会社分割の手続き方法やスケジュールを解説!流れ、メリットも【吸収分割/新設分割】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

会社分割について、手続きの方法やスケジュールなどを紹介します。スキームに分けて、吸収分割・新設分割の概要にも触れました。そのほかには、会社分割で発生する登録免許税も取り上げています。手続きとスケジュールなどを把握して自社の会社分割に生かしてください。

目次

  1. 会社分割とは
  2. 会社分割の手続きのスケジュール
  3. 会社分割の手続き方法・流れ
  4. 会社分割の手続きにかかる登録免許税
  5. 会社分割の手続きで負担する不動産取得税
  6. 会社分割の手続きを選ぶメリット・デメリット
  7. 会社分割の手続き・スケジュールに関する相談先
  8. 会社分割の手続き方法やスケジュールまとめ
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1. 会社分割とは

会社分割とは、事業に関する権利義務の一部やすべてを、他社に移転させる手法です。会社分割は、さらに権利義務の移転先によって、吸収分割と新設分割スキームに分類されます。

2つの会社分割には、どのような特徴が見られるのでしょうか。この章では、各スキームの概要を解説します。

吸収分割とは

吸収分割とは、株式会社と合同会社が、既存の会社に権利義務を移転させるスキームです。吸収分割は、新設分割とは異なり、一部の許認可であれば再取得や申請を経ずに承継されます。

このような特徴を持つ吸収分割は、対価を受ける相手によって、以下2つのスキームに分けられます。

  • 分社型吸収分割
  • 分割型吸収分割

分社型吸収分割

ひとつ目は、分社型吸収分割です。権利義務を移転させた分割会社に対し、既存の承継会社から対価(株式など)を割り当てる会社分割とされています。

分社型吸収分割は、グループの組織再編に用いられる会社分割です。親会社や子会社が事業を移転させ、ひとつの会社に事業を集約させているといえるでしょう。

そのほかには、不採算部門の切り離しや、独占禁止法の回避などのために、分社型吸収分割が利用されています。

分割型吸収分割

2つ目は、分割型吸収分割です。既存の承継会社が、分割の対価を権利義務の移転を行った分割会社の株主へ、交付する会社分割とされています。

分割会社の株主へ対価を交付する「人的分割」は、現在会社法では定められていません。ただし、分割の対価を分割会社へ交付する「物的分割」を行い、分割会社の株主へ、余剰金の配当を実施すれば、人的分割と同じ効果が得られます。

新設分割とは

新設分割は、設立した新会社に、分割会社の権利義務を移転させる手法です。このような特徴を持つ新設分割は、対価を支払う相手や分割側の数によって、以下3つの種類に分けられます。

  • 分社型新設分割
  • 分割型新設分割
  • 共同新設分割

分社型新設分割

分社型新設分割とは、新設した会社が分割会社に対して移転させた権利義務の対価を交付する会社分割をいいます。特定の事業のみを独立させる場合や、後継者に子会社を任せる場合などに用いられるのが、分社型新設分割の特徴です。

特定の事業を新設する会社に移せば子会社に経営管理を任せられるため、責任の所在を明確にできたり、意思決定の速度を早められたりする会社分割といえるでしょう。

分割型新設分割

2つ目には分割型新設分割です。新設した会社が、分割会社の株主に対し、移転させた権利義務の対価を支払う会社分割をさしています。

分割型新設分割は、分割型吸収分割と同じく人的分割に該当します。物的分割と余剰金の配当を併用し、人的分割と同様の効果を得ているといえるでしょう。

分割型新設分割を利用するケースには、グループ内で兄弟会社を設立したり複数の後継者に一つの事業を任せたりする場合が挙げられます。

共同新設分割

共同新設分割とは、複数の会社が共同で分割会社になり、新設する会社に事業の権利義務を移転させる会社分割をさします。共同新設分割も、対価を支払う相手により分類がされ、通常の新設分割と同様、分社型と分割側に分けられるでしょう。

共同新設分割では、複数の会社が同じ事業を移転させるため、M&Aや資本提携の手法と見なされます。そのほかには、組織再編の一環としても利用されている会社分割といえるでしょう。グループ会社が共同で新会社に事業の権利義務を移し、新設会社の株式を他社へ譲り渡しています

【関連】会社分割(吸収分割・新設分割)とは?わかりやすく解説!

