2023年06月12日更新
メガソーラーの売却・M&Aの注意点!事業譲渡や買取方法を解説!
昨今のメガソーラー(太陽光発電)事業は他の業界から大きく注目されていますが、注意点を把握せずに売却・M&Aしてしまうと大きなトラブルが発生しかねません。本記事では、メガソーラーの売却・M&Aの注意点および、事業譲渡・買取の方法についても紹介します。
1. メガソーラーとは
メガソーラーとは、大規模な太陽光発電システムのことです。太陽光発電システムの中でも、出力1MW(1,000kW)以上となる発電システムをさします。
最近では自治体・民間企業が協力して開発に乗り出すケースも多くなっており、主として山林・遊休地などに設置されるケースも多い発電システムです。
2011年3月11日に発生した東日本大震災を契機に、再生可能エネルギーへの注目度は急速に高まっています。
その結果として、近年ではメガソーラーの認定およびメガソーラーの開発などの事例が増加している状況です。
売電価格の推移
最近ではメガソーラーをはじめとする太陽光発電事業に注目が高まっていますが、ここでは太陽光発電(メガソーラー)における売電価格の推移を確認しておきます。
経済産業省資源エネルギー庁のWebサイトに記載されている価格表をまとめると、太陽光発電の売電価格は低下傾向です。
- 2012年度・40円/kWh
- 2013年度・36円/kWh
- 2014年度・32円/kWh
- 2015年度・29円/kWh(7月1日以降は27円/kWh)
- 2016年度・24円/kWh
- 2017年度・21円/kWh(2,000kW以上は入札制度により決定)
- 2018年度・18円/kWh(2,000kW以上は入札制度により決定)
- 2019年度・入札制度により決定
- 2020年度・入札制度により決定
2017年度以降、メガソーラーにおける売電価格の決定に、入札制度が活用されることになりました。
ただ、メガソーラー以外の太陽光発電設備における売電価格は全体的に低下傾向にあるため、入札制度が導入されたメガソーラーの売電価格も依然として低下傾向にあると推測されます。
中古メガソーラーの売電価格
メガソーラーの売電価格は年々下降傾向にあるため、中古メガソーラーになると36円/kWh〜24円/kWhというように、売却価格に幅を持たせて取引が行われるケースも見られます。
競争激化
メガソーラーの売電価格が軒並み下落傾向となる中で、太陽光発電の設置に関する競争も激化しています。
メガソーラーの売電価格自体は下落していますが、これと同時に設置にかかる平均コスト(平均システム費用)も年々減少しているためです。
ここでは経済産業省が発表する資料『令和2年度の調達価格等に関する意見(案)』から、メガソーラーを含めた太陽光発電システムにおける平均システム費用の推移を以下にまとめました。
- 2012年・42.2万円/kW
- 2013年・37.2万円/kW
- 2014年・34.1万円/kW
- 2015年・32.4万円/kW
- 2016年・31.5万円/kW
- 2017年・30.0万円/kW
- 2018年・28.6万円/kW
- 2019年・26.6万円/kW
このように、売電価格の下落と連動する形で設置費用も下がってきているため、メガソーラーをはじめとする太陽光発電業界では、今後ますます競争激化が進むものと見られます。
プレミアム価格とは
メガソーラーの売電では、プレミアム価格という価格帯で取引されるケースがある点も把握しておきましょう。売電価格として高い利益率が期待できる価格帯は、24円/kWhや21円/kWhなどが中心といえます。20円/kWh以上で売電できれば、安定的な利益確保が可能です。
その一方で、プレミアム価格が適用されるメガソーラーでは、32〜36円/kWhほどで売電できるケースがあります。中には40円/kWhを超える売電価格で取引されるケースもあるのです。現在は20円/kWh以上の売電価格での取引が珍しくなっている市場において、30円/kWh以上で売電できれば利益確保の面で大きな魅力があります。
メガソーラーの利回り
メガソーラーの利回りは、年間の想定利回りが15%以上とされるケースが一般的です。例えば、2014年に昭和シェルが建設したメガソーラー事業は年間利回りが18%とされており、不動産投資の利回りと比較すると効率の良い事業だといえます。
中には20%以上の利回りを出すメガソーラー事業もあり、投資対象として魅力度が高いです。
メガソーラーの売却・M&AならM&A総合研究所
メガソーラーを売却・M&Aする際には、メガソーラーおよび太陽光発電業界特有の知識だけでなく、M&Aに関する専門知識も必要です。
メガソーラーの売却・M&Aをご検討の際は、M&A総合研究所へご相談ください。M&Aに精通するアドバイザーが、理想のM&A実現に向けてフルサポートいたします。
