病院・医療法人業界のM&A動向!売却・買収事例15選と手法やメリットを解説!【2023年最新】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

医療法人(病院)業界のM&Aでは、株式会社などのM&Aとは異なる部分が多いため、売買を検討している場合は違いを把握しておく必要があります。本記事では、医療法人(病院)業界のM&A動向や売買に活用される手法、メリットなどを解説します。

目次

  1. 病院・医療法人とは
  2. 病院・医療法人の分類
  3. 病院・医療法人の市場と課題
  4. 病院・医療法人M&Aの動向
  5. 病院・医療法人のM&Aの手法(スキーム)
  6. 病院・医療法人のM&Aメリット
  7. 病院・医療法人をM&Aで売却する流れ
  8. 病院・医療法人の同業とのM&A8選
  9. 病院・医療法人と異業種のM&A7選
  10. 病院・医療法人の相場価格決定方法
  11. 病院・医療法人のM&A成功のためのポイント
  12. 営利法人による病院・医療法人のM&Aの注意点とメリット
  13. 病院・医療法人のM&Aアドバイザーコメント
  14. 病院・医療法人のM&A(売買)動向まとめ
  15. 病院・医療法人業界の成約事例一覧
  16. 病院・医療法人業界のM&A案件一覧
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  • 病院・医療法人のM&A・事業承継

1. 病院・医療法人とは

医療法人(病院)は私たちの生活になくてはならない存在です。その仕組みは一般的な株式会社などとは異なるため、M&Aを行う際は注意すべき点もあります。まずは、医療法人(病院)とはどのようなものか、定義を説明します。

病院・医療法人の定義

医療法人とは、医療法の規定によって、病院または医師が常時勤務する診療所もしくは介護老人保健施設の開設を目的として設立され法人を指します(医療法三十九条一項)。

医療法人は株式会社などの営利法人とは区別されており、非営利性が求められます。また、医療法人でない組織が名称に「医療法人」を使用することはできません。

病院・医療法人の特徴

医療法人(病院)の大きな特徴としては、以下の2点が挙げられます。

非営利性

医療法人や診療所などの医療施設は、医療法によってさまざまな規制が設けられており、個人事業主とは異なる内容となっています。

一般的なほかの業種と比べた場合、最も大きな違いは「公共性」と「非営利性」です。医療法人の目的は国民の健康保持に寄与することであるため公共性が求められ、さらに、患者の生命や安全に直結する行為であるという理由から非営利性も重視されます。

非営利とは「利益を関係者へ分配しない」という意味であり、利益を出すこと自体してはならないということではありません。非営利性が重視される医療法人では、剰余金の配当が禁じられています。

また、経営権も一般的な株式会社と異なる部分があるのが特徴です。経営権を掌握する目的でM&Aを行う場合、通常は過半数以上の株式を買い手が取得することで経営権が移転し、全株式を取得すれば完全子会社となります。

しかし、医療法人の場合、株式会社の株式にあたる出資持分(あるいは基金)をすべて買い手へ譲渡しても支配権は移転しません

というのは、医療法人では医療法人が事業主体であり、創立者は理事長や院長の肩書きがあっても立場は「医療法人の構成員」であるためです。

簡単に廃業できない

個人経営の病院や診療所が事業を廃止する場合に必要な手続きは管轄保健所への廃止届提出のみですが、医療法人を解散する場合は都道府県知事の認可のほかに行政手続きも必要です。

手続きは煩雑であるうえ、持分の定めがあれば残余財産の分配、ない場合は基金の返還や残余財産の帰属手続きをしなければなりません。業績悪化などの理由があっても廃業は容易ではないというのも、医療法人の特徴です。

2. 病院・医療法人の分類

医療法人(病院)は設立形態や医療法などにより、以下のように分類されています。

社団医療法人と財団医療法人

医療法人には、社団医療法人と呼ばれる「社団たる医療法人」と財団医療法人と呼ばれる「財団たる医療法人」 の大きく2区分があります。

国内の医療法人の大多数は社団医療法人であり、2010年時点での割合は99.1%以上でした。また、医療法人は「医療法人社団」という言葉が名称に入っていることが多いですが、これは「社団たる医療法人」を示しています。

参考:厚生労働省「医療法人の基礎知識」

社団医療法人

社団法人の病院・医療法人は、医師免許など特殊な技能を持った人(医療法人における出資者は医師)を出資対象とし、出資者全員による社員総会(設立総会)の承認を得て設立する法人形態です。

社団医療法人では構成員である社員が1人につき1つの議決権をもっています。コーポレートガバナンスは株式会社と似ており、最高意思決定機関の社員総会では構成員(社員)が議決権を行使するかたちです。

また、人員配置にも規定があり、役員として理事が原則3名以上、監事1名以上をおくことが医療法第46条において義務づけられています。

社団医療法人の種類には、出資持分ありの社団法人と出資持分なしの社団法人の2つがあり、病院・医療業界における社団法人のほとんどは出資持分なし法人です。

出資持分ありの社団法人では、社員(出資者)が退社するときに拠出金が返還されます。社団法人の出資は医師などで、持分ありの医療法人では、出資持分の譲渡によって病院・クリニックなどの経営を承継が可能で、カルテや従業員との雇用契約なども原則として引き継がれます。

一方、持分なしの医療法人は、医療法人を通した間接的な譲渡形式が採用されるケースがほとんどです。持分がない場合は従業員との雇用契約は原則として承継されないため、退職金の支払いが生じます。

財団医療法人

財団法人は、提供された財産をもとに経営する法人の形態です。持分出資や基金拠出の概念はなく、財団法人において出資対象は財産となります。

財団法人における最高決定機関は、評議員による評議員会です。評議員は社団医療法人の社員に相当し、評議員会は一般社団法人の社員総会と同様の役割を持っています。

持分あり医療法人と持分なし医療法人について

厚生労働省「医療法人の基礎知識」より

出典:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/houkokusho_shusshi_09.pdf

医療法人は持分のあり・なしで分類されますが、両者は原資の調達方法が異なる形態です。以下ではそれぞれどのような形態なのかを説明します。

持分あり医療法人

持分あり医療法人での場合、出資を行って社員となった者は自身が退社あるいは医療法人が解散した際、持分比率に応じ払い戻しを請求する権利を持ちます。

なお、出資持分のある医療法人は、2007年の第五次医療法改正によって新規設立はできなくなりました。出資持分ありの既存医療法人については経過措置がとられており、当分の間は存続することになっています。

持分なし医療法人(基金拠出型社団医療法人)

持分なし医療法人は、資本ではなく基金の拠出により活動原資を調達する医療法人の形態です。持分の定めがない社団医療法人が、活動資金について調達先・手段を基金に求めた場合、その医療法人は基金拠出型医療法人として類型されます。

なお、基金拠出型医療法人は社会医療法人や特定医療法人の承認を受けられないので、基金拠出型医療法人が社会医療法人か特定医療法人どちらかの承認を得たい場合、基金を返還するとともにそれを定めた定款変更が必要です。

