2025年01月12日更新
化学製品製造・化学メーカーのM&A・売却・買収の動向!事例や相場も解説
化学製品製造/化学メーカーのM&Aによる売却・買収について、動向や価格算定方法、M&Aにおける売却・買収を成功させるためのポイントを解説します。化学製品製造・化学メーカーのM&A事例なども紹介しますので、検討中の方は必見です。
目次
1. 化学製品製造・化学メーカーを取り巻く環境
はじめに、化学製品製造・化学メーカーを取り巻く環境をお伝えします。
化学業界の市場規模
業界動向サーチにおける化学業界の(2021-2022年)の業界レポートによると、化学業界の市場規模は35.1兆円です。
経済産業省「化学産業の現状と課題」(令和3年)によると、化学産業は、事業所数が2万程度、製品出荷額が約46兆円で、製造業全体の1割強を占め、経済や雇用の側面からでも欠かせない業界です。
また、総務省の「日本標準産業分類」による化学工業の分類によれば、化学工業の下に「化学肥料」「無機化学工業製品」「有機化学工業製品」「油脂加工製品・石けん・合成洗剤・界面活性剤・塗料」「医薬品」「化粧品・歯磨・その他の化粧品調整品」「その他の化学工業」といった業種が含まれています。
化学業界の現状と課題
化学産業は、製造業全体の10%以上を占める重要な産業であり、その影響力は事業所数、製品出荷額、従業員数などの面で明らかです。特に石油化学工業はこの分野の中核をなしており、その製品は以下の3段階に分類されます。
- 基礎化学品: エチレンなどの汎用性が高い化学品。
- 産業用原料・素材: 基礎化学品をもとに各種産業向けに生産される原料や素材。
- 最終製品: 界面活性剤、塗料、農薬、接着剤など、基礎化学品や素材から作られる完成品。
基礎化学品の世界需要は引き続き拡大すると予想されていますが、日本企業にとっては、安価な海外製品の市場拡大による国内需要の減少が課題となっています。
一方で、感光性、強磁性、高導電性、絶縁性、高遮熱性など高度な機能を持つ製品では、日本企業が多くの分野で高い市場シェアを維持しています。このため、機能性に特化した化学製品の開発とイノベーションが、今後の成長を支える重要な要素となっています。
参考:製造産業局素材産業課「化学産業の現状と課題」
2. 化学製品製造・化学メーカーのM&A・売却・買収の動向
化学製品製造/化学メーカーのM&A動向は以下のように変化しています。
- 国内中小企業を中心とした業界再編の動き
- 大手企業によるM&Aが増加傾向
- 立地条件の良い工場を求めたM&Aが増加
- 特殊技術や特許を持つ企業を対象にした買収も見られる
- 異業種企業と化学製品製造・化学メーカーも増加
①国内中小企業を中心とした業界再編の動き
大企業同士による業界再編が続いてきた化学製品製造/化学メーカーですが、近年は中小企業によるM&Aの動きが活発になっています。
例えば、2024年10月、グループ戦略立案およびグループ全体の統括管理を行っているレゾナックHDは、石油化学事業に関するグループ組織再編を発表しました。
化学製品製造/化学メーカーは現在大きな転換期を迎え、大企業による事業ポートフォリオの見直しを受けて、中小化学製品製造/化学メーカーもM&Aによる短期間での大きな転換を図らざるを得ない状況です。
②大手企業によるM&Aが増加傾向
大手の化学製品製造/化学メーカーは、国内外を問わず積極的なM&Aを展開しています。これまでの事業拡大目的のM&Aから、収益力改善や事業ポートフォリオにおける再構築目的のM&Aに変化したため、M&Aの平均売買価格は下がり、M&A件数は増えているのが最近の傾向です。
例えば、2024年7月、大手総合化学メーカーの三井化学は、活材ケミカルの保有株式を田中藍ホールディングスに譲渡しています。
③立地条件の良い工場を求めたM&Aが増加
化学製品製造/化学メーカーは、事業の特性上、研究所や工場の立地が重要になります。国内外で好立地の製造拠点を求めたM&Aが増加しており、特にアジアの拠点確保は、各企業にとって重要な戦略の1つです。
例えば、日水製薬は、理化学製品・試薬の製造および販売事業を展開する日本テクノサービスの第三者割当増資引受を行いました。
