合併とは?意味や種類、メリット、手続き、会計処理など徹底解説【代表事例あり】

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

合併とは、2つ以上の会社が1つの法人格になるプロセスを意味しますが、合併するとどのようなメリットが得られ、買収とは具体的に何が異なるのでしょうか。この記事では、合併の意味やメリット、必要な手続きと会計処理、買収との違いを解説します。

目次

  1. 合併とは
  2. 合併の種類
  3. 合併のメリット
  4. 合併のデメリット
  5. 合併を行う手続き・流れ
  6. 合併の登記方法・契約書
  7. 合併するときの会計処理
  8. 合併するときの税務
  9. 合併における法務・会計面の注意点
  10. 合併した企業とその事例
  11. 合併における売り手の選び方
  12. 合併に関する相談はM&A総合研究所にお任せください
  13. 合併のまとめ
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1. 合併とは

合併とは

合併とは、2つ以上の企業が1つの企業になるプロセスです。独立した企業同士で行われるケースや、グループ内の再編としてグループ内企業で行われるケースがあります。

A社とB社が合併してC社になるケースもあれば、A社がB社に吸収されてB社となるケースもあるのです。合併はM&Aの手法の1つですが、買収とよく混同されがちなので、合併と買収の違いを確認しましょう。

以下の記事で合併の手法を詳しく紹介していますので、興味のある方は併せて確認してください。

合併の意味

合併とは、既存の2つ以上の会社を1つの新しい会社に統合する契約をいいます。

合併にはいくつかの種類があり、企業が合併を行う理由もいくつかあるのがふつうです。合併は、企業の範囲を拡大したり、新しい分野に進出したり、市場シェアを獲得することを目的に行われるものです。

英語で合併は「merger」と呼ばれます。

合併によるM&A(企業再編)は、他社を完全に獲得するスキームとして使われます。グループ企業の組織再編・業績不振の企業における救済・税務メリットの獲得など、さまざまな目的で用いられます。

合併と買収の違い

合併と買収の違いは、1つの企業になるかならないかです。合併では2つ以上の会社が1つの会社になりますが、買収は1つの会社が別の会社の資産や経営権を買い取ります。そのため、買収の場合、2つの企業は存続するでしょう。

ニュースなどで「A社がB社を買収した」と聞きますが、この場合B社は存続します。

合併には2つの種類があるので注意してください。A社がB社を吸収合併した場合は、B社は解散しA社と同一会社になります。しかし、A社とB社が新設合併した場合は、A社もB社も解散し1つの同一企業となるのです。

合併とM&Aの違い

M&AはMergers and Acquisitionsの頭文字を取ったもので、日本語では「合併と買収」です。複数の会社を1つに統合したり、会社が他社から事業や株式を買収したりするスキームの総称が、M&Aになります。

つまり、M&Aとは、合併、買収、統合、公開買付け、資産の購入、経営陣の買収など、さまざまな種類の金融取引を通じて企業や資産を統合するプロセスを総称したものです。

合併とM&Aの違いは、意味の範囲の違いで、合併は複数の企業を統合するプロセスをいいます。一方でM&AAは合併に限らず、株式や事業の買収も含むプロセスになります。

【関連】合併(吸収合併)と買収の違いは?M&A手法を徹底解説!

2. 合併の種類

合併の種類

合併には、「吸収合併」と「新設合併」がありますが、一般的には新設合併をすると手続きが煩雑になるため、吸収合併を選ぶのがほとんどです。

吸収合併と新設合併にどのような違いがあるのか確認しましょう。

吸収合併

吸収合併とは、1社が残り他の企業が解散して消滅するプロセスです。吸収される消滅会社をA社、吸収する存続会社をB社と仮定しましょう。B社は吸収合併により、A社の持つ資産や負債、すべての契約をそのままの条件・内容でB社に承継されます。

つまり、B社のすべてをA社が引き継ぐ形です。新しい会社を設立しないので、作業や承継の手続きが不要となります。そのため、「合併」の場合、多くの企業が吸収合併を選ぶのです。吸収合併の場合、A社の株主が持つA社の株とB社の株を交換します。

新設合併

新設合併とは、合併するすべての企業を解散して新しく会社を設立するプロセスです。吸収合併では合併後存続する会社がすでに存在しますが、新設合併では合併後存続する会社を合併手続きにより新たに設立します。

合併して消滅する2社をA社・B社、合併後設立する新設会社をC社としましょう。A社とB社の合併により、A社とB社の持つ資産や負債、すべての契約をそのままの条件・内容でC社に承継されます。この点は吸収合併と同じです。

しかし、新しく会社を設立する手間やA社からC社、B社からC社への承継手続きの量を考えると、新設合併の方が実務面で大変になります。会社の設立で登録免許税が発生したり、合併で社名が変わり今までのブランドが生かせなかったりするなど、デメリットも多いです。

吸収合併と新設合併では得られる効果はそれほど変わりませんが、新設合併のデメリットが大きいため、吸収合併が選ばれやすいといえます。新設合併の場合は、C社の株を対価としてA社とB社に渡されます。

吸収合併と新設合併の相違点まとめ

吸収合併と新設合併の一番大きな相違点は、合併の手続きが異なる点です。

新設合併は新しく会社を設けるため、その手続き、許認可の申請、上場申請などが必要となります。他方で、吸収合併は、既存の会社が権利などをそのまま引き継ぐため、基本的に手続きはいりません。

新設合併は、吸収合併よりも登録免許税の額が高くなりがちです。その理由は、新設合併では、合併の対価として株式を交付するのが原則であり、それによって資本金が増加した分だけ、登記の際の登録免許税が高くなるからです。

したがって、新設合併は吸収合併より手続きや税金の点で不利なので、M&Aにおいては、吸収合併を用いるケースが多いといえます。中小企業のM&Aで特に多いのは、吸収合併です。

【関連】【保存版】吸収合併とは?吸収合併・新設合併との違いやメリット・デメリットを解説!

