2025年12月08日公開
会社を休業させるメリットとは?廃業との違いやデメリット・注意点も解説!
会社の休業というとネガティブなイメージがあるかもしれません。しかしながら、会社の休業にもメリットはあるものです。本コラムでは、会社休業で得られるメリットとデメリットや注意点、休業と廃業の違い、休業の際の具体的な手続き方法などを解説します。
1. 会社の休業とは
会社の休業とは、会社が開発や製造、営業や販売などの事業活動を停止し、経営を行っていない状態のことです。事業を行っていないわけですから従業員も在籍していません。
ただし、経営破綻によって破産したわけではないため、法人登記簿には以前のまま会社の登記が残った状態です。休業中の会社は事業の再開も可能であり、その意味において、「一時的に」事業を停止することが会社の休業といえます。
2. 会社の休業と廃業の違い
会社の休業に類似する言葉として「廃業」がありますが、その意味は異なります。廃業は一時的な事業の停止ではなく、完全に事業を停止して会社の清算手続きをすることです。法人登記簿からも抹消され、会社は消滅します。
会社の休業は一時的な事業の停止で法人登記も残存し、事業再開も可能です。廃業した元経営者が新たに事業を始めることは可能ですが、その場合は会社の新規設立であり事業再開ではありません。休業と廃業では大きく意味が違います。
会社の休業と休眠会社の違い
休業手続きを行い休業している会社のことを休眠会社ともいいます。一般的な意味合いでは、休業会社と休眠会社は同義語です。ただし、会社法での休眠会社は以下のように規定されています。
- 最後の登記手続きから12年が経過した株式会社
なぜ、このような規定が会社法にあるかというと、株式会社の義務として役員変更登記を10年に1度は行わなければならないことになっているからです。なお、一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人の場合は、最後の登記から5年が経つと休眠扱いとなります。
3. 会社を休業するメリット
ここでは、会社を休業するメリットについて確認しましょう。会社の休業で得られる主なメリットは以下のとおりです。
- 休業手続き費用の未発生
- 許認可再取得手続きが不要
- 均等割法人住民税が免除される可能性
- 消費税や法人税が非課税
- いつでも事業再開が可能
- 廃業に比べれば事業再開手続きが容易
会社を休業するメリットそれぞれについて内容を説明します。
休業手続き費用の未発生
会社の休業手続きには費用が発生しないというメリットがあります。複数の書類を作成して提出する必要はありますが、書類の提出や受理の際に手数料は課されない決まりです。この点について廃業と比較すると、廃業で行う必要がある解散登記、清算人選任登記および決算結了登記では手数料が定められています。
それらの登記手続きを経営者が行えない場合は司法書士や行政書士などに依頼するため、その報酬支払いも必要です。また、廃業では官報への公告費や各種証明書の取得費用、設備や在庫の処分費用も発生します。
許認可再取得手続きが不要
会社の休業では、許認可再取得手続きが不要というメリットもあります。業種によっては、管轄官庁の許認可がないと事業を行えません。休業会社は廃業のように会社が消滅するわけではないため、一度、取得した許認可は保持したままです。したがって、事業を再開する際に許認可を再取得しなければならないということはありません。
この点、廃業した元経営者が以前と同じ業種を新規設立した会社で行いたい場合、許認可の再取得が必要です。なお、許認可の種類によっては、一定期間ごとの更新手続きが必要であったり、事業活動の継続が許認可の条件であったりするため、注意しなければなりません。
均等割法人住民税が免除される可能性
会社の休業では、本来は課税される均等割法人住民税が免除される可能性があるというメリットがあります。「可能性」と記載したように、このメリットは全ての休業会社に該当するメリットではありません。本来、均等割法人住民税は会社の休業に関係なく、課税される決まりです。
ただし、課税額は均一ではなく、会社の所在地や資本金額によって、細かく納税額が決められています。このメリットは、会社の所在地がポイントです。自治体によっては、休業手続きを行った会社の均等割法人住民税を免除しているところがあり、会社の所在地次第でこのメリットを得られます。
消費税や法人税が非課税
会社の休業中は、消費税や法人税が非課税というメリットがあります。消費税は、支払い消費税額よりも受取り消費税額が上回った場合、納税義務が発生するものですが、事業活動を停止している休業会社では消費税の支払いも受取りもないため、消費税は発生しません。
また、法人税は会社の収益(利益)に対して課される税金です。しかしながら、事業活動を停止していて収入がない休業会社には法人税が課される道理がありません。
いつでも事業再開が可能
休業会社は、いつでも好きなときに事業再開が可能という点もメリットといえます。このメリットは廃業と比べると明らかです。廃業した元経営者が同じ業種を再び行いたい場合、会社を新規設立し必要に応じて許認可の取得手続きも行わなければなりません。
会社の設立や許認可の取得は、費用も時間も手間もかかり、好きなタイミングで事業を開始するのは難しいものがあります。ただし、会社休業のデメリットで詳細を説明する「みなし解散」制度があるため、みなし解散登記されてしまうと基本的に事業再開はできません。
廃業に比べれば事業再開手続きが容易
休業会社は、事業再開の「手続き」という点でも、廃業と比較して容易であるというメリットがあります。前項でも述べたとおり、廃業した元経営者が同一業種を新規で再開する場合、手続き上の手間は容易ではありません。
