学校法人のM&A動向!会社売却のメリットや成功のポイント・事例7選を徹底解説【2024年最新】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

近年の少子化進行により、学校法人間では生徒獲得のための競争が激化しています。そのため、効率的に生徒数を増やして経営の安定化を図る目的でM&Aが行われるケースも多いです。この記事では、学校法人のM&A動向やメリットなどを解説します。

目次

  1. 学校法人の概要
  2. 学校法人の市場動向
  3. 学校法人のM&A動向
  4. 学校法人のM&Aのメリット
  5. 学校法人のM&Aスキーム
  6. 学校法人のM&Aの相場
  7. 学校法人のM&Aを成功させるポイント
  8. 学校法人のM&Aの流れ
  9. 学校法人のM&A事例
  10. 学校法人のM&Aまとめ
  11. 学校法人・専門学校業界の成約事例一覧
  12. 学校法人・専門学校業界のM&A案件一覧
  • セミナー情報
  • 経験豊富なM&AアドバイザーがM&Aをフルサポート まずは無料相談
  • 学校法人・専門学校のM&A・事業承継

1. 学校法人の概要

「法人」と呼ばれるものには、学校法人・株式会社・合同会社・医療法人などがあります。

そもそも法人は「営利法人」「非営利法人」「公益法人」の大きく3つがあり、一般的に法人という場合は営利法人である会社を指すことが多いです。

学校法人も法人のひとつですが、株式会社とは性質や特徴が大きく異なります。

学校法人とは

学校法人とは、上記の公益法人に該当し、私立学校(幼稚園・小学校・中学校・高等学校・大学など)を設置運営する法人を指します。

ここでいう「学校」とは学校教育法で規定された学校を指し、該当するのは、1条に規定された学校(俗に「一条校」と呼ばれる)および124条の専修学校、インターナショナルスクールや自動車学校など134条に規定された各種学校です。

基本的に学校法人は民間によって設立され、それぞれが創意工夫してよりよい教育を行うことが期待されています。

学校法人を所轄するのは文部科学大臣あるいは都道府県知事であり、地方自治体が所轄する公立校に比べると権限が限定されているため、高い自主性をもって運営することが可能です。

ただし、自主性が尊重されているとはいっても「公教育を担う」という点では学校法人も同じであるため、原則的には所轄庁の方針に従う必要があり、所轄庁は調査や統計の報告書を求めるなどの権限を持っています。

参考:文部科学省「学校法人制度の概要」

学校法人の特徴

学校法人は株式会社などの営利法人とは異なる特徴を持っています。学校法人の主な特徴は、以下の4点です。

所轄庁の許認可が必要

学校法人の設立には、所轄庁である文部科学大臣あるいは都道府県知事から許認可を受けなければなりません。

設立にあたっては、まず寄付行為で名称・目的・設置する学校の種類など基本的な部分を定めます。寄付行為とは株式会社でいう定款に相当し、学校法人の名称・目的・所在地・資産や評議員についての規定を定めたものです。

学校法人の許可は寄付行為を定めた後に所轄庁へ申請しますが、通常は学校の設置許可と同時に行われ、事務所所在地の管轄法務局において設立登記することで成立します。

学校法人の許可を受けるためには、公共性の担保や寄付可能な土地・建物(創設者の財物であることが前提)などの要件を満たさなければなりません。

体制変更などは制度による規制がある

学校法人の設立時、設置する学校に必要な土地や建物、設備、人員などは、すべて創設者の財物で準備しますが、これらはすべて寄付とみなされます。

そのため、自主性は尊重されますが学校制度の規制に従う必要がり、学部の新設や体制変更を行う場合は所轄庁による認可が必要です。

また、もし学校運営が厳しくなった場合も勝手に解散することはできず、解散した場合も設立時に準備した設備などは創設者へ戻りません。

ガバナンス体制の特殊性

学校法人には公共性の担保が求められるため、理事会・幹事・評議員会の設置が私立学校法によって定められています。

理事会は学校法人の最高意思決定機関にあたり、幹事は監査機関評議員会は理事会の諮問機関(しもんきかん)です。

また、学校法人は役員として理事5名以上、監事を2名以上を置くことが義務付けられており、理事会において重要事項を決議する際は評議員会に対して理事長が事前に意見を求めなければなりません。