3. 合併のメリット

合併のメリット

合併のメリットは5つです。

  1. シナジー効果を発揮しやすい
  2. 資金調達せずにM&Aができる
  3. 個々の財産移転の手続きがいらない
  4. 対等な立場によるM&Aをイメージさせやすい
  5. コストの削減・信用力の強化

それぞれ詳しく見ていきましょう。

①シナジー効果を発揮しやすい

合併をすると、シナジー効果を発揮しやすくなります。組織が一体となるので、互いのノウハウを生かしたり補完したりできるからです。シナジー効果とは、買い手企業の強みと売り手企業の強みが組み合わさって、より大きな強みが生まれるケースを指します。

期待できるシナジー効果は、以下のとおりです。
 

  • 顧客倍増・販売ルート拡大による売り上げ増加
  • 重複部門の削減や仕入れ先の効率化によるコスト削減
  • 互いの持つ開発技術や研究内容を生かした新商品の開発

同じ組織として活動することで、これらのシナジー効果がより発揮されます。

②資金調達せずにM&Aができる

合併は資金調達せずにM&Aを行う方法です。吸収合併でも新設合併でも、対価は株式の交付なので現金を用意する必要はありません

企業が現金を集めるために、時間がかかるケースもあります。合併であれば、「資金を集めている間にM&Aの機会を逃した」とならないのです。

③個々の財産移転の手続きがいらない

合併であれば、個々の財産移転の手続きは不要です。顧客との契約、権利義務、従業員などを承継させるために、わざわざ個別で手続きする必要がありません

買収であれば、個別での手続きが必要なので手間がかかります。買収した社員をそのまま働かせたい場合は、従業員は一度企業を退職し、買収された企業と改めて雇用関係を結ぶ必要があるのです。こうした手続きが合併では不要のため、手続きをスムーズに進められます。

④対等な立場によるM&Aをイメージさせやすい

株式譲渡事業譲渡は、身売りといって売却側へマイナスな印象を持つ傾向がありました。最近でも売却側が相対的に立場が低いと考える人がいます。

その一方で、合併によるM&Aは、「対等合併」で複数の会社を1つに統合できるのです。対等合併とは、一般的に売却側と買収側が対等な立場で合併するケースをいいます。

2社以上の企業が事業を統合する際、会社法上は、存続企業と消滅企業に分けて統合されますが、それは法律上そのようにみなされるだけです。

実務上では、合併する際の株式の比率を1対1に設定したり、消滅する会社の社名などを残したりして、対等をアピールするケースが少なくありません。

合併の目的は企業によってさまざまですが、共通する普遍的な目的は、会社の価値を高める点にあります。

⑤コストの削減・信用力の強化

合併では、消滅会社から事業用の資産、優秀な人材、販売網などを得て、事業規模を広げるのが見込めます。

事業規模が広がると、仕入れコストが減ります。原材料の一括購入などで規模の経済を実現し、コスト削減につながるのです。信用力が高まったり、生産能力が効率化したりするなどのメリットが生じます。

4. 合併のデメリット

合併のデメリット

続いて、合併のデメリットを確認します。合併のデメリットは4つです。

  1. 統合作業が大変である
  2. 株価が下がる可能性がある
  3. 手続きに多くの労力・時間・費用がかかる
  4. 取引規模を縮小するおそれ

それぞれ詳しく見ていきましょう。
 

①統合作業が大変である

合併の場合、組織が1つになるので統合作業が大変です。統合作業とは、組織が1つになった後、システムや従業員を1つの組織として機能させるために必要な作業をいいます。

たとえば、以下の作業を行います。

  • 経営戦略とビジョンの浸透
  • 人事制度の統合
  • 報酬・評価制度の統合
  • ITシステムの統合

社員が新しい風土になじめる工夫も必要です。これらの統合作業に失敗すると、社員のモチベーションが低下するでしょう。そうなれば、シナジー効果の発揮どころか生産性が下がりかねません。

生産性向上やシナジー効果を発揮するためにも、統合作業は必須です。合併前から経営者同士で、どのように統合していくのか話し合いましょう。

②株価が下がる可能性がある

合併をすると株価が下がってしまう可能性があります。投資家が「合併後に十分な利益が生み出せない」と判断すれば、株価は下落するのです。そのため、いかに魅力的な合併であるかを投資家たちにアピールする必要があります。

