株式交換とは?手法やメリット・デメリットを解説【成功事例あり】

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

株式交換とは、相手企業を完全子会社化する際に用いられる手法であり、株式交換にはさまざまなメリット・デメリットが存在します。本記事では、株式交換とはどのような手法かについて、メリット・デメリットや手続き方法、会計・税務のポイントなどを、事例と共にご紹介します。


目次

  1. 株式交換とは
  2. 株式交換とはどんな手法か
  3. 株式交換が行われる目的
  4. 株式交換の主な手続き・流れ
  5. 株式交換のメリット・デメリット
  6. 株式交換の適格株式交換と非適格株式交換について
  7. 株式交換の会計処理
  8. 株式交換の税務処理
  9. 株式交換を使ったM&Aの成功事例
  10. 株式交換の注意点
  11. 株式交換によるM&Aの相談先
  12. まとめ
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1. 株式交換とは

株式交換とは

株式交換とは、主にグループ企業を形成する際や、グループ企業の再編などに用いられる手法です。

この記事では、株式交換とはどのような手法なのか、英語での読み方や、似たような手法の株式移転や吸収合併と比較しながら解説します。

株式交換の英語読み

株式交換は英語で「Share Exchange」または「Stock Swap」と表現します。

Shareとは英語で株式のことで、EXchange とは英語で交換を表しています。また、Stockも英語で株式を意味し、Swapとは英語で交換を意味しています。

株式移転との違い

株式移転は英語で「Share Transfer」と表現します。Transferは英語で移動させるという意味です。

名前の通り、株式移転とは、新しく会社を設立し既存企業の株式を移す手法であり、新設された会社は親会社となり、既存の企業は子会社となる仕組みになっています。

株式移転と株式交換では、会社を新設するか、既存の企業間で行うかが手法として異なる点です。また、株式移転は主に持株会社を設立することが目的ですが、株式移転は相手企業を完全子会社化することが主な目的となります。

【株式交換と株式移転の違い】

  • 株式移転 = 会社を新設(持ち株会社設立が主な目的)
  • 株式交換 = 既存の企業間で行う(相手企業を完全子会社化することが目的)

【関連】株式移転と株式交換の違いとは?手法やメリット、費用も解説【事例あり】

吸収合併との違い

吸収合併は英語で「Absorption Merger」と表現します。MergerとはM&AのMの部分で、英語で合併を表します。

吸収合併とは、2つ以上の法人が統合されて1つの法人になる手法です。この時、吸収される側の法人格は消滅する仕組みです。

対して株式交換は、一方の企業をが完全子会社化する手法ですが、法人格は消滅しません。法人格が残るか消えるかが手法として大きく違う点です。


【株式交換と吸収合併の違い】

  • 株式交換 = 相手企業を完全子会社化する(法人格の消滅なし)
  • 吸収合併 = 2つ以上の法人が統合により1つの法人になる(吸収される側の法人格は消滅する)

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2. 株式交換とはどんな手法か

株式交換とはどんな手法か

株式交換とは、親会社となる企業が自社の株式を対価として、相手企業の株式と交換する手法です。親会社となる企業は子会社となる企業の株式をすべて取得することで、相手企業を完全子会社とします。

株式交換によって親会社となる企業を完全親会社、子会社となる企業を完全子会社と呼びます。親会社が対価として子会社の株主に渡す対価は、株式以外でも可能です。

株式交換には、株式交換で親会社となる企業ではなく、その親会社が株式を交換する仕組みの三角株式交換という手法もあります。

また、合併の前段階として、まず株式交換を行う手法もよく用いられます。

3. 株式交換が行われる目的

株式交換が行われる目的

株式交換は主に以下の目的で用いられることが多い手法です。

  1. M&Aの手段として
  2. 不利益をもたらす株主を排除するため
  3. ホールディングス化を目指すため

①M&Aの手段として

株式交換は相手企業にM&Aを行うための手法として用いられることがあります。M&A手法として株式譲渡を用いた場合、ある程度の株式を手に入れることはできても、株式を100%取得することは簡単ではありません。

