2025年03月16日公開
自転車業界のM&A動向!売却・買収事例3選とメリットを解説!【2025年最新】
自転車は差別化が難しい商品であるために、業界では厳しい価格競争が起きています。その中で、生き残りをかけるための他社との差別化を図るためのM&Aが活発化しています。この記事では、自転車業界でのM&Aのメリットや事例についてみていきましょう。
1. 自転車業界の概要と動向
自転車は、子供用自転車から、大人が日常的に使うママチャリ、スポーツ用自転車など、年齢やライフスタイルに合わせた商品がいろいろと展開されています。
自転車業界では、各社とも他社との差別化を図るためにさまざまな工夫を凝らしていますが、人口減少が続く日本では今後の市場拡大が難しい商品であり、自転車業界では将来的な生き残りをかけたM&Aを検討する会社が増えているようです。
この記事では、近年の自転車業界の業界動向と、M&Aの動きについて詳しくみていきましょう。
自転車業界とは
自転車業界とは、自転車と自転車関連部品を製造及び販売する事業を展開している会社の業界のことです。
自転車には、一般的にママチャリと呼ばれる日常生活向けのシティサイクルや電動アシスト自転車、マウンテンバイクやロードバイク、クロスバイクなどのスポーツタイプなどいくつもの種類があり、メーカーによって特定の種類の部品などを扱っているところもあります。
自転車は19世紀前半に現在普及しているものの原型となるものがドイツで発明されて、19世紀後半にはイギリスでチェーン方式が確立しました。日本では1893年に国内での生産が始まり、20世紀初頭には量産化が始まります。
1950年代に国内でオートバイの生産が始まると、いずれオートバイが自転車に代わるだろうと予想されたために、自転車メーカーがオートバイの本体や部品の生産も始めるようになりました。
1985年のプラザ合意後に台湾から自転車が輸入されるようになり、1990年代に入ると、日本メーカーや台湾メーカーの中国進出が相次ぎます。
現在、日本での自転車保有台数は人口1.5人当たり1台と、世界の中でも有数の自転車普及率を誇っていますが、国内で販売される国産自転車は約10%程度で、残りは台湾や中国からの輸入品がほとんどを占めています。
自転車業界の市場規模と動向
日本国内での自転車の近年の販売台数は、2019年には712万台(1,284億円)、2020年は718万台(1,306億円)、2021年は684万台(1,408億円)、2022年は579万台(1,494億円)でした。
2020年にはコロナ禍での健康意識の高まりを受けて販売台数が増加しましたが、その後は減少しています。しかし、販売総額は2020年よりも2021年、2022年の方が増加しており、1台あたりの単価が向上しているようです。
自転車製造の方をみてみると、2022年の国内生産比率は全販売台数のうちの13.0%しかありません。国内で販売される自転車の9割近くが輸入されたものです。
1980年代から、国内のメーカーでも生産拠点を中国に移して、ホームセンターなどの量販店で低価格帯の自転車を販売するようになり、個人経営の自転車店が淘汰されていきました。
その一方で、国内メーカーでは精度の高いスポーツタイプ向けの部品などで圧倒的なシェアを誇る世界有数の会社もあり、自転車業界では低価格帯と高付加価値商品との二極化が進んでいます。
参考:国民生活センター「自転車最新事情」 NIKKEI COMPASS「自転車・関連製品・部品の業界概要」
2. 自転車業界のM&A動向
すでに市場が飽和状態にあり、大きな拡大が見込めない自転車業界で生き残るためには、自社の強みを磨き、他社との差別化を図っていくことが重要となっていきます。
とはいえ、自転車の完成品は差別化が難しい商品であり、海外製の格安自転車の流入での価格破壊も起きていることから、一般的な自転車を扱う会社では売上総利益率は大きく低下しています。
その中で、特に差別化しやすいポイントとして、パーツの精度を上げたり、GPSや盗難防止装置などのITと組み合わせたパーツの開発などに注目が集まっているようです。その新技術導入のためのM&Aなどがみられます。
