益金とは?益金不算入制度の仕組みや収益との違いまで徹底チェック!

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

益金は不算入制度や収益との違いなど押さえておくべきポイントがいくつもある言葉です。会計・税務上でも知っておくべき言葉ですので、益金について詳しく解説します。また、損金や不算入制度に関するルールも解説しますので参考にしてください。M&A市場でも益金という言葉が頻繁に使用されているので、おさえておきましょう。

目次

  1. 益金とは?
  2. 益金となるもの(益金算入)
  3. 益金とならないもの(益金不算入)
  4. 「益金」と「収益」の違い
  5. 「益金」と「損金」
  6. 益金不算入制度に関するルール
  7. 益金の参入・不算入における注意点
  8. 益金についてよく理解して会計処理を正確にしよう!
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1. 益金とは?

益金(えききん)とは、商品やサービス提供に対する報酬などの「収益」に近しい意味を持っていますが、同じではありません。

法人税法第22条2項によって定められている言葉であり、以下の5つが益金に該当するとされています。

  • 資産の販売
  • 有償または無償による資産の譲渡
  • 有償または無償による役務の提供
  • 無償による資産の譲受け
  • その他の取引で資本等取引以外のもの

会社の収入のすべてを表す言葉ではなく、会社の収益より範囲が広くなっているのが特徴です。
一方法人税を計算する際の費用を「損金」といい、それぞれの関係は以下になります。
 
  • 会社の利益=収益-費用
  • 会社の所得=益金-損益

「会社の利益」は会社法によって計算されるもので、「会社の所得」は税金の額を計算し課税の公平を目的としており、会社法と税法の目的の違いから二つは区別されています。

ちなみに、法人税法上における益金の説明で「別段の定め」と記載がありますが、これは益金算入・損益不算入などの税務調整が該当します。M&A市場でも益金という言葉が頻繁に使用されています。

M&Aの税務において「益金」はおさえておくべき知識になるので、本記事を参考にしてください。

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益金の意味

益金の意味としては上記の通り、商品の売り上げ・サービス提供に対する報酬である「収益」です。

法人税法においては、定義づけられており、「益金=収益」ではないのが注意すべき点です。

税法における益金の範囲は広く定義づけられており、無償で資産をあげた時にも本来もらうべき金額、無償で資産をもらった時や無償で役務の提供をしたときに時価で支払うべき金額も収益として計上しなければなりません。

これが益金の考え方となります。

2. 益金となるもの(益金算入)

資産の販売

自社商品や製品などを販売した際に得られる利益も益金となります。

損益計算書では「売上高」に該当するものを指しています。

資産の譲渡

有償または無償による資産の譲渡から収益が得られる例は以下に挙げている2つです。

  • 不動産や土地に代表される固定資産
  • 債券や投資信託などの有価証券

これらにより得られる収益が益金となります。
損益計算書では「営業外収益」や「特別利益」に該当します。

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役務の提供

有償または無償によるサービスや役務の提供にで得られる収益は以下の例が挙げられます。

  • 請負仕事の報酬
  • 貸付による利子
  • サービス提供にかかわる収益

請負や貸付による収益、サービスが主になっています。
損益計算書では「売上高」「役務収益」「貸付金利息」に該当します。
無償での役務の提供は、計上する際に本来支払うべき金額を扱います。

無償の資産の譲受け

無償による資産の譲受けによる収益は以下が挙げられます。

  • 債権者による債務免除
  • 販売店舗のコーナーの設置をメーカー負担で行った
  • 製品を購入した際に、サービスとして多めに納品してくれた

これらは無償で受け取った製品・サービスで得た収益を言います。
債務免除については、経済的価値があることからこちらに含まれています。

その他の取引で資本等取引以外のもの

その他の取引で資本等取引以外のものによる収益は上記4つに該当しない収益です。

「資本等取引」は以下が該当します。

  • 株主からの出資額増減
  • 自己株式の取得
  • 処分・剰余金

ただ、これらのものに関しては別段の定めがあるときに限るため、基本的には上記4つが益金に該当します。

3. 益金とならないもの(益金不算入)

