語学学校のM&A動向!会社売却のメリットや成功のポイントや事例10選を解説!

取締役副社長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

語学学校のM&Aを検討するにあたっては、まず情報収集が必要です。本コラムでは、語学学校業界の概要、語学学校のM&A動向、売却・譲渡側と買収側におけるメリットや注意点、M&Aを成功させるポイントなどを解説するとともに、具体的な語学学校のM&A事例も紹介します。

目次

  1. 語学学校業界の概要と動向
  2. 語学学校業界のM&A動向
  3. 語学学校のM&Aにおけるメリット
  4. 語学学校をM&Aで売却する流れ
  5. 語学学校のM&Aを成功させるポイント
  6. 語学学校のM&A事例10選
  7. 語学学校のM&Aにおける注意点
  8. 語学学校のM&Aまとめ
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1. 語学学校業界の概要と動向

語学学校業界のM&Aについて解説するにあたり、まずは語学学校業界の概要と動向を確認しましょう。語学学校業界の概要と動向をつかむため、以下のテーマに沿って説明を進めます。

  • 語学学校業界の特徴
  • 語学学校業界の市場規模
  • 語学学校業界の展望
  • 語学学校業界の課題

まずは、語学学校業界の特徴から説明します。

語学学校業界の特徴

語学学校業界の売上の大半は受講料で得ているため、いかに多くの受講者を集めるかがポイントです。語学学校業界では年度の変わり目に受講者が集まる傾向があるため、2~3月にキャンペーンや広告が集中します。

また、語学学校での講義・講座以外にオンライン学習やその他の方法も浸透してきたため、さまざまな方法で受講者を集めて受講料を得なければならなくなりました。語学学校の講座内容が「2カ月超の期間」「5万円超の受講料」の場合、特定商取引に該当します。特定商取引は、行政規制を守って実施しなければなりません。

語学学校業界の市場規模

2023(令和5)年度の語学学校業界の市場規模は、矢野経済研究所の資料「語学ビジネス市場に関する調査を実施(2024年)」によると7,841億円でした。これは、前年度比0.2%増の数値ですが、内訳は以下のようになっています。

  • 語学学校市場:3,299億円
  • 学習教材市場:1,012億円
  • 周辺ビジネス市場:3,530億円

語学学校業界における周辺ビジネス市場とは、語学試験事業、留学あっせん事業、幼稚園・保育園向け英語講師派遣事業、通訳・翻訳事業などのことです。

語学学校業界の展望

今後の語学学校業界の展望として、まず、受講者の年齢層の三層化があります。具体的には、成人向け・学生向け・幼児向けという区分です。また、これまで語学学校といえば英語が主流でしたが、グローバル化の時勢のなか、英語以外の語学学校へのニーズも高まるでしょう。

懸念材料としては、生成AIの発達です。すでに生成AIを搭載した翻訳アプリが出回っています。翻訳アプリをストレスなくスムーズかつ正確に誰でも使えるようになると、語学学習の意欲が低下するかもしれません。

語学学校業界の課題

語学学校業界の動向として、主に以下のような課題があります。

  • 同業者との差別化
  • オンライン学習
  • 人材不足
  • 受講者集め

現在の語学学校業界の動向として、各課題について説明します。

同業者との差別化

語学学校業界の課題の1つは、同業者との差別化です。行政による規制を受けるケースはあるものの、特別な認可や資格を要しない語学学校業界は、参入障壁が低めであるため業界内の競争は激化しています。競争に打ち勝つためには、他の語学学校との差別化は避けられないテーマです。

しかし、語学学校の運営は特許や著作権を取得できるような類いのものではないため、差別化の施策を打ち出しても真似されてしまう恐れもあります。どのような差別化を行うか工夫と検討が必要です。

オンライン学習

オンライン式語学学習をどのように取り組んでいくかは、今後の語学学校業界の課題です。コロナ禍の影響とインターネットの普及、スマートフォンやタブレットの高機能化などによって、オンラインによる語学学習ニーズが高まりを見せています。