当社は完全成功報酬(※譲渡企業のみ)を採用しています。相談料は無料となっておりますので、メガソーラーの売却・M&Aを検討している場合にはお気軽にご相談ください。
2. メガソーラーの売却・M&Aの注意点
メガソーラーの売却・M&Aには注意点も存在するため、念入りに確認しておかなければなりません。利回りだけを見ると魅力的に感じる部分が多い太陽光発電業界ですが、M&Aの注意点を理解しないまま権利譲渡・事業譲渡などを行うと大きなトラブルにつながりかねないため、十分に注意しておきましょう。
ここでは、メガソーラーの売却・M&Aに関する注意点を、以下の8項目に分けて解説します。
- 売却タイミングの見極め
- 資金不足
- グリーン投資減税
- 土地の権利関係
- 欠陥工事
- 反射光へのクレーム
- 権利譲渡の可否
- 周辺事業者の確保
それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
注意点①売却タイミングの見極め
メガソーラーの売電価格は年々低下する傾向にあるうえに、メガソーラーを取り巻く環境自体も年々変化しています。昨今ではさまざまな再生可能エネルギーがめざましい発展を遂げており、将来的な動向次第ではメガソーラー以外の再生可能エネルギーに投資ニーズが集中するおそれがあるのです。
売却タイミングを誤ると、希望どおりの条件で取引できない可能性が高まるばかりか、最悪のケースでは取引自体に失敗してしまい価値のない設備・土地を抱えることになりかねません。少しでも良い条件でメガソーラーを売却したい場合には、売り手市場となっているタイミングで売却を検討しましょう。
注意点②資金不足
太陽光発電分野においてM&Aによる買収(株式譲渡・事業譲渡など)を行う際には、膨大な資金が必要となるケースも少なくありません。小規模であれば数百万円程度で取引できるケースもありますが、規模が大きくなると数千万円から数億円単位での取引となるため、個人での買収では資金不足の問題に悩まされやすいです。
たとえ企業・団体として買収を行う場合でも、融資を受けられるかどうか事前にしっかりと確認しておかなければなりません。太陽光発電分野では、行き当たりばったりで事業を開始できるわけではないことを把握しておきましょう。
注意点③グリーン投資減税
メガソーラーのM&Aにおける注意点には、グリーン投資減税の存在を把握しておく点も挙げられます。
以前は中古のメガソーラーをグリーン投資減税の利用により100%即時償却済みの太陽光発電所として転売するケースも見られましたが、現在ではグリーン投資減税を利用して買収に伴う税金の還元を受けることは不可能です。
メガソーラーの売却・買収を検討する際には、税制上の優遇を受けられない点にも注意を払いましょう。
注意点④土地の権利関係
M&Aによるメガソーラーの買収を検討する場合は、土地の権利関係にも目を向ける必要があります。実際にメガソーラーを買収したところで、メガソーラーが建設されている土地の所有者が別に存在すればトラブルが生じかねません。土地を含めてメガソーラーを買収すると、さらに費用が高額となります。
M&Aによる買収を行う前には、取引範囲についても検討しなければなりません。
注意点⑤欠陥工事
すでに太陽光発電事業が軌道に乗っていて順調である場合には問題ありませんが、欠陥工事の影響でスムーズに事業が進まなくなるおそれもあります。こうしたトラブルに関する賠償責任なども事前に協議したうえで、買収手続きを進めていく必要があるのです。
具体的には、メガソーラーシステムの稼動状況を綿密に調査したうえでM&Aに着手すると良いでしょう。システム完成前に買収する場合には、欠陥工事が発覚したときの責任の所在を明確化しておくことが必要不可欠です。
注意点⑥反射光へのクレーム
M&Aによるメガソーラーの買収では、反射光へのクレーム対応にも注意しておく必要があります。
特に住宅密集地域に設置されたメガソーラーでは、近隣住民から反射光に対するクレームが入るケースが多いです。事前に住民説明会を開催するなどして、太陽光発電事業への理解を求めましょう。
注意点⑦権利譲渡の可否
特にメガソーラー事業を譲受する場合には、権利譲渡の可否についても確認しておきましょう。ここではメガソーラー事業の具体的な買収範囲だけでなく、資金の流れについても明確化しておく必要があります。
合わせて、事業を行う年数についても、M&Aによる買収段階で検討しておくことが大切です。メガソーラー事業では数十年単位で投資資金の回収を図るケースも多いため、権利譲渡の可否やそのタイミングなどはM&A成功の鍵を握る要素といえます。
注意点⑧周辺事業者の確保
メガソーラー事業の要とされる売電価格は年々低下しており、設備投資などの費用回収が難しくなったために多くのメガソーラー関連事業者が撤退・倒産のリスクを抱えている状況です。
