2023年06月06日更新
【2023】飲食・外食業界のM&A動向と最新事例を紹介!現状の課題は?
近年、飲食業界のM&Aが活性化しています。主な理由は、新たな市場獲得を目的としたクロスボーダーM&Aやニーズやトレンド変化への適用のためのM&Aが増えているからです。本記事では、飲食業界のM&A動向と最新事例を紹介します。
1. 飲食・外食業界の現状と課題
総務省統計局が5年周期で実施している「経済センサス・基礎調査(平成28年)」によると、飲食サービス業の事業所数は696,396(宿泊業を含む)となっています。
数ある業種のなかでも非常に事業者が多い飲食業界ですが、社会環境の変化からいくつかの課題を突き付けられています。
【飲食・外食業界の現状と課題】
- 働き手不足による人件費の高騰
- 新型コロナ感染拡大による影響
- 低価格化と原価高騰によるコスト増加
働き手不足による人件費の高騰
帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2017)」によると、飲食業界の80.5%が働き手不足を実感していると回答しています。
働き手側としては職場を選びやすい有利な状況ですが、求人側にとっては人材の奪い合いとなっており頭を抱える状況になっています。
働き手不足の主な原因には、国内の少子高齢化が強く影響していると考えられています。急激な改善は期待できないため、アルバイト・パートの確保のために時給を高く設定せざるを得ないのが現状です。
新型コロナ感染拡大による影響
帝国データバンクの「飲食店の倒産動向調査(2020年)」によると、飲食店事業者の倒産件数は780件です。過去最多の732件(2019年)を超える結果となりました。
2020年の新型コロナ感染拡大により自粛や感染予防対策などが求められ、大手チェーンの店舗撤退や個人事業者の閉店などが相次いでいます。
同資料の業態別件数内訳によると、最多倒産件数は「酒場・ビヤホール」の189件(全体の24.2%)です。飲み会等の減少や夜の時短営業要請が影響していると考えられています。
低価格化と原価高騰によるコスト増加
近年は、インターネット・スマートフォンの普及により飲食店の比較がしやすくなりました。消費者目線での比較は商品価格になることが多いので、ライバル店との差別化を図った低価格化路線が強くなっています。
また、原価高騰によるコスト増加も深刻です。前述した人件費に加えて、近年は食材の高騰も進んでいるため営業利益を圧迫しつつあります。
2. 飲食・外食業界のM&A動向・特徴
飲食業界では、M&Aを実施して課題解決に取り組く動きが強まっています。飲食業界で特に目立つM&A動向は以下の2つです。
【飲食・外食業界のM&A動向・特徴】
- 業界再編が徐々に進んでいる
- 飲食・外食業界のM&Aは活発化している
業界再編が徐々に進んでいる
新型コロナ感染拡大の影響で、飲食業界の市場規模は縮小傾向にあります。店舗撤退などで事業規模を縮小する事業者も多く、確保したリソースを別事業に注力する動きもみられます。
業界再編を主導するのは、飲食業界のトップクラスに位置する大手企業です。ほかの企業を巻き込んだM&Aに発展する場合もあり、飲食業界市場の競争環境が激変しています。
飲食・外食業界のM&Aは活発化している
業界再編やM&Aの目的は企業によってさまざまですが、飲食業界でのM&Aは主に以下の3つを目的に実施されています。
【飲食・外食業界でM&Aを実施する目的】
- ニーズやトレンド変化に適応するためのM&A
- 海外での事業展開を目的としたM&A
- 効率的な事業拡大を図るための同業種M&A
ニーズやトレンド変化に適応するためのM&A
飲食業界の消費者は、働き方・生活環境の変化により食事に多様性を求めるようになっています。
特に外食のニーズやトレンドの変化が激しく、適応するためにはさまざまな業態を運営するだけの企業力が必要です。
大手企業は多様な業態の企業・店舗をM&Aで取得することで適応しています。グループであらゆる業態を所有し、グループ全体の企業価値・ブランド向上に注力しています。
海外での事業展開を目的としたM&A
近年、日本食が健康的で理想的な食事として海外で注目を集めています。過去最大級の日本食ブームともいわれており、世界各地では日本食レストランが急増しています。
この海外市場のシェアを掴むため、飲食業界では海外事業展開を目指す動きが強まっています。海外の現地企業をM&Aで取得することで、現地での販路・ノウハウを共有して事業規模を拡大しています。