しかし株式交換の場合は、株主の承認を得ることができれば、完全子会社化できる仕組みになっています。

ただし、買収する企業が元々子会社であったり、長年提携関係にあるといったケースでなければ、株主総会で株主の3分の2以上の承認を得ることは難しくなります。

そのため、まずは株式譲渡によってある程度の株式を取得して子会社化し、残りを株式交換によって取得するといった手法を用いることがあります。

②不利益をもたらす株主を排除するため

子会社の株式を親会社以外の株主が保有している場合、円滑な経営ができなくなる可能性があります。

たとえ過半数以上の株式を親会社が持っていても、M&Aなどの重要な経営判断は否決されるかもしれません。

また、会社を乗っ取ろうとする株主が出てこないとも限らないため、子会社はなるべく完全子会社化しておきたいと多くの経営者は考えます。

株式交換であれば、仕組み上株主総会で3分の2以上の承認を得ることによって完全子会社化できるので、親会社にとってメリットの大きい手法となります。

③ホールディングス化を目指すため

株式交換は、グループ企業を持株会社化する手法としても用いられます。持株会社とは、英語でホールディングスカンパニーと呼ばれ、子会社を管理する仕組みを持ったグループ形態のことを指します。

持株会社は子会社の株式を保有して子会社を管理し、自身は事業を行いません。持株会社の仕組みを採用することでグループの再編成などがしやすくなり、他企業からの敵対的買収も実質不可能となります。

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4. 株式交換の主な手続き・流れ

株式交換の主な手続き・流れ

株式交換は株主や債権者に影響を及ぼすため、保護する手続きが必要です。

株式交換の主な手続きは以下の通りです。
 

  1. 取締役会決議
  2. 株式交換契約の締結
  3. 事前開示書類の備置
  4. 株主総会の招集通知発送
  5. 株主総会による株式交換契約の承認
  6. 債権者保護の手続き・株券などの提供公告
  7. 反対株主からの株式買取請求
  8. 金融商品取引法上の手続き
  9. 株券・新株予約権の証券提出手続き
  10. 株式交換の効力発生
  11. 新株発行・設立・変更の登記申請
  12. 公正取引委員会への手続き
  13. 事後開示書類の備置・開示
  14. 株式交換無効訴え

①取締役会決議


株式交換を行う企業は、作成した株式交換契約の内容について取締役会で承認を得る必要があります。取締役会で承認が得られたら、株式交換契約を締結します。

②株式交換契約の締結

取締役会で承認を得た後、株式交換を行う当時会社同士で株式交換契約を締結します。

株式交換契約書には、株式交換の目的や当事会社の概要、株式交換比率、スケジュール、株式交換比率の算定根拠などを記載します。

③事前開示書類の備置


株式交換に関する情報を公開するため、当事会社は事前開示書類を本店に備置しておかなくてはなりません。

事前開示書類とは、株式交換契約書や決算報告書、注記すべき事項など、株主や債権者が株式交換について判断するための書類です。

④株主総会の招集通知発送

株式交換を行うには、株主総会で承認を得なければなりません。株主総会を開催するために、当事会社は株主に招集通知を発送します。

招集通知は、上場企業であれば2週間前まで、非上場企業であれば1週間前までに発送します。

招集通知には、株主総会を開く目的や日時などを記載しますが、株式交換を行う旨を株主総会の招集通知と共に送付することも可能です。

⑤株主総会による株式交換契約の承認

株式交換を行うには、株主総会の特別決議で議決権のある株主から3分の2以上の承認を得なければなりません。株主総会は株式交換の効力発生日前日までに行います。

ただし、簡易株式交換と略式株式交換の要件に当てはまれば、株主総会での承認がなくても株式交換を行うことができます。簡易株式交換とは、完全親会社となる企業が利用できる仕組みで、略式株式交換とは完全子会社となる企業が利用できる仕組みです。