2. 会社分割の手続きのスケジュール

会社分割の手続きは、どのようなスケジュールで行われるのでしょうか。吸収分割・新設分割の会社分割手続きは、以下のような流れで進められます。

会社分割を行う際は、事前にスケジュールを把握して大まかな流れを確認しておくようにしましょう。

会社分割・手続きのスケジュール
吸収分割 新設分割
手続きの流れ スケジュールの内容 スケジュールの内容
会社分割のスケジュール① 分割契約書の作成 分割計画書の作成
会社分割のスケジュール② 分割契約の内容について、取締役会の決議で承認を得る(取締役会設置会社のみ) 分割計画の内容について、取締役会の決議で承認を得る(取締役会設置会社のみ)
会社分割のスケジュール③ 分割契約の締結 分割契約の締結
会社分割のスケジュール④ 分割内容の事前開示・備置 分割内容の事前開示・備置
会社分割のスケジュール⑤ 労働者・労働組合への通知(分割会社のみ) 労働者・労働組合への通知
会社分割のスケジュール⑥ 株主総会の招集に向けた取締役会決議(取締役会設置会社のみ) 株主総会の招集に向けた取締役会決議(取締役会設置会社のみ)
会社分割のスケジュール⑦ 株主総会の特別決議で、分割契約の承認を得る 株主総会の特別決議で、分割契約の承認を得る
会社分割のスケジュール⑧ 債権者保護手続き 債権者保護手続き
会社分割のスケジュール⑨ 株主への通知・公告 株主への通知・公告
会社分割のスケジュール⑩ 新株予約権者への通知・公告(分割会社のみ) 新株予約権者への通知・公告
会社分割のスケジュール⑪ 公正取引委員会へ届出(条件に該当する場合のみ) 公正取引委員会へ届出(条件に該当する共同新設分割のみ)
会社分割のスケジュール⑫ 効力の発生日 分割会社の分割登記・新設会社の新設登記
会社分割のスケジュール⑬ 分割登記 効力の発生日
会社分割のスケジュール⑭ 分割契約の事後開示と備置 分割契約の事後開示と備置
会社分割のスケジュール⑮ 買取請求への支払い 買取請求への支払い
会社分割のスケジュール⑯ 分割無効の訴え 事前・事後の書面備置の完了
会社分割のスケジュール⑰ 事前・事後の書面備置の完了  

3. 会社分割の手続き方法・流れ

会社分割を行うには、いくつかの手続きを経なければなりません。この章では、吸収分割と新設分割のそれぞれで必要となる手続きを解説します。

吸収分割の手続き方法・流れ

吸収分割の手続きは、以下のような手順で行われます。ここでは、各手順を詳しく解説しています。

  • 各社の取締役会の承認
  • 吸収分割契約の締結
  • 吸収分割契約書などの事前開示および・備置
  • 株主総会の特別決議・承認
  • 反対株主の株式買取請求通知
  • 債権者保護手続き
  • 新株予約権証券提出手続き
  • 分割対価の割当
  • 登録質権者などに対する手続き
  • 吸収分割の効力発生
  • 吸収分割書面などの事後開示および、備置
  • 各社の変更登記
  • 会社分割無効の訴え

各社の取締役会の承認

会社分割で吸収分割を選択した場合、まずは当事会社の取締役会における承認を得ます。会社に取締役会を設置している場合は、吸収分割契約を結ぶ前に、取締役会の承認を得る必要性が、会社法第362条第4項により定められています。

分割・承継会社で契約書を作成し内容を決定したら、各会社の取締役会で吸収分割契約の承認を得るのが必要です。

吸収分割契約の締結

次に、吸収分割契約の締結を行います。吸収分割契約の締結では、分割会社と承継会社で取り決めた内容に基づき、吸収分割契約を結びます。

吸収分割契約書作成に関する条件

吸収分割の契約書を作成するにあたり、まず契約内容を取り決める必要があります。吸収分割の場合は新設分割とは異なり、既存会社に資産などを移転させるため、分割契約書を作成しなければなりません。

契約内容を取り決めて分割契約書を作成したら、次は分割契約の締結へと進みます。

吸収分割契約の内容

吸収分割の契約では、上記で取り上げた内容のほかに、以下のような事項を記載します。

  • 分割会社と承継会社の商号
  • 分割する資産・債務、雇用契約、そのほかの権利義務
  • 承継する自己株・承継会社の株式
  • 交付される対価(承継会社の株式・社債・新株予約権付社債・金銭・そのほかの財産)
  • 新株予約権(分割会社の新株予約権者に、承継会社の新株予約権を交付する場合)
  • 効力の発生日
  • 効力発生日に行う事項

効力発生日に行う事項は、全部取得条項付種類株式の対価に承継会社の株式を交付する場合承継会社の株式を余剰金の配当として交付する場合の2つが定められています。

前者は、株主総会の決議を経て取得した全部取得条項付種類株式の対価として承継会社の株式が交付される場合、分割契約書に内容を記載することが義務付けられています。

後者は、承継会社の株式を余剰金の配当として交付する場合ですが、人的分割と同じ効果が得られるケースには、分割契約書に内容を記すことが求められるでしょう。

吸収分割契約書などの事前開示および・備置

会社分割で吸収分割を選択した場合、吸収分割契約書などの事前開示および・備置が義務付けられています。吸収分割に関わる当事会社では、定められた期間において、契約書や各事項を記した書類を本店に置いておくことが求められます。

必要な備置期間

必要な備置の期間は、備置を始めてから効力発生日後の6カ月までとされています。備置を始める日は、下表に挙げる日のうち一番早い日を備置の開始日とすることが決められています。

