【保存版】吸収合併とは?吸収合併・新設合併との違いやメリット・デメリットを解説!

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。
吸収合併とはどのような手法なのでしょうか。吸収合併とはどのようなメリット・デメリットがあるのか、吸収合併と新設合併の違いやメリット・デメリットを事例付きで解説します。子会社の吸収合併や子会社化との違いも事例とともにご紹介します。
目次
1. 合併とは?
合併とは、2つの法人格が1つの法人格になることをいいます。合併することで事業シナジーが生まれたり、業界のシェアを広げられたりと、さまざまなメリットがあります。
一方の法人格は完全に消滅することになります。似たようなイメージのある統合方法として買収がありますが、こちらは会社の株式を買い取ることで経営権の一部または全部を手に入れることです。買収された会社は存続します。
合併の種類には吸収合併と新設合併があります。吸収合併とはどのような合併方法なのか、新設合併と比較しながら解説します。
吸収合併とは?
吸収合併とは、一方の会社がもう一方の会社を丸ごと取り込むことをいいます。吸収された会社は解散し、全ての資産が存続会社に移されます。一般的には規模の大きい会社が規模の小さい会社を吸収する件数が多いでしょう。
親会社が子会社を吸収合併することもあります。子会社を吸収合併することで事業のシナジー効果やコスト削減が期待できます。
合併といえば多くの企業がこの吸収合併の方法を取ります。
新設合併とは?
新設合併とは、新設会社を作り、合併する両社を解散して新設会社に全ての資産を移す合併方法です。新設会社として新たなスタートになるので、吸収合併に比べて新設合併の方がデメリットが多くなります。新設合併の件数は非常に少ない状況です。
2. 吸収合併と新設合併の共通点と違い
吸収合併と新設合併は、どちらも得られるメリットは共通しています。しかし株主への対応や許認可については違いがあります。吸収合併と新設合併の共通点と違いを、表も交えながら解説します。
共通点
吸収合併と新設合併はどちらも、合併後の両社の商品やサービス、技術や人材を合わせることで、より良い商品やサービスが提供できる可能性が高まります。
また、両社の顧客や取引先、店舗などの販売網を統合することで、業界シェアを広げられます。
さらに、存続会社や新設会社の資本力や成長性をアピールすることにもつながり、市場の期待と信用を得られるという共通点があります。
違い
吸収合併の場合、消滅会社の株主は存続会社から現金、存続会社の株式、存続会社の社債のうちどれかを受け取ります。一方、新設合併の場合、株主は新設会社から新設会社の株式か新設会社の社債のどちらかを受け取ります。
吸収合併は現金での受け取りが可能で、新設合併は現金での受け取りが不可能という点に違いがあります。吸収合併の場合、存続会社が消滅会社の株主に現金を渡したとしても、存続会社の株主はそのまま残るので問題はありません。
しかし新設合併の場合は、新設会社の株主に現金を渡すと新設会社の株主がいなくなってしまうので、新設会社の存続に問題が生じます。そのため、吸収合併では現金が可能ですが、新設合併では現金の受け渡しが不可能となっています。
また、新設合併の場合は新設会社に許認可や免許は引き継がれません。そのため、新設会社になってから改めて許認可や免許の申請が必要になります。新設会社が上場企業であれば上場の再審査もしなければいけなくなります。
共通点 | 違い | |
吸収合併 | ・事業シナジー効果 ・コスト削減 ・市場の信用が得られる |
・消滅会社の株主は存続会社から現金・株式・社債のいずれかを受け取る ・許認可や免許の申請は不要 |
新設合併 | ・事業シナジー効果 ・コスト削減 ・市場の信用が得られる |
・消滅会社の株主は新設会社から株式・社債のいずれかを受け取る ・許認可や免許の申請が必要 |
3. 吸収合併が選ばれる理由は?メリット・デメリット比較!
