2022年06月06日更新
眼科(クリニック)のM&A(売買)動向・価格相場【最新事例あり】
本記事では、眼科(クリニック)のM&A(売買)動向や買収・売却相場価格、M&Aを成功させるポイントについて解説します。実際に行われた眼科の事例なども紹介しますので、眼科のM&Aをご検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 眼科(クリニック)業界とは
眼科(クリニック)業界とは、医療業界の一種で眼の病気における治療や診断を行う医院の業界をさします。
目の病気における治療以外に、コンタクトレンズを購入する人への処方を書いたり、花粉症の症状における改善などの治療を行ったりすることも含まれます。
眼科の施設数と医師数
厚生労働省の調査によると、2007年の一般病院では2,500の眼科施設数、2005年の診療所では7,114の眼科施設数でした。眼科医師数は、2006年末で1万2,362人、そのうち病院勤務は4,789人、診療所勤務は7,573人です。
眼科医数はここ数年横ばいで、眼科の需要は増えています。花粉症などによるアレルギー性結膜炎の患者、日常的なパソコンの使用などからくるドライアイ、コンタクトレンズ使用者が増えたことが要因です。
眼科(クリニック)業界の現状
比較的安定した業界である眼科(クリニック)業界ですが、業界の現状はどうなっているのでしょうか。眼科業界の現状は、以下の傾向が見られます。
- 売上は減少傾向にある
- 一般眼科と併設眼科に分けられる
- レーシックの価格競争が起こっている
- 需要自体は高まっている
売上は減少傾向にある
眼科(クリニック)の売上は、スマホやパソコンの使い過ぎなどによるドライアイの増加、高齢化に伴う緑内障患者の増加が見られる一方で、レーシックバブルの崩壊といったマイナス要因もあります。
眼科医の数が増加しているのに対し眼科医療費が安いこともあり、全体として眼科の売上は減少傾向です。
一般眼科と併設眼科に分けられる
眼科(クリニック)には眼科単独で運営する一般眼科と、コンタクトレンズ店に併設する併設眼科があります。併設眼科は、コンタクトレンズ購入者のための検査と処方が主な業務です。
レーシックの価格競争が起こっている
現在、レーシック手術は一時期のバブルが終わり、眼科(クリニック)が患者を取り合う価格競争が起こっている状態です。レーシックは、自由診療であるため患者に費用がかかり、眼科側にとっても設備費・維持費が高いことから、価格競争が起こりやすい分野です。
需要自体は高まっている
眼科(クリニック)の需要自体は高まっています。特にドライアイは、パソコンやスマートフォンなどの普及に伴って問題視され、急増するドライアイに対応するために、眼科の需要は高まっているのです。
コンタクトレンズが普及したことにより、定期検査にかよう患者数も増えています。花粉症のために眼科に行く人も増え、このような状況で多くの眼科は、身近な症状に関する需要を得ているのです。
2. 眼科(クリニック)のM&A(売買)動向
眼科(クリニック)のM&A(売買)動向は、どのような特徴が見られるのでしょうか。眼科におけるM&A動向の特徴は、主に以下の3つが挙げられます。
- 業界全体を見るとM&Aが活況
- 海外へのM&Aも増加
- 事業承継が行われやすい業界
①業界全体を見るとM&Aが活況
眼科(クリニック)業界では、クリニックのM&Aに加えて眼科医療機器や技術の獲得を目的とした、製薬会社によるM&Aも活発に行われています。眼科業界全体を見ると、業界のM&A動向は活況といえるでしょう。
②海外へのM&Aも増加
眼科(クリニック)業界では、まだ眼科医療が普及していない発展途上国への進出を狙った海外へのM&A事例が増加傾向です。特に、日本の大手製薬会社による東南アジアや南米における眼科医療会社の買収事例が多く見られます。
③事業承継が行われやすい業界
眼科(クリニック)は、医師が高齢になったり急に体調不良となったりして、経営を続けられないことがあります。
このような場合は、廃業するのではなく事業承継を行って、他の医師に経営を譲り渡す事例が多いです。眼科業界は、事業承継が行われやすい業界といえます。
事業承継とは
事業承継とは事業を他の人に譲り渡すことで、経営権だけでなく会社の資産や負債なども引き継ぎます。
かつては、眼科(クリニック)の事業承継は親族間で行われることが多かったのですが、最近はM&Aによる親族外への事業承継が増えているのです。
3. 眼科(クリニック)のM&A(売買)の価格相場