  備置開始日の候補
分割会社の場合 ・株主総会の2週間前
・株式、新株予約権の買取請求の通知と公告日の早い方
・債権者保護手続きの公告と催告の早い方
・どれにも該当しない場合は、吸収分割契約の締結日から2週間後
承継会社の場合 ・株主総会の2週間前
・株主への通知と公告の早い方
・債権者保護手続きの公告と催告の早い方

事前開示する内容

吸収分割で事前に開示する内容には、以下の事項を記載することが定められています。承認会社が株式会社の場合と持ち株会社の場合では、記載する必要がある事項が異なるため注意が必要です。

  • 分割契約書
  • 効力の発生日に株式の取得を定める場合には、その旨を記載する
  • 余剰金の配当について株主総会の決議が行われる場合は、配当財産の種類と帳簿価額の総額、財産の割り当てに関する事項、配当の効力日
  • 余剰金の配当で異なる株式を発行する場合は、配当を行わない株式の種類とその理由、株式ごとに異なる取り扱いをすることを明記する

【承継会社が株式会社の場合】
  • 対価として用いられる株式の数・算定方法・承継会社の資本金と準備金の額
  • 対価として用いられる社債の種類・算定方法・種類ごとの合計額
  • 対価として用いられる新株予約権の数・算定方法・内容
  • 対価として用いられる新株予約権付社債の種類・算定方法・種類ごとの合計額と新株予約権付社債に付いている新株予約権の数・算定方法・内容
  • 対価として用いられる株式以外の財産に関して、数と内容もしくは、額、算定方法
  • 分割会社が新株予約権を発行している場合は、対価として用いる株式についての相当性を明記する
  • 承継会社の計算書類に関する事項
  • 分割会社に生じた最終事業年度の末日後の、重要な財産の処分・重大な債務などの内容
  • 効力日以後の、分割・承継会社の債務履行の見込みにおける理由
  • 備置の開始から上記の書類・事項に変更が生じた場合

【承継会社が持分会社の場合】
  • 合名会社における社員の氏名または名称・住所・出資額
  • 合資会社における社員の氏名または名称・住所・有限および無限社員の明記・社員の出資額
  • 合同会社における社員の氏名または名称・住所・出資額
  • 対価に金銭などを用いる場合は、社債の種類および種類ごとの合計額と算定方法、社債以外の対価では内容に加えて、数か額または算定方法

株主総会の特別決議・承認

会社分割で吸収分割を選択した場合は、吸収分割会社の株主総会の特別決議・承認が必要です。吸収分割を行う場合は、効力の発生日までに株主総会の特別決議で承認を得なくてはなりません。

特別決議とは、議決権を行使できる株主の過半数が出席し、出席した株主の議決権のうち、2/3以上の賛成によると決められています。

株主総会で決議する内容

当事会社(分割・承継会社)は、株主総会の特別決議で、吸収分割契約の締結に関して承認を得る必要があります。株主総会では、承継会社の取締役には、説明義務が課せられています。

【取締役の説明義務】

  • 承継する債務の額が、承継する資産の額を上回る場合
  • 対価に用いる金銭などの帳簿価額が、承継する資産-負債を超える場合
  • 承継する資産に承継会社の株式が含まれる場合

簡易分割の場合

簡易分割に該当する場合は、株主総会の決議を省略することが認められています。簡易分割の条件は、以下の通りです。

  • 分割会社の場合:承継する資産の帳簿価格合計額が分割会社総資産額の1/5を超えない
  • 承継会社の場合:「交付する承継会社の株式数×1株あたりの純資産額」「交付する社債・新株予約権・新株予約権付社債の帳簿価額の合計額」「交付するそのほかの財産の帳簿価額」3つの合計額が、承継会社の純資産額の1/5を超えない

略式分割の場合

略式分割は、当事会社における支配関係に応じて、株主総会を省略できる制度です。以下のような要件を満たしていると、略式分割と認められます。

【分割会社側の株主総会の省略】

  • 承継会社や承継会社の完全子会社、これに準ずる会社が、分割会社の総議決権の9割以上を保有する場合

【承継会社側の株主総会の省略】
  • 分割会社や分割会社の完全子会社、これに準ずる会社が、承継会社の総議決権の9割以上を保有する場合

反対株主の株式買取請求通知

会社分割で吸収分割を選択した場合、当事会社の株主には吸収分割に反対する権利が与えられています。反対株主への株式買取請求通知を行う必要があり、効力発生日の20日前までに通知・公告を行うことが定められています。

株式買取請求権の手続き

会社と株主の間で行った協議が成立すると、効力の発生日から60日以内に、株式の代金を支払わなければなりません。ただし、協議が効力の発生日から30日の間に成立しない場合は、会社と株主は裁判所に価格決定の申し立てを行えるとされています(30日が経過するまで)。

新株予約権の買取請求

吸収分割では、株式のほか、新株予約権の買取請求の手続きも必要となる場合があります。新株予約権の買取請求の通知・公告は、以下の事項に該当する場合、効力発生日の20日前までに吸収分割を行う旨・承継会社の商号と住所を、通知か公告によって知らせる必要があります。