本件M&Aにより、日水製薬は、再生医療向け組織培地の技術や、検査薬および体外診断用医薬品の技術、さらには再生医療用培地の製造設備を活用していきます。また、日本テクノサービスとの連携を通じて、再生医療技術を活用した研究開発を推進し、再生医療関連製品の安全性向上を目指して取り組んでいきます。
④特殊技術や特許を持つ企業を対象にした買収も見られる
従来の製品における付加価値が急速に低下しているので、化学製品製造/化学メーカーは、付加価値の高い製品獲得と自社のブランド力向上が必須といえる状況です。他社と差別化できる特許技術などの獲得を目的としてM&Aを行うケースも目立ちます。
⑤異業種企業と化学製品製造・化学メーカーのM&Aも増加
化学メーカーと異業種企業の間でもM&Aが多く実施されています。例えば、IoT・クラウド・ビッグデータなどの技術を持つ企業へのM&Aです。
IT技術の進展は、あらゆる事業に大きな影響を与えるため、最先端の技術を取り入れるだけで、事業が拡大する可能性は非常に高いでしょう。そのため、IT系の企業をM&Aで買収し、事業の強化や多角化・新たなサービスの開発などを実現するケースが増加しています。
塗料・塗料卸売業界のM&A・売却・買収については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
3. 化学製品製造・化学メーカーのM&A・売却・買収の事例
ここからは、化学製品製造/化学メーカーの日本国内企業を対象としたM&A事例と、外国企業へのM&A事例を見ていきましょう。
日本国内を対象としたM&A事例
まずは、日本国内を対象とした化学製品製造/化学メーカーのM&A事例です。
- 昭光ハイポリマーによる高分子商事の買収
- 田中藍ホールディングスによる活材ケミカルの買収
- 信越化学工業による三益半導体工業の買収
- 鶴見化学工業による日本乾溜工業の買収
- アカルタスHDによる美濃化学工業の買収
- オリンパスによるOlympus Innovation Ventures, LLCの設立
- 三菱ケミカルホールディングスによるDAIZとの資本業務提携
- 日本曹達による丸善油化商事の事業買収
昭光ハイポリマーによる高分子商事の買収
2024年8月、昭光ハイポリマーは高分子商事の全ての株式を取得しました。
昭光ハイポリマーは、昭光通商グループの子会社で、石油化学製品、合成樹脂などの化学系素材の販売を行う企業です。対象会社の高分子商事は、接着剤、合成樹脂成型品、成型用・加工用合成樹脂関連資材の販売を行う企業です。
今回のM&Aにより、共通点の多い2社における高付加価値事業を連携させ、顧客サービスの向上・事業の拡大を目指します。
田中藍ホールディングスによる活材ケミカルの買収
2024年7月、田中藍ホールディングスは活材ケミカルの株式を取得しました。
田中藍ホールディングスは、化学工業薬品、石油化学製品、染料、顔料、ゴム製品などの販売を展開する化学専門商社です。活材ケミカルは、大手総合化学メーカーである三井化学の子会社で、ウレタン樹脂材料や誘導品および、副資材、工業薬品等の化学製品類の販売・リサイクルの事業を行っています。
今回のM&Aにより、両社のシナジーの発揮による事業機会の創出、事業領域の拡大を目指します。
信越化学工業による三益半導体工業の買収
2024年4月、信越化学工業は三益半導体工業のTOB(公開買付け)によりM&Aを実施しました。
信越化学工業は、塩化ビニルやシリコーン、セルロース誘導体など汎用化学品から機能性化学品、電子材料の製造および販売を行う企業です。一方、対象会社の三益半導体工業は半導体事業としてシリコンウエハーの製造販売を行っています。
今回のM&Aにより、機動的な経営判断を行う経営体制を構築し、強固な協力体制を目指します。
鶴見化学工業による日本乾溜工業の買収
鶴見化学工業は2022年9月、日本乾溜工業の不溶性硫黄事業を吸収分割を実施しました。
鶴見化学工業は、ゴム製品や硫黄製品事業を扱う、硫黄のブランドメーカーでもあります。を行っ対象会社である日本乾溜工業は、土木建設業を中心に、化学品事業を行う会社です。日本乾溜工業は、昨今の新型コロナウイルスの影響や、人件費・原材料の高騰などで、経営環境は厳しい状況でした。
鶴見化学工業は今回のM&Aにより不溶性硫黄事業を獲得し、ゴム用不溶性硫黄によるタイヤ、ゴム業界の幅広いニーズに対応し、製造部門の強化を目指します。