また、頭打ちとなっている国内市場だけでなく、海外市場の強化や海外からの調達をより有利に進めるためのM&Aの動きもあるようです。
3. 自転車会社をM&Aで売却するメリット
自転車会社をM&Aで売却するメリットです。
事業承継問題の解決
現在、自転車会社を含む日本の約6割の会社の経営者が60歳以上と高齢化が進み、また4割以上の会社で将来的に経営を引き継ぐ人がいない後継者問題が深刻化しています。
M&Aは、社内に後継者がいなくても、他社に事業承継してもらうことで、会社を潰さずにすむ方法として注目されています。
後継者問題を抱えている会社は、M&Aでの会社売却の可能性も検討する余地があるでしょう。
従業員の雇用維持
後継者問題や事業の悪化などの理由で、会社を廃業することになると、従業員は全員解雇するしかありません。
自転車安全整備士などの資格と自転車修理の高い技術を持っていたり、精度の高い部品の製造加工ができたりする若い人であれば、すぐに次の仕事が見つかるでしょう。
しかし、定年が近い高齢の従業員や、特に技能がない事務スタッフは、再就職が難しい場合もあります。
M&Aでは、買収側の会社が売却側の従業員の雇用も引き受けることが一般的です。現在の経営者が経営を続けることが難しくても、従業員の雇用を維持することができます。
売却益の獲得
M&Aで会社を売却すれば、経営者の手元には多額の売却益が入ってきます。
どのくらいの金額になるのかは、会社の規模や売上、将来性、企業価値評価の方法などによって変わりますが、純資産に3年から5年程度ののれん代(営業利益から算出した利益)を上乗せすることが多いようです。
売却金から、M&Aの手数料と税金を差し引いた残りの金額は、経営者が自由にできます。引退後の生活費にしたり、新規事業の資金として使ったりできます。
個人保証・債務の解消
中小企業では、会社の金融機関からの借り入れに対して、経営者が連帯保証人として個人保証をつけて、自宅などを担保として設定していることがよくあります。
廃業したら、廃業時に債務が残ってしまうと、自宅が差し押さえられたり、引退後も返済が続いたりして、生活に余裕が持てない可能性があるでしょう。
M&Aでは、会社の債務も買収側が引き継ぐことが多いので、経営者は個人保証の負担から解放されます。引退するのなら、会社の債務から解放されて、売却益で余裕のある老後を送ることも可能です。
廃業や事業撤退にかかる費用の削減
もしも、M&Aでの会社売却ではなく廃業を選ぶことになると、解雇する従業員への退職金の支払いや、建物や設備の撤去費用などのコストがかかります。
退職金は就業規則に明記されている場合には、廃業が理由でも経営者に支払義務が生じます。店舗や工場の建物や、修理や部品製造などに使う設備なども撤去や廃棄するしかなく、多額の費用が必要になるでしょう。
しかし、廃業ではなくM&Aで会社を売却することになると、従業員の雇用も、設備も全て買収側が引き受けてくれるので、これらの負担は一切かかりません。
経営者にとっては、売却益を手にして、債務の負担からも解放されて、プラスの収支で会社経営から身を引くことができるのです。
技術やノウハウの承継
自転車店であれば、顧客の必要性に応じた自転車の提案などの営業ノウハウが、自転車の製造や部品の工場であれば精度の高い部品の製造加工技術などが、長年にわたって育てられてきているでしょう。
もしも、自転車会社を廃業することになると、これらの技術やノウハウが全て失われてしまい、日本の自転車業界に大きな穴が空くことになるでしょう。
M&Aで会社を他社に事業承継させることができれば、その会社が培ってきた技術やノウハウは、買収側の会社が引き継いでくれます。高度な技術やノウハウを失わずにすむのです。
4. 自転車会社のM&A・買収・売却事例3選
自転車業界で実施されたM&Aの事例を紹介します。
エイチームコマーステックがワイ・インターナショナルに自転車小売事業を譲渡した事例
2022年12月16日に、株式会社エイチームが、連結子会社のエイチームコマーステックが運営している自転車通販専門サイトのcyma事業を、株式会社ワイ・インターナショナルへ譲渡するM&Aを決議したことを発表しました。