従来の語学学校は土地と建物が必須でしたが、オンライン学習であれば教室は不要です。受講者の立場になれば、いつでも都合のよいときに受講できるという利便性もあります。また、オンラインの語学学習にあたって自社製の優秀な語学学習アプリを提供できれば、前述した差別化の課題を解決できるかもしれません。

人材不足

多くの産業でいえることですが、語学学校業界においても人材不足という課題があります。まず、外国語を得意とする日本人が皆、語学学校の講師を目指すわけではありません。一方、外国人講師はどうかというと、日本語もできる外国人探しは意外と高いハードルです。また、外国人も別の職種を選ぶケースもあります。

このような状況下で語学学校同士で人材を取り合うため、人材不足は慢性的な課題です。案外、オンライン学習が広がり、アプリでの講座が浸透することが人材不足の解決手段になる可能性もあります。

受講者集め

語学学校の売上の大半が受講料であるため、受講者集めは永久の課題です。その意味でもう1つ重要な視点として、受講者の継続率にこだわる必要があります。4月に多くの受講者を集められたとしても、多くが途中で辞めてしまえば売上の目減りは明らかです。

これを防ぐためには、単に語学学習のカリキュラムを充実させるだけでなく、受講者の語学学習のモチベーションが下がらないような施策を織り交ぜる工夫が必要でしょう。

参照元:語学ビジネス市場に関する調査を実施(2024年)

2. 語学学校業界のM&A動向

ここでは、語学学校業界のM&A動向を確認しましょう。語学学校業界では、今後の需要増を見込んでM&Aも活性化している状況にあります。そのような状況にある語学学校業界のM&A動向として顕著なものは、主に以下の3つの動向です。

  • 大手による業界再編のM&A
  • 人材やノウハウ獲得のためのM&A
  • 事業承継のためのM&A

語学学校業界の各M&A動向について説明します。

大手による業界再編のM&A

業界再編のためのM&Aはどの業界でも行われてきたことですが、語学学校業界でも大手の語学学校グループが小規模の語学学校を買収するM&Aが多く行われています。特に、語学学校業界は大手グループが市場を寡占している状況にはないため、今後もこのタイプのM&Aは継続して広く行われていくでしょう。

また、業界再編途上という状況であることから、資金力に余裕がある大手企業がM&Aによって新規参入してくるケースもあります。

人材やノウハウ獲得のためのM&A

語学学校業界のM&A動向として、人材やノウハウの獲得のために行われているM&Aも目立つ動向です。M&Aの買収側にとっては、M&Aを実施することで経験のある人材をまとめて一気に獲得できます。

また、買収側が語学学校業界に新規参入するケースでは、M&Aによって人材だけでなく語学学校運営ノウハウも獲得できるため、M&Aは非常に有効な経営戦略です。

事業承継のためのM&A

中小規模の語学学校の場合、事業承継を目的にM&Aを行う動向も見られます。語学学校の経営者に後継者がいない場合、経営者が引退時期になると語学学校は廃業するしかありません。廃業となれば従業員は解雇され、受講者は講義・講座が受けられなくなります。

そこで、語学学校をM&Aで売却することによって、買収側が後継者(新たな経営者)となり事業承継が実現するのです。

3. 語学学校のM&Aにおけるメリット

ここでは、語学学校のM&Aにおけるメリットを確認しましょう。M&Aの売却側と買収側では立場が違うため、メリットの内容も異なるものです。語学学校のM&Aにおけるメリットを、売却側と買収側に分けて説明します。

売却・譲渡側のメリット

語学学校のM&Aにおけるメリットについて、まずは売却側のメリットから確認しましょう。語学学校のM&Aにおける売却側の主なメリットには以下のようなものがあります。

  • 経営の安定化
  • 事業承継の実現
  • 従業員の雇用維持
  • 譲渡益の入手

語学学校のM&Aにおける売却側の各メリットについて内容を説明します。

経営の安定化

語学学校のM&Aにおける売却側のメリットの1つは、経営の安定化です。中小規模の語学学校の場合、運転資金の調達に苦労があるでしょう。そのため、経営が不安定になりがちです。そこで、M&Aにより語学学校を規模の大きな相手に売却することで、経営の安定化につながります。