アカルタスHDによる美濃化学工業の買収
アカルタスHDは2022年1月、美濃化学工業の株式を全て取得しました。
アカルタスHDは、プラスチックマテリアルリサイクル事業を成長事業の一つとしています。2020年にプラスチック素材の仕入販売を行うスカイコーポレーション、2021年には、容器包装リサイクル事業の新川リサイクルセンターを買収しました。
今後、事業を拡大するためにプラスチックを再生する製造ノウハウをグループ内に取り込むため、美濃化学工業のM&Aを実施しました。
今回のM&Aにより、製販一体の体制構築とともに事業拡大を目指します。
オリンパスによるOlympus Innovation Ventures, LLCの設立
2021年9月、オリンパスはコーポレート・ベンチャー・キャピタル・ファンドとして Olympus Innovation Ventures, LLCの設立を決めました。オリンパスは、事業戦略に基づいたM&Aなどを実施して、年率5~6%の売上高成長率を保つことを掲げています。デジタルやAIなどの新しいトレンドが医療技術の状況を変えつつあるので、成長する機会を創るために今回の設立を決めました。
このファンドは、アーリーステージにおける企業との関係を築き、自社技術と関連がある起業家チームとのパートナーシップ育成をサポートする見込みです。
三菱ケミカルホールディングスによるDAIZとの資本業務提携
2021年9月、発芽大豆由来の植物肉「ミラクルミート」を開発・製造するスタートアップであるDAIZは、三菱ケミカルホールディングスと資本業務提携を結びました。三菱ケミカルホールディングスが保有する油脂技術を活用して新たな商品開発を進めています。
三菱ケミカルホールディングスが、第三者割当増資を引受け、DAIZは資金を調達しています。三菱ケミカルホールディングスが、日本国内のスタートアップに出資するのは初めての取組みです。
日本曹達による丸善油化商事の事業買収
日本曹達は2020年5月に、石油化学製品や各種資材などの卸売業を行っている丸善油化商事のフマル酸ステアリルナトリウム事業を買収しました。
これにより、既存販売チャネルを活用した海外展開を含む事業拡大や、既存製品との相乗効果を見込んでいます。
海外企業を対象としたM&A事例
海外企業を対象としたM&A事例を2つ紹介します。
ニイタカによる新高(江蘇)日用品の譲渡
ニイタカは、連結子会社である新高(江蘇)日用品有限公司(江蘇社)の全出資持分を嘉德生物科技(江蘇)有限公司(嘉徳社)に譲渡することを決定しました。
江蘇社は固形燃料や洗剤の製造を行っており、福建社での生産停止を受けて一時的に市場の対応を担いましたが、中国第2工場建設計画の見直しにより収益確保が困難と判断されました。
資本効率向上を目的に譲渡が最適と判断され、清算ではなく売却を選択しました。福建社では引き続き固形燃料の改良を進め、市場シェア回復を目指します。
長谷川香料グループによるABELEIの買収
長谷川香料は、連結子会社のT. HASEGAWA U.S.A., INC.(THUSA社)が、米国イリノイ州のABELEI, INC.(Abelei社)の株式を取得し、連結範囲に含めることを決定しました。
長谷川香料は香料や食品添加物の製造・販売を手掛け、THUSA社はセイボリー系フレーバーを中心に事業を展開しています。一方、Abelei社は食品や飲料、菓子など幅広い用途向けフレーバーを製造しており、米国中西部を基盤としています。
本件により、THUSA社とAbelei社の顧客網の重複が少ないため、販路拡大や製造面での相互補完が期待され、米国市場での成長を目指します。
異業種企業による化学メーカー買収・出資事例
続いて、異業種企業による化学メーカーのM&A事例をご紹介します。
- アカルタスホールディングスによる美濃化学工業の完全子会社化
- カミ商事によるハクビ化学の完全子会社化
- エア・ウォーターと双日によるGreen Earth Instituteへの出資
アカルタスホールディングスによる美濃化学工業の完全子会社化
2021年12月、アカルタスホールディングスは美濃化学工業を株式譲渡により完全子会社化しました。
