2024年11月09日公開
漁業のM&A動向!売却・買収事例5選とメリットを解説!【2024年最新】
漁業は、日本の食生活を支える重要な分野ですが、市場規模は縮小傾向にあり、M&Aなどでの業界の統廃合も進んでいます。この記事では、漁業業界におけるM&Aのメリットや会社が譲渡された事例、M&Aを行う時の注意点などについて解説します。
目次
1. 漁業業界の概要と動向
魚介消費量の多い日本において、漁業はとても重要な産業の一つです。しかし、近年、漁獲水揚げ高の減少もあり、厳しい経営状況の漁業会社も多く、M&Aでの会社の売却や買収による統合が進みつつあります。
この記事では、現在の漁業業界の動向と、M&Aについて詳しくみていきましょう。
漁業業界とは
漁業とは、営利目的で魚介類を獲ったり養殖したりすることです。魚や貝などの魚介類や海藻などの水産植物を自然の海や川、湖から獲ったり、自然の海や、湖を使った養殖したりします。
漁業は農業と同じ第一次産業ですが、私有地で行う農業とは異なり、海や川、湖は公共の場となります。そのために、漁業は農業よりも法令により多くの制限を受けており、新規参入が難しい業界の一つです。
漁業業界の市場規模と動向
業界動向サーチの分析によると、漁業を含めた水産業の業界規模はここ10年以上縮小傾向にあります。漁業と養殖業の生産量は、2008年には559.2万トンだったのが、2015年には463.1万トン、2021年には417.2トンと減少が続いています。
原因としては、水産資源が減少しつつあることと、魚などの消費が縮小傾向にあるためです。
また、近年の原材料費やエネルギー価格の高騰により、水産加工物の値上げが続いていますが、漁船の燃料費などのコストの補填には追いついておらず、漁業関連では各社とも厳しい状況が続いているのが現状です。
参考:業界動向サーチ「水産業界の動向や現状、ランキングなどを分析」
2. 漁業業界のM&A動向
漁業業界でのM&Aの傾向は、海外進出や、調達や販路のルートを拡大するための漁業会社を買収する動きがあります。
漁業会社や水産会社が海外進出を図るための足がかりとして、海外の現地企業を買収する動きや、日本のホタテなどの販路を拡大するために需要が多い国の会社を買収する動きがみられます。
また、自社では取り扱っていない商品を扱っている漁業関連会社を買収して、取扱商品の幅を広げようとする動きもあるようです。
加えて、漁業業界では働く人や漁師の高齢化が進み、今後深刻な人手不足も懸念されています。M&Aで会社を集約することによる業務効率化やコスト削減効果を狙った動きも見られるようです。
3. 漁業業界のM&Aにおけるメリット
漁業業界でM&Aを行うことにはどのようなメリットがあるのでしょうか。売却側にとってのメリットと、買収側にとってのメリットをそれぞれみておきましょう。
売却側が得られるメリット
M&Aで漁業会社を売却するメリットは次のとおりです。
- 後継者不足でも事業を継続できる
- 大手企業の傘下に入ることで従業員の待遇改善が期待できる
- 新たな販路が開拓されることで漁業を中心とする地域経済が活性化する
- 不採算事業の売却で漁業以外の事業に経営資源を集中できるようになる
- 経営者は会社の売却益を手に入れることができる
後継者不足や経営状態の悪化で会社の存続が危ぶまれる場合でも、M&Aで売却することができれば、会社を存続させて、従業員や地域経済への打撃を与える心配がありません。
買収側が得られるメリット
M&Aで漁業会社を買収する側のメリットは次のとおりです。
- 漁業や養殖の知識やノウハウ、設備、スタッフを短期間で手に入れることができる
- 熟練した漁師や養殖スタッフを雇用できる
- 漁や養殖の幅を広げて調達できる水産物の幅を広げることができる
- 買収する企業が持っている販路をそのまま引き継げる
- 自社が持っている最新技術と組み合わせることで漁や養殖の効率性をあげられる可能性がある
漁業関連は法律の制限が厳しく、新規参入はほとんどできません。しかし、漁業会社をM&Aで買収すれば、全く関係ない業界からも漁業に参入できます。
その上、船や設備、熟練のスタッフもゼロから用意する必要がありません。漁業とシナジー効果を見込める技術を持っているのであれば、大幅な売上増加も見込めるでしょう。
4. 漁業業界のM&Aにおける買収・売却事例5選