一般的なイメージでは、吸収合併とは一方の会社が存続会社に吸収されるので、社内で派閥など人間関係の対立が生まれるのではないかと思われがちです。テレビドラマでも合併後の対立を描いた物語があるほどです。
新設会社であればそのようなわだかまりはなさそうに思えます。しかし実際は大半の合併が吸収合併です。吸収合併とはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
- 買い手のメリット・デメリット
- 売り手のメリット・デメリット
買い手のメリット・デメリット
吸収合併による買い手は、新設合併に比べて必要な手続きが少ないことがメリットです。その分合併にかかる手間と時間を短縮できます。
吸収合併の場合は存続会社の権利関係がそのまま残っているので、許認可や免許の再申請は必要ありません。また、合併の際の課税対象にもメリットがあります。
吸収合併の場合は、合併後に増加した分の資本金に対してのみ課税され、新設合併では新設会社の資本金全額に対して課税されます。新設合併に比べてコストを抑えられるメリットがあります。
吸収合併での買い手のデメリットは、非上場企業の場合、売り手に渡す現金を用意する必要がある点です。前述したように、吸収合併では消滅会社側に現金で受け渡すことが可能となっています。
吸収合併の際に売り手企業側が存続企業の株式を受け取った場合、株式の売却先を探さなければいけません。しかし非上場企業の株式は取引相手を探すのが難しいというデメリットがあります。
そのため、存続会社は現金での支払いを求められることになり、資金の準備が必要となる点がデメリットです。また、売り手側企業の債務も引き受けなければいけません。全てのリスクも引き受けなければならないというデメリットがあります。
▼買い手
メリット | デメリット | |
吸収合併 | ・新設合併に比べて必要な手続きが少ない ・合併後増加分の資本金のみ課税 |
・負債などリスクも引き継ぐ ・消滅会社への現金受け渡し |
新設合併 | ・両社平等な統合 | ・必要な手続きが多い ・吸収合併に比べて税金が高い ・新たに許認可や免許の申請が必要 |
売り手のメリット・デメリット
吸収合併による売り手のメリットは、買い手企業のブランド力や信用力を得られる点です。吸収合併の場合、買い手企業の方が規模の大きい会社であることがほとんどです。
また、親会社が子会社を吸収合併した場合、子会社は親会社の資産を使ってこれまで以上に良い商品やサービスを提供しやすくなるメリットがあります。
また、負債なども含めて全て引き継ぐので、売り手側の経営者が事業承継として吸収合併を行った場合、債務処理の心配がなくなるという大きなメリットがあります。
一方、売り手のデメリットは、買い手のデメリットと同様に、株式を現金化しにくいという点があります。
▼売り手
メリット | デメリット | |
吸収合併 | ・ブランド力や信用力アップ ・債務を返済できる |
・受け取った株式の現金化が難しい |
新設合併 | ・両社平等な統合 | ・必要な手続きが多い ・吸収合併に比べて税金が高い ・新たに許認可や免許の申請が必要 |
4. 吸収合併とその他のM&A手法の違い
吸収合併とは、事業譲渡や株式譲渡のように会社を統合するという意味では似ているように見えますが、全く性質が違います。吸収合併とは2つの法人格が1つに統合されることです。それに対して事業譲渡や株式譲渡は、会社自体は存続します。
①吸収合併と事業譲渡の違い
吸収合併とは存続会社に消滅会社の全ての資産、権利義務を移行する方法です。債務も必ず引き受けることとなります。債務だけ拒否することはできないデメリットがあります。
一方事業譲渡は、譲渡する事業を取捨選択します。債務を引き継がないという判断もできるメリットがあります。
また、吸収合併の場合は、合併した時点で吸収された会社は自動的に消滅します。事業譲渡では、会社が消滅することはありません。もし会社を解散する際は手続きが必要です。