アカルタスホールディングスは一般・産業廃棄物の収集や運搬などに関するコンサルティングや不用品回収・スクラップの仕入れや販売などの事業を展開する会社です。美濃化学工業はプラスチック原料の製造や販売事業を展開している会社で、アカルタスホールディングスはプラスチック製造のノウハウを取り込む目的でM&Aを実施しました。
参考
美濃化学工業株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
カミ商事によるハクビ化学の完全子会社化
2021年12月、カミ商事はハクビ化学を株式譲渡により完全子会社化しました。
カミ商事は紙原材料の仕入れや各種用紙・板紙シリーズの販売事業を展開している会社です。ハクビ化学は置き製紙用の接着剤や工業製品の製造を手がける会社で、カミ商事は家庭向けの紙製品生産をさらに効率化させるためにM&Aを実施しました。
参考
当社によるハクビ化学株式会社の株式取得について
エア・ウォーターと双日によるGreen Earth Instituteへの出資
2021年6月、エア・ウォーターと双日によるGreen Earth Instituteへの出資が行われました。
エア・ウォーターは産業ガスの供給や医療ソリューションサービスを手掛け、双日は自動車や鉄道・金属資源などを取り扱う総合商社です。Green Earth InstituteはRITE公益財団法人地球環境産業技術研究機構)発のベンチャー企業であり、バイオマス原料を使った非石油由来の化学品や燃料の開発事業を展開しています。
本出資によりバイオ化学品分野での新規事業展開や低炭素・循環型社会に貢献できるような環境ビジネスの創出を支援しています。
参考
RITE発のバイオベンチャー Green Earth Institute株式会社に出資 ~循環型社会の実現に向けて、環境対応ビジネスへの展開を強化~
4. 化学製品製造・化学メーカーのM&A・売却の理由5選
化学製品製造/化学メーカーでは、主に以下の理由でM&A・事業承継による売却が行われます。
- 後継者問題を解決する
- 深刻な従業員不足を解決する
- 大手グループの傘下に入って経営を安定させる
- 従業員の雇用先を確保する
- 売却益を獲得する
①後継者問題を解決する
後継者がいないために廃業せざるを得ない状況は、化学製品製造/化学メーカーに限らず、多くの中小企業にとって解決すべき課題です。近年は、M&A・事業承継仲介機関への相談件数が増え、事業承継に成功する中小企業が増加しています。
②深刻な従業員不足を解決する
化学業界が転換期を迎えているので、中小化学製品製造/化学メーカーも顧客の要望に応えるため、事業領域の拡大や製品の付加価値向上などを行う必要に迫られています。
しかし、変化に対応できる人材の確保は容易ではないため、人材確保を目的としたM&Aも行われている状況です。
③大手グループの傘下に入って経営を安定させる
国内需要の低下に伴い、中小化学製品製造/化学メーカーも、製品の付加価値向上や海外展開などが必要です。そこで、M&Aによる売却で大手グループの傘下に入ると、経営リソースを活用して経営を安定させられる可能性が得られます。
④従業員の雇用先を確保する
経営が苦しいにもかかわらず、従業員の雇用を考えるとなかなか廃業に踏み切れないケースは少なくありません。長く働いてくれたベテラン従業員の場合、再就職先がなかなか見つからない問題が生じるでしょう。
こういったケースでは、廃業ではなくM&A・事業承継によって、従業員の雇用を確保する方法もあります。
⑤売却益を獲得する
廃業後の生活を考えると、簡単には廃業に踏み切れないケースもあります。M&A・事業承継では売却益が得られるので、廃業よりもお金の不安を減らせるでしょう。
5. 化学製品製造・化学メーカーのM&A・売却・買収価格の相場
化学製品製造/化学メーカーにおけるM&A・買収・売却の相場は、どのようにして求めるのでしょうか。ここでは、企業価値評価の算定方法を見ていきましょう。
企業価値評価の算定方法
一般的に、企業価値評価は、現在の企業資産価値に加えて、将来の収益力などをプレミアム価格として上乗せして算定します。
プレミアム価格をどのくらい上乗せするかは、業界や案件ごとに異なりますが、化学製品製造/化学メーカーの企業価値評価算定は、他業界と比べると難しいです。化学製品製造/化学メーカーの業績は、石油価格・地政学リスク・各国の政治政策など、コントロール不可能な要素に大きく左右されるからです。