規模の大きな企業であれば資金力があるため、金融機関に融資を申し込むことなく親会社が運転資金を融通してくれるでしょう。また、資金だけでなくその他のさまざまな経営資源も共用し協業できる体制となるため、経営が安定化します。

事業承継の実現

語学学校のM&Aにおける売却側には、後継者不在問題を解決し事業承継が実現できるというメリットもあります。後継者が不在のままであれば、最終的に語学学校は廃業となってしまいます。積み上げてきた語学学校運営ノウハウは承継されず、何よりも受講者に対し語学を学ぶ場を失うという迷惑がかかるのを避けられません。

また、後継者不在という事実が広まれば、先行きの不安から受講者や従業員が早期に辞めてしまう可能性もあります。それらの後継者不在にまつわる諸問題をM&Aによって解決できるのです。

従業員の雇用維持

語学学校をM&Aで売却することは、従業員の雇用が維持されるというメリットもあります。後継者不在のまま現経営者が引退することになれば、廃業を免れません。語学学校の廃業によって従業員は解雇扱いとなります。失業手当が支給されるといっても給料の同額がもらえるわけではありません。

転職活動は面倒なだけでなくストレスもたまるものです。また、転職できたからといって、これまでと同じ待遇を受けられる保証はありません。廃業は従業員にこれだけの迷惑をかけてしまうものですが、M&Aの売却によってそれを回避できます

譲渡益の入手

語学学校をM&Aで売却するオーナー経営者は、譲渡益を獲得できるメリットがあります。ただし、厳密にいうとM&Aのスキーム(手法)が事業譲渡や会社分割だと、M&Aの売却対価を受取るのは法人です。M&Aスキームが株式譲渡や合併などであれば、オーナー経営者が直接、対価を受取れます

M&Aの対価は、語学学校の付加価値が加えられた金額になるのが一般的です。つまり、語学学校の経営状態が良ければよいほど高い対価となり、譲渡益も高額となります。

買収側のメリット

続いて、語学学校のM&Aにおける買収側のメリットを確認しましょう。語学学校のM&Aにおける買収側の主なメリットは以下のとおりです。

  • 事業規模・市場シェアの拡大
  • 人材獲得
  • 新たな顧客層の獲得
  • 異業種からの参入
  • 経営戦略の早期実現

語学学校のM&Aにおける買収側の各メリットについて内容を説明します。

事業規模・市場シェアの拡大

語学学校のM&Aにおける買収側が同業者の場合、M&Aによって事業規模や市場シェアの拡大が実現するメリットが得られます。M&Aスキームが事業譲渡や会社分割、合併などであれば、売却側の組織や人員、設備などを直接、自社に取り込むため、事業規模や市場シェアの拡大はダイレクトなものです。

一方、M&Aで多用されるスキームである株式譲渡の場合は、売却側を子会社化します。この場合、事業規模や市場シェアの拡大は、企業グループとして達成できるものです。

人材獲得

語学学校のM&Aにおける買収側にとっては、人材獲得もメリットです。少子化による人口減少が続く日本では、語学学校業界に限らず、多くの産業で人材不足に陥っています。また、仮に新規採用で一定数の人材を確保できたとしても、各自が一人前になるには時間を要してしまうでしょう。

一方、M&Aの場合は、買収によって売却側の従業員をまとめて獲得できます。それらの従業員は売却側において一定の経験値を積んでいる即戦力です。このため、人材獲得を目的とするM&Aも増えてきています。

新たな顧客層の獲得

語学学校のM&Aでは、買収側は新たな顧客(受講者)を一気に獲得できるメリットもあります。語学学校の売上の大半は受講者の受講料です。したがって、いかに受講者を集めるかは経営成績に直結します。

語学学校業界では、あの手この手で受講者の獲得競争が行われていますが、買収側としてM&Aを実施することによって、売却側である語学学校が抱えている受講者を丸ごと獲得できるのです。