簡易株式交換

簡易株式交換とは、完全親会社となる企業が完全子会社となる企業に交付する対価が、純資産額の5分の1以下である場合に適用される仕組みです。

この時、完全親会社となる企業は、株主総会の開催をを省略することができます。

ただし、非上場企業で定款に株式譲渡制限を定めていて、対価として譲渡制限株式を交付する場合は、簡易株式交換を利用できません。

また、反対株主が6分の1以上に至った場合も、簡易株式交換は利用できません。

略式株式交換

略式株式交換とは、親会社が子会社の議決権付き株式を90%以上持っていて、株主総会を開いても承認されることが間違いない場合に適用される仕組みです。この時完全子会社となる企業は株主総会を省略できます。

ただし、子会社が上場企業で、対価として譲渡制限株式を受け取る場合は略式株式交換を利用できません。

また、子会社が株式交換で完全親会社となり、定款で株式譲渡制限を定めていて、対価として譲渡制限株式を交付する場合は略式株式交換を利用できません。

⑥債権者保護の手続き・株券などの提供公告

完全親会社となる企業が株式以外の対価を交付する場合、債権者に不利益が生じる可能性があることから、債権者保護手続きを行う必要があります。債権者保護の手続きは、債権者に対して官報公告と個別通知で周知します。

周知する内容は、株式交換を行う旨や異議を受け付ける旨、株式交換により変動する資産・負債などです。

また、完全子会社となる企業が株券発行会社の場合、株主に対して株券を提供するよう求めます。

債権者保護手続きと株券等提供公告は、いずれも効力発生日の1ヶ月以上前に行わなければなりません。

⑦反対株主からの株式買取請求

株式交換は株主総会で3分の2以上の賛成があれば承認されてしまうため、株式交換に反対する少数の株主が不利益を被ることになります。

少数株主の利益を守るため、当事会社は反対株主から株式の買取請求があった場合、買取に応じなければなりません。

当事会社は反対株主に株式買取請求権があることを周知します。通知方法は株主総会の通知と一緒に行うことも可能です。

⑧金融商品取引法上の手続き

金融商品取引法では、組織再編があった場合は適正な情報を開示しなければならないとされています。事前開示書類もその1つです。

他にも、株式の募集または売り出しがあった場合は、有価証券届出書を提出する必要があるとされています。

株式交換の場合は、親会社が非上場企業の場合に有価証券届出書の手続きが必要です。

⑨株券・新株予約権の証券提出手続き

完全子会社となる企業が株券を発行していて株主に交付していたり、新株予約権証券を発行したりしている場合は、株主に提出を求める公告を行います。

株主は株式交換の効力発生日までに保有株券を提出しなければなりません。

もし提出しなかった場合、企業側は対価を渡さなくても良いとされています。ただし、株券の紛失などやむを得ない事情がある場合は、他の方法をとることも可能です。

⑩株式交換の効力発生

株式交換契約で定めた効力発生日を迎えたら、完全親会社は完全子会社の保有株式をすべて取得します。

⑪新株発行・設立・変更の登記申請

新株の発行や新会社の設立、資本金の増減などがあった場合、完全親会社は効力発生日以降速やかに登記を行わなければなりません。

完全子会社は株主が変わるだけなので、登記は必要ありません。

⑫公正取引委員会への手続き

業界で大きなシェアを持つ企業同士が株式交換を行う場合など、市場に大きな影響を及ぼす可能性がある企業は独占禁止法の規定により、公正取引委員会へ届け出る必要があります。

