2023年06月13日更新
OA機器・卸業界のM&A・買収・売却!業界動向・注意点を解説!【事例あり】
近年のペーパレス化の進展などが影響し、OA機器・卸業界の市場規模は縮小傾向にあり、業界ではM&Aの注目度が高まっています。この記事では、OA機器・卸業界のM&A・買収・売却について、業界動向やM&Aを行い際の注意点を解説しています。
目次
1. OA機器・卸業界とは
OA機器とはオフィスオートメーション機器の略であり、オフィス内の作業効率の改善や生産性向上のために使われています。働き方改革が注目を集める今の世の中において、OA機器はどの職場にも欠かせないツールとなっています。
この記事では、OA機器・卸業界のM&A・買収・売却について解説しますが、まずはOA機器・卸売業とはどのような業界なのか、定義と現状を説明します。
OA機器・卸業界の定義
OA機器の卸売業を営む業界がOA機器・卸業界であり、OA機器の代表例にはPCや電話・コピー機などがあります。
現代においては、これらのOA機器がない企業というのは存在しないのではないかというほど、業界・会社規模などを問わず、ほぼ全ての会社がOA機器を導入しています。
OA機器・卸業界の現状
現在のOA機器業界は約8兆円ほどの業界規模を誇りますが、直近5年程度では若干の縮小傾向となっており、ここ数年はほぼ横ばい(僅かながら微減)という状況です。ここでは、具体的に3つの観点からOA機器・卸業界の現状について確認します。
【OA機器・卸業界の現状】
- ペーパーレス時代の影響を受ける
- 時代に合わせた戦略が必要
- 営業スタイルの転換期が来ている
1.ペーパーレス時代の影響を受ける
日本国内では、紙媒体の縮小いわゆるペーパレス化の動きが急伸しています。これは、OA機器の代表的商品であるコピー機やファクシミリの需要を大きく減少させていることを意味します。
特に、コピー機はOA機器業界のなかでも市場規模が大きかったことから、かかる需要減は多くのOA機器・卸業社に影響を与えるものとなっています。
2.時代に合わせた戦略が必要
従前はそこまで顧客ニーズに多様性はありませんでしたが、今では時代に合わせたさまざまなニーズが存在しています。そのため、OA機器・卸業界各社は、多様なニーズを汲み取って適切な商品を市場に供給する必要がでてきています。
例えば、顧客情報の流出を防止するためのセキュリティ機能に関するニーズや、ほかOA機器との連携を図るためのクラウドサービスに関するニーズなどが挙げられます。
OA機器・卸業界各社においては、顧客ニーズに重視した商品開発および販売が、ますます重要になってきています。
3.営業スタイルの転換期が来ている
従前までは、汎用的なOA機器を開発し、それを市場に供給していくプロダクトアウト的な営業スタイルが一般的でした。
しかし、顧客ニーズの多様化によって、OA機器業界全体が顧客のニーズを汲み取りそれに合わせて商品を開発・販売していく、マーケットインアプローチによる営業スタイルに転換してきています。
また、他業界との連携することによる、OA機器の販売を通じたソリューション営業(経営課題の解決に資する総合提案)にも注目されています。
OA機器・卸業界は、その商流のなかでも消費者と生産者の間にいる立場であり、消費者やメーカーの意向を上手に聞き、業界全体をリードしていく役割が求められます。
2. OA機器・卸業界のM&A・買収・売却動向
外部環境の変化が激しいため、OA機器・卸業界ではさまざまな側面で改革や業態転換などが求められています。この章では、OA機器・卸業界のM&A・買収・売却動向について解説します。
【OA機器・卸業界のM&A・買収・売却動向】
- 後継者不足に悩む経営者が多い
- 市場の成熟化に伴う業界再編の動き
- アジア市場への開拓
1.後継者不足に悩む経営者が多い
現在OA機器・卸業界では、経営者層の高齢化が深刻化していますが、後継者がみつからない企業が多く存在します。
そのため、事業承継戦略の一環として第三者への売却(M&A)を検討するOA機器・卸業社が増えています。
2.市場の成熟化に伴う業界再編の動き
OA機器業界は約8兆円の業界規模を誇る一大産業ですが、2014年をピークに徐々に縮小傾向となっており、市場が成熟期に入ったとみられています。