社会医療法人と特定医療法人について

社会医療法人と特定医療法人は、それぞれ要件を満たしたうえで認可を受けた組織です。ここでは各法人の特徴を解説します。

社会医療法人

医療法第四十二条の二にて規定されている要件を満たし、かつ、公益性の保持を満たしている医療法人は、都道府県知事の認定を受けることによって社会医療法人の地位が得られます。

社会医療法人として認められると、納税上の優遇的措置が受けられ、同法で定められている収益業務や社会医療法人債発行の実施も可能です。

特定医療法人

特定医療法人は、社会医療法人以外の病院・医療法人が、租税特別措置法第六十七条の二で定められた要件を満たし、国税庁長官から認可された組織です。

特定医療法人となれば、法人税の軽減税率適用など、税制上の優遇措置を受けられるようになります。

その他の医療法人

持分の規定および持分そのものがない社団医療法人については、その他の医療法人(一般の持分なし医療法人)という類型になります。

商流・事業の特性

法人の観点において病院・医療法人は、一般企業とは異なっている点が多いです。ここでは、以下2点の特性について解説します。
 

  • 病院・医療法人の定義の多さについて
  • 病院・医療法人の方針を決める機関の違いについて

それぞれの項目を順番に見ていきましょう。

病院・医療法人の定義の多さについて


一般企業は、株式会社・合名会社・合資会社・合同会社の4種類に大きく分けられます。これに対して、病院・医療法人にはいろいろな形態が存在しており、先ほど紹介した社団法人や財団法人のほか、個人経営の病院や診療所も存在します。

また、国や自治体が経営している病院や日赤など、さまざまな形態の病院が存在している状況です。病院・医療法人のM&Aでは、医療法人における定義の多さがデメリットとなっています。なぜなら、M&Aの手続きが複雑化するからです。

一般企業は大きく分けて4種類のみであり、手続きはそれほど複雑ではありません。しかし、病院・医療法人には多くの形態があるため、それぞれの形態に合わせたM&A手続きを進める必要があります。

病院・医療法人のM&Aを考えている方は、買収先の病院がどのような法人形態であり、どのような手続きが必要であるかを確認しなければなりません。

病院・医療法人の方針を決める機関の違いについて

一般企業でも特に株式会社では、会社の経営方針決定や業務を執行している機関として、株主総会や取締役会が存在します。株主総会は、実質的経営権を有する株主が集まる機関であり、株式会社の最高の意思決定機関です。M&Aの最終決定は、原則的に株主総会決議が必要になります。

取締役会とは、株式会社における業務執行の意思決定機関になります。以上の2つが、株式会社における経営方針を決める機関です。

これに対して、社団法人の病院・医療法人でM&Aの最終決定をする機関は、社員によって構成される社員総会となります。社団法人の出資者(医師など)が通常は社員となり、社員が最終的な経営方針を決定するのです。

つまり、社団法人における社員総会は、株式会社の株主総会に当たります。なお、社団法人において業務を執行するのは理事であり、株式会社でいう取締役です。

株式会社において取締役は従業員である社員よりも立場が上ですが、社団法人の病院・医療法人では社員が株式会社における株主に近い立場となり、理事は社員総会によって選任されます。

3. 病院・医療法人の市場と課題

高齢化が進む日本では医療費の総額が増える一方、医療法人(病院)の市場は悪化してきています。ここでは、医療法人(病院)の市場と課題をみていきましょう。

医療業界の市場規模

財務省「 これからの日本のために財政を考える」より

出典:https://www.mof.go.jp/zaisei/aging-society/society-future.html

厚生労働省の調査によれば、2020年度の医療費は概算で44.2兆円と、2019年度と比べて約2.0兆円の増加となりました。これは、高齢化による医療費の増加が主な要因です。

2022年には団塊世代が後期高齢者(75歳以上)となり始め、2025年には後期高齢者の人数は2180万人になると試算されており、医療費の増加スピードはさらに増すと予想されています。

病院にかかる患者数も増加すると考えられますが、医療費の抑制制約や診療報酬のマイナス改定、薬価基準の引き下げなどの政策が打ち出されていることにより、病院経営は厳しい局面を迎えているのが現状です。
 

厚生労働省「医療提供体制の現状 ~病院数の推移~」

出典:https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001152036.pdf

厚生労働省「医療提供体制の現状 ~病院数の推移~」によると病院数は平成2年をピークに減少を続けており、令和3年では8205となっています。

病院減少は医療従事者不足に伴い統合や再編が行われたことや経営破綻、後継者難などが要因です。今後は、質の高い医療を効率的に提供できる体制を構築していくことが求められています。

参考:厚生労働省「令和3年度医療費の動向-MEDIAS-」
参考:財務省「これからの日本のために財政を考える」
参考:厚生労働省「医療提供体制の現状 ~病院数の推移~」

病院・医療法人の課題

病院・医療法人の市場状況は、少しずつ悪化している状況です。都市部の病院・医療法人ではそれほど目立っていませんが、地方の病院・医療法人では以下4つの要因により状況の悪化もみられます。

赤字経営

独立行政法人福祉医療機構「 2021年度(令和3年度)医療法人の経営状況」より

出典:https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/230303_No012.pdf

独立行政法人福祉医療機構の公表データによれば、2021年度における医療法人(病院)の経営状況は、収益の増加が費用増加を上回ったことで事業収益対事業利益が前年度比で1.9%上昇し、2019年度とほぼ同水準に回復しました。

事業収益規模が大きい医療法人(病院)においては、赤字法人の割合は前年度と比べて大幅に減少しましたが、規模の小さい医療法人(病院)は依然として約3割が赤字経営であるのが実態です。

また、経常赤字割合が高いのは事業収益が10億円以下の医療法人(病院)であり、事業収益が60億円以上70億円未満の医療法人(病院)は事業利益が最も高かったことから、経営拡大が大きなポイントになっているのがわかります。

参考:独立行政法人福祉医療機構「 2021年度(令和3年度)医療法人の経営状況」

人手不足

医療法人(病院)では人手不足も深刻な状態となっています。厚生労働省が公表している「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」によれば、2023年2月時点での有効求人倍率は全体で1.29倍でした。

そのうち医療法人(病院)が関係する医師・歯科医師・獣医師・薬剤師の有効求人倍率は2.27倍、保健師・助産師・看護師が2.33倍、医療技術者は3.28倍、その他の保健医療職業が1.91倍となっており、いずれも全体平均よりかなり高いことがわかります。

少子高齢化により今後は医療・介護に携わる人数がさらに減少するため、いかに人材を確保するかが医療法人(病院)の大きな課題です。

参考:厚生労働省「 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」

設備や施設の老朽化

1985年に施行された医療法改正で病床数を規制されましたが、現在国内にある医療法人(病院)の多くは改正以前に建設されたものが多く、築40年以上が経過しています。

施設や設備の老朽化が進み、建て替えが必要な時期を迎えていますが、経営状態の苦しい医療法人(病院)では修繕・建て替えに対応できていないのが現状です。

独立行政法人福祉医療機構が行った医療法人(病院)の施設整備動向に関するアンケートでは、今後の施設整備計画について「整備が必要だができない」と回答した医療法人(病院)は8.6%で、その理由については「資金的な余裕がない」が最も多い結果となりました。

