2024年03月19日更新
【2024】鉄鋼業界のM&A動向と事例を紹介!最新の市場の動きは?
鉄鋼業界では、大手企業の再編や新規エリアへの規模拡大を目的としたM&Aが増えています。中堅・中小企業に関しては、大手グループに傘下入りすることで企業成長を図る事例も見受けられます。本記事では、鉄鋼業界のM&A動向の解説やM&A事例を紹介します。
1. 鉄鋼業界の現状
日本の鉄鋼業界は、確かな技術力を武器に市場シェアや高い評価を獲得し続けてきました。しかし、近年は海外企業の台頭により、日本の鉄鋼業界の立場が危うくなりつつあります。
鉄鋼業界の立て直しには再編が必要という声も上がっており、大手企業のなかには合併・M&Aによる統合を推し進める動きもみられます。
この章では、鉄鋼業界の概要や特性、鉄鋼業界が現在抱えている深刻な課題について紹介します。
鉄鋼業界とは
鉄鋼業界とは、鉄鋼メーカーや鉄鋼製品を仕入れて、ほかの業界へ販売する卸を行う事業者が属する業界を指し、鉄鋼メーカーには高炉メーカーや電気炉メーカーなどがあります。
高炉メーカーは、原料の鉄鉱石で鋼鉄を生産する工程から転炉工程や連続鋳造工程を経て、粗鋼まで一貫生産しているメーカーです。
電気炉メーカーは、鉄くずを原料として電気炉を使って鉄鋼を生産する鉄鋼メーカーです。一般的に棒鋼・形鋼・平鋼・鋼板を主力製品としています。
鉄鋼製品の卸売業は、流通過程の段階で一次~三次卸に分けられます。一次卸は高炉メーカーのグループ系列が担うことが多く、二次・三次卸は中堅・中小の鉄鋼メーカーが手掛けることが多いです。
鉄鋼業界の特性
鉄鋼業界のM&Aを検討する際は、目的や方向性を定めるためにも鉄鋼業界の現状と特性を把握しておくことが大切です。特に押さえておくべき鉄鋼業界の特性は以下の2つです。
【鉄鋼業界の特性】
- 市場価格の変動が仕入価格に大きく影響する
- 中小事業者は特定業界への依存度が高い
市場価格の変動が仕入価格に大きく影響する
日本鉄鋼連盟のデータによると、粗鋼生産量の約4割が海外輸出に向けられていることが判明しています。外需依存度が高いため、市場価格の変動に大きな影響を受けやすいことが分かります。
鉄鋼業界の商材である高炉材や電炉材は、グローバルに取引されています。高炉材は投機対象の鉄鉱石・原料炭、電炉材は鉄くずの市場価格の変動による影響を受けます。
中小事業者は特定業界への依存度が高い
鉄鋼業界の中堅・中小の卸売業は、取引先になりうる業界が限定的という特徴があります。そのため、取引量に関して特定業界への依存度が高いのが現状です。
取引先の業界が不況に陥った時は、取引量の減少や売掛金の未回収リスクも高まります。特に、鉄鋼業界は与信期間が長く、売掛金の総額が高くなる傾向にあります。
国内の鉄鋼業界は深刻な現状
鉄鋼業界は、国内需要の減少の影響で海外進出が必要不可欠とされている業界です。生き残りのためには国内競争だけでなく、海外の大手企業との競争にも目を向けなくてはなりません。
しかし、近年は中国などの鉄鋼メーカーの成長が目覚ましく、世界の粗鋼生産量の約50%を占めるほどに成長しています。
世界中に安価の粗鋼製品が輸出されることで、国内の鉄鋼業界の経営状況はより厳しくなりつつあります。
また、新型コロナウイルスが長期化した場合、鉄鋼業界と関連性が高い自動車メーカーの生産量の低下も懸念されます。内需・外需の縮小は避けられないため、鉄鋼業界の現状は深刻であるといえます。
2. 鉄鋼業界が抱える課題とは
鉄鋼業界で再編が進められる背景には、業界全体が深刻な課題を抱えていることがあります。この章では、鉄鋼業界が抱える課題について解説します。
【鉄鋼業界が抱える課題とは】
- 競争力の低下(量的側面)
- 電炉比率上昇や業界再編が喫緊の課題
- 原材料調達が難しくなった場合への対策
1.競争力の低下(量的側面)
国内の鉄鋼業界は、確かな技術力により高い開発力・生産量で推移し世界での競争力も維持してきました。
特に、高級鋼等の開発力は他国との差別化に成功していますが、最近は中国や韓国等の鉄鋼メーカーの台頭により量的側面からみた競争力は低下し続けています。
世界での競争力の低下の結果、国内の鉄鋼メーカー同士の競争激化にも繋がり、鉄鋼需要の伸び悩みで鋼材平均単価の大幅下落という状況に陥っています。
2.電炉比率上昇や業界再編が喫緊の課題
鉄鋼業界は高炉メーカーと電炉メーカーに大別されます。世界での競争力が求められている現在では、建築・土木業界からの需要が高い電炉メーカーのほうが外需獲得に繋がりやすいと考えられています。