  • 分割会社の新株予約権に代えて、承継会社の新株予約権を交付する場合
  • 承継会社の新株予約権の交付を定めているものの、分割会社の新株予約権者に、承継会社の新株予約権を交付する旨が定められていない場合

買取請求の手続きは、新株予約権者から効力発生日の20日前から効力発生日までに、買取請求が行われます。代金の支払いと価格決定の申し立ては、株式の買取請求と同じです。

債権者保護手続き

会社分割で吸収分割を選択した場合は、債権者保護手続きが必要です。吸収分割の異議を述べられる債権者に対し、定められた期間に公告・催告をし、手続きを完了させなくてはなりません。

【公告・催告日】

  • 効力発生日の1カ月以上前

【公告・催告の内容】
  • 吸収分割を行うこと
  • 分割・承継会社の商号と住所
  • 分割・承継会社の計算書類に関する事項
  • 債権者が期間内に異議を述べられること

【手続き完了までの期間】
  • 効力の発生日まで

新株予約権証券提出手続き

会社分割で吸収分割を選択した場合は、新株予約権証券提出手続きが必要になります。以下の2つの条件に該当する場合、定められた期間において新株予約権者へ通知と公告を行うことが義務付けられています

【通知・公告に該当する場合】

  • 吸収分割の契約に、分割会社の新株予約権者に対し、新株予約権に代えて承継会社の新株予約権が交付されることを定めている
  • 新株予約権証券が発行されている

【通知・公告日】
  • 効力発生日の1カ月前まで

ただし、効力の発生日までに新株予約権証券が提出されない場合は、対価の交付を拒否することが認められています

分割対価の割当

会社法で規定している対価は、承継会社の株式のほかに、社債や新株予約権、金銭などがあります。対価の交付時期は、承継会社の対価を吸収分割の効力発生日を過ぎてからとされています。

登録質権者などに対する手続き

会社分割で吸収分割を選択した場合は、登録質権者などに対する手続きが必要になります。分割会社は、登録株式質権者と登録新株予約権質権者に対し、吸収分割を行う旨を通知か公告することが定められており、公告・通知の期限は効力発生日の20日前までと決められています。

吸収分割の効力発生

会社分割で吸収分割を選択した場合、吸収分割の効力は、分割契約書に記された日を効力発生日とされています。分割登記を行った日ではないので、注意するようにしましょう。

吸収分割書面などの事後開示および、備置

会社分割で吸収分割を選択した場合、吸収分割書面などの事後開示および備置が義務付けられています。吸収分割の当事会社は、共同して書面や電磁的記録を作成し定められた期間まで本店に備置することが求められます。

必要な備置期間

書類や電磁的記録の備置は、吸収分割の効力発生日から6カ月間と決められています。

事後開示する内容

事前開示の内容は、以下の通りです。

【事後開示事項】

  • 承継された権利義務に関する事項
  • 吸収分割の効力発生日
  • 株主への通知と広告、株式の買取請求
  • 新株予約権者への通知・公告、新株予約権買取請求
  • 債権者保護手続きの経過
  • 分割登記を行った日
  • そのほかの重要な事項

各社の変更登記

会社分割で吸収分割を選択した場合、各社の変更登記が必要です。吸収分割では、効力発生日の2週間以内に、当事会社の本店所在地で分割の変更登記を行うことと定められています。

分割・承継会社が同じ登記所で登記の変更を行う場合は、同時に行わなければいけません。異なる登記所で変更登記を行う場合には、分割会社が、承継会社の登記所を経由する必要があります。

承継会社側の登記内容

承継会社側は、変更の理由と必要な書類を添付し、次のような内容を変更します。

【登記内容】

  • 登記の理由
  • 分割を行ったこと
  • 吸収分割の効力発生日
  • 分割会社の商号と本店
  • 課税標準金額
  • 登録免許税
  • 登記申請期間

分割会社側の登記内容

分割会社も、変更の理由と必要書類を添えて、次のような内容を変更します。

【登記内容】

  • 登記の理由
  • 分割を行ったこと
  • 吸収分割の効力発生日
  • 承継会社の商号と本店
  • 登録免許税
  • 登記申請期間

会社分割無効の訴え

会社分割で吸収分割を選択したときは、会社分割に瑕疵(かし)がある場合に備えて、会社分割の無効を訴えることが認められています。

無効の判決が下ると会社分割は将来に向かって効力を失うとされるため、交付した自己株式・発行された新株は無効となるでしょう。自己株式は交付した承継会社に還り、新株の効力は失われます。

会社分割無効の訴えは、無効を主張できる期間・訴えられる者・無効の原因と考えられる内容が定められています。

【無効を主張できる期間】

  • 会社分割の効力発生日から6カ月以内

【訴えを起こせる者】
  • 会社分割の効力発生日における、分割契約の当事会社の株主、社員、破産管財人、吸収分割に反対した債権者など

【無効の原因】
会社分割無効の原因は、会社法での定めはありません。ただし、以下のような場合には、明らかな無効です。
  • 分割契約を結んでいない
  • 分割計画を作成していない
  • 分割契約・計画で必要な事項が定められていないなど