漁業業界において、今までにどのようなM&Aが実施されてきたのでしょうか。ここから、漁業業界におけるM&Aでの会社買収や売却の事例を5つ紹介します。
ヨシムラ・フード・ホールディングスがマルキチをM&Aした事例
2022年12月に、株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングスから、株式会社マルキチの発行済株式70%を取得して子会社化するM&Aが発表されました。
ヨシムラ・フード・ホールディングスは中小の食品会社を傘下に持つ持株会社で、グループ内各社の強みで、他の会社の弱みを補完するビジネスモデルに特徴があります。
マルキチは、北海道網走市に本社と工場を持つ、オホーツクの豊かな海で育ったホタテを中心としてサケ、イクラ、カニなどの加工製造、販売を行う会社で、国内では数少ない対EU輸出水産食品取扱施設を持ちます。
このM&Aにより、ヨシムラとしては、グループ内企業とのシナジーを活かしながら、海外で需要が増加している日本産ホタテの加工ができる施設を傘下に納めることで、海外市場へより積極的な進出が可能になるとしています。
参考:株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス「株式会社マルキチの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
クックビズが久一米田商店をM&Aした事例
2022年10月に、クックビズ株式会社から、久一米田商店が新設分割で設立した新会社、きゅういち株式会社の全株式を取得して完全子会社化するM&Aが発表されました。
久一米田商店は、北海道函館市の水産加工会社でしたが、2021年8月に民事再生手続きの申立を行いました。食に関する幅広いビジネスを展開しているクックビズでは、負債は継承せずに事業に必要な資産を継承し、雇用の安定とさらなる事業拡大を目指すとのことです。
参考:クックビズ株式会社「きゅういち株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」
トーホーがGOSをM&Aした事例
2019年8月に、株式会社トーホーが、シンガポールの業務用水産品卸業者であるGolden Ocean Seafood (S) Pte Ltd(以下、GOS)の全株式を取得して子会社化するM&Aを発表しました。
トーホーは、食品スーパー事業や外食ビジネスの支援事業など、食に関する幅広いビジネスを展開している会社です。
GOSは、シンガポールで主にホテルやレストランへ活きロブスターや活きオイスターなどの活き水産物を提供している会社です。
トーホーは、シンガポールで日本産食材を提供する会社を展開していますが、GOSを傘下に加えることにより、取扱商品を充実させ、販路を拡大させることができるとのことです。
参考:株式会社トーホー「シンガポール業務用水産品卸売会社Golden Ocean Seafood (S) Pte Ltd の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
ジーエフシーがインタークレストをM&Aした事例
平成31(2019)年2月に、ジーエフシー株式会社(以下、GFC)から、株式会社インタークレストの全株式を取得して子会社化するM&Aが発表されました。
GFCはホテルや外食産業向けの業務用加工食品の企画、開発、製造、販売を行う会社です。インタークレストは、ロブスターやカニなどの品質の高い海産物を世界各国から輸入している会社です。
このM&Aにより、GFCは商品ラインナップを拡充して、事業拡大を図ることができるとしています。
参考:ジーエフシー株式会社「子会社の異動を伴う株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
マルハニチロが連結子会社の株式譲渡をした事例
平成21(2009)年6月に、株式会社マルハニチロホールディングスから、子会社である株式会社マルハニチロ水産が、マダガスカル水産株式会社の全持ち株を売却して、特別利益が発生することを発表しました。
マルハニチロでは、マダガスカル共和国でえびトロール漁業及びエビ養殖事業を行っていましたが、平成21年3月に撤退を決議して、中水遠洋漁業有限責任公司への全持ち株の売却が決まったとのことです。