異業種からの参入

語学学校とは異業種の企業が語学学校業界に新規参入したい場合、M&Aによる語学学校の買収によって参入が簡単に実現できるメリットがあります。どのような産業でも、異業種から新規参入する場合、必要となるノウハウ、人材、設備などをそろえるのは容易ではありません。

特に人材と目に見えないノウハウをそろえるのは難問です。場合によっては、それらをそろえられず参入を断念するケースもあります。M&Aですでに運営を行っている語学学校を買収すれば、スムーズな参入が可能です。

経営戦略の早期実現

語学学校に限らずM&Aにおける買収側のメリットは、経営戦略の早期実現です。ここまで述べた語学学校のM&Aにおける買収側のメリットである「事業規模・市場シェアの拡大」「人材の獲得」「新たな顧客層の獲得」「新規事業への参入」は、時間をかければM&Aを用いなくても達成できなくはありません。

しかし、ビジネスにはタイミングというものがあり、時間をかけていてはチャンスロスしてしまう可能性もあります。その点、M&Aは早期に経営戦略を実現する方策として合致するものです。

4. 語学学校をM&Aで売却する流れ

ここでは、語学学校をM&Aで売却する流れについて確認しましょう。一般的に、語学学校をM&Aで売却する場合、以下のような流れで進められます。

  1. M&A仲介会社などへの相談
  2. 売却先の選定
  3. トップ面談・条件交渉
  4. 基本合意書の取り交わし
  5. デューデリジェンス
  6. 最終交渉と最終契約の締結
  7. クロージング

語学学校をM&Aで売却する流れについて、各プロセスの内容を説明します。

M&A仲介会社などへの相談

語学学校の売却を検討するにあたっては、当初からM&A仲介会社をはじめとする専門家に相談するのが得策です。M&Aは専門的な知識やノウハウ、経験が必要なものであり、それらを有する専門家から情報を得たり、アドバイスを受けたりするとよいでしょう。

また、M&Aは売却先が見つからなくては成立しません。専門家は売却先探しのネットワークも持っており、自社と適する専門家に業務依頼しましょう。業務依頼先を決めるにあたっては、語学学校のM&Aに携わったことのある専門家を選ぶのが肝要です。

売却先の選定

M&A仲介会社のような専門家と業務委託契約をすると、売却先探しは専門家が行います。こちらの希望する条件に合致しそうな複数の売却先候補が提示されるでしょう。

それらの候補から意中の相手が見つかれば、M&A仲介会社を通してM&A交渉開始の打診を行います。相手が打診に応じたら、秘密保持契約書を契約し交渉の開始です。交渉開始に先立ち、経営に関する情報の開示も必要になります。

トップ面談・条件交渉

M&A仲介会社と契約している場合、条件交渉はM&A仲介会社が間に入って打診を行うか、交渉そのものを代行します。したがって、M&Aの当事者が直接交渉する必要がないため、精神的な負担を軽減できるでしょう。

しかしながら条件交渉の過程では、売却側と買収側の経営者が直接会って話をするトップ面談が必ず行われます。このトップ面談の目的は、M&Aを決断した理由、これまでの経営方針、M&A後の経営ビジョンなどを話し、相手方への理解を深めることです。

基本合意書の取り交わし

条件交渉で大方の合意が得られた場合、基本合意書を作成して取り交わします。基本合意書は、契約書とは異なり合意内容の確認書です。書面で合意内容を確認し合う目的があります。また、基本合意書には法的拘束力はありません

ただし、例外的な措置として、基本合意書に記載される「買収側の期限付き独占交渉権」「売却側のデューデリジェンスへの協力義務」などには法的拘束力を持たせるケースがもっぱらです。

デューデリジェンス

デューデリジェンスとは、買収側が売却側に対して行う調査のことです。士業その他の専門家が起用され、細かな調べが行われます。買収側としては、デューデリジェンス終了後、その結果をもって最終的な買収条件の判断を下し最終交渉に臨むため、さまざまな情報提供が売却側に要望されるでしょう。

売却側はそれに対し建設的に対応しなければなりません。またデューデリジェンスでは、売却側に簿外債務がないかどうかのチェック、M&A後の経営統合に必要な情報収集なども行われます。