化学製品製造/化学メーカーの企業価値評価は、専門家でも算定結果に大きな違いが生じる場合があります。
企業価値評価の算定は個人でできるか
先述のとおり、化学製品製造/化学メーカーの企業価値評価を正確に行うためには、さまざまな要素を加味しなければならないため、個人で算定するのは非常に難しいといえるでしょう。
中小規模の化学製品製造/化学メーカーでも、M&Aの専門家に相談・依頼するなどして、企業価値評価を行う必要があります。
M&Aの企業価値評価については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
6. 化学製品製造・化学メーカーのM&A・売却・買収を成功させるコツ
化学製品製造/化学メーカーのM&Aを成功させるには、どのような点を意識して行えばよいのでしょうか。ここでは、化学製品製造/化学メーカーのM&Aを成功させるポイントについて、売却側と買収側それぞれの立場から解説します。
売却側の5つのポイント
売却側は、以下のポイントを意識して行いましょう。
- 計画的に準備を行う
- 希望条件を満たす買収先を探す
- M&Aの目的を明確にする
- 技術・特許など強みをまとめる
- M&Aの専門家に相談する
①計画的に準備を行う
M&A・事業承継を成功させるには、「会社の現状把握」「企業価値の向上」「後継者の育成」など、目的に応じて計画的に準備することが重要です。売却後も会社が長く続くよう、将来を見据えた準備をする必要があります。
②希望条件を満たす売却先を探す
M&A・事業承継の際は、焦りや不安から条件を妥協してしまうケースがあります。しかし、譲れない条件や妥協できるラインを明確にし、信頼できるM&A・事業承継の専門家からサポートを受けるなどして、まずはしっかりと売却先を探しましょう。
③M&Aの目的を明確にする
売却側の経営者は、M&Aによって会社をどのようにしたいのか、自身はどのようにしたいのかなど、目的を明確にすることが大切です。目的が不明確だと、交渉で相手に振り回されたり不利な条件で成約したりするなど、満足のいかないM&A結果になる可能性があります。
④技術・特許など強みをまとめる
事業拡大目的のM&Aから、収益力向上や付加価値のある製品獲得目的のM&Aにシフトしている化学業界では、自社の強みを明確にアピールする準備を行うことも重要です。自社の強みを整理すれば、企業価値の向上にもつながります。
⑤M&Aの専門家に相談する
何の準備から始めたら良いかわからない場合でも、M&Aの専門家に相談すれば行うべきプロセスが明確になります。M&Aの専門家に複雑な交渉もサポートしてもらえるため、M&Aの精神的負担が大幅に軽減されるでしょう。
買収側の3つのポイント
買収側は、以下のポイントを意識して行ってください。
- デューデリジェンスをきちんと行う
- 買収先の従業員が離職しないようにする
- M&Aの専門家に相談する
①デューデリジェンスをきちんと行う
買収後、円滑に事業を継続するためにも、デューデリジェンス(企業監査)は重要です。デューデリジェンスには高い専門性が必要となるため、経験豊富な専門家に依頼するなどして実施しましょう。
②買収先の従業員が離職しないようにする
M&A後の統合戦略を間違うと、買収先企業の従業員が離職してしまう可能性があります。丁寧にコミュニケーションをとりながら、時間をかけて企業風土を融合するなどの配慮が必要です。
③M&Aの専門家に相談する
M&Aの専門家によっては、M&A後の統合プロセスまで丁寧にサポートを行っているケースもあります。M&A仲介会社などの専門家に相談すれば、M&A手続きがスムーズに行えるだけでなく、経営力の向上にもつながるでしょう。
7. 化学製品製造・化学メーカーのM&A・売却・買収時におすすめの相談先
化学製品製造・化学メーカーのM&A・売却・買収時におすすめの相談先をご紹介します。
金融機関
金融機関(投資銀行、商業銀行、証券会社)がファイナンシャル・アドバイザーとしてM&Aを支援することがあります。外資系投資銀行や日系証券会社は、大規模なM&Aを得意としており、成功報酬は外資系で2億円以上、日系で2千万円以上が目安です。商業銀行の報酬はメガバンクで2千万円以上、地方銀行で数百万円以上とされています。