新設分割の手続き方法・流れ

新設分割の手続きは、以下のような手順で行われます。ここでは、各手順を詳しく解説します。

  • 取締役会の決議
  • 新設分割計画書の作成
  • 新設分割計画書などの事前開示・備置
  • 労働者への事前通知
  • 新設分割会社の株主総会の特別決議・承認
  • 反対株主の株式買取請求通知
  • 債権者保護手続き
  • 新株予約権証券提出手続き
  • 分割対価の割当
  • 登録質権者などに対する手続き
  • 新設分割の効力発生
  • 新設分割書面などの事後開示・備置
  • 新設会社の設立登記・分割会社の変更登記

取締役会の決議

会社分割で新設分割を選択した場合、まず取締役会の決議を行います。取締役会を設置する会社では、作成した新設分割計画書は、取締役会での承認を得なければなりません

新設分割計画書の作成

次は、新設分割計画書の作成を行います。ここで作成した計画書が、取締役会で承認の決議を経ることになります。

新設分割計画書作成に関する条件

新設分割では、承継させる資産や債務・権利義務・対価などのほか、新会社の定款や組織も定めておく必要があります。新設分割の計画書には、新会社の株式の記載が必須といえます。

これは、新設会社は会社の設立に合わせて株式を発行し、発行された株式が分割会社に交付されるからといえるでしょう。

新設分割計画書の内容

新設分割の計画書には、以下のような事項を記載します。

【記載事項】

  • 新設会社を設立したときの取締役の氏名
  • 新設会社を設立したときの会計参与の氏名(会計参与設置会社の場合)
  • 新設会社を設立したときの監査役の氏名(監査役設置会社の場合)
  • 新設会社を設立したときの会計監査人の氏名か名称(会計監査人設置会社の場合)
  • 新設会社が分割会社から承継する資産・債務・雇用契約・そのほかの権利義務(分割会社の株式と新株予約権は含まない)
  • 新設会社が交付する権利義務・自社の株式数・株式の算定方法・自社の資本金と資本準備金について(種類株式発行会社の場合は、株式の種類と種類ごとの数を含める)
  • 共同新設分割の場合は、それぞれの分割会社に交付する対価の割り当て
  • 新設会社が分割会社に交付する社債
  • 分割会社の新株予約権に代えて交付する、新設会社の新株予約権
  • 分割会社が新設会社の設立日に合わせて、株主総会の決議で全部取得権付種類株式、対価に新設会社の株式・株式に準ずるものを交付する旨
  • 分割会社の株主に、新設会社の株式を交付し、余剰金の配当を行う旨

新設分割計画書などの事前開示・備置

会社分割で新設分割を選択した場合、新設分割計画書などの事前開示・備置を行わなくてはなりません。新設分割における事前の開示では、定められた期間内に必要な書類などを本店に備置する必要があります。

必要な備置期間

必要な備置の期間は、備置を始めてから効力発生日後の6カ月までとされています。備置を始める日は、以下に挙げる日のうち、一番早い日を備置の開始日とすることが定められています。

【分割会社における備置開始日の候補】

  • 株主総会の2週間前
  • 株式、新株予約権の買取請求の通知と公告日の早い方
  • 債権者保護手続きの公告と催告の早い方
  • いずれにも該当しない場合は、新設分割計画の作成日から2週間後

事前開示する内容

新設分割では、開示する内容に以下の事項を記載することが定めてられています。

  • 分割契約書の内容
  • 効力の発生日に株式の取得を定める場合には、その旨を記載する
  • 余剰金の配当について株主総会の決議が行われる場合は、配当財産の種類と帳簿価額の総額、財産の割り当てに関する事項、配当の効力日
  • 余剰金の配当で異なる株式を発行する場合は、配当を行わない株式の種類とその理由、株式ごとに異なる取り扱いをすることを明記する
  • 対価として用いられる株式の数・算定方法・承継会社の資本金と準備金の額
  • 対価として用いられる社債の種類・算定方法・種類ごとの合計額
  • 対価として用いられる新株予約権の数・算定方法・内容
  • 対価として用いられる新株予約権付社債の種類・算定方法・種類ごとの合計額と新株予約権付
  • 社債に付いている新株予約権の数・算定方法・内容
  • 対価として用いられる株式以外の財産について、数と内容もしくは、額、算定方法
  • 分割会社が新株予約権を発行している場合は、対価として用いる株式の相当性を明記する
  • 分割会社に生じた最終事業年度の末日後の、重要な財産の処分・重大な債務などの内容
  • 効力日以後の、分割・承継会社の債務履行の見込みにおける理由
  • 備置の開始から上記の書類・事項に変更が生じた場合

労働者への事前通知

会社分割で新設分割を選択した場合は、労働者への事前通知の手続きが必要です。新設分割では包括的に権利義務が承継されるため、労働者の同意を得ることなく移転します。

労働者の権利を保護する労働契約承継法に従い、労働者の理解を得て協議を行わなければいけません。新設分割の実施は労働者へ通知することが義務付けられており、以下の期間内に行わなければなりません。