先ほど解説した益金算入のものと区別して、「益金不算入」のものは会計で収益として計上しているまたは法人税上では益金と算入されないものを表します。
益金不算入はM&A実行後に得た収益の見通しにも関わる内容です。企業の節税に直結する要素でもあるので、専門家からサポートを受けながら行うことをおすすめする分野でもあります。

益金不算入の項目一覧

税法上で益金不算入となるのは以下に挙げる項目です。

  • 法人税や所得税等の還付金
  • 資産の評価益
  • 受取配当金

1つ目については、還付金がもともと払いすぎた税金が戻ってきただけという性質をもっているため、手元の現金の増減は見かけのものだけとなります。還付金に対して税金が発生すると二重課税に該当するためこれは益金不算入となります。
2つ目については、簿価よりも時価の金額が上回った場合の差額のことを指し、会計上にも計上せず益金にも不算入としています。
3つ目については、法人税がすでに課税されていることから、こちらで益金とするのは二重課税になるため算入されていません。

4. 「益金」と「収益」の違い

ではここからは「益金」と「収益」の違いを解説します。

簡単にいうと、税務で用いられるのが「益金」であり、会計で使用されるのが「収益」になります。

以下で詳しく解説していきます。
 

税務で使用するのが「益金」

益金は、法人税上で定められている言葉であり法人税を計算する際の収益をいいます。

益金は税務で使用され、収益とは以下の違いがあります。

  • 税務では損金にできない・会計上では費用にできる
  • 会計では収益に計上できる・税務上では益金に該当しない

一般的な所得の計算としては、会計上の利益を先に算出します。次いで税務での取り扱い上に整形をして税務上の所得を計算しますが、これにより多少の数値ズレが発生します。この数値ズレが冒頭でも解説した「別段の定め」に該当します。M&Aにより会社を売買した際にも法人税がかかりますが、M&Aの利益計算をするときにも益金という言葉が使われます。
会社の所得を計算する際に、「所得=益金-損金」で用いられることもあります。

会計で使用するのが「収益」

一方で、「収益」は会計で使用される言葉です。

M&A市場でもよく売却収益という言葉が使われるほど、M&Aにおいて当然の言葉です。会計上で計算される利益は「収益 - 費用&損失」になっています。そもそも会計の根本的な考え方として「財務状況や経営成績を投資家に明示する」ことであり、以下の書類などを作成する必要があります。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書

税の申告書提出義務が生じている場合でも、会計上の利益を明確にしてから課税所得・税金を計算します。

5. 「益金」と「損金」

では続いて、「益金」と「損金」について解説します。「損金」は先ほどの「収益」とは違い少しややこしくなるので順に解説します。

損金とは?

「損金」とは、資本等取引以外の法人資産減少の原因となる原価・費用・損失をいいます。

よく似た言葉に「費用」がありますが、「損金」とは以下の違いがあります。

  • 費用:会計で用いられる
  • 損金:税務で用いられる

よく似た言葉ではありますが、益金と収益と同じように扱われる先が違います。ちなみに、会計と税務では以下のような違いがあります。
  • 会計上の「費用」:簿記・企業会計原則ルールに則っている場合は全額認められる
  • 税務上の「損金」:内容により一部・全額認められないケースがある

損金算入

さて、「損金」について理解を深める上で「損金算入」についても理解を深めておく必要があります。

企業支出を会計上で「費用」として処理をすることを「損金経理」といいます。ただ、損金経理上で減価償却費や引当金の繰り入れのような少し特殊な費用を「損金」として扱うためには、損金処理が条件としてあげられるケースがあります。そうなると、企業支出の全額を「損金」として処理することができず、法人税法で定められてる項目・限度額に従うしかありません。