しっかりとアピールすれば株価が上がる可能性もあるのです。合併が将来的な収益につながることをアピールしてください。

③手続きに多くの労力・時間・費用がかかる

株式譲渡は、基本的に譲渡承認申請、取締役会決議、株主名簿の書き換えなど社内での手続きだけで手続きを完了させられます。

しかし、合併は、事前・事後開示事項の備置き、債権者保護手続き、株主総会の特別決議など、社内だけでなく社外の利害関係者も含んだ手続きが多くなります。

合併に多くの手続きが必要である理由は、合併が権利・義務関係を引き継ぐプロセスにほかならないからです。

会社にはそれぞれさまざまな利害関係者が存在します。利害関係者が不利益を被らないように合併の手続きを進めなければいけません。したがって、合併には多くの手続きが必要となるのです。

簡易合併や略式合併であれば、手続きがやや減ります。しかし、基本的には上記の手続きを行うので、多くの労力・時間・費用を必要とするでしょう。

④取引先が被っていると取引規模が縮小するおそれ

同業他社と合併する場合、複数の会社が1つになるため顧客が重なるケースがあります。

特に、合併の際にはシナジー効果を得るために、同業の会社と合併することが多いので、どうしても抱えている顧客が重なってしまいがちです。

顧客の取引先が1社となるので、重複をなくすために、取引量や取引回数など取引の規模が縮小される可能性があるため注意が必要となります。

【関連】合併のメリット・デメリット25選!

5. 合併を行う手続き・流れ

合併するときに必要な手続き

続いて、合併するときに必要な手続きを確認しましょう。合併を検討し始めてから合併契約書を交わすまで3カ月~1年程度、合併契約書を交わしてから効力発生までは半年~1年程度の時間がかかります。

合併契約書を交わした日から合併の効力を持つわけではありません。効力発生日は、合併契約書に記載されますが、その後に行わなければならない手続きが多くあります。

社員が新しい風土になじめる工夫も必要です。これらの統合作業に失敗すると、社員のモチベーションが低下するでしょう。そうなれば、シナジー効果の発揮どころか生産性が下がりかねません。

生産性向上やシナジー効果を発揮するためにも、統合作業は必須です。合併前から経営者同士で、どのように統合していくのか話し合いましょう。

同時進行で行うケースもありますが、一般的に行われる順番に解説します。

①合併契約書の締結

まずは、合併契約書の締結が必要です。合併相手との条件が一致し、双方の取締役会における承認が下りたら合併契約書を締結します。

合併契約書には以下の内容を記してください。

  • 効力発生日(合併する日)
  • 存続会社が消滅会社の株主に対して交付する対価
  • 対価の算出方法
  • 合併による商号および住所

その他、新役員の選任や株主総会の日程など、必要な内容を盛り込むこともあります。

②事前開示書類の備置

合併契約書を締結した後は、事前開示書類の備置する必要があります。

事前開示書類の備置は、会社法で規定されている法定事項であるので、必ず行わなければなりません。

存続会社および消滅会社は、株主と債権者へ事前開示書類を作成する必要があります。これは、会社の利害関係者が合併の適否を判断できるようにするためです。

事前開示書類には、合併契約の内容や会社の計算書類などが定められています。特に配布の必要はなく、本店に備え置くだけで問題ありません。備え置く期間は、合併効力発生日後6カ月を経過するまでとなります。

③株主総会での承認

存続会社および消滅会社の株主総会で、合併契約の承認を得る必要があります。株主総会による承認は、合併効力発生日の前日までに受けなければなりません。合併の決議は、特別決議による承認が必要です。

特別決議とは議決権を持つ株主の過半数が出席する株主総会で、3分の2以上の賛成によって成立します。

④利害関係者の保護手続き

続いて、存続会社および消滅会社の利害関係者(債権者や株主)を保護する手続きを行います。合併すると、債権者や株主に大きな影響を与える可能性があるからです。具体的には、合併の情報を公開し、異議を述べる機会を与えることをさします。

4つの手続きが必要なので確認しましょう。

①官報公告 以下の内容を官報公告にて掲載
・合併する旨
・合併する相手の商号と住所
・貸借対照法の要旨
・利害関係者が異議を述べられる期間
②利害関係者への個別催告 以下の内容を個別催告
・合併する旨
・合併する相手の商号と住所
・貸借対照法の要旨
・利害関係者が異議を述べられる期間
ただし、新聞紙・電子公告した場合は個別催告が不要
③利害関係者異議手続き 利害関係者は、指定期間に異議を述べることが可能
期間内に異議を述べなかった場合は合併を承認したとみなされる
期間中に異議を述べた利害関係者へ、合併を行ったときに弁済や相当の担保を提供するなどの手当てが必要
④消滅会社の株券など提示公告 消滅会社が株券を発行しているとき、効力の発生日1カ月前までに、株券などの提出公告と株主への合併通知が必要

この手続きをして、存続会社および消滅会社の利害関係者に影響を与えずに合併できます。

⑤反対株主の株式買取請求手続き

合併に反対する株主がいる場合は、株式買取請求手続きを行わなければなりません。存続会社および消滅会社は、合併効力発生日の20日前までに株主へ合併する旨の通知を行います。その通知にて、買取請求も記載する必要があるのです。

⑥効力発生および登記

合併の効力発生日を迎えると、法律上合併されます。合併の効力発生日から2週間以内に、存続会社の変更登記と消滅会社の解散登記を行ってください。

消滅会社の権利義務はすべて存続会社に承継されます。預金・土地・建物などの資産は存続会社への名義変更が必要です。

存続会社は消滅会社から承継した権利義務や合併手続きの経過を記した書類を作成する必要があります。この書類は効力の発生日から6カ月間が経過するまで、本店に備え置かなければなりません。