このような状況により、近年では資金繰りが苦しい医療法人(病院)をファンドが買い取るM&A事例も増えてきています。

参考:独立行政法人福祉医療機構「平成26年度 病院の施設整備動向アンケート調査結果について 」

後継者不足

超高齢社会の到来により、病院や診療所の患者数は緩やかに増加し、法人としての売上も増加傾向にあります。その一方で、規模の小さい医療法人(病院)では医師の高齢化が顕著になり、今後も同じ患者数の診察を続けていくことは難しいのが現状です。

事業承継が必要なタイミングを迎えているものの、後継者不在に悩む医療法人(病院)も増えています。帝国データバンクが2021年に全国企業26万社を対象に行った「後継者不在率動向調査」によれば、後継者不在率の全国平均は61.5%でした。

これに対して、病院・医療の後継者不在率は約70%と非常に高い結果となっており、地域医療の存続という観点からみても後継者不足問題の解決は喫緊の課題といえるでしょう。

参考:株式会社帝国データバンク「特別企画:全国企業「後継者不在率」動向調査(2021 年)」

  • 病院・医療法人のM&A・事業承継

4. 病院・医療法人M&Aの動向

地方にある医療法人(病院)では地域の過疎化による影響で患者数が減少しており、十分な事業収益が得られず厳しい経営状況を強いられているところも多くみられます。

また、医療法人理事長の高齢化が進む一方で、若者の都市部流出などの理由で後継者問題に悩む医療法人(病院)も少なくありません。後継者問題に加え、政府による医療費削減に向けた取り組みなどもあり、売却を検討する医療法人(病院)が増えてきました。

後継者不在問題は医療法人(病院)だけでなく中小企業の多くが課題としていますが、医療法人(病院)の場合は後継者が医師でなければならないため、通常の事業承継よりも難しくハードルが高いのが実情です。

そのような理由により、M&Aによる事業承継(特に第三者への事業承継)のニーズが高まっており、今後はさらにM&Aを選択するケースが増えると考えられます。

5. 病院・医療法人のM&Aの手法(スキーム)

医療法人(病院)のM&Aは株式でなく「持分」があるため、通常のM&Aとは異なる部分も多いです。ここでは、医療法人(病院)のM&Aスキームについて解説します。

持分譲渡

医療法人(病院)における出資持分とは、いわば株式会社の株式にあたるもので、出資持分を所有している者は第三者へそれを譲渡することが可能です。

持分譲渡(出資持分譲渡)では、買い手が売り手医療法人(病院)が所有するすべての出資持分を取得することで、医療法人(病院)の経営権と法人格を承継できます。

持分譲渡(出資持分譲渡)を行った後は、旧役員の辞任と新役員の就任など役員変更をし、今までの社員については退社手続き、新規社員については入社手続きが必要です。これらの手続きをもって、地位承継が完了します。

社員・評議員の入れ換え

医療法人(病院)のうち、持分なし社団医療法人と財団医療法人は持分がないため、持分譲渡(出資持分譲渡)によるM&Aは行うことができません。

持分なし社団医療法人と財団医療法人の場合は、売り手医療法人(病院)法人の社員と評議員に退職してもらい、新たに買い手側の社員・評議員が地位に就くという方法を用います。この場合、買い手が経営権を得るためには過半数の議決権を取得することが必要です。

社員または評議員の退社にあたっては退職金という形で対価を支払い、持分譲渡と同様、認可や変更登記手続きを併せて行います。

合併

合併とは、2つ以上の法人格を1つの法人格に統合するスキームをいい、吸収合併と新設合併の2種類があります。吸収合併は、存続会社となる企業が消滅会社の保有する権利・義務のすべてを引き継ぐスキームです。また、吸収合併後、消滅会社は解散します。

一方の新設合併は、新たに設立された会社が残りの会社が保有する権利・義務を引き継ぐスキームです。たとえば、合併を行うA社とB社がC社を新たに設立し場合は、C社が権利・義務を引き継いでA社とB社は消滅します。

合併のスケジュール

合併のスケジュールは、約1年かかると見ておきましょう。合併は、行政への事前相談から始まり、法人格の問題や税金の問題における事前調査を実施します。

合併のスケジュールにおいて、主な特徴が2つあります。まずは、医療審議会を得なければならない点です。医療審議会がいつ行われ、書類をいつまでに提出しなければならないのか、行政に前もって確認しましょう。

2つ目は、債権者保護手続きです。この手続きは債権者の利益を守るためにあり、債権者へ異議申し立てができる旨を公告し異議を申し立てた債権者に、弁済や担保提供などを行います。2ヶ月ほどの期間が通常はありますが、合併では金融機関や取引先で問題がないか官報に公告しなければなりません。

合併前後における法人類型

厚生労働省「 医療法人の基礎知識」

出典:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000084153_3.pdf

合併前後における法人類型には、以下3つのパターンがあります。

  1. 持分なしの医療法人と持分なしの医療法人→合併後は持分なしの医療法人
  2. 持分ありの医療法人と持分ありの医療法人→合併後は持分なしの医療法人か持分ありの医療法人(選択可能)
  3. 持分ありの医療法人と持ち分なしの医療法人→合併後は持分なしの医療法人

税務問題なども関係するので、合併を行う前に税理士などの専門家に相談しておく必要があるでしょう。

新設分割・吸収分割

会社分割とは、会社が手掛ける事業の一部あるいは全部を他社へ引き継ぐスキームをいい、新設分割と吸収分割の大きく2種類があります。新設分割は、分割対象となる事業の権利義務の一部あるいは全部を新たに設立する会社(法人)へ引き継ぐスキームです。

一方の吸収分割では、分割対象となる事業の権利義務の一部あるいは全部を、既存の会社(法人)へ引き継ぎます。分割は組織再編の手法として用いられるケースが多く、売りたい事業のみを分割したり、買いたい事業だけを分割できたりする点がメリットです。

なお、医療法人(病院)の場合、医療法施行規則第35条の定めにより、持分あり医療法人・社会医療法人・特定医療法人は分割を実施することはできません。

事業譲渡

事業譲渡とは、会社が手掛ける事業の一部あるいは全部を他社へ引き継ぐスキームです。譲渡対象となる事業は、売り手・買い手で協議して細かく決められます。

売り手は不採算事業のみを切り出したり、買い手は必要な事業のみを取得できたりする点がメリットですが、雇用関係や許認可などの権利・義務は引き継がれないため、買い手はM&A後に許認可の取得や契約の巻き直しが必要です。

事業譲渡のポイント

事業譲渡では経営主体が変わるので、医療機関の閉鎖と開設の届出が必要になります。事業譲渡を行う場合は、前もって行政へ事業譲渡を進める旨の承認を得ておくようにしましょう。

また、医療法人(病院)が事業譲渡を行う際はは、地域医療構想との関係上、地域医療構想調整会議にかけなければならないため、各都道府県への相談も必要です。

売り手の医療法人(病院)が保有する従業員は一旦退職するかたちとなるため、買い手側が雇用を引き継ぐ場合は個々の従業員から同意を鰓うえで雇用を結びなおさなければなりません。