⑬事後開示書類の備置・開示

株式交換の当事会社は株式交換後6ヶ月間、事後開示書類を本店に備置する必要があります。

事後開示書類には、株式交換の手続き結果や、差止請求、反対請求、買取請求、異議申立の状況などを記載します。

⑭株式交換無効訴え

株式交換を終えた後、手続きの不備や株式交換契約の虚偽、株主や債権者の保護不履行などが発覚することがあります。

その場合、株主や債権者、当事会社の取締役は、株式交換の無効を訴えることができます。無効の訴えは、効力発生日から6ヶ月以内に行います。

5. 株式交換のメリット・デメリット

株式交換のメリット・デメリット

株式交換には特有のメリットがある一方、デメリットには注意が必要です。株式交換のメリット・デメリットについて解説します。

メリット

株式交換には、以下4つのメリットがあります。
 

  1. 買収資金が不要
  2. 子会社も親会社の経営に参画可能
  3. 買収後も別法人として存続できる
  4. 少数株主から株式の吸い上げが可能

①買収資金が不要

株式交換のメリットは、自社株式で買収できる手法なので、現金が必要ない点です。買収の際は主に自社の内部留保金で行うか、銀行から融資してもらうか、株式を対価にするかを選ぶことになります。

内部留保金を使った買収手法は、返済する必要がなく資金の有効利用として株主にとってもメリットがありますが、会社の内部留保が減ることを嫌いデメリットと捉える経営者もいます。

銀行からの融資は大きな資金を借りられる可能性のある点がメリットですが、審査を通さなければならないことと、返済がデメリットです。

②子会社も親会社の経営に参画可能

株式交換は完全親会社が完全子会社の株式をすべて取得する手法ですが、完全子会社は一方的に支配されるわけではなく、グループ企業として協力関係にあります。

そのため、グループ企業として公正な関係を持てる点がメリットです。

このメリットを活かして、株式交換の仕組み上は完全親会社と完全子会社の関係でも、実質対等な関係を築く企業もあります。

③買収後も別法人として存続できる

株式交換の仕組み上、完全子会社が別法人として事業を継続できる点がメリットです。特に従業員のモチベーションを大きく下げることがない点が大きなメリットとなります。

M&A手法によっては社内の再編も伴うこともありますが、株しい交換では株式交換前後でも通常通り日常業務を行えるメリットもあります。

④少数株主から株式の吸い上げが可能

グループ企業を構築するうえで、親会社としては子会社を完全子会社化した方が、円滑に意思決定できるメリットがあります。

また、少数株主が敵対的であった場合、グループ企業として崩れてしまうことにもなりかねません。

株式交換を手法として用いると、子会社に存在する少数株主の保有株式を回収できる点がメリットといえます。

デメリット

株式交換には以下のデメリットもあります。
 

  1. 上場企業を買収した場合には株価下落の可能性がある
  2. 買い手企業の株主に買収先企業の人間が加わり株主比率が変わる
  3. 複雑な手続きを行う必要がある

①上場企業を買収した場合には株価下落の可能性がある

完全子会社が上場企業の場合、株式交換後に株価が下がるリスクがあります。株式交換によって株価が大きく上昇しメリットを得られることもありますが、下落のデメリットも常に抱えています。

特に注目度の高い企業同士の株式交換の場合、株価が短期間で激しく上下することがあります。完全子会社の収益が赤字であったり負債を抱えている場合は注意が必要です。

②買い手企業の株主に買収先企業の人間が加わり株主比率が変わる

株式交換では完全子会社の株式を取得するので、完全親会社の株主構成が変わるデメリットもあります。完全子会社の株主が加わることで、相対的に議決権比率が下がる既存株主も出てきます。