最終交渉と最終契約の締結

M&Aでは、デューデリジェンス終了後、最終交渉の場が持たれます。デューデリジェンスで特に問題視される調査結果が出ていなければ、基本合意書の内容に沿った交渉となるでしょう。

しかし、デューデリジェンスで何らかのマイナス要因となるような調査結果が出た場合、条件の変更が提示されます。仮にクリティカルな調査結果だと、M&A交渉の打ち切りがあるかもしれません。最終交渉で無事に合意できれば諸条件を契約書に落とし込み契約締結作業を行います。

クロージング

最終契約書の締結後、一定期間を置いてクロージングが実施されてM&Aの効力が発生します。クロージングとは、株式や資産の引渡し(売却側)や対価の支払い(買収側)といったM&Aを成立させるための契約書内容の履行のことです。

M&Aの売却側・買収側がクロージングを実施するには、社内手続きや対外的な届け出などが必要になります。そのため、契約締結日とクロージング日の間に日程の余裕を持たせることが多いです。

5. 語学学校のM&Aを成功させるポイント

ここでは、語学学校のM&Aを成功させるポイントを確認しましょう。語学学校のM&Aを成功させるポイントとしては、主に以下のようなものがあります。

  • 入念にM&Aの準備を行う
  • 経営状態をできるだけ良化しておく(売却側)
  • 人材流出を防ぐ
  • 債務内容を細かく確認する
  • 自社に適するM&A仲介機関を選ぶ

語学学校のM&Aを成功させるポイントには、売却側・買収側共通のポイントもあれば売却側だけのポイントもあるのが注意点です。語学学校のM&Aを成功させる各ポイントについて内容を説明します。

入念にM&Aの準備を行う

語学学校のM&Aを成功させるポイントの1つは、入念にM&Aの準備を行うことにあります。これは売却側・買収側の両方にいえることです。

M&Aの準備とは、まず、M&Aの目的を明確化させることです。その目的の実現に向けてM&Aの戦略を立てていきます。また、今後、必要となる資料や書類も早い段階から作成しておくと、余裕を持って各プロセスに取り組めるでしょう。

経営状態をできるだけ良化しておく(売却側)

語学学校のM&Aにおける売却側の成功ポイントとして、経営状態を良化しておくことが挙げられます。買収側から見れば、売却側の経営状態がよければよいほど魅力的に映るものです。買収側の立場になって経営状態を見直してみましょう。

具体例としては、債務はできるだけ返済しておくこと、不要な資産は処分し現金化しておくこと、未払いの給与や社会保険をなくしておくこと、決算の黒字化などがあります。

人材流出を防ぐ

M&Aにおいて人材流出を防ぐのは、売却側・買収側の双方にとって成功させるポイントになります。この場合の人材流出とは、売却側の人材のことです。

M&A後、仮に売却側従業員の待遇や労働環境が悪化するようなことがあれば、退職者が出るのは避けられないでしょう。人材の流出は買収側も望まないことのはずです。M&Aの条件交渉の際に、M&A後の売却側従業員の処遇について細かく取り決めておきましょう

債務内容を細かく確認する

M&Aにおける買収側は、売却側に簿外債務がないかどうか、デューデリジェンスで精査することが重要です。M&A後、簿外債務が発覚した場合、経営上のダメージを受ける可能性があります。故意の簿外債務は言語道断ですが、売却側も気づいていないケースがあり入念な調査が必要です。

また、売却側も簿外債務の発覚によってM&A破談の危険性があります。売却側としても簿外債務がないか慎重に調べておきましょう。

自社に適するM&A仲介機関を選ぶ

ここまで挙げた成功ポイントを確実にこなすためには、自社に適したM&Aの仲介機関を早期に選び、業務委託契約をして各プロセスを進めることです。

選び方のポイントは、まず語学学校のM&Aに携わったことがあることは必須ですが、それ以外に、そのM&A仲介機関が得意とする企業規模、地域などの実績も吟味しましょう。契約前の無料相談を活用して、相手の実績や特徴をよく把握することです。