これらを理解するために以下の2つの用語を知っておく必要があります。

  • 損金算入
  • 損金不算入

「損金算入」とは、会計上で「費用」として扱っていないのにもかかわらず税務上では「損金」として扱うことをいいます。

「損金算入」の代表例として、法人事業税や繰越欠損金の控除などが該当し「損金」に参入することができません。一応、法人事業税は「損金」として扱うことができる税金ではありますが、申告書を提出した時点での「損金」として扱うため「損金算入」の一つとされています。

損金不算入

続いて「損金不算入」は、会計上で「費用」として処理できているのにもかかわらず税務上では「損金」として扱われていないことをいいます。

「損金」は多く扱われれば扱われるほど会社が国へ納める税金が安くなります。そのため、会社が「損金」として扱う範囲を不正に広げないように「損金不算入」という項目が設けられているのです。そんな「損金不算入」として扱われる項目は以下の6つがあります。

  • 役員報酬
  • 寄附金
  • 交際費
  • 減価償却超過額
  • 同族会社と経営者の取引
  • 税金

受取配当金は損金不算入

平成27年に行われた税制改正で、受取配当金等の益金不算入制度が再検討されました。

持ち株比率が高い株式投資について、経営形態の選択などに税制が影響しないように100%益金不算入としています。その代わりに持ち株比率の基準が引き上げられています。さらに、持ち株比率が低い株式への投資として投資機会の選択に影響しないように益金不算入割合が引き下げられる変更となっています。

交際費は損金不算入

項目3の「交際費」は損金不参入であり、税務調査で最も指摘事項が多い勘定科目の1つとされています。

まず、「交際費」は税務面より以下の3つに分類することができます。

  • 社外飲食接待費:800万円まで全額または50%損金算入可能 
  • その他交際費:損金算入不可(社内飲食費など) 
  • 会議費:全額損金算入

例えば、会議に使用するための茶菓子など5,000円/人であれば、「会議費」として全額損金算入が可能です。ただ、それらのお金が車内の一部として飲み会などに使用されたケースだと「その他交際費」として扱われ、全額損金算入ができません。

さらに、「交際費」の扱いをややこしくしているのが「社外飲食接待費」です。
  • 資本金1億円以下の中小企業・自営業:800万円まで損金算入可能
  • 資本金1億円超の大企業:社外接待飲食費の50%を損金算入可能

上記のように会社の規模により損金算入の扱いが変わります。

6. 益金不算入制度に関するルール

さてここまで益金不算入制度について解説してきましたが、さらに深掘りするためにルールについても解説します。

益金不算入制度とは

まず、益金不算入制度とは受取配当等などに関する制度を言います。

企業会計において受取配当金は損益計算書において「営業外収益」としてカウントされ、利益を構成する要素の1つとして扱われます。一方で法人税の計算においては法人税申告書を作成する際に調整を入れることで益金に算入しなくても良いとされています。この制度を「益金不算入制度」といい、法人税等の優遇措置として知られています。

ここで必要になる調整については国税庁が公開している「受取配当等の益金不算入に関する明細書」を参考にしてください。

ちなみに、益金不算入の対象となるものは以下が挙げられます。

  • 一定の受取配当金
  • 投資信託・投資法人からの配当金
  • 一定の特定株式投資信託の配当金

ただ、以下は益金不算入の対象とはなりません。
  • 外国法人等から受ける配当や保険会社の契約者配当金
  • 公社債投資信託以外の証券投資信託の収益の分配
  • 特定目的会社や投資法人から受ける配当等

益金不算入の仕組み

さて、そもそもなぜ一定の調整を入れることで益金不算入になるのか仕組みを解説します。

益金不算入の仕組みを理解する上で「法人実在説」と「法人擬制説」の2つを理解する必要があります。

  • 法人実在説:法人は個人と並んで独立した納税者であるという考え方
  • 法人擬制説:法人は独立した納税主体ではなく株主の集合体であるという考え方

この2つの考え方がありますが、現在の税制では後者の「法人擬制説」が採択されています。所得税で配当控除が設けられているのは、法人に課税される法人税に相当する金額を配当を受けている個人にかかっている所得税から控除しようという考えから来ています。