株式交換後に株主比率がどう変化し、経営にどのようなデメリットがあるか把握しておかなくてはなりません。

③複雑な手続きを行う必要がある


株式交換を手法として用いる場合、債権者保護や株主保護、株券等の提出公告など、煩雑な手続きが必要です。

場合によっては株式交換の手続きが長引くなどのデメリットがあります。また、株主や債権者が多いほど手続きが煩雑になるので注意が必要です。

6. 株式交換の適格株式交換と非適格株式交換について

株式交換の適格株式交換と非適格株式交換について

株式交換は、適格株式交換か非適格株式交換かで課税の仕組みが変わります。株式交換における適格株式交換と非適格株式交換について解説します。

適格株式交換とは

適格株式交換とは、簡単に言うと、同じグループ内の企業同士で、株式のみを対価として株式交換を行い、株式交換後も関係が変わらない場合に適用される税務の仕組みです。

適格株式交換の条件に当てはまる場合、完全親会社は株式交換の取得価額を簿価または簿価純資産で算出します。また、完全子会社の株主は、対価が株式のみの場合は譲渡していないものとみなすことができます。

適格株式交換には非適格株式交換にはない税務上のメリットが得られます。
 

完全親会社 取得価額は簿価または簿価純資産で算出
完全子会社 税務処理はなく非課税
完全子会社の株主 ・株式のみの場合非課税
・株式以外の交付がある場合譲渡損益発生

非適格株式交換とは

非適格株式交換とは、適格株式交換の条件に当てはまらない株式交換のことです。非適格株式交換では、完全親会社は完全子会社の株式を時価で取得します。また、完全子会社は、土地や有価証券など一部の資産を損益算入する必要があります。
 

完全親会社 取得価額を時価で算出
完全子会社 時価評価資産の損益算入が必要
完全子会社の株主 ・株式のみの場合非課税
・株式以外の交付がある場合譲渡損益発生

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7. 株式交換の会計処理

株式交換の会計処理

株式交換の会計処理は立場によって変わります。ここでは、以下に挙げるそれぞれのケースごとの会計処理について、詳しく解説します。
 

  • 完全親会社の会計処理
  • 完全子会社の会計処理
  • 完全親会社の株主の会計処理
  • 完全子会社の株主の会計処理

完全親会社の会計処理

完全親会社の会計処理は、完全子会社との関係によって変わります。以前までグループ企業内での株式交換の場合は、持分プーリング法を用いていました。プーリングとは英語で蓄える・出資するという意味です。

英語の意味通り、プーリング法は株式の売買とはみなさないので、売買にかかる税金も発生しません。また、持分プーリング法では簿価により計算することができました。

現在は株式交換の会計処理にパーチェス法を用います。パーチェスとは英語で購入という意味であり、英語の意味通り、パーチェス法では相手企業の株式を購入したものとみなします

また、パーチェス法では株式の取得額を時価で計算します。パーチェス法の場合、時価と簿価に差額が生まれ、のれんが発生します。

完全子会社の会計処理

完全子会社の場合、株主が変わるだけで資本などに変化はないので、会計処理は必要ありません。ただし、自己株式を保有している場合や新株予約権証券を発行している場合には処分が必要です。

自己株式とは、株主から自社の株式を買い取って自社で保有している株式です。また、新株予約権証券とは、一定の価格・任意のタイミングで株式を購入できる権利です。

株式交換の目的上、自己株式と新株予約権証券があると支障が出るため、完全子会社となる企業はこれらを処分する必要があります。

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完全親会社の株主の会計処理

完全親会社の株主は株主交換に関わることはないので、会計処理は発生しません。ただし、親会社の持分比率が株式交換によって大きく変わった場合には、例外的に株主の会計処理が生じる場合もあります。

完全子会社の株主の会計処理


完全子会社の株主に交付された対価が株式のみの場合は、会計処理は発生しません。ただし、株式交換後に株式を清算したとみなされた場合は、会計処理が発生することもあります。

8. 株式交換の税務処理

株式交換の税務処理

株式交換の税務処理は、適格株式交換に該当するか、非適格株式交換に該当するかで変わります。この章では、それぞれのケースごとに発生する税務処理について、解説していきます。