このような環境下、OA機器業界では市場シェアの維持・拡大を展望する企業が増加しており、同業他社のM&Aに注目度が高まっています。
また、前述のように他業種との連携によるソリューション営業への関心も高くなっているため、同業のみならず他業種とのM&Aも同様に注目されてきています。
3.アジア市場への開拓
人口減少と需要縮小が続く国内市場とは対照的に、海外市場、特にアジア市場は人口増加と経済発展が著しくなっています。
日本産のOA機器は世界でも非常に知名度が高いこともあり、アジア市場に進出するOA機器・卸業社が増加傾向にあります。
そのような背景により、海外での事業拡大に資するM&A(含むクロスボーダーM&A)についても、以前よりも注目されてるようになってきています。
3. OA機器・卸業界でM&Aを行うメリット
M&Aを行う目的は企業によってさまざまですが、一般的には、M&Aの売り手は事業承継や創業者利益の確保、M&Aの買い手は事業拡大や新事業展開などが挙げられます。
では、OA機器・卸業界でM&Aを行うメリットはどのようなものがあるのでしょうか。この章では、売り手と買い手それぞれのメリットについて解説します。
売り手のメリット
OA機器・卸業界でM&Aを行う際、売り手の主なメリットとしては以下の5つが挙げられます。
【OA機器・卸業界でM&Aを行うメリット(売り手)】
- 廃業・倒産を回避する
- 後継者問題を解決
- 従業員の雇用先を確保
- 大手資本による事業規模の拡大
- 売却益の獲得
1.廃業・倒産を回避する
M&Aにて会社を売却するメリットとして挙げられるのは、業績悪化による廃業・倒産の回避です。OA機器・卸業界は成熟期に突入しており、じりじりと業界規模は縮小傾向が続けています。
そのため、縮小する市場シェアを奪い合う価格競争が激化しており、その競争から淘汰され業績が低迷する企業が増えています。
M&Aで会社を売却すれば、資金面・事業面などのさまざまなサポートを買い手から享受することができるようになるので、事業継続性の向上につながります。
2.後継者問題を解決
OA機器・卸業社がM&Aを行う2つ目大きなメリットとしては、後継者不足の解決があります。近年では、OA機器・卸業界の多くの企業が、経営者の高齢化と後継者不足に頭を抱えています。
たとえ業績が順調だったとしても、後継者が現れなければ廃業は免れません。親族内や社内の人間への事業承継をしたい思いがあっても、親族にも会社役員・従業員にも後継者候補がいない企業は、M&Aによる事業承継を検討する必要があります。
M&Aによる事業承継では、幅広いなかから相手先企業を探すため、自社にあった承継先をみつけやすいメリットがあります。
OA機器・卸業界には後継者問題を抱える企業が多くあるため、M&Aは自社を存続させる有効な手段といえるでしょう。
3.従業員の雇用先を確保
廃業・倒産の回避や後継者問題を解決とも関係しますが、M&Aは従業員の雇用維持にもつながります。業績低迷や後継者不足によって会社が廃業・倒産してしまえば、従業員は解雇しなければなりません。
M&Aを行えば従業員の雇用も買い手へ引き継ぐことができるため、会社の廃業・倒産を防ぐだけでなく、事業だけでなく従業員の生活を守ることにもなります。
4.大手資本による事業規模の拡大
OA機器・卸業界は、市場シェアの拡大を睨んだ競争激化が進展しています。このような過当競争では資本力や企業規模の大きい企業が有利になる場合が多く、中小・零細企業のOA機器・卸業社は劣勢に立たされる可能性が高いと考えられます。
大手企業へM&A(会社売却)を行うことで、スケールメリットを活かした事業拡大を図ることができ、資金面でのバックアップを受けることも可能になります。
市場の縮小がますます進むことが予想されるOA機器・卸業界において、M&Aを行うメリットは高いといえるでしょう。
5.売却益の獲得
M&Aのメリットとして最後にあげるのは、売却益の獲得です。会社の規模や事業内容によって金額は異なりますが、中小企業のM&Aでは一般的には数千~数十億万円の売却益が見込めます。
中小企業の場合は経営者が株主であるケースが多いため、その場合は経営者個人が売却益を得ることができます。
得た利益は生活資金や新たな事業の立ち上げなど、さまざまな目的に使用することができます。
買い手のメリット