学生数によって収益が左右される

学校法人の収益の大部分を占めるのは学納金です。学納金に該当するものは入学金・授業料・実習実験日・施設費などであり、学校法人の収益において約70%を占めるといわれています。

学納金のうちで割合の高いのは授業料ですが、学生数の定員割れや退学・中退などが多ければ収益も減少するため、収益安定化には学生数の維持確保が重要です。

2. 学校法人の市場動向

加速する少子化や就職市場の変化などは、学校法人の市場にも大きな影響を与えています。ここでは、学校法人の市場動向をみていきましょう。

市場規模

文部科学省「 地域社会の現状・課題と将来予測の共有について」

出典:https://www.mext.go.jp/content/20201029-mext-koutou-000010662_03.pdf

文部科学省が公表した「地域社会の現状・課題と将来予測の共有について」によれば、国内における18歳の人口はピーク時だった1992年(約205万人)以降は右肩下がりが続き、2009年~2018年までは約120万人前後とほぼ横ばいで推移しました。

しかし、2018年以降は再び減少へと突入し、2030年には100万人を割り、2040年には約88万人まで減少するとの推計もでています。
 

文部科学省 「令和5年度学校基本調査の公表について」

出典:https://www.mext.go.jp/content/20230823-mxt_chousa01-000031377_001.pdf

その一方で、文部科学省の「令和5年度学校基本調査」によれば、2023年度の高等教育機関(大学・短大・専門学校・高等専門学校など)への進学率は84.0%で、過去最高となりました。

学校数をみると、2022年度の学校法人が設置する私立大学は62校で前年度に比べ2校増加したのに対し、私立短期大学は288校で前年度より7校減少しています。

また、在学者数は私立大学が2,179,507人で前年度より8,025人増加しました。一方で、私立短期大学の在学者数は81,499人で、前年度から8,104人の減少となっています。

参考:文部科学省「地域社会の現状・課題と将来予測の共有について」
参考:文部科学省「令和5年度学校基本調査(確定値)について」
参考:文部科学省「事後型の規制・制度による学校法人・ 学校の連携・再編及び撤退の促進に係る 文部科学省の取組について」

教職員数

文部科学省の「令和5年度学校基本調査」によれば、2023年度の大学教員者数(本務者)は191,878人であり、前年度に比べ微増傾向となっています。

そのうち、女性教職員数は52,271人で、大学教職員全体に占める女性の割合は約27.2%と、前年度より0.5%の増加となりました。

同年度における短期大学の教員者数(本務者)は6,529人で前年度に比べわずかに減少しています。また、私立短期大学教職員全体に占める女性の割合は約53.7%で、前年度とほぼ同じ結果となりました。

参考:文部科学省「令和5年度学校基本調査(確定値)について」
参考:政府統計ポータルサイト「学校基本調査年次統計」

経営状況

文部科学省 「私立学校・学校法人基礎データ」

出典:https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/main5_a3_00003.htm#topic1

文部科学省「 私立学校・学校法人基礎データ」

出典:https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/main5_a3_00003.htm#topic1

文部科学省「私立学校・学校法人基礎データ」によると、令和4年の私立大学の48%が入学定員未充足となっており、地方の中小私立大学の4割が赤字傾向です。さらに、私立短期大学は86%が入学定員未充足となっており、中小私立短期大学の7割が赤字傾向です。

少子化により生徒の獲得が激化しており、経営状況が厳しくなっています。

参考:文部科学省「 私立学校・学校法人基礎データ」

経営課題

加速する少子化により、学校法人では学生をいかに確保して財政基盤を確立するかが喫緊の課題です。今後は遠方エリアからの入学志願者を増やせるよう、広報活動を強化していく必要があるでしょう。