事業譲渡では、引継ぎ対象となる資産や取引ごとに各々手続きや契約のまき直しが必要となるため、手間と時間を要します。しかし、買い手にとっては、薄外債務を引き受けるリスクを回避できるメリットもあります。

事業譲渡のスケジュール

事業譲渡は少なくとも半年以上かかるケースが多いため、スケジュールには余裕をみておくとよいでしょう。事業譲渡は、基本合意契約の締結後に行政への事前相談という流れになります。

その後、買い手によるデューデリジェンスが行われ、病床がある場合は地域医療構想会議にかけなければなりません。このとき地域へ情報が開示されることもあるので、職員説明会を行う時期を検討しておく必要があります。

事業譲渡後は、職員との雇用契約や取引先との契約を個別に巻きなおすかたちとなるため、この手続きに2~3カ月程度かかることも多いです。

出資持分譲渡のポイント

出資持分譲渡では、譲渡側における医療法人の出資金や社員権を譲渡します。従業員の雇用契約や取引先との契約も継続可能です。公的な手続きは、役員の交代があるときの届出のみなので、当事者のみで進められます。

出資持分譲渡は、進め方によっては1、2カ月くらいでの完結も可能です。ただし、医療法人ごと引き継ぐため、医療提訴、労働提訴、診療報酬不正請求などのリスクも引き継ぐので、しっかりとデューデリジェンスを行いましょう

M&Aにおける契約金について

M&Aは売買契約であるため、売却される法人につけられる金額が、M&A契約時に支払われる金額です。しかし、特に持分ありの病院・医療法人のM&Aでは、契約金以外に資金を用意しなければならない場合があります。それが社員に対する出資金の払い戻しです。

社団法人の病院・医療法人では、社員(医師など)が出資者となっています。社員が金銭的な出資を行っている場合、その社員に出資分を返還しなければなりません。返還する金額は出資金の返還を求める人数により変化するため、M&Aの案件により異なります。

なお、持分なしの病院・医療法人では、出資持分払い戻し請求権がないので出資金や残余財産分配を考慮する必要がありません。持分なしの病院・医療法人が解散した場合、残余財産は国などに帰属するので注意が必要です。

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6. 病院・医療法人のM&Aメリット

この章では、医療法人(病院)のM&A(売買)を行うメリットを、買収側と売却側に分けて解説します。
 

買い手側のメリット 売り手側のメリット
  • 事業規模を拡大させるため
  • 地方での存在感の強化のため
  • 人材の確保
  • 新規開業に比べ時間や開業資金を抑える
  • 事業承継により病院を経営させ続けられる
  • 医療業務に集中できる
  • 売却利益を獲得できる
  • スタッフの雇用を継続できる
  • 債権者の同意で連帯保証を解消できる

買い手側のメリット

買収側のメリットには、以下2つが挙げられます。

事業規模を拡大させるため

買収側のメリット1つ目は、買収により事業規模を拡大できる点です。事業拡大が実現すれば、無駄のない設備の配置やコスト・人件費の削減などが可能となり、さまざまなシナジー効果によって事業収益の向上にも期待できます。

実際に事業規模拡大戦略を成功させた事例としては、医療法人徳洲会が有名です。医療法人徳洲会は、医療業界のM&Aを先駆けて行っており、その結果、日本最大の医療法人に成長しています。

事業規模拡大の効果によって、2019(平成31)年3月期における医療法人徳洲会の事業収益は約1,400億円となり、2位である医療法人の事業収益と2倍程度の差をつけました。

地方での存在感の強化のため

地方における存在感の強化も、買収側のメリットとして挙げられます。売却される医療法人(病院)の大半は、地方で存在感のある組織であるケースが多いです。

そのため、このような医療法人(病院)を買収すれば、その地域における買収側の存在感強化でき、医療法人(病院)の名前をさらに広めるられます。

人材の確保

買い手側は、売り手の医療法人(病院)に在籍している医師・看護師などを引き継ぐことが可能です。使用スキームによっては雇用契約を結びなおさなければなりませんが、その手間を考えても採用が難しい医師や看護師を一度に確保できることは非常に大きなメリットといえるでしょう。

新規開業に比べ時間や開業資金を抑える

医療法人(病院)の設立には、地域による規制があります。新規開業を考えている場合は、資金だけでなく土地の確保や石・看護師などの人材も確保しなければなりません。

M&Aで売り手の医療法人(病院)そのまま引き継げば、法人設立に必要な煩雑な手続きや医療施設開設の許認可申請などの手間と時間を省けて、開業資金も大幅に削減できます。

売り手側のメリット

次は売り手側の主なメリットを説明します。医療法人(病院)のM&Aでは、特に地方で経営している医療法人(病院)の場合、売却により多くのメリットを受けられることが多いです。

事業承継により病院を経営させ続けられる

売却側のメリット1つ目は、病院の事業承継を行うと病院を経営させ続けられる点です。経営者の高齢化によって、事業承継のタイミングを迎えている病院は多いですが、後継者が周りにいないというケースもすくなくありません。

そうなれば、選択肢は後継者を探す・廃業する・M&Aによる事業承継(売却)の3つとなります。後継者がみつかり事業承継できればそれに越したことはありませんが、後継者は医師でなければならないため探すことが難しいケースも多いです。

特に地方の医療法人(病院)は医師不足を抱えるケースも少なくないため、後継者問題の解決がさらに困難な状況となっています。

また、地方は医療法人(病院)数が少ないため、後継者問題を抱えている医療法人(病院)が地域で強い存在感を持っていることも多いです。このような場合は簡単に廃業できないため、売却が唯一の手段である医療法人(病院)も多くみられます。

医療業務に集中できる

医療法人(病院)の理事たちは、病院・医療法人として経営にかかわる業務のほか、医師として医療業務にもあたっています。医療法人(病院)の経営が厳しい状態であればすべき業務がさらに増すため、医療業務を万全の状態で行えない可能性が高いです。

しかし、医療法人(病院)の売却を行えば運営業務を買収先に任せられるため、医療業務に集中できるメリットがあります。

売却利益を獲得できる

持分ありの医療法人(病院)がM&Aによって持分を売却すると売却利益を獲得できます。売却利益は、病院などが継続されることでの将来的な価値も加味して算定された額です。病院の資産(不動産など)や病院自体の価値(診療報酬など)を合わせて算出するため、高額となる可能性があります。

一方で、持分なしの医療法人(病院)は持分の売却はできないため、退職金のかたちで支払います。この場合、退職金の上限額が「院長医師の最終報酬月額×勤続年数×3倍」と税務上決められているので注意が必要です。

スタッフの雇用を継続できる

廃業という選択をすれば、医療法人(病院)で働いている医師・看護師などのスタッフは職を失うことになります。M&Aによって医療法人(病院)を売却すれば、スタッフの雇用を維持することが可能です。

持分譲渡などの包括承継スキームであれば雇用契約はそのまま買い手へと引き継がれ、個別承継スキームの場合でも人材不足は業界の課題でもあるため雇用が継続される可能性が高いといえるでしょう。

債権者の同意で連帯保証を解消できる

売り手の経営者は、株式譲渡をすることで今まで連帯保証として抱えていた借入金等も売却と同時に譲渡可能です。ただし自動的に引き継がれるようなものではなく、借り入れしている金融機関など債権者の同意が必要となります。