世界各国の鉄鋼業界をみると、高炉よりも電炉比率が上昇しており、外需獲得に向けて積極的に再編を進めていることが分かります。
一方、国内の鉄鋼業界の電炉比率は約24%(東京製鐵調べ)です。先進国のなかで最も低い比率で外需獲得競争で置いていかれることが懸念されており、業界再編が急務とされています。
また、電炉メーカーは、鉄くずのリサイクルという面でも大きな役割を持っています。電炉比率を上げて都市鉱山として蓄積された大量の鉄くずを有効活用できる環境を整えることも課題とされています。
3.原材料調達が難しくなった場合への対策
国内の鉄鋼業界は、鉄鋼製造の原材料の大半を輸入で調達しています。国内の生産力が低下しているため、高い運賃を支払ってでも海外から輸入しなくてはならない状況です。
現在は、供給と需要が成り立っていて製造ルートも安定していますが、輸入ルートが遮断された時は原材料不足になることが予測されるため対策が急務とされています。
しかし、原材料の調達を国内でまかなうためには、国内の生産力増強やシェア拡大が必要不可欠です。先に挙げた2つの課題に通じるものがあるため、課題解決のためにはまとめて取り組む必要があります。
3. 鉄鋼業界のM&A動向
鉄鋼業界では、課題解決に向けてM&Aを実施する動きが強まっています。鉄鋼業界のM&A動向は以下の3つが挙げられます。
【鉄鋼業界のM&A動向】
- 大手企業同士の合併・M&Aなどによる再編
- M&Aによる中堅・中小企業の大手傘下入りが増加
- 需要を求め新規エリアへの規模拡大も増加傾向
大手企業同士の合併・M&Aなどによる再編
鉄鋼業界では国内需要の低下に対応するため、大手企業同士の合併・M&Aで再編を進めて事業の効率化を図る動きが加速しています。
海外企業の買収にも積極的な姿勢をみせており、年々激しさを増す外需獲得競争への対応も急いでいます。
M&Aによる中堅・中小企業の大手傘下入りが増加
大手企業同士の大規模なM&Aが目立つ一方で、中堅・中小企業は大手企業の傘下に加わる流れができつつあります。
大手の傘下に加わって経営資源を活用することで、激化する競争環境を生き残ろうとする狙いがあります。今後も鉄鋼業界の競争は激しくなるとみられているため、大手傘下入りのM&Aは増えていくと予測されています。
また、鉄鋼業界の中堅・中小企業では、後継者不足が深刻化しています。経営者の高齢化が進んでいるものの、後を継げる人材がいないことで廃業危機に瀕している企業もあります。
M&Aで大手へ傘下入りすれば、派遣されてくる役員等に経営を任せることができます。経営者交代による影響も抑えやすくなるので、後継者問題の解決を目的にM&Aを実施する企業も少なくありません。
需要を求め新規エリアへの規模拡大も増加傾向
鉄鋼業界に限らず、日本は低成長・少子高齢化の影響で様々な業界で国内需要が低下しています。
鉄鋼業界や各鉄鋼メーカーが生き残るためには、新規エリアへの規模拡大が必要不可欠と考えられています。
特に海外進出は急務とされており、大手以外に中堅・中小も海外の鉄鋼メーカーとのM&Aを進めています。
4. 鉄鋼業界のM&A事例
鉄鋼業界では多くの鉄鋼メーカーがM&Aを実施しています。この章では、鉄鋼業界の大手企業によるM&A事例を5つ紹介します。
1.小野建による森田鋼材のM&A
2019年10月、小野建は森田鋼材の全株式を取得して完全子会社化することを公表しました。株式の取引価格は非公表となっています。
森田鋼材は、大阪府門真市を拠点として、鉄筋コンクリート用異形棒鋼の加工・販売・施工を手掛ける鉄鋼会社です。
京阪神エリアにおいて強固な顧客基盤を有しており、地域密着型の優良企業として高い評価を得ています。
小野建は森田鋼材の技術・ノウハウを活用することで、関西エリアにおける取引量拡大やサービスの質向上を図り、地域密着型のビジネス展開に臨むとしています。
2.新日鐵住金による山陽特殊製鋼のM&A
2018年8月、新日鐵住金は山陽特殊製鋼の株式を取得して子会社化することを公表しました。株式取引は第三者割当増資で行われ、約672億円を投じて所有割合を15.3%から51.5%に引き上げました。
山陽特殊製鋼は、自動車・産業機械・風力発電等の重要素材である特殊鋼製品を扱う鉄鋼会社です。世界的に特殊鋼市場の競争が激化するなか、鉄鋼業界のなかでも注目を集めている鉄鋼会社の1つです。
今後は、ネットワークの相互活用や効率的な生産の追求を通してグループの企業価値向上を目指すとしています。