6. 語学学校のM&A事例10選

ここでは、実際に行われた語学学校関連のM&A事例を確認しましょう。紹介するM&Aは以下の10事例です。

  1. セイハホールディングスによるテスコの買収
  2. ひのき会によるスプリックスへの事業譲渡
  3. NOVAホールディングスによるGABAの買収
  4. ベネッセホールディングスの子会社売却
  5. 全研本社によるNOVAホールディングスへの事業譲渡
  6. ビジネス・ブレークスルーによるブレンディングジャパンの買収
  7. 京進によるSELC Australia Pty Ltdの買収
  8. 城南進学研究社によるTresterの買収
  9. ベネッセホールディングスによるスタディーハッカーの買収
  10. 京進によるダイナミック・ビジネス・カレッジの買収

語学学校のM&A事例では、どのような事情でM&Aが行われたのか説明します。なお、表中に記載されている各社の売上高は、M&A実施時の直近決算のものです。

セイハホールディングスによるテスコの買収

事例1 売却側 買収側
法人名 テスコ セイハホールディングス
所在地 千葉県柏市 福岡県福岡市
事業内容
テスコ英会話スクール運営
(児童専門英会話教室)
総合教育サービス業、英会話教室事業、保育事業
そろばん教室事業、カルチャー教室事業、留学事業
プログラミング教室事業、オンライン英会話事業
ダンス教室事業、英語教室教材の企画・製作
日本教育学園でのインターナショナル幼稚園運営
売上高 非公開 非公開

2023年12月、セイハホールディングスは、テスコの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は未公表です。セイハホールディングスとしては、語学学校のうち英会話教室事業をより一層、強化するためにテスコを傘下に加えました。

ひのき会によるスプリックスへの事業譲渡

事例2 売却側 買収側
法人名 ひのき会 和陽日本語学院
所在地 東京都世田谷区 東京都豊島区
事業内容 学習塾経営指導
日本語学校経営
日本語学校運営
売上高 非公開 ー(新設会社のため)

2022(令和4)年7月、ひのき会は、これまで行ってきた和陽日本語学院の運営事業を和陽日本語学院に譲渡しました。譲渡額は未公表です。買収側の和陽日本語学院は、今回の事業譲渡を受けるためにスプリックスが設立した完全子会社です。スプリックスは、学習塾の運営や教育関連事業を行っています。

スプリックスとしては、人口減少が続く日本において外国人留学生向けの日本語教育需要は今後ますます高まっていくと想定し、日本語学校事業をより強化するためにM&Aを実施しました。

NOVAホールディングスによるGABAの買収

事例3 売却側 買収側
法人名 GABA NOVAホールディングス
所在地 東京都新宿区 東京都品川区
事業内容 Gabaマンツーマン英会話の運営 英会話事業、学習塾事業、通訳・翻訳事業
スポーツ事業、コンテンツ事業、出版事業
留学事業、こども事業、法人語学研修事業
などを行う企業グループの持株会社
売上高 63億7,000万円 非公開

2022年7月、NOVAホールディングスは、GABAの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は未公表です。GABAはニチイ学館の完全子会社でした。NOVAホールディングスとしては、グループにおける英会話事業の拡充と相乗効果を見込んでM&Aを決定しています。

ベネッセホールディングスの子会社売却

事例4 売却側 買収側
法人名 Berlitz Corporation Berlitz Holdings, Inc.
所在地 米国ニュージャージー州プリンストン市 カナダ国ブリティッシュ州バンクーバー市
事業内容 語学教育事業、留学支援事業 ILSC Holdings LPの特別目的会社
売上高 2億5,300万ドル ー(新設会社のため)

2022年2月、ベネッセホールディングスは、アメリカにある完全子会社のBerlitz Corporationの全株式を、カナダのILSC Holdings LPの特別目的会社であるBerlitz Holdings, Inc.に譲渡しました。譲渡額は未公表です。

ベネッセホールディングスとしては、中期経営計画における事業ポートフォリオ見直しの結果、Berlitz Corporationの行う事業から撤退するうえで最良の相手に事業を譲渡すべくILSC Holdings LPへの売却を決めました。