こうした傾向が進み周辺事業者の数が減少してしまうと、将来的に自身のメガソーラーに関する管理を依頼できる事業者を確保できなくおそれがあります。
メガソーラーはシステムメーカー・施工管理業者・電力会社をはじめ複数の事業者が連携してはじめて成立する事業であるため、M&Aによる買収を検討する際は、周辺事業者を取り巻く環境についても目を向けなければなりません。
3. メガソーラーの事業譲渡や買取の方法
ここからは、メガソーラーの事業譲渡や買取の方法について紹介します。これからメガソーラー事業を行いたい場合には、事業譲渡や買取の方法について理解を深めたうえで、適切な手順で取引を進めなければなりません。
メガソーラーの基本的な事業譲渡・買取の方法を、以下の流れで紹介します。
- 案件紹介・案件登録
- 仮調査
- 本調査
- 譲渡契約締結
- 名義変更手続き
- 取引完了・手数料支払い
- 売電事業開始
それぞれの手順を詳しく見ていきましょう。
方法①案件紹介・案件登録
メガソーラー事業に興味がある場合、事業譲渡に関する案件紹介・案件登録などを仲介会社に依頼しましょう。そのうえで、メガソーラー事業の具体的な売却案件を調査すると良いです。
案件紹介・案件登録の段階ではまだ着工していない事業も多く見つかるため、長期的な目線を持って買取を検討することをおすすめします。
方法②仮調査
メガソーラーの事業譲渡および買取を行う場合、次に仮調査のプロセスを実施します。再生可能エネルギーとして注目度が高いメガソーラーシステムですが、効果が未知数な発電設備も少なくありません。仮調査をとおして、詳細な費用対効果を把握しつつ懸念を払拭しておきましょう。
方法③本調査
メガソーラーシステムの事業譲渡・買取の本格的な検討段階に入ると、本調査に移行します。本調査は、具体的な利回り・契約年数・権利譲渡の可否などを細かく協議するプロセスです。ここではM&A契約・交渉も含めて、メガソーラーの引継ぎに関するさまざまな事項が話し合われます。
方法④譲渡契約締結
本調査が完了してお互いの合意に達した場合には、メガソーラーの譲渡契約を締結します。これによりメガソーラー事業のM&A取引が正式に確定し、事業譲渡が実施されるのです。
方法⑤名義変更手続き
メガソーラー事業の譲渡契約を締結した後は、名義変更手続きを行います。M&Aでは個人だけでなく企業や組織単位で買取を実施するケースもありますが、基本的には代表者が名義人となり事業譲渡手続きを進めましょう。
方法⑥取引完了・手数料支払い
名義変更手続きが完了すると、M&A取引を完了させるプロセスです。取引完了に伴い、M&Aの相手側に取引金額を支払います。双方が合意した金額を支払うことで、買い手に対して正式に事業の権利が移行する仕組みです。
方法⑦売電事業開始
取引金額の支払いまで完了した後は、買い手のもとで正式に売電事業を開始させます。
メガソーラー事業のM&Aでは、このような流れに沿って事業が譲渡されるのです。まずは仲介会社などの専門家に案件紹介や案件登録を依頼するなどして、興味のあるメガソーラー事業を探すプロセスから開始しましょう。
4. メガソーラーの売却・M&A事例・ニュース
ここでは、メガソーラーの売却・M&Aに関するニュースをまとめて紹介します。
2020年度のメガソーラーの売電価格は前年に引き続き入札方式となりましたが、10kW以上の太陽光発電における売電価格は前年度比で1円〜2円程度低下しています。年々下落傾向にある太陽光発電の電力買取価格ですが、今後も引き下げられる見とおしです。
次に2019年の最新事例を紹介します。2019年3月、再生可能エネルギー発電施設の開発・運営をはじめ売電事業なども展開するレノバは、四日市ソーラー匿名組合事業の出資持分を追加取得して100%子会社化しました。本件M&Aの取引価格は、4億800万円と発表されています。
四日市ソーラー匿名組合事業が保有する四日市ソーラー発電所は出力およそ21.6MWを誇るメガソーラーであり、2019年3月1日に営業運転を開始しました。本件子会社化によって、レノバでは収益規模の拡大が図られています。
5. メガソーラーの売却・M&Aの注意点まとめ
メガソーラーの売却・M&Aを検討している場合、まずは取引の流れを理解しておきましょう。メガソーラー事業は利回りの良さから投資対象として大きく注目されていますが、高い投資効果を得るには仮調査を含めた事前調査が必要不可欠です。
昨今ではM&Aをとおして、さらなる収益・事業の拡大を狙う企業が少なくありません。念入りな調査を通じて魅力的な投資対象が見つかったときには、専門家からサポートを受けつつM&Aに乗り出すと良いでしょう。
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