【労働者への通知期間】

  • 株主総会の2週間前の前日(株主総会で新設分割計画の承認を得る場合)
  • 新設分割計画書の作成日から2週間を経過した日(株主総会で新設分割計画の承認が不要の場合)

新設分割会社の株主総会の特別決議・承認

会社分割で新設分割を選択した場合、新設分割会社の株主総会の特別決議・承認が必要となるため、効力の発生日までに、承認を得なくてはなりません

特別決議も吸収分割と同じく、議決権を行使できる株主の過半数が出席し、出席した株主の議決権のうち2/3以上の賛成によるとされています。

そのほか、種類株主総会も、以下の場合では特別決議を必要とします。

【種類株主総会の場合】

  • 新設分割の実施により、特定の株主が損害を被る場合
  • 分割会社が種類株式を発行する会社で、ある種類の株式で会社分割を行う場合

株主総会で決議する内容

株主総会で決議される内容は、作成した新設分割の計画です。新設分割計画書の作成で取り上げた承継する資産・債務や権利義務・対価、余剰金の配当などが、決議される内容とされています。

簡易分割の場合

新設分割が簡易分割に該当すると、分割会社における株主総会の特別決議を省略できます。簡易分割の条件は「承継する資産の帳簿価格の合計額が、分割会社の総資産額の1/5を超えない」と定められています。

略式分割の場合

新設分割の場合、略式分割の制度は定められていません。略式分割では、当事会社の間に支配関係が必要となりますが、新設分割の場合は資産などを承継する側に新設する会社をあてがうので、当事会社の間に支配関係が構築されません。

新設分割では略式分割の制度が定められないといえます。

反対株主の株式買取請求通知

会社分割で新設分割を選択した場合は、反対株主の株式買取請求通知手続きが必要です。新設分割では株主に対し、株主総会を開催した日から2週間以内に、株式の買取請求における下記の事項を通知・公告する必要があります。

【株式買取請求の通知・公告】

  • 新設分割を行うこと
  • 設立会社の商号と住所
  • ほかの分割会社の商号と住所(共同新設分割の場合)

株式買取請求権の手続き

株主との間で協議が成立したら、新設会社が成立した日から60日以内に買取の代金を支払わなくてはなりません。

新設会社が設立した日から30日までに株主との協議が成立しない場合は「会社と株主は、新設会社の成立日から30日後を起点に、30日以内までなら価格の決定に関して裁判所への申し立てが行える」手段が設けられています。

新株予約権の買取請求

新株予約権も吸収分割と同じように、新株予約権者を保護するために、買取請求が認められています。分割会社の新株予約権に代えて新設会社の新株予約権を交付する場合には、分割会社の新株予約権者に対して、通知・公告を行うことが必要です。

【通知・公告の期間】

  • 株主総会の決議を行った日から2週間以内

【買取請求に関する期間】
  • 新設会社の設立日から30日までに、協議が成立すれば、新設会社の設立日から60日までに代金を支払う
  • 新設会社の設立日から30日までに協議が成立しない場合は、30日までに裁判所へ価格の申し立てを行う

債権者保護手続き

会社分割で新設分割を選択した場合は、債権者保護手続きが必要です。新設分割では、分割会社の債権者を保護するため、分割に対する異議を述べられる債権者に対し、債権者保護手続きを行うことが義務付けられています

債権者保護手続きの公告・催告は、以下の期間に行い、必要事項を記載します。

【公告・催告の期間】

  • 効力発生日の1カ月以上前

【公告・催告の内容】
  • 新設分割を行うこと
  • 新設会社の商号と住所
  • 分割会社の計算書類
  • 債権者が期間内に異議を述べられること

債権者が定められた期間内に、異議を述べなければ、新設分割を了承したと見なされます。しかし、債権者が期間内に異議を述べると、分割会社は以下に挙げる対応のうち、どれかひとつを取らなければなりません。

【分割会社の対応】
  • 弁済
  • 相当の担保を提供する
  • 債権者への弁済を目的に、信託会社などに財産を信託する

ただし、新設分割が債権者へ害を及ぼさないと判断されれば、異議を述べても上記の対応をせずに済むとされています。債権者保護手続きは、新設会社の設立登記までに、終えなければいけません。設立登記の際に、債権者保護手続きの完了を示す書類を、法務局に提出する必要があります。

新株予約権証券提出手続き

会社分割で新設分割を選択した場合は、新株予約権証券提出手続きが必要です。新設分割で以下の2つの条件に該当する場合、定められた期間内に新株予約権者へ、通知と公告を行う義務があります。

【通知・公告に該当する場合】

  • 新設分割計画に、分割会社の新株予約権者に対し、新株予約権に代えて承継会社の新株予約権が交付されることを定めている
  • 新株予約権証券が発行されている

【通知・公告日】
  • 効力発生日の1カ月前まで

ただし、効力の発生日までに新株予約権証券が提出されない場合は、対価の交付を拒否することが認められています

分割対価の割当

会社法で規定している対価は、新設会社の株式とされています。しかし、対価の一部に新設会社の株式を用いれば、社債や新株予約権、金銭なども利用するのが可能です。対価の交付時期は、新設会社の対価を新設分割の効力発生日を過ぎてからと、決められています。

