事業承継とは?事業継承との違いや承継を成功させるポイントを解説

Medium
企業情報第二部 部長
向井 崇

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。

中小企業にとって事業承継は大きな課題のひとつです。事業承継と似た言葉に事業継承がありますが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。この記事では、事業承継とはどのようなものか、事業継承との違いや成功させるポイントなどを解説します。

目次

  1. 事業承継とは
  2. 事業承継と事業継承の違い
  3. 事業承継の種類
  4. 事業承継の傾向
  5. 中小企業が抱える事業承継問題とは
  6. 事業承継の構成要素
  7. 事業承継の流れ
  8. 事業承継に失敗したらどうなる?
  9. 事業承継を成功させるポイント
  10. 事業承継の公的支援
  11. 事業承継のまとめ
  • 今すぐ買収ニーズを登録する
  • 経験豊富なM&AアドバイザーがM&Aをフルサポート まずは無料相談
    プレミアム案件・お役立ち情報

1. 事業承継とは

事業承継とは

事業承継とは、事業の運営・会社の経営を後継者に引き渡し、それを継がせることです。多くは、会社の株式(=会社の経営権)を後継者に譲渡(株式譲渡)することで、会社を丸ごと引き渡します。

ただし、それ以外にも、会社組織は現経営者の手元に残し、事業と関連する資産を引き渡すケース(事業譲渡)や、事業が複数あり後継者も複数いる場合、各事業を個別にそれぞれの後継者に事業承継するケースもあります。

いずれにしろ、経営者が引退するときに会社や事業を継続させるためには、必ず必要なプロセスが事業承継です。そこで、この事業承継について、もう少し詳細に定義を確認してみましょう。

事業承継の定義

中小企業庁が毎年、編さんし公表している「中小企業白書」内の言葉を借りれば、実は、事業承継に厳密な定義はありません。

しかし、現実に実施されている事業承継の実態と、一般的に事業承継という言葉に抱く概念とを合わせて考えれば、事業承継とは、大別して3種類のカテゴリーに分かれるものを総合的に引き継ぐことで成立していると分析しています。

その3種類とは、会社の経営権、資金や資産、経営理念などの知的資産です。これらの詳細については後述しますので、そこであらためてご覧ください。

大切なことは、後継者にとって、事業承継とは単に「社長」という肩書が手に入るだけではありません。重い責任を負う現実を理解し、その覚悟が求められるということです。

【関連】事業承継の件数データまとめ!市場規模は伸びている?

2. 事業承継と事業継承の違い

事業承継と事業継承の違い

事業承継と類似する言葉として、事業継承があります。同じ漢字が上下逆になると、そこにはどんな意味の違いが生じるのでしょうか。事業承継をよりよく理解するためにも、事業継承との違いについて確認しておきましょう。

「承継」と「継承」の違い

「承継」と「継承」は、完全に意味の違う言葉などではなく、相互に類語として分類されています。ただし、そこには微妙なニュアンスの違いがありますので、比較する表をまとめました。

「事業継承よりも事業承継が正しい」が一般的

  承継 継承
読み しょうけい けいしょう
意味 (精神・身分・仕事・事業などを)
受け継ぐ
(義務・財産・権利などを)
受け継ぐ
ニュアンス 受け継ぐのは抽象的なもの、
または法律的なもの
受け継ぐのは資格や経済価値
使用例 ・経営理念の承継
・相続の承継
・王位継承
・大統領職の継承

「事業継承よりも事業承継が正しい」が一般的

上述の説明で明らかなように、一般的には「事業承継」の方が正しい使い方です。「承継」という言葉は、継承よりも「法律用語として適切な表現」と考えられています。

承継は、権利や義務を引き継ぐことを指す法律用語で、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(中小企業経営承継円滑化法)」「事業承継税制」など、条文や契約書でも「承継」の表記が多用されているからです。