⑦事後開示書類の備置

存続会社は、効力発生日後、消滅会社から引き継いだ権利義務やその他の事項を記載した書面、あるいは電磁的記録をすぐに作成します。作成した書面は、効力発生日から6カ月間、本店に備え置いてください。

6. 合併の登記方法・契約書

合併の登記方法

吸収合併が完了したら、効力発生日から2週間以内に吸収合併存続会社の変更登記と吸収合併消滅会社の解散登記を行わなければなりません。

通常、合併においてこのプロセスは同時に行われます。法務部など、法律に詳しい部署がある場合は、社内で2つの登記手続き同時に行えます。

任せられる部署や人が社内にいない場合は、司法書士や弁護士に頼むのも可能です。

ここでは、社内で2つの登記手続きを行う際の手順を説明するので確認してください。

まずは、存続会社の変更登記申請書と消滅会社の解散登記申請書を作成します。吸収合併の変更登記申請書および消滅会社の解散登記申請書は、法務局からダウンロードが可能です。

消滅会社の解散登記は、本店所在地以外に支店所在地でも行わなければなりません。存続会社の変更登記は多くの添付書類提出が求められたり、登記に必要な税金が発生したりするので、事前に確認しましょう。

存続会社の変更登記で必要な添付書類

存続会社の変更登記で必要な添付書類は全部で10種類です。
 

  • 合併契約書
  • 株主総会の議事録
  • 略式合併・簡易合併の場合、その要件に該当することを証明する書類
  • 債権者保護手続きを行ったことを証明する書類
  • 消滅会社の登記事項証明書
  • 消滅会社の株券提供公告をしたことを証明する書類
  • 消滅会社の新株予約権証券提供公告をしたことを証明する書面
  • 資本金の額の計上に関する証明書
  • 主務大臣の許認可
  • 委任状

10種類の書類を詳しく確認しましょう。

合併契約書

当事会社間で交わした合併契約書が必要です。吸収合併が行われたのを証明するために提出が求められます。

株主総会の議事録

存続会社および消滅会社の株主総会議事録が必要です。株主総会で合併が認められたのを証明するために提出が求められます。

略式合併・簡易合併の場合、その要件に該当することを証明する書類

略式合併や簡易合併をする場合、その要件に該当するのを証明する書類が必要です。略式合併や簡易合併をする場合はどちらかの株主総会議事録がないため、その要件を満たしている証明をしなければなりません。

略式合併は、存続会社が消滅会社の総株主における議決権90%以上を保有する場合に認められます。株主総会を開かなくても90%の可決にて承認を得るのが決まっているからです。消滅会社の株主総会は不要となります。

簡易合併は、存続会社が消滅会社に交付する合併対価の額が、存続会社における純資産の5分の1以下である場合に認められます。純資産の5分の1であれば存続会社の影響は小さいと判断されるからです。存続会社の株主総会は不要となります。

利害関係者保護手続きを行ったことを証明する書類

利害関係者保護手続きを行ったのを証明する書類が必要です。合併公告をした官報や個別催告を実施したのがわかる書類を用意しなければなりません。

期間中に異議を述べた利害関係者がいれば、その利害関係者に対して弁済などを行ったのを証明する書類の提出も必要です。異議を述べた利害関係者がいなかった場合は、いなかった点を申告しましょう。

消滅会社の登記事項証明書

消滅会社における本店所在地の管轄登記所と存続会社における本店所在地の管轄登記所が異なる場合、登記簿記録された登記事項証明書が必要です。管轄登記所が同じ場合は、不要な書類となります。

消滅会社の株券提供公告をしたことを証明する書類

消滅会社の株券提供公告をしたのを証明する書類が必要です。消滅会社が株券発行会社である場合のみ、提出が求められます。

消滅会社の新株予約権証券提供公告をしたことを証明する書面

消滅会社の新株予約権証券提供公告をしたことがわかる書類の提出が必要です。消滅会社が新株予約権証券を発行している場合のみ、提出が求められます。

資本金の額の計上に関する証明書

吸収合併により、存続会社の資本金が増加した場合、計上されたのを証明する書類の提出が必要です。存続会社の資本金が増加しなかった場合は、提出が求められません。

主務大臣の許認可

公益的要請の強い事業を営む会社(銀行や保険会社)は主務大臣の許認可が必要です。該当する場合は、添付資料として主務大臣の許認可提出が求められます。

委任状

弁護士や司法書士などの代理人によって登記申請が行われる場合、委任状の提出が必要です。

変更登記と解散登記で発生する登録免許税額

合併を行うときに必要な登記は、変更登記と解散登記で最低6万円の登録免許税が発生します。存続会社における合併登記の登録免許税は、増加した資本金の1000分の1.5がかかるので覚えておきましょう。3万円に満たなくても、最低3万円の登録免許税が発生します。

一方、消滅会社における解散登記の登録免許税は一律3万円です。合計すると、最低でも6万円の登録免許税を支払う必要があります。

【関連】吸収合併の登記の手続き・必要書類を解説!申請の費用はいくら?

