中部地方のM&A・事業承継・会社売却の動向は?案件一覧、成功事例も紹介

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

本記事では、中部地方のM&A・事業承継・会社売却の動向から仲介会社選びのポイントまで詳しく紹介します。中部地方は大都市圏であり、事業承継のための会社売却などのM&Aが活発です。中部地方でM&A・会社売却・事業承継を検討している方は必見です。

目次

  1. 中部地方のM&A・会社売却・事業承継の動向
  2. 中部地方近郊のM&A・事業承継の案件一覧
  3. 中部地方のM&A・事業承継の成功事例
  4. 中部地方のM&A・事業承継に役立つ公的支援
  5. 中部地方のM&A・会社売却・事業承継案件を探す3つの手段
  6. 中部地方でM&Aをする際に仲介会社を選ぶ5つのポイント
  7. 中部地方のM&A・会社売却・事業承継のまとめ
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1. 中部地方のM&A・会社売却・事業承継の動向

中部地方は、愛知県に代表される自動車産業を中心にモノづくりが盛んに行われており、日本における国際競争力の拠点ともいえる地域です。大手企業の下請けとなる中小企業も多く、日本の他の地域と同様に中小企業の後継者問題が大きな経営課題とされています。

中小企業の後継者問題とは、後継者となる人材が不足し事業承継が行えないために、やむを得ず廃業措置を取らざるを得ない状況に陥ることです。

従来の日本では経営者の子供などへの親族内事業承継が主流でしたが、少子化と価値観の多様化によって後継者候補となる人材が減少傾向にあります。

【関連】中小企業の後継者問題とは?動向、原因や解決策・対策を徹底解説

事業承継に向けた取組の状況

百五総合研究所が実施した中部5県に対して行ったアンケート調査によると、「事業承継を検討しているが現状取り組んでいない」企業が最も多く、42.0%を占めています。

次いで「廃業予定のため取り組んでいない」が18.6%、「具体的な計画・対応策を策定し、取組を開始している」が15.5%となっています。事業承継を検討している企業は全体の8割以上に達しているものの、半数以上の企業が具体的な事業承継手続きに進めていない状況です。

参考:百五総合研究所「令和5年度中小企業政策推進事業」

事業承継の取組を開始できない理由

上記の調査では、中部の5県全体で「事業承継の内容や方向性が定まっていない」と考えている企業が41.1%で最も多く、次いで「取組を始めるにはまだ早いと感じている」が23.7%となっており、各県でも同様の傾向が見られます。

休廃業件数

東京商工リサーチ名古屋支社の発表によると、2023年に中部5県で休廃業や解散した企業は前年比5.4%増の6071件に達し、2年連続で増加しました。この数字は、2018年と2020年に次ぐ過去3番目の多さとなっています。

主な要因として、新型コロナウイルス関連の融資返済負担や物価高騰、さらに後継者不足による経営者の高齢化が挙げられます。

黒字決算だった企業が休廃業や解散に至った割合は56%で、4年連続で前年を下回りました。これは、コロナ禍による業績悪化や将来への不安から事業を閉じるケースが増えているためと考えられます。