そのため、前任者から法律上の手続きを経て「事業」を引き継ぐことからも、「事業承継」の方が正しいといえます。

ただし「事業継承」が間違いというわけではありません。「理念」などよりも「資産や税金対策」に集中する場合は、あえて事業継承という場合もあります。

【関連】事業承継がわかる本のおすすめランキングTOP20

3. 事業承継の種類

事業承継の種類

実際に事業承継を行うには、大きく分けて3つの方法のどれかを用いることになります。

  • 親族内事業承継
  • 社内事業承継
  • M&Aによる事業承継

それぞれ内容を確認しましょう。

親族内事業承継

親族内事業承継は、経営者の子供や配偶者、兄弟姉妹などの親族に事業承継する方法です。

親族内事業承継のメリットとしては、「後継者探しが容易」「財産の承継をする際に『相続』や『贈与』などのように承継方法に幅がある」といったものが挙げられます。

ただし、「親族内に後継者になりたいと考える人がいるとは限らない」「経営者としての資質がない人を後継者としてしまう危険性がある」といったデメリットには注意が必要です。

【関連】跡取りに会社を継いでほしい!跡取りの役割や育て方・承継方法を解説

社内事業承継

社内事業承継は、会社の従業員や役員の中から後継者を選び、事業承継をする方法になります。

社内承継のメリットは、「会社での就業経験・ノウハウがあり、事業内容も理解していることから、経営権を渡してもスムーズに対応できる」「後継者としての教育期間が少なくてすむ」などです。

一方、デメリットとしては、「株式を取得するための資金がない」「経営者としての資質がない人が後継者となってしまう可能性がある」といったものが挙げられます。

【関連】従業員承継とは?役員・従業員に引き継ぐメリット・デメリット、方法と注意点を解説

M&Aによる事業承継

事業承継の方法として、M&Aによる事業承継もあります。M&Aによる事業承継とは、会社や事業を売却することによって、その買い手である社外の第三者に事業を引き継がせることです。

M&Aによる事業承継は、「従業員の雇用を確保できる」「買収先の資本力・ブランド力を利用して自社の経営を安定化させられる」といったメリットがあります。

一方で、「M&Aには税務上・会計上のリスクが伴う」「希望の条件で後継者を見つけるのが難しい」といったデメリットがある点は否めません。

【関連】事業承継M&Aの件数が急増?メリット・デメリットを解説!

事業承継をしない場合は廃業するしかない

上述した3つの方法で事業承継をしない場合、最終的には廃業の道を選ばざるを得ません。

廃業の場合、業種によって多少の差はありますが、設備や施設、在庫品などの廃棄コストが発生します。また、長年、従事してくれた社員たちを解雇し、路頭に迷わせるのは必至です。

さらに、取引先の事業にも大きなダメージを与えることになります。廃業は何とか回避して、事業承継を成功させる方法を取るべきでしょう。

【関連】事業承継と廃業(清算)を比較!どちらが得する?

親族や社内に後継者が乏しく、なかなか事業承継が進まないという場合は、M&Aによる事業承継を検討してみましょう。M&Aによる事業承継を実施する際に起こり得るデメリットは、M&A仲介会社を利用することで解消できます。

その際、どのM&A仲介会社を利用するべきか、お悩みということであれば、ぜひM&A総合研究所に相談してみてください。

M&A総合研究所では、事業承継の相手探しからクロージングまでまで、専任のアドバイザーが徹底的にM&Aをサポートいたします。

当社は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっております。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。

【関連】M&A・事業承継ならM&A総合研究所
電話で無料相談
0120-401-970
WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

4. 事業承継の傾向

事業承継の傾向

前章で事業承継の種類について述べましたが、実際に中小企業で行われている事業承継の種類ごとの比率について見てみましょう。資料として、帝国データバンク発表の「全国・後継者不在企業動向調査(2019年)」を用います。

親族内事業承継の割合

【事業を承継した社長の、先代経営者との関係(2019年)】※調査対象約34,000社

創業者 4.8%
親族 34.9%
社内 33.4%
外部招聘 8.5%
その他 18.4%
出典:帝国データバンク「全国・後継者不在企業動向調査(2019 年)

 

