満足できるM&Aを実現できるように準備しましょう。
【居酒屋業界の現状】
- 市場は縮小傾向にある
- 人材不足を抱えている
- 個人店とチェーン店の特徴がある
- 大手により競争が激化
【居酒屋のM&Aのメリット】
- 経営の心理的負担から開放される
- 新事業などを始めることができる
- 売却益を獲得できる
- 大手グループ入りで事業拡大や経営の安定が目指せる
- 事業に資本を投入できる
【居酒屋のM&Aを検討するポイント】
- 早めに準備し、タイミングを逃さない
- PR・アピールポイントをまとめておく
- 譲れない条件を決める
- M&Aの専門家に相談する
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