許認可に関しては、吸収合併は許認可も引き継ぐことが可能ですが、事業譲渡では許認可を引き継ぐことはできません。改めて申請しなければならないというデメリットがあります。
手続き面では、事業譲渡の方が吸収合併よりも簡便な手続きで済むというメリットがあります。
②吸収合併と株式譲渡の違い
株式譲渡は、譲受会社が譲渡会社の株式を取得して経営権を得ます。譲渡会社はそのまま存続するので、吸収合併のように傍目から見て大きな変化は感じられません。
吸収合併は合併される企業を丸ごと取り込みますが、株式譲渡は株式の保有割合に応じて譲渡企業への影響力が変わってきます。
議決権のある株式の過半数以上を取得すると、経営権を得て子会社とすることが可能です。経営権を得て子会社化することで、子会社の経営における決定権を持ちます。
議決権のある株式の2/3以上を取得すると、子会社への支配権を得られます。支配権があると、子会社の根本に関わる決定権を持つことが可能です。
株式を100%保有すると、完全経営支配権を得て完全子会社化することが可能です。しかし100%の株式を保有して完全子会社化してもあくまで別会社なので、1つの法人格となる吸収合併とは性質が違います。
5. こんなケースは吸収合併がおすすめ
会社を統合する際にどの手法を使うとメリットが最大化されるかは、目的や状況によって考慮する必要があります。
- 人材・ノウハウに関するメリット
- 事業シナジーによるメリット
- コスト削減のメリット
これらのメリットについて、吸収合併とはどのようなメリットが得られるのかを解説します。
ケース①両社の人材・ノウハウでシナジー効果を発揮したい
子会社化の場合は、同じグループ会社とはいえ親会社と子会社の間に壁があります。労働条件の差や親会社と子会社という上下の関係もデメリットとなります。
しかし吸収合併であれば、同じ会社の従業員として同じ目標に向かえるメリットがあります。両社の優秀な人材が同じ場所に集まり、目標やノウハウを共有することでシナジーを得られます。
ケース②関連事業同士の会社を統合してシナジー効果を発揮したい
吸収合併で関連事業を統合すれば、提携によって事業を行うよりも高い事業シナジーを生み出せるメリットがあります
技術力の向上、サービスの充実、営業力の強化など、うまく統合できればさまざまな事業シナジーが得られます。
吸収合併は、多くが赤字企業を吸収して経営基盤を改善し利益を得るという目的でしたが、近年は経営状態の良好な企業を吸収合併して事業シナジーのメリットを得る目的も増えています。
ケース③スケールメリットによってコスト削減したい
コスト削減を目的としている場合は、吸収合併によって会社の規模を大きくすることでメリットが得られます。
会社の規模が大きくなることによって大量仕入れが可能になります。その分仕入れコストを抑えられます。
大量生産も可能になるのでさらにコスト削減につながり、販売網も拡大できます。また、両社の生産システムや流通システムなどが統合されることによって、システムのコストも削減できるメリットもあります。
6. 吸収合併のスケジュール
一般的な吸収合併のスケジュールを表にしました。4月上旬に吸収合併契約締結が承認され、手続きが順調に進んで6月に効力が発生した場合のスケジュールです。
4月上旬に吸収合併契約が承認されるスケジュールとすると、3月のスケジュールは債権者への説明などの準備期間となります。4月中旬のスケジュールは、合併契約の締結や官報公告に掲載申し込みをします。
4月下旬のスケジュールは債権者への催告、契約書などの準備となります。5月には株主総会に関するスケジュールを組みます。5月上旬に株主総会への招集通知を送るとすると、5月下旬には株主総会を開催するスケジュールになります。
順調にいけば、6月には登記申請まで完了するスケジュールです。必ずしもスケジュール通りに進むとは限らないので、スケジュールが変更になる場合の準備も必要です。
日程 | 存続会社 | 消滅会社 |
3月中旬 | 準備期間(債権者への説明) | 準備期間(債権者への説明) |
4月上旬 | 吸収合併契約締結の承認 | 吸収合併契約締結の承認 |