まず、「創業者4.8%」とありますが、これはどういうことかというと、後継者に事業承継して引退した前経営者が何らかの理由により経営者として再登板したことを物語っています。おそらくは、後継者が経営者として失敗してしまったのでしょう。

続いて、親族内事業承継が34.9%となっていますが、2年前の調査では41.6%だったので大きく減少中です。親族の中で最も有力な後継者は経営者の子供ですが、近年は少子化と価値観の多様化により、親の後を継がない子供が増えており、親族内事業承継が減少している原因になります。

一方、社内事業承継の33.4%は、2年前の31.1%より増加しました。親族内事業承継が減る分、次善の策として社内事業承継が用いられていると考えられます。ただし、親族内事業承継の減少分全てを社内事業承継でカバーしているわけではありません。

外部招聘とは、やや特殊な事業承継です。取引先や取引金融機関などから後継者を迎え入れ、事業承継します。こちらも2年前は7.4%でしたので、少し増えている状況です。

最後の「その他」が、M&Aによる事業承継に該当します。ただし、公的支援機関である事業引継ぎ支援センターの後継者人材バンクによる後継者候補紹介なども含まれるため、厳密には、その比率全てがM&Aによる事業承継とはいい切れません。

いずれにしろ、「その他」の2年前は15.9%でしたから、M&Aによる事業承継が最も増加していることになります。

なお、事業引継ぎ支援センターおよび後継者人材バンクについては、以下の記事でそれぞれ詳細が述べられていますので、そちらを参照ください。

【関連】事業引継ぎ支援センターとは?費用や実績を解説【評判/口コミあり】
【関連】後継者人材バンクとは?使い方やメリットを解説!

5. 中小企業が抱える事業承継問題とは

中小企業が抱える事業承継問題とは

前章の傾向でも明らかになったとおり、日本の中小企業では以前から広く行われてきた親族内事業承継が、年々、減少傾向になります。つまり、従来は親族を後継者にして事業承継ができていましたが、親族に後継者候補がいない、後継者不足、後継者難という状況があるのです。

後継者が見つかっていない中小企業は約65%

先述の帝国データバンクの資料「全国・後継者不在企業動向調査(2019年)」では、全国の中小企業約27万5千社の統計として、2019(令和元)年の後継者不在率は65.2%と発表しています。2011(平成23)年以降では最も低い数値ではありますが、決して安心できる比率ではありません。

ただし、この比率の中には、現在の経営者がまだ若く、後継者の存在を必要としていない会社も含まれているので、その点は割り引いて考える必要があります。

そして、事業承継問題が直撃する経営者の年齢を60歳代以上とするならば、その年代別の後継者不在率は以下のとおりです。

  • 60歳代:49.5%
  • 70歳代:39.9%
  • 80歳以上:31.8%

経営者の考えの変化

親族内事業承継が減少している大きな原因は、少子化と価値観の多様化の2つです。このうちの価値観の多様化には、親族側と経営者側、それぞれの観点があります。

親族側の後継者候補の代表格といえば経営者の子供です。過去には、家が事業を行っているのなら、ほぼ義務のように子供が親の後を継ぐのが当たり前という風潮でした。しかし、文明が進んだ現在、仕事や人生の価値観に多くの異なる発想や考え方がなされています。

その結果、かつての義務のような呪縛から解き放たれ、親の後を継がずに自由に仕事を選ぶ子供も増えたことで後継者となる子供が減少してきました。

一方、経営者である親側にも考え方の変化が訪れたという指摘があります。以前であれば、何が何でも後継者を立て会社を存続させるのが当然というものでした。しかし、昨今、社会や経済が複雑化し、また国内市場は飽和状態から減少傾向にある中、いつ会社が危機的状況に陥るかわかりません。

それで、このような環境下で子供に会社を継がせたら、ただ苦労を味わわせるだけになってしまうので、無理強いして子供に事業承継をすることはやめよう、という考え方に転じる経営者も出てきています。

【関連】事業承継に関する課題と現状を徹底解説!