また、学生のニーズに合った授業・カリキュラムの提供や、就職活動で強みとなる業界に必要な教育の提供も大きな課題です。

近年の就職市場は変化が激しいため、高度な教育カリキュラムの提供など、時代ニーズに合った教育内容や支援も必要になると考えられます。

3. 学校法人のM&A動向

今後、学校法人が生き残るためには、少子化による学生数の減少や多様化する教育ニーズにどう対応するかが重要です。

特に少子化の加速による影響は大きく、今後の学生確保はさらに困難になることが予想されます。また、学生確保だけでなく、教員の採用や教育資源などの課題を抱える学校法人も多いため、新規入学志願者の募集強化を目的にM&Aが活用されるケースも増えています。

近年多くみられるのは、大学を設置運営する学校法人同士の合併です。なかには経営状況は良好であっても、将来を見据えてM&Aを行うケースもみられます。

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4. 学校法人のM&Aのメリット

学校法人のM&Aには、さまざまなメリットがあります。ここでは、売却側・買収側の主なメリットをみていきましょう。
 

売却側のメリット 買収側のメリット
  • ブランド力の強化・獲得
  • 学校の存続が可能
  • 学生数を確保できる
  • 教員などの人材を確保できる

売却側

学校法人のM&Aにおける売却側の主なメリットとしては、以下の2点が挙げられます。

ブランド力の強化・獲得

M&Aによって大手の学校法人あるいは企業へ譲渡すれば、ブランド力の強化に期待できます。ブランド力の強化すれば遠方からの入学志願者増加にも期待できるため、学生の囲い込みも可能です。

さらに、M&Aによってブランド力の強化と併せて業務効率や教育の質が向上すれば、継続的な学生獲得にもつながるため収益の安定化を見込むこともできるでしょう。

学校の存続が可能

学校法人の収益は学生数に左右されるため、定員割れの状態が続けば経営状況は悪化し、廃校・閉校の選択を余儀なくされるケースもでてきます。

廃校・閉校となれば、所轄庁への事前届け出や新規生徒募集の停止、在校生は同じ科目の別学校へ転入させる手配なども必要です。教職員も解雇しなければならないため、現場の混乱を招く可能性は高くなります。

しかし、M&Aで他者へ譲渡することによって学校の存続が可能となるため、学生や教職員などへの影響を最小限にとどめることが可能です。

雇用の継続もしくは退職金の支給

学校が経営破綻してしまった場合、教職員や事務職員は解雇となり、退職金の支払いさえも厳しい状況の可能性もあります。

しかし、M&Aにより買収されることで雇用を継続できる可能性があります。またM&Aの後にリストラが行われた場合でも、退職金は支給されるでしょう。

買収側

学校法人のM&Aにおける買収の主なメリットには、次の2点があります。

学生数を確保できる

学校法人同士でM&Aを行う場合、譲渡側の学生をそのまま獲得することができます。また、M&Aによって経営効率の向上や教育施設の拡充ができれば、新規志願者の獲得にもつながり収益の安定化を見込むことも可能です。

また、収益の安定や経営基盤の強化することで、よりよい教育環境を学生に提供できる体制を構築することもできます。

教員などの人材を確保できる

専門学校の場合、それぞれが行う教育内容に合わせた教員の確保が必要ですが、専門性が高い分野になればなるほど優秀な人材確保は難しくなります。

M&Aで譲渡側の学校を取得すれば教員を一度に獲得できるうえ、在校生のなかに優れた人材がいる場合は卒業後にそのまま教員として迎えることも可能です。

不動産の取得

学校は多くの生徒が集まり学ぶ場であるため、学校法人は広い土地や建物、さまざまな設備を所有しています。買収側はM&Aによってそれらを獲得できることはメリットです。

大きな土地や建物の不動産は探してもすぐに見つかることは少ないでしょう。このような不動産を獲得できることは、将来の事業計画にプラスに働くと考える経営者も少なくありません。

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5. 学校法人のM&Aスキーム

株式会社などと同様、学校法人もM&Aを行って他者へ売却・譲渡を行うことが可能です。ただし、株式を持たない学校法人の場合は、使用可能なスキームが限られます。ここでは、学校法人の売却・譲渡を行う主な3つの方法をみていきましょう。