7. 合併するときの会計処理

合併するときの会計処理

合併した場合、会計処理方法も考えなければなりません。この章では、吸収合併における存続会社の会計処理と消滅会社の会計処理を順番に見ていきましょう。

のれんの基礎知識

のれんとは、消滅会社における純資産の時価と取得原価(合併のために発行した株式の時価)の差額です。つまり、時価純資産額と買収金額の差額になります。

時価純資産額を買収金額が下回ると負ののれんが計上され、のれんは資産、負ののれんは負債として貸借対照表に計上します。

のれんは、ある企業が別の企業を買収した際に発生する無形資産です。

具体的には、買収価格のうち、買収で購入したすべての資産の公正価値と引き受けた負債の純額の合計よりも高い部分をのれんと呼びます。

のれんは、具体的には、企業のブランド名、強固な顧客基盤、良好な顧客関係、良好な従業員関係、独自の技術などの価値です。

貸借対照表に計上したのれんは、日本の会計基準では、20年以内に定額法などで計算した額を規則的に償却し、想定した収益力を見込めなければ減損処理を行わなければなりません。

合併などM&Aで計上するのれんは、売却側の無形資産を金銭的に見積もったものです。売却側が無形資産を高く見積もれば、計上するのれんの額は大きくなるといえます。

通常取得における仕訳

会社が他の会社から経営支配権を得るのが、会計ルールの「取得」です。逆合併でなければ、会計上、合併は取得として処理されます。消滅会社の支配株主が存続会社の支配株主に入れ替わるのは「逆取得」です。

通常取得に該当すれば、存続会社が消滅会社の資産や負債を時価で受け取ります。買収価格と時価純資産の差額を、のれんとして計上するのです。のれんは無形資産であり、貸借対照表に表示されます。

存続会社の会計処理

存続会社の会計処理は、のれんを加味しなければなりません。存続会社の個別財務諸表に、消滅会社の純資産(資産・負債)を時価で入れ、のれんを計上します。前述どおり、のれんは消滅会社における純資産の時価と取得原価(合併のために発行した株式の時価)の差額です。

通常、消滅会社の資産と負債の時価よりも取得原価の方が高い価格になります。吸収する会社のブランド力・ノウハウ・従業員の能力・特許などは純資産に反映されず、その分を上乗せしたうえで取得原価が決定するからです。のれんは、無形固定資産として計上します。

貸借対照表の例を見ながら確認しましょう。

  • 譲受資産の時価 500万円
  • 譲受負債の時価 100万円
  • 取得原価 300万円

この場合、貸借対照表は以下のとおりです。

借方 貸方
譲受資産 500万円 譲受負債 100万円
のれん 100万円 取得原価 300万円

のれん代として譲受資産から譲受負債・取得原価の差額を処理しましょう。

消滅会社の会計処理

消滅会社の会計処理は、合併の効力発生日前日を決算日とした決算を行うだけです。合併の効力発生日に企業は消滅します。

そのため、企業が存続する最終日に処理を行う必要があるのです。期間は異なりますが、毎期と同様の会計処理を行いましょう。

負ののれん発生時における仕訳

合併では、買収価格が時価純資産を下回ると負ののれんを計上するケースがあるのです。買収金額と時価純資産の差額分を負ののれんとし、負債の部に計上します。

負ののれんは、一般的に、売り手側が窮地に陥っていたり、破産を宣言していたりして、資産をその価値の何分の一かで売却する以外の選択肢がないのを示すものです。

その結果、負ののれんは常に取得企業に有利に働きます。

負ののれんは、のれんとは逆で、一方の企業が他方の企業の資産にプレミアムを支払うのを意味します。

たとえば、買収金額を2,000万円、受入資産を4,000万円、受入負債金額を1,000万円と仮定すると、3,000万円の時価純資産を2,000万円で得ています。この場合、買収金額より時価純資産が大きいので、差額の1,000万円は負ののれんとして負債に計上してください。

親会社が完全子会社を吸収合併した際の仕訳

親会社が完全子会社を吸収合併するケース(複数の完全子会社を吸収合併するケースを含む)は、合併の当事者となるすべての企業が、合併の前後で同一の株主によって最終的に支配された状態です。

もともと親会社が子会社の株式を100%保有しているのが完全子会社ですから、合併の当事者となる企業間で異なる株主が存在しているケースの合併とは異なり、このケースは、「共通支配下の取引」として会計処理しなければなりません。

共通支配下の取引では、吸収合併した結果として存続会社となる親会社が、消滅会社の株式または持分の全部を保有していますから、共通支配下における取引としての合併は、同一の株主に支配されている株主同士の事業(資産・負債)の移動に過ぎません。

つまり、会計処理上、共通支配下における取引は単なる株主間の資産・負債の移動と考えるのです。

そのため、親会社が子会社を吸収合併するケースでは、「消滅会社の資産や負債を時価ではなく簿価で引き継ぎます」。

共通支配下の取引は、親会社の立場からは企業集団内における内部取引に過ぎないので、消滅会社の資産や負債を市場価格(売却価格 :時価)で引き継がず、簿価で引き継ぐのです。