6. 事業承継の構成要素

事業承継の構成要素

ここでは、「事業承継の構成要素」についてまとめます。事業承継の定義で触れたように、事業承継で引き継がれるものは、以下のように大きく3つに分けられます。

  1. 経営の承継
  2. 資産の承継
  3. 知的資産の承継
それぞれの詳細を確認しましょう。

①経営の承継

事業承継の構成要素の一つが経営の承継です。これは「人の承継」とも呼ばれ、会社の経営を受け継ぐ後継者・新経営者のことを指しています。経営の承継を実現させるためには、「経営権」と「後継者選定・育成」が重要です。

経営権

経営権とは、会社の経営者が持つ権利のことです。基本的には、会社株式の保有率が3分の2を超えるとき、その会社の経営権を完全に掌握したことになります。事業承継の際には、前経営者から後継者に、この経営権が委譲されるのです。

後継者選定・育成

事業承継において、後継者の選定・育成は非常に重要なものです。特に中小企業では、経営者の手腕が会社の業績に大きく影響します。

会社の経営理念やビジョン、経営方針を引継ぎ、一貫した経営を実施できる後継者を探すことは最重要課題です。また、事業をさらに発展させる・経営方針を一貫する後継者を育成することも、事業承継を成功させるために重要な要素にほかなりません。

②資産の承継

事業承継の構成要素の一つが、資産の承継です。ここでいうところの資産とは会社が持つ資産のことで、「財産権」「株式」「事業用資産」「資金」「許認可」などがあります。

財産権

会社が持つ資産の一つが財産権です。財産権とは、会社が持つ債権や著作権・特許権のような会社が保有する権利です。事業承継が実施される場合、上記で解説した経営権のほかに、この財産権も後継者に受け継がれることになります。

株式

事業承継後に、後継者がしっかりと会社を経営できるようにするためには、株式の移転が非常に重要です。株式は上記で説明した経営権と結びついています。

意思決定をスピーディーにしたり、これまでの経営方針を一貫して継続したりするためには、後継者が経営権を確保できるだけの株式を委譲することは必須です。

事業用資産

会社の資産の一つである事業用資産とは、会社が保有する工場や機械、事務所や店舗などの不動産などです。事業承継が実施される際には、この事業用資産も後継者に相続されます。

資金

当然のことながら、会社が保有する資金は会社の資産であり、事業承継の際に移転されます。

許認可

事業を行う際には、国や都道府県から許認可を得る必要があります。事業承継の際には、事業を運営していくうえで必要な許認可があるか、許認可に定められている要件は満たされているか、などの確認が必要です。

③知的資産の承継

知的資産の承継も、事業承継の構成要素の一つです。知的資産とは、無形資産と同様のもので、「経営理念」「特許」「会社が持つノウハウ」「顧客情報」「人脈」などがあります。

経営理念

事業承継の構成要素である知的資産には、この経営理念が含まれています。これまで解説してきたように、事業承継という言葉は、経営理念のような抽象的概念をそのまま受け継ぐことです。

また、事業承継の際には、経営理念を一貫してくれる後継者を見つけることで、社内や取引先からの反発を防ぐことも可能になります。

特許

事業承継の構成要素である知的資産には、特許も含まれます。特許は、会社の経営を支えるためにも重要な要素の一つなので、事業承継の際にはしっかり引き継ぐ必要があるものです。

ノウハウ

知的資産には、会社が持つノウハウも含まれます。ノウハウは会社の業績に直結する知的資産であるため、特に、社外の人間を後継者として事業承継する場合には、このノウハウをしっかりと引き継ぐ作業が重要です。

顧客情報

ノウハウと同様に、顧客情報も事業承継の際にしっかりと引き継ぐ必要のある知的資産といえます。

人脈

事業承継の構成要素である知的資産の中には、人脈も含まれます。人脈も、会社の業績に関わってくる部分です。そのため、事業承継後も、これまで築き上げてきた人脈を大切にする後継者を探し出す必要があります。

【関連】事業承継での知的財産権とは?知っておくべきポイントや流れを徹底解説

7. 事業承継の流れ

事業承継の流れ

この章では、実際に事業承継を行う際のシミュレーションとして、具体的な事業承継のプロセスについて、確認します。各社の状況・環境により細部では差異も生じますが、一般的な事業承継のプロセスの流れは、以下のようなものです。