適格株式交換の場合

まずは適格株式交換の税務について解説します。

①完全親会社

適格株式交換における完全親会社株主の税務は、株主の人数によって変わります。

株式交換前の子会社の株主が50人未満
株式交換前の子会社の株主が50人未満の場合、株式の取得価額を基に算出します。この時完全親会社に税金は発生しません。

株式交換前の子会社の株主が50人以上
株式交換前の子会社の株主が50人以上の場合、簿価純資産を基に算出します。簿価純資産とは、帳簿の資産を企業価値として算出する方法です。この時完全親会社に税金は発生しません。

②完全子会社

完全子会社の場合、株式交換の取引を実際に行うのは株主なので、完全子会社に課税は発生しません。ただし、自己株式を保有している場合は処理が必要です。

③完全親会社の株主

完全親会社の株主は株式交換に関わらないので、課税は発生しません。

④完全子会社の株主

完全子会社の株主は、交付された対価が株式のみの場合、譲渡損益の繰延が可能です。譲渡損益の繰延とは、グループ企業内で資産を移動する際に適用される仕組みです。この時、完全子会社の株主には課税されません。

非適格株式交換の場合

続いて、非適格株式交換の税務について解説します。

①完全親会社

非適格株式交換の場合、完全親会社は時価で完全子会社の株式を取得します。この時完全親会社に課税は発生しません。

②完全子会社

完全子会社は、固定資産や有価証券など、特定の資産が時価評価され、課税が発生します。ただし、グループ企業内での非適格株式交換の場合は非課税となります。

③完全親会社の株主

完全親会社の株主は株式交換に関わらないので、課税は発生しません。

④完全子会社の株主

非適格株式交換では、完全子会社の株主は保有株式を時価で譲渡するので、簿価と時価の差額に対して課税されます。ただし、適格・非適格に関係なく、対価が株式のみの場合は譲渡損益の繰延が可能になり、課税されません。

9. 株式交換を使ったM&Aの成功事例

株式交換を使ったM&Aの成功事例

ここからは実際に株式交換を行った以下の企業の事例をご紹介します。

  1. パナソニックによる株式交換
  2. 日産自動車株式会社による株式交換
  3. セブン&アイHDによる株式交換
  4. アイビーシーによる株式交換
  5. 株式会社クスリのアオキによる株式交換
  6. 株式会社三菱ケミカルHDによる株式交換
  7. ユニー株式会社による株式交換
  8. オイシックス株式会社による株式交換
  9. 株式会社RVHによる株式交換
  10. 株式会社ユーグレナによる株式交換

①パナソニックによる株式交換

パナソニック株式会社は2017年、パナホーム株式会社を株式交換によって完全子会社化しました。パナソニックは総合電機メーカーの老舗企業です。対してパナホームは、長年パナソニックグループの住宅部門を支えてきました。

株式交換比率はパナソニックの株式1株に対してパナホームの株式0.8株です。当時のパナホームの時価総額は約1900億円で、パナソニックは株式交換前から半数以上の株式を保有していました。

パナホームはこれまでもパナソニックグループの一員として住宅部門に貢献してきましたが、さらにパナソニックグループ全体として住宅関連事業に進出するために、今回の株式交換に至っています。

②日産自動車株式会社による株式交換

日産自動車株式会社は2012年、愛知機械工業を株式交換によって完全子会社化しました。株式交換比率は日産自動車の株式1株に対して愛知機械工業の株式0.4株です。

愛知機械工業の当時の時価総額は、約300億円でした。

日産自動車と愛知機械工業はグループ企業として自動車の生産を行ってきましたが、完全子会社化によって愛知機械工業は自動車用エンジンの開発に集中し、エコカーなどの競争力を付けることを目的に株式交換を実施しました。

③セブン&アイHDによる株式交換

セブン&アイHDは2016年、完全子会社のセブン&アイ・ネットメディアを通じて、株式会社ニッセンHDを三角株式交換によって完全子会社化しました。

三角株式交換とは、当事例で言うと、ニッセンHDの完全親会社となるセブン&アイ・ネットメディアの株式ではなく、親会社のセブン&アイHDの株式を用いて株式交換を行う手法です。