株式会社cymaを設立して、cyma事業の資産、債務、契約その他権利義務を吸収分割で承継させた上で、株式会社cymaの全株式をワイ・インターナショナルへ譲渡します。
エイチームは、「ヴァルキリーコネクト」などのスマホゲームや、引越比較サイトの「引越し侍」、中古車買取比較サイトの「ナビクル」などを運営する、総合IT会社で、2013年から自転車専門通販サイトのcymaを運営していました。
cymaは同社に大きな利益をもたらしていたものの、実店舗を持たない自転車販売店のビジネスモデルでは今後の収益拡大が見込めず、この課題解決のためには多大な投資が必要になることから、事業の売却を決断したとのことです。
ワイ・インターナショナルは、日本で最大級のスポーツ自転車専門店「ワイズロード」を全国に32店舗展開しています。
cymaを傘下に入れることで、スポーツ自転車だけでなく、一般自転車の取り扱いも始めて、顧客のライフスタイルの変化に合わせた自転車の提案を行っていけるようにするとのことです。
参考:連結子会社における会社分割(吸収分割)及び株式譲渡(孫会社の異動)に関するお知らせ
シマノがDASHAMERICA, INC.の株式をShock Doctor, Inc.に譲渡した事例
2022年5月6日に、株式会社シマノが、同社の連結子会社であるDASHAMERICA, INC.の全株式を、Shock Doctor, Inc.に譲渡するM&Aを決議したことを発表しました。
シマノは大阪府堺市に本社のある、自転車部品と釣具の製造販売を行っているメーカーで、特にスポーツ自転車部品業界では世界最大手です。
DASHAMERICAは、アメリカのコロラド州に本社のある、サイクリング用のウェアやシューズを扱っているアパレル会社で、2008年にシマノが子会社化して、サイクルウェアのPearl Izumiブランドを展開しながら、シマノとのシナジー効果の訴求をしてきました。
しかし、シマノとしては、今後に向けて事業ポートフォリオを見直す中で、DASHAMERICAのグループ外への売却も含むあらゆる可能性を検討しました。
Shock Doctorrが買収に意欲を示したことから、Pearl Izumiブランドのさらなる成長と飛躍のために、このM&Aを実施するとのことです。
参考:特定子会社の異動を伴う株式譲渡に関するお知らせについて
モリタホールディングスがミヤタサイクルの株式を一部譲渡した事例
平成26(2014)年3月20日に、株式会社モリタホールディングスが、同社の連結子会社であるミヤタサイクルの株式の一部を、シナネン株式会社、美利達工業股份有限公司(以下、Merida)、ミヤタサイクルへ譲渡するM&Aを決議したことを発表しました。
このM&Aで、モリタホールディングスが保有するミヤタサイクルの株式の所有割合は70%から25%になり、ミヤタサイクルは同社の連結子会社から持分法適用関連会社になります。
モリタホールディングスは、モリタ自動車を中核とする持株会社です。モリタ自動車では、消防車などの緊急自動車や特種用途自動車の架装、販売を行っています。
シナネンは、石油やLPガスなどを行う総合燃料商社で、近年では脱炭素社会の実現のために、シェアサイクル事業や自転車事業などの日エネルギー事業も展開しています。
Meridaは、台湾の自転車メーカーで、ミヤタサイクルが同社のハイエンドモデルの販売を行っています。
モリタホールディングスでは、平成20年に宮田工業株式会社を連結子会社化しました。その後、平成22年に経営判断の迅速化とマーケティング主導型事業運営体制を構築するために、宮田工業の自転車事業を新設分割してミヤタサイクルを設立しました。
さらに、Meridaとの関係を強化するために、ミヤタサイクルの株式の30%を譲渡しています。
しかし、事業環境が厳しくなる中、Meridaとの連携強化と、シナネンの自転車事業との相乗効果発揮を図ることが、今後のミヤタサイクルの発展に寄与するとの判断で、両社への株式を譲渡することとなりました。
また、ミヤタサイクルの従業員に経営への参画意識を持ってもらうことを目的とした従業員持株制度を導入するために、ミヤタサイクルにも株式譲渡するとのことです。