  1. 会社の状況を把握する
  2. 後継者候補を選定
  3. 事業承継計画書を作成
  4. 関係者へ説明
  5. 経営を改善
  6. 具体的作業に着手

それぞれの概要を説明します。

①会社の状況を把握する

まずは、現在の会社の状況を冷静に分析し把握しましょう。具体的には、以下の項目についてです。

  • 会社の資産状況
  • 株式保有状況
  • 株式評価額
それぞれの数値は、経営者であれば頭に入っているでしょうが、漫然としていると見過ごしている部分もあるかもしれませんので、あらためて財務諸表を一から確認するのをおすすめします。

なお、非上場企業の株式評価額については、経営者といえども簡単に算出できるものではないので、専門家に評価を依頼するようにしましょう。

【関連】企業価値算定を無料で!「カンタン会社査定シミュレーター」|M&A総合研究所

②経営者候補の選定

後継者候補選びは、事業承継の最も重要なプロセスといっても過言ではありません。冷静に、経営者としての資質を見定めなければなりません。

具体的な方策としては、まず役員にして経営を一部、担当させてみるのがよいでしょう。実際に経営をしている様子を見て確認すれば、納得のいく選定ができます。

そして、この段階で親族や社内に適切な後継者がいないことがわかった場合、公的機関やM&A仲介会社に相談するのが得策です。

事業承継の大事な要素である経営理念の引継ぎがきちんと行われるためには、実績ある専門家のもとで後継者探しをすることが肝要です。

③事業承継計画書を作成

事業承継は会社にとっての一大プロジェクトです。したがって、その計画書作成も大切なプロセスであり、計画がしっかり立案されていれば、失敗の可能性を下げられます。

そして、すでに分析した会社の状況を踏まえて、事業承継計画書は後継者とともに作成することが肝要です。この段階から後継者にも参加させることで、次期経営者としての覚悟や心構えも定まります。

また、事業承継計画自体に後継者の希望や意見も盛り込むことも大事なポイントです。

④関係者へ説明

事業承継が確定的状況になったのなら、次に重要なプロセスは、社内外の関係者への説明です。この関係者とは、社内であれば従業員、社外では取引先になります。

特に気をつけることは説明を行うタイミングです。あまりにも早いタイミングで突然、説明を行ってしまうと、それぞれに動揺が走り、予期せぬ事態に発展してしまうかもしれません。

したがって、このタイミングの見極めはとても重要です。後継者とも協議し、しかるべきタイミングを定めましょう。また、それまで情報が漏れることがないように努めることも必要です。

⑤経営を改善

後継者がより力を発揮して経営に集中できるようにするためには、今、会社にある問題点は事業承継する前に解決・改善するべきです。仮に100%の解決・改善が無理であったとしても、後継者に無理を押しつけるような事業承継だけは避けましょう。

ネックになりやすいのは、財務面の不安定さです。近年では、事業承継を実施する際に利用できる公的な補助金制度もあります。公的機関や専門家に相談し、少しでも経営状態を良化して後継者にバトンタッチしましょう。

⑥具体的作業に着手

ここまでのプロセスがほどなく完了したら、計画書に基づいて具体的に事業承継実施に取り組みます。注意したいのは、全て計画書どおりの内容・タイミングで進めることに固執し過ぎないことです。

会社経営では、イレギュラーな出来事も日常茶飯事であり、ときには計画書の内容を変更しなければならない事態もあり得ます。そのような場合には、後継者とも相談し、臨機応変に計画書を改変し、支障が生じないように努めてください。

また、困ったり悩んだりするような局面では、専門家に相談したりアドバイスを受けたりするなど、存分に活用しましょう。

【関連】事業承継の手続きを解説!事業承継の方法と相談先も紹介

8. 事業承継に失敗したらどうなる?

事業承継に失敗したらどうなる?