眼科(クリニック)の売却相場は、備わっている設備によって大きく変わり、手術設備やレーシック設備があれば、売却相場が高額になります。手術設備がなくレーシックなどの高価な機器もない場合は、大体2,000万円台が相場です。
設備が良くて坪数も広く白内障手術もできる条件などがそろえば、取引価格が1億円以上になる事例もあります。
眼科(クリニック)の開業資金
眼科(クリニック)の開業資金は、土地・建物を自分で購入する場合は大体5,000万円からです。テナントの場合は、最低2,000万円程度の設備費に加えて賃料などがかかります。経営が軌道に乗るまでの運転資金や広告費なども必要なので、余裕を持った経営を行うには1億円以上必要でしょう。
4. 眼科(クリニック)業界のM&A・売却・買収・譲渡事例
この章では、眼科(クリニック)業界のM&A・売却・買収・譲渡事例を見ていきましょう。眼科関連企業のM&A事例を6つ、眼科のM&A事例を5つ紹介します。
①ロート製薬による日本点眼薬研究所のM&A
2019年11月に、大手製薬会社のロート製薬は、日本点眼薬研究所の全株式を取得することを決め、株式譲渡契約を締結しました。
このM&Aは、海外への眼科事業拡大や医療関係者に役立つ製品・サービスの提供推進などを目的として行われています。買収額は非公表です。
②HOYAグループによるMid LabsとFritz RuckのM&A
光学機器メーカーのHOYAグループは、2018年10月にアメリカとドイツの眼科医療機器メーカー、Mid LabsとFritz Ruckの買収を発表しました。
製品ポートフォリオの拡大を目的としたM&Aで、買収額は非公表です。
③アステラス製薬によるQuetheraのM&A
2018年8月、大手製薬会社のアステラス製薬が、イギリスのバイオベンチャー企業Quetheraを株式取得により買収しました。
この事例は、緑内障患者における遺伝子治療技術の獲得を目的としたM&Aで、買収額は最大85百万ポンドです。
④ロート製薬によるAlina Vision社への出資
2018年2月、ロート製薬は、Alina Vision社(シンガポール)の設立に出資することを発表しています。Alina Vision社は、眼科医療の患者に合わせた価格による医療提供を行うための特徴的なビジネスモデルを展開している会社です。
Alina Vision社の理念やビジネスモデルを支持する形でロート製薬は出資を行い、持続可能なビジネスモデルの普及を促進し社会貢献につなげることを見込んでいます。
⑤エムスリーによるジャメックスのM&A
2017年11月、医療従事者向けサイトを運営するエムスリーは、眼科医療機器の販売などを手掛けるジャメックスの全株式を取得し子会社化しました。
眼科領域での事業拡大を目的として行われたM&Aで、買収額は非公表です。
⑥ロート製薬によるオフサルモスのM&A
2016年10月、大手製薬会社のロート製薬は、ブラジルの目薬販売会社オフサルモスの株式60%を取得し、子会社化しました。
このM&Aは、目薬などの製品輸出が主な目的で行われ、買収額は非公表です。
⑦東京都中央区銀座の眼科(クリニック)売却
東京都中央区銀座における眼科(クリニック)の売却が公表されています。院長の体調不良が売却の理由で、売却価格は2,500万円です。
⑧埼玉県JR高崎線沿線の眼科(クリニック)売却
埼玉県JR高崎線沿線における眼科(クリニック)の売却が公表されています。労務マネジメントの疲れが売却の理由で、売却価格は3,000万円です。
⑨東京23区城南エリアの眼科(クリニック)売却
東京23区城南エリアにおける眼科(クリニック)の売却が公表されています。院長の体調不良が売却の理由で、売却価格は2,000万円です。
⑩中国地方の医療法人の眼科(クリニック)のM&A
中国地方における医療法人の眼科(クリニック)によるM&Aが公表されています。売却理由は非公表で、売却希望価格は8,000万円です。
⑪静岡県の眼科(クリニック)売却
静岡県における眼科(クリニック)の売却が公表されています。売却理由は非公表で、売却希望価格は1.5億円です。
5. 眼科(クリニック)のM&A(売買)のメリット
眼科(クリニック)をM&Aで売買するメリットは、どのようなものがあるのでしょうか。この章では、売却側・買収側それぞれの立場から解説します。
売却側
売却側の主なメリットは、主に以下の5つです。
- 事務員・医師の雇用確保
- 後継者問題の解決
- 売却・譲渡益の獲得
- 資本力を得てサービスの充実
- 個人保証・債務・担保・廃業費用などの解消
事務員・医師の雇用確保
高齢や体調不良などにより眼科(クリニック)の経営が難しくなった場合、廃業すればそこで働いている事務員や医師は職を失います。