また、事業譲渡の場合には連帯保証は引き継ぎできません。法人格を譲渡するわけではなく、あくまで事業の一部を譲渡するだけだからです。そのため譲渡する事業に関しての借入金等については、譲渡した代金を返済に充てることが多いです。

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7. 病院・医療法人をM&Aで売却する流れ

ここでは病院・医療法人M&Aの基本的なフローを紹介します。一般的なM&Aは、以下の順番で手続きが行われます。

M&Aの目的・方向性を明確化

M&Aを実施する際に目的や方向性が定まっていない状態でM&Aを進めると、条件優先順位を決めることができず譲歩をすることが難しくなることがあります。それによりM&Aがスムーズに行えなくなったり、M&A先が有利となるように実施されたりする場合もあります。

M&Aの目的や方向性など戦略を決めるには専門的な知識が必要になるので、M&A専門家と相談しながら現実的なM&A戦略を定めましょう。

M&A仲介会社などの専門家に相談・契約

M&Aの目的が決まったらM&Aの仲介会社など専門家に相談します。もちろん、目的やM&Aを実施するかどうかについて相談することも可能です。現在から未来にかけての医療経営の承継に関してを確認する場として相談するのもおすすめです。

病院・医療法人のM&Aでは医療法など一般的なM&Aとは異なる制約があるため、経験豊富なM&Aアドバイザーのサポートを受けるケースが少なくありません。

専門家に相談し、業務委託に関して納得したのち専門家と契約を行います。この段階では秘密保持契約、アドバイザリー契約そして自社情報・資料の提出を行います。それぞれは下記の通りです。

秘密保持契約

秘密保持契約とは、自社がM&Aの検討・交渉を行っている情報を漏洩させない契約です。M&Aの情報漏洩は売り手側にはデメリットが大きくなります。

例えば、自社の経営状態がを心配した従業員の退職や想定より売却益が少なくなる可能性があります。情報漏洩を防ぐため、M&A専門家や相談先と秘密保持契約を締結します。

アドバイザリー契約

アドバイザリーとは、M&Aに関して相談・アドバイスを行う業務のことです。アドバイザリー契約締結以降は、仲介会社であればクロージングを行うまでサポートが受けられることが一般的です。料金体系によりこれ以降、着手金や月額報酬などが発生します。料金体系は各社で異なるため、事前にチェックしましょう。

自社情報・資料の提出

相談の段階で病院情報・資料をアドバイザリーに提出します。その情報や経営者との相談をもとにM&A先を選定します。M&A仲介会社の場合は、示されたテンプレートに情報を記入するケースが多いです。

自社にとって不利な情報を提出しなければならない場合もありますが、M&Aにおけるトラブルを回避するために虚偽の申告はしないようにしましょう。

M&A戦略の決定・売却先選定

アドバイザーが決まった後に、M&A戦略を決定したうえで売却先候補の選定を行います。売却先候補の選定は、一般的にノンネームシートに書かれた売却先企業の情報を基に行います。

ノンネームシートとはM&A仲介会社から提供される資料です。具体的な企業名は特定できないものの、業種や規模、エリア、収益や買収を希望する理由などが記載されています。この情報を基に売却先候補との条件を照らし合わせ、自社のメリットについて検討します。

トップ面談


買い手の意思が固まり具体的に買収を検討する段階になると、次はトップ面談の場が設けられます。

この会談は、売り手企業・買い手企業双方のトップ同士が顔を合わせてお互いの理解を深める貴重な場です。ここでは譲渡価額の交渉はせず、M&Aを決意した経緯や経営ビジョン、今後の経営方針などが話し合われます。また、トップ面談とともに医療施設の見学を行う場合もあります。

意向表明書の提示

意向表明書とは、株式譲渡・事業譲渡などといった買収方法や買収価格などの諸条件が記載された書面です。M&Aのプロセスとして省略されることもありますが、買い手側のM&Aの意向を売り手側に明示するものとなります。

基本合意書の締結

基本合意書では、買収の条件・独占交渉権・守秘義務・誠実交渉義務などが記されます。基本合意書は、法的拘束力はなく合意内容確認書という位置付けのものですが、独占交渉権やデューデリジェンスへの協力義務の条項には例外的に法的拘束力を持たせます。

また、病院・医療法人のM&Aでは行政に施設の廃止・開始や経営者交代に関する調整が必要な場合があります。

デューデリジェンス


デューデリジェンスとは、買い手が売り手企業の実態を把握するために行われる調査です。具体的には、M&Aの専門家や士業が医療施設を訪問し、帳簿を閲覧したり、書面では把握できない会社状況をチェックする手続きです。

デューデリジェンスで発生する専門家への手数料は、一般的に買い手が負担します。
 

条件交渉


デューデリジェンスを行い問題がなかった場合、最終合意に向けて交渉を行います。交渉の多くは、売買条件の他、経営者・役員・従業員の処遇や最終契約までのスケジュールなど詳細な内容です。

最終契約の締結


最終的な売却価格が決定し、その他の条件にも問題がなければ、最終契約の締結となります。最終契約書の内容には、取引金額や譲渡の内容、表明保証などが記されます。

表明保証とは、売り手側が契約の成否にかかわる重要な情報を正確に飼い主に開示していることを保証するものです。M&A後に表明保証条項違反が発覚した際どのように保証するかを定めたものが「補償条項」です。この内容に関しては医療経営者もしっかり確認する必要があります。

クロージング

クロージングでは最終契約書の内容をもとにヒトやモノ、カネを移動させます。クロージングが実行されると、手続き上のM&Aフローは完了となります。

クロージングではさまざまな混乱が生じることが予想されるため、計画書などを事前に作成しておくことが重要です。

8. 病院・医療法人の同業とのM&A8選

この章では、医療法人(病院)が同業種と行ったM&A事例を紹介します。

①博洋会による竜山会への事業譲渡

2021年6月、博洋会と竜山会は事業譲渡契約を締結しました(譲渡実行日は2021年8月1日)。買い手の竜山会は石川県で病院を運営する医療法人病院を運営する医療法人です。売り手の博洋会は同じく石川県の医療法人で藤井病院を運営しています。

博洋会は、藤井病院で夜勤看護要員の配置要件を満たしているように偽って勤務実態とは異なる届出をしていました。その後、診療報酬の不正請求が発覚し、保健医療機関指定取り消し処分を受けています。

本M&Aは博洋会が行っていた医療サービスの継続および雇用継続が目的をして行われました。

②沖縄徳洲会による木下会の吸収合併

2019年12月、沖縄徳洲会は木下会を吸収合併しました。木下会は、総合病院や介護老人保健施設を運営していた千葉県の社会医療法人です。

沖縄徳洲会は多数の病院クリニックを沖縄・鹿児島を中心に運営する医療法人で、病院を全国展開している徳洲会グループに属しています。

今回のM&Aにより、経営の合理化、コンプライアンスやガバナンスの強化を目指すとしています。

参考:徳洲会グループ「社会医療法人木下会 沖徳に吸収合併」

③翔洋会によるときわ会への事業譲渡

2019年8月、民事再生中である翔洋会が、ときわ会へ医療・介護事業を譲渡しました。譲渡対価は、およそ12億4,300万円です。

翔洋会は病院やクリニックを運営する医療法人で、一方で公益財団法人ときわ会・医療法人ときわ会は病院、クリニック、介護老人保健施設等を担当しています。

2018年11月に、翔洋会は261億6,400万円の負債を抱えて事実上倒産となり民事再生法の手続きに入りましたが、大きな社会的影響があるため、当局の保全命令・監督命令のもと病院の運営を続けていました。