なお、このM&Aにあたり、ベネッセホールディングスは、Berlitz Corporationへの債権約178億円を放棄しています。

全研本社によるNOVAホールディングスへの事業譲渡

事例5 売却側 買収側
法人名 全研本社 NOVAホールディングス
所在地 東京都港区 東京都品川区
事業内容 マーケティング事業
海外人材事業
不動産事業
英会話事業、学習塾事業、通訳・翻訳事業
スポーツ事業、コンテンツ事業、出版事業
留学事業、こども事業、法人語学研修事業
などを行う企業グループの持株会社
売上高 62億1,600万円(連結) 非公開

2021(令和3)年10月、全研本社(現Zenken)は、英会話教室の運営事業をNOVAホールディングスへ譲渡しました。譲渡額は未公表です。コロナ禍の中、同事業の業績は落ち込んでしまい、教室5校のうち3校の閉鎖に追い込まれていました。

全研本社としては、主力事業に経営資源を集中するべきと判断し、英会話事業で実績のあるNOVAホールディングスへの事業譲渡を決めています。

ビジネス・ブレークスルーによるブレンディングジャパンの買収

事例6 売却側 買収側
法人名 ブレンディングジャパン ビジネス・ブレークスルー
所在地 福岡県福岡市 東京都千代田区
事業内容 子供向けオンライン
英会話スクールの運営
オンライン大学の運営
法人・個人向けマネジメント教育・
リカレント教育
インターナショナルスクールの運営
売上高 非公開 58億8,800万円(連結)

2021年5月、ビジネス・ブレークスルー(現Aoba-BBT )は、ブレンディングジャパンの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は未公表です。

ビジネス・ブレークスルーとしては、現在、行っているビジネスパーソン向けオンライン英会話講座事業に加えて、子供向けオンライン英会話市場に参入すべく今回のM&Aを実施しました。

京進によるSELC Australia Pty Ltdの買収

事例7 売却側 買収側
法人名 SELC Australia Pty Ltd 京進
所在地 オーストラリア国ニューサウス
ウェールズ州シドニー市
京都府京都市
事業内容 オーストラリアにおける留学生を
対象とした語学学校・専門学校事業
学習塾サービス、ライフキャリアサービス
語学学習サービス、育児・暮らしサービス
売上高 7億1,500万円 220億2,700万円(連結)

2020(令和2)年10月、京進は、SELC Australia Pty Ltd(以下SELC)の全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は1,000万円です。SELCは、ニチイ学館の完全子会社でした。

京進グループでは、すでにオーストラリアの子会社English Language Company Australia Pty Ltdが留学生向け語学事業を行っており、SELCが加わることでシナジー効果が生まれて一層の事業拡大を図れると判断し、M&Aを実施しています。

城南進学研究社によるTresterの買収

事例8 売却側 買収側
法人名 Trester 城南進学研究社
所在地 神奈川県川崎市 神奈川県川崎市
事業内容 英語学童保育事業 学習塾その他各種教室の経営
フランチャイズチェーンシステムによる
予備校・進学教室の募集・経営指導
大学・高校・中学受験用教材の企画・制作・販売
保育に関する事業
売上高 1億7,166万8,000円 67億4,600万円(連結)

2020年5月、城南進学研究社は、Tresterの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は未公表です。城南進学研究社としては、小学生向けのネイティブ英語環境提供施設事業を行うTresterをグループに加えることで、十分にシナジー効果が得られると判断しM&Aを実施しました。

ベネッセホールディングスによるスタディーハッカーの買収

事例9 売却側 買収側
法人名 スタディーハッカー ベネッセホールディングス
所在地 京都府京都市 岡山県岡山市
事業内容 英語教育事業
教育系アプリ開発事業
メディア事業
国内教育事業、介護・保育事業
グローバルこどもちゃれんじ事業
ベルリッツ(語学)事業などを行う
企業グループの持株会社
売上高 非公開 4,485億7,700万円(連結)