経営支配権の譲渡(役員入れ替え)

学校法人は株式を発行できないため、多くのM&Aで用いられる株式譲渡によって経営権を移転することはできません。そのため、学校法人の経営権を移転する場合は、経営支配権の譲渡を行います。

経営支配権の譲渡では役員(理事長や理事)の入れ替えによって支配権を相手先へ引き継ぎ、譲渡側は事実上の対価として役員への退職金支払いが必要です。

なお、企業が学校法人を譲受する場合は、自社の支配下に理事の過半数を置き、理事会の支配が必要となります。

事業譲渡

学校法人のM&Aでは事業譲渡スキームを用いることが可能であり、譲渡側が設置運営する一部の学校や施設だけを譲渡することができます。

株式会社が事業譲渡を行う場合と同様、譲渡対象となる学校や施設の契約関係・資産・負債などは個別に引継ぎが必要です。

これらの引継ぎには個別手続きが必要であるうえ、譲渡対象となる学校や施設の名義変更も行わなければなりません。

合併

学校法人の合併は、当事者が学校法人同士である場合に限り行うことが可能です。また、合併にあたっては、理事の2/3以上の同意および所轄庁の許可が必要となります。

株式会社の合併と同様に吸収合併と新設合併とがありますが、多くの場合に用いられるのは吸収合併です。

また、一定要件を満たす場合は「適格合併」となり、税制優遇を受けることができます。非適格合併となった場合は株式会社の合併と同様、債権者への債務弁済などが必要です。

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6. 学校法人のM&Aの相場

株式会社が自社の経営権を移転させる場合は株式譲渡を用いることが多く、譲渡価額は株式単価×売却株式数です。

しかし、株式発行のない学校法人の場合、経営権の移転は役員(理事長や理事など)の入れ替えで行うかたちで行われるため、経営権の獲得自体は無料ということになります。

ただし、M&Aによって無料で学校法人の経営権を取得できるということではなく、役員の入れ替えに伴い生じる退職金の支払いが必要です。

役員の退職金は学校法人によって異なりますが、数千万円単位となるケースが一般的であり、この退職金が学校法人M&Aに必要な費用と考えることができます。

また、事業譲渡によって学校法人が設置運営する一部の学校や施設だけを取引する場合、譲受側は譲渡対象となる資産に見合った対価の支払いが必要です。

事業譲渡で一般的に相場とされるのは「純資産+のれん代」ですが、状況によって異なるため専門家に相談するとよいでしょう。

7. 学校法人のM&Aを成功させるポイント

学校法人のM&Aを成功させるためには、どのような点を意識して進めていけばよいのでしょうか。ここでは学校法人のM&Aを成功させる4つのポイントを紹介します。

学校法人の質

学校法人のM&Aにおいては、学校法人の質が重視されます。学校法人の質とは、たとえば「教育環境や設備の状況」「ターゲットとしている学生像」「設置運営している学校が設けている学部・学科・コース」などです。

譲受側はこのようなポイントをしっかり確認しておくとともに、新規入学志願者の募集を妨げるような問題点やリスクがないかもチェックしておく必要があります。

ガバナンスが機能していること

教育機関である学校法人は、管理体制や経営方針がしっかりできていることが重要です。そのため、譲受側は、M&A実施の際に譲渡側のガバナンスが機能しているかを確認する必要があります。

ガバナンスがしっかり機能していれば、不祥事案などの発生を未然に防ぐことが可能です。また保守的な面だけでなく、少子化やグローバル化の加速など経営環境の変化に対応していくためにも、ガバナンスが重要な役割を担います。

譲渡側はM&Aを行う前に自己のガバナンスが機能しているか、問題点や改善点はないかなども確認しておくようにしましょう。

施設・設備投資が適切に行われていること

学校法人が教育・研究活動の維持向上を図るには、それに伴う施設や設備投資も必要です。ですが、株式会社などと同様、経営資源には限りがあるため適切に行う必要があります。