しかし、M&Aで他の経営者に譲渡すれば、眼科の営業が継続でき従業員の雇用も確保可能です。
後継者問題の解決
眼科(クリニック)の経営を後継者に継がせるとき、自分の息子など親族に譲渡するのはよくある事例です。しかし、息子が他の職業に就いているなどの理由で、身近な親族に後を継ぐ人がいないケースもあります。
そのような場合も、M&Aで買収を希望する他の経営者に譲渡すれば、後継者問題を解決できるのです。
売却・譲渡益の獲得
眼科(クリニック)をM&Aで売却すると、少なくとも数千万円程度の現金が手に入ります。返済したい債務がある、他の事業を興す資金が欲しい、老後の生活資金が欲しいなど、売却・譲渡益の獲得を目的としたM&Aも有効です。
資本力を得てサービスの充実
最近はレーシックの普及などもあり、眼科(クリニック)の設備や維持に、より費用がかかるようになりました。眼科を複数経営している場合は、1つを売却すればその資金を残りの医院におけるサービス充実のために使えます。
個人保証・債務・担保・廃業費用などの解消
眼科(クリニック)を経営すると、さまざまな個人保証、債務、担保などがついて回ります。こういった負担を解消する目的で、M&Aを実施するのも有効な方法です。廃業するには廃業費用がかかりますが、M&Aで売却すれば廃業費用がかかりません。
ただし、M&Aで売却したからといって、全ての債務や担保が解消されるとは限らない点に注意しましょう。
買収側
続いて、買収側のメリットを見ていきましょう。買収側のメリットは、主に以下の5つです。
- 医師・事務員などの確保
- 低コストで眼科部門を獲得
- 設備・施設などを低コストで獲得
- 顧客・取引先・ノウハウなどの獲得
- グループの拡大・事業エリアの拡大
医師・事務員などの確保
自分で一から眼科(クリニック)を開院する場合、そこで働く医師や事務員を募集して探さなければなりません。M&Aで既存の眼科を買収すれば、働いていた医師・事務員をそのまま確保できます。
低コストで眼科部門を獲得
他の診療科医院を経営しており新たに眼科部門を獲得したい場合も、M&Aによる買収は有効です。新規で眼科部門を開設するよりも、既存の眼科(クリニック)を買収した方が低コストで済みます。
設備・施設などを低コストで獲得
眼科(クリニック)を新規で開業する場合は、施設や設備も一から買いそろえなければなりません。M&Aで既存の眼科を買収すれば、クリニックの設備・施設を低コストで獲得できます。
ただし、設備を細かく選べないなどのデメリットもあるので、事前に確認しましょう。
顧客・取引先・ノウハウなどの獲得
新規で開業する場合は、顧客や取引先、ノウハウなどを一から作りあげる必要があります。M&Aで既存の眼科(クリニック)を買収すれば、その医院が持つ顧客・取引先・ノウハウを獲得できるのです。
グループの拡大・事業エリアの拡大
グループ病院の場合、グループや事業エリアの拡大を図る手段として、M&Aは有効です。
特に新たな地域に事業エリアを広げたい場合は、固定客や取引先がついている既存の眼科(クリニック)を獲得すると大きなメリットがあります。
6. 眼科(クリニック)のM&A・売却・譲渡を成功させるポイント
眼科(クリニック)のM&A・売却・譲渡は、成功するとは限りません。納得いく価格で売却できなかったり、そもそも買い手がつかなかったりするケースもあります。
売却・譲渡を成功させるには、ポイントを押さえた戦略を練ることが重要です。M&A・売却・譲渡を成功させるポイントは、以下の5つが挙げられます。
- アピールポイントを持つ
- 売却・譲渡までに準備を行う
- 地域性やアクセスなどのメリットを打ち出す
- 若い人材をそろえている
- 眼科売却の専門家に相談する
①アピールポイントを持つ
他の眼科(クリニック)にないアピールポイントがあれば、売却を有利に進められます。レーシックなど自費診療の設備が整っている、改修しなくても手術が行える、など施設面の充実は特に大きなアピールポイントです。
②売却・譲渡までに準備を行う
M&Aは、買い手との交渉が始まると、クロージングまでできるだけスムーズに行うことが重要です。事前段階での入念な準備が成功のポイントになります。
価格などの条件はどうするか、どの仲介会社を利用するか、M&Aが初めての場合はM&Aの基本的な流れを理解しておく、など売却・譲渡がスムーズに進むよう準備してください。
③地域性やアクセスなどのメリットを打ち出す
眼科(クリニック)は設備の良さも大切ですが、主要駅の近くにあるなどアクセスの良さも重要なポイントになります。長年地域に根差した経営を行っており地元住民から信頼があるなど、地域性も有効なアピールポイントです。