一方、休業会社の事業再開手続きは、事業再開のための届出書を複数、作成・提出するだけで可能です。この点、廃業後の事業再開(事業の新規やり直し)と比べて手続きは容易に済みます。なお、休業会社の事業再開手続きの詳細説明は後述いたしますので、そちらをご覧ください。
4. 会社を休業するデメリットと注意点
ここでは、会社を休業する際のデメリットや注意点を確認しましょう。会社の休業で被る主なデメリットや注意点は以下のとおりです。
- 休業が12年続くと「みなし解散」扱い
- 休業手続きの外部委託は費用発生
- 不動産には固定資産税が課税
- 毎年の税務申告義務
- 役員変更登記義務
会社の休業による各デメリットや注意点について内容を説明します。
休業が12年続くと「みなし解散」扱い
会社の休業状態が12年以上続くと、「みなし解散」扱いとなってしまうデメリットがあり注意が必要です。法務局では、数年単位で休業会社の整理作業を行います。その内容は、12年以上、休業状態にある会社は官報公告に掲載され、さらに通知が出されるというものです。
この通知に対し2カ月以内に何の手続きもしないでいると、会社は解散とみなされ登記官に解散登記されてしまいます。これが、みなし解散です。そして、みなし解散状態が3年以上、経過すると、会社は完全に解散したものと扱われます。
みなし解散状態を解消するには、完全解散になる前に株主総会の特別決議を行い、会社継続の登記手続きを行わなくてはなりません。
休業手続きの外部委託は費用発生
会社の休業手続きにおいて管轄官庁で手数料を徴収されることはありませんが、手続きそのものや必要書類の作成などを税理士、司法書士、行政書士などの士業事務所に委託した場合、当然ながら彼らへの報酬という費用が発生するため注意が必要です。
手続きを万全に行うために専門家に委託するか、費用発生を抑えるために経営者自らが手続き全てを行うか、検討が必要になります。
不動産には固定資産税が課税
会社が土地や建物といった不動産を所有している場合、たとえ休業状態で収入がないとしても固定資産税は免除されないため、注意しなければなりません。不動産を所有している会社にとっては、休業しても固定資産税を納めるための資金を用意しなければならないというデメリットになります。
毎年の税務申告義務
会社を休業していても会社が存在する以上、毎年、税務申告は行わなければなりません。事業活動を行っておらず収入がないため法人税は課されませんが、税務申告義務からは逃れられないのです。したがって、会社が休業中なのに税務申告の手間がかかることはデメリットといえるでしょう。
役員変更登記義務
会社が休業中であっても、役員の変更登記を行わなければならないことは注意点の1つです。会社が休業しても、役員の地位・立場は休業前と同様に継続されることになっています。非上場の株式会社の場合、役員の任期として定款で定められるのは最長10年です(会社法第332条)。
つまり、最低でも10年に1度は役員の変更登記を行う義務が発生します。仮に役員の変更登記を怠った場合、会社の代表者に対し100万円以下の過料という罰金が処される決まりです(会社法第976条)。
5. 会社を休業する際の手続き
ここでは、会社を休業する際の手続きの進め方を確認しましょう。会社を休業する際は、以下のような手順で手続きを進めます。
- 事業停止の決定・執行
- 必要書類の作成・提出
- 各種届出の受理により休業へ移行
会社の休業手続きの各手順について説明します。
事業停止の決定・執行
会社の休業を決めた場合、同時に事業の停止も決定し、それを実行します。事業の停止とは、一切の収入や支出が発生しない状態のことです。従業員も解雇もしくは休職扱いにしなければなりません。なお、この場合、解雇手当や休業手当などが発生するため注意しましょう。
また、郵便物のやり取りや電話応対があると事業停止とみなされません。郵便物の不在届や転送届、電話契約の解約や休止などの手続きも必要です。
必要書類の作成・提出
会社休業手続きにおいては、さまざまな書類を作成し、それぞれの管轄機関に提出しなくてはなりません。一般的な会社休業手続きでは、以下のような書類の作成・提出が必要です。
- 異動届出書(税務署・都道府県税事務所・市区役所・町村役場)
- 給与支払事務所の開設・移転・廃止届出書
- 労働保険確定保険料申告書
- 雇用保険適用事業所廃止届、雇用保険被保険者資格喪失届
- 健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届、健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届
会社休業手続きにおける各必要書類の内容や提出先などについて説明します。
異動届出書(税務署・都道府県税事務所・市区役所・町村役場)
事実上の休業届といえるのが「異動届出書」です。異動事項の内容として「休業」と記載します。異動届出書は、管轄の税務署、会社所在地の都道府県税事務所と市区役所または町村役場それぞれに提出しなければなりません。
異動届出書のフォーマットは、税務署、都道府県税事務所、市区役所または町村役場それぞれで異なっています。つまり、3種類の異動届出書を作成しなければならないのが注意点です。
給与支払事務所の開設・移転・廃止届出書
会社休業時は、管轄税務署に対し「給与支払事務所の開設・移転・廃止届出書」も作成して提出しなければなりません。給与支払事務所の開設・移転・廃止届出書は、見て分かるとおり、給与支払事務所の開設と移転、廃止が一体となった届出書です。