事業承継を行った中小企業を見渡してみると、残念ながら失敗してしまったケースも見受けられます。事業承継を成功させるためにも、それらを分析し反面教師として役立てましょう。

主な失敗理由

事業承継失敗の明らかな原因である事態には、以下のことが考えられます。

  • 後継者の人選ミス
  • 後継者教育の不足
  • 社内周知の不徹底
  • 遺族の相続争い

後継者の人選ミス

後継者の人選ミスには、大別して2つのタイプに分かれます。

一つは、後継者の能力の見誤りが挙げられます。人物や人柄が良く、会社の実務に長けていた後継者だったとしても、経営というスキルは別物です。これが足りていない後継者では事業承継後の経営が危ぶまれます。

もう一つは、後継者の適正の見誤りになります。経営的スキルは申し分のない後継者だったとしても、人望を得られにくい性格の場合、従業員が後継者に協力的にならず、それは業績が低迷する原因になります。

後継者教育の不足

完璧な後継者は、そうそういるものではありません。むしろ、何かしら不足している場合の方が一般的ですから、重要なのは後継者教育です。十分な内容の後継者教育をたっぷりと時間をかけて行うのが理想ですが、日々、さまざまなことが起こる現実の中では、それはなかなか実現しにくいかもしれません。

しかし、あまりにも不十分な後継者教育状態のまま、事業承継してしまうと、その後の会社の経営には暗雲が垂れ込めてしまうでしょう。

社内周知の不徹底

中小企業の経営者の場合、いわゆるワンマン経営状態がほとんどです。その場合、事業承継にあたっても、自分が決めたとおりに、周囲(従業員や取引先など)は難なく受け入れるだろうと思ってしまいがちでしょう。これが問題です。

特に社内の従業員にとって、あまりにも突然でトップダウンの事業承継が実行されると、急な就業環境の変化に気持ちが追いつかず、それがモチベーションの低下になって会社の業績に影響を及ぼすかもしれません。

また、中小企業では現経営者の人物にひかれて働いているケースも多く、急な経営者の交代は、従業員の離職につながる危険性すらあります。

遺族の相続争い

中小企業では、経営者の死去によって、その親族が後継者となることも少なくありません。その場合に、遺産相続人が複数いると一つの問題が発生します。

後継者が会社の経営権を安定して確立するためには、少なくとも株主総会で特別決議ができる3分の2以上の株式が必要です。そして、できるなら100%全ての株式を相続したいところです。

死去した前経営者に遺産が豊富にあり、それをうまく分け合って、後継者が会社株式を望みどおりに相続できればいいのですが、そうでない場合、複数の相続人の間で会社株式の取り合いが勃発するケースも多く見受けられます。

事業承継に失敗した事例

前述した事業承継の失敗理由は、往々にして、それが単独にあって引き起こされるよりも、複合的に絡み合って結果的に失敗を招くことが現実に起きています。いくつか事例を挙げると、実際に以下のような失敗がありました。

  • 後継者に人望がなく、そればかりか従業員が反発して業績悪化の兆しが表れたため、やむなく前経営者が社長に復帰した。
  • 事業承継後、心配のあまり前経営者が口出しし過ぎて社内が混乱する事態となり、後継者が会社を去ってしまった。
  • 経営者の生前に遺産(会社の株式)を子供2人が分け合うことを決めていたが、その結果、経営者の死後、子供2人は協力体制を取らず派閥争いに終始し経営が悪化した。
  • 後継者について何も決めていない状態で経営者が死去したため、会社は事業を続けられず倒産した。

【関連】事業承継の失敗事例10選!失敗要因は?