ときわ会は、本M&Aによりグループ内における既存病院との連携による医療提供体制・健診機能の向上を図るとしています。

参考:ときわ会「翔洋会に関するお知らせ(8月2日現在)」

④日本赤十字社による兵庫県立柏原病院および柏原赤十字病院の統合再編

2019年7月、日本赤十字社グループは県立柏原病院と柏原赤十字病院の統合再編を実施しました。兵庫県にある県立柏原病院は、がん支援センターや脳外科神経外科などの専門医療を行う病院です。医療行為だけでなく、地域医療教育センターなどを展開し医療人材の育成にも力をいれています。

柏原赤十字病院は、県立柏原病院同じく兵庫県に位置し、眼科・婦人科・内視鏡センターを有する病院です。地域住民との交流会を開くなど、地域に根差した医療提供を行っています。

本統合についての計画は2015年に策定されたもので、柏原病院および柏原赤十字病の老朽化や狭あい化への対応、地域の将来的な医療を検討し医療設備の充実などを図ることが目的です。統合後は、新病院「兵庫県立丹波医療センター」が設立されました。

⑤巨樹の会による杵島郡大町町立病院の取得

2017年6月、巨樹の会は、佐賀県にある杵島郡大町町立病院を譲り受けました。大町町立病院の施設が老朽化したため、その対応およびを地域医療の継続を目的に行われたM&Aです。

M&A後には大町病院(実施後「大町診療所」へ名称変更)が新たに開業しましたが、3年後の2020年3月に施設老朽化や経営赤字によって閉鎖となりました。

⑥埼玉県JA全厚連が2病院を北斗と巨樹の会へ譲渡

2016年年1月に埼玉県厚生農業協同組合連合会(埼玉県JA全厚連)は、熊谷総合病院と久喜総合病院をそれぞれ北斗と巨樹の会へ譲渡しました。

埼玉県JA全厚連は、熊谷総合病院と久喜総合病院の2か所を運営していましたが、赤字経営が続いており自主改善は難しいと判断し、地域医療サービスの継続と雇用維持のため本譲渡を決断しています。熊谷総合病院は、帯広市の社会医療法人北斗へ、久喜総合病院が巨樹の会へと譲渡されました。

⑦啓仁会による秀島病院の吸収合併

2008年1月、啓仁会は秀島病院を吸収合併しました。啓仁会は鳥取県と東京都で高齢者施設・障がい者支援施設・保育所などを運営しています。

秀島病院はバブル期に銀行から融資を受けて病院規模を拡張しましたが、事業計画の不足や過剰投資による債務超過などが深刻化している状態でした。

このような状況下、啓仁会が秀島病院に対して経営支援を行い、その後の協議で銀行が一部債権を放棄したため、本吸収合併に至っています。

秀島病院は個人病院でしたが、M&Aに伴い医療法人化して「吉祥寺南病院」へと名称変更しました。M&A後は単年度の黒字化を果たしており、経営上の効果があったことを啓仁会が報告しています。

⑧伯鳳会による国仲病院および小国病院の取得

2005年10月、伯鳳会は、医療法人十愛会の国仲病院を整理回収機構より取得しました。その後、国仲病院は「明石はくほう会病院」へ名称変更しています。

また、2007年2月には、同じく十愛会の小国病院を承継しました。産婦人科病院の小国病院は医師不足に悩んでおり、病院存続を目的として譲渡を行っています。

伯鳳会は国仲病院および小国病院をグループに加えたことで施設数は全体で30を超え、本部(本部は赤穂中央病院)管理の元で各施設を運営する体制を構築しました。M&Aにより医師が充足した伯鳳会は、継続的な医療の提供に成功しています。

9. 病院・医療法人と異業種のM&A7選

この章では、医療法人(病院)が異業種と行ったM&A事例を紹介します。

①東海大学が徳洲会へ医学部付属病院を譲渡

2023年3月、学校法人東海大学は医療法人徳洲会へ同大学付属大磯病院を譲渡しました。大磯病院は東海大学医学部が保有する附属病院のひとつで、23診療科があり病床数が312床の地域の中核病院です。

徳洲会はグループ全体で約400施設を展開する一大医療グループで、M&Aを積極的に活用して事業拡大に成功しています。大磯病院は、救急や夜間・休日診療にも対応する地域に根差した病院でしたが、近年の少子高齢化および人口減少で経営状況の改善は見込めない状況となっていました。

本M&Aは地域医療の継続を目的として行われたもので、東海大学は現行の診療体制を維持する計画であり、当面は常勤医師を派遣する予定としています。

参考:神奈川県大磯町「東海大学医学部付属大磯病院の事業終了と、医療法人徳洲会への事業継承について」

②日本郵政が生和会へ広島逓信病院を譲渡

2022年10月、日本郵政は広島逓信病院を生和会へ譲渡しました。日本郵政は、日本郵便・ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険などの事業を行う日本郵政グループの持株会社です。買い手となった医療法人の生和会は、山口県・広島県に5つの病院・10の介護施設を運営しています。

日本郵政は、地域医療の発展に資すると判断して本譲渡を決断しており、現在の診療体制などは新病院に引き継がれる予定です。なお、譲渡によって広島逓信病院は、広島はくしま病院として名称が変更となりました。

参考:日本郵政株式会社「京都逓信病院の事業譲渡について」

③NTT西日本が真泉会へ松山病院を譲渡

2020年12月にNTT西日本は松山病院を真泉会へ譲渡しました。NTT西日本は、西日本で電気通信業務などを手掛けています。NTT西日本松山病院は医療法施行の前に逓信省(総務省、日本郵政、NTTなどの前進)が運営していた病院で、民営化後は企業立病院でした。

真泉会は、病院を運営している社会医療法人です。企業立病院は、いろいろな規制の対象であるため一般の病院より経営環境が厳しく、最先端の医療機器や医師の確保が困難であることから、NTT西日本は医療サービスと雇用の継続を目的に譲渡を決断しています。

参考:西日本電信電話株式会社「NTT 西日本松山病院の事業譲渡について」

④メディカルネットによるタイの歯科医院取得

2020(令和2)年10月、インターネットを活用した医療・生活関連情報サービス業を行っているメディカルネットが、タイの子会社Medical Net Thailandつう通じて、Pacific Dental Care Co., Ltd.の全株式を取得し、完全子会社化しました。

取得価額は、1,600万バーツ(その時点における為替レートで約5,371万3,000円)です。メディカルネットは、歯科医療情報ポータルサイト運営、歯科クリニック経営支援、歯科関連企業マーケティング支援など歯科医療関連ビジネスに注力しています。