したがって、消滅会社の純資産と存続会社の子会社株式との差額は、簿価と時価の差額として算出される「のれん」ではなく、「抱合株式消滅差損益」として仕訳します。

8. 合併するときの税務

合併するときの税務

ここからは、合併するときに必要となる税務を見ていきましょう。

合併の際の税務で重要なのは、税務上の適格合併に該当するか、非適格合併に該当するのかを区別することです。これによって、税務処理が異なります。

まずは、適格合併・非適格合併における税務処理の違いを理解しましょう。

適格合併・非適格合併における税務処理の違い

合併によって企業の保有する資産および負債が他方の企業に移転した場合、原則として被合併法人の保有する資産および負債を合併法人に時価で譲渡したものとして取扱います。

しかし、この合併が一定の要件を満たす場合には、適格合併に該当、特例として資産および負債の移転にかかる譲渡損益が繰延べられるようになります。

適格合併の場合、一定の制限はあるものの、被合併法人で生じた未処理欠損金額は合併法人で生じた欠損金額とみなして、合併法人に引き継ぐのも可能です。

ここで、適格合併とは、株式や出資以外の資産を対価として交付せず、次のいずれかに当たる合併をいいます。

  • 合併する会社とされる会社の間に完全支配関係
  • 合併する会社とされる会社に支配関係があり後述の全要件に該当
  • 合併の当事会社が共同事業を行うための合併で後述の全要件に該当

会社間に支配関係がある合併は、次の要件に該当しなければなりません。
  • 消滅する会社における従業員の約80%以上が合併側の会社で働くことが予測される
  • 消滅する会社が手掛けていた主な事業が合併後に存続会社で引き続き行われることが予測される

もし、共同事業を行うときに適格合併となるには上記2つに加えて、追加的な要件を満たす必要があります。

上記の適格要件を満たさないケースは、非適格合併となります。

適格合併における税務

適格合併に該当する場合、資産・負債を帳簿価額で引き継ぐのが原則です。したがって、消滅会社は譲渡損益を認識しません。そのため、追加の税金はかかりません。消滅会社の株主へみなし配当の課税もありません。

存続会社は、消滅会社の繰越欠損金を原則承継できます。繰越欠損金とは、欠損金に関して一定条件で以後の事業年度で生じる所得から控除できるものです。消滅会社から繰越欠損金を承継すれば、税務上、存続会社に損失が計上されるので、利益が圧縮され節税が可能となります。

ただし、繰越欠損金を合併で引き継ぐ場合は難しい要件をパスしなければなりません。繰越欠損金の制限を回避するには、買収から5年以上経過後に合併を行ったり、みなし共同事業の要件をパスしたりする必要があります。

非適格合併における税務

非適格合併では、資産・負債を合併のときの時価で譲渡します。適格要件を満たす合併では、簿価で譲渡しましたが、非適格合併では時価で譲渡したと見なすルールです。

時価での譲渡となるので、消滅会社の譲渡損益には課税されます。消滅会社の資産が引き継がれる際は時価評価を行うルールです。時価評価の分だけ、値上がりしていた資産は課税され、値下がりしていた資産は損金が生じます。

存続会社は、繰越欠損金を引き継げません。

税金面では、適格合併の方がかなりメリットがあるため、簡単にクリアできる条件ではないものの、できるだけ適格合併を行うのをおすすめします。

9. 合併における法務・会計面の注意点

合併における法務・会計面の注意点

合併は2つ以上の会社が1つの企業に統合する複雑なプロセスです。したがって、合併のプロセスではさまざまな問題が生じる可能性があります。

ここでは、合併において問題となりやすい、法務・会計面の注意点を見ていきましょう。

簡易合併・略式合併でも株主総会の決議を省略できないおそれ

簡易合併や略式合併の要件に該当すれば、株主総会決議を省略できます。

しかし、以下で説明するようなケースでは、簡易合併・略式合併であっても株主総会による決議を省略できません。その理由は、株主の権利を損なう可能性があるからです。

まず、合併が簡易合併に該当するかどうかは以下の計算式で計算します。

  • 消滅会社の株主に交付する合併対価の金額÷存続会社の純資産≦20%

消滅会社の株主に交付する合併対価の金額÷存続会社の純資産の額が20%を下回っていると簡易合併の要件を満たします。

しかし、簡易合併において「存続会社が譲渡制限会社で、譲渡制限がかけられた株式を交付する」「合併により存続会社が損失を被る」「反対株主が存続会社における全株式数の6分の1を超える」場合には、株主総会の決議を省略できません。

他方で、略式合併とは、吸収合併される消滅会社側の議決権の9割以上を存続会社が保有しているとき、消滅会社の株主総会の決議は必要ないとできるケースです。

この場合、存続会社が消滅会社の議決権株式を多数保有しているため、株主総会を開催しても、その結果が変わりません。

ただし、略式合併は、「子会社が消滅会社で存続会社の譲渡制限株式を交付する場合、子会社が公開会社で種類発行株式会社」や「子会社が存続会社で存続会社の譲渡制限株式を交付する場合で、子会社が非公開会社」のとき、株主総会決議を省略できません。

この場合は、株主総会を開催しないと少数株主に不利益が生じる可能性があるため、株主総会の決議が必要となります。

これらは複雑なので、専門家のサポートを受けましょう

不適当な合併等に当てはまるリスク

上場企業が自社より事業規模が大きい非上場企業と合併するときは、不適当な合併等に当てはまるケースがあります。この規定は、東京証券取引所が独自に定めているルールです。

ここでいう「不適当な合併等」とは、たとえば自社よりも規模の大きな非上場企業を吸収合併した場合のように、上場企業が実質的な存続企業とはいえない合併などの組織再編を指します。