④若い人材をそろえている
眼科(クリニック)は若い人材がそろっていると、それだけ長く安定した経営ができる可能性が高くなります。売却したい眼科に若い人材がそろっている場合は、買収側に対して積極的にアピールするとよいでしょう。
⑤眼科売却の専門家に相談する
M&Aによる眼科(クリニック)の売却・買収を成功させるためには、事前に戦略を練り自社の目的に合う手法を選ぶことが欠かせません。M&A・売却・買収をスムーズに進めるためには、専門的な知識に加え交渉力も必要となるため、経営者のみで行うのは非常に困難です。
眼科の売却・買収を成功させるためには、M&A仲介会社など専門家のアドバイスを受けながら進めることをおすすめします。
M&A総合研究所では、知識・経験の豊富なM&Aアドバイザーが眼科(クリニック)のM&Aをフルサポートいたします。料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。
7. 眼科(クリニック)のM&A・買収を成功させるポイント
次に、眼科(クリニック)のM&A・買収を成功させるポイントを解説します。主なポイントは以下の3つです。
- M&A仲介会社に相談する
- M&Aのマッチングサイトなどの募集案件を探す
- 金融機関や行政機関などに相談する
①M&A仲介会社に相談する
マッチングサイトを利用して直接交渉することも可能ですが、よほどM&Aに慣れていない限りは、仲介会社に相談する方が無難です。
特に眼科(クリニック)の買収は1億円以上の大金が動くこともあるので、M&A仲介会社における専門家のアドバイスを受けながら進めましょう。
②M&Aのマッチングサイトなどの募集案件を探す
M&Aの経験がある方や眼科(クリニック)のM&A動向に詳しい方は、マッチングサイトを利用して自分で募集案件を探すのもおすすめです。
しかし、自分で案件を探す場合でもM&Aを進める際は専門的な知識が必要となるため、M&A仲介会社など専門家のアドバイスも受けた方がよいでしょう。
③金融機関や行政機関などに相談する
M&Aの相談は専門の仲介会社だけでなく、金融機関や行政機関でも受け付けています。近年は、経営者の高齢化による事業承継の増加動向を受けて、行政もM&Aの支援に力を入れているのです。
相談は「事業承継・引継ぎ支援センター」などの行政機関や主要金融機関で行っているので、利用してみるとよいでしょう。
8. 眼科(クリニック)のM&A(売買)における注意点
眼科(クリニック)のM&A(売買)における注意点として、「目的を明確にすること」と「M&Aの対象を丁寧に選ぶこと」が挙げられます。
M&Aの目的が明確でなければ、具体的な戦略を立てるのは難しいでしょう。具体的な戦略がないままM&Aを行うと、想定していた効果が得られない事態に陥りやすいです。
M&Aに多額の費用を使っても事業戦略上のメリットが生じないので、トラブルを防ぐためにもM&Aの目的をはっきりさせ、具体的なM&A戦略を立てながら適切なスキームを検討してください。
そして、相手企業を丁寧に選ぶことも欠かせません。相手の事業内容や方針などを踏まえ、信頼できる相手かどうか見極めましょう。適切な相手が見つかれば、早めにアプローチします。早めにアプローチして話を進めれば、他の企業に先を越されるリスクが減るからです。
M&Aの手続きは、法務・税務・財務などの専門知識、相手との交渉力など高い専門性を必要とします。これらを自社だけで行うのは困難です。M&A仲介会社などの専門家に相談して、サポートを受けましょう。
9. 眼科(クリニック)のM&A(売買)動向まとめ
眼科(クリニック)業界は事業承継が行われやすく、M&Aが比較的活況な業界です。眼科のM&A動向を踏まえ、納得のいく条件で売却・買収できるよう戦略を練ることが大切です。
【眼科(クリニック)のM&A(売買)動向】
- 業界全体を見るとM&Aが活況
- 海外へのM&Aも増加
- 事業承継が行われやすい業界
【売却・譲渡を成功させるポイント】
- アピールポイントを持つ
- 売却・譲渡までに準備を行う
- 地域性やアクセスなどのメリットを打ち出す
- 若い人材をそろえている
- 眼科売却の専門家に相談する
【買収を成功させるポイント】
- M&A仲介会社に相談する
- M&Aのマッチングサイトなどの募集案件を探す
- 金融機関や行政機関などに相談する
10. 眼科クリニック業界のM&A案件一覧
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