効率的な事業拡大を図るための同業種M&A
飲食業界では、効率的な事業拡大を目的としたM&Aも多いです。業界のノウハウや顧客を共有できるので、単純なスケールメリットを期待することができます。
また、食材の大量仕入れによる原価低減できるのも大きなメリットです。近年は、商品の低価格化や原価高騰によるコスト増加が深刻化しているので、その対策として同業種M&Aが活用されています。
3. 飲食・外食業界のM&Aを行うメリット・デメリット
飲食業界のM&Aは売り手・買い手の双方にメリットがあります。この章では、飲食業界のM&Aを行うメリット・デメリットを売り手・買い手の視点別に解説します。
売り手企業のメリット
まずは飲食業界のM&Aを行う売り手企業のメリットからみていきます。主に以下の3つのメリットを目的に実施されるケースが多くみられます。
【飲食業界のM&Aを行う売り手企業のメリット】
- 撤退費用・原状回復費などが不要になる
- 譲渡・売却益を得ることができる
- 事業承継問題を解決できる
撤退費用・原状回復費などが不要になる
飲食店を閉店する場合、店舗の撤退費用や原状回復費が必要になります。変色や汚れは避けられないので、壁や天井の張替えや床材のクリーニングなどが行われます。
工事費用の相場は、坪当たり5~10万程度とされています。店舗の規模や原状回復の内容によって変わるので、事業規模が大きいほど費用負担も大きくなります。
M&A売却であれば各店舗を現在の状態で引き継ぐことができるので、撤退費用や原状回復費が不要になります。買い手には店舗の事前確認を通して納得してもらっておくことでトラブルの心配もなくなります。
譲渡・売却益を得ることができる
飲食業界のM&A売却では、企業や店舗の価値に見合った譲渡・売却益を得ることができます。
近年は店舗の内装を残す物件も多いので、浮いた費用をM&A買収に回す買い手も増えています。
事業承継問題を解決できる
飲食業界では、中小企業を中心に事業承継問題が深刻化しています。親族内の後継者不足で事業承継の準備を進められない問題を抱えているところが増えています。
後継者不在で廃業・閉店すると、食材の仕入れ先との取引停止や従業員の解雇などを行わなくてはなりません。
M&Aであれば、後継者を探して企業・店舗の経営を継続することができます。また、顧客・従業員・消費者などの周囲の関係者に迷惑をかけることがなくなります。
売り手企業のデメリット
飲食業界のM&Aを行う売り手企業にとってはメリットだけでなくデメリットもあります。ここでは特に意識しておくべき点をみていきます。
【飲食業界のM&Aを行う売り手企業のデメリット】
- 条件にあった相手先がみつからない可能性がある
条件にあった相手先がみつからない可能性がある
飲食業界のM&Aは相手がいて初めて成立するものです。買い手は費用を安く抑えたいと考えていることが多いので、希望売却価格を高く設定していると検討対象から外される可能性があります。
円滑なM&A進行には互いに歩み寄ることが大切なので、売却価格に関する譲歩が求められる場合もあります。
買い手企業のメリット
飲食業界のM&Aは買い手企業にも沢山のメリットがあります。特に高い効果が期待できるメリットは以下の3つです。
【飲食業界のM&Aを行う買い手企業のメリット】
- ノウハウや業態を短期間で得られる
- 人材を確保できる
- 飲食・外食店の営業手続きを簡略化できる
ノウハウや業態を短期間で得られる
飲食業界では、ニーズやトレンド変化の適応が一つの課題とされています。しかし、異なる業態に着手しようとしても、ノウハウを培うためには多大なリソースを要することになります。
M&Aであれば、既存店舗を買収することでノウハウや業態を短期間で獲得することができます。顧客や一定の消費者が付いてくることも期待できるので、新規に立ち上げるよりも参入障壁は大幅に下がります。
人材を確保できる
飲食業界では人材不足が深刻化しています。求人募集を出しても希望通りのアルバイト・パートからの応募は期待できないのが現状です。
飲食店のM&A買収であれば、店舗と一緒に従業員を確保することができます。経験を積んだ従業員なので、育成の手間がかからずに即戦力として期待することができます。
飲食・外食店の営業手続きを簡略化できる
飲食店を営業するためには、業態に応じた営業許可が必要です。ほぼ必要になる飲食店営業許可の取得に要する期間は、申請から2~3週間とされています。