参考:連結子会社の異動に関するお知らせ
5. 自転車会社のM&Aにおける成功のポイント
自転車会社のM&Aを成功させるためのポイントをみておきましょう。
M&Aの専門家に相談をする
自転車会社のM&Aを考え始めたら、M&Aの専門家にまずは相談しましょう。M&Aの専門家は、最適な相手探しや法律や財務の専門的な知識が必要な手続きをサポートしてくれます。
M&Aマッチングサイトなどを使って自分だけで進めようとしても、相性のいい相手を見つけられなかったり、難しい手続きにつまずいてしまうことが多いようです。M&Aの専門家のサポートを受けることをおすすめします。
M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください
M&A仲介会社選びにお悩みの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが専任となって案件をフルサポートします。
M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ)随時、無料相談をお受けしていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
情報漏洩に気をつける
M&Aの成否は、情報漏洩が起きないかどうかにかかっているといってもいいでしょう。
買収相手に会社の機密情報を開示するときには、必ず秘密保持契約を結んで、財務や人事、ノウハウなどの機密情報がM&Aを検討すること以外の用途に使われないように対策をしましょう。
また、会社売却の噂が従業員や取引先に広がると、離職や取引停止を招く恐れがあります。M&Aについての噂は、専門家や買収側とのちょっとした会話の断片から簡単に広がるので、M&Aについて話をするときには、周囲の状況によく気をつけましょう。
目的の明確化
M&Aでは、会社を売却する目的によって選ぶべきスキームが異なります。経営者が引退するために、会社のすべてを譲渡したい場合には株式譲渡を、不採算事業のみを整理するために一部事業を売却したいときには事業譲渡を選ぶことが一般的です。
スキームの正しい選び方は、M&Aを進める前に目的が明確化しているかどうかで変わってきます。M&Aを決断したら、最初に専門家の助けも借りながら、目的の明確化に取り掛かりましょう。
早めの検討
M&Aは、できれば準備に数年かけることがおすすめです。
M&Aでの会社売却を希望したけれども売却できずに廃業することになった例や、想定していた金額よりも買い叩かれてしまった例などの失敗例では、短期間で売却しようとしたことが原因である場合が多いようです。
特に、経営者が高齢化して健康問題が深刻化してから慌てて売却しようとして、時間切れで売却できなかったり、想定以下の金額でしか売れなかったりすることがよくあります。
高額で満足できるM&Aでの売却を目指すのなら、経営者がまだ元気で体力も判断力も十分あるうちから準備を始めて、売却のタイミングを見計らうことが大切です。
相乗効果が得られる相手先を選ぶ
M&Aは、クロージング後からが本当の勝負だと言われています。それまで全く違う企業文化を育んできた2社が統合する過程で、お互いにシナジー効果を発揮して業績を伸ばせるかどうかが、M&Aの真の成功になるか、失敗するかの分かれ目になります。
どこでもいいから売却すればいい、という考えでシナジー効果を得られない相手に売却してしまうと、売却した会社が相手側のお荷物となってしまい、引き継いでもらった従業員が肩身の狭い思いをするかもしれません。
長年、会社を支えてくれた従業員が幸せに働き続ける環境を作るためにも、相乗効果の得られる相手を選ぶことが大切です。
6. 自転車業界のM&A・事業譲渡まとめ
すでに市場が飽和している上に、格安自転車の流入で大きな利益が見込めない自転車業界では、M&Aによる業界再編が必要です。会社の将来に不安を感じている経営者は、M&Aでの会社売却の可能性について、一度、M&Aの専門家へ相談してみることをおすすめします。
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