次に、OA機器・卸業界でM&Aを行う際の買い手のメリットとして、以下の3つを紹介します。
【OA機器・卸業界でM&Aを行うメリット(買い手)】
- 顧客リストの獲得
- 優秀な従業員の獲得
- 事業規模の拡大
1.顧客リストの獲得
M&Aを行うメリットの1つ目は、新たな顧客を獲得できることです。全国展開をしている大手企業であったとしても、全国をしっかりとカバーしているわけではありません。
M&A(企業買収)は売り手企業の顧客を獲得することになるため、これまで取引のなかった顧客との取引開始につながります。
OA機器・卸業界は地域ごとにシェアも大きく異なるため、M&Aを行うことで新たな市場獲得を図ることが可能です。
2.優秀な従業員の獲得
M&A(企業買収)をすることで、対象事業や資産のみならず、従業員も獲得することもできます。
M&Aによる従業員の獲得は、新卒採用・中途採用による人材確保と異なり、全員が事業経験者であり、かつそのスキルも獲得前からイメージがしやすいのが特徴です。
市場縮小や競争激化が進むOA機器・卸業界各社にとって、即戦力となる従業員の確保は有益といえるでしょう。
3.事業規模の拡大
OA機器・卸業社がM&A(企業買収)を行うメリットとして最後にあげるのは、事業規模の拡大です。同業者をM&Aすれば、新たな市場、新たな顧客、新たな従業員が確保できます。
市場が漸次縮小傾向にある足元のOA機器・卸業界では、市場シェアの拡大が急務であり、M&Aはその問題解決に資するソリューションであるため、M&Aに取り組む意義は十分にあるのではないかと考えられます。
4. OA機器・卸業界でM&Aを行う際の注意点
OA機器・卸業界がM&Aを行う際は、どのような点を抑えておくことが成功につながるのでしょうか。この章では、特に注意すべきポイントを2つ解説します。
【OA機器・卸業界でM&Aを行う際の注意点】
- M&Aの戦略や準備を入念に行う
- 顧客数は重要なので顧客離れを防ぐ
M&Aの戦略や準備を入念に行う
1つ目は、M&A戦略の立案や準備に十分な時間と労力をさく、ということです。ここ数年で注目度が増しているM&Aですが、決して簡単な取引ではありません。
M&Aの対象企業や業界の知識に加えて、M&A取引そのものに関する幅広い知識が必要になってきます。一口にM&Aといってもその手法はさまざまであるため、各企業にあったM&Aスキームを選択することが大切です。
さらに、OA機器・卸業界であれば数多くの在庫やリース資産などを保有していることが考えられるので、企業価値評価に関しては、ほかの業界とは違う性格を持ちます。
M&Aを成功させるためには、事前の準備と十分なM&A戦略立案を心がけることは不可欠といえるでしょう。
顧客数は重要なので顧客離れを防ぐ
2つ目のポイントは、顧客離れを防ぐことです。M&Aは有効な経営戦略であることは近年認知されつつありますが、M&Aに対してネガティブな印象を抱く会社も少なからず存在します。
そういった会社を取引先に保有している場合、説明不足のままM&Aを実行すれば取引がなくなってしまう恐れもあります。
M&Aを行っても、顧客が離れてしまえば効果も薄くなってしまうので、取引先に不信感を抱かせないためにも、丁寧な説明を心がけることが大切です。
5. OA機器・卸業界のM&A・買収・売却事例
近年実際に実行された、OA機器・卸業界のM&A事例について確認していきましょう。
フォーバルによるえすみのM&A
2020年、経営コンサルタント集団のフォーバルは、えすみの株式100%を取得し、完全子会社化しました。
えすみは、山陰地方を中心にOA機器の販売および保守事業、ネットワークインフラの設計・構築・保守事業などを営んでおり、また、流通機器、各種サプライ品、レジ等の幅広い分野の関連商品販売を行う子会社を抱えている企業です。
フォーバルはこのM&Aによって、えすみが抱える山陰地方の顧客ネットワークの獲得、フォーバルの中核事業であるアイコンサービスの事業拡大を企図しています。
フォーバルによるシステムサポート札幌のM&A
2019年、フォーバル(前出)は、OA機器・卸業社のシステムサポート札幌の株式100%を取得し、完全子会社化しました。
システムサポート札幌は、コピー機(OA機器)の販売・リース・レンタルを中核事業とし、関連事業であるネットワークセキュリティ機器の販売・保守やWEBコ ンサルティングなども展開する北海道の企業です。