M&Aで企業ごと買収する場合は、営業許可をそのまま引き継ぐことができます。新たに申請する必要がないので、更新等で営業を停止することもありません。
買い手企業のデメリット
最後は飲食業界のM&Aを行う買い手企業のデメリットです。以下2つのデメリットは、場合によってはM&Aの目的を達成できなくなることもあります。
【飲食業界のM&Aを行う買い手企業のデメリット】
- 簿外債務を引き継ぐ可能性ある
- 買収した店舗のコンセプトを変えづらい
簿外債務を引き継ぐ可能性ある
飲食業界のM&Aでは、簿外債務によって対象企業・店舗の価値が大きく変わる可能性があります。買収後に実状を確認したら、買収費用に見合う価値がなかったというケースも珍しくありません。
飲食店の簿外債務の例としては、買掛金や未払金の計上漏れなどが挙げられます。M&A後に計上漏れが発覚して買い手が負担せざるを得なくなるというものです。
そのほか、臭いや騒音などの近隣トラブルも問題になりがちです。書類から把握することは難しいので、デューデリジェンスによる調査が必要となります。
買収した店舗のコンセプトを変えづらい
飲食業界のM&A買収は、ノウハウ・業態をまとめて獲得できる反面、コンセプトを変えづらいという問題があります。
強引にコンセプトを変えた場合、従業員の反発や客離れを引き起こしかねません。摩擦を極力抑えるためには、一度に大幅な変更をするのではなく、徐々に進めていくとよいでしょう。
4. 飲食・外食業界のM&A事例
飲食業界の課題やM&A動向をみてきましたが、実際のM&Aでは各企業はどのような目的を持っているのでしょうか。この章では、飲食業界のM&A事例を紹介します。
【飲食業界のM&A事例】
- 東京楽天地による子会社の吸収合併
- DDホールディングスによる子会社4社の吸収合併
- 日本KFCホールディングスとビー・ワイ・オーの業務提携
- ゼンショーホールディングスによる米AFC社の完全子会社化
- ゼンショーホールディングスによるジョリーパスタの完全子会社化
- コロワイドによる大戸屋ホールディングスへのTOB
1.東京楽天地による子会社の吸収合併
2020年12月、東京楽天地は子会社である楽天地オアシスが、同じく子会社の株式会社まるごとにっぽんを吸収合併することを公表しました。
楽天地オアシスは、飲食・販売事業やフットサル事業などを手掛ける会社です。さまざまな事業の経営に携わっており、飲食・販売事業においては東京楽天地グループの中核を担っています。
まるごとにっぽんの吸収合併により飲食・販売事業の一体化を推進し、事業全体の合理化・効率化を図るとしています。
2.コロワイドによる大戸屋ホールディングスへのTOB
2020年9月、コロワイドは大戸屋ホールディングスをTOBにより子会社化しました。TOBは同年7月から9月にかけて実施され、コロワイドの持分比率が46.77%に達した時点で成立しました。
大戸屋ホールディングスは定食の「大戸屋ごはん処」を展開している会社です。素材や店内調理にこだわっており、一品一品注文を受けてから店内でこしらえることを徹底しています。
本TOBは国内でも珍しい敵対的買収となっており、コロワイド側のセントラルキッチン化による人件費カットと、大戸屋側の支持されている理由は店内調理という言い分が話題となっていました。
今後はコロワイドの経営ノウハウや資源を活用することで大戸屋ホールディングスの営業利益の向上を図るとしています。
3.DDホールディングスによる子会社4社の吸収合併
2020年7月、DDホールディングスは子会社のゴールデンマジック、サンプール、商業藝術、The Sailing4社を同じく子会社のダイヤモンドダイニングに吸収合併させることを公表しました。
DDホールディングスは、M&Aを活用した業容拡大によりグループ経営体制の強化やグループ競争力の向上、事業ポートフォリオ拡張実現での顧客層の拡大などを行ってきました。
2020年2月期には過去最高益を記録しましたが、2020年初旬に発生した新型コロナウイルス感染症により業績への悪影響を受けています。
今回の吸収合併では、意思決定の迅速化や仕入・物流体制の合理化が図られ、新型コロナウイルス感染症による業績悪化からの早期回復を目指すとしています。
4.ゼンショーホールディングスによるジョリーパスタの完全子会社化
2019年5月、ゼンショーホールディングスは子会社のジョリーパスタを株式交換により完全子会社化することを公表しました。