この「法人擬制説」によると以下の流れで配当を受けた場合は受取配当金に対する二重課税が控除されます。
  1. A社
  2. B社
  3. 個人

本来はA社で課税された分、そしてB社で課税された分それぞれに配当控除を適用しなければなりません。しかし、この仕組みを全ての企業活動に当てはめることは非現実的であるため、B社の法人税計算をするにあたっての受取配当金を「益金不算入」としているのです。

受取配当金は益金不算入

上記でもありましたが、平成27年度に行われた税制改正により受取配当金を益金不算入にできる金額上限は以下のように定まっています。
 

区分 金額
完全子法人株式等 受取配当金全額
関連法人株式等 受取配当金全額 - 負債利子
その他の株式等 受取配当金の50%
非支配目的株式等 受取配当金の20%

ちなみに区分については国税庁から注意喚起が出ており、誤って計算をしてしまうと納税額が大きく変わってしまいます。
 

交際費は益金不算入

交際費も益金不算入として扱うことができますが、税務面では以下の3つに分類されています。

  • 社外飲食接待費:800万円まで全額または50%損金算入可能 
  • その他交際費:損金算入不可(社内飲食費など) 
  • 会議費:全額損金算入

交際費については上記にも解説をしておりますのでここでは割愛します。

法人税や住民税の還付金は益金不算入

法人税や住民税の還付金は益金不算入となります。

支払ったt期には損金不算入と扱われ、取引として扱われる還付金については逆の益金不算入として扱われます。ちなみに、延滞税や加算税などの税金に付随して支払うお金に関しても還付金がある場合は益金不算入として扱われます。

7. 益金の参入・不算入における注意点

では最後に益金の参入・不算入における注意点を解説します。

  • 受取配当金の処理
  • 税金の還付金の処理

受取配当金の処理

まずは、受取配当金の処理です。

受取配当金は決算書上では「収益」として処理をしますが、法人税計算上では「益金不算入」と扱うことができます。配当金を出す側の企業に法人税が課税されることにより、配当金を受け取る企業に法人税を課すことになると二重課税になってしまうためです。子会社から配当金を受け取ったケースだと、親会社と子会社で二重課税になってしまいますので、処理方法を正しく理解しておく必要があります。

税金の還付金の処理

続いては、税金の還付金の処理です。

過去納付した税金が何かの理由で還付された場合、会計上では「収益」として処理をする必要があります。ただ、法人税上の計算だと税金還付は「益金」として処理をする必要はありませんので益金不算入として認められます。ちなみに、税金の還付が受けられるケースとしては以下があります。

  • 前の事業年度に納税した法人税の繰り戻し還付
  • 輸出事業者などが消費税の還付を受けるケース
  • 中間納付した法人税の還付

8. 益金についてよく理解して会計処理を正確にしよう!

本記事では以下の3つについて会計処理・税務処理の面から解説しました。

  • 益金
  • 収益
  • 損金

それぞれどうやって会計・税務処理をすればいいのか迷ってしまうことも多いかもしれません。国税庁も注意喚起をするくらいですので理解を100%完璧にすることは難しい現状があります。しかし、覚えておくべき点だけ覚えておけば会計・税務処理で悩むことはほとんどありません。

本記事を参考にして会計処理を正確に行いましょう。M&Aを行う際にも、こちらの知識はしっかりと頭にいれておくようにしましょう。

会計上や税務上で以下のように益金と収益に違いがあります。
 

  • 税務で使用するのが「益金」
  • 会計で使用するのが「収益」

これらは判断することが難しく、会計・税務処理で誤った手続きをしてしまう企業が後を絶ちません。国税庁が注意喚起しているように難しい処理になりますので本記事を参考にして正しい処理を行ってください。

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