休業の場合は、廃止届出書として提出します。廃止欄に「休業」という記載があり、そこにチェックを入れる記載方法です。給与支払事務所の廃止届出書は、休業から1カ月以内に提出しなければなりません。
労働保険確定保険料申告書
従業員を雇用している会社が休業する場合、管轄の労働基準監督署に対し「労働保険確定保険料申告書」も作成し提出しなければなりません。労働保険とは労災保険と雇用保険のことです。労働保険確定保険料申告書の通常の提出期間は6月1日~7月10日ですが、会社の休業時は例外措置として、その時点で提出することになっています。
雇用保険適用事業所廃止届、雇用保険被保険者資格喪失届
従業員を雇用している会社の休業時に、管轄の公共職業安定所(ハローワーク)に対し作成・提出するのが「雇用保険適用事業所廃止届」です。
会社が雇用保険適用事業所ではなくなるため、被保険者であった従業員全員の「雇用保険被保険者資格喪失届」も提出しなければなりません。用紙は公共職業安定所に用意されていますので、そちらを用いて作成します。
健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届、健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届
従業員を雇用している会社が休業するにあたっては、「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を作成し管轄の年金事務所に提出しなければなりません。
また、会社が健康保険・厚生年金保険の適用事業所ではなくなるため、被保険者であった従業員全員の「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」も合わせて提出する必要があります。
各種届出の受理により休業へ移行
上述した各届出が、それぞれの管轄機関で受理されれば正式に会社は休業状態となります。会社が休業となっても、毎年の税務申告と役員変更時の登記は義務であり怠らないようにしましょう。特に、役員の変更登記を怠り12年以上の休業と認識されると、みなし解散措置を受けてしまいます。十分な注意が必要です。
6. 会社休業時における事業再開手続き
ここでは、休業中の会社が事業を再開するための手続きについて確認しましょう。会社休業から事業を再開する際は、以下のような手順で手続きを進めます。
- 手続き前の確認事項
- 異動届出書の作成・提出
- 休業中の会計処理と確定申告の実施
- 青色申告を再申請
休業中の会社が事業再開するための手続きについて、各手順の内容を説明します。
手続き前の確認事項
休業会社が事業再開をするにあたっては、以下の点について事前確認します。
- みなし解散扱いになっていないかどうか
- 運転資金の準備
- 収益予測
みなし解散になっていると通常の事業再開よりも手続きが多くかかるため、注意が必要です。また、事業再開にあたっては資金繰りが欠かせません。休業中に税金の滞納があると金融機関から融資を受けられないため、滞納状態は解消しましょう。
異動届出書の作成・提出
会社の事業再開にあたっては、休業時の手続きと同様に異動届出書を管轄の税務署、会社所在地の都道府県税事務所と市区役所または町村役場それぞれに向けて事業を再開する旨を記載し提出します。
また、従業員を雇用する場合、税務署には給与支払事務所の開設届出書、公共職業安定所には雇用保険適用事業所設置届と雇用保険被保険者資格取得届、労働保険の保険関係成立届、年金事務所には健康保険・厚生年金保険適用事業所届と健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届の提出も必要です。
休業中の会計処理と確定申告の実施
休業中に取引先との間で売掛金や買掛金が発生している可能性もあり、それらの確認を行い、預貯金の移動なども含めて休業期間中の会計処理を実施します。これにより、事業再開するにあたっての期首残高が確定するのです。また、合わせて上記の会計処理後の最新の確定申告も行います。
青色申告を再申請
休業中に毎年の税務申告を怠ってしまった場合、青色申告が取り消されてしまいます。そのようなケースで事業再開する会社は、管轄の税務署に対しあらためて青色申告を再申請する手続きが必要です。スムーズに事業再開するためにも、税務申告義務は怠らないようにしましょう。
7. 会社の休業まとめ
会社の休業にはメリットがあるもののデメリットも存在します。会社の休業を検討する際には、メリットだけを重視せず、デメリットにも目を向けるように注意しましょう。また、休業や廃業とは観点の違う選択肢として、M&Aによる会社や事業の売却もあります。
会社の休業・廃業・M&Aによる売却などを検討する際には、最寄りの商工会・商工会議所や独立法人中小企業基盤整備機構、M&A支援機関などに相談し、それぞれの事情や状況に適した判断をしましょう。
M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所
M&A・事業承継のご相談なら経験豊富なM&AアドバイザーのいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴
- 譲渡企業様完全成功報酬の料金体系
- 最短43日、平均7.2ヶ月のスピード成約(2025年9月期)
- 専門部署による、高いマッチング力
- 強固なコンプライアンス体制
M&A総合研究所は、成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A仲介会社です。
M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。