メリットとして、金融機関は専門的な知識や資金調達支援に強みを持ちます。一方、デメリットとして、買い手や売り手が中小企業の場合、金融機関のスケールに適さないことや、報酬の高さが挙げられます。
公的機関
商工会議所などの公的機関は、中小企業向けにM&A支援を提供しており、「事業承継ガイドライン」でもM&Aが中核的手法として位置付けられています。メリットとして、公的機関は中小企業に関する豊富な知識と経験を持ち、売り手・買い手が中小企業の場合に適した相談相手となる点が挙げられます。
また、中小企業特有の文化や課題に対する深い理解がある場合もあります。デメリットとして、商工会議所の会員になるために費用が発生し、会員であれば初期費用無料で利用可能ですが、会員費用が負担になることが指摘されています。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、M&Aに特化した業務を行い、それぞれ得意分野や経験が異なるため、適切な仲介会社を選ぶことが重要です。メリットとして、M&A専門の仲介会社は幅広い選択肢の中から適切な相手先を見つける力があり、金融機関よりも報酬が安い場合が多い点が挙げられます。これにより、コストを抑えながらM&Aを進めやすくなります。
一方で、デメリットとして、一部の仲介会社では、成功報酬を優先するあまり、十分な相談対応を行わず、契約やM&A成立を急かすケースも見られる点が課題です。
8. 化学製品製造・化学メーカーのM&A・売却・買収のまとめ
本記事では、化学製品製造/化学メーカーのM&A動向やM&A事例などを紹介しました。化学製品製造/化学メーカーのM&Aを行う際は、事業計画を立てたり自社の強みをまとめたりして事前の準備をしっかりと行い、計画的に進めることが大切です。
化学製品製造/化学メーカー業界における企業価値を正しく算定するのは非常に難しいです。化学製品製造/化学メーカーのM&Aを成功させるには、M&Aや化学業界に精通した専門家によるサポートを受けながら進めることをおすすめします。
9. 化学メーカー業界の成約事例一覧
10. 化学メーカー業界のM&A案件一覧
【有名サロンより高評価】ヘアケア化粧品OEM企画製造
その他の製造業/美容・健康食品/中部・北陸案件ID:2303公開日:2024年10月03日売上高
1億円〜2.5億円
営業利益
〜1000万円
譲渡希望価格
1000万円〜5000万円
ヘアケア化粧品の企画から製造、薬事対応までワンストップでサポートのできる企業です。
【関東】織物製品加工・製造業
繊維・衣料製造/繊維・衣料卸・小売/関東・甲信越案件ID:2096公開日:2024年07月29日売上高
5億円〜10億円
営業利益
赤字経営
譲渡希望価格
1000万円〜5000万円
関東にて、織物製品(ボディクロス)製造業を手掛ける企業
【海外/15以上の国 300社以上の販売先】 化学品メーカー
工業製品製造/工業製品卸・小売/その他の製造業/海外案件ID:1435公開日:2023年12月06日売上高
100億円〜250億円
営業利益
10億円〜25億円
譲渡希望価格
20億円〜
化学品、肥料、石油・ガス製品を製造・供給
【海外/上場企業のカーブアウト】化学製品製造会社
工業製品製造/その他の製造業/海外案件ID:1441公開日:2023年12月06日売上高
10億円〜25億円
営業利益
1億円〜2.5億円
譲渡希望価格
20億円〜
化学製品の製造を行う老舗上場企業のカーブアウト案件
M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所
M&A・事業承継のご相談なら経験豊富なM&AアドバイザーのいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴
- 譲渡企業様完全成功報酬!
- 最短49日、平均6.6ヶ月のスピード成約(2022年9月期実績)
- 上場の信頼感と豊富な実績
- 譲受企業専門部署による強いマッチング力
M&A総合研究所は、成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A仲介会社です。
M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。