4月中旬 | 吸収合併契約の締結、官報公告の掲載申し込み | 吸収合併契約の締結、官報公告の掲載申し込み |
4月下旬 | 官報公告の掲載、債権者への個別催告、契約書などの準備 | 官報公告の掲載、債権者への個別催告、契約書などの準備 |
5月上旬 | 株主に株主総会への招集通知発送 | 株主に株主総会への招集通知発送 |
5月下旬 | 株主総会で吸収合併契約の承認決議 | 株主総会で吸収合併契約の承認決議 |
6月上旬 | 債権者異議申述期間満了、吸収合併の効力発生 | 債権者異議申述期間満了、吸収合併の効力発生 |
上旬以降 | 合併の登記申請~合併完了 |
7. 吸収合併の手続き
吸収合併の基本的な手続き方法には、以下のようなプロセスが必要です。
- 吸収合併契約の締結
- 合併契約の承認
- 官報公告への申し込み・債権者への告知
- 書類の事前備置
- 株主への通知
- 登記申請
①吸収合併契約の締結
吸収合併する両社間で合併契約を結びます。ここから吸収合併の本格的なスケジュールが始まります。合併契約では、効力発生日や、存続会社が消滅会社の株主に対価として現金、株式、社債のどれを渡すのかなどを決定します。
②合併契約の承認
吸収合併を行う場合は、効力発生日までに株主から承認を得る必要があります。株主に株主総会への招集通知を送り、株主総会決議で承認を得ます。ただし、条件によっては株主総会での承認は必要がありません。
③官報公告への申し込み・債権者への告知
合併をする際は官報公告に申し込んで債権者に告知する必要があります。その際に、債権者からの異議申し立てを受け付けることも告知します。
債権者への個別告知は省略できますが、大企業の場合などは官報広告と債権者への個別告知を同時に行うケースが多いでしょう。
④書類の事前備置
存続会社・消滅会社ともに、債権者保護のために合併に関する情報を記載した書類を置く必要があります。書類の内容は会社法で定められています。
合併契約の内容や、消滅会社株主への対価に関する書類などが両社に置かれ、いつでも閲覧することが可能です。
⑤株主への通知
株主へ株主総会の招集通知を送ったり、反対株主に通知を送ったりします。株主総会では、合併の承認決議などを行います。反対株主は、現在持っている株式を買い取るよう請求することが可能です。
⑥登記申請
スケジュールが順調に進み吸収合併の効力が発生した後は、存続会社が登記申請を行います。消滅会社が提出する書類はありません。登記申請が済めば吸収合併のスケジュールは完了です。
8. 吸収合併の登記方法
吸収合併の登記には、必ず提出する書類の他に、状況に応じて提出する必要な書類があります。また、登録免許税の支払いも発生します。支払額は、資本金の額によって変わります。
以下に、登記に必要な書類の一覧と登録免許税の支払い金額の計算方法をまとめました。
方法①登記に必要な書類
登記の際に必要な書類の一覧です。状況に応じて必要な書類と必要ではない書類があります。法務省で案内している必要書類のテンプレートは、会社の実情によって変更することが可能です。
書類名 | 内容 |
株式会社合併による変更登記申請書 | 登記申請の署名 |
合併契約書 | 合併契約の内容証明 |
合併に関する株主総会議事録 | 株主総会を行った証明 |
株主の氏名又は名称、住所及び議決権数などを証する書面(株主リスト) | 株主の氏名・名称、住所、株式数 議決権数、議決権数の割合 |
取締役会議事録 | 簡易合併を行う場合に取締役会を行った証明 |
略式合併又は簡易合併の要件を満たすことを証する書面 | 簡易合併の要件を満たす証明 |
簡易合併に反対の意思の通知をした株主がある場合における会社法第796条第3項の株主総会の承認を受けなければならない場合には該当しないことを証する書面 | 簡易合併に反対の意思を示した株主がいた場合に添付 |
公告及び催告をしたことを証する書面 | 債権者への公告、個別催告の内容証明 |