たとえば、東証の上場規程では、いわゆる裏口上場の防止を目的として、上場会社が非上場会社と吸収合併等を行った結果、上場会社が実質的な存続会社でないと認められ、かつ、一定期間内に新規上場審査の基準に準じた基準に適合しない場合には上場廃止になると定められています。

逆取得に当てはまり会計処理が変動するリスク

逆取得は、存続企業ではない会社(消滅会社)が取得企業となるような取引をいいます。存続会社が取得企業となる合併とは逆に、消滅会社が取得企業となるので逆取得というのです。

株式を対価とする合併が行われた場合、消滅会社の株主が取得会社の株主となり、取得会社の経営権を手に入れます。この場合、その経営権を受け取る株主の割合次第で、消滅会社の株主が大株主になる可能性も考えられます。

実際に合併して存続するが消滅会社の事業を引き継いでいるので、取得企業=存続会社のように見えますがその会計処理は正しくありません。

合併の対価が株式の場合は経営権を譲渡しているので、いわば会社そのものが売買されていると考えられます。そのため、合併当事者企業の経営権を持つ株主の視点で取引を評価しないと、取引の実態を反映できないのです。

逆取得となる合併は、存続会社が取得企業の資産・負債を帳簿価額で受け入れたと考え、時価評価は行いません。そのため、逆取得に当てはまると、資産・負債を時価評価できません。

株式譲渡で会社を買収し子会社化した後で吸収合併すれば、逆取得を防げるうえに、消滅企業(売却側)の株主は合併対価として現金を受け取れ、存続企業(買収側)は条件に当てはまるので適格合併にできます。

10. 合併した企業とその事例

合併した企業とその事例

過去にどのような企業が合併を行ったのかを知るために、今回は合併した事例を紹介します。

  1. 三菱UFJリースが日立キャピタルを合併
  2. 千葉興業銀行がちば興銀ビジネスサービスを合併
  3. ピーチがバニラエアを吸収合併
  4. ソフトバンクモバイルがワイモバイルを吸収合併
  5. オリンパスが子会社2社を吸収合併
  6. 富士ゼロックスによる新設合併

1つずつ事例を見ていきましょう。

①三菱UFJリースが日立キャピタルを合併

2020年9月に、三菱UFJリースは日立キャピタルとの吸収合併をつうじた経営統合の契約を決めています。2021年4月1日が効力発生日で、三菱UFJリースが存続会社、日立キャピタルが消滅会社です。合併比率は、三菱UFJリース1:日立キャピタル5.1です。

リース事業が苦境にあるため、両社は合併を行いました。三菱UFJリースと日立キャピタルの新社名は、三菱HCキャピタルです。この合併によって、業界第2位の売上高を誇ることになり、規模拡大で海外の再生エネルギー分野などを本格展開し、収益機会を広げることを目指しています。

吸収合併の狙い

両社が、経営基盤を強め環境変化に適用する力を上げることが狙いです。

もともと、三菱UFJリースと日立キャピタルは、2016年に資本・業務提携を締結し、将来の経営統合を模索していました。両者が所属するリース業界では、みずほフィナンシャルグループに近い東京センチュリーやみずほリース、芙蓉総合リースなどが競合するなど、競争環境は激しさを増していました。

この合併によって、両者のネットワークを相互活用することで、年間約100億円の収益シナジーが見込まれており、新会社は、欧米などへの海外進出を図ることが予定されています。

②千葉興業銀行がちば興銀ビジネスサービスを合併

最初の合併における事例は、2020年9月に行われた千葉興業銀行によるちば興銀ビジネスサービスの吸収合併締結です。ちば興銀ビジネスサービスは、効力発生日に解散します。

吸収合併の狙い

千葉興業銀行による吸収合併は、経営効率の向上と経営資源を有効に活用するために行われました。

ちば興銀ビジネスサービスの全株式を千葉興業銀行が持つため対価を引き渡すことはなく、また消滅会社の新株予約権や新株予約権付社債に関する取扱いもありません。

③ピーチがバニラエアを吸収合併

2018年3月にANAホールディングスは、グループ傘下のピーチとバニラエアを経営統合すると発表しました。ピーチがバニラエアに吸収合併される形となり、バニラエアは消滅する予定です。

2018年下期から統合の手続きを開始しており、2019年末の完全統合を目指しています。

吸収合併の狙い

今回の吸収合併の目的は、LCCにおけるブランドの強化です。国内のLCC売上高ランキングで、ピーチは2位、3位がバニラエアとなっており、この2つが合併することで、1位のジェットスター・ジャパンを追い抜くことが目的です。

考えられる課題

吸収合併に向けて考えられる課題は2つあります。1つ目は統合後の予約システムです。航空券の予約システムは非常に複雑なシステムのため、統合には時間がかかると予想されます。現在は、バニラエアのシステムをピーチのシステムに移行させる方針です。

2つ目は、バニラエアのブランドがなくなることです。今回の統合によりバニラエアの名前が消えてしまいます。バニラエアの国際線利用客の70%が外国人のため、認知度が下がる恐れがあるのです。

2019年末の完全統合に向け、ピーチとバニラエアはこれらの課題解決を行っています。

④ソフトバンクモバイルがワイモバイルを吸収合併

2015年4月にソフトバンクモバイルは、ワイモバイルを吸収合併しました。その際、ワイモバイルだけでなく、ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコムを含めた3社をまとめて吸収合併しています。