登録質権者などに対する手続き

会社分割で新設分割を選択した場合、登録質権者などに対する手続きが必要です。分割会社は、登録株式質権者と登録新株予約権質権者に、新設分割を行うことを株主総会の特別決議の日から2週間以内に、通知・公告しなければなりません

新設分割の効力発生

会社分割で新設分割を選択した場合、新設分割の効力が発生する日は、新設分割の設立登記の日とされており、設立登記の日に権利義務が承継され、対価が交付されます。

新設分割書面などの事後開示・備置

会社分割で新設分割を選択した場合、新設分割書面などの事後開示・備置が義務付けられています。吸収分割の場合と同様に、新設分割の当事会社は共同して書面や電磁的記録を作成し、定められた期間まで本店に備置しなければなりません

必要な備置期間

書類や電磁的記録の備置は、新設分割の効力発生日から6カ月間と定められています。

事後開示する内容

事後開示の内容は、以下の通りです。

【事後開示事項】

  • 承継された権利義務に関する事項
  • 新設分割の効力発生日
  • 株主への通知と広告、株式の買取請求
  • 新株予約権者への通知・公告、新株予約権買取請求
  • 債権者保護手続きの経過
  • 分割登記を行った日
  • そのほかの重要な事項

新設会社の設立登記・分割会社の変更登記

会社分割で新設分割を選択した場合、新設会社の設立登記・分割会社の変更登記手続きが必要になります。新設会社と分割会社は、定められた基準日から一定期間内に、本店の所在地で設立・変更登記を行わなければなりません。

新設・分割会社の登記条件

新設・分割会社は、以下の基準日から2週間以内に、本店の所在地で設立・変更登記を行うことが定められています。

【設立・変更登記の基準日】

  • 株主総会の特別決議の日
  • 種類株主総会決議の日(種類株主総会決議を経る場合)
  • 株式の買取請求に対する通知・公告日から20日を経過した日
  • 新株予約権買取請求に対する通知・公告日から20日を経過した日
  • 債権者異議手続きが完了した日
  • 分割会社が定めた日

新設会社の登記内容

新設会社側は、設立登記の理由と必要な書類を添付し、以下の内容を変更します。

【登記内容】

  • 会社を設立したときの登記事項
  • 分割を行ったこと
  • 分割会社の商号と本店
  • 課税標準金額
  • 登録免許税
  • 登記申請期間

分割会社の登記変更の内容

分割会社側の登記変更は、以下のような内容です。

【登記変更の内容】

  • 登記の理由
  • 分割を行ったこと
  • 新会社の商号と本店
  • 登録免許税
  • 登録申請期間

【関連】会社分割における純資産や資本金の引継ぎ方法を解説!

4. 会社分割の手続きにかかる登録免許税

会社分割では、必要な登記の手続きを踏むことで、登録免許税の支払い義務が生じます。では、登録免許税とは、どのような税金をさすのでしょうか。

この章では、会社分割で生じる課税・登録免許税、登録免許税の概要と各スキームの課税額を解説します。

登録免許税とは

登録免許税とは、登記を受ける際に課せられる税金のことです。国税のひとつで、登記ごとに収める税率が異なります。登録免許税の対象となるのは、不動産や特許、著作権、抵当権、免許、資格などの登記・登録です。

会社分割の際には、法人登記と不動産登記における登録免許税を支払います。登録免許税の支払いは、納める税金の額によって納付方法が異なり、3万円以下の場合は収入印紙、3万円を超える場合は現金で納付します。

吸収分割の際の登録免許税

吸収分割を行うと、以下に挙げる登記に合わせて、登録免許税の課税義務が生じます。

  • 法人登記
  • 不動産登記

法人登記

法人登記は、会社を表す重要な情報を、法務局に登録することです。会社同士が安心して取引に臨めるように、会社の設立や登記した内容の変更に伴って、法人登記を行います。

会社分割では、分割・承継会社の両方に法人登記の義務が課せられ、両社に課せられる登録免許税の金額は、以下の通りです。

  • 分割会社の登録免許税:3万円
  • 承継会社の登録免許税:増加した資本金の額の1,000分の7(3万円未満は3万円を納付)

不動産登記

不動産登記とは、土地や建物の状況と所有権などの権利を示すために、登記簿に登記することをさします。会社分割で、土地・建物を移転させると、所有権の移転における登記の変更を行わなければなりません。登記の変更には登録免許税が課せられ、税額は「不動産価額の1,000分の20」で計算されます

軽減措置

中小企業庁は、「平成30年度の中小企業・小規模事業者 税制改正」で、再編や統合における税金の負担を軽減するとしています。経営力を向上させる計画を主務大臣に申請し認められた場合は、負担する税金が軽減されます。