2017(平成29)年にタイに設立したMedical Net Thailandは、タイで歯科医院を運営しており、子会社化したPacific Dental Care Co., Ltd.も同様です。本M&Aは、タイでの歯科医院運営事業拡大を目的として行われました。

参考:株式会社メディカルネット「連結子会社の異動を伴う子会社による株式取得(孫会社化)に関するお知らせ 」

⑤エヌアイデイ・天太会・アルムの3社が業務資本提携

2019年5月、エヌアイデイ・天太会・アルムの3社は業務・資本提携を結びました。システム開発会社のエヌアイデイはAIやIoT・クラウド・金融などのソリューションサービスを中心に事業展開しています。

天太会は診療所や健診センターを運営している医療法人、アルムは医療・介護向けクラウドサービスを提供している会社です。

以前から天太会とアルムは業務資本提携を結んでおり、協力体制のもと最先端医療ITサービスを活用したクリニックを運営していました。

今回新たにエヌアイデイとも業務資本提携を結ぶことで、これまでに天太会とアルムが培ってきたノウハウとエヌアイデイの技術を掛けあわせ、保健指導のオンラインサービス提供や医療データを活用したAIソリューションの開発などを進めていくとしています。

参考:株式会社アルム「株式会社エヌアイデイとの業務・資本提携に関するお知らせ」
参考:株式会社エヌディアイ「株式会社アルム及び医療法⼈社団天太会との 医療・ヘルスケア AI ソリューション開発に向けた業務・資本提携に関するお知らせ 」

⑥東芝が緑野会(カマチグループ)へ東芝病院を譲渡

2017年10月、東芝は緑野会へ東芝病院を譲渡しました。東芝病院は、1945年に東芝で働く社員のための企業立病院として発足した病院です。現在は最新機器や総合医療情報システムを導入しており、東芝の社員だけでなく地域住民の医療も担っています。

緑野会はカマチグループの医療法人です。回復期リハビリテーション医療やER救急センターを運営しています。本譲渡の理由は、東芝病院と東芝グループ全体の経営不調によるものです。

参考:株式会社東芝「東芝病院事業の譲渡に関する基本合意書締結について」

⑦NTT東日本が東北医科薬科大学へNTT東日本東北病院を譲渡

2016年9月、NTT東日本はNTT東日本東北病院を東北医科薬科大学へ譲渡しました。日本電信電話公社従業員の職域病院として設立されたNTT東日本東北病院は、1980年以降は保険医療機関に指定されて一般診療を行っています。

東北医科薬科大学の前身は1939年に設立された東北薬学専門学校で、東北・北海道地区では唯一の薬学教育機関です。2016年には、東日本大震災復興と医療人材教育を目的に医学部が設立され、同時に東北医科薬科大学へと名称変更しました。

本譲渡は、NTT東日本東北病院の医師不足解消が主な目的であり、現在は東北医科薬科大学の附属病院となっています。

参考: 東日本電信電話株式会社「NTT東日本東北病院の事業譲渡について」

【関連】クリニックのM&A・事業承継の成功・失敗事例まとめ!業界動向、成功ポイントも解説| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

10. 病院・医療法人の相場価格決定方法

M&Aの取引価格を交渉する際は、企業価値と呼ばれる評価額を基準にします。株式会社などの営利法人ではDCF法によって企業価値を算出するケースが多いですが、医療法人(病院)の場合は規模や収益性には大きな幅があるため、直近の経営状況をもとに評価を行うのが一般的です。

その場合「時価純資産額+営業利益×1~5年分」で算出した額に、直近の業績やM&Aにとってのマイナス要素を考慮した額を加えたものを医療法人(病院)の価値とします。

そのほかにキャッシュフローの数年分という計算もあり、ある程度規模の大きな医療法人(病院)では、M&Aの取引価額が10億円を超えるケースも珍しくありません。

【関連】株式譲渡の金額・価格の決め方!低額譲渡・高額譲渡の注意点も解説!

11. 病院・医療法人のM&A成功のためのポイント

医療法人(病院)のM&Aは、一般企業のM&Aに比べて成功する確率が高く、比較的容易に行えるという意見もありますが、それはM&A成功のためにポイントを押さえて進めることが前提です。医療法人(病院)のM&Aを成功させるために意識すべきポイントは以下の4つが挙げられます。

ガバナンスコントロール

ガバナンスコントロールとは社外の利害関係者による統治・制御のことをいいます。株式会社の場合、買い手側が売り手法人の経営権をコントロールするためには発行済み株式(議決権)の過半数以上をM&Aによって取得することが必要です。

買い手は売り手法人の発行済み株式(議決権)を過半数以上取得することで、株主総会で決議される多くの事項を自らの意向でコントロールすることが可能となります。

医療法人(病院)の場合、株主総会にあたる最高意思決定機関は社員総会です。社員総会の議決権は、株主総会で採用される出資比例方式ではなく、社員1人につき議決権1票と平等に分配されています。つまり、株式会社と同じようには経営権をコントロールできない点に注意が必要です。

M&A後の病院・医療法人の経営方法

医療法人(病院)が経営権をコントロールする方法には、直接経営と間接経営の2種類があります。

直接経営

株式会社であれば株式比率に基づいた議決権があるので、出資を増やせば直接経営することは容易です。このような方法をエクイティアプローチといいます。

しかし、医療法人(病院)の場合、最高意思決定機関である社員総会における議決権は、社員1人につき1議決権です(社員は出資者である必要はありません)。

そのため、出資持分を保有していても社員総会の議決権をもつ社員らの支持を得なければ、経営権を確立できないため敵対的買収は困難でしょう。

間接経営

間接経営とは、売り手医療法人(病院)の債権者となることで経営をコントロールする方法です。医療報酬債権関連の債権を取得した場合は、買い手は売り手医療法人(病院)の大口債権者となります。

医療法人(病院)のM&Aでは、売り手医療法人(病院)の土地や建物そのものを買収することで、間接的に経営をコントロールする方法が代表的です。

このような方法をデットアプローチといい、上記のケースでは引き渡された不動産の所有者になることで経営の間接的なコントロールが可能となります。

そのほかの方法として、MS法人(メディカル・サービス法人)を利用して譲渡される病院・医療法人を間接的にコントロールすることも可能です。

MS法人とは、医療法人(病院)に対する医療に関連したサービスの提供を目的とした法人をいい、営利目的で事業を行うことができます。

この方法では、売り手医療法人(病院)の経営の一部がMS法人に委託され、買い手がMS法人の経営権を取得することによって間接的に経営権のコントロールが可能です。

M&A仲介会社

病院・医療法人のM&Aを行う際は、専門家の選定に気をつける必要があります。特に病院・医療法人のM&Aは一般企業のM&Aに比べると特殊であるため、信頼できる専門家に依頼しなければなりません。信頼できるM&A仲介会社を見極めるためには、以下のポイントを確認するとよいでしょう。
 

  • 秘密保持契約など契約をきちんと行っているか
  • 自身の紹介をするときに自慢話が多かったり、矛盾する話があったりしないか
  • ネットで検索して見つかるM&A仲介会社であるかどうか
  • 口コミでそのM&A仲介会社における評判はよいか、実績があるかどうか
  • 病院・医療法人とのネットワークが広いかどうか
  • 相談に対してすぐに対応できるM&A仲介会社であるかどうか