私立学校の場合、施設設備などの維持・充実は基本的に自前で行うと文部科学省は示しており、資金繰りが悪化している学校法人では適切な投資ができていない可能性も高いです。

譲渡側の学校法人からみれば、施設・設備投資が適切に行われている場合は高い評価が得られやすくなります。

専門家に相談


学校法人のM&Aは、株式会社の譲渡・売却と異なる点が多く、新規設立となればかなりハードルが高いのが現状です。

少子化の影響もあり、経営基盤の安定が課題となっている学校法人が多いなか、財務状況を改善する手段としてM&Aを活用するケースが増えてきました。

とはいっても、一般の株式会社と比べればM&A案件が多いとはいえないため、よい相手先をみつけるためにはM&A仲介会社など専門家に相談することもポイントです。

M&A時の注意点だけでなく、学校法人の場合は新学期の始まるタイミングに合わせて手続きを進めるなどを配慮も必要となるため、事前準備の段階から専門家に相談しておくとスケジュールもたてやすくなり、成功確率を高めることにもつながります。

学校法人のM&AはM&A総合研究所へご相談ください

学校法人のM&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は、中小・中堅規模のM&A案件を得意とするM&A仲介会社です。

知識・支援実績豊富なアドバイザーが多数在籍しており、ご相談からクロージングまで丁寧にサポートさせていただきます。

M&A総合研究所の料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。)

無料相談を随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお電話・Webよりどうぞお気軽にお問い合わせください。

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8. 学校法人のM&Aの流れ

M&Aの目的を明確化

M&Aを検討した際、一番最初に行うのがM&Aの目的・方向性を明確化です。M&Aを実施する際に目的や方向性が定まっていないと重要な判断ができない可能性があります。特に交渉などでは条件の譲歩をすることが難しくなります。

M&Aの目的や方向性など戦略を決めるには専門的な知識が必要になります。そのため、M&A専門家と相談しながら現実的なM&A戦略を定めるのがおすすめです。

M&A仲介会社などの専門家に相談・契約

M&Aの仲介会社など専門家に相談するのが一般的です。専門家は多く存在しますが、学校法人のM&Aは特殊なため業界に精通しているかや、実績・手数料体系の比較検討することが大切です。

M&Aを進めることが最適であるかなども含め専門家に相談し、サポートを依頼すると決めたら契約を行います。この段階で秘密保持契約やアドバイザリー契約、法人情報・資料の提出を行います。

売却先の選定

売却の候補企業を選定していきます。M&Aアドバイザーが事前に伝えた希望条件に合う企業をリストアップするため、そこから選定することが一般的です。

この時点では、大まかな事業内容・所在地などをまとめた資料(ノンネーム)のみで詳細な情報は明かさない状態で絞り込みを行います。ノンネームシートには売り手の希望価格を記載します。高すぎると良い買い手を逃す可能性があるため、しっかりと検討の上適正価格を記載しましょう。そして、候補先が決まったらM&A仲介会社を通して交渉を打診し、具体的な交渉に進むことが決定したら、秘密保持契約を締結して互いの社名や詳細情報を開示します。

トップ面談・条件交渉

相手候補が決まったら、売却側・買収側のトップ同士が直接顔を合わせる場が設けられます。

これまで面識がなかった企業同士がM&Aを行うため、事前資料ではわからない経営理念やビジョンなどの部分を確認することが主な目的です。

トップ面談の目的は自社を任せられる相手先なのかを判断するこであるため、金額や条件などの具体的な交渉をすることはほとんどありません。

そして、互いがM&Aに前向きであれば細かな条件交渉を進めます。

基本合意の締結・デューデリジェンスの実施

トップ面談後にM&Aの条件などを交渉し大筋で合意できたら基本合意書の締結をします。基本合意書では、これまでに話し合われた買収の条件・独占交渉権・守秘義務・誠実交渉義務などが記載されます。

基本合意書の締結後、売却企業に対するデューデリジェンスが行われます。デューデリジェンスとは買収監査のことで、などさまざまな面から買収リスクを洗い出す調査を行います。