異議を述べた債権者に対し弁済若しくは担保を供し若しくは信託したこと又は合併をしてもその者を害するおそれがないことを証する書面 | 合併への異議申述書、弁済金受領証書 |
消滅会社の登記事項証明書 | 消滅会社に関する登記事項の証明 |
株券提供公告をしたことを証する書面 | 株券提供を求める公告をしたことの証明 |
新株予約権証券提供公告をしたことを証する書面 | 新株予約権証券の提供を求める公告をしたことの証 |
資本金の額の計上に関する証明書 | 資本金増加額が間違いないことの証明 |
登録免許税法施行規則第12条第5項の規定に関する証明書 | 資本金の額が増加する場合に添付 |
取締役及び監査役の就任承諾書 | 株主総会で取締役や監査役に選ばれたことの承諾 |
印鑑証明書 | 印鑑証明 |
本人確認証明書 | 本人確認 |
認可書(又は許可書、認証がある謄本) | 許可証 |
委任状 | 原本還付の請求をする場合に記載 |
方法②登録免許税の支払い
吸収合併を行った際には、存続会社に対して登録免許税の支払いが発生します。支払額は資本金によって変わります。
吸収合併しても資本金の額が増加しなかった場合は、30,000円固定です。
もし吸収合併によって資本金額が増加した場合は、増加した分の資本金に1,000分の1.5をかけた金額が登録免許税となります。この際、もし算出した登録免許税が30,000円に満たない場合は、30,000円を支払うことになります。
また、増加した資本金の額が消滅会社の資本金の額を超えていたときには、超えた分の資本金に対して1,000分の7をかけます。つまり、消滅会社の資本金分に対しては1,000分の1.5をかけ、消滅会社の資本金を超えた額に対して1,000分の7をかけた額を加算します。
実際に数字で例えます。
・存続会社の資本金:3,000万円
・消滅会社の資本金:2,000万円
・合併後の資本金:6,000万円
・増加資本金3,000万円の内、消滅会社の資本金額超過分:1,000万円
登録免許税
2,000万円×1.5/1,000=30,000円
1,000万円×7/1,000=70,000円
30,000円+70,000円=100,000円
この場合の存続会社が支払う登録免許税は100,000円となります。
消滅会社の登録免許税は、廃止の登記なので一律30,000円です。
項目 | 内容 | 課税標準 | 税率 |
合併、組織変更等の登記 | 合併又は組織変更若しくは種類の変更による株式会社、合同会社の設立又は合併による株式会社、合同会社の資本金の増加の登記 | 資本金の額、増加した資本金の額 | 1,000分の1.5 (合併により消滅した会社又は組織変更若しくは種類の変更をした会社の当該合併又は組織変更若しくは種類の変更の直前における資本金の額として一定のものを超える資本金の額に対応する部分については1,000分の7) (3万円に満たないときは、申請件数1件につき3万円) |
登記事項の変更、消滅若しくは廃止の登記 | 申請件数 | 1件につき3万円 |
※引用
登録免許税の税額表(国税庁)
9. 吸収合併の通知方法
吸収合併を行う際は、各関係者に通知する必要があります。通知先は、取引先、金融機関、主要顧客、株主などの債権者です。通知内容は、どの会社といつどのような形で合併するのかを明記します。
そして合併後にはどのようなビジョンで経営し、どのようなシナジー効果があるのかを記載します。それ以上の具体的で細かい点に関しては、官報公告や書類の事前備置でお知らせするので、ここでは要旨がしっかりと伝わることを重視します。
以下に吸収合併通知の文例を2例ご紹介します。1つ目の文例は基本的な例です。2つ目の文例は、子会社が親会社に吸収合併された場合の文例です。
合併通知の文例①一般的な通知文
拝啓 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。
この度、株式会社〇〇と〇〇株式会社は株式会社〇〇を吸収存続会社、弊社を吸収消滅会社として、平成〇〇年〇月〇日付で合併いたします。