株式交換比率は、セブン&アイHDの株式1株に対して、ニッセンHD株式0.015株です。ニッセンHDの当時の時価総額は、約44億円でした。セブン&アイ・ネットメディアは、セブン&アイグループのIT・サービス事業を担っている中間持株会社です。

セブン&アイHDは、通販業界の競争激化により深刻な赤字状態に陥っていたニッセンHDを救うと共に、販売チャネルを増やして他者との差別化を目指して株式交換を行いました。

④アイビーシーによる株式交換

2019年2月、IT関連サービスを展開するアイビーシー株式会社は、株式会社サンデーアーツを簡易株式交換により完全子会社化することを発表しました。株式交換の効力発生日は2019年4月を予定しています。

簡易株式交換とは、簡易手続きによって株主総会での承認を必要とせずに株式交換を行う手法です。株式交換比率はアイビーシー株式1株に対して、サンデーアーツ株式410.51株でした。

アイビーシーはサンデーアーツのブロックチェーン開発に関する最先端の技術力を取得することで、高度なIT技術を用いた新たな事業を生み出すことを目的としています。

⑤株式会社クスリのアオキによる株式交換

株式会社クスリのアオキは2016年、クスリのアオキHDを完全親会社として、株式交換により持株会社体制に移行しました。株式交換比率は、クスリのアオキHDの株式1株に対してクスリのアオキ株式1株です。

クスリのアオキの当時の時価総額は、約2000億円でした。競争が激化しスピードが求められるようになったドラッグストア業界において、クスリのアオキは意思決定を迅速に行うため、株式交換によって親会社に監督機能、子会社に事業遂行機能を分離しました。

⑥株式会社三菱ケミカルHDによる株式交換

株式会社三菱ケミカルHDは2016年、子会社の三菱化学株式会社を通じて、三角株式交換による日本化成株式会社の完全子会社化を発表し、2017年に効力が発生しています。株式交換比率は、三菱ケミカルHDの株式1株に対して日本化成0.21株です。

日本化成の当時の時価総額は160億円でした。三菱化学と日本化成は1960年の資本提携から長年共に事業を行ってきましたが、さらなる事業シナジー創出のため、今回の三角株式交換に至っています。

⑦ユニー株式会社による株式交換

ユニー株式会社は2018年、株式会社UCSを株式交換によって完全子会社化しました。UCS株主への対価は、27.8%のプレミアム価格が加えられています。ユニーはショッピングモールや総合スーパーなどを運営しています。

電子マネーやクレジットカードなどの金融システムを運営しているUCSを完全子会社化することで、カード会員の獲得など、顧客基盤の強化を進めていく計画です。

⑧オイシックス株式会社による株式交換

オイシックス株式会社は2017年、合併による経営統合に先立ち、株式会社大地を守る会との株式交換を行いました。株式交換比率は、オイシックスの株式1株に対して大地を守る会261株です。

オイシックスと大地を守る会は、主に安全な野菜を宅配する事業を営んでいます。

野菜宅配サービスではらでぃっしゅぼーやが高いシェアを持っていますが、両者の経営資源を合わせることで、シェア拡大と収益率の向上を目指しています。株式交換の後、両者は合併し、社名をオイシックス・ラ・大地と変えています。

⑨株式会社RVHによる株式交換

株式会社RVHは2017年、たかの友梨ビューティクリニックを運営する、株式会社不二ビューティを簡易株式交換によって完全子会社化しました。株式交換比率は、RVHの株式1株に対して不二ビューティが44株です。

RVHはまず株式譲渡によって不二ビューティ株を取得し、残りを株式交換によって取得しました。株式譲渡とは、企業買収でよく用いられるM&A手法です。RVHは美容脱毛サロン「ミュゼプラチナム」を運営しています。