また、休廃業や解散した企業の代表者が70代以上である割合は65%に達し、8年連続で増加しています。

業種別では、飲食業や宿泊業を含む「サービス業他」が最も多く1850件(全体の31%)で、次いで建設業が17%、製造業が16%を占めました。

前年からの増加率が最も高かったのは卸売業で、15%増の604件でした。これは、コロナ禍で小売業者が打撃を受け、販売が減少したことが影響しているとみられます。

参考:日本経済新聞「中部5県の休廃業・解散企業、23年は6071件 過去3番目」

2. 中部地方近郊のM&A・事業承継の案件一覧

本章では、中部地方近郊のM&A・事業承継の案件の中から7件をピックアップして掲載します。

①【地域No1知名度】北陸エリア/美容院・エステサロン運営事業

愛知県のエステ・整体サロンの事業譲渡です。事業を縮小し本業に集中するために譲渡を希望しています。

業種 美容・健康
都道府県 愛知県
法人形態 合同会社・合資会社
譲渡価格 1,000万円

【関連】【地域No1知名度】北陸エリア/美容院・エステサロン運営事業(飲食店・美容) | M&A総合研究所

②【東海地方/超好立地店舗】韓国系飲食店の運営、FC本部の運営

愛知県の飲食店4店舗を展開する成長企業の譲渡です。事業の選択と集中を売却理由としています。

業種 飲食
都道府県 愛知県
法人形態 法人
譲渡価格 1,500万円

【関連】【東海地方/超好立地店舗】韓国系飲食店の運営、FC本部の運営(飲食店・美容) | M&A総合研究所

③【安定集客/都市圏・好立地】動物病院・ペットホテル運営

動物病院・ペットホテル運営を運営する企業の譲渡です。さらなる事業拡大・創業者利潤獲得を売却理由としています。
 

業種 医療・介護
都道府県 中部・北陸
法人形態 株式会社
譲渡価格 1億円〜2.5億円

【関連】【安定集客/都市圏・好立地】動物病院・ペットホテル運営(医療・介護) | M&A総合研究所

④【EBITDA1億円以上】中部地方/ガス管工事・太陽光事業

中部地方/ガス管工事・太陽光事業の譲渡です。売却理由は非公開とされています。
 

業種 住宅・不動産・建設
都道府県 中部・北陸
法人形態 株式会社
譲渡価格 2.5億円〜5億円

【関連】【EBITDA1億円以上】中部地方/ガス管工事・太陽光事業(住宅・不動産・建設) | M&A総合研究所

⑤【中部地方/県内唯一】木造住宅パネル製造

同県内にて対象事業を営む会社が不在のため、大手ハウスメーカーから継続して受注ができています。2021年に対象会社に隣接している5,398㎡の土地を購入し、土地の利活用が可能です。
 

業種 ものづくり・メーカー
都道府県 中部・北陸
法人形態 株式譲渡
譲渡価格 2000万円(応相談)

【関連】【中部地方/県内唯一】木造住宅パネル製造(ものづくり・メーカー) | M&A総合研究所

⑥【中部地方/地域唯一の温泉旅館】喫茶店、郷土料理、高級食パンの事業も展開

近隣の宿泊施設はビジネスホテルのみという環境で、地域唯一の温泉旅館を展開しています。地元の方、週末は東海エリアの顧客を集客し高い口コミ評価を得ています。
 

業種 商社・小売・流通
都道府県 岐阜県
法人形態 株式会社
譲渡価格 1000万円〜5000万円

【関連】【中部地方/地域唯一の温泉旅館】喫茶店、郷土料理、高級食パンの事業も展開(商社・小売・流通) | M&A総合研究所

⑦【独占輸入/中部地方】音響機器輸入卸売業

音響機器を海外から輸入し、国内販売店へ卸売りを行う企業です。対象会社の製品はエントリーからミドルエンド品のため、ターゲット層は幅広いです。
 

業種 商社・小売・流通
都道府県 中部・北陸
法人形態 株式会社
譲渡価格 1億円〜2.5億円

【関連】【独占輸入/中部地方】音響機器輸入卸売業(商社・小売・流通) | M&A総合研究所

3. 中部地方のM&A・事業承継の成功事例

ここでは、弊社M&A総合研究所がサポートさせていただいたM&Aの事例をご紹介します。

譲渡企業の株式会社はろうすは設立から約27年で、愛知県知多市に本社を構え、注文住宅やリフォーム事業を展開する住宅建築会社です。地域に根ざした活動を通じて、お客様のライフプランに寄り添った「住まいづくり」を提案し、豊富な実績を積み上げてきました。

譲受企業の株式会社AGILE INNOVATIONは設立から約10年で、愛知県津島市に本社を置き、給排水工事や水回り全般の住宅建築業を手掛けています。複数のグループ会社を抱え、住宅建築を中心に幅広い事業展開を行っています。

AGILE INNOVATIONがM&Aによる譲受を検討したきっかけは、M&Aによる事業拡大がゼロからのスタートよりも成長を加速できると考えたためです。当社は以前からM&Aを戦略的に活用しており、今回が2回目のM&Aとなります。