2020年4月、ベネッセホールディングスは、スタディーハッカーの株式50.1%を買収し子会社化しました。買収額は未公表です。ベネッセホールディングスとしては、スタディーハッカーを連結子会社化することによって、リカレント教育における英語教育サービス事業を拡充する狙いがあります。

京進によるダイナミック・ビジネス・カレッジの買収

事例10 売却側 買収側
法人名 ダイナミック・ビジネス・カレッジ 京進
所在地 東京都荒川区 京都府京都市
事業内容 日本語学校の運営 学習塾サービス、ライフキャリアサービス
語学学習サービス、育児・暮らしサービス
売上高 3億6,100万円 179億2,700万円(連結)

2019(平成31)年1月、京進は、ダイナミック・ビジネス・カレッジの全株式を買収し完全子会社化しました。買収額は10億5,100万円です。ダイナミック・ビジネス・カレッジはONODERAホールディングスの完全子会社でした。

京進の狙いは、ダイナミック・ビジネス・カレッジを傘下に加えることで、グループとして展開している日本語教育事業をさらに拡充させることにあります。

7. 語学学校のM&Aにおける注意点

最後に、語学学校のM&Aにおける注意点を確認しましょう。M&Aの売却側と買収側では立場が違うため、注意点も異なるものです。語学学校のM&Aにおける注意点を、売却側と買収側それぞれ個別に説明します。

売却・譲渡側の注意点

まずは、語学学校のM&Aにおける売却側の注意点を確認しましょう。語学学校のM&Aにおける売却側の注意点は以下の2つです。

  • 人材流出
  • 買収側が見つからない可能性

語学学校のM&Aにおける売却側の各注意点について内容を説明します。

人材流出

語学学校のM&Aにおける売却側は、社内へのM&A情報の方法や開示時期を見誤ると人材が流出する恐れがあります。

従業員は経営者とは違う立場であり、突然M&Aでの売却を知らされると動揺や不安感、不信感、反発心などを持ってしまうものです。その気持ちがエスカレートして退職してしまうかもしれません。買収側が人材獲得を目的にしている場合、そのような事態になるとM&Aが破談になりかねず注意が必要です。

買収側が見つからない可能性

語学学校のM&Aにおける売却側の注意点として、買収側が見つからない可能性があります。M&Aはタイミングの産物ともいわれるものです。こちらが語学学校を売却したいと思って相手を探しても、同じ時期に適する相手がいない可能性は否定できません。そのような場合の注意点は、相手選びに妥協し過ぎないことです。

買収側の注意点

続いて、語学学校のM&Aにおける買収側の注意点を確認しましょう。語学学校のM&Aにおける買収側の注意点は以下の2つです。

  • 簿外債務の引継ぎリスク
  • 条件の合致する売却側が見つからない可能性

語学学校のM&Aにおける買収側の各注意点について内容を説明します。

簿外債務の引継ぎリスク

M&Aにおける売却側の簿外債務の存在は大きなリスクであり、買収側にとって避けなければならない注意点です。簿外債務の規模によっては、会計上、大きな損害を被りかねません。M&Aの売却側における簿外債務の有無および規模を明らかにするため、デューデリジェンスを徹底して実施することが肝要です。

条件の合致する売却側が見つからない可能性

語学学校のM&Aにおける買収側も、希望条件に合致する売却側が見つからないという注意点があります。さらに注意したいのは、焦って妥協した相手とM&Aを進めることです。

M&Aをすることが目的ではなく、確固とした目的があってそれを達成するためのM&Aでなければいけません。条件に合う相手がなかなか見つからない場合は、気長に待つのも1つの戦略です。

8. 語学学校のM&Aまとめ

今後、語学学校の運営は、デジタル化・オンライン化が進む中で競争環境が変わる可能性が大いにあります。そのような局面では、M&Aも今以上に実施されるでしょう。

経営戦略あるいは事業承継戦略として、いつでもM&Aに対応できるよう準備をしておくのが得策です。M&Aに関する情報収集にあたっては、M&A仲介機関が行っている無料相談の活用をおすすめします。

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