知名度の高いたかの友梨ビューティクリニックをグループ企業として展開することで、美容業界での競争力アップを図っています。

⑩株式会社ユーグレナによる株式交換

株式会社ユーグレナは2019年、株式会社エポラを簡易株式交換によって完全子会社化しました。株式会社ユーグレナは、ユーグレナ(食用ミドリムシ)の研究開発を行なっています。

一方エポラは株式会社ユーグレナの製品を販売し、売上のほとんどをユーグレナが占めています。株式交換によって株式会社ユーグレナは事業のコスト削減を実現でき、エポラは株式会社ユーグレナのブランド力を活用できます。

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10. 株式交換の注意点

株式交換の注意点

株式交換には特有の注意点があります。株主や完全子会社が株主交換で注意すべき点について解説します。
 

  1. 子会社による親会社株式の保有期間
  2. 株主の保有株数の変化
  3. 所有する株式が単元未満になる可能性がある

①子会社による親会社株式の保有期間

株式交換後、完全子会社は完全親会社の株式を保有できず、持っている場合には速やかに処分しなければならないこととされています。

しかし、子会社が自己株式を保有していた場合、株式交換によって親会社の株式を保有することになります。そのため、自己株式は株式交換の前に処分しておくことが一般的です。

②株主の保有株数の変化


株式交換によって、株主は親会社の株式を交付されます。その際、保有株数は株式交換比率によって変わります。保有株数が変わることによって単元未満株が発生したり、株主優待がもらえなくなる場合もあるので、事前によく確認が必要です。

③所有する株式が単元未満になる可能性がある


株式交換比率によっては、対価として受け取った株式に単元未満株が出る可能性があります。単元未満株は市場で売却できません。そのため、完全親会社の定款や会社法では、単元未満株式を買い増すことができる仕組みや、買い取る仕組みを定めています。

11. 株式交換によるM&Aの相談先

株式交換によるM&Aの相談先

株式交換の手続きは株主や債権者への対応など、煩雑で時間がかかる場合があるうえ、株式交換比率の算定は専門家による綿密な調査分析が必要です。

M&A仲介会社やM&Aアドバイザリーに依頼をすれば、煩雑な株式交換の手続きを一貫して行うことができます。

M&A総合研究所では、実務経験豊富なアドバイザーが少数精鋭で対応するので、スピーディで円滑に手続きを進めることができます。手数料も業界最安水準となっていますので、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

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12. まとめ

まとめ

株式交換は主にグループ企業の組織再編手法として用いられますが、実施を検討する際はメリットやデメリットについて、事前に把握しておくことが必要です。

また、株式交換を行う際の手続きは煩雑なため、あらかじめ流れを確認しておくとよいでしょう。


【株式交換の手続き】

  1. 取締役会決議
  2. 株式交換契約の締結
  3. 事前開示書類の備置
  4. 株主総会の招集通知発送
  5. 株主総会による株式交換契約の承認
  6. 債権者保護の手続き・株券などの提供公告
  7. 反対株主からの株式買取請求
  8. 金融商品取引法上の手続き
  9. 株券・新株予約権の証券提出手続き
  10. 株式交換の効力発生
  11. 新株発行・設立・変更の登記申請
  12. 公正取引委員会への手続き
  13. 事後開示書類の備置・開示
  14. 株式交換無効訴え

【株式交換のメリット】
  1. 買収資金が不要
  2. 子会社も親会社の経営に参画可能
  3. 買収後も別法人として存続できる
  4. 少数株主から株式の吸い上げが可能

【株式交換のデメリット】
  1. 上場企業を買収した場合には株価下落の可能性がある
  2. 買い手企業の株主に買収先企業の人間が加わり株主比率が変わる
  3. 複雑な手続きを行う必要がある

【株式交換の注意点】
  1. 子会社による親会社株式の保有期間
  2. 株主の保有株数の変化
  3. 所有する株式が単元未満になる可能性がある

株式交換は、株主や債権者への対応、株式交換比率の算定、会計・税務など、複雑な手続きを踏まなければなりません。

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