ソフトバンクモバイルとワイモバイルは携帯電話事業、ソフトバンクBBは「Yahoo!BB」ブランドでブロードバンドサービス、ソフトバンクテレコムは固定通信事業をそれぞれ展開していました。

吸収合併の狙い

ソフトバンクモバイルによる吸収合併の狙いは、国内通信事業を強化して企業価値の最大化を図るためです。それぞれが持つ経営資源を集約することで、無駄なコスト削減や技術力の向上につながる判断をしたのでしょう。

ソフトバンクモバイルは、2015年7月に「ソフトバンク」へと社名変更しています。4社を吸収合併することで、ソフトバンクグループ内での「移動通信・固定通信・ネット接続サービス」の事業会社であることを明確にしました。

吸収合併の結果

4社を合併した結果は、成功したといえるでしょう。その理由は2つあります。

1つ目は、コスト削減につながったことです。ソフトバンクテレコムとソフトバンクBBの固定通信事業はいずれも収益はピーク時の半分にまで落ち込んでいました。そのため、総務・人事部門など間接業務を行う部門を統合することでコスト削減に成功したのです。

2つ目はサービス向上につながったことが挙げられます。ワイモバイルは、ソフトバンクの周波数帯を広げるためにイー・モバイルを買収してできた会社でした。

しかし、同じグループであっても同一企業として周波数の割り当てを増やさない判断を総務省にされてしまいます。そのため、ソフトバンクとワイモバイルが分社している意味がなくなりました。

今回の吸収合併により、周波数の割り当てを増やせたためサービス向上につながったのです。

⑤オリンパスが子会社2社を吸収合併

2015年4月に、オリンパスは、子会社のオリンパスイメージング(OIMC)とオリンパス知的財産サービス(OIPS)を消滅会社とする吸収合併を行いました。

オリンパスは、同時期に、医療事業の分社であるオリンパスメディカルシステムズ、映像事業の分社であるオリンパスイメージングとの3社間による組織再編も実施しています。

グループの知的財産権に関連する業務の効率化 、機能の強化を図ることを目的としたグループ内再編を目的として行われたために、株式や金銭などの割当はありませんでした。

親会社であるオリンパスによる合併だったため、簡易合併での手続きが可能となり、株主総会の開催は省略されました。

吸収合併の狙い

グループ内の組織再編を狙って行われ、オリンパスイメージングとの合併は、中長期の経営計画においてより成長させる手段の1つとして実施されています。

オリンパス知的財産サービスとの合併は、グループ内の知的財産権に関する業務を効率化し機能を強めるために行われました。

リンパスイメージング、オリンパス知的財産サービスの2社は、オリンパスが吸収合併し、これまでオリンパスイメージングが行っていた映像機器事業はオリンパスが承継しました。

⑥富士ゼロックスによる新設合併

富士ゼロックスは、新設合併でグループ内再編を実施しています。2010年1月に、富士ゼロックスマニュファクチュアリングと富士ゼロックスアドバンストテクノロジーを作り、グループ会社の機能を統合することを目的として合併を行いました。

富士ゼロックスマニュファクチュアリングに、生産機能を担う3社が統合されたことで、業務の効率化とコスト競争力を高める狙いがあります。富士ゼロックスアドバンストテクノロジーには、富士ゼロックスエンジニアリングが統合されています。

吸収合併の狙い

富士ゼロックスが、開発面で技術や開発力を強め生産面ではコスト競争力を強めるのが狙いです。

新設合併のスキームを活用してグループ内の再編に成功した国内事例の走りとなりました。

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11. 合併における売り手の選び方

合併するときの売り手の選び方

合併を検討する場合、売り手企業の選び方を知らなければ失敗してしまうでしょう。合併の売り手企業を選ぶ際に一番大切なことは、「合併の目的が達成されるかどうか」です。合併の目的や目的達成に必要な要素を洗い出してください。

  • ビジネスモデル(顧客・価格・商品やサービスの類似性)
  • ブランド力
  • 展開地域
  • 特許や技術
  • 業種(同業・類似業種・異業種)
  • 国籍(日本籍・外国籍)

このようにさまざまな角度から必要な要素と基準を策定していく必要があります。自社成長のために必要な経営資源は何かを考え、どのようなシナジー効果を期待して合併するのか考えましょう。

できるだけ多くの企業から選べば、より基準を満たす企業に巡り合えます。基準の設定や売り手企業の候補は、M&A仲介会社へ相談すればより具体的になるでしょう。

12. 合併に関する相談はM&A総合研究所にお任せください

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会社の合併をお考えの際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。

ご相談は無料でお受けしておりますので、M&A・合併をご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。M&A総合研究所には以下の強みもあります。
 

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【関連】M&A・事業承継ならM&A総合研究所
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13. 合併のまとめ

合併のまとめ

合併とは、2つ以上の企業が1つの企業になるプロセスです。1社が残り他の企業が解散して消滅する「吸収合併」と合併するすべての企業を解散して新しく会社を設立する「新設合併」があります。

合併をするメリットは以下のとおりです。

  • シナジー効果を発揮しやすい
  • 資金調達せずにM&Aができる
  • 個々の財産移転の手続きがいらない

合併を成功させるには売り手候補選びが重要なので、M&A仲介会社に頼ると良いでしょう。M&Aを利用して、自社を成長させましょう。

【関連】事業承継M&Aとは?M&Aと事業承継の違い・メリットや流れを解説

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