ジョリーパスタはスパゲッティ・ピザを主力とするパスタ専門店です。1971年の設立から事業規模の拡大を繰り返し、1990年に広島証券取引所、2000年に東京証券取引所市場第二部上場を果たしています。
ゼンショーホールディングスは2019年1月にグループ内にレストラン事業を統括する新会社を設立しています。傘下のココスジャパンとの連携も深めて、今後の経営管理の効率化に注力するとしています。
5.ゼンショーホールディングスによる米AFC社の完全子会社化
2018年10月、ゼンショーホールディングスはAdvanced Fresh Concepts Corp.(AFC、アメリカ)の全株式を取得して子会社化することを公表しました。
AFCは米国内で約3,700店舗を展開する持ち帰り寿司の会社です。1986年の創立から事業規模の拡大を続けており、カナダ、豪州を合わせると4,000店舗を超えます。
ゼンショーホールディングスは、本件の目的を海外での中食事業の展開としています。メニュー開発、食材調達、物流などでシナジー効果を生み出し、効率的な業容拡大を目指します。
6.日本KFCホールディングスとビー・ワイ・オーの業務提携
2018年2月、日本KFCホールディングスはビー・ワイ・オー(BYO)と資本業務提携することを公表しました。日本KFCホールディングスのBYOの持株比率は25%となります。
BYOは「和食・酒 えん」や「おぼんdeごはん」など計115店舗を経営する会社です。「和の文化を伝承する食の創造企業」を掲げ、手作りや素材へのこだわりをもって、豊かな食の提供を行っています。
今回の資本業務提携では、新たな事業機会及びシナジーを創出することで、両者の中長期的な企業価値向上に繋がることが期待されています。
5. 飲食・外食業界のM&Aを成功させるためには
飲食業界のM&Aを成功させるためには、M&Aの知識が必要不可欠です。M&A相手の選定・交渉や各種契約書の締結などで幅広い分野の知識が求められるため、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。
M&A総合研究所は、中堅・中小規模の案件を得意とするM&A仲介会社で、さまざまな業種で仲介実績を持っています。
M&A経験豊富なアドバイザーによるノウハウを活かしたフルサポートを行っており、一般的には平均成約期間6~12ヵ月とされるM&Aにおいて最短3ヵ月での成約実績もあります。
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飲食・外食業界のM&Aに関して無料相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
6. まとめ
飲食業界では業界再編やM&Aが活発化しています。飲食業界が抱える課題対策としてM&Aが注目を集めていることもあり、今後も同業種・異業種のM&Aは増加していくとみられています。
飲食業界のM&A動向に気を配っておくと、いざという時も柔軟な対応が取りやすくなります。M&Aの知識の補填についてはM&Aの専門家に相談することをおすすめします。
【飲食・外食業界の現状と課題】
- 働き手不足による人件費の高騰
- 新型コロナ感染拡大による影響
- 低価格化と原価高騰によるコスト増加
【飲食・外食業界のM&A動向・特徴】
- 業界再編が徐々に進んでいる
- 飲食・外食業界のM&Aは活発化している
【飲食・外食業界でM&Aを実施する目的】
- ニーズやトレンド変化に適応するためのM&A
- 海外での事業展開を目的としたM&A
- 効率的な事業拡大を図るための同業種M&A
【飲食業界のM&Aを行う売り手企業のメリット】
- 撤退費用・原状回復費などが不要になる
- 譲渡・売却益を得ることができる
- 事業承継問題を解決できる
【飲食業界のM&Aを行う売り手企業のデメリット】
- 条件にあった相手先がみつからない可能性がある
【飲食業界のM&Aを行う買い手企業のメリット】
- ノウハウや業態を短期間で得られる
- 人材を確保できる
- 飲食・外食店の営業手続きを簡略化できる
【飲食業界のM&Aを行う買い手企業のデメリット】
- 簿外債務を引き継ぐ可能性ある
- 買収した店舗のコンセプトを変えづらい
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