最終契約の締結・クロージング

デューデリジェンスによって買収して問題ないと判断された場合、最終交渉へ進みます。もしデューデリジェンスによりリスクや問題点が発見された場合、価格が引き下や新たな条件追加、M&Aが白紙になるケースもあります。

M&A内容について売却側・買収側が互いに合意し最終契約を締結したら、M&Aが成立となります。最終契約の内容はすべてにおいて法的拘束力があるため、しっかり確認しましょう。

また、職員の退職につながらないように職員への通知に関しては、事前に買い手・売り手で話し合っておきましょう。

監督官庁へ届出

学校法人のM&Aでは、監督官庁の認可が必要になります。理事の変更の場合は届出のみですが、経営権譲渡の場合は最終条件を調整する段階から早めに監督官庁と折衝することが重要です。

売却時期

売却時期に関しては、学校の新学期に合わせて手続きを進めるケースがあります。M&Aでは早くても半年近くかかることがあるため、早めの段階から専門家への相談や事前準備などを進めておくことが大切です。

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9. 学校法人のM&A事例

学校法人のM&Aは、株式会社同士のM&Aに比べると活発ではないものの、最近は少しずつ実施件数も増えてきました。ここでは、実際に行われた学校法人のM&A事例を紹介します。

学校法人天理大学と学校法人天理よろづ相談所学園とのM&A事例

2023年4月、学校法人天理大学と学校法人天理よろづ相談所学園は、合併による法人統合を行いました。本合併は学校法人天理大学を存続会社として行われ、学校法人天理よろづ相談所学園は消滅し解散します。

本合併は、統合による規模拡大によって大学運営の効率化を図り、財政基盤確保を目指すことが目的です。

また、互いの研究分野を連携し教育文化を一体化することで学修内容を広げ、積極的に社会貢献できる人材の育成を目指すとしています。

参考:学校法人天理大学・学校法人天理よろづ相談所学園「学校法人天理大学と学校法人天理よろづ相談所学園の 法人合併基本合意書の締結について 」

国立大学法人東京医科歯科大学と国立大学法人東京工業大学とのM&A事例

2022年10月、国立大学法人東京医科歯科大学と国立大学法人東京工業大学は、統合に向け基本合意を締結したと発表しました。統合には法改正が必要となるため時期は確定していませんが、2024年度中を目途として早期実現を目指すとしています。

両者はともに指定国立大学法人(文部科学大臣の指定を受けた国立大学法人のこと)です。それぞれ東京医科歯科大学(以下、医科歯科大)と東京工業大学(以下、東工大)とを設置しており、どちらも医療系と理工系でトップクラスの研究力を持っています。

指定国立大学法人同士が統合して新たに大学を設立する事例は史上初となり、統合後は1法人1大学となる予定です。

統合によって両者がそれぞれ培った知見と実績を結集させ、地球環境問題や新興感染症などのさまざまな課題解決が目指せるとしています。

参考:国立大学法人東京医科歯科大学・国立大学法人東京工業大学「統合に向けた基本合意書を締結」

学校法人永守学園と学校法人京都光楠学園のM&A事例

2021年4月、学校法人永守学園と京都光楠学園が合併により統合しました。本合併は永守学園が存続法人として行われ、京都光楠学園は解散します。

永守学園は京都先端科学大学・幼稚園・保育園を運営する京都市右京区の学校法人です。京都光楠学園も同区に位置し、京都学園中学および高校を運営しています。

本合併は、京都先端科学大学を中・高・大一貫校にすることを目的として行われたものです。一貫教育の実現により、グローバル社会で通用する人材育成を目指すとしています。

参考:学校法人永守学園・学校法人京都光楠学園 理事長「 学校法人永守学園と学校法人京都光楠学園との 合併基本合意書調印式について」

学校法人駿河台学園と株式会社リソー教育とのM&A事例

2019年07月、学校法人駿河台学園とリソー教育は資本業務提携を締結しました。駿河台学園は全国に「駿台予備学校」などを運営する学校法人であり、リソー教育は首都圏中心に完全個別指導の学習塾「TOMAS」などを運営しています。