9. 事業承継を成功させるポイント

事業承継を成功させるポイント

前章のような事業承継の失敗を招かないためにも、下記に挙げる5つのポイントを実践することが肝要です。

  1. 早い段階での準備を行う
  2. 後継者教育を行う
  3. 税金対策をする
  4. 資金を集める
  5. 遺産トラブルを回避する

①早い段階での準備を行う

事業承継には、長期間の準備が必要であり、後継者教育も含めると5~10年かかるともいわれています。

したがって、経営者自身の年齢や健康状態も鑑みたうえで自身のリタイアする時期を定め、そこから逆算して準備にかかりましょう。日々の事業に追われていると、あっという間に時間はたってしまいます。

慌てて事業承継を行うと失敗するリスクが高いのは、これまで述べてきたとおりです。円滑で円満に成功する事業承継を実現するためには、まず、早い段階で準備に取り掛かることが第一の鍵になります。

②後継者教育を行う

事業承継を成功させるためには、後継者教育も不可欠です。万全の体制でバトンタッチするためにも、十分な後継者教育を実施しましょう。

日々の経営の合間に後継者教育を行うことは面倒な点もあるかもしれません。しかし、ここで手を抜いてしまうと、事業承継が失敗する可能性が高まるのは明らかです。

自身がこれまでの経営者経験で得たもの全てを教え込む意識で、後継者教育に臨みましょう。

③税金対策をする

事業承継は経営権を委譲するものですから、必ず会社の株式を後継者に引き渡します。そのとき、発生するのが税金です。事業承継で発生し得る税金には、後継者にかかるものと、現経営者にかかるものがあります。

後継者が課税される可能性があるのは、相続税、または贈与税です。一般の株式を譲渡されたのであれば、これを売却して納税資金に当てられますが、自社の株式を売却することなどできません。つまり、後継者は納税資金を別途、用意する必要があります。

この納税資金が準備できないため、後継者になるのを断念するケースもあるほどですから、何らかの対策を事前にきちんと練っておくことが必要です。

税理士に節税対策を相談するのもいいでしょう。特におすすめしたいのは、後継者の贈与税・相続税が猶予・免除になる事業承継税制の活用です。これについては、後述しますので、内容はそちらをご覧ください。

④資金を集める

事業承継の際に、資金を集める必要がある場面になることもあります。

たとえば、事業承継前の業績拡大のために新商品を出すケースです。当然、それには資金を必要としますが、後継者の負担とならないように、借入金以外で資金集めを考えましょう。

具体的な方法として最も活用したいのは、国の補助金です。現在、事業承継に関する補助金は2種類ありますので、以下に概要を記します。

事業承継補助金

事業承継をきっかけに、経営革新や事業転換に取り組む中小企業を対象とした補助金制度が業承継補助金です。

代表的なものとして、中小企業庁が実施している「事業承継補助金」があります。専用のウェブサイトに詳細が記されていますが、以下の記事でも概要を説明していますので活用してください。

また、国以外でも都道府県、区市町村レベルでも補助金制度は用意されています。会社のある各自治体に問い合わせて調べてみましょう。

【関連】【2020年最新】事業承継補助金とは?採択率や申請書を解説!事例あり

経営資源引継ぎ補助金

2020(令和2)年のコロナ禍の状況を受けて新たに制定された補助金制度が、経営資源引継ぎ補助金です。端的な表現としては、M&A補助金制度とも呼ばれています。

事業再編や事業統合、つまりはM&Aによって、経営資源の引継ぎを実施しようとする中小企業が申請できる補助金です。売り手側、買い手側のどちらも補助金が受けられます。

内容詳細については、こちらも専用ウェブサイトが設けられ確認できるようになっていますが、以下の記事でも概要を説明していますので参照ください。

【関連】M&A補助金制度でコロナ対策!
【関連】事業承継における融資・保証・補助金の制度について徹底解説

⑤遺産トラブルを回避する

経営者死去の場合の事業承継失敗リスクは、前章でも述べたとおりです。したがって、そうならないための回避手段を、経営者が生前のうちにきちんと取っておくことが、最大の成功ポイントになります。

特に、現経営者の財産のほとんどが会社株式で占められていて、複数の法定相続人がいるケースです。後継者1人に株式全てを相続させると、他の相続人には平等に財産が渡らないことになります。

このようなケースでもめないためにも、他の相続人を納得させられる条件を考え、事業承継への理解を得られるように事前に話し合っておきましょう。

また、経営者が生前に遺言書を残しておくことも一つの手段です。

遺言書の作成

特に親族への相続によって後継者に事業承継する場合は、遺言を残しておくのが確実な方法です。

正式な遺言書は公証役場で作成します。記載する財産の金額にもよりますが、作成料はだいたい20万円程度が相場です。トラブルを回避するための出費と考え、惜しむことなく正式な遺言書を残しましょう。

【関連】事業承継を円滑に行うための遺留分に関する民法の特例とは?簡単解説!
【関連】事業承継の成功事例集30選!成功のポイントまとめ!