このM&Aによってフォーバルは、システムサポート札幌が保有する北海道地域の顧客基盤の獲得、スケールメリットを活かした事業効率化や利益率改善などによって、事業基盤の一層の強化を展望しています。
エヌオーエス(スターティアHD)による東和オフィスマシンのM&A(事業譲受)
2019年、スターティアHD傘下のエヌオーエスは、東和オフィスマシンからOA機器販売事業を譲り受けました。
エヌオーエスは、鹿児島市を拠点に中小企業向けのOA機器販売を営むOA機器・卸業社であり、ITインフラ関連事業を手がけるスターティアの連結子会社(孫会社)です。
事業譲渡側である東和オフィスマシンも、同域内で複合機・PC・OA機器等の販売・保守事業を行なっている業者です。
スタータティアHDは、同地域で同事業を営む東和オフィスマシンからOA機器販売事業を譲受することで、同地域でのシェア拡大・事業拡大を目指しました。
ジェイズ・コミュニケーションによるアステムのM&A
2019年、セグエグループ傘下のジェイズ・コミュニケーションは、九州・中国地方を中心にOA機器・ネットワーク機器の販売を手がけるアステムの株式100%を取得し、完全子会社化しました。
セグエグループは、「安全で快適な情報環境の提供」を経営テーマとして掲げるITソリューション企業グループであり、今次M&Aの買い手企業であるジェイズ・コミュニケーションは、セグエグループの中核企業にあたります。
セグエグループはこのM&Aを通じて、アステムが保有する顧客基盤の獲得および強固な事業基盤の構築、さらに中長期的な双方の事業拡大を図りました。
ムサシによるニュービジネスサプライのM&A
2017年、情報・産業システム機材を扱うムサシは、ニュービジネスサプライの株式100%を取得し、完全子会社化しました。取得価額は21億円です(ムサシの手がけたM&Aの中では、過去最大規模)。
ニュービジネスサプライは、富士フイルムビジネスサプライから感圧紙などの製造販売を行う洋紙事業や、プリンター(OA機器)の開発および販売を行うプリンターシステム事業などを承継する企業です。
ムサシは、このM&Aによって更なる事業拡大を展望する他、新たな顧客層の囲い込みや新規の市場開拓など、各事業においてシナジーの創出も睨んでいます。
6. OA機器・卸業界のM&Aを成功させるには
OA機器・卸業界のM&Aには多領域の専門知識が必要になるので、M&Aの専門家に相談して進めることをおすすめします。
OA機器・卸業界のM&Aを検討される場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所は、主に中小・中堅規模のM&Aと扱うM&A仲介会社です。経験豊富なM&Aアドバイザーが専任につき、丁寧にフルサポートいたします。
OA機器・卸業界でM&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所の無料相談をご利用ください。
7. まとめ
OA機器・卸業界のM&A・買収・売却の動向について解説しました。
時代の変化に伴いOA機器・卸業界は現在、業界再編期に突入しておりM&Aが活発化しています。ペーパレス化の進展などは今後も続くと見込まれており、今以上にM&Aの注目度が高くなると予想されます。
M&Aは、売り手にとっては、後継者不足や従業員雇用維持への対策、買い手にとっては、事業拡大や顧客基盤強化の一手になることから、適切な戦略立案のもとM&Aに取り組んでいけば、双方(買い手と売り手)にとって有益な取引になる可能性は高いと考えられます。
中長期的な目線を持って、M&Aに取り組んでいきましょう。
【OA機器・卸業界の現状】
- ペーパーレス時代の影響を受ける
- 時代に合わせた戦略が必要
- 営業スタイルの転換期が来ている
【OA機器・卸業界でM&Aを行うメリット(売り手)】
- 廃業・倒産を回避する
- 後継者問題を解決
- 従業員の雇用先を確保
- 大手資本による事業規模の拡大
- 売却益の獲得
【OA機器・卸業界でM&Aを行うメリット(買い手)】
- 顧客リストの獲得
- 優秀な従業員の獲得
- 事業規模の拡大
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