2025年12月03日公開
MBIとは?MBOとの違いや実施の目的と具体的な状況も解説!
有望なリソースを持ちながら経営成績が振るわない企業に対するM&A手法の1つがMBIです。本コラムではMBIの概要として、MBIを行う目的や実施される状況、MBIの実施で得られるメリットなどを解説するとともに、MBIと表記が似ているMBOとの違いも説明します。
1. MBIとは
MBIとは「Management Buy In」の頭文字の略称です。具体的には、ファンドや金融機関、投資家などがM&Aの買収側となって対象企業の経営権を取得した後に、経営陣を刷新して経営成績向上を図ろうとする買収手法という意味合いになります。
刷新する経営陣として買収側から人を出すこともありますが、どちらかというと、外部から経営のスペシャリストを招聘するケースが多いです。また、MBIは、有望なリソースを持ちながら経営成績の振るわない企業を対象として行われます。
その理由は、経営陣さえ代われば、大幅な経営成績向上が見込まれるからです。対象企業の経営成績が上がって企業価値向上が実現した後、当初の買収側は取得していた株式を売却し、そこで売却益(キャピタルゲイン)を得ます。買収側の最終目標は、この売却益なのです。
2. MBIの目的
ここでは、MBIの目的について具体的に掘り下げて考えてみましょう。MBIの目的としてポイントとなるのは以下の2点です。
- 経営陣刷新による経営立て直し
- 会社存続
これら2点のMBIの目的における具体的な意味合いを説明します。
経営陣刷新による経営立て直し
買収側にとってのMBIの直接的な目的は、買収対象企業の経営陣を刷新し低迷している経営状態を良化することにあります。前述したとおり、買収側の最終目標はキャピタルゲインの獲得です。
ただし、取得した買収先の株式を買収時よりも高く売却するためには、買収対象企業の企業価値が以前よりも向上している必要があります。また、現在は経営成績が振るっていなくても、経営陣が代われば経営成績の良化が見込めるようなリソースを持っている企業を選ぶことも肝要です。
そのような企業であれば新たに経営陣となった経営のスペシャリストによって、不採算事業の売却、主力事業へのリソース集中などといったような施策が実施され、業績が回復・上昇するでしょう。
会社存続
M&Aの売却側の観点に立った場合のMBIの目的として「会社存続」があります。現在の経営状況が振るわず、それがこのまま続けば倒産や破産の可能性があるような企業もいるでしょう。
ただし、会社には技術力、知的財産、ブランド力、有能な人材などのうち、いずれかが備わっていて、経営戦略に長けた人物が経営の指揮を執れば業績が回復する望みがあります。そのようなケースにおいて、オーナー経営者が自社株式をMBIが行えるように売却し、買収側に以後の経営を託すのです。
また、経営成績に関係なく売却側で後継者が不在のケースでも、買収側のMBI施策により新たな経営者(後継者)を確保することもあります。
3. MBIとMBOの違い
MBIと表記が類似しているM&A用語にMBOがあります。MBOとは「Management Buy Out」の略称であり、その意味は「経営陣による自社株式あるいは事業の買収」です。自社株式を買収する場合は過半数の株式を取得して経営権を獲得し、事業を買収する場合は該当事業部門を取得して独立します。
MBIとMBOの違いは、端的には以下の2点です。
- 実施者の違い
- 目的の違い
MBIとMBOの違いを上記2点にフォーカスして説明します。
実施者の違い
MBIとMBOでは、以下のように買収の実施者が違います。
- MBIの実施者:外部(ファンド、金融機関、投資家など)
- MBOの実施者:内部(自社の経営陣)
以上のように、MBIとMBOの実施者の違いは一目瞭然です。買収実施者が違うということは、M&A後に経営権を取得する者の立場も違うことを意味します。
目的の違い
MBIとMBOでは、以下のように実施目的も違います。
- MBIの目的:経営陣を刷新して業績不振から脱却させ企業価値向上後に株式を売却してキャピタルゲイン(売却益)を得る
- MBOの目的:経営陣による会社の独立化
MBIでは、買収側は最終的に株式を手放し株主ではなくなります。MBOは、基本的に全株式を取得して社外の株主を排除し、スピーディーな経営体制を目指すものです。当面、取得した株式を手放しはしません。
4. MBIが行われる状況
ここでは、MBIが行われる状況について確認しましょう。MBIが実施される状況を大別すると、以下の3つの状況に分けられます。
- 現経営陣の経営手腕が低い
- 赤字事業がある
- 後継者がいない
MBIが行われるそれぞれの状況について説明します。
現経営陣の経営手腕が低い
MBIが行われやすい状況の1つとして、現経営陣の経営手腕が明らかに低いケースがあります。
技術力、知的財産、ブランド力、有能な人材などのリソースのどれか、あるいは複数がそろっていながら、営業やマーケティングを取り仕切る力が経営陣にないと、業績は向上しません。経営陣が開発部門出身者ばかりだと陥りやすい状況であり、これを改めるためMBIが行われます。
赤字事業がある
赤字事業を抱えているような企業の場合も、MBIが行われやすい状況にあります。多角化経営をこのまま続けるためには、赤字事業を黒字化できる、その事業分野の経営の専門家が必要です。
あるいは、事業の選択と集中戦略を取り、赤字事業から撤退し、他の黒字事業に経営資源を集中させるという方法もあります。この経営戦略を行う場合も、赤字事業からうまく撤退する経営上のテクニックが必要です。つまり、いずれにおいても経営陣を入れ替えるMBIが求められるのです。
後継者がいない
後継者がいない中小企業の場合、事業承継のためにMBIが実施される状況にあります。一般的な事業承継M&Aは、企業や事業承継を希望する起業家などが買収側となって行われ、買収側が直接、後継者になるものです。
そのような買収側が見つからないケースでは、金融機関やファンドが買収側となり、MBIをすることで事業承継が実現します。
5. MBIを実施するメリット
最後に、MBIを実施することによって得られるメリットについて確認しましょう。MBIのメリットは細かなものが多数あります。それらを集約すると、MBIのメリットは以下の2つです。
- 経営再建
- 企業価値向上
それぞれのMBIのメリットの内容を説明します。
経営再建
MBIのメリットの1つは、経営再建の実現です。MBIによって刷新された経営陣の手腕により、赤字事業部門の立て直しによる業績の黒字化、または同部門の切り離し・撤退が行われ経営資源を主力事業に集中させたことによる利益の上積みが行われます。
経営再建は従業員の待遇改善にもつながり、社内でより好循環を生むでしょう。
企業価値向上
MBIのもう1つのメリットは、企業価値の向上です。経営再建の過程において企業としてのマネジメント力が向上し、効率性が高まったり無駄が省かれたりなど業務上の好影響が浸透していき生産性が向上します。その結果、企業価値は大きく向上するでしょう。
こうして、MBIの買収側の最終目的であるキャピタルゲイン(売却益)の獲得も実現するのです。
6. MBIまとめ
MBIは、経営に行き詰まっている企業にとって、経営を立て直せる有効な手段です。しかし、従業員にとっては、経営陣が根こそぎ交代するのは抵抗感がある出来事でしょう。事業の担い手である従業員がMBIに反感を持ってしまうと、おそらく目的は実現しません。
したがって、MBIを実施する際は、特に幹部従業員やキーマンとなる従業員とコミュニケーションを取り、反発が起きないよう留意することが肝要です。
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