本合併により、経営基盤の強化並びに品質の更なる向上を図ることにより強固な経営基盤を構築し、お客様をはじめ、全ての皆様にこれまで以上のサービスを提供して参る所存でございますのでお取引先各位におかれましては引き続き変わらぬご愛顧を賜ります様お願い申し上げます。
まずは、略儀ながら書中をもってご通知かたがた合併のご挨拶を申し上げます。 敬具
合併通知の文例②子会社が親会社に吸収合併される場合
謹啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のお引き立てを賜り心より御礼申し上げます。
弊社はこの度、平成〇〇年〇月〇日をもって親会社である株式会社〇〇〇〇に、全ての事業を引き継ぐことといたしましたので、お知らせいたします。
なお、本件合併は、株式会社〇〇〇〇を存続会社とする吸収合併であり、同日をもって、子会社である当社は解散いたします。
当社の事業は株式会社〇〇〇〇の一事業として継続し、より一層充実したサービスを提供して参る所存でございます。
本件合併により、経営の効率化、技術力の向上、営業力の強化をはかり、高品質なサービスの運営をさらに推し進めてまいります。
皆さまには、今後も一層のご愛顧お引き立てを賜りますよう、謹んでお願い申し上げます。
まずは、略儀ながら書中をもって、ご通知かたがた合併のご挨拶申し上げます。
謹白
〇〇株式会社 代表取締役社長 〇〇〇〇
10. 吸収合併後の社員の処遇は?
吸収合併後は存続会社の労働条件で働くことになります。子会社化の場合は労働条件の違いで不満が出ることもありますが、吸収合併では同じ労働条件になることがメリットです。子会社ほどの不平等感はありません。
しかし、消滅会社から存続会社に移る際に労働条件は変わるので、労働条件の内容によっては条件が悪くなるデメリットもあります。そのようなデメリットによって退職者が出ないように、PMI(事業統合マネジメント)の段階でしっかりと調整しておく必要があります。
合併後のマネジメント計画をしっかりと組み立てておくことで、統合後に不遇な社員や不満を持つ社員を極力出さないことが重要です。
特に消滅会社の役員の待遇は事前にしっかりと練っておかなくてはいけません。合併をきっかけにモチベーションが下がってしまう役員や、他者から引き抜きの話が来る役員がいます。
吸収合併は優秀な社員や役員などの人材によるシナジー効果のメリットも大きいので、専門家と協力して事前のPMIによる社員の処遇計画を丁寧に行う必要があります。
11. 吸収合併の実務を分類
吸収合併の実務は法務、会計、税務に分けられます。どの実務も条件によって実務内容が多岐に渡ります。
- 吸収合併の法務
- 吸収合併の会計
- 吸収合併の税務
実務①吸収合併の法務
吸収合併の法務には主に以下のようなものがあります。
- 合併の手続き
- 合併契約の承認決議
- 株主など債権者への保護手続き
合併の法務は、会社法によって定められた項目を最低限実行する必要があります。
吸収合併のスケジュールや吸収合併の手続きで前述したように、効力発生日までに多くの手続きが必要です。効力発生後も合併の条件に応じてさまざまな書類を提出する必要があります。
実務②吸収合併の会計
吸収合併の会計処理には主に以下のようなものがあります。
- 企業結合の分類と会計処理
- パーチェス法による会計処理
吸収合併の会計では、存続会社の資産に消滅会社の資産が合算されます。同時に、消滅会社の負債も存続会社に合算されることとなります。吸収合併の場合は、存続会社が消滅会社を「取得」します。
会計における取得とは、企業結合の種類の1つで、一方の会社がもう一方の会社の支配権を獲得して、1つの法人格になることをいいます。吸収合併の場合はこの取得に当たるので、パーチェス法という会計処理を行います。
パーチェス法では、消滅会社の資産や負債を時価で買い取るので、簿価と時価に差額が出ます。このパーチェス法による会計処理が吸収合併における会計の実務として行われます。
実務③吸収合併の税務
吸収合併の税務には主なものとして以下のようなものがあります。