はろうすを譲り受けた理由としては、同業他社だけでなく異業種の会社も候補に含めて検討した中で、はろうすの事業内容が特に優れており、当社の事業と組み合わせた際に大きなシナジー効果が期待できると判断したためです。また、道元社長のビジョンや熱意が非常に印象的で、最終的な決定の決め手となりました。

道元社長は、M&A後の展開についても具体的に考えており、譲受企業が異業種であってもスムーズな引き継ぎができるよう、サポート体制まで計画に組み込んでいました。

【関連】M&A成約インタビュー | M&A総合研究所

4. 中部地方のM&A・事業承継に役立つ公的支援

経営者の高齢化に伴う後継者問題を受けて、国や自治体も事業承継支援事業に力を入れています。中部地方の主な事業承継支援機関は、以下のとおりです。

  1. 独立行政法人中小企業基盤整備機構 中部本部
  2. 中部経済産業局(愛知県・岐阜県)
  3. 関東経済産業局(長野県・山梨県・静岡県)
  4. 事業承継・引継ぎ支援センター(中部地方各県)
  5. 事業承継・引継ぎ支援センターの後継者バンク(後継者人材バンク)

①独立行政法人中小企業基盤整備機構 中部本部

独立行政法人中小企業基盤整備機構は、中小企業の経営の助言や中小企業向けの融資など、中小企業経営者を総合的にバックアップする公的機関です。中部地方では、名古屋に中部本部が設置されています。

各種支援の対象は中小企業だけでなく、各地の支援機関や起業・創業志望者の支援まで多岐にわたり、支援内容も中小企業の経営全般に及びます。

②中部経済産業局 (愛知県・岐阜県)

中部経済産業局は経済産業省の支局であり、中部地域において愛知県・岐阜県・三重県・富山県・石川県を管轄エリアとする、経済産業施策の総合的な窓口機関です。中小企業・ベンチャー企業の支援から、IT産業・次世代産業の競争力強化などに取り組んでいます。

③関東経済産業局 (長野県・山梨県・静岡県)

関東経済産業局も経済産業省の支局です。広域関東圏を管轄エリアとしており、その内訳は1都10県=茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・新潟県・長野県・山梨県・静岡県です。所在地は東京都ではなく、埼玉県のさいたま新都心合同庁舎1号館です。

④事業承継・引継ぎ支援センター(中部地方各県)

事業承継・引継ぎ支援センターとは、中小企業庁が進める具体的な事業承継支援策です。各都道府県には中小企業庁からの委託事業として、公的機関である事業承継・引継ぎ支援センターが設置されています。

事業承継・引継ぎ支援センターをどのように設置するかは各自治体に委任されているため、各都道府県によって異なりますが、多くのケースでは、該当する地域の中小企業経営者が事業承継問題を解決するための、公的な相談窓口として運営されています。

事業承継・引継ぎ支援センターの具体的な支援内容としては、後継者不足で事業承継が行えない中小企業経営者に対する、外部の後継者候補者の紹介、M&A・会社売却による事業承継の提案・あっせんなどです。

親族内事業承継や社内事業承継を予定している中小企業に対しても、将来のスムーズな事業承継に向けたサポートを行っています。

⑤事業承継・引継ぎ支援センターの後継者バンク(後継者人材バンク)

各地の事業承継・引継ぎ支援センターの主力支援策として、後継者バンク(後継者人材バンク)が挙げられます。後継者バンクの具体的な内容を説明すると、まず各自治体内で独立・開業を目指す起業・創業志望者のうち、既存企業を事業承継で引継ぐ意思のある人材を募り、後継者バンク名簿に登録します。

その後、後継者問題で事業承継に困っている中小企業経営者が事業承継・引継ぎ支援センターに相談した際、経営者と後継者バンク登録者の希望内容が合致すれば、後継者候補として紹介するといったサービスです。両者が合意し話が進む場合は、事業承継に必要な具体的な各プロセスに対しても、事業承継・引継ぎ支援センターがサポートを提供しています。

後継者人材バンクについては下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】後継者人材バンクとは?使い方・手順やメリット・課題を詳しく解説