10. 事業承継の公的支援

事業承継の公的支援

帝国データバンクの「全国休廃業・解散動向調査(2019年)」によると、2019(令和元)年に「休廃業・解散」した中小企業(個人事業主を含む)は、23,634社(前年比2.6%増)でした。

先述したように、全国の中小企業の後継者不在率は65.2%です。休廃業・解散データと合わせて考えると、とても看過できるものではありません。

日本における企業数の99.7%は中小企業であり、中小企業は日本経済を支える存在です。

そこで、国および各自治体では、中小企業の休廃業・解散を食い止め、事業承継が促進するために、法改正も含めた二方面から事業承継を支援する体制を取っています。

事業承継税制

従前までは、事業承継した後継者には高額の相続税や贈与税の納付負担が課されていました。そのことを憂慮し、事業承継することを断念する後継者候補も少なくなかったのです。それが、法改正によって、事業承継での相続税や贈与税の納付猶予および免除制度が敷かれました。

この制度の恩恵にあずかるには、一定の手続きを行ったうえで各自治体の知事の承認を得るという条件はあるものの、納税負担で事業承継をためらっていた後継者候補にとっては、うれしい追い風となっています。

【関連】【中小企業庁】事業承継税制とは?相続税・贈与税の納税猶予(特例)を徹底解説!

自治体による公的事業承継支援

各中小企業によって事業承継事情はさまざまです。後継者がいる場合でも、具体的な手続きの進め方や前述の事業承継税制向け書類作成など、よくわからないことが多々あります。

また、M&Aで事業承継を目指すといっても、中小企業にとってM&Aなど初めてのことでしょう。それらのような経営者単独で事業承継を進めるのは困難なことに関し、各自治体では事業承継ネットワークを組成し、細かな事業承継支援事業を行っています。

事業承継ネットワークの支援機関には、各地域の商工会や商工会議所、金融機関が含まれており、経営者が相談に足を運びやすい機関が窓口となっています。事業承継で困ったことがあれば、一度、相談に訪れてみるとよいでしょう。

11. 事業承継のまとめ

事業承継のまとめ

同じ漢字が使われている承継と継承ですが、その意味にはニュアンスの違いがあり、基本的には事業承継と表現するのが適切であることがわかりました。そして、事業承継について述べた本記事の概要は、以下のとおりです。

【事業承継とは】

  • 事業の運営・会社の経営を後継者に引き渡し、それを継がせること
【事業承継の種類】
  • 親族内事業承継
  • 社内事業承継
  • M&Aによる事業承継
【事業承継のプロセス】
  • 会社の状況を把握する~後継者候補を選定~事業計画書を作成~関係者へ説明~経営を改善~具体的作業に着手
【事業承継を成功させるポイント】
  • 早い段階での準備を行う
  • 後継者教育を行う
  • 税金対策をする
  • 資金を集める
  • 遺産トラブルを回避する

M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所

M&A・事業承継のご相談なら経験豊富なM&AアドバイザーのいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。

M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴

  1. 業界最安値水準!完全成果報酬!
  2. 経験豊富なM&Aアドバイザーがフルサポート
  3. 圧倒的なスピード対応
  4. 独自のAIシステムによる高いマッチング精度
>>M&A総合研究所の強みの詳細はこちら

M&A総合研究所は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」のM&A仲介会社です。
M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。

>>【※国内最安値水準】M&A仲介サービスはこちら

Documents
  • 02
  • 04
プレミアム案件・お役立ち情報

関連する記事

関連するキーワード

人気の記事

人気の記事ランキング

新着一覧

最近公開された記事