なお、山陽特殊製鋼は50億円以上、新日鐵住金グループでは100億円程度の年間効果が見込まれています。
3.伊藤忠丸紅鉄鋼によるStrait-FlexのM&A
2017年7月、伊藤忠丸紅鉄鋼は米国の関連会社Clarkwstern Dietrich Building Systems LLC(CDBS)を通じてStrait-Flex(アメリカ)を買収しました。
Strait-Flexは、樹脂と紙を組み合わせた複合材を原料とする建材製品を製造・販売している建材会社です。
今回の買収により、伊藤忠丸紅鉄鋼はCDBSの既存の鉄製及びビニール製の製品に加えて、複合材の建材製品もラインナップに加えることになります。
今後、米国内でCDBSの対面業界である住宅・非住宅建築分野の市場が拡大すると考えており、同分野に経営資源を投入することでグループ全体の収益基盤を強化する狙いがあります。
4.新日鐵住金による日新製鋼のM&A
2017年3月、新日鐵住金は日新製鋼の株式を取得して子会社化することを公表しました。株式取得はTOBで行われ、新日鐵住金の株式の所有比率は51%に引き上げられます。
日新製鋼は、耐腐食性の強い合金メッキや、自動車向け鋼板とステンレス鋼を主力とする鉄鋼会社です。北米・スペイン・中国等に拠点があり、海外市場の獲得競争にも強みを持っています。
新日鐵住金は、2018年3月期までに3000億円規模の「グローバル競争力の強化」を掲げています。世界中の鉄鋼業界が再編機運をみせるなか、新日鐵住金も日新製鋼を傘下に加えることで外需獲得を目指します。
なお、2019年1月1日付で新日鐵住金は、日新製鋼を完全子会社化しています。同年4月に日本製鉄へと社名変更し、新日鐵住金とのステンレス鋼板等の主力事業について新日鐵住金と統合し、収益基盤を広げる狙いです。
5.伊藤忠丸紅鉄鋼によるMSSステンレスセンター事業のM&A
2017年1月、伊藤忠丸紅鉄鋼は三井物産スチールと日新製鋼が共同出資するMSSステンレスセンターの新潟支社(山文センター)事業を分割買収することを公表しました。
MSSステンレスセンターは、ステンレス鋼材の加工・販売を手掛ける鉄鋼会社です。本件により保有するセンターの1つである新潟の新潟県燕市大曲のセンターを譲渡することになりました。
買収後は同センターの名称を「山文ステンレス株式会社」と改め、株式の40%を阪和工材に譲渡して共同経営するとしています。これにより東日本での加工能力不足を補い、新潟地区でのステンレス事業の拡充を図ります。
5. 鉄鋼業界のM&Aにおすすめの相談先
鉄鋼業界ではM&Aが活性化していますが、M&Aを検討するためには相応の知識が求められます。M&Aのことであれば、M&A仲介会社に相談することをおすすめします。
鉄鋼業界のM&Aを検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は、幅広いネットワークと独自のAIシステムを活用することで高精度のマッチングサービスを提供しています。
M&Aの経験と実績が豊富なアドバイザーが仲介をフルサポートします。売り手・買い手の間で条件のすり合わせを行い、友好的なM&Aの実現を目指します。
M&Aの料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。
鉄鋼業界のM&Aに関して無料相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
6. まとめ
鉄鋼業界は再編機運が高まっており、さまざまな会社がM&Aを検討しています。M&Aを成功させて企業成長を図るためには業界の動向を察知しておくことが大切です。
なお、M&Aを検討する際はM&Aの専門家に相談することをおすすめします。専門的知見によるアドバイスを受けることで計画性のあるM&A進行が可能となります。
【鉄鋼業界の特性】
- 市場価格の変動が仕入価格に大きく影響する
- 中小事業者は特定業界への依存度が高い
【鉄鋼業界が抱える課題とは】
- 競争力の低下(量的側面)
- 電炉比率上昇や業界再編が喫緊の課題
- 原材料調達が難しくなった場合への対策
【鉄鋼業界のM&A動向】
- 大手企業同士の合併・M&Aなどによる再編
- M&Aによる中堅・中小企業の大手傘下入りが増加
- 需要を求め新規エリアへの規模拡大も増加傾向
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