投資銀行のM&Aでの役割とは?業務の違いや活用のメリットなど解説!

取締役副社長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

投資銀行の業種は銀行業ではなく金融商品取引業です。そしてM&Aアドバイザリー業務も行っています。本コラムでは、投資銀行の概要と業務内容、類似する機関との違い、M&Aで投資銀行を起用するメリットや投資銀行が果たす役割などをまとめました。

目次

  1. 投資銀行とは
  2. 投資銀行と類似する機関との違い
  3. 投資銀行がM&Aで担う役割・業務
  4. 投資銀行をM&Aで起用するメリット
  5. 投資銀行のM&Aでの役割まとめ
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1. 投資銀行とは

投資銀行とは、株式や債券といった有価証券を扱うことを主力業務として行う機関です。業種としては金融商品取引業に属します。金融商品取引業は、かつては証券業と呼ばれていましたが、2007(平成19)年の金融商品取引法の施行により業種名が変更になりました。

したがって、投資銀行は「銀行」を名乗っているものの、一般的な銀行業を行う機関ではありません。なぜ、このような混乱する名称になってしまったかというと、アメリカでの金融商品取引業を「Investment Banking」と呼ぶことから、これを日本語に直訳してしまったことが理由とされています。

投資銀行の業務内容

投資銀行の顧客は企業と機関投資家です。投資銀行は、企業が行う株式や社債などの有価証券の発行・取り扱いをサポートします。ただし、有価証券の発行・取り扱いにあたっては、実質的に投資銀行抜きで進めるのは困難なため、サポートというよりもその役割を担うといっていいでしょう。

そして、企業が有価証券を発行する目的は直接金融による資金調達であるため、投資銀行は企業の資金調達サポートを行っているといえます。投資銀行が行う、より具体的な業務は主に以下の4つがあります。

  • DCM(Debt Capital Markets)
  • ECM(Equity Capital Markets)
  • IPO(Initial Public Offering)引受け
  • M&A(Mergers and Acquisitions)アドバイザリー

投資銀行の各業務の概要を説明します。

DCM(Debt Capital Markets)

DCMとは、債券(企業の場合、社債)発行をサポートする業務のことです。Debtとは債券(負債)、Capital Marketsは資本市場を意味します。債券発行は株式を上回る金額規模で実施されるのが常です。

そのため、債券発行計画の立案、IR(Investor Relations=投資家向け広報活動)、投資家集め、各種手続きなどを、当該企業に代わって投資銀行が一手に引き受けます。

ECM(Equity Capital Markets)

ECMとは、企業が行う株式の分割や増資に対してサポートする業務のことです。Equityは株式を意味します。例えば上場企業が増資を行った場合、増資額が多額だと株価が値崩れし下落してしまう可能性を否定できません。

そのような事態にならないために、投資銀行は市場調査による適切な増資時期や増資額の提案、出資する投資家探し、IRなどを当該企業に代わって担当します。

IPO(Initial Public Offering)引受け

IPO(新規公開株式)引受けとは、企業が証券取引所に上場(新規株式公開)する際のサポート業務のことです。上場にあたっては、証券取引所が定めたさまざまなルールをクリアする必要があります。また、上場時に多くの投資家から株式を購入してもらわなければなりません。

さらに、上場後も株価が安定した推移をするようなビジネスモデルの構築とそのIRも必要です。投資銀行は、これら一連のサポートを担う役割を請け負います。

M&A(Mergers and Acquisitions)アドバイザリー

M&Aアドバイザリーとは、企業や事業の買収(Acquisitions)や合併(Mergers)をサポートする業務です。ほとんどのケースでは、投資銀行が担当するのは買収側でしょう。

M&Aのサポート業務形態としては、アドバイザリー契約と仲介契約の2種類があります。アドバイザリー契約はM&Aの当事者どちらかとのみ契約し、クライアントの最大限の利益獲得を目指す業態です。一方、仲介契約は、M&Aの当事者双方と契約して両者の間を取り持つように業務を行います。

投資銀行が担うM&Aアドバイザリー業務の詳細は後述いたしますので、そちらをご覧ください。以下の動画では、M&Aアドバイザリー契約の解説をしています。ご参考まで掲示します。

以下の動画は、アドバイザリー契約と仲介契約の比較解説をしています。ご参考まで掲示します。なお、この動画ではアドバイザリーをFAと呼称していますが、これらは同義です。

2. 投資銀行と類似する機関との違い

ここでは、投資銀行と名称や業務内容が類似する機関について、それぞれの違いを確認しましょう。投資銀行と類似する機関として以下の3つの機関を取り上げます。

  • 投資銀行と商業銀行との違い
  • 投資銀行と証券会社との違い
  • 投資銀行とM&A仲介会社との違い

投資銀行とそれぞれの機関の業務の類似点や違いを説明します。

投資銀行と商業銀行との違い

商業銀行とは、いわゆる一般的な銀行のことです。商業銀行は、個人・企業が対象の預金業務と、それを元手とした融資業務を行っています。商業銀行は金融商品取引業者ではないため、投資銀行のように株式や債券などの有価証券は取り扱えません。また逆に、投資銀行は金融商品取引業者であり、預金業務や融資業務は行えません。

投資銀行と証券会社との違い

証券会社は投資銀行と同様に金融商品取引業者です。その違いの1つは、投資銀行の顧客は企業と機関投資家であるのに対し、証券会社の場合はそれらに加えて個人投資家も顧客となります。

また、証券会社の主力業務は有価証券の売買仲介であり、その点も投資銀行との違いです。ただし、昨今の大手証券会社では「投資銀行部門」を設けているケースもあり、投資銀行との違いが希薄化しつつあります。