参考:株式会社マルハニチロホールディングス「連結子会社の株式譲渡ならびに特別利益の発生に関するお知らせ」
5. 漁業業界における成功のポイント
漁業会社をM&Aで売却したかったり買収たかったりする場合にはどうしたらいいのでしょうか。実は、日本ではM&Aの成功率が4割程度ともいれていて、半分以上は会社の売却を希望しても売却できない現実があります。
確実にM&Aを成功させるためのポイントについて解説します。
M&Aの専門家に相談をする
M&Aで漁業会社の売却や買収を考え始めたら、まずはM&Aの専門家に相談しましょう。中小企業のM&Aを専門的に取り扱う専門家がいるので、まずは相談窓口に相談してみることをおすすめします。
M&Aをするべきなのか、といったところから懇切丁寧に相談に乗ってくれるでしょう。M&Aを決断したら、最適な相手とのマッチングや、法律や財務の高度な知識が必要な手続きのサポートも行ってもらえます。
M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください
M&A仲介会社選びにお悩みの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが専任となって案件をフルサポートします。
M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ)随時、無料相談をお受けしていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
売却側が意識すべきポイント
会社を売却する側が意識した方がいいポイントは次のとおりです。
- 旬で売上が見込める時期に売却交渉を進められるように売却のスケジュールを立てる
- 財務資料などは正しく整理しておく
- 海域や魚種、量、販売単価、時期などのデータを整理しておく
- マニュアルなどをしっかり整備しておく
M&Aで会社を買収する目的は、自社の利益になるためです。買収しようと決断してもらうためには、業績が順調であるところを見せたほうがいいでしょう。
漁業は季節によって旬が変わり売上高も大きく変動します。売上高が見込める季節に交渉のピークを迎えられるようにスケジュールを事前にしっかりと立てましょう。
買収側が意識すべきポイント
漁業会社の買収を考えている会社が意識した方がいいポイントは次のとおりです。
- 環境問題や国境問題についての情報収集を行っておく
- 魚の品質や安全性を精査する
- 年度ごとの漁獲高の増減の理由が合理的か確認する
- 労働問題がないか確認する
- 漁船や養殖施設のメンテナンスコストも考えて決断する
国境付近で漁業を行う場合には、外交関係がどうなっているのか重要なポイントです。また、近年は気候変動による漁業への影響が大きくなっています。そのあたりの情報を精査しておきましょう。
また、漁業関係は厳しい労働環境で設備のメンテナンスも必要です。会社の労働問題や設備の状況は買収前にしっかりとチェックしてから決断しましょう。
6. 漁業業界のM&Aにおける注意点
漁業業界でM&Aで会社を売却しようとする時の注意点です。
- 売却後は事業としての漁を続けることはできない
- 売却を希望しても手を挙げる企業が見つからないことがある
- スタッフからの反対で頓挫する可能性もある
M&Aで漁業会社を売却してしまうと、漁業権も譲り渡すことになるので、経営者は事業としての漁ができなくなります。
また、参入障壁が高い業界なので、売却先が見つからないこともあります。スケジュールに余裕を持って、数年単位で売却先を見つけるくらいの気持ちで余裕を持って準備を始めましょう。
M&Aで経営体制が変わることに、会社のキーマンとなる熟練の漁師や養殖スタッフから不安の声が上がり、スタッフの反対によって売却が頓挫することもあります。
会社の売却がどうして必要なのか、スタッフに丁寧に説明して、理解してもらえるようにしましょう。
7. 漁業業界のM&A・事業売却まとめ
漁業業界でも経営者や漁師の高齢化で会社の存続が危ぶまれているところが少なくありません。M&Aで会社を売却できれば、今後も継続できる可能性が広がります。もしも、会社の将来に不安を感じていて、会社の売却も検討しているのなら、一度、M&Aの専門家に相談してみましょう。
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