M&A仲介会社をお探しの場合は、ぜひM&A総合研究所へお任せください。M&A総合研究所では、経験・知識の豊富なM&Aアドバイザーが案件をフルサポートいたします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります。)無料相談を行っていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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行政機関への連絡

医療法人(病院)のM&Aは一般企業とは異なり、行政機関との関係も重視しなければなりません。各種手続き申請など行政機関が関係するため、あらかじめM&Aの実施に関する連絡が必要です。

例えば、医療法人(病院)の吸収合併には、都道府県知事の認可が必要(医療法58条の2)となるため、都道府県・厚生労働省・保健所などに対する申請や届出も同時に準備する必要があります。

医療法人(病院)のM&Aでは多くの作業を並行して進めなければならず、ケースによってはM&A手法の検討やデューデリジェンスの実施、定款変更の手続きにも行政機関との連絡が必要です。

12. 営利法人による病院・医療法人のM&Aの注意点とメリット

医療法人(病院)には非営利性が求められます。患者が願うのはいかなる病状においても治療が受けられることですが、もし医療法人(病院)が営利を追求すれば高額報酬の治療しか行わなかったり裕福層患者のみに治療を行ったりなど、不公平な病院経営を行う可能性もあるでしょう。

そのような理由により、医療法人(病院)には非営利性を厳しく求められており、それはM&A(売買)を行う場合においても同様です。M&Aの際に非営利性が問題となるケースとしては以下が挙げられます。

営利法人が社員(オーナー)となれるのか

結論からいえば、営利法人は医療法人(病院)の社員にはなれません。しかし、医療法人(病院)への出資自体は認められています

ただし「営利法人が病院・医療法人を手放すときはM&A時に出資した資金などを返す必要はない」とする厚生労働省の見解があり、この点には十分な注意が必要です。

営利法人の役員・職員が理事になれるのか

理事は、株式会社では取締役に相当します。当該医療機関の開設・経営上利害関係がある営利法人の役員・職員(自然人)が、当該病院・医療法人の理事となることは、非営利性の観点から原則認められていません。

そのような理由から、利害関係のある営利法人がM&Aで医療法人(病院)を買収しても、営利法人によって直接的に経営を行うことはできないと考えるのが無難です。

利害関係のある営利法人の役員・職員が出資者(社員)となれるのか

これに関する制限は設けられていません。営利法人自体は社員にはなれませんが、営利法人の役員・職員(自然人)は病院・医療法人の社員になれます。

ただし「医療の非営利性の観点からはあまり好まれない形態である」というのが専門家の見解です。

営利法人が医療法人(病院)を買収する際の手法と流れ

一般企業がM&Aによって医療法人(病院)を買収し、直接的に経営権を掌握することは現在の法制度では難しいのが現実です。そのため、営利法人が医療法人(病院)を買収する場合は、持分譲渡か社員入れ替えによって経営権を取得する手法が用いられています。

具体的には、営利法人が医療法人(病院)の経営権を直接取得することが難しいため、自社の意思を代弁する者を選任して社員あるいは役員として送り込むといった間接的な方法で経営をコントロールするかたちです。そのほか、営利法人と医療法人(病院)とで業務提携あるいは資本業務提携が締結する手法もあります。

一般企業・株式会社が医療法人(病院)を買収するメリット

医療法人(病院)には非営利性が求められますが、地域に医療を提供ながら事業規模拡大などによって利益を向上させ、法人財産の価値や役員報酬のレベルを上げることは可能です。

現行の法制度上では、一般企業・株式会社が営利目的で医療法人(病院)を買収するメリットはあまり大きいとはいえないでしょう。

営利法人による医療法人(病院)医療法人の経営権取得は、間接的な手法によるものです。しかし、資本業務提携であれば経営の独立性を維持したまま協働できるので、近年では医療法人(病院)とIT企業の間で資本業務提携のM&Aが実施されるケースなどもみられます。

13. 病院・医療法人のM&Aアドバイザーコメント

病院・医療法人の業界動向

医療法において、医療施設は病院と診療所とに区分されています。病院と診療所との区分について、病院は20床以上の病床を有するものとし、診療所は病床を有しないもの又は19床以下の病床を有するものとしています。
 
全国の施設数を開設者別に見ると、病院、一般診療所ともに「医療法人」が最も多くなっています。医療法人は持分ありと持分なしに分かれます。平成19年4月の第5次改正医療法施行前に、医療法人の大半を占めていたのは、出資持分の定めのある医療法人(持分あり医療法人)でした。出資持分は、経済的価値を有する財産権です。また、定款に違反しない限り譲渡性が認められており、贈与税や相続税の課税対象となります。平成19年4月の改正医療法施行以後は、持分あり医療法人は新規設立ができなくなりました。

病院・医療法人のM&A動向

医業承継の方法としてM&Aが選ばれることが増えており、今後も盛んになっていくと考えられます。その理由として、次の2点が挙げられます。

医療施設における医師の高齢化

診療科目全体でみると、国内の医師の平均年齢は60.2歳(2020年現在)となっています。この数値は、医療施設に従事する医師の平均年齢であり、一般企業で言う社長の平均年齢ではありません。一般に、60歳が定年と定められる企業が多い日本において、勤務医を含めた平均年齢が60.2歳となっていることからも、医療施設における高齢化が進んでいると言えます。

医師が高齢化することでその医療施設の存続が困難になる場合も多いですが、一方で医療施設はその地域に無くてはならない存在であることも多く、M&Aにより存続させる動きが加速しています。

後継者の確保が困難

現在業種に関わらず、後継者不在の企業が増えておりますが、中でも医業を承継するには、後継者が医師でなくてはいけません。そもそも医師になることのハードルが高いため、他の業種と比較すると後継者の確保が困難であると言えます。

たとえ後継者が医師になったとしても、診療科目が異なる場合、承継のハードルが高くなります。また、医療施設の経営状況や必要資金への不安から、後継者が勤務医を希望することも珍しくありません。

病院・医療法人のM&Aにおける今後の展望

高齢化の状況に加え、医師の資格がなければ事業を承継できないという高いハードルにより、後継者不在の悩みを抱える医療施設は数多く存在します。地域医療を維持するという観点から簡単に廃業を選ぶことはできない状況です。事業の存続・従業員の雇用継続のために外部に承継先を求めることも増えてくるでしょう。

譲受企業も病院、医療・介護関連企業、その他事業会社などと多様化しております。
将来的にM&Aを検討されている経営者様は、事業の継続・従業員の継続雇用のためにもタイミングを的確に見極め、市場のニーズが高い時期を逃さず決断することで、良いM&Aの実現ができるものと考えられます。

14. 病院・医療法人のM&A(売買)動向まとめ

病院・医療法人のM&Aは、一般企業のM&Aと異なっている点が多くあります。そのため、病院・医療法人のM&Aを行う際には、専門知識を持つM&Aアドバイザーなどに相談するほか、余裕を持ったスケジュール調整をするなどの対策も必要です。

15. 病院・医療法人業界の成約事例一覧

16. 病院・医療法人業界のM&A案件一覧

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