5. 中部地方のM&A・会社売却・事業承継案件を探す3つの手段

中部地方のM&A・会社売却・事業承継案件を探す手段は以下の3つです。

  1. 地元の金融機関などに相談する
  2. M&Aマッチングサイトを活用する
  3. M&A仲介会社・専門家に相談する

①地元の金融機関などに相談する

地方銀行や信用金庫などの金融機関にM&A相談をするのもおすすめの方法です。ただし、金融機関のM&A相談は大手企業のみしか取り扱っていない機関も多いため、相談前に確認しましょう。

②M&Aマッチングサイトを活用する

自分で案件を探したい場合は、M&Aマッチングサイトを活用するのもおすすめです。マッチングサイトには自分で直接交渉できるサイトも多く、仲介会社を介さずにM&Aを成約させることも可能です。

M&Aプラットフォーム

M&A総合研究所が運営しているM&Aプラットフォームは、AIを搭載した高精度のマッチングプラットフォームです。

売り手は無料で利用できるほか、実際にM&Aの交渉や手続きが進行していく際に不安がある場合には、別途M&Aアドバイザーに業務を依頼していただくことも可能です。

TRANBI(トランビ)

TRANBIは、国内最大級の事業承継・M&Aプラットフォームです。9万人以上のユーザー数と、2,000件以上の案件数を誇り、中部・北陸地方の案件も豊富に取り扱っています。

③M&A仲介会社・専門家に相談する

中部地方のM&A・会社売却・事業承継案件を探す際は、やはりM&A仲介会社や会計士・税理士などの専門家への相談がおすすめです。

相談する際は、中部地方に広いネットワークを持つ仲介会社や専門家を選ぶとよいでしょう。

6. 中部地方でM&Aをする際に仲介会社を選ぶ5つのポイント

中部地方でM&A仲介会社を選ぶときに、押さえておきたいポイントは以下の5つです。

  1. 該当する分野の専門的知識・M&A実績を持っている
  2. 案件規模・地元M&A実績などがある
  3. M&Aに関する幅広い知識・経験を持っている
  4. 手数料・相談料・報酬体系がわかりやすい
  5. 担当スタッフの対応や相性がいい

①該当する分野の専門的知識・M&A実績を持っている

ひとことにM&Aといっても、業種によって必要となる知識やノウハウは異なります。M&A仲介会社を選ぶときは、自分の会社の業種に精通しているスタッフがいる機関を選びましょう。自社と同じ業種のM&A実績があるかどうかも、事前にしっかり確認することが大切です。

②案件規模・地元M&A実績などがある

M&A仲介会社を選ぶ際は、自分の会社と同規模程度の案件を取り扱っているかチェックしておきましょう。地元でのM&A実績が豊富な会社は、地元の金融機関とのつながりが強いため、取引がスムーズに進みやすくなります。

③M&Aに関する幅広い知識・経験を持っている

M&Aは会計や税務の知識だけでなく、各業界の動向や実務経験など、多くの知識と経験を必要とします。

M&A仲介会社を選ぶときは、知識・経験が豊富なスタッフが在籍しているか確認しましょう。

④手数料・相談料・報酬体系がわかりやすい

手数料や報酬体系がわかりにくい仲介会社の場合、将来的に想定外の金額を請求されるなど、思わぬトラブルに発展するおそれがあります。

M&A仲介会社を選ぶときは、手数料・相談料・報酬体系がわかりやすい会社を選ぶようにしましょう。

⑤担当スタッフの対応や相性がいい

たとえ優秀なスタッフでも、対応が悪かったり性格的な相性が合わなかったりすると、納得のいく成約ができない可能性があります。

M&A仲介会社を選ぶときは、担当スタッフの対応や相性など、信頼できる関係を築けるかどうかも考慮が必要なポイントです。

上記を踏まえておすすめできるM&A仲介会社を下記の記事で紹介しています。
それぞれの会社のサービスの特徴を知り、ぴったりの会社を見つけてみてください。

7. 中部地方のM&A・会社売却・事業承継のまとめ

近年、中部地方のM&Aを取り扱うM&A仲介会社が増加しており、自社に合った相談先を選ぶことが重要です。
仲介会社の知識や経験、スタッフとの相性などを踏まえながら、仲介会社を選ぶことがM&A成功の秘訣です。

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