- 適格合併と非適格合併の取り扱い
- 株主の税務
- 抱き合わせ株式の処理
- 合併にかかる消費税
- 合併にかかる登録免許税・不動産取得税
吸収合併では、条件によって適格合併と非適格合併に分けられます。適格合併の場合は税務上メリットがあるので、ほとんどの合併が適格合併に該当するように手続きを行います。他にも合併の税務は条件によってさまざまなパターンに分かれます。
12. 吸収合併を経験した人の声
実際に吸収合併を経験した人の事例を集めました。その中から、消滅会社側の社員、存続会社側の社員、消滅会社の元社長の体験事例をご紹介します。
事例①人事部女性(消滅会社側)
吸収合併で配置転換され、それまでほとんど経験のない業務を担当することになりました。他の配置転換された人たちの中には会社を辞めていく人もいました。
表面上は同じ会社の社員ですが、内情は大きな距離感がありました。肩身の狭い思いをしていますが何とか続けています。
事例②契約社員女性(存続会社側)
吸収合併後も業務内容は変わらず、人間関係も比較的良好でした。ただ合併をきっかけに業務システムや社内ルールが変わったので、慣れるのに時間がかかりました。
会社風土の違いもあってしばらくはゴタゴタしていましたが、どちらの社員も今は新しい環境に慣れて違和感なく仕事ができています。
事例③元ベンチャー企業経営者(消滅会社側)
主にインターネット広告の販売代理を行うベンチャー企業を経営していました。某大企業に吸収合併され、元々の事業は大企業側の社員が担当し、私は新たに立ち上げる社内ベンチャーの代表を任されることになりました。
社内から好きな人材を引き抜いても良いといわれ、優秀な社員とともに仕事を開始しました。しかし大企業側の社員は好奇の目や冷たい目で見ている人も多く、しばらくはやりづらい環境でした。
何かと承認が必要だったり短期間での結果を求められたりと、どんどんモチベーションは下がるばかりでした。マネタイズできるようになってからは何もいわれなくなりましたが、一時期は辞めることばかり考えていました。
13. M&Aによる吸収合併を考えるならM&Aコンサルタントに相談!
M&Aには専門家の協力が不可欠です。M&Aを取り扱っている専門家は専門分野によって強みが違います。その中でも吸収合併の実務には、M&Aコンサルタントを活用するメリットが大きいでしょう。
M&Aコンサルタントは全分野に精通した実務能力に、難しい交渉を仲介する高いコミュニケーション能力を持ちます。そのようなM&Aコンサルタントを選ぶ際のポイントもあります。
M&Aコンサルタントを活用するメリットとM&Aコンサルタントを選ぶポイントをご紹介します。
M&Aコンサルタントを活用するメリット
これまでご紹介してきたように、M&Aによる吸収合併には法務、税務などの実務能力や、深い会計知識が必要です。
税理士や公認会計士、弁護士はそれぞれ税務、法務、会計の専門家です。専門分野に関しては非常に心強いアドバイザーになってくれるというメリットがあります。しかしM&Aによる吸収合併には、全ての業務に精通したスペシャリストの力が必要です。
M&Aコンサルタントは吸収合併の手続きに一貫して携わります。幅広いネットワークを駆使して全面的なバックアップができることがM&Aコンサルタントを活用するメリットです。
また、吸収合併これまで解説してきたように、吸収合併はただマニュアル通り手続きを進めれば良いというわけではありません。状況に応じて臨機応変に対応できる能力が必要です。特に高いコミュニケーション能力が求められます。
両社社長の交渉を仲介することや、不満を持つ株主や社員に納得してもらうことは非常に大変な仕事です。それにはM&Aの豊富な実務経験と実績がなければ成功しません。
M&AコンサルタントはM&Aが本業なので豊富な経験を持っています。M&Aを活用することでこれらのメリットが得られます。
M&Aコンサルタントの選び方
M&Aコンサルタントを選ぶ際には以下のポイントを抑えておく必要があります。
- 豊富な案件実績