会社分割で発生する登録免許税は、不動産の所有権移転の登記で負担する税金を軽減しているとされており、適用の期限は、2020年の3月31日までです。

【登録免許税の軽減措置】

  • 税率は、1,000分の4

新設分割の際の登録免許税

新設分割の場合も、以下の登記に応じて、登録免許税の課税義務が発生します。

  • 法人登記
  • 不動産登記

法人登記

新設分割の法人登記では、分割・新設会社に以下のような税額が課されます。

  • 分割会社の登録免許税:3万円
  • 新設会社の登録免許税:資本金の額の1,000分の7(株式会社の場合、15万円未満は1申請につき15万円)

不動産登記

新設分割でも、土地・建物を移転させると、所有権の移転登記の変更を行わなければなりません。登記の変更には、登録免許税が課せられ、税額は「不動産価額の1,000分の20」で計算されます

軽減税率も、分割のスキームの違いはなく、吸収分割と同じように適用されます。期間内に経営力を向上させる計画が主務大臣に認められれば、登録免許税の負担を軽くできるでしょう。

5. 会社分割の手続きで負担する不動産取得税

会社分割で不動産を移転させた場合は、登録免許税のほかに、不動産取得税が課せられます。一般的に、不動産取得税は以下のような計算式で表されます。

【不動産取得税の計算】

  • 固定資産評価基準による価格(課税標準額)×税率

【不動産取得税の税率】
  • 土地と家屋(住宅)は、100分の3
  • 家屋(住宅以外)は、100分の4

【不動産の取得日】
  • 2021年の3月31日まで

なお、2021年の3月31日までに、宅地や宅地に準ずる土地を取得した場合は、課税標準額を2分の1として計算します。

不動産取得税の免税点

不動産取得税の課税標準額が、以下の金額に満たない場合には、課税対象外となります。

不動産 金額
土地 10万円
家屋(売買・贈与・交換など) 12万円

不動産取得税の軽減措置

不動産取得税にも、登録免許税と同様に、「平成30年度の中小企業・小規模事業者税制改正」に軽減措置が設けられています

適用の期限は、2020年3月31日までです。期限までに認定経営力向上計画にしたがって、譲渡により一定の不動産を取得した場合には、以下の税率に下げられます。

【軽減税率】

  • 土地と住宅:1,000分の25
  • 住宅以外の家屋:1,000分の33

不動産取得税の非課税措置

不動産取得税では、一定の要件を満たせば非課税となる場合があります。非課税の要件は、以下の通りです。

  • 分割の対価に、承継会社の株式のみが交付される
  • 分割型分割は、分割会社の株主が所有する株式数に応じて、承継会社の株式が交付される
  • 分割事業に関する主要な資産・負債が、承継会社に移転している
  • 分割する事業が、承継後も承継会社で引き続き営業されることが見込まれている
  • 分割直前の分割事業に関わる従業員である全体の8割以上に相当する者が、承継会社の業務に就くことが見込まれている

【関連】会社分割の適格分割・非適格分割を解説!改正はされた?

6. 会社分割の手続きを選ぶメリット・デメリット

会社分割を検討する前に、メリット・デメリットをおさえておきましょう。

メリット

会社分割のメリットは、新規事業を始めやすいことが挙げられます。一部の事業を別会社へ移転すると、スピーディーな意思決定がしやすいのもポイントです。グループ内で兄弟会社を設立するなど、企業再編を検討している場合にもおすすめです。

会社分割の方法を活用すると資産を包括的に承継できるため、さまざまな権利や税金の負担軽減が期待できるでしょう。グループ内再編・合併事業譲渡の代替手段として、目的に応じて柔軟に活用できるため、最適なスキームといえます。

デメリット

会社分割のデメリットは、手続きが煩雑で多くの時間が必要な点です。会社分割を実施する際は、株主総会の特別決議が必要です。株主総会の承認を得るために、株主のうち株主の3分の2以上の賛成が必要なため、検討していてもなかなか踏み切れないケースもあります。

株主の同意を得るためには、さまざまな対策を立てなければなりません。特に株主の数が多い企業や株主が親族以外に分散している企業ほど、この負担は大きくなりやすいです。

7. 会社分割の手続き・スケジュールに関する相談先

会社分割は、選択するスキームによって備わっている特徴が異なります。自社のみで契約を進めてしまうと、許認可を承継できなかったり、求める対価を得られなかったりといった事態に陥らないともかぎりません。

そのような事態を避けるためには、M&Aの仲介会社などの専門家に相談することをおすすめします。

そのほか、スキームによって取る必要がある手続きにも違いが見られるので、会社分割を成功させるためには、専門家を要するM&Aの仲介会社に相談しながら進めるようにしましょう。

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8. 会社分割の手続き方法やスケジュールまとめ

会社分割における、スキームの概要や、手続きの方法、支払う登録免許税などを取り上げました。会社分割は、吸収分割と新設分割によって、手続きの仕方に違いが見られます。

自社のみで会社分割を行ってしまうと、手続きを見落とす事態も想定されます事前・事後の書類備置や、株式・新株予約権の買取請求・債権者保護手続き・登記など、専門家の協力が不可欠な要素が多いでしょう。

スムーズに会社分割を終えたいなら、M&Aの仲介会社に依頼をして専門家の力を借りることをおすすめします。

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