投資銀行とM&A仲介会社との違い

M&A仲介会社は、M&Aの成約をサポートします。契約形態としてアドバイザリー契約と仲介契約のどちらにも対応しており、その点が投資銀行との違いの1つです。

業務の領域という観点での違いは、M&A仲介会社の場合、投資銀行のようにM&Aの資金調達サポートは行いません。逆に、投資銀行が行わないPMI(Post Merger Integration=経営統合プロセス)のサポートを行うM&A仲介会社はあります。

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3. 投資銀行がM&Aで担う役割・業務

ここでは、投資銀行へM&Aに関する業務を依頼する場合、投資銀行が担える役割や業務内容を確認しましょう。投資銀行がM&Aで担える主な役割や業務には以下のようなものがあります。

  • M&Aに関する情報提供と戦略立案
  • M&A交渉の相手探し・アプローチ
  • M&A交渉の代行
  • デューデリジェンス
  • 契約書の作成と締結手続きのサポート
  • クロージングのサポート

投資銀行がM&Aで担う役割や業務それぞれの内容について説明します。

M&Aに関する情報提供と戦略立案

M&Aの初期段階で投資銀行が担う役割は、クライアントがM&Aの戦略を決めるために必要となる情報の収集・分析・提供です。そのうえでクライアントのM&Aにおける目的と経営の現状をヒアリングし、M&Aの戦略提案を行います。戦略には、M&Aのための資金計画を含むことも多いでしょう。

M&A交渉の相手探し・アプローチ

M&Aは、交渉相手探しが重要です。M&Aの当事者が自身で交渉相手を探すのは困難であり、その役割も投資銀行が担います。クライアントにおけるM&Aの目的と戦略に沿い、条件に合う交渉相手候補を多数探してくるのがセオリーです。クライアントが交渉相手候補を絞り込んだら、M&A交渉を打診するアプローチも投資銀行が行います

M&A交渉の代行

投資銀行のM&Aサポートはアドバイザリー契約ですから、M&Aの交渉相手先が決まった後は、交渉を全て代行するのが投資銀行の役割です。仲介契約の場合は、M&Aが成約しやすいように条件面の妥協を求められることも多々ありますが、アドバイザリーの場合、クライアントの利益最大化を目指すため、極力、妥協せず交渉を行います

デューデリジェンス

投資銀行は、デューデリジェンス(Due Diligence)を取り仕切る役割も担います。デューデリジェンスとは、M&Aの売却側に対して経営状況を細かく調べあげ、リスクの有無や大小、将来の成長性などを分析・判断することです。M&Aの最終的な条件やM&Aの実施そのものを左右する重要な役割となります。

以下の動画は、デューデリジェンスを解説したものです。ご参考として掲示します。

契約書の作成と締結手続きのサポート

M&A交渉の合意後は、契約締結手続きをしなくてはなりません。このプロセスにおいて投資銀行は、契約書のドラフト作成の役割を担います。法的な観点からの契約書チェックは弁護士に任せますが、M&A交渉で合意した細かな諸条件をくまなく契約書に反映させるには、交渉を担当した投資銀行によって作成するのが適切です。

クロージングのサポート

クロージング(Closing)とは、M&Aの最終局面としてM&Aの効力が発生するための各種手続きのことです。端的には、買収側であれば対価の支払い、売却側であれば株式や事業資産の引渡しなどが該当します。

また、官庁への届出や株主総会でのM&A承認決議など、クロージングの前提条件となる各種手続きも実施しなければなりません。それらクロージングおよび関連事項全てを、投資銀行はサポートする役割を担います。

4. 投資銀行をM&Aで起用するメリット

最後に、投資銀行をM&Aで起用するメリットを考えてみましょう。投資銀行をM&Aで起用した場合、主に以下のようなメリットがあります。

  • 相手企業のバリュエーション(企業価値算定)がスムーズに進む
  • M&A交渉代行を委任できる
  • 資金調達サポートを得られる

M&Aにおける投資銀行のメリットそれぞれの内容を説明します。

相手企業のバリュエーション(企業価値算定)がスムーズに進む

投資銀行をM&Aで起用するメリットの1つは、安心してバリュエーションを任せられることです。M&Aにおいて売却側に対するバリュエーションは欠かせません。専門性に優れた投資銀行によるバリュエーションは、売却側企業の経営力や将来性を明確化し、実態とかけ離れない条件交渉へとつながります。

以下の2つの動画は、バリュエーションを解説したものです。ご参考として掲示します。

M&A交渉代行を委任できる

交渉代行を委任できることも、投資銀行をM&Aで起用するメリットの1つです。M&Aの買収側と売却側は利益相反する立場であり、当事者が直接交渉した場合、主張がぶつかって交渉がなかなか進展しない可能性が高いでしょう。その点、投資銀行にM&A交渉を任せれば、精神的な負担を持つことなく交渉を見守れます

資金調達サポートを得られる

投資銀行をM&Aで起用するメリットとして、資金調達面でのサポートがあります。投資銀行は株式や債券の発行業務を担えるため、それらを通してM&Aの買収側が資金を直接金融で調達できるのです。間接金融である融資は限度額があるため、資金調達手段にならない可能性があります。その場合でも直接金融であれば資金調達が可能です。

5. 投資銀行のM&Aでの役割まとめ

M&Aの買収側となる場合、投資銀行はM&Aの資金計画も含めて業務を任せられる相手です。ただし、自社株式や社債発行での資金調達ができる企業は限られます。M&Aのサポート業務を任せる相手選びの際は、自社の状況、M&Aの目的、業界の動向、地域の特性など、さまざまな観点から考慮して決めましょう。

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