- 高い専門性と営業力
- 誠実さ
- 報酬体系
- スピード
選び方①自社と同規模の案件実績がある
M&A仲介会社によって主に取り扱っているM&Aの規模は違います。大規模案件の実績が豊富な会社もあれば小規模な案件を得意としている会社もあります。
同じ中小企業のM&Aといっても、小規模の案件と中規模以上の案件ではやり方も変わってきます。M&Aコンサルタントを選ぶ際は、自社と同じくらいの案件実績が豊富な会社を選んだ方がさまざまなメリットを得られます。
選び方②専門性と営業力がある
M&AコンサルタントはM&Aに関する全ての業務に精通していますが、人によって専門分野が違います。公認会計士の資格を持ったM&Aコンサルタントであれば、会計・税務の分野で大きなメリットがあります。
経営コンサルティング会社出身のM&Aコンサルタントであれば、戦略的なPMI(統合後マネジメント計画)を作成してもらえるメリットがあります。
また、M&Aコンサルタントには高い営業力も必要です。まだM&Aの相手が決まっていない場合は、合併に最適な相手をマッチングして交渉できる能力が求められます。
他業種との情報網や協力関係のネットワークを持っているM&Aコンサルタントに依頼できれば、大きなメリットが得られます。
選び方③親身に相談に乗ってくれるか
親身に相談に乗ってくれる誠実さがあるかどうかは非常に大事です。M&Aには大きな不安が伴います。経営者や社員の不安を解消することはM&Aの成否を左右するほど大事な要素です。
また、M&Aの成功には大事な情報をどれだけ集められるかも重要です。クライアントへのヒアリングをきちんとできるM&Aコンサルタントを選ぶことで大きなメリットが得られます。
選び方④値段が安いか
報酬体系はよく確認する必要があります。なるべくシンプルでわかりやすい料金の会社を選んだ方が、後々のメリットが大きくなります。
複雑な料金システムだと、M&Aの進行中に思わぬところで手数料を取られる場合や、M&Aの期間が長引くことによって支払う料金が増える場合があるなどのデメリットがあります。
値段が安いか、料金システムはわかりやすいかを事前にM&Aコンサルタントによく確認することが大事です。
選び方⑤スピード感
M&Aが完了するまでのスピード感があるかどうかもM&Aコンサルタントを選ぶ際のポイントです。M&Aの期間が不必要に長くなるほど交渉が途中で頓挫する可能性も高くなるなど、デメリットが大きくなります。
M&Aコンサルタントを選ぶ際は、手続きは丁寧に進めながらも、スピード感を大事にしている会社を選ぶようにします。
総合的にM&A総合研究所!
M&A総合研究所は上記全てのポイントがあり、誠実な対応を心掛けています。所属のM&Aコンサルタントは経験豊富な会計士が専属サポートします。案件規模も大きいものから小さいものまで実績が豊富です。
料金は業界最安値水準でわかりやすい料金設定となっています。相談無料なのでまずはお気軽にご相談ください。
M&A総合研究所では、着手金などもかかりません。どのような売却方法、業種であっても対応いたします。ぜひ一度お問い合わせください。
14. 吸収合併まとめ
ここまで吸収合併とはどのような手法なのか、どのようなメリット・デメリットがあるのかなど、さまざまな面から解説してきました。合併には吸収合併と新設合併がありますが、メリット・デメリットの比較から吸収合併が主流となっています。
吸収合併は事業譲渡や株式譲渡とは違い、1つの法人格になるのでより協力関係が築きやすくなるメリットがあります。また、事業シナジーやコスト削減ができるメリットもあります。
ここまでご紹介したように、吸収合併の手続きは複雑で幅広いため、広い知識と豊富な実務経験が求められます。社員や株主の不満にも考慮して動かなければいけません。吸収合併の成否は優秀なM&Aコンサルタントに依頼できるかどうかが重要です。
吸収合併を検討する際は事前によく確認して選んでください。
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