本資本業務提携の目的は、超難関校の受験対策に特化した学習指導システムの確立です。子会社として「駿台TOMAS」を設立し、互いの強みを活かしてさらに品質の高い受験進学指導を提供していくとしています。

本締結で、駿河台学園はリソー教育の株式1033万3700株を取得したことで、同社の議決権割合は7.01%となりました。なお、リソー教育の駿河台学園へ対する出資などは行われません。

参考:株式会社リソー教育「学校法人駿河台学園との資本業務提携に関するお知らせ」

学校法人神村学園がウィッツ青山学園高等学校をM&Aした事例

2016年12月、東理ホールディングスは子会社である株式会社立ウィッツ青山学園高校の措置者交代を発表しました。

今回の措置者交代は、ウィッツ青山学園高校(三重県伊賀市)による不適切な単位認定や国の就学支援金詐欺が発覚したことが理由です。

2017年度以降は学校法人神村学園(鹿児島県いちき串木野市)が同校を運営することに決まり、新しく校名を「神村学園高等部伊賀分校」とし、ウィッツ青山学園高校の在校生を受け入れます。

ウィッツ青山学園高校の継続にあたっては7者から申し出がありましたが、高校教育の実績などから神村学園に決定されました。

参考:株式会社東理ホールディングス「当社子会社(㈱ウィッツ)が運営するウィッツ青山学園高等学校の 学校設置者の交代に関するお知らせ 」

VISITS WORKSと学校法人高宮学園とのM&A事例

2016年6月、VISITS WORKSと学校法人高宮学園は資本業務提携することを決定しました。VISITS WORKSは会員制ウェブサービス「VISITS OB」を運営する企業です。

「VISITS OB」はOB訪問プラットフォームで、サイト内では企業が社員のキャリア情報などが紹介されています。

高宮学園は代々木ゼミナールを全国運営している企業です。高宮学園は今回の資本業務提携と同時に、ウィルグループインキュベートファンドや代々木ゼミナールなどを引受先として第三者割当増資(2億5000万円)も行いました。

本件により、代々木ゼミナールは受験生にとってキャリアパス形成を考える機会につながるとし、一方のVISITS WORKSは、SAPIX YOZEMI GROUPの小学生~高校生とその保護者、および卒業生に対してもキャリア情報を公開するとしています。

参考:株式会社VISITS WORKS「「VISITS OB」運営の VISITS WORKS が総額 2.5 億円の増 資を実施。代々木ゼミナールと資本業務提携し、共同で小中高 生および保護者向けの新たなキャリア教育サービスを開発」

京都大学が関西ティー・エル・オーをM&Aした事例

2016年2月、学校法人京都大学は関西ティー・エル・オー株式会社の株式を追加所得し、保有率を約40%から約68%へと引き上げました。関西ティー・エル・オーは大学の特許を企業へ技術移転する機関です。

国立大学法人法により国立大学は承認TLOへの出資が認められており両者は以前から連携関係にありましたが、大学の技術シーズは企業にとって事業性を判断できる段階でないものも多いのが課題となっていました。

京都大学は事業化へつなげるためには、優れた技術移転能力をもつ外部機関との連携強化が必要と判断し、本件により本格的な知財活動を展開していくとしています。

参考:国立大学法人京都大学「関西ティー・エル・オー株式会社の株式取得 -産官学連携活動の一層の強化・推進-」

10. 学校法人のM&Aまとめ

少子化の加速化によって、学校法人の経営環境は今後さらに厳しさを増すと考えられます。そのようななか、戦略的に売却・M&Aを行う学校法人も増えてきました。

M&A市場における学校法人のM&A案件は、現在のところまだ多いとはいえませんが、M&Aによって新たな事業展開ができれば、学校法人のさらなる社会的認知度向上にも期待できます。

よいよいM&Aを実現するためには、できるだけ早期から専門家に相談し、計画的に進めていくことがポイントといえるでしょう。

11. 学校法人・専門学校業界の成約事例一覧

12. 学校法人・専門学校業界のM&A案件一覧

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